説明

マニュアルフォーカス式の交換レンズおよびカメラシステム

【課題】カメラボディ100に取り付けられた交換レンズがマニュアルフォーカスレンズであるか否かの検出を容易にする。
【解決手段】マニュアルフォーカスレンズである交換レンズ800では、オートフォーカスレンズであればフォーカスレンズの位置の情報の通信に係る信号線HANSについて、信号レベルが常にLになるように構成されている。カメラボディ100に交換レンズ800またはオートフォーカスレンズである交換レンズ200が取り付けられたことが検出されると、ボディCPU103が、ボディ側第2通信回路113で検出される信号線HANSの信号レベルを判断する。信号線HANSの信号レベルがLであれば、ボディCPU103は、カメラボディ100に交換レンズ800が取り付けられたものと判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マニュアルフォーカス式の交換レンズおよびカメラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
カメラボディと交換レンズとからなるカメラシステムにおいて、カメラボディが交換レンズ内の焦点調節用レンズを駆動することにより自動焦点調節を行う技術が知られている。自動焦点調節を行う場合、カメラボディは交換レンズから焦点調節用レンズの位置情報を取得する必要がある。例えば特許文献1には、合焦用レンズの駆動系にエンコーダなどからなる移動信号発生部を設けた撮影レンズが記載されている。この移動信号発生部は、合焦用レンズの前後移動に応じて、正負2相のパルス信号を出力する。出力されたパルス信号はカメラボディ内のボディ側制御部に伝達される。カメラボディはこのパルス信号から、合焦用レンズの移動距離をパルス数の単位で検出することが可能である。
【0003】
特許文献1に記載した構成では、カメラボディに合焦用レンズ以外の光学部材の駆動状態に関する情報を送信する場合、光学部材毎にエンコーダを追加しなければならない。エンコーダの追加は製造コストの増加および筐体の大型化を招くため、エンコーダの代わりに、光学部材の駆動状態に関する情報を送信するための新たな伝送路を導入することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−97006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光学部材の駆動状態に関する情報を送信するための新たな伝送路を導入する場合、交換レンズ内のCPUは制御用の伝送路と新たな伝送路の2つを制御する必要がある。従来技術では、これら2つの伝送路の各々を制御するための処理が同時に生じた場合にどのような制御を行えばよいかについては、何ら考えられていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 請求項1の発明によるマニュアルフォーカス式の交換レンズは、オートフォーカス式の交換レンズとの間で各種信号を送受信する際に、オートフォーカスレンズのフォーカスレンズの駆動に関する駆動指令信号を第1伝送路を介して送信し、フォーカスレンズの位置に関するレンズデータを第1伝送路とは異なる第2伝送路を介して受信し、第2伝送路がレンズデータの送信に係る通信開始を要求する信号を送信するための第1のボディ側信号線と、通信準備が完了したことを示す信号をオートフォーカスレンズから受信するための第2のボディ側信号線と、レンズデータをオートフォーカスレンズから受信するための第3のボディ側信号線とを含み、第1のボディ側信号線に接続された第1のボディ側接点と、第2のボディ側信号線に接続された第2のボディ側接点と、第3のボディ側信号線に接続された第3のボディ側接点とを有するカメラボディに着脱可能に取り付けられるマニュアルフォーカス式の交換レンズであって、カメラボディに取り付けられると第1のボディ側接点と電気的に接続される第1のレンズ側接点と、カメラボディに取り付けられると第2のボディ側接点と電気的に接続される第2のレンズ側接点と、カメラボディに取り付けられると第3のボディ側接点と電気的に接続される第3のレンズ側接点と、カメラボディに取り付けられた交換レンズがマニュアルフォーカスレンズであることを示す信号を第2のレンズ側接点を介して出力する識別信号出力手段と、を備えることを特徴とする。
(2) 請求項3の発明によるカメラシステムは、カメラボディと、カメラボディに着脱可能に取り付けられる交換レンズとを有するカメラシステムであって、カメラボディは、オートフォーカス式の交換レンズ(オートフォーカスレンズ)との間で各種信号を送受信するボディ側送受信手段と、オートフォーカスレンズとの間でボディ側送受信手段が各種信号を送受信するためのボディ側第1伝送路およびボディ側第1伝送路とは異なるボディ側第2伝送路と、カメラボディに取り付けられた交換レンズがオートフォーカスレンズであるか否かを判断する判断手段と、オートフォーカスレンズのフォーカスレンズの駆動に関する駆動指令信号を生成する駆動指令信号生成手段とを備え、ボディ側送受信手段は、判断手段でカメラボディに取り付けられた交換レンズがオートフォーカスレンズであると判断されると、少なくとも、駆動指令信号生成手段で生成された駆動指令信号をボディ側第1伝送路を介して送信し、ボディ側送受信手段は、判断手段でカメラボディに取り付けられた交換レンズがオートフォーカスレンズであると判断されると、フォーカスレンズの位置に関するレンズデータの送信に係る通信開始を要求する信号をボディ側第2伝送路を介してオートフォーカスレンズへ送信するとともに、オートフォーカスレンズから送信されるレンズデータをボディ側第2伝送路を介して受信し、ボディ側第2伝送路は、レンズデータの送信に係る通信開始を要求する信号を送信するための第1のボディ側信号線と、通信準備が完了したことを示す信号をオートフォーカスレンズから受信するための第2のボディ側信号線と、レンズデータを交換レンズから受信するための第3のボディ側信号線とを含み、第1のボディ側信号線に接続された第1のボディ側接点と、第2のボディ側信号線に接続された第2のボディ側接点と、第3のボディ側信号線に接続された第3のボディ側接点とを備え、判断手段は、第2のボディ側信号線を介して交換レンズからカメラボディに取り付けられた交換レンズがマニュアルフォーカス式の交換レンズ(マニュアルフォーカスレンズ)であることを示す信号を受信すると、カメラボディに取り付けられた交換レンズがマニュアルフォーカスレンズであると判断し、第2のボディ側信号線を介して交換レンズからカメラボディに取り付けられた交換レンズがマニュアルフォーカスレンズであることを示す信号を受信しない場合には、カメラボディに取り付けられた交換レンズがオートフォーカスレンズであると判断し、交換レンズは、カメラボディに取り付けられると第1のボディ側接点と電気的に接続される第1のレンズ側接点と、カメラボディに取り付けられると第2のボディ側接点と電気的に接続される第2のレンズ側接点と、カメラボディに取り付けられると第3のボディ側接点と電気的に接続される第3のレンズ側接点と備え、交換レンズは、マニュアルフォーカスレンズである場合には、カメラボディに取り付けられた交換レンズがマニュアルフォーカスレンズであることを示す信号を第2のレンズ側接点を介して出力する識別信号出力手段をさらに備えることを特徴とする。
