説明

マルチレイヤ統合伝送装置及び最適化方法

【課題】 サービスにインパクトを与えることなく、複数レイヤに跨って、その時々に応じてネットワークの最適化を行なう。
【解決手段】 本発明は、2つ以上のレイヤにおいて、それぞれのレイヤがインタフェース部とクロスコネクト部を有し、個々のレイヤのインタフェース部とクロスコネクト部が当該レイヤの装置制御部に接続されており、各レイヤの装置制御部が統合ネットワーク制御部に接続されており、当該統合ネットワーク制御部において各レイヤの情報を統合管理し、ネットワークの最適化を行う。統合ネットワーク制御部では、与えられた条件に基づいて、所定のアルゴリズムを用いて最適化指標に対応する目的関数を計算し、その結果が最適であるかを判定し、最適とされる計算結果に基づいてインタフェースの設定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチレイヤ統合伝送装置及び最適化方法に係り、特に、通信事業者のネットワークにおいて、複数のレイヤに跨ってネットワークの最適化を行うためのマルチレイヤ統合伝送装置及び最適化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通信事業者のネットワークは複数のレイヤの装置から構成されている。複数のレイヤとはレイヤ1、レイヤ2、レイヤ3などであり、具体的には、レイヤ1装置として光パスを扱う光クロスコネクト(Reconfigurable Optical Add-Drop Multiplexing; ROADM装置)や光伝送装置(Wavelength Division Multiplexing; WDM伝送装置)、電気パスを扱う電気クロスコネクト(例えばSDHクロスコネクト、ODUクロスコネクト)などがある。レイヤ2装置、レイヤ3装置としてはイーサネットスイッチとルータがそれぞれ代表格として挙げられる。これらの各レイヤの装置を組み合わせて用いることで多様なサービスの提供を可能としている。各レイヤの装置を適材適所に用いることにより経済化を図ることが可能となる。例えば、トラフィックの多くがそのまま通過するノードにおいてはルータやイーサネットスイッチをスキップすること(カットスルー)で当該装置におけるポート数の削減や消費電力の削減につながる。
【0003】
図32に従来の装置構成・ネットワーク構成を示す。各レイヤ(図中ではレイヤX、レイヤY、レイヤZと示してある)はインタフェース部4とクロスコネクト部5を備えている。レイヤXインタフェース部4Xは単一もしくは複数の上位レイヤの信号ないしはレイヤX信号を受信し、レイヤX信号としてレイヤXクロスコネクト部5Xに送出する。レイヤXクロスコネクト部5Xは、入力された複数のレイヤX信号をクロスコネクトして出力する。レイヤXクロスコネクト部5Xは、下位レイヤであるレイヤYインタフェース部4Yに信号を送出する。レイヤYにおいても上述のレイヤXと同様の処理が施される。
【0004】
各レイヤのインタフェース部4とクロスコネクト部5は当該レイヤの装置制御部3と接続されている。装置制御部3はインタフェース部4に対してインタフェース設定をしたりクロスコネクト部5に対してコネクション設定をしたりする。また逆に装置制御部3はインタフェース部4とクロスコネクト部5から実装状況や動作状況の通知を受ける。各レイヤの装置制御部3は当該レイヤのネットワーク制御部2と接続されており、ネットワーク制御部2は装置制御部3に対してインタフェース設定やコネクション設定の指示を送り、また装置制御部3から装置の状況の通知を受ける。各レイヤのネットワーク制御部2は運用者1により制御され、運用者1からのサービスオーダの指示などを受ける。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】E. Bouillet, et al., "Lightpath Re-Optimization in Mesh OpticalNetworks", IEEE/ACM Transactions on Networking, Vol. 13, No2, pp437-pp447.April,2005.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、サービスの多様化とトラフィックの大容量化が進展している。映像サービスやコンテンツ配信サービスの進展、さらにはクラウドサービスなど、これまでにも増してサービスが多様化している。さらにこれらのサービスは軒並み大容量の伝送容量を必要としている。このような新しいサービスの普及により経時変化の激しいトラフィックが増大するものと考えられる。それは必要なときに必要な容量のサービスを利用するという形態のサービスが増加するためである。その結果、通信事業者のネットワークにおいてはパスの開通、削除がより頻繁に行なわれることとなる。パスの開通はその時点のネットワークの使用状況や個々の装置の使用状況、さらには予め通信事業者が決めているパス設定の方針(レギュレーション)などに基づき、どのような経路をどの装置のどのポートを用いて接続するのかを決定する。パスの開通と削除が繰り返されるとパスの断片化が生じる。ある時点では最適と思えた経路のパスが時間の経過とともに最適ではなくなるといったことである。例えば、パスの追い張りとともに最適な条件(リソース最小、経路長最小など)からずれてくる。そのため最適化ができると同一容量のトラフィックを提供する場合であってもより少ないリソースでサービスを提供することが可能になる(図4)。
