説明

マルチディスプレイシステム及びコンピュータ

【課題】 それぞれ異なる解像度によりオブジェクトを表示する複数のディスプレイ間において、一のディスプレイからオブジェクトを切取り又は複写し、他のディスプレイに貼り付ける場合であっても、オブジェクトを適切な表示サイズで表示することができるマルチディスプレイシステムを提供する。
【解決手段】 第1のディスプレイ20に表示されるオブジェクトから第2のディスプレイ30に貼り付けられる選択オブジェクトが指定されると、キー情報値テーブルから第1のディスプレイ20の解像度情報を示すキー情報値と、重み情報値テーブルから第2のディスプレイ30の解像度情報を示す重み情報値とを取得することができる。これらの情報値からオブジェクトサイズ変換率が決定され、この変換率によって選択オブジェクトが拡張又は縮小されるため、適切な表示サイズにおいて貼付けをすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のディスプレイがコンピュータに接続されて成るマルチディスプレイシステム及びこのシステムに好適なコンピュータに関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるマルチディスプレイシステムは、公開平10−187110号公報に開示されているように、2台以上の複数のディスプレイが1台のサーバ等に接続されることにより構成されている。マルチディスプレイシステムにおいては、1台のサーバ等から同時に複数のディスプレイに様々なオブジェクトを表示することが可能となる。
【0003】
したがって、例えば、一のディスプレイで文書を作成しながら、他のディスプレイに画像を表示しておけば、一のディスプレイのウィンドウを切り換えたり、改めて画像を検索したりするといった手間をかけることなく、表示中の画像の一部を文書中に取り込むことができる。また、一のディスプレイ上で文書作成画面と画像とを表示した場合には、表示領域が狭くなって作業し難くなるが、マルチディスプレイシステムは、このような不便さを解消することができ、快適な文書作成環境を提供することができる。
【特許文献1】特開平10−187110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このようなマルチディスプレイシステムにおいては、一のディスプレイに高い解像度で表示されるオブジェクトの一部を切り取り又は複写して、低い解像度で表示中の他のディスプレイに貼り付けると、解像度の相違により、貼り付けられたオブジェクトは他のディスプレイで拡大表示され、画面上からはみ出してしまう。また、これとは逆に、一のディスプレイに低い解像度で表示されるオブジェクトの一部を切り取り又は複写して、高い解像度で表示中の他のディスプレイに貼り付けると、貼り付けられたオブジェクトは高解像度表示中のディスプレイの画面上では小さすぎてしまうこととなる。このため、このシステムの使用者は、いずれかのディスプレイにおいて、表示サイズの調整をわざわざ行わざるを得ず、不便を被ることとなる。
【0005】
本発明は、かかる不都合に鑑み、それぞれ異なる解像度によりオブジェクトを表示する複数のディスプレイ間において、一のディスプレイからオブジェクトを切取り又は複写し、他のディスプレイに貼り付ける場合、オブジェクトを適切な表示サイズで表示することができるマルチディスプレイシステムを提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明の別の目的は、マルチディスプレイシステムに好適なコンピュータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施の形態に係るマルチディスプレイシステムは、第1のディスプレイに表示されるオブジェクトから部分選択される選択オブジェクトのデータを格納する格納部と、第1のディスプレイの表示解像度を示す第1の解像度情報と選択オブジェクトを表示する第2のディスプレイの表示解像度を示す第2の解像度情報とに基づいて、選択オブジェクトのサイズを変換するためのオブジェクトサイズ変換率を決定する決定手段と、オブジェクトサイズ変換率に基づいてデータを変換して変換データを生成する変換手段と、変換データを用いて第2のディスプレイに選択オブジェクトを表示する表示手段とを備える。
【0008】
