説明

マルチキャリア変調信号受信装置

【課題】妨害信号量の検出値に誤差を含まず、誤り訂正の効果を最大限に引き出せることを可能としたマルチキャリア変調信号受信装置を提供する。
【解決手段】アンテナ部より信号を受信し、直交検波処理、FFT処理、等化処理、デインタリーブ処理、デマッピング処理、復号処理、エネルギー逆拡散処理、リード・ソロモン復号処理と通常の受信装置で行われている処理を行う。さらに、デマッピング処理部に入力される信号(等化後のシンボル点)を別途保持しておく一方で、リード・ソロモン復号結果のデータ列に対し、再び送信装置での変調処理と同じ手順で再度符号化処理を施す。このとき、エネルギー拡散処理、畳み込み符号処理およびQPSKや16QAM、64QAMなど多値変調QAM信号のマッピング処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチキャリア変調された信号を受信する際に、受信信号に重畳した妨害信号を検出し、影響を取り除く技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界各国において地上デジタル放送が開始され、従来のアナログテレビ放送からの置き換えが進められている。欧州の地上デジタル放送規格(DVB−T)や、日本の地上デジタル放送規格(ISDB−T)では、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)方式が採用され、多数の搬送波を用いることにより高い伝送容量の信号の伝送することができる。
【0003】
OFDM方式では、ガードインターバルと呼ばれる前後のシンボルからの干渉を防止するための仕組みにより、反射波による干渉の影響を受けにくくしたり、伝送信号をデジタル符号に変換し、誤り訂正符号処理を施すことにより、受信信号のノイズ耐性を向上させたりしている。特に、ISDB−T規格においては、インタリーブと呼ばれるデータの並び替えや、階層伝送と呼ばれるノイズ耐性が異なる複数の放送を伝送し視聴側で選択視聴する仕組みなども導入されており、さらに受信品質が低下した際にも安定した放送の視聴が行えるようになっている。前記の誤り訂正符号処理は一例であり、他にも様々な信号処理技術が組み込まれており、受信装置において適切な処理を施すことで、受信信号レベルの低下や電波障害があっても正常な受信状態を保つことが可能である。
【0004】
ここで、図8を用いて、日本の地上デジタル放送規格であるISDB−T方式の放送を受信するためのマルチキャリア変調信号受信装置の構成を説明する。マルチキャリア変調信号受信装置は、アンテナ部601と、チューナ部602と、A/D変換処理部603と、直交検波処理部611と、FFT処理部612と、等化処理部613と、デインタリーブ処理部621と、デマッピング処理部622と、ビットデインタリーブ処理部631と、復号処理部632と、エネルギー逆拡散処理部634と、RS(リード・ソロモン)復号処理部635と、TS(トランスポートストリーム)再生処理部671と、TSデコード処理部672と、MPEG(Moving Picture Experts Group)デコード処理部673とで構成されている。
【0005】
チューナ部602は、アンテナ部601により受信された信号から所定の周波数帯域の信号を選局し、A/D変換処理部603へと出力する。A/D変換処理部603は、チューナ部602から出力されたOFDM信号をサンプリングし、デジタル信号へと変換した上で、直交検波処理部611へと出力する。
【0006】
直交検波処理部611は、A/D変換処理部から入手したOFDM信号に、基準搬送波と同一周波数の正弦波信号を乗じてベースバンドのOFDM信号へと変換し、FFT処理部612へと出力する。
【0007】
FFT処理部612は、直交検波処理部611から出力されたベースバンドのOFDM信号から、有効シンボル期間の信号列を抽出する。そして、抽出した信号列に対し離散フーリエ変換を施し、複素信号を生成する。FFT処理部612は、離散フーリエ変換して得られた複素信号を等化処理部613へと出力する。
【0008】
等化処理部613は、FFT処理部621から複素信号を受け取る。FFT処理部から入手した複素信号は、FFTポイント数だけ存在し、その1つ1つがOFDMシンボルのデータとなっている。例えば、ISDB−T放送規格のモード3と呼ばれる運用規格に従えば、FFTポイント数は8192となり、出力される8192個の複素信号が得られる。このうち5617個が処理対象となる信号であり、これをOFDMシンボルと呼ぶ。OFDMシンボルのデータは、キャリア方向に12シンボル毎にSP(Scattered Pilot:スキャッタードパイロット)信号を含んでいる。また、SP信号は、時間方向に3シンボルずつずらして配置されている。よって等化処理部613は、OFDMシンボルから離散配置されたSP信号を検出・抽出する。
【0009】
次に、SP信号は、既知の信号であるため、抽出したSP信号を既知の複素信号値で除算することによりSPキャリア位置の送受間での伝送路特性を推定することができる。OFDM信号の中に離散的に配置されたSP信号位置の伝送路特性の推定値をもとに補間処理することで、SP信号の間にあるOFDMキャリアの伝送路特性も推定することができる。そして、算出した伝送路特性で各OFDMシンボルを除算することで、伝送路の影響を補償したOFDMシンボル点の情報が得られる。等化処理部613は伝送路の影響を補償したOFDMシンボル点の情報(以下、「受信したOFDMシンボル点」と呼ぶ)と、「受信したOFDMシンボル点」それぞれに対応する伝送路特性の推定結果の複素信号をデインタリーブ処理部621へと出力する。
【0010】
デインタリーブ処理部621は、等化処理部613から「受信したOFDMシンボル点」と伝送路特性の推定結果のデータ列を順次受け取る。そして、受け取ったデータ列の並び替えを行う。並び替えの規則は、ISDB−T規格で規定されており、送信側のインタリーブ処理において時間方向および周波数方向にランダムに並び替えられた信号を元の順序に戻す処理を行う。そして、デマッピング処理部622へと並び替えた「受信したOFDMシンボル点」と伝送路特性の推定結果のデータ列を出力する。
【0011】
デマッピング処理部622は、デインタリーブ処理部621から並び替えられた「受信したOFDMシンボル点」と伝送路特性の推定結果のデータ列を入手する。OFDMシンボルは、信号の送信側において、キャリア変調方式に従って複素平面上にマッピングされている。例えばキャリア変調方式が64QAMであれば、入手したビットデータに応じ64点のマッピング点のいずれかの信号へと変換される。
【0012】
よって、デマッピング処理部622では、「受信したOFDMシンボル点」から最も近いマッピング点を送信信号点とみなし、ビットデータを生成する。また、「受信したOFDMシンボル点」と「受信したOFDMシンボル点」から最も近いマッピング点との距離情報(以下、受信シンボル点の距離情報)と、別途デインタリーブ処理部621から入手した「受信したOFDMシンボル点」が含まれるキャリアの伝送路特性の大きさの情報を基に信頼性情報を生成する。
【0013】
この際、OFDMシンボル単位で前記受信点間の距離情報を一定期間累積し、OFDMシンボルが含まれるキャリアに含まれるキャリア毎のノイズ量を別途算出した上、キャリア毎のノイズ量、伝送路特性の推定結果および受信シンボル点の距離情報から信頼性情報を生成してもよい。以上のように信頼性情報を算出し後段の復号処理部で利用する処理は、「軟判定」と呼ばれる。そして、「受信したOFDMシンボル点」から最も近いマッピング点から生成したビットデータと信頼性情報とをビットデインタリーブ処理部631へと出力する。
【0014】
ビットデインタリーブ処理部631は、デマッピング処理部622より入手したビットデータと信頼性情報を、ISDB−T規格の規定に従い元の順序へと並び替えを行った後に、復号処理部632へと出力する。
【0015】
復号処理部632は、ビットデインタリーブ処理部631よりビットデータと信頼性情報を入手し、受け取ったビットデータを信頼性情報に応じて入力データの重み付けを行って復号処理を行う。現在、ビタビ復号と呼ばれる復号処理が広く用いられているが、他の復号アルゴリズムに沿った処理でもよい。復号処理部632、バイトデインタリーブ処理部633へと復号結果のデータ列を出力する。
【0016】
バイトデインタリーブ処理部633は、復号処理部632より入手した誤り訂正後のデータ列を受け取り、ISDB−T規格の規定に従い元の順序へと並び替えを行い、エネルギー逆拡散処理部634へとデータ列を出力する。
【0017】
エネルギー逆拡散処理部634は、バイトデインタリーブ処理部633より得られたデータ列をISDB−T規格の規定に従い信号の送信側で施されたエネルギー拡散処理を元に戻す処理を行い、変換後のデータ列をRS復号処理部635へと出力する。