【0007】
これまでのネットワークでは最適化がなされていなされてないことが多かった。最適化が行なわれないのは、あるレイヤがクロスコネクト機能を持っておらず人手による配線を行なっているためだったり、クロスコネクト機能を持っていてもコネクション設定を変更することなくほとんど固定的に使っていたりすることに起因する。また最適化される場合であってもレイヤごとに閉じた最適化になっていた。つまり光パスはそのレイヤに閉じた最適化、電気パスもそのレイヤに閉じた最適化、などが行われていた。これは従来の伝送装置は相互に連携する動作にはなっておらず個々に独立した構成になっているためである。非特許文献1は光パス(波長)に閉じた最適化の例である。
【0008】
よって従来の技術ではレイヤを跨ってNW全体として最適化することができない。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、複数レイヤに跨って、その時々に応じてネットワークリソース(たとえばインタフェース数)や装置コストの最適化(最小化)を行なうことが可能なマルチレイヤ統合伝送装置を提供することにある。さらに当該装置においてネットワークを最適化する方法も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明(請求項1)は、複数のレイヤのネットワーク装置から構成されるネットワークにおける、マルチレイヤ統合伝送装置であって、
各レイヤの情報を統合管理する統合ネットワーク制御手段と
2つ以上のレイヤにおいて入力した信号をクロスコネクトして出力するクロスコネクト手段と、
2つ以上のレイヤにおいて、インタフェースの状況を把握し、装置制御手段に当該状況に関する情報を通知し、該装置制御手段からの指示に基づいてインタフェースの設定を行うインタフェース手段と、
各レイヤのインタフェース手段から各インタフェースの情報を収集し、統合ネットワーク制御手段に収集した該情報を通知し、該統合ネットワーク制御手段からのインタフェース設定指示を受け、該インタフェース設定指示を前記インタフェース手段に通知すると共に、前記クロスコネクト手段にコネクションの設定を行う1つ以上の装置制御手段と、
を有し、
前記統合ネットワーク制御手段は、
ネットワークから収集されたインタフェースの情報を蓄積するデータベース手段と、
所定のアルゴリズムに基づいて、パスの収容関係の最適化と最適化を図るためのパスの設定手順を計算する設定手順計算手段と、
前記設定手順計算手段が算出した計算結果が最適であるかを所定の最適化の指針に基づいて判定する条件判断手段と、
前記計算結果に基づいて該当するレイヤの装置制御手段に対してインタフェースの設定を指示する指示手段と、を有する。
【0011】
また、本発明(請求項2)は、前記統合ネットワーク制御手段の前記設定手順計算手段において、前記アルゴリズムとして整数線形計画法もしくはヒューリスティックもしくはauxiliary graphを使った方法もしくはそれらの組み合わせを用いる。
【0012】
また、本発明(請求項3)は、少なくとも1つ以上のレイヤに、プロテクション機能もしくは無瞬断(無中断)プロテクション機能を具備する。
【0013】
また、本発明(請求項4)は、少なくとも2つ以上のレイヤを含み、前記レイヤは電気パスと光パスを扱う。
【0014】
また、本発明(請求項5)は、少なくとも2つ以上のレイヤを含み、
前記レイヤは、電気パスと光パスを扱い、光パスクロスコネクトがカラーレスもしくはディレクションレスもしくはコンテンションレスもしくはそれらの組み合わせた機能を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明(請求項6)は、前記条件判断手段において、
前記所定の最適化の指針として、
使用インタフェース数最小化もしくは装置コスト最小化もしくは波長数最小化もしくは使用スイッチ容量最小化もしくは消費電力最小化もしくは波長衝突最小化のいずれかを用いる。
【0016】
また、本発明(請求項7)は、複数のレイヤのネットワーク装置から構成されるネットワーク最適化方法であって、
各レイヤの情報を統合管理する統合ネットワーク制御手段において、
ネットワークから収集されたインタフェースの情報を蓄積したデータベースを参照して、所定のアルゴリズムに基づいて、最適化指標に対応する目的関数を計算する計算ステップと、