(3) 請求項5の発明によるマニュアルフォーカス式の交換レンズは、請求項3または請求項4に記載のマニュアルフォーカス式の交換レンズであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、2つの伝送路の各々を制御するための処理が同時に生じた場合であっても、正常に通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施の形態に係るカメラシステムの外観を示す図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るカメラシステム1の構成を示す断面図である。
【図3】カメラボディ100と交換レンズ200との間の伝送路の詳細を示すブロック図である。
【図4】コマンドデータ通信を表す波形図である。
【図5】ホットライン通信を表す波形図である。
【図6】制御処理の実行中に生成処理が生じた場合の波形図である。
【図7】生成処理の実行中に制御処理が生じた場合の波形図である。
【図8】カメラボディ100に交換レンズ800を装着した実施の形態に係るカメラシステム1の構成を示す断面図である。
【図9】カメラボディ100と交換レンズ800との間の伝送路の詳細を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の一実施の形態に係るカメラシステムの外観を示す図である。カメラシステム1は、カメラボディ100と、交換レンズ200,800とから構成される。交換レンズ200はカメラボディ100に着脱可能に取り付けられるオートフォーカスレンズである。交換レンズ800はカメラボディ100に着脱可能に取り付けられるマニュアルフォーカスレンズである。交換レンズ200,800の取り付けは、カメラボディ100のボディ側レンズマウント101に、交換レンズ200,800のレンズ側レンズマウント201を嵌め込むことにより行われる。
【0010】
ボディ側レンズマウント101にはデータ通信および電源供給のための複数の接点310B,320Bが存在する。レンズ側レンズマウント201上には複数の接点310B,320Bの各々に対応する複数の接点310L,320Lが存在する。交換レンズ200,800がカメラボディ100に取り付けられると、接点310B,320Bと接点310L,320Lが接続され、カメラボディ100から交換レンズ200,800に交換レンズ200,800を動作させるための電力が供給されると共に、カメラボディ100と交換レンズ200,800との間で後述するデータ通信を行うことができるようになる。
【0011】
カメラボディ100はボディCPU103を備える。ボディCPU103は所定の制御プログラムを実行することにより、カメラボディ100内の各部の制御を行う。他方、交換レンズ200,800はそれぞれレンズCPU203を備える。レンズCPU203は所定の制御プログラムを実行することにより、交換レンズ200内の各部の制御と、後述する制御処理および生成処理とを行う。なお、以下の説明では、カメラボディ100に取り付けられた交換レンズが交換レンズ200(オートフォーカスレンズ)である場合について説明する。カメラボディ100に取り付けられた交換レンズが交換レンズ800(マニュアルフォーカスレンズ)である場合について説明の説明は、後に行う。
【0012】
撮像素子104は被写体像を撮像し、撮像信号を出力する。カメラボディ100に設けられたレリーズスイッチ107が押下されると、ボディCPU103はこの撮像信号に各種の画像処理を行い、画像データを作成する。作成された画像データは、記憶媒体挿入口105内の可搬記憶媒体106に記憶される。
【0013】
図2は、本実施形態に係るカメラシステム1の構成を示す断面図である。交換レンズ200は、複数のレンズ210a〜210eから構成される撮像光学系210と絞り210fとを内蔵する。これら複数のレンズのうち例えばレンズ210dは、焦点調節のために駆動されるフォーカスレンズである。またレンズ210eはブレ補正用レンズである。レンズCPU203はボディCPU103からの指示に従って、不図示のアクチュエータ(モータ等)によりフォーカスレンズ210d、ブレ補正レンズ210e、絞り210f等を駆動させる。
【0014】
撮像素子104の前面には、光学的ローパスフィルターと赤外線カットフィルターを合わせたフィルター111が設置されている。交換レンズ200内の撮像光学系210を通過した被写体光は、光軸Rを中心に、フィルター111を介して撮像素子104に入射する。ボディCPU103は、撮像素子104が出力する撮像信号から表示用画像を作成し、カメラボディ100の背面に設置されているLCDモジュール110に表示する。
【0015】
ボディCPU103とレンズCPU203との間、すなわちカメラボディ100と交換レンズ200との間には、図1に示す接点310B,320Bと接点310L,320Lとを介した2系統の伝送路が設けられている。これら2系統の伝送路は互いに独立しているので、一方の伝送路においてデータが伝送されている場合であっても、他方の伝送路によりデータを伝送することが可能である。以下の説明では、2系統の伝送路をそれぞれ第1伝送路301、第2伝送路302と称する。また、第1伝送路301を用いて行われる通信をコマンドデータ通信、第2伝送路302を用いて行われる通信をホットライン通信と呼ぶ。第1伝送路301および第2伝送路302を構成する信号線、ならびに、コマンドデータ通信およびホットライン通信の具体的な通信内容については後に詳述する。
【0016】
カメラボディ100内には、コマンドデータ通信を行うボディ側第1通信回路112と、ホットライン通信を行うボディ側第2通信回路113が設置される。これらの回路はそれぞれボディCPU103に接続される。同様に交換レンズ200内には、コマンドデータ通信を行うレンズ側第1通信回路212と、ホットライン通信を行うレンズ側第2通信回路213が設置される。これらの回路はそれぞれレンズCPU203に接続される。
【0017】
ボディ側第1通信回路112とレンズ側第1通信回路212とは、第1伝送路301により互いに接続される。同様に、ボディ側第2通信回路113とレンズ側第2通信回路213とは、第2伝送路302により互いに接続される。レンズ側第1通信回路212は、第1伝送路301を介してカメラボディ100内のボディ側第1通信回路112から後述する制御データを受信すると共に、交換レンズ200側で用意した制御データを送信する。
【0018】
(各伝送路の説明)
図3は、カメラボディ100と交換レンズ200との間の伝送路の詳細を示すブロック図である。なお、図3では、データ通信のための伝送路に関して記載し、電源供給に係る接点や電源ラインの記載を省略している。レンズ側第1通信回路212は4つの通信端子ORDY、ICLK、IDATAB、およびODATALを備える。ボディ側第1通信回路112は、これらの端子に対応する4つの通信端子IRDY、OCLK、ODATAB、およびIDATALを備える。第1伝送路301は、これら4対の通信端子をそれぞれ接続する4本の信号線RDY、CLK、DATAB、およびDATALにより構成される。すなわち、コマンドデータ通信はこれら4本の信号線を用いて行われる。