【0018】
RS復号処理部635は、エネルギー拡散処理部634より入手したデータ列を受け取り付与されている外符号を用いてリード・ソロモン復号処理を行い、TS再生処理部671へとリード・ソロモン復号後のデータ列を出力する。
【0019】
TS再生処理部671は、RS復号処理部635からリード・ソロモン復号されたデータ列を入手する。RS復号処理部635から得られたリード・ソロモン復号されたデータ列は、トランスポートストリームのパケットとなっている。TS再生処理部671では、RS復号処理部635から得たトランスポートストリームのパケット数が伝送パラメータにより異なるため、適切な数のヌルパケットを補完し、伝送パラメータに依存せず一定のトランスポートストリームのパケット数が出力されるように調整する。TS再生処理部671は、ヌルパケットを補完した後のトランスポートストリームのパケットをTSデコード処理部672へと出力する。
【0020】
TSデコード処理部672は、TS再生処理部671から出力されるトランスポートストリームのパケットを入手し、トランスポートストリームに含まれる情報をもとに、ビデオパケット、オーディオパケット、PCR(Program Clock Reference)パケット等のパケットに分類し、MPEGデコード処理部673へと出力する。
【0021】
MPEGデコード処理部673は、ビデオデコーダおよびオーディオデコーダから構成される。ビデオデコーダは、TSデコード処理部672から入手したトランスポートストリームパケットのうちビデオパケットを抽出し、データを復号し画像データを生成する。オーディオデコーダは、TSデコード処理部672から入手したトランスポートストリームのうちオーディオパケットを抽出し、データを復号し音声データを生成する。
【0022】
そして、MPEGデコード処理部673は、PCRパケットに含まれる時間情報を基に、画像データと音声データの出力タイミングを調整した上で、画像データと音声データを表示装置等に出力する。
【0023】
以上のように図8に示した構成により、ISDB−T方式の放送波を受信した後、各種の処理を行った結果、画像や音声の視聴や記録が可能となる。
【0024】
また、図9を用いてエラー情報演算処理部146の処理手順を説明する。図9は、畳み込み符号処理部145にて畳み込み符号の生成を行う際に用いる符号化回路の構成例である。一方の符号の生成多項式G1=(122,1,0,0,1)、G2=(1,0,1,1,0,1,1)の拘束長k=7、符号化率1/2の符号化回路を示す。入力側から入ったデータが遅延回路に入力され、各遅延素子の出力を生成多項式に従って排他的論理和の演算を行い、X出力とY出力の2つのデータが出力される。
【0025】
しかしながら、デジタル放送では、受信信号レベルが一定のレベルを下回ったり、電波障害量が一定のレベルを超えると急激に受信状態が悪化し、画像や音声が部分的に欠落したり、さらには映像や音声の途切れが生じる。地上デジタル放送の受信品質劣化の要因としては、自身の信号が建造物や山岳等に反射し生じる遅延波や、同一周波数帯で受信されたアナログテレビ放送波、帯域外で強いレベルの信号がアンプ等で歪むことにより生ずる相互変調歪みや、受信装置内や他の機器にて発生する不要輻射等のノイズ信号が考えられ、受信しようとする信号に対し妨害信号レベルが一定レベルより大きくなると受信品質への影響が現れる。
【0026】
本明細書においては、デジタル放送で用いられている周波数帯域に重畳されたアナログテレビ放送波、相互変調歪み、たとえばクロック信号の高調波など不要輻射によるノイズ信号のように、OFDM信号と比べて周波数特性に偏りがある妨害信号のことを、周波数選択性妨害信号と呼び、周波数選択性妨害信号への耐性を向上させるための技術について説明を行う。
【0027】
これまで、OFDMなどマルチキャリア変調された信号が受ける周波数選択性妨害信号の影響を検出・除去するための技術が開示されている。たとえば、特許文献1では、OFDM信号を復調する過程で、複数のキャリアそれぞれの復調信号点と代表受信シンボル点との距離をキャリア毎に計測・時間方向に積分し復調信号の分散の大きさを求め、分散の大きさをキャリア毎に比較することで、キャリア毎のC/Nを検出し、C/Nが悪いキャリアは周波数選択性の妨害を受けているものとする妨害検出手段と、妨害検出手段にて検出したC/Nの情報に基づいて復調信号に段階的に重み付けを行い、軟判定と呼ばれる方法により誤り訂正処理を行うOFDM受信装置が開示されている。復調信号点と代表受信シンボル点との距離の値は、MER(Modulation Error Ratio:変調誤差比)とも呼ばれ、軟判定処理においてキャリア毎に算出したMERの値を利用している。
【0028】
また、特許文献2では、OFDM信号に規則的に配置されたパイロット信号を用いて送受間の伝送路特性を推定し補償する際に、周波数選択性妨害信号を検出し、もし周波数選択性妨害信号が検出された場合には、妨害を受けたキャリアの周辺に存在するパイロット信号は伝送路特性の推定には使用せず、妨害信号の影響を受けていないパイロット信号から妨害信号を検出したキャリアの周辺の伝送路特性を推定し、信号処理に用いるOFDM受信装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】特許第2954570号公報
【特許文献2】特許第3363086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
特許文献1では、周波数選択性妨害信号を、複数のキャリアそれぞれの復調信号点と代表受信シンボル点との距離の積分値から検出している。具体的には、等化後のシンボルを最も近接した代表シンボル点での受信とみなす硬判定処理を行い、等化後のシンボル点と近接した代表シンボル点との距離をキャリア毎に時間方向に積分したものを妨害信号量の指標として用いている。しかしながら、OFDMキャリアが、たとえば64QAMといった多値QAM変調を施されていると、妨害信号量が64QAM信号の符号間距離よりも大きい場合や、パイロットキャリアに妨害信号が重なり伝送路特性の推定誤差が大きく、受信信号を誤差を含む伝送路特性で除算した結果、等化後のシンボル点が送信シンボル点から大きく離れる場合がある。このとき、等化後のシンボル点と最も近接したシンボル点との距離を算出すると、本来の送信信号点はさらに離れたところに存在するため、妨害信号量を小さく見積もってしまう課題があった。
【0031】
また、算出した妨害信号量を誤り訂正符号処理部において信頼性情報として用いて誤り訂正能力を向上させているが、上述したように等化後のシンボル点と最も近接したシンボル点との距離の積分値を妨害信号量とすると、妨害信号量の検出値に誤差を含む可能性があるため、誤り訂正処理部での誤り訂正の効果を最大限に引き出すことができなかった。
【0032】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、誤り訂正の効果を最大限に引き出せることを可能としたマルチキャリア変調信号受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
前記従来の課題を解決するために、本発明のマルチキャリア変調信号受信装置は、アンテナ部により受信された信号から所定の周波数帯域のマルチキャリアの信号を選局するチューナ部と、チューナ部から入力したマルチキャリアの信号をサンプリングし、デジタル信号へと変換するA/D変換処理部と、A/D変換処理部から入力した信号をマルチキャリアの信号を復調し、キャリア毎に受信シンボル点と伝送路特性の推定結果のデータ列を生成する復調部と、復調部から入力した受信シンボル点と伝送路特性の推定結果のデータ列の並び替えを行うデインタリーブ処理部と、デインタリーブ処理部から入力した並び替えた受信シンボル点と伝送路特性の推定結果から信頼性情報を生成する第1のデマッピング処理部と、第1のデマッピング処理部より入力したビットデータの信頼性情報に基づいて、誤り訂正処理を行い、送信信号系列を復元する第1の誤り訂正部と、第1の誤り訂正部から入力した送信信号系列を復元したデータに対し符号化処理を行い、符号化処理と並行して、符号処理後の信号が誤り訂正できなかった信号から生成されたかどうかを判定するエラー訂正可能範囲を示す信号を生成する符号化部と、符号化部から入力した符号化処理を行ったデータをキャリア変調方式に従いマッピングを行ったマッピング点の情報とエラー訂正可能範囲を示す信号を生成するマッピング処理部と、デインタリーブ処理部から入力した受信シンボル点と、マッピング処理部から入力したマッピング点の情報とマッピング点の誤り有無情報とのタイミングをそろえ、受信シンボル点とマッピング点の情報との距離を算出する符号間距離算出・累積処理部と、デインタリーブ処理部から入力した並び替えた受信シンボル点と伝送路特性の推定結果をマッピング処理部から入力したマッピング点の情報とマッピング点の誤り有無情報と、符号間距離算出・累積処理部から入力した受信シンボル点とマッピング点の情報との距離情報と、デインタリーブ処理部から入力した伝送路特性の推定結果からデマッピング処理を行う第2のデマッピング処理部と、第2のデマッピング処理部から入力したビットデータと信頼性情報に基づいて、誤り訂正処理を行い、元の信号系列を生成する第2の誤り訂正部と、を備えたことを特徴とする。信号を受信し、直交検波処理、FFT処理、等化処理、デインタリーブ処理、デマッピング処理、復号処理、エネルギー逆拡散処理、リード・ソロモン復号処理と通常の受信装置で行われている処理を行う。さらに、デマッピング処理部に入力される信号(等化後のシンボル点)を別途保持しておく一方で、リード・ソロモン復号結果のデータ列に対し、再び送信装置での変調処理と同じ手順で再度符号化処理を施す。このとき、エネルギー拡散処理、畳み込み符号処理およびQPSKや16QAM、64QAMなど多値変調QAM信号のマッピング処理を行う。