本発明の実施の形態に係るコンピュータは、オブジェクトから部分選択される選択オブジェクトのデータを格納する格納部と、オブジェクトが表示される表示解像度を示す第1の解像度情報と、選択オブジェクトが表示される表示解像度を示す第2の解像度情報とに基づいて、データのサイズを変換するためのサイズ変換率を決定する決定手段と、サイズ変換率に基づいてデータを変換して変換データを得る変換手段と、変換データを用いて選択オブジェクトを表示する表示手段とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、それぞれ異なる解像度によりオブジェクトを表示する複数のディスプレイ間において、第1のディスプレイからオブジェクトを切取り又は複写し、第2のディスプレイに貼り付ける場合に、オブジェクトを適切な表示サイズで表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(第1の実施の形態)
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る第1の実施の形態によるマルチディスプレイシステムについて説明する。
【0011】
第1の実施の形態によるマルチディスプレイシステム1は、図1に示す通り、パーソナルコンピュータ10(以下、PC10)と、PC10にそれぞれ接続された第1のディスプレイ20及び第2のディスプレイ30とにより構成されている。
【0012】
PC10は、ディスプレイ20,30の画面上へのオブジェクト表示を制御する機能を有し、具体的には、第1のディスプレイ20を制御するドライバ11と、このディスプレイ20に表示するオブジェクトのオブジェクトデータを格納するメモリ12(VRAM)と、第2のディスプレイ30を制御するドライバ13と、このディスプレイ30に表示するオブジェクトのオブジェクトデータを格納するメモリ14(VRAM)と、を備える。
【0013】
ドライバ11,13は、ディスプレイ20,30が、いずれの解像度によりオブジェクトを表示するか(又は表示しているか)についての情報、すなわち、解像度情報を有している。解像度情報としては、例えば、VGA、SVGA、・・・、QUXGAの区別を表す指標であってよい。
【0014】
また、PC10はメモリ15を備える。メモリ15には、キー情報記憶部151と重み情報記憶部152が設けられている。キー情報記憶部151はキー情報値テーブルを有する。キー情報値テーブルは、ディスプレイの解像度を示す解像度情報と、その解像度情報に対応付けられたキー情報値とから構成されている。
【0015】
例えば、図2に例示するキー情報値テーブルにおいては、解像度情報VGAに対して500、SVGAに対して400、XGAに対して312.5、SXGAに対して250、UXGAに対して200、QUXGAに対して100という値が対応付けられている。これらの値は、各解像度について、横(又は縦)方向の全ドット数と、各解像度のキー情報値との積が等しくなるように決定されている。具体的には、3200×2400(dpi)のQUXGAの場合は、横方向のドット数3200とキー情報値100とを乗じると、320,000であり、1600×1200(dpi)のUXGAの場合は、横方向のドット数1600とキー情報値200とを乗じると、同じく320,000である。これら以外の解像度の場合も、同様の結果となる。
【0016】
一方、重み情報記憶部152は重み情報値テーブルを有する。重み情報値テーブルは、ディスプレイの解像度を表示する解像度情報と、その解像度情報に対応付けられた重み情報値とから構成されている。
【0017】
例えば、図3に例示するキー情報値テーブルにおいては、解像度情報VGAに対して0.2、SVGAに対して0.25、XGAに対して0.32、SXGAに対して0.4、UXGAに対して0.5、QUXGAに対して1という値が対応付けられている。これらの値は、同じ解像度に対するキー情報値(図2)との積が等しくなるように決定されている。具体的には、QUXGAの場合は、キー情報値100(図2)と重み情報値1(図3)との積は100であり、UXGAの場合は、キー情報値200と重み情報値0.5との積も同じく100である。これら以外の解像度の場合も、同様の結果となる。ここで、同じ解像度についてのキー情報値と重み情報値との積である100という値は、オブジェクトサイズ変換率を100%とするように決定した値である。同じ解像度の間では、オブジェクトデータの拡張も圧縮も必要ないからである。