【0019】
信号線RDYには、レンズ側第1通信回路212が通信開始の可否を送出する。信号線CLKには、ボディ側第1通信回路112がデータ通信のためのクロック信号を送出する。信号線DATABには、ボディ側第1通信回路112がデータ信号を送出する。信号線DATALには、レンズ側第1通信回路212がデータ信号を送出する。
【0020】
同様に、レンズ側第2通信回路213は4つの通信端子IHREQ、OHANS、IHCLK、およびOHDATALを備える。ボディ側第2通信回路113は、これらの端子に対応する4つの通信端子OHREQ、IHANS、OHCLK、およびIHDATALを備える。第2伝送路302は、これら4対の通信端子をそれぞれ接続する4本の信号線HREQ、HANS、HCLK、およびHDATALにより構成される。すなわち、ホットライン通信はこれら4本の信号線を用いて行われる。
【0021】
信号線HREQには、ボディ側第2通信回路113が通信開始を要求する信号を送出する。信号線HANSには、レンズ側第2通信回路213が通信準備完了を示す信号を送出する。信号線HCLKには、ボディ側第2通信回路113がデータ通信のためのクロック信号を送出する。信号線HDATALには、レンズ側第2通信回路213がデータ信号を送出する。
【0022】
カメラボディ100には、上述したように、接点310B,320Bが設けられている。接点310Bは、第1伝送路301の4本の信号線RDY、CLK、DATAB、およびDATALのそれぞれについてのカメラボディ側の接点(ボディ側接点)311B,312B,313B,314Bを含む。また、接点320Bは、第2伝送路302の4本の信号線HREQ、HANS、HCLK、およびHDATALのそれぞれについてのカメラボディ側の接点(ボディ側接点)321B,322B,323B,324Bを含む。
【0023】
交換レンズ200には、上述したように、接点310L,320Lが設けられている。接点310Lは、第1伝送路301の4本の信号線RDY、CLK、DATAB、およびDATALのそれぞれについての交換レンズ側の接点(レンズ側接点)311L,312L,313L,314Lを含む。また、接点320Lは、第2伝送路302の4本の信号線HREQ、HANS、HCLK、およびHDATALのそれぞれについての交換レンズ側の接点(レンズ側接点)321L,322L,323L,324Lを含む。
【0024】
カメラボディ100に交換レンズ200が取り付けられると、各ボディ側接点311と各レンズ側接点とが互いに当接して電気的に接続される。すなわち、カメラボディ100に交換レンズ200が取り付けられると、ボディ側接点311Bとレンズ側接点311Lとが電気的に接続され、ボディ側接点312Bとレンズ側接点312Lとが電気的に接続され、ボディ側接点313Bとレンズ側接点313Lとが電気的に接続され、ボディ側接点314Bとレンズ側接点314Lとが電気的に接続される。同様に、カメラボディ100に交換レンズ200が取り付けられると、ボディ側接点321Bとレンズ側接点321Lとが電気的に接続され、ボディ側接点322Bとレンズ側接点322Lとが電気的に接続され、ボディ側接点323Bとレンズ側接点323Lとが電気的に接続され、ボディ側接点324Bとレンズ側接点324Lとが電気的に接続される。
【0025】
なお、ボディCPU103は、ボディ側第1通信回路112で信号線RDYの信号レベルがハイインピーダンス状態からHまたはLへ変化したことを検出すると、カメラボディ100に交換レンズ200または交換レンズ800が取り付けられたものと判断する。そして、ボディCPU103は、ボディ側第2通信回路113で検出される信号線HANSの信号レベルがHであるかLであるかを判断する。信号線RDYの信号レベルがLである場合、ボディCPU103は、カメラボディ100にマニュアルフォーカスレンズである交換レンズ800が取り付けられたものと判断して、後に詳述する各種通信を開始する。信号線RDYの信号レベルがHである場合、ボディCPU103は、カメラボディ100にオートフォーカスレンズである交換レンズ200が取り付けられたものと判断して、以下に述べる各種通信を開始する。
【0026】
(コマンドデータ通信の説明)
コマンドデータ通信では、ボディ側第1通信回路112が出力するクロック信号に同期して、ボディ側第1通信回路112とレンズ側第1通信回路212とが互いに同時にデータ信号を送出する。つまり、コマンドデータ通信は、双方向に同時にデータが送信される、全二重のデータ通信である。
【0027】
本実施形態において、コマンドデータ通信により授受されるデータは、2つの部分データから構成される。以下の説明では、1つ目の部分データをコマンドパケット、2つ目の部分データをデータパケットと呼ぶ。また、コマンドパケットとデータパケットを合わせて制御データと呼ぶ。すなわち、コマンドデータ通信は、カメラボディ100と交換レンズ200との間で制御データを送受信する通信である。レンズCPU203は、レンズ側第1通信回路212により部分データが受信される度に、受信された部分データに基づく制御処理(後述)を実行する。
【0028】
コマンドパケットとは、ボディCPU103からレンズCPU203に対する指令を表すデータである。本実施形態では、コマンドパケットは5バイトのデータであり、うち1バイトは他の4バイトのチェックサムである。なお本実施形態では、レンズCPU203からボディCPU103に送信されるコマンドパケットはダミーのデータとなっている。具体的には、レンズCPU203は5バイト分の「0」をコマンドパケットとして送信する。
【0029】
本実施形態において、ボディCPU103から送信されるコマンドパケットは、交換レンズ200が備える部材を駆動させる指令と、交換レンズ200に関する情報を送信させる指令と、のいずれかである。前者の指令としては、例えばフォーカスレンズ210dやブレ補正レンズ210eを駆動させる指令や、絞り210fを駆動させる指令などが挙げられる。後者の指令としては、交換レンズ200に情報の送信を要求する司令(例えば交換レンズ200の機種名、焦点距離情報(ズーム位置情報)、絞り位置、レンズ特性情報(光学収差情報)を送信させる指令)を送信させる指令などが挙げられる。
【0030】
データパケットとは、コマンドパケットに付随して送信されるデータであり、その内容はコマンドパケットの内容に応じて異なる。例えば、ボディCPU103から送信されたコマンドパケットがフォーカスレンズ210dを駆動させる指令を表していた場合、その後にボディCPU103が送信するデータパケットは、駆動対象(フォーカスレンズ210d、ブレ補正用レンズ210e、絞り210f等であり、以下ではこれらを駆動対象と称する)の駆動量および駆動方向を表すデータであり、レンズCPU203が送信するデータパケットは全て「0」のダミーデータである。また、ボディCPU103から送信されたコマンドパケットがレンズ情報(例えば交換レンズ200の機種名)を送信させる指令を表していた場合、その後にボディCPU103が送信するデータパケットは全て「0」のダミーデータであり、レンズCPU203が送信するデータパケットは当該レンズ情報を表すデータ(例えば交換レンズ200の機種名を表す文字列データ)とチェックサムである。なお、データパケットについても、コマンドパケットと同様に1バイトのチェックサムが付加される。