【0034】
以上のように、従来、等化後のシンボル点と等化後のシンボル点に最も近いマッピング点との距離からキャリア毎の妨害信号量や、受信信号の信号品質の指標値を算出していたが、正しい受信点を算出した上で、正しい受信点と等化後のシンボル点の距離から妨害信号量を算出・利用することで、妨害が含まれる信号の受信性能を高めることができる。また、誤り訂正処理と符号化処理を複数回繰り返すことにより、正しい受信点の情報がより多く生成できる一方、処理回路は共用化できる可能性がある。
【発明の効果】
【0035】
本発明のマルチキャリア変調信号受信装置によれば、誤り訂正の効果を最大限に引き出せることを可能としたマルチキャリア変調信号受信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1(a)】本発明の実施例1におけるマルチキャリア変調信号受信装置の構成を示すブロック図
【図1(b)】本発明の実施例1におけるマルチキャリア変調信号受信装置の構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施例1におけるマルチキャリア変調信号受信装置のエラー情報演算処理部の構成図
【図3】本発明の実施例1におけるマルチキャリア変調信号受信装置のマッピング処理部の処理の補足説明図
【図4】ノイズ量とMER(Modulation Error Ratio:変調誤差比)との関係を示す図
【図5】本発明の実施例1の符号間距離算出・累積処理部152において算出するユークリッド距離の補正方法を説明するための図
【図6】本発明の実施例1における他のマルチキャリア変調信号受信装置の構成を示すブロック図
【図7】本発明の実施例1における他のマルチキャリア変調信号受信装置の構成を示すブロック図
【図8】従来のマルチキャリア変調信号受信装置の構成を示すブロック図
【図9】従来のマルチキャリア変調信号受信装置の畳み込み符号化器の構成図
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0038】
本実施例1の説明は、日本の地上デジタル放送規格であるISDB−T方式に従って説明を行うものとする。そして、DVB−T方式など他の方式とは、必ずしもインタリーブ処理や階層伝送と呼ばれる処理が含まれない等の差異はあるが、本発明の概念に大きな影響を与えるものではないため、説明を省略する。また、ISDB−T方式については、公知の規格であるため、ここでは最低限の説明に留める。
【0039】
図1は、本実施例1におけるマルチキャリア変調信号受信装置の構成を示すブロック図である。本実施例1のマルチキャリア変調信号受信装置は、図1(a)に示すようにアンテナ部101と、チューナ部102と、A/D変換処理部103と、復調部110(直交検波処理部111と、FFT処理部112と、等化処理部113)と、デインタリーブ処理部121と、第1のデマッピング処理部122と、第1の誤り訂正部130(第1のビットデインタリーブ処理部131と、第1の復号処理部132と、第1のバイトデインタリーブ処理部133と、第1のエネルギー逆拡散処理部134と、第1のRS(Reed−Solomon:リード・ソロモン)復号処理部135)と、符号化部140(第1のRS符号処理部141と、エラー情報付加処理部142と、エネルギー拡散処理部143と、バイトインタリーブ処理部144と、畳み込み符号処理部145と、エラー情報演算処理部146と、ビットインタリーブ処理部147)と、マッピング処理部151と、符号間距離算出・累積処理部152と、第2のデマッピング処理部153と、第2の誤り訂正部160(第2のビットデインタリーブ処理部161と、第2の復号処理部162と、第2のバイトデインタリーブ処理部163と、第2のエネルギー逆拡散処理部164と、第2のRS復号処理部165)と、TS(Transport Stream:トランスポートストリーム)再生処理部171と、TSデコード処理部172と、MPEG(Moving Picture Experts Group)デコード処理部173とで構成されている。
【0040】
次に、図1の本実施例1におけるマルチキャリア変調信号受信装置の構成を説明する。図1は図8と比較して、アンテナ部101からデインタリーブ処理部121の構成と、アンテナ部601からデインタリーブ処理部621とが同じで、かつ、TS再生処理部171からMPEGデコード処理部173の構成と、TS再生処理部671からMPEGデコード処理部673とが同じである。そして、図8のデインタリーブ処理部621からTS再生処理部671の間に異なる処理ブロックを追加した構成となる。具体的には、図1の第1のRS復号処理部135の出力を再度符号処理するための符号処理部を経た後に、第2のデマッピング処理部153へと信号が入力され、再度復号処理を施した後に、TS再生処理部171からトランスポートストリーム信号を出力する構成となっている。以下、図1の各ブロックの動作を順に説明する。
【0041】
チューナ部102は、アンテナ部101により受信された信号から所定の周波数帯域の信号を選局し、A/D変換処理部103へと出力する。A/D変換処理部103は、チューナ部102から出力されたOFDM信号をサンプリングし、デジタル信号へと変換した上で、復調部110へと出力する。
【0042】
復調部110は、A/D変換処理部から入手したOFDM信号をマルチキャリアの信号を復調し、キャリア単位のデータを生成する。以下に図1(b)を参照しながら、復調部110の動作を詳細に説明する。
【0043】
直交検波処理部111は、A/D変換処理部から入手したOFDM信号に、基準搬送波と同一周波数の正弦波信号を乗じてベースバンドのOFDM信号へと変換し、FFT処理部112へと出力する。
【0044】
FFT処理部112は、直交検波処理部111から出力されたベースバンドのOFDM信号から、有効シンボル期間の信号列を抽出する。そして、抽出した信号列に対し離散フーリエ変換を施し、複素信号を生成する。FFT処理部112は、離散フーリエ変換して得られた複素信号を等化処理部113へと出力する。
【0045】
等化処理部113は、FFT処理部112から複素信号を受け取る。FFT処理部から入手した複素信号は、FFTポイント数だけ存在し、その1つ1つがOFDMシンボルのデータとなっている。例えば、ISDB−T放送規格のモード3と呼ばれる運用規格に従えば、FFTポイント数は8192となり、出力される8192個の複素信号が得られる。このうち5617個が処理対象となる信号であり、これをOFDMシンボルと呼ぶ。OFDMシンボルのデータは、キャリア方向に12シンボル毎にSP(Scattered Pilot:スキャッタードパイロット)信号を含んでいる。また、SP信号は、時間方向に3シンボルずつずらして配置されている。よって等化処理部113は、OFDMシンボルから離散配置されたSP信号を検出・抽出する。
【0046】
次に、SP信号は、既知の信号であるため、抽出したSP信号を既知の複素信号値で除算することによりSPキャリア位置の送受間での伝送路特性を推定することができる。OFDM信号の中に離散的に配置されたSP信号位置の伝送路特性の推定値をもとに補間処理することで、SP信号の間にあるOFDMキャリアの伝送路特性も推定することができる。そして、算出した伝送路特性で各OFDMシンボルを除算することで、伝送路の影響を補償したOFDMシンボル点の情報が得られる。等化処理部113は伝送路の影響を補償したOFDMシンボル点の情報(以下、「受信したOFDMシンボル点」と呼ぶ)と、「受信したOFDMシンボル点」それぞれに対応する伝送路特性の推定結果の複素信号をデインタリーブ処理部121へと出力する。
【0047】
