説明

マリンホース

【課題】耐油性および耐寒性が共に優れ、極寒冷地でも使用することが可能なマリンホースの提供。
【解決手段】少なくとも樹脂層と内面ゴム層とを備え、該樹脂層が最内層を形成するマリンホース。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マリンホースに関する。
【背景技術】
【0002】
陸上に設置された原油等を貯蓄するオイルタンクと、海上に停泊するオイルタンカーとを結んで原油等のオイルを輸送するマリンホースとして、本願出願人により、例えば、特許文献1〜3に記載のマリンホースが提案されている。
特許文献1には、「内面ゴム層(1)、補強層(2)及びカバーゴム層(3)を積層したホース本体(A)の外側に、浮力材層(10)と外層ゴム層(11)とを積層したマリンホースにおいて、前記ホース本体(A)と浮力材層(10)との間に、流出流体バリヤー層(5)と、該流出流体バリヤー層(5)の外側に積層した補強層(6)と、流出流体バリアー層(5)とホース本体(A)で囲繞され、かつ前記補強層(6)の端部の上に巻回された端部漏洩防止ワイヤー(9)で密封された流出流体が漏洩しない流出流体吸収層(4)とを形成したことを特徴とするマリンホース。」が記載されている。
特許文献2には、「内面ゴム層の外側に設けられた耐圧コード層と、該耐圧コード層の外側を覆うカバーゴム層とを備えた液体移送用ホースにおいて、所定周波数の電波を送受信し、前記周波数の電波を受信したときに応答信号を送信すると共に移送対象の液体に接触すると発信特性が変化するトランスポンダを備え、該トランスポンダが前記内面ゴム層とカバーゴム層との間に配置されていることを特徴とする液体移送用ホース。」が記載されている。
特許文献3には、「最内層に配設されたゴムチューブ層上に、各繊維コードが互いに交差するように巻回された複数層の繊維補強コード層と、ホースの長手方向にスパイラル状に巻回したスチールワイヤー層と、この外側に複数層の前記と同様な繊維補強コード層とを順次積層させて本体耐圧コード層を形成し、最外層にカバーゴム層を被覆して成るマリンホースの構造において、前記スチールワイヤー層に最も近接する繊維補強コード層の繊維コードの配向角度を、35°以上〜55°未満の範囲に設定すると共に、層毎に変化させて構成して成るマリンホースの構造」が記載されている。
【0003】
また、このようなマリンホースは原油等のアロマ成分を多く含む流体の輸送に使用するため、耐油性(耐膨潤性)の観点から、内面ゴム層(ゴムチューブ層)には、一般的に、結合アクリロニトリル量が高〜極高のアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)が用いられている。
しかしながら、NBR中の結合アクリロニトリル量の増加に伴い、ゴムのぜい化温度が高く(−15〜−20℃程度)なることから、極低温(−35〜−40℃程度)下においては内面ゴム層での亀裂発生による流体漏れが懸念されるため、極寒冷地でのマリンホースの使用が困難になるといった耐寒性の問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開平7−167353号公報
【特許文献2】特開2000−9267号公報
【特許文献3】特開2002−257267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、耐油性および耐寒性がともに優れ、極寒冷地でも使用することが可能なマリンホースを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、最内層に(内面ゴム層の内側に)樹脂層を設けたマリンホースが、耐油性および耐寒性がともに優れ、極寒冷地でも使用することが可能なマリンホースとなることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記(1)〜(4)に記載のマリンホースを提供する。
【0007】
(1)少なくとも樹脂層と内面ゴム層とを備え、該樹脂層が最内層を形成するマリンホース。
【0008】
(2)上記樹脂層が、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂および塩ビ系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂からなる上記(1)に記載のマリンホース。
【0009】
(3)上記ポリアミド系樹脂が、ナイロン6(N6)および/またはナイロン11(N11)である上記(2)に記載のマリンホース。
【0010】
(4)上記内面ゴム層が、結合アクリロニトリル量が18〜33質量%であるアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)からなる上記(1)〜(3)のいずれかに記載のマリンホース。
【発明の効果】
【0011】
以下に説明するように、本発明によれば、耐油性および耐寒性がともに優れ、極寒冷地でも使用することが可能なマリンホースを提供することができ、極寒冷地においても、高アロマ成分の流体を安全に長期に輸送供給することが可能となり、また工期の中断、終了に伴い流体を除いた状態でマリンホースを保管した後であっても良好に使用を再開することが可能となるため非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のマリンホースは、少なくとも樹脂層と内面ゴム層とを備え、該樹脂層が最内層を形成するマリンホースであり、具体的には、ホース本体および取付フランジから構成され、該ホース本体が、樹脂層と内面ゴム層と補強層と中間ゴム層と浮力材層とカバーゴム層とをこの順に備えるマリンホースが好適に例示される。
