説明

マルチメディア放送再放射装置

【課題】 マルチメディア放送信号を家屋内で微弱な出力で再放射する。
【解決手段】 放送局からのマルチメディア放送信号が伝送されている共同受信システムの端末端子4に接続された可変減衰器14が、マルチメディア放送信号のレベルを調整する。レベル調整されたマルチメディア放送信号を放射部22が放射する。可変減衰器14及び放射部22が本体部8内に配置されている。本体部8には、マルチメディア放送信号を受信可能な携帯電話機6が配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばVHF帯を使用して放送されるマルチメディア放送を再放射する装置に関し、特に家屋内において使用するものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばマルチメディア放送の再放射の技術としては、例えば特許文献1に開示されているようなものがある。この技術では、衛星からデジタルマルチメディア放送信号を送信し、このデジタルマルチメディア放送信号を放送用端末機で受信し、この放送用端末機から複数の移動通信端末機にマルチメディア放送信号を再放射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−141020号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
VHF帯の地上アナログ放送が2011年に停止されるので、その空いたVHF帯を使用してマルチメディア放送が計画されている。このマルチメディア放送では、ダウンロード放送が計画されている。このダウンロード放送では、暗号化したマルチメディア放送信号を移動通信端末で受信し、移動通信端末内のメモリに蓄積し、課金処理を行うことにより、暗号を解除して、視聴を行うものである。移動通信端末において暗号化されたマルチメディア放送信号をダウンロードすることは、例えば家庭内で行われると想定される。しかし、家庭内ではマルチメディア放送信号の受信レベルが低く、正常に受信できない可能性がある。この場合、特許文献1に開示されているような放送用端末機を家庭内に設置することも考えられるが、放送用端末機は、複数の移動通信端末に再放射することが可能なものであり、その出力が大きく、総務省の免許が必要となり、家庭内での使用が不可能である。
【0005】
本発明は、家庭内でマルチメディア放送信号を再放射可能なマルチメディア放送再放射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるマルチメディア放送再放射装置は、放送局からのマルチメディア放送信号が伝送されているテレビジョン共同受信システムなどの端末端子にレベル調整手段が接続される。このレベル調整手段は、テレビジョン共同受信システムの端末端子から供給された前記マルチメディア放送信号のレベルを調整する。このレベル調整手段によってレベル調整された前記マルチメディア放送信号を放射手段が、放射する。レベル調整手段と放射手段とが、本体部内に配置されている。本体部には、前記マルチメディア放送信号を受信可能な可搬型受信手段が配置される。
【0007】
このように構成されたマルチメディア放送再放射装置では、テレビジョン共同受信システムの端末端子からのマルチメディア放送信号のレベルがレベル調整手段で調整され、放射手段から放射される。これらレベル調整手段及び放射手段は本体部内に設置されており、この本体部に可搬型受信手段が載置されるので、放射手段と可搬型受信手段とは接近しており、総務省からの免許が不要な微弱な出力でしか再放射されないように、レベル調整手段によってマルチメディア放送信号のレベルが調整されていても、可搬型受信手段ではマルチメディア放送信号を良好に受信することができる。
【0008】
前記レベル調整手段は、自動利得制御手段を備えるものとすることができる。自動利得制御手段を備えることによって、レベル調整手段から出力されるマルチメディア放送信号のレベルを予め定めた値(放射手段から放射されたマルチメディア放送信号のレベルが免許不要な微弱な出力となる値)に自動的に調整することができる。
【0009】
前記レベル調整手段は、手動のレベル調整手段とすることができる。この場合、マルチメディア放送信号のレベル表示手段が設けられる。これによって、手動によってマルチメディア放送信号のレベルを調整できるが、その際にレベル表示手段の表示を目安にして手動でレベル調整を行える。
【0010】