デインタリーブ処理部121は、図8のデインタリーブ処理部621と同様に、OFDMシンボルと伝送路特性の推定結果のデータ列を受け取り、データ列の並び替えを行う。そして、第1のデマッピング処理部122へと並び替えたOFDMシンボルと伝送路特性の推定結果のデータ列を出力する。また、符号間距離算出・累積処理部152へ並び替えたOFDMシンボルのデータ列を、第2のデマッピング処理部153に対して並び替えたOFDMシンボルと伝送路特性の推定結果のデータ列を出力する。
【0048】
第1のデマッピング処理部122は、図8のデマッピング処理部622と同様に、デインタリーブ処理部121から並び替えられた「受信したOFDMシンボル点」と伝送路特性の推定結果のデータ列を入手し、「受信したOFDMシンボル点」から最も近いマッピング点を送信信号点とみなし、ビットデータを生成する。また、「受信したOFDMシンボル点」と「受信したOFDMシンボル点」から最も近いマッピング点との距離情報(以下、「受信シンボル点の距離情報」)と、別途デインタリーブ処理部121から入手した伝送路特性の情報を基に、信頼性情報を生成する。図8のデマッピング処理部622と同様に、OFDMシンボル単位で前記「受信シンボル点の距離情報」を一定期間累積し、OFDMシンボルが含まれるキャリアに含まれるキャリア毎のノイズ量として別途算出した上、キャリア毎のノイズ量、伝送路特性の推定結果および「受信シンボル点の距離情報」から信頼性情報を生成してもよい。そして、生成したビットデータと、信頼性情報とを第1の誤り訂正部130へと出力する。
【0049】
第1の誤り訂正部130は、第1のデマッピング処理部122より入手したビットデータと信頼性情報に基づいて、誤り訂正処理を行い、元の信号系列を生成する。以下に図1(b)を参照しながら、第1の誤り訂正部130の動作を詳細に説明する。
【0050】
第1のビットデインタリーブ処理部131は、図8のビットデインタリーブ処理部631と同様に、第1のデマッピング処理部122より入手したビットデータと信頼性情報の並び替えを行い、第1の復号処理部132へと出力する。
【0051】
第1の復号処理部132は、図8の復号処理部632と同様に、第1のビットデインタリーブ処理部131よりビットデータと信頼性情報を入手し、受け取ったビットデータを信頼性情報に応じて重み付けし復号処理を行い、第1のバイトデインタリーブ処理部133へと復号結果のデータ列を出力する。
【0052】
第1のバイトデインタリーブ処理部133は、図8のバイトデインタリーブ処理部633と同様に、第1の復号処理部132より入手した復号結果のデータ列を受け取り元の順序へと並び替えを行い、第1のエネルギー逆拡散処理部134へとデータ列を出力する。
【0053】
第1のエネルギー逆拡散処理部134は、図8のエネルギー逆拡散処理部634と同様に、第1のバイトデインタリーブ処理部133より得られたデータ列に対し信号の送信側で施されたエネルギー拡散処理を元に戻す処理を行い、変換後のデータ列を第1のRS復号処理部135へと出力する。
【0054】
以下で説明する第1のRS復号処理部135から第2のRS復号処理部165までの処理ブロックは、図8に対し新たに追加した処理ブロックまたは出力信号の接続先が異なる処理ブロックである。
【0055】
第1のRS復号処理部135は、第1のエネルギー拡散処理部134より入手したデータ列を受け取り、リード・ソロモン復号処理を行った上で、リード・ソロモン復号されたトランスポートストリームパケットのデータ列を符号化部140(RS符号処理部141)に出力すると共に、符号化部140(エラー情報付加処理部142)に対して、トランスポートストリームパケット単位でエラーの訂正が行われたか否かを示す情報と、トランスポートストリームパケットの先頭バイトを判別するための信号とを出力する。なお、トランスポートストリームパケット単位でエラーの訂正が行われたか否かの情報は、トランスポートストリームパケットに付与されているエラーフラグを用いることができる。
【0056】
符号化部140は、第1のRS復号処理部135から入手したトランスポートストリームパケットのデータに対し、送信装置で行われている符号化処理と同じ符号化処理を行う。そして、符号化処理と並行して、符号処理した信号が誤りを含んだ信号から生成されたかどうかを判定する信号を生成する。以下に図1(b)を参照しながら、符号化部140の動作を詳細に説明する。
【0057】
RS符号処理部141は、第1のRS復号処理部135から入手したトランスポートストリームパケットのデータに対し、トランスポートストリーム毎にリード・ソロモン符号処理を施す。日本の地上デジタル放送方式では、短縮化リード・ソロモン符号(204,188)と呼ばれる処理を行い、204バイトから8バイトまでのランダム誤りを訂正可能とするための外符号が付与される。RS符号処理部141は、トランスポートストリームのデータに外符号を加えたデータをエネルギー拡散処理部143へと出力する。
【0058】
エラー情報付加処理部142は、第1のRS復号処理部からリード・ソロモン符号復号されたトランスポートストリームパケットのデータ列を入手する。そして、トランスポートストリームのデータのうち、パケット単位に与えられているパケットのエラー訂正可否の結果の情報をもとに、パケット単位でエラー訂正可否の情報と、パケット先頭の同期バイト部を判別するための信号を生成し、バイトインタリーブ処理部144へと出力する。
【0059】
もしくは、エラー情報付加処理部142は、第1のRS復号処理部135からRS符号処理部141へと出力されるトランスポートストリームのデータ列を入手し、RS符号処理部141および後述のエネルギー拡散処理部143での処理遅延時間が既知であるならば、パケット単位でのエラー訂正可否の情報のみ生成した上で、エラー訂正可否を示す信号の出力タイミングを後述のエネルギー拡散処理部143から出力されるデータ列と揃える構成としてもよい。このとき、RS符号処理部141にて追加されるパリティ部の信号の分を考慮してエラー訂正可否を示す信号を生成する必要がある。
【0060】
エネルギー拡散処理部143は、RS符号処理部141からトランスポートストリームのデータに外符号を追加したデータ列を入手する。そして、同期バイトを除くトランスポートストリームの信号に対し、疑似ランダム符号系列を用いてエネルギー拡散処理を施し、バイトインタリーブ処理部144へとデータ列を出力する。
【0061】
バイトインタリーブ処理部144は、エネルギー拡散処理部143からデータ列を、エラー情報付加処理部142から「エラー訂正可否の情報」(エネルギー拡散処理部143から得られたデータが第1のRS復号処理部135においてエラー訂正できたか否かを示す情報)を入手する。この際、「エラー訂正可否の情報」は、エネルギー拡散処理部143から入手するデータ列とタイミングが揃えてあるものとする。
【0062】
そして、バイトインタリーブ処理部144は、エネルギー拡散処理部143から得たデータ列と、エラー情報付加処理部142から入手した「エラー訂正可否の情報」とをISDB−T規格で規定された順にバイト単位で並び替え、並び替え後のデータ列を畳み込み符号処理部145へ、並び替えた「エラー訂正可否の情報」をエラー情報演算処理部146へと出力する。ところで、ISDB−T規格では、階層によってキャリア変調方式が異なる場合、階層毎の遅延時間を合わせることが必要であるため、図1の構成においては、バイトインタリーブ処理部144にて遅延補正処理も同時に行われるものとする。
【0063】
畳み込み符号処理部145は、バイトインタリーブ処理部144より入手したデータ列に対して畳み込み符号処理を施し、符号処理後のデータ列をビットインタリーブ処理部147へと出力する。なお、送信信号が複数階層から構成され、階層毎に誤り訂正符号化率が異なる場合には、階層別に符号化処理を行う。
【0064】
エラー情報演算処理部146は、バイトインタリーブ処理部144から、バイトインタリーブの並び替え処理を行った「エラー訂正可否の情報」のデータを入手する。エラー情報演算処理部146のデータの処理単位は、ビット単位とする。そして、畳み込み符号処理部145での演算においてエラーを含んだデータが影響を及ぼす範囲を示すデータを生成する。そして、ビットインタリーブ処理部147に対して、畳み込み符号処理部145から出力されるデータが誤りを持つ可能性があるか否かを示すデータ(以下、「エラー訂正可能範囲を示す信号」と呼ぶ)を出力する。
【0065】
また、図2を用いてエラー情報演算処理部146の処理手順を説明する。図2は、エラー情報演算処理部146で行う演算処理回路である。図2の演算処理回路は、図9の符号化回路と比較して、X出力とY出力を生成するための排他的論理和演算器がそれぞれ論理和演算器となっている点が異なる。図2の演算処理回路は、バイトインタリーブ処理部144から入手する「エラー訂正可否の情報」は、第1のRS復号処理部135においてエラー訂正できたデータであれば「0」を、エラー訂正できなかったデータであれば「1」を入力すれば、出力信号として畳み込み符号処理部145での生成符号がエラーを持つ可能性のあるデータから生成されたものであるか否かを判別するデータが得られる。