【0013】
本発明のマリンホースの好適な実施態様の一例を図1および図2を用いて説明する。図1は本発明のマリンホースの好適な実施態様の一例を示す外観図であり、図2は図1に示すA−A線矢視方向の要部断面図である。
図1および図2に示すように、ホース10は、ホース本体11と取付フランジ12とから構成され、取付フランジ12は、複数のホース10を相互に連結するためにホース本体11の両端部に設けられている。
【0014】
ホース本体11は、最内層に樹脂層111が設けられ、その外側(外周側)に、内面ゴム層112が設けられ、その外側に、ホース10内を通過する油等の液体を保持する補強層113が設けられている。
【0015】
また、補強層113の外側に、内部にボディーワイヤ114aが埋設された中間ゴム層114が設けられ、ホース本体11をカバーするためのカバーゴム層115が施されて一体に構成されている。
さらに、カバーゴム層115の内側には、浮力材層116が充填され、海上等に容易に浮かぶようになっている。
【0016】
一方、取付フランジ12は、その円筒部121の外周面の周方向に沿ってホース本体11を取り付けるためのリング部122a、122b、122cが一体に設けられている。
ホース本体11の端部は、締結ワイヤ113b、114bによって取付フランジ12のリング部122a〜122c間に固定され、ホース本体11を形成するそれぞれの層の端部が接着接合されている。締結ワイヤ113b、114bは、補強層113および中間ゴム層114の端部に設けられている。
【0017】
次に、樹脂層および内面ゴム層ならびに補強層、中間ゴム層、浮力材層およびカバーゴム層について詳述する。
【0018】
<樹脂層>
本発明のマリンホースを構成する樹脂層は、従来公知の樹脂により形成されるものであれば特に限定されず、1層単独で形成されていても、複数層で形成されていてもよい。
このような樹脂層を形成する樹脂材料としては、具体的には、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、塩ビ系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂、ポリビニル系樹脂等が挙げられ、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0019】
このような樹脂層により最内層が形成されていれば、得られる本発明のマリンホースは、原油等のアロマ成分を多く含む流体を輸送しても、該流体と接触する部分の膨潤を抑制(質量変化率を20%以下に)することができ、また、極寒冷地においても該流体と接触する部分での亀裂発生がないことから、耐油性および耐寒性がともに優れる。そのため、極寒冷地においても、高アロマ成分の流体を安全に長期に輸送供給することが可能となり、また工期の中断、終了に伴い流体を除いた状態でマリンホースを保管した後であっても良好にその使用を再開することが可能となる。
【0020】
ポリアミド系樹脂としては、具体的には、例えば、ナイロン6(N6)、ナイロン6,6(N6,6)、ナイロン4,6(N4,6)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン6,10(N6,10)、ナイロン6,12(N6,12)、ナイロン6/6,6共重合体(N6/6,6)、ナイロン6/6,6/6,10共重合体(N6/6,6/6,10)、ナイロンMXD6(MXD6)、ナイロン6T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン6,6/PP共重合体、ナイロン6,6/PPS共重合体等が挙げられ、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0021】
ポリエチレン系樹脂としては、具体的には、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)等が挙げられ、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0022】
ポリプロピレン系樹脂としては、具体的には、例えば、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン等が挙げられ、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
ポリエステル系樹脂としては、具体的には、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられ、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0024】
フッ素系樹脂としては、具体的には、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等が挙げられ、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
塩ビ系樹脂としては、具体的には、例えば、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体等が挙げられ、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
