説明

マルチチャネルアナライザおよび放射線測定システム

【課題】マルチチャネルアナライザ計測者の負担を軽減する。
【解決手段】所定のクロックで被測定信号をサンプリングして得られたサンプリングデータに基づいて被測定信号のピークを検出し、ピーク値を取得するマルチチャネルアナライザにおいて、被測定信号と所定のトリガレベルとを比較して、トリガ信号を発生するトリガ検出部と、ピーク検出時点のトリガ信号発生時点からのクロック数である第1クロック数を計測するピーク検出部と、外部から入力されるスタート信号からトリガ信号発生時点までのクロック数である第2クロック数を取得する時間情報取得部と、第1クロック数と第2クロック数とを合計しスタート信号からピーク検出時点までのクロック数である第3クロック数を算出する時間情報処理部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力信号波形から所定の事象が発生したことを検出し、入力信号波形のピーク値を計測するとともに、基準時刻から事象発生までの時間を計測するマルチチャネルアナライザおよびそのようなマルチチャネルアナライザを含む放射線測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
加速させた粒子を原子等の試料ターゲットに打ち込み、物理学的な相互作用により粒子を放出させて、入射粒子のエネルギーと、放出された粒子のエネルギーとを同時に測定することで相互作用等の解析を行なう放射線測定システムが知られている。
【0003】
図6は、従来の放射線測定システムの構成例を示すブロック図である。放射線測定システム200では、粒子Aを入射放射線源220から原子等の試料ターゲット230に打ち込み、物理学的な相互作用を誘引する。すると、相互作用の結果、試料ターゲット230からγ線、β線等の放射線が放出される。ここでは、粒子Bが放出されるものとする。
【0004】
放射線測定システム200では、入射粒子Aのエネルギーと、放出された粒子Bのエネルギーとを同時に測定することで、相互作用等の詳細な解析を行なう。放出された粒子Bのエネルギーは、エネルギー検出器240、増幅器250、マルチチャネルアナライザ(MCA)260を用いることで測定することが可能である。
【0005】
入射粒子Aのエネルギーについては、打ち出し時にそのエネルギー制御が可能な場合には、あらかじめエネルギーを決定することが可能であるが、中性子のようにエネルギー制御が難しい粒子の場合には、粒子打ち出し後に何らかの手段でエネルギーを測定しなければならない。ただし、入射粒子Aはプローブの役割を担うため、相互作用前にそのエネルギーに変化を与えるような直接的な測定は好ましくない。また、中性子のような電荷を持たない粒子の場合には、電場・磁界等を用いた間接的な測定も原理的に不可能である。
【0006】
このため、加速させた粒子Aの飛行時間(TOF:Time of Flight)を測定することが行なわれている。粒子Aの飛行距離Lは既知であるため、粒子Aの飛行時間が測定できれば粒子Aの飛行速度が算出でき、結果として粒子Aの運動エネルギーを取得することができる。
【0007】
粒子Aの飛行時間は、出力制御部210の制御によって入射放射線源220から粒子Aが打ち出された時刻と、MCA260によって粒子Bが検出された時刻との差によって求めることができる。なお、1回の入射タイミングで複数の粒子Aが打ち出されることがあり、この場合、一般に個々の粒子Aの速度は異なるものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−122167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
入射放射線源220から粒子Aが打ち出された時刻と、粒子Bが検出された時刻との差の従来の測定方法について、図6と図7とを参照して説明する。まず、図6に示すように、出力制御部210とMCA260に対して、同時にSTART信号を入力し、共通の測定開始時刻をt0とする。
【0010】
そして、出力制御部210では、入射放射線源220から粒子Aを打ち出した時刻を時系列的に記録する。図7の例では、粒子Aが出力された時刻ta、時刻tb、時刻tcが記録される。一方、MCA260では、粒子Bを検出した時刻を時系列的に記録する。図7の例では、粒子Bが検出された時刻t1、t2、t3、t4が記録される。このとき、エネルギーを計測するためにピーク値P1、P2、P3、P4も時刻に対応付けて記録する。
【0011】
その後、計測者が粒子Aの打ち出し時刻と粒子Bの検出時刻との対応付けを行ない、粒子Aの飛行時間を算出する。図7の例では、時刻taに打ち出された粒子Aによって時刻t1に粒子Bが放出されたと考えられるため、飛行時間はt1−taと算出される。また、時刻t2、時刻t3に粒子Bが検出されていることから、時刻tbに2個の粒子Aが打ち出されたと考えられ、それぞれの飛行時間は、t2−tb、t3−tbと算出される。さらに、時刻tcに打ち出された粒子Aによって時刻t4に粒子Bが放出されたと考えられるため、飛行時間はt4−tcと算出される。