【0066】
なお、エラー除法演算処理部146は、畳み込み符号化率に応じて、符号化器のX出力とY出力を選択出力するが、X出力とY出力の選択手順は、畳み込み符号処理部145と同一とする。
【0067】
ビットインタリーブ処理部147は、畳み込み符号処理部145から畳み込み符号処理されたデータ列を入手し、エラー情報演算処理部146から「エラー訂正可能範囲を示す信号」を入手する。そして、畳み込み符号処理部145から得たデータ列と、エラー情報演算処理部146から得た「エラー訂正可能範囲を示す信号」が時間方向にずれないよう配慮した上で、ISDB−Tの規格に従って2つのデータ列のビットの並び替え処理を行い、並び替えたデータ列とエラー訂正可否の情報それぞれをマッピング処理部151へと出力する。
【0068】
マッピング処理部151は、ビットインタリーブ処理部147からビットインタリーブ後のデータ列と、ビットインタリーブ後の「エラー訂正可能範囲を示す信号」とを入手する。そして、ビットインタリーブ後のデータ列を「エラー訂正可能範囲を示す信号」に基づいて、OFDMキャリア単位に分割し、各キャリアに指定されるQPSK、16QAM、64QAMなどのキャリア変調方式に従いマッピングを行う。キャリア変調方式が16QAMの場合を例として、マッピング処理部151の処理を図3を用いて説明する。
【0069】
図3は、変調方式が16QAMの場合のマッピング処理部151への入力データパターンとマッピング点の関係を示し、4ビットのデータに対して実数Iと虚数Qがどのように割り当てされるかを図示したものである。たとえば、入力データが(b0,b1,b2,b3)=(0,0,0,0)であれば、(I,Q)=(+3,+3)の複素信号がマッピング点として割り当てられる。マッピング処理部151は、ビットインタリーブ処理部147から入手したビットインタリーブ後のデータ列をキャリア変調方式から決定されるマッピング点を表す複素信号(以下、「マッピング点の情報」と呼ぶ)へと変換し、同時に、マッピング点算出元のデータに対応するビットインタリーブ後の「エラー訂正可能範囲を示す信号」(以下、「マッピング点の誤り有無情報」と呼ぶ)を符号間距離算出・累積処理部152および第2のデマッピング処理部153へと出力する。
【0070】
符号間距離算出・累積処理部152は、マッピング処理部151より、キャリア変調方式に応じてマッピングされた「マッピング点の情報」と「マッピング点の誤り有無情報」のデータ列を入手する。また、デインタリーブ処理部121より、OFDMシンボルのデータ列(以下、「受信したOFDMシンボル点の情報」と呼ぶ)を入手する。まず、「受信したOFDMシンボル点の情報」と、「マッピング点の情報」および「マッピング点の誤り有無情報」のタイミングをそろえる。第1のデマッピング処理部122からマッピング処理部151までの処理遅延量もしくは、データがOFDMシンボル単位で処理されることから、例えば、OFDMシンボルの先頭を判別し、「マッピング点の情報」と「受信したOFDMシンボル点の情報」との入手タイミング差をカウントし差を調整するか、各処理ブロックにおいて、OFDMシンボル先頭を示す信号を生成し伝達すればよい。
【0071】
次に、符号間距離算出・累積処理部152は、「受信したOFDMシンボル点の情報」と「マッピング点の情報」との距離を算出する。距離の算出は、ユークリッド距離の算出手順に従う。ただし、距離算出時に「マッピング点の誤り有無情報」を考慮する必要がある。もし、「マッピング点の情報」に対応する「マッピング点の誤り有無情報」が誤りなしの場合には、「マッピング点の情報」の複素信号と、「受信したOFDMシンボル点の情報」の複素信号間のユークリッド距離を算出する。
【0072】
また、「マッピング点の誤り有無情報」のうち、「マッピング点の情報」の生成に用いたデータのうち実数部または虚数部の一方の算出データに誤りが偏った場合には、次の手順で算出した値を「受信したOFDMシンボル点の情報」と「マッピング点の情報」との距離として算出する。もし、「マッピング点の情報」の虚数部が誤りを持つ可能性がある場合には、「マッピング点の情報」の虚数部を、「受信したOFDMシンボル点」の虚数部から最も近いシンボル点の虚数部に置き換える。「マッピング点の情報」の実数部の置き換えは行わない。
【0073】
そして、虚数部を置き換えた「マッピング点の情報」と「受信したOFDMシンボル点の情報」の複素信号間のユークリッド距離を算出する。
「マッピング点の情報」の生成に用いたデータの実数部も虚数部も共に誤りを含む可能性がある場合には、「マッピング点の情報」の実数部と虚数部を「受信したOFDMシンボル点の情報」に最も近いシンボル点の複素信号へと置き換え、実数部と虚数部を置き換えた「マッピング点の情報」と「受信したOFDMシンボル点の情報」の複素信号間のユークリッド距離を算出する。なお、「マッピング点の情報」の生成に用いたデータの実数部も虚数部も共に誤りを含む可能性がある場合に算出されるユークリッド距離の値を累積するとMER(Modulation Error Ratio:変調誤差比)と一般に呼ばれる値となる。
【0074】
このように、「マッピング点の情報」の生成に用いたデータの実数部もしくは虚数部の一方、または実数部・虚数部の両方が誤りを含む可能性がある場合には、「「受信したOFDMシンボル点」から最も近いシンボル点」と「受信したOFDMシンボル点」とのユークリッド距離を算出する。本実施の形態1では、算出したユークリッド距離の値に対して補正を加える。補正の手順を図4と図5を用いて説明する。
【0075】
図4は、「「受信したOFDMシンボル点」から最も近いシンボル点」と「受信したOFDMシンボル点」とのユークリッド距離を積算したMER値と、信号に付加されるノイズ量との関係を図示したものである。横軸がノイズ量、縦軸がMER値の大きさを表す。図の実線がMER値を示し、点線が信号に付加されたノイズ量を示す。図4に示すように、ノイズ量が「A」の値より小さくなる場合には、MER値とノイズ量はほぼ一致する。一方、ノイズ量が「A」の値を大きくなると、MER値とノイズ量に差が生じ、MER値がノイズ量に比べて小さくなる。これは、付加されたノイズ量がQAM信号の符号間距離よりも大きくなる一方で、ユークリッド距離は最も近い符号点との距離から算出する結果、MER値が小さく算出されるためである。
【0076】
図5は、ノイズ量に対する図1の第1のRS復号処理部135の出力信号(トランスポートストリームパケット)のエラー率と、ノイズ量に対する符号間距離算出・累積処理部152にて算出したユークリッド距離の累積値とを同時に示したものである。図5に示すように、信号に付加されるノイズ量が増加し、あるノイズ量を下回ると第1のRS復号処理部135の出力信号がエラーを含む(ノイズ量が「B」)。そして、さらにノイズ量が増加すると、第1のRS復号処理部135はエラー訂正ができなくなり、全ての出力信号がエラーを含む(ノイズ量が「C」)。また、MER値は、ノイズ量が「A」よりノイズ量が大きくなると実際に加算したノイズ量よりも小さく算出される。このとき、上述の符号間距離算出・累積処理部152にて算出するユークリッド距離の値の累積値は、ノイズ量がノイズ量が「A」からノイズ量が「B」にかけては信号に付加されるノイズ量を表し、量がノイズ量が「C」になるMER値が出力される。ノイズ量が「B」からノイズ量が「C」にかけては、第1のRS復号処理部135のエラー率に従い、MER値と「受信したOFDMシンボル点の情報」と「マッピング点の情報」との距離から算出したユークリッド距離の値の累積値を組み合わせた値が出力される。
【0077】
この結果、信号に加算されるノイズ量が「B」よりも大きい場合に、算出値が信号に付加されたノイズ量を正確に表さず、場合によっては、大小関係が逆転する場合も起こりうる。このため、符号間距離算出・累積処理部152では、「マッピング点の情報」の生成に用いるデータが誤りを含む場合には、「「受信したOFDMシンボル点」から最も近いシンボル点」と「受信したOFDMシンボル点」とのユークリッド距離に補正を加えた値を累積する。「「受信したOFDMシンボル点」から最も近いシンボル点」と「受信したOFDMシンボル点」とのユークリッド距離の補正方法は、図4に示すようにMER値と信号に付加されるノイズ量との関係がノイズ量「A」より小さいとき非線形の関係となるため、ノイズ量「A」よりノイズ量が大きい領域では、MER値の算出結果を実際に付加したノイズ量へと補正する補正テーブルを用意し、個々のユークリッド距離の算出結果に対し、補正テーブルに従い算出値の補正を加える。この結果、第1のRS復号処理部135において、エラー訂正が可能な場合と不可能な場合との算出結果の意味づけをほぼ同等とすることができる。