【0018】
なお、キー情報値は元のオブジェクトが表示されるディスプレイ(表示元のディスプレイ)について用いられ、重み情報値は選択オブジェクトが貼り付けられることになるディスプレイ(貼付先のディスプレイ)について用いられる。
【0019】
再び図1を参照すると、PC10のメモリ15にはデータバッファ部153が設けられている。データバッファ部153は、元のオブジェクトのオブジェクトデータのうち選択オブジェクトに対応するオブジェクトデータ(選択オブジェクトデータ)をメモリ12(又は14)から取り込み、格納する。また、データバッファ部153は、後述するオブジェクトサイズ変換率と選択オブジェクトデータとから得られた変換オブジェクトデータを格納する。
【0020】
さらに、PC10は、表示元のディスプレイの解像度(詳細には、もとのオブジェクト又は選択オブジェクトが表示されていた解像度)についてのキー情報値と、貼付先のディスプレイの解像度についての重み情報値とに基づいてサイズ変換率を算出する演算処理部16を有している。なお、ドライバ11,13、メモリ12,14、メモリ15、及び演算処理部16は、共通バス17を介してコントローラ18により制御されている。
【0021】
PC10に接続されるディスプレイ20,30は、ドライバ11,13に制御され、PC10のメモリ12,14内のオブジェクトデータに基づくオブジェクトを画面上に表示する。これらディスプレイ20,30は、設定により、所定の解像度でオブジェクトを表示することができる。本実施の形態においては、説明の便宜上、第1のディスプレイ20は、QUXGA(3200×2400dpi)の解像度でオブジェクトを表示するものとし、第2のディスプレイ30は、UXGA(1600×1200dpi)の解像度でオブジェクトを表示するものとする。
【0022】
次に、図4及び5を参照しながら、第1の実施の形態によるマルチディスプレイシステム1の処理動作について説明する。はじめに、ディスプレイ20に高解像度(QUXGA)で表示されるオブジェクトの一部を、これよりも低い解像度(UXGA)に設定されているディスプレイ30へ貼り付ける場合(高→低)を説明し、次いで、この逆の場合(低→高)を説明する。
【0023】
(1)(高→低)の場合
以下では、マルチディスプレイシステム1の使用者は、例えば、ディスプレイ30(UXGA)において、ワードプロセッサソフトにより文書を作成しながら、ディスプレイ20(QUXGA)に写真の画像(オブジェクト)を表示し、その一部を複写操作と貼付け操作により文書中に挿入する場合を想定している。
【0024】
まず、ディスプレイ20(図5)の画面上に表示されるオブジェクトAの一部がマウス等の入力補助装置を利用して部分選択され、複写操作により指定される(S1)。ここで、図5に模式的に示す通り、オブジェクトAが山を背景とした花の写真の画像であり、その花が部分選択されたとすると、この選択された花の画像が選択オブジェクトBに相当する。
【0025】
オブジェクトAを表示するためのオブジェクトデータは、PC10内のメモリ12に保持されており、選択オブジェクトBが指定されると、このオブジェクトデータの中から、選択オブジェクトBに対応するオブジェクトデータがメモリ15内のデータバッファ部153に格納される(S2)。
【0026】
この後(又はこれと同時に)、メモリ15は、ディスプレイ20に関する解像度を示す解像度情報をドライバ11から取得する(S3)。解像度情報は、どの解像度によりオブジェクトA又はこれから選択されたオブジェクトBが表示されているかに関する情報であり、本実施の形態におけるディスプレイ20については、QUXGAである。次いで、キー情報格納部151に格納されるキー情報値テーブル(図2)が参照されて、QUXGAに対応するキー情報値が取得される(S4)。図2に示す通り、QUXGAに対応するキー情報値は100であり、すなわち、ここでは100という値が取得される。
【0027】
なお、選択オブジェクトBがディスプレイ20に表示されるオブジェクトAから部分選択されたことは、マウス等により位置制御されるポインタの座標位置から知ることができ、これにより、ドライバ11からディスプレイ20の解像度情報を取得すべきことが判断される。
【0028】