【0031】
図4は、コマンドデータ通信を表す波形図である。コマンドデータ通信はボディCPU103により開始される。ボディCPU103はまず、ボディ側第1通信回路112の内部に備わるバッファメモリへ、送信するコマンドパケットを書き込む。次にボディCPU103が、ボディ側第1通信回路112に送信開始信号を送出する。送信開始信号が入力されたボディ側第1通信回路112は、信号線RDYの信号レベルを確認する。レンズ側第1通信回路212は、通信の準備が完了していない場合には信号線RDYの信号レベルをHにする。ボディ側第1通信回路112は、信号線RDYの信号レベルがHである場合には、信号レベルがLになるまで各信号の送出を行わない。
【0032】
信号線RDYの信号レベルがLであれば、ボディ側第1通信回路112はクロック信号401およびコマンドパケット信号402の送出を開始する(図4の時刻T1)。ここでコマンドパケット信号402とは、上記のコマンドパケット(チェックサムを含む)を表すシリアル信号である。クロック信号401は信号線CLKに、コマンドパケット信号402は信号線DATABにそれぞれ送出される。このときボディ側第1通信回路112の内部のバッファメモリには、5バイトのコマンドパケット(チェックサムを含む)が書き込まれている。従って、クロック信号401およびコマンドパケット信号402は5バイト分の長さとなっている。
【0033】
レンズ側第1通信回路212は、ボディ側第1通信回路112により送出されたクロック信号401に同期して、信号線DATALにコマンドパケット信号403を送出する。前述の通り、レンズ側第1通信回路212から送信されるコマンドパケットは、5バイト分の「0」である。従って、コマンドパケット信号403は、コマンドパケット信号402と同一長すなわち5バイト分の「0」を表すシリアル信号である。
【0034】
ボディ側第1通信回路112は、信号線DATALに送出されたコマンドパケット信号403を受信し、この信号が表すデータ(チェックサムを含む)をボディ側第1通信回路112の内部のバッファメモリに書き込む。同様に、レンズ側第1通信回路212は、信号線DATABに送出されたコマンドパケット信号402を受信し、この信号が表すデータをレンズ側第1通信回路212の内部のバッファメモリに書き込む。これらのデータの送受信はボディ側第1通信回路112およびレンズ側第1通信回路212によって行われる。つまり、ボディCPU103およびレンズCPU203は、これらのデータの送受信中に他の処理を実行することが可能である。
【0035】
コマンドパケットの授受が完了すると、レンズ側第1通信回路212は信号線RDYの信号レベルをHにすると共に、レンズCPU203に送受信完了の割り込みを発生させる(図4の時刻T2)。レンズCPU203はこの割り込みに応じて、第1制御処理404の実行を開始する。第1制御処理404は、データパケットの送信準備を行う処理である。レンズCPU203は第1制御処理404において、レンズ側第1通信回路212内部のバッファメモリから受信されたコマンドパケットを読み出し、メインメモリ(不図示)に書き込む。そして、このコマンドパケットの内容に基づいて(コマンドパケットの内容を解析して)、この後に送信するデータパケット(チェックサムを含む)を上記のバッファメモリに書き込む。
【0036】
例えば受信されたコマンドパケットが上述のいずれかの駆動対象を駆動させる指令を表していた場合、レンズCPU203は全て「0」のダミーデータを上述のバッファメモリに書き込む。また、受信されたコマンドパケットがレンズ情報(例えば交換レンズ200の機種名)を送信させる指令を表していた場合、レンズCPU203は要求されたレンズ情報を表すデータ(例えば交換レンズ200の機種名を表す文字列データ)とチェックサムを上述のバッファメモリに書き込む。なお、ここでバッファメモリに書き込まれたレンズ情報は、後述するコマンドデータ通信のデータ部分の通信の裏で、全二重通信によってカメラボディ100へ送信される。
【0037】
他方、コマンドパケットの授受の完了に応じて、ボディ側第1通信回路112もボディCPU103に送受信完了の割り込みを発生させる。ボディCPU103はこの割り込みに応じて、ボディ側第1通信回路112の内部に備わるバッファメモリへ、送信したコマンドパケットの内容に応じたデータパケットを書き込む。例えば送信したコマンドパケットが上述のいずれかの駆動対象を駆動させる指令を表していた場合、ボディCPU103は駆動対象の駆動量および駆動方向を表すデータを上述のバッファメモリに書き込む。また、送信したコマンドパケットが交換レンズ200の機種名を送信させる指令を表していた場合、ボディCPU103は全て「0」のダミーデータを上述のバッファメモリに書き込む。なお、ここでバッファメモリに用意されたレンズ情報は、後述するコマンドデータ通信のデータ部分の通信の裏で、全二重通信によってカメラボディ100へ送信される。
【0038】
次にボディCPU103が、ボディ側第1通信回路112に送信開始信号を送出する。ただし、この時点(図4の時刻T2)では信号線RDYの信号レベルがHとなっているため、ボディ側第1通信回路112はデータパケット信号の送出を開始しない。
【0039】
レンズCPU203は、第1制御処理404が完了すると、レンズ側第1通信回路212に送信許可信号を送出する。送信許可信号が入力されたレンズ側第1通信回路212は、信号線RDYの信号レベルをHからLにする(図4の時刻T3)。これによりボディ側第1通信回路112は、コマンドパケットと同様に、クロック信号405およびデータパケット信号406の送出を開始する。ここでデータパケット信号406は、ボディCPU103によりバッファメモリに書き込まれたデータパケットを表すシリアル信号である。またレンズ側第1通信回路212も、このクロック信号405に応じてデータパケット信号407の送出を開始する。ここでデータパケット信号407は、レンズCPU203によりバッファメモリに書き込まれたデータパケットを表すシリアル信号である。
【0040】
データパケットの授受が完了すると、コマンドパケットの場合と同様に、レンズ側第1通信回路212は信号線RDYの信号レベルをHにすると共に、レンズCPU203に送受信完了の割り込みを発生させる(図4の時刻T4)。レンズCPU203はこの割り込みに応じて、第2制御処理408の実行を開始する。第2制御処理408は、受信したデータパケットに基づく各種制御を行う処理である。レンズCPU203は第2制御処理408において、レンズ側第1通信回路212内部のバッファメモリから受信されたデータパケットを読み出し、メインメモリ(不図示)に書き込む。そして、先だって受信されたコマンドパケットと、今回受信されたデータパケットとに基づいて、適切な制御を行う。すなわち、レンズCPU203は、レンズ側第1通信回路212により制御データが受信されたことに応じて、制御データに基づく制御処理を実行する。