前記本体部内には、前記可搬型受信手段が備える充電池を充電する充電手段を設けることができる。この場合、前記本体部に前記可搬型受信手段が載置されたとき、前記充電手段が前記充電池を充電する。このように構成すると、可搬型受信手段がマルチメディア放送信号をダウンロードしているとき、可搬型受信手段の充電池は、充電手段によって充電されているので、ダウンロード中に充電池の容量が減少せず、ダウンロードの途中で可搬型受信手段が動作停止することを防止できる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明によれば、マルチメディア放送信号を家屋内で微弱な出力で再放射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態のマルチメディア放送再放射装置2の使用状態を示す斜視図である。
【図2】図1のマルチメディア放送再放射装置2のブロック図である。
【図3】図1のマルチメディア放送再放射装置2で使用しているAGC回路のブロック図である。
【図4】本発明の第2の実施形態のマルチメディア放送再放射装置2aの一部のブロック図である。
【図5】図4のマルチメディア放送再放射装置2aで使用しているAGC回路のブロック図である。
【図6】本発明の第3の実施形態のマルチメディア放送再放射装置2bの一部のブロック図である。
【図7】本発明の第4の実施形態のマルチメディア放送再放射装置2cの使用状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1実施形態のマルチメディア放送再放射装置2は、例えば放送局からVHF帯を使用して送信されるマルチメディア放送信号を、各家庭で受信し、家庭内の共同受信システムを介して、図1に示すような端末端子4に伝送されている状態において、この端末端子4に接続して、家庭内で再送信するものである。再送信されたマルチメディア放送信号を、可搬型受信手段、例えば携帯電話機6で受信し、例えばダウンロードする。家庭内では、放送局からのマルチメディア放送信号のレベルが低く、家庭内にある携帯電話機6そのままでは、良好にダウンロードすることができないような場合に、マルチメディア放送再放射装置2が使用される。
【0014】
マルチメディア放送再放射装置2は、本体部8を有している。本体部8は、携帯電話機6を縦長の状態で保持するU字状の保持部10を有している。本体部8内には、図2に示すような回路が構成されている。端末端子4に同軸ケーブルを介して接続される入力端子12が設けられている。入力端子12に供給されたマルチメディア放送信号は、レベル調整手段、例えば可変減衰器(ATT)14においてレベルが調整された後、選択手段及び増幅手段、例えばバンドパスフィルタ付きの増幅部16においてバンドパスフィルタの帯域内の信号(マルチメディア放送信号がその帯域内に存在する。)が増幅される。バンドパスフィルタ付き増幅部16の出力の一部は、自動利得制御手段、例えばAGC回路18に供給され、バンドパスフィルタ付き増幅部16の出力が予め定めたレベルとなるように、可変減衰器14を調整する。このように自動利得制御によって予め定めたレベルに調整されたバンドパスフィルタ付き増幅部16の出力は、予め定めた減衰量だけ減衰部20によって減衰され、放射手段、例えば放射部22に供給される。放射部22としては例えば低利得アンテナ、具体的にはプリント基板(可変減衰器14、バンドパスフィルタ付き増幅部16、AGC回路18、減衰部20がその上に構成されているプリント基板)上に構成したパターンやコイルを使用することができる。この放射部22から放射される出力が、免許が不要な最大レベルとなるように、AGC回路18によって可変減衰器14が調整されている。
【0015】
従って、例えばマルチメディア放送信号を携帯電話機6によってダウンロードする場合、保持部10に携帯電話機6を保持しておくと、微弱なレベルで放射部22から放射されたマルチメディア放送信号が、ごく近傍にある携帯電話機6において確実に受信することができ、ダウンロードの失敗などが生じることはない。また、放射部22から放射されているマルチメディア放送信号は、可変減衰器14において免許が不要な最大レベルに調整されているので、このマルチメディア放送再放射装置2の使用に際して、免許の取得は不要である。
【0016】