ポリエーテル系樹脂としては、具体的には、例えば、ポリフェニレンオキシド(PPO)、変性ポリフェニレンオキシド(変性PPO)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられ、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
ポリメタクリレート系樹脂としては、具体的には、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル等が挙げられ、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
ポリビニル系樹脂としては、具体的には、例えば、ビニルアルコール/エチレン共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体等が挙げられ、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0027】
これらのうち、耐油性に特に優れる理由からポリアミド系樹脂により形成される樹脂層が好ましく、さらに、得られる本発明のマリンホースに柔軟性および可撓性を付与することができる理由からナイロン6(N6)とナイロン11(N11)との混合樹脂(ブレンド)により形成される樹脂層がより好ましい。
【0028】
本発明のマリンホースにおいては、上記樹脂層は、樹脂単独で形成されていてもよいが、マリンホースとしての性能を確保できる観点から、各種添加剤を含有させた樹脂組成物により形成されていてもよい。
必要に応じて含有させてもよい添加剤としては、具体的には、例えば、充填剤、補強剤、可塑剤、老化防止剤、軟化剤、粘着付与剤、滑剤、分散剤、加工助剤等を挙げることができる。
【0029】
また、本発明のマリンホースにおいては、上記樹脂層の厚さは、本発明のマリンホースが用いられる用途(例えば、輸送する流体の種類)によって適宜変更することができるため特に限定されないが、原油等のアロマ成分を多く含む流体を輸送する場合は0.1〜2mm程度のフィルム状であるのが好ましい。
【0030】
<内面ゴム層>
本発明のマリンホースを構成する内面ゴム層は、マリンホース(水中ゴム構造物)に用いられる従来公知の内面ゴム層(ゴムチューブ層)を用いることができ、1層単独で形成されていても、複数層で形成されていてもよい。
このような内面ゴム層を形成するゴム材料としては、具体的には、例えば、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、アクリロニトリル−ブタジエン−イソプレンゴム(NBIR)、アクリロニトリル−イソプレンゴム(NIR)等が挙げられ、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
これらのうち、耐油性に優れる観点からNBRを用いることが好ましいが、本発明においては、上述したように、最内層を形成する上記樹脂層が耐油性に優れる理由から、従来公知のマリンホースの内面ゴム層に用いられている結合アクリロニトリル量が高〜極高のNBRを用いる必要はなく、結合アクリロニトリル量が18〜33質量%であるNBRを好適に用いることができる。結合アクリロニトリル量がこの範囲であれば、形成される内面ゴム層が極寒冷地においても亀裂を発生しないため、最内層を形成する樹脂層に亀裂を引き起こす原因にもならず、また、仮に樹脂層が破損し、原油等が内面ゴム層へ浸透してきた場合であっても、直ちに膨潤することはないという理由から好ましい。
【0031】
本発明のマリンホースにおいては、上記内面ゴム層は、ゴム単独で形成されていてもよいが、マリンホースとしての性能を確保できる観点から、各種添加剤を含有させたゴム組成物により形成されていてもよい。
必要に応じて含有させてもよい添加剤としては、具体的には、例えば、加硫剤、加硫促進剤、充填剤、補強剤、可塑剤、老化防止剤、軟化剤、粘着付与剤、滑剤、分散剤、加工助剤等を挙げることができる。
【0032】
また、本発明のマリンホースにおいては、上記内面ゴム層の厚さは、本発明のマリンホースが用いられる用途(例えば、輸送する流体の種類)によって適宜変更することができるため特に限定されないが、原油等のアロマ成分を多く含む流体を輸送する場合は4〜12mm程度であるのが好ましい。
【0033】
<補強層>
本発明のマリンホースに備えられていてもよい補強層は、マリンホースに用いられる従来公知の補強層を用いることができ、1層単独で形成されていても、複数層で形成されていてもよい。図3は、補強層の構成を説明する図である。
図2および図3に示すように、複数の補強層113は、それぞれ、ホース本体11の長手方向に対して傾斜して配列したコード113aを複数有している。また、補強層113は、ホース長手方向に対する配向角度(θ1)の異なるコード113aが互いに交差するように積層され、積層数がそれぞれ等しくなるように構成されている。
【0034】
また、コード113aの配向角度θ1は、30度<θ1<60度であるのが好ましく、35度<θ1≦55度であるのがより好ましい。コード113aの配向角度θ1がこの範囲であれば、ホース本体11の可撓性および柔軟性が優れる。
【0035】
このような補強層としては、具体的には、例えば、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、芳香族ポリアミド繊維、スチールワイヤー等からなるコードを撚り合わせて構成されるものが挙げられる。