【0041】
例えば受信されたコマンドパケットが上述のいずれかの駆動対象を駆動させる指令を表していた場合、レンズCPU203はデータパケットが表す移動量および移動方向に基づいて、駆動対象を駆動させる。また、受信されたコマンドパケットがレンズ情報(例えば交換レンズ200の機種名)を送信させる指令を表していた場合、レンズCPU203はデータパケットに含まれるチェックサムを用いたデータパケットの整合性チェック処理と、次回の通信の為に受信済みのパケットを受信用バッファから削除する処理とを行う。
【0042】
他方、データパケットの授受の完了に応じて、ボディ側第1通信回路112もボディCPU103に送受信完了の割り込みを発生させる。ボディCPU103はこの割り込みに応じて、送信されたコマンドパケットの内容に応じた処理を、必要であれば実行する。例えば送信されたコマンドパケットが上述のいずれかの駆動対象を駆動させる指令を表していた場合、ボディCPU103は何も行わない。また、送信されたコマンドパケットがレンズ情報(例えば交換レンズ200の機種名)を送信させる指令を表していた場合、ボディCPU103は当該機種名をメインメモリ(不図示)に書き込んだり、可搬記憶媒体106に書き込んだりする。
【0043】
(ホットライン通信の説明)
ホットライン通信では、ボディ側第2通信回路113が出力するクロック信号に同期して、レンズ側第2通信回路213が一方的にデータ信号を送出する。つまり、ホットライン通信は、交換レンズ200からカメラボディ100にデータが送信される、一方通行のデータ通信である。
【0044】
ホットライン通信を行う際、レンズCPU203は、交換レンズ200の動作状態を表すレンズデータを生成する生成処理を実行する。本実施形態のレンズデータは、フォーカスレンズ210dの位置変化量を表す5バイトのデータである。
【0045】
図5は、ホットライン通信を表す波形図である。なお、図5(b)は図5(a)のうちの一期間Txを拡大した図である。ホットライン通信はコマンドデータ通信と同様に、ボディCPU103により開始される。ボディCPU103はまず、ボディ側第2通信回路113に通信開始信号を送出する。通信開始信号が入力されたボディ側第2通信回路113は、信号線HREQの信号レベルをHからLにする(図5(b)の時刻T6)。
【0046】
レンズ側第2通信回路213は、信号線HREQの信号レベルがHからLになったことに応じて、レンズCPU203に通信要求の割り込みを発生させる。この割り込みを受けたレンズCPU203は、レンズデータを生成する生成処理501の実行を開始する。生成処理501においてレンズCPU203は、直前のホットライン通信が完了した時点からの、フォーカスレンズ210dの位置変化量を取得し、レンズ側第2通信回路213内部のバッファメモリに書き込む。
【0047】
レンズCPU203は生成処理501の最後に、レンズ側第2通信回路213に送信指示信号を出力する。つまり、生成処理501は送信指示信号を出力する処理を含む。送信指示信号は、生成したレンズデータの送信指示を表す信号である。送信指示信号が入力されたレンズ側第2通信回路213は、信号線HANSの信号レベルをHからLにする(図5(b)の時刻T7)。
【0048】
ボディ側第2通信回路113は、信号線HANSの信号レベルがHからLになったことに応じて、クロック信号502の送出を開始する。クロック信号502は信号線HCLKに送出される。前述の通り、本実施形態においてレンズデータは5バイトのデータである。従って、クロック信号502は5バイト分の長さとなっている。
【0049】
レンズ側第2通信回路213は、ボディ側第2通信回路113により送出されたクロック信号502に同期して、信号線HDATALにレンズデータ信号503を送出する。レンズデータ信号503は、レンズデータを表す5バイト分のシリアル信号である。すなわち、レンズ側第2通信回路213は、レンズCPU203によりレンズデータが生成されたことに応じて、第2伝送路302を介してカメラボディ100内のボディ側第2通信回路113にレンズデータを送信する。
【0050】
ボディ側第2通信回路113は、信号線HDATALに送出されたレンズデータ信号503を受信し、この信号が表すデータをボディ側第2通信回路113の内部のバッファメモリに書き込む。レンズデータの送受信はボディ側第2通信回路113およびレンズ側第2通信回路213によって行われる。つまり、ボディCPU103およびレンズCPU203は、レンズデータの送受信中に他の処理を実行することが可能である。
【0051】
レンズデータの授受が完了すると、レンズ側第2通信回路213は信号線HANSの信号レベルをHにする(図5(b)の時刻T8)。また、ボディ側第2通信回路113は、ボディCPU103に通信完了の割り込みを発生させる。ボディCPU103はこの割り込みに応じて、ボディ側第2通信回路113内部のバッファメモリから受信されたレンズデータを読み出す。その後、ボディCPU103はボディ側第2通信回路113に通信完了信号を送出する。通信完了信号が入力されたボディ側第2通信回路113は、信号線HREQの信号レベルをHにする。
【0052】
ボディCPU103は、以上に説明したホットライン通信を、図5(a)に示す所定間隔Tn毎(例えば1〜数ミリ秒毎)に実行する。すなわち、レンズCPU203は生成処理を所定間隔Tn毎に実行する。これにより、ボディCPU103は常に最新のレンズデータを保持する。ボディCPU103はこのレンズデータを利用して、例えば自動焦点調節などの制御を行う。
【0053】
(ホットライン通信の優先性の説明)
コマンドデータ通信とホットライン通信とは互いに独立している。すなわち、コマンドデータ通信とホットライン通信とは同時に行うことが可能である。しかしながら、交換レンズ200内のレンズCPU203は、2つの処理を同時に実行することはできない。従って、コマンドデータ通信のために必要な処理である第1制御処理および第2制御処理(以下、これら2つの処理を制御処理と呼ぶ)と、ホットライン通信のために必要な処理である生成処理と、は同時に実行することができない。
【0054】
本実施形態のレンズCPU203は、制御処理と生成処理とが同時に生じた場合に、生成処理を優先させる。以下、制御処理と生成処理とが同時に生じる場合について、具体的に2つの例を挙げて説明する。
【0055】
図6は、制御処理の実行中に生成処理が生じた場合の波形図である。図6では、まず時刻T10において、コマンドデータ通信が開始される。具体的には、ボディ側第1通信回路112によりクロック信号601とコマンドパケット信号602とが送出されると共に、レンズ側第1通信回路212によりコマンドパケット信号603が送出される。
【0056】
その後時刻T11において、コマンドパケット信号602とコマンドパケット信号603との授受が完了し、レンズCPU203が第1制御処理604(例えば要求されたレンズ情報の準備処理)を開始する。ただし図6では、この第1制御処理604の実行中である時刻T12に、ボディ側第2通信回路113が信号線HREQの信号レベルをHからLにする。すなわち、第1制御処理604の実行中に、ボディCPU103がボディ側第2通信回路113に通信開始信号を送出する。その結果、第1制御処理604の実行中である時刻T12において、生成処理605(例えばフォーカスレンズ210dの位置情報の生成処理)が生じる。