【0078】
ところで、以上のように「マッピング点の誤り有無情報」に応じて算出したユークリッド距離は、OFDMキャリア単位で算出される。そして、シンボル方向へ一定回数積分する。積分回数は、たとえば、デインタリーブ処理部121で行われる時間インタリーブの最長時間と同一とする等が考えられる。そして、シンボル単位に積分した「受信したOFDMシンボル点の情報」と「マッピング点の情報」との距離情報を第2のデマッピング処理部へと出力する。なお、ISDB−T規格では、送信側での周波数インタリーブ処理の際、セグメント内で「セグメント内キャリアローテーション」と呼ばれる、周波数方向のデータの並び替え処理が行われているが、シンボル番号に関わらず同じ周波数位置へとデータの並び替えが行われる。一方、他の放送方式などでシンボル番号によってデータの配置場所が異なる場合には、上記のユークリッド距離をシンボル方向に一定回数積分処理を行う際に、シンボル番号に応じたデータの並び替え処理を考慮し、同じ周波数位置の信号に対して算出した「マッピング点の情報」と「受信したOFDMシンボル点の情報」の複素信号間のユークリッド距離を積算する必要がある。
【0079】
また、符号間距離算出・累積処理部152は、更に細かな処理を経て「受信したOFDMシンボル点の情報」と「マッピング点の情報」との距離情報を算出することも可能である。ここで距離情報の算出に用いる「マッピング点の情報」の補正手順を再び図3用いて説明する。
【0080】
図3は、キャリア変調方式が16QAMの場合のマッピング規則である。16QAM変調方式では、「マッピング点の情報」は4ビットのデータから算出され「マッピング点の誤り有無情報」がすべて「エラーなし」を示せば、マッピング点は図3に従って一意に決定されるため、「マッピング点の情報」はマッピング処理部151から得られた値とする。
【0081】
次に、「マッピング点の誤り有無情報」より1ビットのデータが「エラーを含む可能性がある」と判定された場合、まず、エラーを含むビットが(b0,b2)もしくは(b1,b3)のいずれに含まれるかを判断する。図3に示すように16QAM変調方式では、マッピング点の実数部が(b0,b2)から、虚数部が(b1,b3)からそれぞれ一意に決定される。一方、エラーを含むビットのペアからは符号点を決められないため、仮の値を割り当てる。たとえば、実数部の値の算出元のb0に誤りの可能性があり、b2は正しい情報である場合には、b2から求まる2つの符号点のうち、「受信したOFDMシンボル点の情報」の実数部に最も近い符号点の実数部を新たな「マッピング点の情報」とする。また、b2に誤りの可能性がありb0は正しい場合にも同様とする。
【0082】
「マッピング点の誤り有無情報」より2ビットのデータが「エラーを含む可能性がある」と判定された場合、誤りビットが(b0,b2)と(b1,b3)のペアそれぞれに1つずつ含まれる場合と、2ビットの誤りが(b0,b2)または(b1,b3)のペアの一方に偏る場合が考えられる。このうち、前者の場合には、上記の4ビットのうち1ビットだけエラーが含まれる場合と同じ手順でマッピング点の実数部と虚数部の算出を行う。
【0083】
一方、2ビットの誤りが(b0,b2)に集中した場合、「受信したOFDMシンボル点の情報」の実数部に最も近いシンボル点の実数部をマッピング点の実数部の値とする。(b1,b3)に誤りが集中した場合には、「受信したOFDMシンボル点の情報」の虚数部に最も近いシンボル点の実数部をマッピング点の実数部の値とする。
【0084】
「マッピング点の誤り有無情報」より4ビットのデータうち3ビットもしくは、4ビットのデータ全てが誤りを含む可能性がある場合についても、実数部と虚数部の値を上述の手順より決定し新たな「マッピング点の情報」とする。
【0085】
以上の処理により、符号間距離算出・累積処理部152は、補正した「マッピング点の情報」と、「受信したOFDMシンボル点の情報」とのユークリッド距離をOFDMキャリア単位で算出し、さらに、シンボル方向へ一定回数積分する。そして、シンボル単位に積分した「受信したOFDMシンボル点の情報」と「マッピング点の情報」との距離情報を第2のデマッピング処理部へと出力する。(以下、符号間距離算出・累積処理部152にて算出したシンボル単位に積分した「受信したOFDMシンボル点の情報」と「マッピング点の情報」との距離情報を「キャリア単位の妨害情報」とする)
ところで、以上の説明ではキャリア変調方式を16QAM変調方式として説明を行ったが、キャリア変調方式がたとえば64QAMなどより多値の変調方式となる場合には、データ誤りの発生の組み合わせが増加するが、誤りの無いビットから算出されるマッピング点のうち、最も「受信したOFDMシンボル点の情報」に近い点を新たな「マッピング点の情報」に置き換えることで、同様の算出方法を採ることができる。また、新たな「マッピング点の情報」も、後段の第2のデマッピング処理部153へと出力し、マッピング処理部151から第2のデマッピング処理部153へと出力される「マッピング点の情報」の代わりとしてもよい。
【0086】
ところで、符号間距離算出・累積処理部152において算出する「キャリア単位の妨害情報」は、データの並び順がデインタリーブ処理部121にて周波数および時間方向に並び替えられた結果の信号から算出した値である。符号間距離算出・累積処理部152における「キャリア単位の妨害情報」を算出する際には、送受の信号点のユークリッド距離を積算するためのメモリ等が必要となるが、例えば、メモリへ値を格納する際に信号の送信時の周波数インタリーブ処理手順に従って送受の信号点のユークリッド距離の値を並び替えた上でメモリに格納してもよい。
【0087】
すると、「キャリア単位の妨害情報」は、低い周波数のOFDMキャリアから順番に並び替えることができ、例えば、受信信号の特定のOFDMキャリア周辺に周波数選択性妨害信号が重畳している場合には、ある範囲の「キャリア単位の妨害情報」に偏って大きな値を示す。このように、「キャリア単位の妨害情報」の周波数方向の分布状況から受信した信号が周波数選択性妨害信号の影響を受けているか否かの判定ができる。また、周波数選択性妨害信号の影響を受けているOFDMキャリア位置をより正確に特定できる。また、「キャリア単位の妨害情報」算出時の積算回数が少ない場合など、「キャリア単位の妨害情報」を補間処理したり鈍らせた結果を「キャリア単位の妨害情報」に置き換えることもできる。その他、周波数選択性妨害信号の発生周波数の情報を別途利用することも考えられるが本実施の形態では特に説明を行わない。以上の「キャリア単位の妨害情報」算出時にデータの並びを入れ替える場合には、後段の第2のデマッピング処理部153において「キャリア単位の妨害情報」を利用する際に、再度「キャリア単位の妨害情報」の並び替えが必要となる。
【0088】
第2のデマッピング処理部153は、デインタリーブ処理部121から「受信したOFDMシンボル点の情報」と伝送路特性の推定結果のデータ列を入手し、マッピング処理部151より「マッピング点の情報」および「マッピング点の誤り有無情報」を、符号間距離算出・累積処理部152からは、シンボル単位に積分した「受信したOFDMシンボル点の情報」と「マッピング点の情報」との距離情報を入手する。そして、図8のデマッピング処理部622と同様に、デマッピング処理を行う。マッピング点の情報としては、マッピング処理部151から得られる「マッピング点の情報」とデインタリーブ処理部121から入手した「受信したOFDMシンボル点の情報」を入手し、それぞれの処理タイミングをそろえた上で、「マッピング点の誤り有無情報」を基準に、「マッピング点の情報」の算出元のデータが誤りを持つ可能性が無い場合には、「マッピング点の情報」を選択し、伝送路特性の推定結果の値は、大きな値を与える。大きな値とは、たとえば、伝送路において振幅変動が無い場合の伝送路特性の大きさを「1」として、「1」を与える。
【0089】
一方、「マッピング点の情報」の算出元のデータが誤りを持つ可能性ある場合には「受信したOFDMシンボル点の情報」を信頼性情報の算出に用い、伝送路特性の推定結果の情報は、デインタリーブ処理部121から得た伝送路特性の推定結果の大きさ(キャリア毎に算出した伝送路特性H(ω)の推定結果の大きさ)とする。このとき、信頼性情報の算出に用いる受信シンボル点の情報として、符号間距離算出・累積処理部152にて新たに生成した「マッピング点の情報」を用いた上で、伝送路特性の大きさの情報をデインタリーブ処理部121から入手してもよい。
【0090】