【0012】
このように、従来は、粒子Aの打ち出し時刻と、粒子Bの検出時刻との対応付けを行なって飛行時間を算出するため、計測者の負担が大きいという問題がある。
【0013】
そこで、本発明は、事象発生を示す信号波形のピーク値を計測するとともに、基準時刻から事象発生までの時間を計測する際における計測者の負担を軽減するマルチチャネルアナライザおよびそのようなマルチチャネルアナライザを含む放射線測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様であるマルチチャネルアナライザは、所定のクロックで被測定信号をサンプリングして得られたサンプリングデータに基づいて前記被測定信号のピークを検出し、ピーク値を取得するマルチチャネルアナライザにおいて、前記被測定信号と所定のトリガレベルとを比較して、トリガ信号を発生するトリガ検出部と、ピーク検出時点の前記トリガ信号発生時点からのクロック数である第1クロック数を計測するピーク検出部と、外部から入力されるスタート信号から前記トリガ信号発生時点までのクロック数である第2クロック数を取得する時間情報取得部と、前記第1クロック数と前記第2クロック数とを合計することで前記スタート信号から前記ピーク検出時点までのクロック数である第3クロック数を算出する時間情報処理部と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
ここで、前記スタート信号の入力回数をカウントするショット番号用カウンタと、前記トリガ信号発生時点における前記ショット番号用カウンタのカウント値を取得するショット番号取得部と、をさらに備えるようにしてもよい。
【0016】
また、取得された前記ピーク値と、算出された前記第3クロック数に基づく時間とを対応付けて記録する記録部をさらに備えるようにしてもよい。
【0017】
上記課題を解決するため、本発明の第2の態様である放射線測定システムは、試料ターゲットに粒子を打ち込むタイミングでスタート信号を発生する出力制御部と、前記粒子の入射によって発生した放射線のエネルギーを検出し、被測定波形に変換するエネルギー検出器と、所定のクロックで前記被測定信号をサンプリングして得られたサンプリングデータに基づいて前記被測定信号のピークを検出し、ピーク値を取得するマルチチャネルアナライザとを有する放射線測定システムであって、前記マルチチャネルアナライザは、前記被測定信号と所定のトリガレベルとを比較して、トリガ信号を発生するトリガ検出部と、ピーク検出時点の前記トリガ信号発生時点からのクロック数である第1クロック数を計測するピーク検出部と、前記スタート信号発生時点から前記トリガ信号発生時点までのクロック数である第2クロック数を取得する時間情報取得部と、前記第1クロック数と前記第2クロック数とを合計することで前記スタート信号から前記ピーク検出時点までのクロック数である第3クロック数を算出する時間情報処理部とを備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明のマルチチャネルアナライザおよび放射線測定システムによれば、事象発生を示す信号波形のピーク値を計測するとともに、基準時刻から事象発生までの時間を計測する際における計測者の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態に係る放射線測定システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態におけるMCAの構成を示すブロック図である。
【図3】MCAが行なう処理手順の具体例について説明するタイミングチャートである。
【図4】粒子Aが打ち出された時刻と、粒子Bが検出された時刻との差の本実施形態における測定方法について説明するタイミング図である。
【図5】本発明の適用例を説明する図である。
【図6】従来の放射線測定システムの構成例を示すブロック図である。
【図7】粒子Aが打ち出された時刻と、粒子Bが検出された時刻との差の従来の測定方法について説明するタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る放射線測定システムの構成を示すブロック図である。本図に示すように、放射線測定システム100は、出力制御部110、入射放射線源120、試料ターゲット130、エネルギー検出器140、増幅器150、MCA(マルチチャネルアナライザ)160、データ収集・解析部170を備えている。
【0021】
出力制御部110は、入射放射線源120から粒子Aを試料ターゲット130に打ち込むための制御を行なうとともに、粒子Aの打ち出しタイミングに同期したSTART信号を生成して、MCA160に出力する。
【0022】