【0057】
このような場合、レンズCPU203が時刻T12において、第1制御処理604を一時中断し、生成処理605の実行を開始する。そして、生成処理605の実行が完了する時刻T13において、一時中断した第1制御処理604の実行を再開する。また、生成処理605の実行が完了した結果、時刻T13においてレンズ側第2通信回路213が信号線HANSの信号レベルをHからLにする。これに応じて、ボディ側第2通信回路113によるクロック信号607の送出と、レンズ側第2通信回路213によるレンズデータ信号608の送出と、が開始される。その後、時刻T15においてレンズデータ信号608の送出が完了し、時刻T16においてホットライン通信が完了する。
【0058】
他方、コマンドデータ通信においては、時刻T14に第1制御処理604が完了したことに伴い、ボディ側第1通信回路112によるクロック信号609およびデータパケット信号610の送出と、レンズ側第1通信回路212によるデータパケット信号611の送出が開始される。前述の通り第1伝送路301と第2伝送路302とは互いに独立しているので、時刻T14から時刻T15の間、これら2つの伝送路を用いた通信が並列に実行される。その後、時刻T17にレンズCPU203が第2制御処理612を開始し、時刻T18においてコマンドデータ通信が完了する。
【0059】
このように、レンズCPU203は、制御処理の実行中に生成処理が開始された場合には、制御処理を一時中断する。レンズCPU203は更に、制御処理を一時中断した後、生成処理が完了したときに制御処理を再開させる。結果として、レンズCPU203による生成処理およびレンズ側第2通信回路213によるレンズデータの送信が、レンズCPU203による制御処理およびレンズ側第1通信回路212による制御データの送受信よりも優先される。
【0060】
図7は、生成処理の実行中に制御処理が生じた場合の波形図である。図7では、まず時刻T19において、コマンドデータ通信が開始される。具体的には、ボディ側第1通信回路112によりクロック信号701とコマンドパケット信号702とが送出されると共に、レンズ側第1通信回路212によりコマンドパケット信号703が送出される。
【0061】
図7では、これら3つの信号の送出中である時刻T20に、ボディ側第2通信回路113が信号線HREQの信号レベルをHからLにする。すなわち、これら3つの信号の送出中に、ボディCPU103がボディ側第2通信回路113に通信開始信号を送出する。その結果、時刻T20において、レンズCPU203が生成処理605を開始する。
【0062】
その後時刻T21において、コマンドパケット信号602とコマンドパケット信号603との授受が完了する。すなわち、第1制御処理705が生じる。しかしながら、時刻T21において、レンズCPU203は生成処理704を実行中である。本実施形態ではこのような場合、レンズCPU203は第1制御処理705を開始しない。その代わりレンズCPU203は、生成処理704が完了した時刻T22に第1制御処理705を開始する。これにより、第1制御処理705が完了する時刻は、本来より遅い時刻T23になる。従って、その後のボディ側第1通信回路112によるクロック信号708およびデータパケット信号709の送出、レンズ側第1通信回路212によるデータパケット信号710の送出、レンズCPU203による第2制御処理711の実行も、本来より遅くなる。すなわち、コマンドデータ通信に必要な時間が、第1制御処理705と生成処理704とが同時に生じない場合よりも長くなる。
【0063】
他方、ホットライン通信は、図5に示す場合と同様に進行する。すなわち、生成処理704の実行が完了した時刻T22に、クロック信号706およびレンズデータ信号707の送出が開始され、時刻T24にこれらの信号の送出が完了する。そして、時刻T25においてホットライン通信が完了する。時刻T20から時刻T25までの時間は、図5に示した時刻T6から時刻T9までの時間と同じ長さである。
【0064】
このように、レンズCPU203は、生成処理の実行中には、制御処理を開始しない。レンズCPU203はその後、生成処理が完了した時点で制御処理を開始する。結果として、レンズCPU203による生成処理およびレンズ側第2通信回路213によるレンズデータの送信が、レンズCPU203による制御処理およびレンズ側第1通信回路212による制御データの送受信よりも優先される。
【0065】
(交換レンズがマニュアルフォーカスレンズである場合)
交換レンズがマニュアルフォーカスレンズである場合について以下に説明する。なお、以下の説明では、マニュアルフォーカスレンズである交換レンズ800に関し、オートフォーカスレンズである交換レンズ200と同様の構成については、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。以下の説明では、上述の説明との相違点を主に説明する。図8は、カメラボディ100に交換レンズ800を装着した本実施形態に係るカメラシステム1の構成を示す断面図である。交換レンズ800は、複数のレンズ210a〜210eから構成される撮像光学系210と絞り210fとを内蔵する。
【0066】
これら複数のレンズのうち例えばレンズ210dは、焦点調節のために駆動されるフォーカスレンズである。またレンズ210eはブレ補正用レンズである。レンズCPU203はボディCPU103からの指示に従って、不図示のアクチュエータ(モータ等)によりブレ補正レンズ210e、絞り210f等を駆動させる。なお、交換レンズ800には、フォーカスレンズ210dを駆動するアクチュエータに代えて、ユーザが手動で操作する不図示のフォーカス環が設けられている。ユーザは、この不図示のフォーカス環を操作することで、ピント合わせを行う。
【0067】
図9は、カメラボディ100と交換レンズ800との間の伝送路の詳細を示すブロック図である。レンズ側第2通信回路213は通信端子OHANSを備える。ボディ側第2通信回路113は、4つの通信端子OHREQ、IHANS、OHCLK、およびIHDATALを備える。第2伝送路302は、4本の信号線HREQ、HANS、HCLK、およびHDATALにより構成される。なお、交換レンズ800には、4本の信号線HREQ、HANS、HCLK、HDATALのうち、信号線HANSだけが設けられている。
【0068】
交換レンズ800には、上述したように、接点310L,320Lが設けられている。接点310Lは、第1伝送路301についての交換レンズ側の接点(レンズ側接点)311L,312L,313L,314Lを含む。また、交換レンズ800では、第2伝送路302の4本の信号線のうちの3本の信号線HREQ、HCLK、HDATALが存在していないが、接点320Lについては、4つのボディ側接点321B,322B,323B,324Bに対応する全てのレンズ側接点321L,322L,323L,324Lが設けられている。そのため、オートフォーカスレンズである交換レンズ200と、接点の部品の共通化が図れ、コストダウンできる。また、交換レンズ800のカメラボディ100への装着時の感触や、ボディ側接点321B,322B,323B,324Bとの当たり具合などが交換レンズ200とほとんど変化せず、接点310B,320Bと接点310L,320Lとの接触状態が安定して通信の安定性が得られるなどの利点がある。さらに、現在利用していないレンズ側接点321L,323L,324Lの将来的な利用に資する。