携帯電話機6においてダウンロードが行われている最中に、携帯電話機6の充電池(図示せず)の容量が減少し、携帯電話機6が動作不能となると、ダウンロードが失敗する。そこで、商用交流電源の入力を受けて、可変減衰器14、バンドパスフィルタ付き増幅部16、AGC回路18、減衰部20等への動作電力を供給している電源部24の電力の一部が充電部26に供給され、保持部10に携帯電話機6が載置されたとき、充電部26が自動的に携帯電話機6の充電池を充電するように構成されている。これによって、携帯電話機6によってダウンロードが行われている間に、携帯電話機6が動作を停止することはない。
【0017】
AGC回路18としては、例えば図3に示すようなものを使用できる。バンドパスフィルタ付き増幅部16から供給されたマルチメディア放送信号は、増幅及び検波部28(AMP・DET)によって、増幅され、かつレベル検波される。このレベル検波信号が比較器30に供給され、基準信号源32からの基準信号と比較される。その比較結果が、可変減衰器14へ供給される。
【0018】
第2の実施形態のマルチメディア放送再放射装置2aの一部を図4に示す。このマルチメディア放送再放射装置2aでは、入力端子12に供給された信号のうちマルチメディア放送信号が選択手段、例えばバンドパスフィルタ34によって選択され、可変減衰器14に供給される。バンドパスフィルタ34の出力信号がAGC回路18a及び可変減衰器14に供給され、可変減衰器14の出力レベルが予め定めた値になるように、AGC回路18aが可変減衰器14を制御する。この可変減衰器14の出力が放射部22に供給される。他の構成は、第1の実施形態のマルチメディア放送再放射装置2と同一であるので詳細な説明は省略する。なお、バンドパスフィルタ34の出力側または可変減衰器14の出力側に増幅部を設けることも可能である。
【0019】
AGC回路18aとしては、例えば図5に示すようなものを使用することができる。バンドパスフィルタ34から供給されたマルチメディア放送信号は、増幅及び検波部35(AMP・DET)によって増幅され、かつレベル検波される。そのレベル検波信号が、A/D変換器36によってデジタル化され、制御手段、例えばマイクロコンピュータ38に供給される。マイクロコンピュータ38は、予め定めたレベルに対応する基準信号とデジタル化されたレベル検波信号との差を表すデジタル差分信号を発生する。このデジタル差分信号がD/A変換器40においてアナログ差分信号に変換され、増幅器42で増幅され、可変減衰器14に供給される。
【0020】
第3の実施形態のマルチメディア放送再放射装置2bの一部を図6に示す。このマルチメディア放送再放射装置2bは、AGC回路18に代えて手動利得制御回路44を備えている点で、第1の実施形態のマルチメディア放送再放射装置2と異なる。即ち、手動利得制御回路44は、可変抵抗器46を有し、その一端が制御信号源48に接続されている。可変抵抗器46の腕が可変減衰器14に接続されている。可変抵抗器46の腕の位置を調整することによって可変減衰器14での減衰量を調整することができる。但し、可変抵抗器46の腕の調整の目安となるものが無いと、調整が面倒である。
【0021】
そこで、バンドパスフィルタ付き増幅部16の出力の一部が、増幅及び検波部49に供給されている。増幅及び検波部49は、バンドパスフィルタ付き増幅部16から出力されたマルチメディア放送信号のレベルを表すレベル検波信号を出力する。このレベル検波信号は、比較手段、例えば比較器50において基準信号源52からの基準信号(放射部22から放射されるマルチメディア放送信号のレベルが免許不要となるために必要な最大レベルに対応)と比較される。比較器50は、レベル検波信号が基準信号以上となると、出力を発生する。この出力に発生に応じて、表示手段、例えばLED54が点灯する。LED54は、本体部8の適所に外部から確認できるように配置されている。
【0022】
例えば、可変減衰器14の減衰量が最大になるように可変抵抗器46の腕を調整した状態では、増幅及び検波部49のレベル検波信号は基準信号よりも小さく、LED54は点灯していない。この状態から可変減衰器14の減衰量が小さくなる方向に、可変抵抗器46の腕を徐々に移動させていき、LED54がちょうど点灯した状態で、可変抵抗器46の腕の移動を停止させる。これによって、バンドパスフィルタ付き増幅部16の出力レベルが、放射部22から放射されるマルチメディア放送信号のレベルが免許不要となる最大レベルとなる。逆に、可変減衰器14の減衰量が最小となるように可変抵抗器46の腕を移動させたことによって、LED54を点灯させ、この状態から可変減衰器14の減衰量が大きくなる方向に可変抵抗器46の腕を徐々に移動させて、LED54が点灯から消灯に変化した位置で、可変抵抗器46の腕の移動を停止させることもできる。他の構成は、第1の実施形態のマルチメディア放送再放射装置2と同一であるので詳細な説明は省略する。