次に、メモリ15は、選択オブジェクトBが貼り付けられることになるディスプレイ30(貼付先のディスプレイ)の解像度を示す解像度情報をドライバ13から取得する(S5)。この解像度情報は、選択オブジェクトが表示されようとしているディスプレイ30がどの解像度に設定されているかに関する情報であり、本実施の形態におけるディスプレイ30については、UXGAである。次いで、重み情報格納部152に格納される重み情報テーブル(図3)が参照されて、UXGAに対応する重み情報値が取得される(S6)。図3に示す通り、UXGAに対応する重み情報値は0.5であり、すなわち、ここでは0.5という値が取得されることとなる。
【0029】
なお、選択オブジェクトBがディスプレイ30に貼り付けられようとしていることは、マウス等により位置制御されるポインタの座標位置から知ることができ、これにより、ドライバ13からディスプレイ30の解像度情報を取得すべきことがわかる。
【0030】
取得されたキー情報値100及び重み情報値0.5は、演算処理部16において互いに乗算されて、オブジェクトサイズ変換率50という値が算出される(S7)。この値は、選択オブジェクトデータを50%に縮小することを意味する。
【0031】
この後、オブジェクトサイズ変換率(値50)に基づいて選択オブジェクトデータが50%に縮小され、このようにして得られた変換オブジェクトデータがデータバッファ部153に格納される(S8)。そして、データバッファ部153から、変換オブジェクトデータはディスプレイ30の画面上に表示されるオブジェクトのオブジェクトデータを格納するメモリ14へと送信される。これにより、ディスプレイ20の画面上で部分選択された選択オブジェクトBがオブジェクトCとしてディスプレイ30の画面上に表示される。以上により、図5に模式的に示すように、オブジェクトCはディスプレイ30の画面からはみ出すことなく、適切な大きさで表示されることとなる。
【0032】
(2)(低→高)の場合
次いで、ディスプレイ30に低解像度(UXGA)で表示されるオブジェクトの一部を、これよりも高い解像度(QUXGA)に設定されているディスプレイ20へ貼り付ける場合について、(高→低)の場合との相違点を中心に説明する。
【0033】
まず、ディスプレイ30(図5)に表示されるオブジェクトの一部がマウス等の入力補助装置を利用して部分選択され、切取り操作又は複写操作により指定されると(S1)、この選択オブジェクトに対応するオブジェクトデータがメモリ14からデータバッファ部153に格納される(S2)。
【0034】
この後(又はこれと同時に)、メモリ15は、ディスプレイ30に関する解像度を示す解像度情報(UXGA)をドライバ13から取得する(図5のS3’)。次いで、キー情報格納部151に格納されるキー情報値テーブル(図2)が参照されて、UXGAに対応するキー情報値である200という値が取得される(図5のS4’)。すなわち、メモリ15が取得するキー情報値は、常に、表示元のディスプレイについての値である。
【0035】
次に、メモリ15は、選択オブジェクトの貼付先のディスプレイ20の解像度情報(QUXGA)をドライバ11から取得する(図5のS5’)。次いで、重み情報格納部152に格納される重み情報テーブル(図3)が参照されて、QUXGAに対応する重み情報値である1という値が取得される(図5のS6’)。すなわち、メモリ15が取得する重み情報値は、常に、貼付先のディスプレイについての値を取得する。
【0036】
上述の通り、取得されたキー情報値200及び重み情報値1は、演算処理部16において互いに乗算されて、オブジェクトサイズ変換率200という値が算出される(S7)。この値は、選択オブジェクトデータを200%に拡張することを意味する。
【0037】
この後、オブジェクトサイズ変換率(値200)に基づいて、選択オブジェクトデータが200%に拡張されて、変換オブジェクトデータが得られる(S8)。そして、変換オブジェクトデータが、ディスプレイ20の画面上に表示されるオブジェクトのオブジェクトデータを格納するメモリ12へと送信される。これにより、ディスプレイ30の画面上で部分選択された選択オブジェクトがディスプレイ20の画面上に表示される。このオブジェクトは、変換オブジェクトデータに基づくため、ディスプレイ20の画面上で小さすぎることなく、適切な大きさで表示されることとなる。
【0038】