計算結果が最適であるかを所定の最適化の指針に基づいて判定し、該当するネットワーク装置に対してインタフェースの設定を指示する最適化ステップを行う。
【0017】
また、本発明(請求項8)は、前記計算ステップにおいて、
新しい光パスが必要になった場合は、各レイヤのインタフェースをオンにして、光クロスコネクトを設定することにより新しい光パスを生成し、
電気パスを複製することにより電気クロスコネクトを設定し、電気パスの切り替えを行い、もともとの電気パスを削除し、
前記インタフェースをオフにして、光クロスコネクトの開放を行う
処理を、前記最適化ステップで前記所定の最適化の指針を満たすまで繰り返す。
また、本発明(請求項9)は、前記最適化ステップにおいて、
既設のパスも含めて全面的な最適化もしくは新たに増設するパスの増加分だけを最適化するもしくはネットワークの一部分を既設のパスも含めて全面的に最適化する。
【発明の効果】
【0018】
上記のように、本発明によれば、ネットワークを最適化するための所定のアルゴリズムを用いることにより、複数のレイヤにまたがって、ネットワークリソース(例えばインタフェース数)や装置コストの最適化(最小化)を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるマルチレイヤ統合装置の構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における統合ネットワーク制御部の構成例である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における最適化したパスの収容・経路実現のための処理のフローチャートである。
【図4】第1の実施の形態におけるパスの最適化を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態における電気パスと光パスの最適化の例である。
【図6】本発明の第2の実施の形態における最適化前の装置の状況である。
【図7】本発明の第2の実施の形態における最適化後の装置の状況である。
【図8】本発明の第2の実施の形態における最適化前後の装置の状況の比較を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態における空き容量確保の例(パスの収容関係)である。
【図10】本発明の第2の実施の形態における空き容量確保の例(装置の状況)である。
【図11】本発明の第2の実施の形態における波長変更の必要なケースである。
【図12】本発明の第2の実施の形態における波長変更(パスの収容関係)である。
【図13】本発明の第2の実施の形態における波長変更(装置の状況)(その1)である。
【図14】本発明の第2の実施の形態における波長変更(装置の状況)(その2)である。
【図15】本発明の第2の実施の形態におけるクロスコネクトの挿入または抜去(パスの収容関係)である。
【図16】本発明の第2の実施の形態におけるクロスコネクトの挿入または抜去(装置の状況)である。
【図17】本発明の第2の実施の形態におけるビットレート変更(パスの収容関係)である。
【図18】本発明の第2の実施の形態におけるビットレート変更(装置の状況)(その1)である。
【図19】本発明の第2の実施の形態におけるビットレート変更(装置の状況)(その2)である。
【図20】本発明の第3の実施の形態における統合ネットワーク制御部の構成例(その1)である。
【図21】本発明の第3の実施の形態における統合ネットワーク制御部の構成例(その2)である。
【図22】本発明の第3の実施の形態におけるマルチレイヤ管理サブシステム動作例である。
【図23】本発明の第4の実施の形態におけるマルチレイヤ統合装置例である。
【図24】本発明の第5の実施の形態におけるレイヤYがプロテクションを具備する例である。
【図25】本発明の第5の実施の形態におけるレイヤYインタフェースの構成例である。
【図26】本発明の第5の実施の形態におけるレイヤY信号プロテクションを示す図である。
【図27】本発明の第5の実施の形態における同一レイヤZパス内で二重化した例である。
【図28】本発明の第5の実施の形態におけるクロスコネクトが分岐・選択も兼ねる例である。
【図29】本発明の第5の実施の形態における電気パスプロテクションの例である。[0]
【図30】本発明の第6の実施の形態における電気パスと光パスを示す図である。
【図31】本発明の第6の実施の形態における光クロスコネクトがカラーレスである場合の構成例である。
【図32】従来の装置・ネットワークの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下図面と共に、本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるマルチレイヤ統合装置の構成を示す。
【0022】
同図では、マルチレイヤ統合装置のブロック構成の例として3つのレイヤ、レイヤX・Y・Zからなるものを示す。但し、レイヤ数は3に限らない。