【0023】
第4の実施形態のマルチメディア放送再放射装置2cを図7に示す。このマルチメディア放送再放射装置2cでは、箱型の本体部8aが使用されている。内部に配置される回路は、第1乃至第3の実施形態において示したもののいずれか1つである。箱型の本体部8aの上面に携帯電話機6が載置され、携帯電話機6は、本体部8a内の放射部22から放射されるマルチメディア放送信号を受信し、ダウンロードする。なお、本体部8aの側面には、電源コンセント56が設けられている。
【0024】
上記の各実施形態では、本体部8内に電源部24を設けて、商用交流電源から可変減衰器14等の動作電力を生成したが、本体部8の外部に電源部24を設けることもできるし、或いは本体部8内に電源部24に代えてバッテリーのような直流電源を内蔵することもできる。また、第1及び第2の実施形態においても、第3の実施形態と同様にLED54を設けることもできる。この場合、第3の実施形態と同様に増幅及び検波部49、比較器50、基準信号源52を設けることもできるし、或いは図5に示すAGC回路18a内のマイクロコンピュータ38において、デジタルレベル検波信号と基準信号とを比較し、その比較結果に基づいてマイクロコンピュータ38がLED54を点灯するように構成することもできる。また、上記の各実施形態では、充電部26を設けたが、場合によっては除去することもできる。また、各実施形態において、放射部22の入力側からレベル調整されたマルチメディア放送信号を分岐して、図示しないアンテナ端子に供給し、このアンテナ端子に例えば携帯電話機6が備えるイヤホーンコードを接続して、このイヤホーンコードを携帯電話機6に近づけて、携帯電話機6においてマルチメディア放送信号を良好にダウンロードするように構成することもできる。また、上記の各実施形態において、携帯電話機6をマルチメディア再放射装置2、2a、2b、2cに保持させるだけでなく、その近傍に配置するだけでも、マルチメディア放送信号を良好にダウンロードすることができる。なお、上記の各実施形態では、可搬型受信手段として携帯電話機6を使用したが、これに限ったものではなく、例えばポータブルラジオ受信機、ノート型パーソナルコンピュータ、ポータブル型カーナビゲーション、携帯ゲーム機、PDA等を使用することもできる。
【符号の説明】
【0025】
2 2a 2b 2c マルチメディア放送再放射装置
4 端末端子
6 携帯電話機(可搬型受信手段)
8 8a 本体部
14 可変減衰器(レベル調整手段)
22 放射部(放射手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送局からのマルチメディア放送信号が伝送されている共同受信システムの端末端子に接続され、この端末端子から供給された前記マルチメディア放送信号のレベルを調整するレベル調整手段と、
このレベル調整手段によってレベル調整された前記マルチメディア放送信号を放射する放射手段とが、
本体部内に配置され、前記本体部には、前記マルチメディア放送信号を受信可能な可搬型受信手段が配置されるマルチメディア放送再放射装置。
【請求項2】
請求項1記載のマルチメディア放送再放射装置において、前記レベル調整手段は、自動利得制御手段を備えるものであるマルチメディア放送再放射装置。
【請求項3】
請求項1記載のマルチメディア放送再放射装置において、前記レベル調整手段は、手動のレベル調整手段であり、さらに、前記マルチメディア放送信号のレベル表示手段を有するマルチメディア放送再放射装置。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか記載のマルチメディア放送再放射装置において、前記本体部内には、前記可搬型受信手段が備える充電池を充電する充電手段が設けられ、前記本体部に前記可搬型受信手段が載置されたとき、前記充電手段が前記充電池を充電するマルチメディア放送再放射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−239101(P2011−239101A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107614(P2010−107614)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】