以上の通り、第1の実施の形態によれば、表示元のディスプレイ20(又は30)の解像度を示す解像度情報QUXGA(又はUXGA)に基づいてキー情報値テーブルが参照されてキー情報値100(又は200)を取得し、選択オブジェクトの貼付先のディスプレイ30(又は20)の解像度を示す解像度情報UXGA(又はQUXGA)に基づいて重み情報値テーブルが参照されて重み情報値0.5(又は1)を取得することができる。そして、キー情報値と重み情報値とが乗算されて、選択オブジェクトを縮小(又は拡大)するためのオブジェクトサイズ変換率50%(又は200%)を決定することができる。
【0039】
次いで、このサイズ変換率に基づいて、選択オブジェクトのオブジェクトデータが圧縮(又は拡張)されて、変換オブジェクトデータが得られる。この変換オブジェクトデータに基づいて、選択オブジェクトが貼付先のディスプレイ20(又は30)に表示されるため、選択オブジェクトはディスプレイ20(又は30)の画面からはみ出ることなく(又は小さすぎることなく)適切な大きさで表示される。
【0040】
したがって、貼り付けた後に表示サイズを変換するといった操作が不要となり、利便性を向上することができる。また、キー情報値テーブル及び重み情報値テーブルは、種々の解像度に対応したキー情報値及び重み情報値を有するため、複数のディスプレイがどのような解像度に設定されていても、その解像度に合せて各情報値を変更するような余分な操作は全く必要ない。
【0041】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係るマルチディスプレイシステムについて説明する。以下の説明で参照する図面においては、第1の実施の形態によるマルチディスプレイシステム1と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0042】
第2の実施の形態によるマルチディスプレイシステム2は、図6を図1と比較すると、第1の実施の形態によるマルチディスプレイシステム1とほぼ同様の構成を有し、PC10が、マルチディスプレイシステム1においてはキー情報格納部151と重み情報格納部152とを有するに代わり、解像度情報格納部154を有する点で相違する。以下では、この相違点を中心に説明する。
【0043】
図6を参照すると、解像度情報格納部154は解像度情報テーブルを有している。解像度情報テーブルは、図7に例示されるように、表示元のディスプレイについての解像度情報と、貼付先のディスプレイについての解像度情報と、これらに対応付けられたオブジェクトサイズ変換率とで構成される。図7を参照すると、例えば、表示元のディスプレイの解像度がQUXGAであり、貼付先のディスプレイの解像度がUXGAである場合には、オブジェクトサイズ変換率は50となる。これは、第1の実施の形態において、QUXGAに対するキー情報値100と、UXGAに対する重み情報値0.5とを乗算して得た値50と同一である。すなわち、図7に例示するテーブルの各オブジェクトサイズ変換率は、第1の実施の形態におけるキー情報値及び重み情報値と同様にして得ることができる。
【0044】
次に、図8及び9を参照しながら、第2の実施の形態によるマルチディスプレイシステム2の処理動作について説明する。以下では、ディスプレイ20に高い解像度(QUXGA)で表示されるオブジェクトの一部を、これよりも低い解像度(UXGA)に設定されているディスプレイ30に貼り付ける場合を想定している。
【0045】
図8は、マルチディスプレイシステム2の処理動作を示すフロー図である。また、図9は、図8のフロー図に対応して、データ等の流れを図6に示すマルチディスプレイシステム2の構成図上で模式的に示す図である。
【0046】
まず、ディスプレイ20(図9)に表示されるオブジェクトAの一部がマウス等の入力補助装置を利用して部分選択され、切取り操作又は複写操作によって選択オブジェクトBが指定される(S11)。
【0047】
オブジェクトAを表示するためのオブジェクトデータは、PC10内のメモリ12に保持されており、選択オブジェクトBが指定されると、このオブジェクトデータの中から、選択オブジェクトBに対応するオブジェクトデータがメモリ15内のデータバッファ部153に格納される(S12)。
【0048】
この後(又はこれと同時に)、メモリ15は、ディスプレイ20に関する解像度情報をドライバ11から取得し(S13)、かつ、選択オブジェクトBの貼付先のディスプレイがディスプレイ30であることを検知すると、その解像度を示す解像度情報をドライバ13から取得する(S14)。