【0069】
レンズ側第2通信回路213は、マニュアルフォーカスレンズであることを示す信号を出力する。すなわち、レンズ側第2通信回路213は、信号線HANSの信号レベルを常にLにする。これにより、カメラボディ100側では、次のような制御が行われる。
【0070】
カメラボディ100に交換レンズ800が取り付けられると、上述したように、ボディCPU103が、ボディ側第1通信回路112で信号線RDYの信号レベルがハイインピーダンス状態からHまたはLへ変化したことを検出する。そして、上述したように、ボディCPU103が、ボディ側第2通信回路113で検出される信号線HANSの信号レベルがHであるかLであるかを判断する。カメラボディ100に交換レンズ800が取り付けられた場合には、上述したように、信号線HANSの信号レベルが常にLであるため、ボディCPU103は、カメラボディ100にマニュアルフォーカスレンズである交換レンズ800が取り付けられたものと判断する。そのため、たとえば、カメラボディ100に取り付けられた交換レンズがオートフォーカスレンズであるかマニュアルフォーカスレンズを判断する際にコマンドデータ通信によって交換レンズ側からデータを受信するような場合と比べて、迅速な判断が可能となる。
【0071】
カメラボディ100にマニュアルフォーカスレンズである交換レンズ800が取り付けられたものと判断した場合、ボディCPU103は、フォーカスレンズ210dの駆動に係る演算に必要なデータの通信を除き、カメラボディ100に交換レンズ200が取り付けられたときと同様の各種通信を行うよう、ボディ側第1通信回路112を制御する。なお、ボディCPU103は、上述したようなレンズデータの取得に係るホットライン通信を行わない。また、ボディCPU103は、フォーカスレンズ210dの駆動に係る演算を除き、カメラボディ100に交換レンズ200が取り付けられたときと同様の各種演算を実行する。
【0072】
上述した実施の形態によるカメラシステムによれば、次の作用効果が得られる。
(1)レンズCPU203は、第1伝送路301を介して受信された制御データに基づく所定の制御処理よりも、第2伝送路302を介して送信するレンズデータを生成する生成処理を優先させる。このようにしたので、第1伝送路301と第2伝送路302の各々を制御するための制御処理と生成処理とが同時に生じた場合であっても、正常に通信を行うことができる。
【0073】
(2)レンズCPU203は、制御処理の実行中に生成処理が開始された場合には、制御処理を一時中断する。このようにしたので、カメラボディ100に対してレンズデータを遅滞なく送信することができる。
【0074】
(3)レンズCPU203は、制御処理を一時中断した後、生成処理が完了したときに制御処理を再開させる。このようにしたので、生成処理を優先して実行するようにしたにも関わらず、コマンドデータ通信が破綻することがない。
【0075】
(4)レンズCPU203は、生成処理の実行中には制御処理を開始しない。このようにしたので、カメラボディ100に対してホットライン通信によりレンズデータを遅滞なく送信することができる。
【0076】
(5)制御データは複数の部分データから構成され、レンズCPU203は、レンズ側第1通信回路212により部分データが受信される度に、部分データに基づく制御処理を実行する。このようにしたので、制御処理が小刻みになり、レンズCPU203の空き時間をより有効に利用することができる。
【0077】
(6)交換レンズ800では、信号線HANSの信号レベルが常にLとなるように構成した。このようにしたので、たとえば、カメラボディ100に取り付けられた交換レンズがオートフォーカスレンズであるかマニュアルフォーカスレンズを判断する際にコマンドデータ通信によって交換レンズ側からデータを受信するような場合と比べて、迅速な判断が可能となる。
【0078】
(7)交換レンズ800では、マニュアルフォーカスレンズには存在しない信号線に係るレンズ側接点も含めて、4つのボディ側接点321B,322B,323B,324Bに対応する全てのレンズ側接点321L,322L,323L,324Lを設けている。このようにしたので、オートフォーカスレンズである交換レンズ200と、接点の部品の共通化が図れ、コストダウンできる。また、交換レンズ800のカメラボディ100への装着時の感触や、ボディ側接点321B,322B,323B,324Bとの当たり具合などが交換レンズ200とほとんど変化せず、接点310B,320Bと接点310L,320Lとの接触状態が安定して通信の安定性が得られるなどの利点がある。さらに、現在利用していないレンズ側接点321L,323L,324Lの将来的な利用の際も接点周辺の設計変更や接点310L,320Lの部品の変更などが不要である。
【0079】
(8)カメラボディ100にマニュアルフォーカスレンズである交換レンズ800が取り付けられたものと判断した場合、フォーカスレンズ210dの駆動に係る演算や、データの通信を行わないように構成した。このようにしたので、無駄な演算や通信を省略でき、効率的である。
【0080】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
【0081】
(変形例1)
コマンドデータ通信は、全二重の通信でなくてもよい。少なくともカメラボディ100から交換レンズ200に制御データを送信可能であれば、本発明を適用することが可能である。
【0082】
(変形例2)
コマンドデータ通信において送信される制御データは、2つより多くの部分データに分割されていてもよいし、複数の部分データに分割されていなくてもよい。また、制御データの長さは上述の実施の形態で説明したものと異なっていてもよい。例えば、制御データが可変長であるとしてもよい。
【0083】
(変形例3)
コマンドパケットにより表されるボディCPU103からレンズCPU203への指令は、上述の実施の形態で説明した以外のものであってもよい。例えば、フォーカスレンズ210d以外の部材(例えばズームレンズやブレ補正レンズ、絞り等)を駆動させる指令であってもよいし、交換レンズ200の機種名以外の情報(例えば焦点距離情報(ズーム位置情報)や絞り位置情報、レンズ特性情報(光学収差情報)等)を送信させる指令であってもよい。また、第1制御処理および第2制御処理の内容が、上述の実施の形態とは異なっていてもよい。
【0084】
(変形例4)
第1伝送路301および第2伝送路302の構成は、図3に示した構成に限定されない。例えば、図3に示した信号線以外の信号線が存在してもよい。また、コマンドデータ通信およびホットライン通信の通信手順が、図4および図5に示した手順とはことなっていてもよい。
【0085】
(変形例5)