入射放射線源120は、例えば、粒子加速器を用いることができ、出力制御部110の制御により加速した粒子Aを試料ターゲット130に打ち込む。1回の打ち込みを1ショットと呼ぶこととする。
【0023】
試料ターゲット130は、原子等とすることができ、入射された粒子Aとの相互作用により粒子Bを放出する。入射放射線源120と試料ターゲットとの距離、すなわち粒子Aの飛行距離Lは既知であるとする。1ショットで複数個の粒子Aが打ち出される場合があるが、その場合、放出される粒子Bの数も複数となり得る。複数の粒子Aは、一般に個別の速度を有しており、したがって、放出される個々の粒子Bの発生タイミングは、対応する個々の入射粒子Aの試料ターゲット130への到達時刻に依存する。
【0024】
エネルギー検出器140は、粒子Aの入射に誘引されて試料ターゲット130中から放出された粒子Bのエネルギーを検出し、電荷量に変換してアナログ波形信号として出力する。
【0025】
増幅器150は、例えば、積分型のプリアンプと波形整形アンプとを含み、エネルギー検出器140の出力信号の増幅、整形を行なう。増幅器150が出力するパルス状波形のピーク値が粒子Bのエネルギーに対応し、パルス状波形のピーク時刻が粒子Bの放出時刻に対応する。
【0026】
MCA160は、時間計測機能を備えており、増幅器150が出力するアナログ波形信号をデジタルサンプリングすることでデジタルデータに変換し、デジタルデータに基づいて波形のピークを検出して、その値と時刻とを計測する。
【0027】
また、MCA160は、出力制御部110からSTART信号を入力し、START信号が入力された時刻をピーク検出時刻の基準とする。START信号は、入射粒子Aの打ち出しタイミングであるため、START信号を入力した時刻からピークを検出した時刻までの時間が入射粒子Aの飛行時間と一致することになる。さらに、MCA160は、出力制御部110から入力されたSTART信号の数をカウントすることでショット番号を管理することができる。ただし、この機能は省くようにしてもよい。
【0028】
図2は、本実施形態におけるMCA160の構成を示すブロック図である。本図に示すように、MCA160は、アナログ処理部161、トリガ検出部162、ピーク検出部163、時間計測用タイマカウンタ164、時間情報取得部165、時間情報処理部166、ショット番号用カウンタ167、ショット番号取得部168、記録部169を備えている。MCA160は、演算装置、記憶装置、タイマ、インタフェース等を備えており、これらの機能部は、ソフトウェア的に実現してもよいしハードウェア的に実現してもよい。
【0029】
アナログ処理部161は、増幅器150から入力されたアナログ信号のゲイン調整やオフセットの調整を行なう。トリガ検出部162は、例えば、コンパレータを用いて構成することができ、アナログ処理部161の出力波形とトリガレベル電圧とを比較して、トリガ信号を発生する。なお、さらにトリガセレクタを設けて、外部トリガ信号等の複数種類のトリガから、目的に応じたトリガ信号を選択できるようにしてもよい。
【0030】
ピーク検出部163は、トリガ信号を入力すると、アナログ処理部161から入力されたパルス状信号のピークを検出し、ピーク値およびピーク時刻の測定を行なう。ここでのピーク時刻は、トリガ信号入力値時刻に対する時刻(クロックカウント値)とする。トリガ信号入力値時刻からピーク時刻までの時間がクロックカウント値として測定されることになる。
【0031】
ピーク検出部163は、アナログ信号波形をサンプリングして得られたデジタルデータを用いてピーク検出を行なう。測定されたピーク値は、ピーク値データとして記録部169に記録する。トリガ信号入力値時刻からピーク時刻までの時間(クロックカウント値)は、時間情報処理部166に入力される。
【0032】
時間計測用タイマカウンタ164は、常時動作し、入力クロックによりカウントアップする。入力クロックは、ピーク検出部163に入力するクロックと同一とする。時間計測用タイマカウンタ164は、出力制御部110から入力されたSTART信号によりリセットされる。したがって、START信号を基準としたクロック数が常時カウントされることになる。
【0033】
時間情報取得部165は、トリガ検出部162からトリガ信号が入力されると、時間計測用タイマカウンタ164のカウント値を読み出し、時間情報処理部166に出力する。したがって、START信号入力時刻からトリガ信号入力時刻までの時間がカウント値として出力されることになる。
【0034】
時間情報処理部166は、時間情報取得部165から入力した時間計測用タイマカウンタ164のカウント値と、ピーク検出部163から入力したピーク検出時のトリガ信号入力に対するクロックカウント値とを足し合わせることで、START信号からピーク検出時までのクロックカウント数を算出する。クロック間隔は既知であるため、このクロックカウント数に基づいて、START信号から入力波形のピーク時までの時間、すなわち、入射粒子Aの飛行時間を算出することができる。算出された時間は、時間データとして記録部169に記録する。