【0049】
次いで、解像度情報格納部154に格納される解像度情報テーブル(図7)が参照されて、表示元のディスプレイ20の解像度QUXGAと、貼付先のディスプレイ30の解像度UXGAとに対応するオブジェクトサイズ変換率50という値が取得される(S15)。
【0050】
この後、オブジェクトサイズ変換率の値50は、メモリ16内のデータバッファ部153へ送られる。そして、オブジェクトサイズ変換率に基づいて、選択オブジェクトデータが50%に縮小されて、変換オブジェクトデータが得られる(S16)。この後、変換オブジェクトデータが、ディスプレイ30の画面上に表示されるオブジェクトのオブジェクトデータを格納するメモリ14へと送信される。これにより、選択オブジェクトBがオブジェクトとしてディスプレイ30の画面上に表示される。以上により、図9に例示的に示すように、オブジェクトはディスプレイ30の画面からはみ出すことなく、適切な大きさで表示されることとなる。
【0051】
また、これまでとは逆に、低い解像度(UXGA)でディスプレイ30に表示されるオブジェクトの一部を、高い解像度(QUXGA)で表示中のディスプレイ20に貼り付ける場合には、表示元のディスプレイ30の解像度UXGAと、貼付先のディスプレイ20の解像度QUXGAとに対応するオブジェクトサイズ変換率200という値が取得される。そして、この値に基づいて、選択オブジェクトに対応する選択オブジェクトデータが拡張されて、変換オブジェクトデータが得られる。このデータを用いて選択オブジェクトがディスプレイ20の画面上に表示される(S17)ため、小さすぎることなく、適切な大きさで表示される。
【0052】
以上の通り、第2の実施の形態によれば、表示元のディスプレイ20(又は30)の解像度を示す解像度情報QUXGA(又はUXGA)と、選択オブジェクトの貼付先のディスプレイ30(又は20)の解像度を示す解像度情報UXGA(又はQUXGA)とに基づいて解像度情報値テーブルが参照されてオブジェクトサイズ変換率50%(又は200%)が取得される。
【0053】
次いで、このサイズ変換率に基づいて、取り込まれた選択オブジェクトに係るオブジェクトデータが圧縮(又は拡張)されて、変換オブジェクトデータが生成される。そして、この変換オブジェクトデータに基づいて、選択オブジェクトが貼付先のディスプレイ20(又は30)に表示される。このため、選択オブジェクトはディスプレイ20(又は30)の画面からはみ出ることなく(又は小さすぎることなく)適切な大きさで表示される。
【0054】
したがって、貼り付けた後に表示サイズを変換するといった操作が不要となり、利便性を向上することができる。また、解像度情報テーブルは、種々の解像度に対応したオブジェクトサイズ変換率を有するため、複数のディスプレイがどのような解像度に設定されていても、その解像度に合せて設定を変更するような余分な操作は全く必要ない。
【0055】
以上、いくつかの実施の形態を参照しながら、本発明に係るマルチディスプレイシステムについて説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限られることなく、種々の変形が可能である。例えば、第1及び第2の実施の形態では、パーソナルコンピュータ(PC10)に2台のディスプレイが接続されて構成されたマルチディスプレイを例示したが、PC10に代わり、サーバであってもよいことは言うまでもない。
【0056】
また、ディスプレイは、液晶表示ディスプレイ、プラズマ表示ディスプレイ、有機エレクトルミネセンス表示ディスプレイといった種々のディスプレイであってよく、この場合、解像度情報として、その方式に適した情報を利用できる。さらに、サーバ等に接続されるディスプレイの台数は2台に限定されることはなく、3台以上であってもよい。この場合であっても、選択オブジェクトの貼付先のディスプレイの解像度を示す解像度情報に基づいて、重み情報を取得すれば良いことは明らかである。
【0057】
さらに、キー情報値及び重み情報値についても、第1の実施の形態に例示する値に限られることなく、適宜変更可能である。さらにまた、解像度情報テーブルにおける各数値についても第2の実施の形態に限られるものでないことは勿論である。
【0058】