【0036】
本発明のマリンホースにおいては、上記補強層の厚さは、本発明のマリンホースが用いられる用途(例えば、輸送する流体の種類)によって適宜変更することができるため特に限定されないが、原油等のアロマ成分を多く含む流体を輸送する場合は5〜25mm程度であるのが好ましい。
【0037】
<中間ゴム層>
本発明のマリンホースに備えられていてもよい中間ゴム層は、マリンホースに用いられる従来公知の中間ゴムを用いることができ、1層単独で形成されていても、複数層で形成されていてもよい。
このような中間ゴム層を形成するゴム材料としては、具体的には、例えば、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)、塩素化ブチルゴム(Cl−IIR)、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)等が挙げられ、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
これらのうち、天然ゴム(NR)を用いることが得られるマリンホースの強度を保つという理由から好ましい。
【0038】
本発明のマリンホースにおいては、上記中間ゴム層は、ゴム単独で形成されていてもよいが、マリンホースとしての性能を確保できる観点から、各種添加剤を含有させたゴム組成物により形成されていてもよい。
必要に応じて含有させてもよい添加剤としては、内面ゴム層を形成するゴム組成物として上記で例示した各種添加剤が挙げられる。
【0039】
また、本発明のマリンホースにおいては、上記中間ゴム層の厚さは、本発明のマリンホースが用いられる用途(例えば、輸送する流体の種類)によって適宜変更することができるため特に限定されないが、原油等のアロマ成分を多く含む流体を輸送する場合は5〜15mm程度であるのが好ましい。
【0040】
<浮力材層>
本発明のマリンホースに備えられていてもよい浮力材層は、マリンホースに用いられる従来公知の浮力材層を用いることができ、1層単独で形成されていても、複数層で形成されていてもよい。
このような浮力材層を形成する材料としては、具体的には、例えば、発泡性のフローター等が挙げられる。
【0041】
本発明のマリンホースにおいては、上記浮力材層の厚さは、本発明のマリンホースが用いられる用途(例えば、輸送する流体の種類)によって適宜変更することができるため特に限定されないが、原油等のアロマ成分を多く含む流体を輸送する場合は100〜200mm程度であるのが好ましい。
【0042】
<カバーゴム層>
本発明のマリンホースに備えられていてもよいカバーゴム層は、マリンホースに用いられる従来公知のカバーゴム層を用いることができ、1層単独で形成されていても、複数層で形成されていてもよい。
このようなカバーゴム層を形成するゴム材料としては、具体的には、例えば、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、塩素化ブチルゴム(Cl−IIR)、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)等が挙げられ、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
これらのうち、天然ゴム(NR)を用いることが、得られるマリンホースの耐磨耗性および強度の保持に優れるという理由から好ましい。
【0043】
本発明のマリンホースにおいては、上記カバーゴム層は、ゴム単独で形成されていてもよいが、マリンホースとしての性能を確保できる観点から、各種添加剤を含有させたゴム組成物により形成されていてもよい。
必要に応じて含有させてもよい添加剤としては、内面ゴム層を形成するゴム組成物として上記で例示した各種添加剤が挙げられる。
【0044】
また、本発明のマリンホースにおいては、上記カバーゴム層の厚さは、本発明のマリンホースが用いられる用途(例えば、輸送する流体の種類)によって適宜変更することができるため特に限定されないが、原油等のアロマ成分を多く含む流体を輸送する場合は5〜15mm程度であるのが好ましい。
【0045】
本発明のマリンホースの製造方法は特に限定されず、マリンホースの製造方法として従来公知の方法を用いることができる。
具体的には、マンドレル上に、上記樹脂層、上記内面ゴム層、上記補強層、上記中間ゴム、上記浮力材層および上記カバーゴム層をこの順に積層させた後に、加硫させて製造する方法が好適に例示される。
特に、樹脂層が0.1〜2mm厚程度のフィルム状のものである場合は、該樹脂層をマンドレル上に巻き付け、その外周に接着剤を介して上記内面ゴム層を積層させるのが好ましい。
【0046】
以上に説明したように、本発明のマリンホースは、最内層に上記樹脂層を備え、さらにその外側に上記内面ゴム層を備えることにより、耐油性および耐寒性がともに優れ、極寒冷地でも使用することが可能となる。特に、上記内面ゴム層を形成するゴム材料として、結合アクリロニトリル量が18〜33質量%であるアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)を用いていれば、より確実に耐油性および耐寒性を満たすマリンホースとなるため有用である。
【実施例】
【0047】
以下に実施例を挙げ、本発明のマリンホースについてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0048】