【0035】
ショット番号用カウンタ167は、出力制御部110から入力されたSTART信号の数をカウントする。ショット番号用カウンタ167は、プリセット機能を備えており、初期値の設定が可能である。
【0036】
ショット番号取得部168は、トリガ検出部162からトリガ信号が入力されると、ショット番号用カウンタ167のカウント値を読み出し、ショット番号データとして記録部169に記録する。ショット番号データを記録することで、複数の放射線測定システムを並行に運用する際のデータ管理が容易となる。
【0037】
図1の説明に戻って、データ収集・解析部170は、例えば、PC等の情報処理装置を用いることができ、MCA160の記録部169に粒子Bの検出毎に記録された3つのデータ、すなわち、ピーク値データ、時間データ、ショット番号データを収集し、解析、保管等の処理を行なう。
【0038】
次に、本実施形態におけるMCA160が行なう処理の具体例について図3のタイミングチャートを参照して説明する。まず、時間計測用タイマカウンタ164は、START信号が入力されると、カウントリセットされ、クロック毎にカウントアップする。また、ショット番号用カウンタ167は、START信号が入力されると、カウントアップし、本図の例ではショット番号Sを示している。
【0039】
その後、粒子Bが検出され、トリガ信号が発生すると、時間情報取得部165は、時間計測用タイマカウンタ164のカウント値Mを読み出して、時間情報処理部166に入力する。
【0040】
また、ピーク検出部163は、トリガ信号が入力されると、入力波形のサンプリングを開始し、サンプリング・カウンタ用クロック毎に、所定期間サンプリングを継続する。サンプリング期間は、少なくとも波形が立ち上がってからピークが過ぎるまでの時間を確保しておく。
【0041】
そして、取得したデジタルデータから最大値を検出し、これをピーク値とするとともに、トリガ信号からピークまでのクロック数をカウントする。このカウントはリアルタイムで行なう必要はない。本図の例では、サンプリングデータに基づいてピーク値Pか検出され、クロック数Nがカウントされたものとする。ピーク値Pは、記録部169で記録され、カウント値Nは、時間情報処理部166に入力する。
【0042】
なお、ピーク検出の際に、ピーク付近の波形をサイン波等で補間することにより、クロック間隔やA/D変換器の精度を超えた、より精密なピーク検出を行なえるようにしてもよい。
【0043】
その後、時間情報処理部166がカウント値Mとカウント値Nとを足し合わせることでSTART信号からピーク検出時までのクロックカウント数を算出する。ここで、カウント値Mは、第2クロック数に相当し、カウント値Nは、第1クロック数に相当し、カウント値Mとカウント値Nとの合計は、第3クロック数に相当する。
【0044】
クロック間隔は既知であるため、合計されたクロックカウント数に基づいて、START信号から入力波形のピーク時までの時間、すなわち、入射粒子Aの飛行時間を算出することができる。算出された時間は、記録部169に記録する。
【0045】
カウント値Mの計測とカウント値Nの計測は同一のクロックを用いるため、時間測定の誤差は、使用するクロックの精度が十分よいものとすれば、1クロックの周期相当となる。この誤差は、波形信号振幅や波形信号幅に依存しない固定値であるため、取り扱いが簡易であり、データ解析・評価が煩雑になることを防ぐことができる。
【0046】
なお、カウント値Mとカウント値Nを足し合わせずに、そのままの値を出力する測定モードを設けるようにしてもよい。これにより、例えば、START信号からトリガ信号までの時間を計測することができるようになる。
【0047】
以上により、記録部169には、入射粒子Aが打ち出されてから、粒子Bが1個検出される毎に、ピーク値データ、時間データ、ショット番号データが関連付けられてセットで記録されることになる。仮に、同一のショットで複数の粒子Bが放出された場合であっても、粒子B毎のセットデータが個別に記録されるため、システム構成を変更する必要がなく、計測結果の管理が容易である。
【0048】
例えば、図4に示すように、粒子Aの打ち出しが3回あった場合でも、打ち出しタイミング毎に時刻がリセットされ、それぞれショット番号で管理されるため、ショット1において時刻t1に粒子Bが検出されると、即座に粒子Aの飛行時間がt1であり、ピーク値がP1であると把握することができる。
【0049】
また、ショット2において時刻t2と時刻t3で粒子Bが検出されると、複数個の粒子Aについてそれぞれ飛行時間がt2、t3であり、ピーク値がそれぞれP2、P3であることが把握される。さらに、ショット3において時刻t4に粒子Bが検出されると、即座に粒子Aの飛行時間がt4であり、ピーク値がP4であると把握することができる。
【0050】