さらに、第2のデマッピング処理部153は、符号間距離算出・累積処理部152にてシンボル単位に積分した「受信したOFDMシンボル点の情報」と「マッピング点の情報」との距離情報を用いて、上記受信シンボル点と伝送路特性の大きさから算出される信頼性情報の値を補正する。ところで、符号間距離算出・累積処理部152にて算出したシンボル単位に積分した「受信したOFDMシンボル点の情報」と「マッピング点の情報」との距離情報は、「マッピング点の情報」の算出に用いたデータがエラーを訂正されたデータから算出されるために、信号の送信局で生成される信号と同一の送信信号点と、復調処理の結果得られた受信点とを比較し、送受の信号点のユークリッド距離を同じデータキャリアについて一定時間積算した値とみなすことができる。
【0091】
「キャリア単位の妨害情報」は、より正しく各キャリアに含まれる妨害信号量を時間方向に平均化した結果とみなせるため、「キャリア単位の妨害情報」を用いて各受信データの信頼性情報を補正する。具体的には、「キャリア単位の妨害情報」が大きいデータキャリアの信頼性を低く、「キャリア単位の妨害情報」が小さいデータキャリアの信頼性を高くなるよう、受信シンボル点と伝送路特性から算出した信頼性値を「キャリア単位の妨害情報」で除算する。また、常に「マッピング点の誤り有無情報」がエラーであることを示したり、「キャリア単位の妨害情報」が突出して大きいことを示したりするキャリアは、信頼性値を「0」として、当該キャリアに含まれるデータは全く信頼できないとしてもよい。そして、第2のデマッピング処理部153は、生成したビットデータと信頼性情報とを第2の誤り訂正部160(第2のビットデインタリーブ処理部161)へと出力する。
【0092】
さらに、第2のデマッピング処理部153では、先に述べたように符号間距離算出・累積処理部152より、「キャリア単位の妨害情報」を入手している。この「キャリア単位の妨害情報」をキャリア方向に平均化することで、受信信号に含まれる妨害信号量の指標として別途用いることができる。もし、受信するOFDM信号のC/Nが信号レベルで短時間に変化するように時間変動する場合など、キャリア単位の妨害情報の平均値を受信信号のノイズ量として、第2のデマッピング処理部153から第2の誤り訂正部160(第2のビットデインタリーブ処理部161)に対し出力する信頼性情報をさらに補正してもよい。また、別途マルチキャリア変調信号受信装置が受信する信号の信号品質値として利用することも可能である。
【0093】
第2の誤り訂正部160は、第2のデマッピング処理部153より入手したビットデータと信頼性情報に基づいて、誤り訂正処理を行い、元の信号系列を生成する。以下に図1(b)を参照しながら、第2の誤り訂正部160の動作を詳細に説明する。
【0094】
第2のビットデインタリーブ処理部161は、第1のビットデインタリーブ処理部131と同様に、第2のデマッピング処理部153より入手したビットデータと信頼性情報を、ISDB−T規格の規定に従い元の順序へと並び替え、第2の復号処理部162へと出力する。
【0095】
第2の復号処理部162は、第1の復号処理部132と同様に、第2のビットデインタリーブ処理部161よりビットデータと信頼性情報を入手し、受け取ったビットデータを信頼性情報に応じて重み付けしビタビ復号処理を行い、第2のバイトデインタリーブ処理部163へとビタビ復号結果のデータ列を出力する。
【0096】
第2のバイトデインタリーブ処理部163は、第1のバイトデインタリーブ処理部133と同様に、第2の復号処理部162より入手したビタビ復号結果のデータ列を受け取り元の順序へと並び替えを行い、第2のエネルギー逆拡散処理部164へとデータ列を出力する。
【0097】
第2のエネルギー拡散処理部164は、第1のエネルギー逆拡散処理部134と同様に、第2のバイトデインタリーブ処理部163より得られたデータ列に対し信号の送信側で施されたエネルギー拡散処理を元に戻す処理を行い、変換後のデータ列を第2のRS復号処理部165へと出力する。
【0098】
第2のRS復号処理部165は、第2のエネルギー拡散処理部164より入手したデータ列を受け取り、リード・ソロモン復号処理を行った上で、リード・ソロモン復号されたトランスポートストリームパケットのデータ列をTS再生処理部171に出力する。
【0099】
TS再生処理部171は、図8のTS再生処理部671と同様の動作を行う。図1の第2のRS復号処理部165からリード・ソロモン復号されたデータ列を入手し、トランスポートストリームのパケット数が伝送パラメータによらず一定とするために、適切な数のヌルパケットに補完処理を行い、ヌルパケットを補完した後のトランスポートストリームのパケットデータを後段のTSデコード処理部172でTSデコード処理を行うために出力する。
【0100】
以上の処理により、本実施例1のマルチキャリア変調信号受信装置は、一度誤り訂正処理を施した結果のデータから信号の送信局で生成される送信信号点を復元し、送信信号点と復調部から得られた受信信号点とをキャリア単位で比較し、比較結果から求まるユークリッド距離を一定時間積算した値をキャリア毎に含まれる妨害信号量とみなし誤り訂正部に伝達する信頼性情報を補正することができるため、従来の方法と比較し高い受信性能を得ることができる。特に、受信信号が周波数選択性の妨害信号の影響を受けている場合には、キャリア単位で偏りのある妨害信号量をより正確に算出できるため、高い効果を得ることができる。
【0101】
ところで、以上の実施例1のマルチキャリア変調信号受信装置の構成の説明においては、例えば、階層毎に異なるキャリア変調方式で信号が伝送されることに伴い、階層毎に処理タイミングを調整する等のISDB−Tの規格で規定された処理について必ずしも全ての手順を説明していないが、特別な記載が無い限りISDB−T規格に沿った処理を適切なブロックにて行うものとする。また、例えば、誤り訂正符号化率や伝送階層数などのTMCC信号として伝達されているOFDMの伝送パラメータ情報は、各処理ブロックにて必要なる場合があるが、TMCC情報から得られる情報については、別途TMCC信号を復号処理するブロックより入手しているものとして、図示と詳細説明を行っていない。
【0102】
なお、本実施例において、図1のように符号化部140から第2の誤り訂正部160において1回の誤り訂正処理をして、TS再生処理部171へ出力するとしたが、符号化部140から第2の誤り訂正部160で複数回の誤り訂正処理をして、TS再生処理部171へ出力するとしても良い。この場合、図6のように第2の誤り訂正部160での誤り訂正処理が何回目かをカウントするために、第2の誤り訂正部160の出力信号を入力する誤り訂正カウント部166を設ける。例えば、繰り返し回数が2回の場合には、誤り訂正カウント部166は第2の誤り訂正部160での誤り訂正処理の回数が1回のときに符号化部140に信号を出力し、誤り訂正処理の回数が2回のときにTS再生処理部171に出力する。さらに、例えば、第2の誤り訂正処理部160の動作速度を高め、出力信号の出力時間の遅れが発生しない範囲で、誤り訂正カウント部166から符号化部140への信号処理を複数回繰り返し、誤り訂正効果を高めることも可能である。
【0103】
なお、本実施例において、図1のように第1の復号処理部132と第2の復号処理部162というように同一処理を行うブロックを2個設けたが、共用化するとしても良い。この場合、図7のように第2のデマッピング処理部153からの出力信号を第1の誤り訂正部130に入力するようにする。第1の誤り訂正部130での誤り訂正処理が何回目かをカウントするために、第1の誤り訂正部130の出力信号を入力する誤り訂正カウント部136を設ける。そして、誤り訂正カウント部136は、第1の誤り訂正部130での誤り訂正処理の回数が1回のときに符号化部140に信号を出力し、誤り訂正処理の回数が規定の回数に達したときにTS再生処理部171に信号を出力する。また、例えば、第1の誤り訂正処理部130の動作速度を高く設定し、出力信号の出力時間の遅れが大きくならない範囲で、第2のデマッピング処理部153から第1の誤り訂正部130への信号処理を複数回繰り返し、誤り訂正効果を高めることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明にかかるマルチキャリア変調信号受信装置は、信号の送信局で生成される送信信号点を復元し、復元した送信信号点と復調部から得られた受信信号点とをキャリア単位で比較し、比較結果から求まるユークリッド距離を一定時間積算した値をキャリア毎に含まれる妨害信号量とみなし誤り訂正部に伝達する信頼性情報を補正することが可能になるので、受信信号が周波数選択性の妨害信号の影響を受けている場合などにより高い受信性能を得ることができる。
【符号の説明】
【0105】
101 アンテナ部
102 チューナ部
103 A/D変換処理部
110 復調部
111 直交検波処理部
112 FFT処理部
113 等化処理部
121 デインタリーブ処理部
122 第1のデマッピング処理部
130 第1の誤り訂正部