(内面ゴム層試験体1〜5)
内面ゴム層を形成するためのゴム組成物として、下記表1に示すNBR(括弧内の数値は結合アクリルニトリル量)100質量部に対して、下記表1に示す組成成分(質量部)を配合したものを用い、148℃×60分の加硫条件で、面圧3.0MPaでプレス加硫させた内面ゴム層試験体(サイズ:40mm×20mm×2mm)を作製した。
【0049】
【表1】

【0050】
なお、上記ゴム成分および各組成成分としては、以下に示すものを用いた。
・NBR(18%):perburan1845(Bayer社製)
・NBR(29%):Nipol 1043(日本ゼオン社製)
・NBR(33%):Nipol 1042(日本ゼオン社製)
・NBR(41%):Nipol 1041(日本ゼオン社製)
・NBR(44%):Nipol DN005(日本ゼオン社製)
・カーボンブラック:FT(旭カーボン社製)
・亜鉛華:酸化亜鉛3種(正同化学工業社製)
・ステアリン酸:ビーズステアリン酸(日本油脂社製)
・可塑剤:フタル酸ジオクチル(チッソ社製)
・硫黄:油処理硫黄(軽井沢精練所)
・加硫促進剤:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(ノクセラーCZ、大内新興化学工業社製)
【0051】
(樹脂層試験体)
最内層を形成する樹脂層として、下記表2に示す樹脂からなる樹脂層試験体(サイズ:40mm×20mm×0.2mm)を作製した。
【0052】
【表2】

【0053】
・ポリアミド系樹脂1:ナイロン6が70質量%、ナイロン11が10質量%、ポリオレフィンが20質量%となるようにブレンドされた樹脂組成物を用いた。
・ポリアミド系樹脂2:ザイテルST(デュポン社製)
・ポリエチレン系樹脂1:ポリエチレン(三井住友ポリオレフィン社製)
・ポリプロピレン系樹脂1:ポリプロピレン(出光石油化学社製)
・ポリエステル系樹脂1:ポリエチレンテレフタレート(東洋紡績社製)
・フッ素系樹脂1:ポリテトラフルオロエチレン(デュポン社製)
・塩ビ系樹脂1:ポリ塩化ビニル(信越化学工業社製)
【0054】
上記で得られた各種試験体について、以下に示す、耐油性および耐寒性の評価を行った。その結果を上記表1および表2に示す。
【0055】
<耐油性>
耐油性の評価は、得られた各種試験体を流体(FuelB)に室温下で1週間浸漬させ、浸漬前後の質量変化率(%)を測定することにより行った。浸漬前後の質量変化率が20%以下であれば、マリンホースとしての耐油性が優れる。
【0056】
<耐寒性>
耐寒性の評価は、得られた各種試験体が−35℃下で、外力を加え、完全に(180度)折り曲げた際に亀裂が発生するか否かを確認することにより行った。なお、上記表1および2には、亀裂の有無を記載し、亀裂がある場合は耐寒性に劣ることになり、亀裂がない場合は耐寒性に優れることとなる。
【0057】
表1および表2に示す結果より、マリンホースにおいて最内層が樹脂層で形成されていれば耐油性および耐寒性に優れることが分かり、特に結合アクリロニトリル量が18〜33%のNBRを用いることにより良好な耐油性と耐寒性が付与されることが分かった。これにより、耐油性および耐寒性に優れたマリンホースを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、本発明のマリンホースの好適な実施態様の一例を示す外観図である。
【図2】図2は、図1に示すA−A線矢視方向の要部断面図である。
【図3】図3は、補強層の構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0059】
10:ホース
11:ホース本体
12:取付フランジ
111:樹脂層
112:内面ゴム層
113:補強層
113a:コード
113b:締結ワイヤ
114:中間ゴム層
114a:ボディワイヤ
114b:締結ワイヤ
115:カバーゴム層
116:浮力材層
121:円筒部
122a、122b、122c:リング部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも樹脂層と内面ゴム層とを備え、該樹脂層が最内層を形成するマリンホース。
【請求項2】
前記樹脂層が、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂および塩ビ系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂からなる請求項1に記載のマリンホース。
【請求項3】
前記ポリアミド系樹脂が、ナイロン6(N6)および/またはナイロン11(N11)である請求項2に記載のマリンホース。
【請求項4】
前記内面ゴム層が、結合アクリロニトリル量が18〜33質量%であるアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)からなる請求項1〜3のいずれかに記載のマリンホース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−144878(P2006−144878A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−334383(P2004−334383)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】