上記実施形態では、粒子Aの飛行時間測定と、粒子Aと試料ターゲット130とが相互作用することで放出される粒子Bのエネルギー測定とを同時行なう放射線測定システムを例にしたが、本発明は、図5に示すように、試料に対して、何らかの刺激を与え、有限な時間後に発生する何らかの現象を検出器で検出して電気信号に変換し、その信号の大きさ(ピーク値)と信号発生までの時間ΔTとを同時計測するようなアプリケーションや装置、システムであれば、広く適用することができる。
【0051】
現象発生の誘因例としては、放射線入射による核変化や、励起、化学反応等の化学変化、振動、圧力等の物理的変化等があげられ、発生する現象例としては、放射線、蛍光線等の放射、振動、圧力変化等があげられる。ここで発生する信号の振幅(ピーク値)は放射線のエネルギーや、分子の励起準位であったり、相互作用の大きさ等に相当し、信号発生までの時間ΔTは、寿命等の物理量であったり、反応あるいは応答速度の大きさに関係した量となる。
【0052】
本発明は、これらの2つの量を同時計測し、その相関関係を調べるようなアプリケーションや装置、システムについて、構成を簡略化し、正確かつわかりやすく運用できるようになり、計測者の負担を大きく軽減させることができるようになる。
【符号の説明】
【0053】
100…放射線測定システム、110…出力制御部、120…入射放射線源、130…試料ターゲット、140…エネルギー検出器、150…増幅器、160…MCA(マルチチャネルアナライザ)、161…アナログ処理部、162…トリガ検出部、163…ピーク検出部、164…時間計測用タイマカウンタ、165…時間情報取得部、166…時間情報処理部、167…ショット番号用カウンタ、168…ショット番号取得部、169…記録部、170…データ収集・解析部、200…放射線測定システム、210…出力制御部、220…入射放射線源、230…試料ターゲット、240…エネルギー検出器、250…増幅器、260…MCA(マルチチャネルアナライザ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のクロックで被測定信号をサンプリングして得られたサンプリングデータに基づいて前記被測定信号のピークを検出し、ピーク値を取得するマルチチャネルアナライザにおいて、
前記被測定信号と所定のトリガレベルとを比較して、トリガ信号を発生するトリガ検出部と、
ピーク検出時点の前記トリガ信号発生時点からのクロック数である第1クロック数を計測するピーク検出部と、
外部から入力されるスタート信号から前記トリガ信号発生時点までのクロック数である第2クロック数を取得する時間情報取得部と、
前記第1クロック数と前記第2クロック数とを合計することで前記スタート信号から前記ピーク検出時点までのクロック数である第3クロック数を算出する時間情報処理部と、を備えたことを特徴とするマルチチャネルアナライザ。
【請求項2】
前記スタート信号の入力回数をカウントするショット番号用カウンタと、
前記トリガ信号発生時点における前記ショット番号用カウンタのカウント値を取得するショット番号取得部と、をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のマルチチャネルアナライザ。
【請求項3】
取得された前記ピーク値と、算出された前記第3クロック数に基づく時間とを対応付けて記録する記録部をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のマルチチャネルアナライザ。
【請求項4】
試料ターゲットに粒子を打ち込むタイミングでスタート信号を発生する出力制御部と、
前記粒子の入射によって発生した放射線のエネルギーを検出し、被測定波形に変換するエネルギー検出器と、
所定のクロックで前記被測定信号をサンプリングして得られたサンプリングデータに基づいて前記被測定信号のピークを検出し、ピーク値を取得するマルチチャネルアナライザとを有する放射線測定システムであって、
前記マルチチャネルアナライザは、
前記被測定信号と所定のトリガレベルとを比較して、トリガ信号を発生するトリガ検出部と、
ピーク検出時点の前記トリガ信号発生時点からのクロック数である第1クロック数を計測するピーク検出部と、
前記スタート信号発生時点から前記トリガ信号発生時点までのクロック数である第2クロック数を取得する時間情報取得部と、
前記第1クロック数と前記第2クロック数とを合計することで前記スタート信号から前記ピーク検出時点までのクロック数である第3クロック数を算出する時間情報処理部と、を備えたことを特徴とする放射線測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−106826(P2011−106826A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258933(P2009−258933)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】