131 第1のビットデインタリーブ処理部
132 第1の復号処理部
133 第1のバイトデインタリーブ処理部
134 第1のエネルギー拡散処理部
135 第1のRS復号処理部
136 誤り訂正カウント部
140 符号化部
141 RS符号処理部
142 エラー情報付加処理部
143 エネルギー拡散処理部
144 バイトインタリーブ処理部
145 畳み込み符号処理部
146 エラー情報演算処理部
147 ビットインタリーブ処理部
151 マッピング処理部
152 符号間距離算出・累積処理部
153 第2のデマッピング処理部
160 第2の誤り訂正部
161 第2のビットデインタリーブ処理部
162 第2の復号処理部
163 第2のバイトデインタリーブ処理部
164 第2のエネルギー逆拡散処理部
165 第2のRS復号処理部
166 誤り訂正カウント部
171 TS再生処理部
172 TSデコード処理部
173 MPEGデコード処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ部により受信された信号から所定の周波数帯域のマルチキャリアの信号を選局するチューナ部と、
前記チューナ部から入力したマルチキャリアの信号をサンプリングし、デジタル信号へと変換するA/D変換処理部と、
前記A/D変換処理部から入力した信号をマルチキャリアの信号を復調し、キャリア毎に受信シンボル点と伝送路特性の推定結果のデータ列を生成する復調部と、
前記復調部から入力した受信シンボル点と伝送路特性の推定結果のデータ列の並び替えを行うデインタリーブ処理部と、
前記デインタリーブ処理部から入力した並び替えた受信シンボル点と伝送路特性の推定結果から信頼性情報を生成する第1のデマッピング処理部と、
前記第1のデマッピング処理部より入力したビットデータの信頼性情報に基づいて、誤り訂正処理を行い、送信信号系列を復元する第1の誤り訂正部と、
前記第1の誤り訂正部から入力した送信信号系列を復元したデータに対し符号化処理を行い、前記符号化処理と並行して、符号処理後の信号が誤り訂正できなかった信号から生成されたかどうかを判定するエラー訂正可能範囲を示す信号を生成する符号化部と、
前記符号化部から入力した符号化処理を行ったデータをキャリア変調方式に従いマッピングを行ったマッピング点の情報とエラー訂正可能範囲を示す信号を生成するマッピング処理部と、
前記デインタリーブ処理部から入力した受信シンボル点と、前記マッピング処理部から入力したマッピング点の情報とマッピング点の誤り有無情報とのタイミングをそろえ、前記受信シンボル点と前記マッピング点の情報との距離を算出する符号間距離算出・累積処理部と、
前記デインタリーブ処理部から入力した並び替えた受信シンボル点と伝送路特性の推定結果を前記マッピング処理部から入力したマッピング点の情報とマッピング点の誤り有無情報と、
前記符号間距離算出・累積処理部から入力した前記受信シンボル点と前記マッピング点の情報との距離情報と、デインタリーブ処理部から入力した伝送路特性の推定結果からデマッピング処理を行う第2のデマッピング処理部と、
前記第2のデマッピング処理部から入力したビットデータと信頼性情報に基づいて、誤り訂正処理を行い、元の信号系列を生成する第2の誤り訂正部と、
を備えたことを特徴とするマルチキャリア変調信号受信装置。
【請求項2】
前記マッピング処理部は、誤り訂正結果のデータを再度符号化する際に、誤り訂正されたデータ範囲を正確に算出し、誤り訂正されたデータ範囲を示す情報に従って、等化処理後の信号点とエラー訂正した信号から生成した信号点と、等化処理後の信号点に最も近いシンボル点の情報を組み合わせて、新たな信号点を生成し、新たな信号点に応じて信頼性情報を生成することを特徴とする請求項1記載のマルチキャリア変調信号受信装置。
【請求項3】
符号化された信号がエラー訂正できた信号から生成された場合には、
エラー訂正した信号から生成した信号点と復調後の受信シンボル点とのユークリッド距離をキャリア単位に積算し、
符号化された信号がエラー訂正できなかった信号から生成された場合には、
復調後の受信シンボル点と、復調後の受信シンボル点から最も近い送信符号点とのユークリッド距離をキャリア単位に積算し、
符号化された信号が、エラー訂正できなかった信号とエラー訂正できた信号から生成された場合には、
エラー訂正できた信号から決定される符号点の候補のうち、復調後の受信シンボル点から最も近い符号点を送信符号点とみなし、復調後の受信シンボル点と、送信符号点とみなした信号点とのユークリッド距離を積算し、
前記ユークリッド距離をキャリア単位に積算し得られた値を、妨害信号量とみなして誤り訂正部へと与える信頼性情報として利用する請求項2記載のマルチキャリア変調信号受信装置。
【請求項4】
符号化された信号がエラー訂正できた信号から生成された場合には、
エラー訂正した信号から生成した信号点と復調後の受信シンボル点のユークリッド距離をキャリア単位に積算し、
符号化された信号がエラー訂正できなかった信号から生成された場合には、
復調後の受信シンボル点と、復調後の受信シンボル点から最も近い送信符号点とのユークリッド距離を大きく補正した上でキャリア単位に積算し、
符号化された信号が、エラー訂正できなかった信号とエラー訂正できた信号から生成された場合には、エラー訂正できた信号から決定される符号点の候補のうち、復調後の受信シンボル点から最も近い符号点を送信符号点とみなし、復調後の受信シンボル点と、送信符号点とみなした信号点とのユークリッド距離を積算し、前記ユークリッド距離をキャリア単位に積算し得られた値を、妨害信号量とみなして誤り訂正部へと与える信頼性情報として利用する請求項3記載のマルチキャリア変調信号受信装置。
【請求項5】
前記第2の誤り訂正部からの入力信号が前記第2の誤り訂正部で実施された誤り訂正処理回数をカウントし、誤り訂正処理回数が所定回数未満のときに前記符号化部に信号を出力する誤り訂正カウント部を備えたことを特徴とする請求項1記載のマルチキャリア変調信号受信装置。
【請求項6】
アンテナ部により受信された信号から所定の周波数帯域のマルチキャリアの信号を選局するチューナ部と、
前記チューナ部から入力したマルチキャリアの信号をサンプリングし、デジタル信号へと変換するA/D変換処理部と、
前記A/D変換処理部から入力した信号をマルチキャリアの信号を復調し、キャリア毎に受信シンボル点と伝送路特性の推定結果のデータ列を生成する復調部と、
前記復調部から入力した受信シンボル点と伝送路特性の推定結果のデータ列の並び替えを行うデインタリーブ処理部と、
前記デインタリーブ処理部から入力した並び替えた受信シンボル点と伝送路特性の推定結果から信頼性情報を生成する第1のデマッピング処理部と、
前記第1のデマッピング処理部より入力したビットデータの信頼性情報に基づいて、誤り訂正処理を行い、送信信号系列を復元する第1の誤り訂正部と、
前記第1の誤り訂正部から入力した送信信号系列が前記第1の誤り訂正部で実施された誤り訂正処理回数をカウントし、誤り訂正処理回数が所定回数未満のときに前記符号化部に信号を出力する誤り訂正カウント部と、
前記誤り訂正カウント部から入力した送信信号系列を復元したデータに対し符号化処理を行い、前記符号化処理と並行して、符号処理後の信号が誤り訂正できなかった信号から生成されたかどうかを判定するエラー訂正可能範囲を示す信号を生成する符号化部と、
前記符号化部から入力した符号化処理を行ったデータをキャリア変調方式に従いマッピングを行ったマッピング点の情報とエラー訂正可能範囲を示す信号を生成するマッピング処理部と、
前記デインタリーブ処理部から入力した受信シンボル点と、前記マッピング処理部から入力したマッピング点の情報とマッピング点の誤り有無情報とのタイミングをそろえ、前記受信シンボル点と前記マッピング点の情報との距離を算出する符号間距離算出・累積処理部と、
前記デインタリーブ処理部から入力した並び替えた受信シンボル点と伝送路特性の推定結果を前記マッピング処理部から入力したマッピング点の情報とマッピング点の誤り有無情報と、
前記符号間距離算出・累積処理部から入力した前記受信シンボル点と前記マッピング点の情報との距離情報と、デインタリーブ処理部から入力した伝送路特性の推定結果からデマッピング処理を行い、前記第1の誤り訂正部に出力する第2のデマッピング処理部と、
前記誤り訂正カウント部がカウントした誤り訂正処理回数が所定回数以上のときにTS再生処理部に信号を出力するマルチキャリア変調信号受信装置。

【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−55368(P2013−55368A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1673(P2010−1673)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】