さらにまた、選択オブジェクトは、元のオブジェクトの一部に限らず、その全体であってもよく、オブジェクトのデータの一部が全部であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るマルチディスプレイシステムの構成を示す概略図である。
【図2】図1に示すマルチディスプレイシステムのキー情報値テーブルの一例を示す図である。
【図3】図1に示すマルチディスプレイシステムの重み情報値テーブルの一例を示す図である。
【図4】図1に示すマルチディスプレイシステムの処理動作を示すフロー図である。
【図5】図4のフロー図に対応したデータ等の流れを付加したマルチディスプレイシステムの構成図を示す概略図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るマルチディスプレイシステムの構成を示す概略図である。
【図7】図6に示すマルチディスプレイシステムの解像度情報テーブルの一例を示す図である。
【図8】図6に示すマルチディスプレイシステムの処理動作を示すフロー図である。
【図9】図8のフロー図に対応したデータ等の流れを付加したマルチディスプレイシステムの構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0060】
1,2・・・マルチディスプレイシステム
10・・・パーソナルコンピュータ
11,13・・・ドライバ
12,14・・・メモリ(VRAM)
15・・・メモリ
16・・・演算処理部
18・・・コントローラ
151・・・キー情報格納部
152・・・重み情報格納部
153・・・データバッファ部
154・・・解像度情報格納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のディスプレイに表示されるオブジェクトから部分選択される選択オブジェクトのデータを格納する格納部と、
前記第1のディスプレイの表示解像度を示す第1の解像度情報と前記選択オブジェクトを表示する第2のディスプレイの表示解像度を示す第2の解像度情報とに基づいて、前記選択オブジェクトのサイズを変換するためのオブジェクトサイズ変換率を決定する決定手段と、
前記オブジェクトサイズ変換率に基づいて前記データを変換して変換データを生成する変換手段と、
前記変換データを用いて前記第2のディスプレイに前記選択オブジェクトを表示する表示手段と、
を備えることを特徴とするマルチディスプレイシステム。
【請求項2】
前記第1の解像度情報と、該第1の解像度情報に対応付けられたキー情報値とから構成されたキー情報値テーブルと、
前記第2の解像度情報と、該第2の解像度情報に対応付けられた重み情報値とから構成された重み情報値テーブルと、
を更に有し、
前記決定手段は、前記キー情報値テーブルから前記キー情報値を取得し、前記重み情報値テーブルから前記重み情報値を取得し、これらの値に基づいて前記オブジェクトサイズ変換率を決定することを特徴とする請求項1に記載のマルチディスプレイシステム。
【請求項3】
前記第1の解像度情報と前記第2の解像度情報とを対応付けたオブジェクトサイズ変換率テーブルを更に有し、
前記決定手段は、前記第1及び前記第2の解像度情報に基づいて、前記変換率テーブルから前記オブジェクトサイズ変換率を決定することを特徴とする請求項1に記載のマルチディスプレイシステム。
【請求項4】
第1の表示解像度において表示されるオブジェクトから部分選択される選択オブジェクトのデータを格納する格納部と、
前記第1の表示解像度を示す第1の解像度情報と、前記選択オブジェクトが表示される表示解像度を示す第2の解像度情報とに基づいて、前記データのサイズを変換するためのサイズ変換率を決定する決定手段と、
前記サイズ変換率に基づいて前記データを変換して変換データを得る変換手段と、
前記変換データを用いて前記選択オブジェクトを表示する表示手段と、
を備えることを特徴とするコンピュータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−30379(P2006−30379A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−205996(P2004−205996)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(301063496)東芝ソリューション株式会社 (1,478)
【Fターム(参考)】