ホットライン通信において交換レンズ200がカメラボディ100に送信するデータは、フォーカスレンズ210dの位置情報に限られるものではない。例えば、絞りの位置情報やブレ補正レンズの位置情報を送信するようにしてもよい。この場合、これらいずれか1つの情報を送信するようにしてもよいし、これら複数の情報を一組として送信するようにしてもよい。
【0086】
(変形例6)
交換レンズ800では、レンズ側第2通信回路213が信号線HANSの信号レベルを常にLにするように構成したが、このような構成に限らない。例えば、レンズ側第2通信回路213を設けずに、信号線HANSを単にグランドレベルに落とすように構成してもよい。
【0087】
本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0088】
100 カメラボディ
103 ボディCPU
112 ボディ側第1通信回路
113 ボディ側第2通信回路
200 交換レンズ
203 レンズCPU
212 レンズ側第1通信回路
213 レンズ側第2通信回路
301 第1伝送路
302 第2伝送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オートフォーカス式の交換レンズとの間で各種信号を送受信する際に、前記オートフォーカスレンズのフォーカスレンズの駆動に関する駆動指令信号を第1伝送路を介して送信し、前記フォーカスレンズの位置に関するレンズデータを前記第1伝送路とは異なる第2伝送路を介して受信し、前記第2伝送路が前記レンズデータの送信に係る通信開始を要求する信号を送信するための第1のボディ側信号線と、通信準備が完了したことを示す信号を前記オートフォーカスレンズから受信するための第2のボディ側信号線と、前記レンズデータを前記オートフォーカスレンズから受信するための第3のボディ側信号線とを含み、前記第1のボディ側信号線に接続された第1のボディ側接点と、前記第2のボディ側信号線に接続された第2のボディ側接点と、前記第3のボディ側信号線に接続された第3のボディ側接点とを有するカメラボディに着脱可能に取り付けられるマニュアルフォーカス式の交換レンズであって、
前記カメラボディに取り付けられると前記第1のボディ側接点と電気的に接続される第1のレンズ側接点と、
前記カメラボディに取り付けられると前記第2のボディ側接点と電気的に接続される第2のレンズ側接点と、
前記カメラボディに取り付けられると前記第3のボディ側接点と電気的に接続される第3のレンズ側接点と、
前記カメラボディに取り付けられた交換レンズがマニュアルフォーカスレンズであることを示す信号を前記第2のレンズ側接点を介して出力する識別信号出力手段と、を備えることを特徴とするマニュアルフォーカス式の交換レンズ。
【請求項2】
請求項1に記載のマニュアルフォーカス式の交換レンズにおいて、
前記カメラボディは、前記第2伝送路を介して受信した前記レンズデータに基づいて前記駆動指令信号を生成することを特徴とするマニュアルフォーカス式の交換レンズ。
【請求項3】
カメラボディと、前記カメラボディに着脱可能に取り付けられる交換レンズとを有するカメラシステムであって、
前記カメラボディは、
オートフォーカス式の交換レンズ(オートフォーカスレンズ)との間で各種信号を送受信するボディ側送受信手段と、
前記オートフォーカスレンズとの間で前記ボディ側送受信手段が各種信号を送受信するためのボディ側第1伝送路および前記ボディ側第1伝送路とは異なるボディ側第2伝送路と、
前記カメラボディに取り付けられた交換レンズが前記オートフォーカスレンズであるか否かを判断する判断手段と、
前記オートフォーカスレンズのフォーカスレンズの駆動に関する駆動指令信号を生成する駆動指令信号生成手段とを備え、
前記ボディ側送受信手段は、前記判断手段で前記カメラボディに取り付けられた交換レンズがオートフォーカスレンズであると判断されると、少なくとも、前記駆動指令信号生成手段で生成された前記駆動指令信号を前記ボディ側第1伝送路を介して送信し、
前記ボディ側送受信手段は、前記判断手段で前記カメラボディに取り付けられた交換レンズがオートフォーカスレンズであると判断されると、前記フォーカスレンズの位置に関するレンズデータの送信に係る通信開始を要求する信号を前記ボディ側第2伝送路を介して前記オートフォーカスレンズへ送信するとともに、前記オートフォーカスレンズから送信される前記レンズデータを前記ボディ側第2伝送路を介して受信し、
前記ボディ側第2伝送路は、前記レンズデータの送信に係る通信開始を要求する信号を送信するための第1のボディ側信号線と、通信準備が完了したことを示す信号を前記オートフォーカスレンズから受信するための第2のボディ側信号線と、前記レンズデータを前記交換レンズから受信するための第3のボディ側信号線とを含み、
前記第1のボディ側信号線に接続された第1のボディ側接点と、
前記第2のボディ側信号線に接続された第2のボディ側接点と、
前記第3のボディ側信号線に接続された第3のボディ側接点とを備え、
前記判断手段は、前記第2のボディ側信号線を介して前記交換レンズから前記カメラボディに取り付けられた交換レンズがマニュアルフォーカス式の交換レンズ(マニュアルフォーカスレンズ)であることを示す信号を受信すると、前記カメラボディに取り付けられた交換レンズがマニュアルフォーカスレンズであると判断し、前記第2のボディ側信号線を介して前記交換レンズから前記カメラボディに取り付けられた交換レンズがマニュアルフォーカスレンズであることを示す信号を受信しない場合には、前記カメラボディに取り付けられた交換レンズがオートフォーカスレンズであると判断し、
前記交換レンズは、
前記カメラボディに取り付けられると前記第1のボディ側接点と電気的に接続される第1のレンズ側接点と、
前記カメラボディに取り付けられると前記第2のボディ側接点と電気的に接続される第2のレンズ側接点と、
前記カメラボディに取り付けられると前記第3のボディ側接点と電気的に接続される第3のレンズ側接点と備え、
前記交換レンズは、前記マニュアルフォーカスレンズである場合には、前記カメラボディに取り付けられた交換レンズがマニュアルフォーカスレンズであることを示す信号を前記第2のレンズ側接点を介して出力する識別信号出力手段をさらに備えることを特徴とするカメラシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のカメラシステムにおいて、
前記駆動指令信号生成手段は、前記ボディ側第2伝送路を介して前記ボディ側送受信手段で受信した前記レンズデータに基づいて前記駆動指令信号を生成することを特徴とするカメラシステム。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載のマニュアルフォーカス式の交換レンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−61407(P2013−61407A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198419(P2011−198419)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】