【0023】
各レイヤはインタフェース部(IF)40とクロスコネクト部50からなる。但し、クロスコネクト部がないレイヤがあっても良い。クロスコネクトはスイッチであっても良い。インタフェース部40は上位レイヤの信号を受信し当該レイヤの信号を送信する。インタフェース部40から送信された当該レイヤの信号はクロスコネクト部50に入力されてコネクション設定に基づいて入力された信号をスイッチングし出力する。クロスコネクト部50から出力された信号は当該レイヤよりも下位のレイヤがあればそのレイヤのインタフェース部に渡される。例えばレイヤYクロスコネクト部50Yの出力はレイヤZインタフェース部40Zに渡される。下位レイヤでも上述の処理が行なわれる。
【0024】
各レイヤのインタフェース部40とクロスコネクト部50は、当該レイヤの装置制御部30と接続される。装置制御部30からインタフェース部40へはインタフェース設定を行なう。例えばインタフェースのオン・オフの設定、光を扱うインタフェースであれば波長の設定などが挙げられる。
【0025】
逆にインタフェース部40から装置制御部30へはインタフェースの実装状況や動作状況が通知される。例えば、どのような種別のインタフェースが何番スロットに挿入されていて、使用中であるのか否か、使用中であればどのくらいの容量を使用中であるのか、といった情報が通知される。
【0026】
また、装置制御部30はクロスコネクト部50に対してもクロスコネクション設定を行なう。具体的には、どの入力ポートとどの出力ポートを接続するのか、といった設定を行なう。反対にクロスコネクト部50から装置制御部30へは、実装状況や動作状況を通知する。すべてのコネクション設定がエラーなく接続されているのか、使用容量はどのくらいであるのか、といった情報が通知される。
【0027】
各レイヤの装置制御部30は統合ネットワーク制御部20と接続される。統合ネットワーク制御部20から各レイヤの装置制御部30へはインタフェースの設定指示やコネクション設定指示が送られる。装置制御部30から統合ネットワーク制御部20へは実装状況や動作状況が通知される。
【0028】
図2は、本発明の第1の実施の形態における統合ネットワーク制御部の構成を示す。
【0029】
統合ネットワーク制御部20は、少なくともデータベース部21、計算部22、条件判断部23から構成される。
【0030】
データベース部21は各レイヤの情報を収集し、蓄積する。これはネットワークの使用状況などに応じて随時更新される。具体的には、以下に示すような各レイヤのパスの情報やリソースの情報などがデータベース部に保持される。
【0031】
・どのノード間にどのくらいの容量のパスが設定されているのか;
・あるノードにはスイッチ容量いくつのクロスコネクトが配備されていて正常に動作している。インタフェースが何枚配備されていてそのうち何枚を使用中;
計算部22は、データベース部21から読み出した情報と、運用者10から入力された制約条件に基づいて、あるアルゴリズムを用いてどのようなパスをどの装置のどのポートを使い、どの経路で生成するのが最適であるかを示す最適化指標の計算を行なう。アルゴリズムとしては整数線形計画法やヒューリスティックが考えられる。条件判断部23はどのようなパラメータをもとにして最適化を行なうのかという最適化の指針と計算部22の計算結果に基づいて最適であるかどうかを判断する。最適化の指針としては、例えば、使用インタフェース数最小化、装置コスト最小化、波長数最小化、使用スイッチ容量最小化、消費電力最小化、波長衝突最小化などが考えられる。計算部22の計算結果に基づいて最適であるかどうか判断をするというのは、例えば使用インタフェース数最小化であれば最適であると判断するインタフェース数の基準(閾値)を設定してそれ以下になった場合に最適と判断する。このような機構が有用なのは、非常に大規模で複雑なネットワークにおいてである。大規模で複雑なネットワークでは真の最適化を実現するには膨大な計算、従って膨大な計算時間が必要になり現実的でないことがある。その際に真の最適解ではないが、ある程度許容できる程度の最適化であればそれほど膨大ではない計算量、現実的な計算時間で解を求めることができるためである。
【0032】
統合ネットワーク制御部20で最適なネットワークデザイン(パスの収容関係、経路、使用インタフェース、使用クロスコネクトポートなど)を決定した後に、統合ネットワーク制御部20は、現在のネットワークの状態から最適なネットワークの状態に移行するためにインタフェースの設定指示やコネクションの設定指示を各ノードの装置制御部30に指示する。現在のネットワークの状態から最適なネットワークの状態に移行するための手順を求める方法としては、auxiliary graphを使った方法などが考えられる。最適化したネットワークデザイン(パスの収容、経路など)を実現するには、例えば図3のフローチャートに示すような方法を用いる。電気パスと光パスを最適収容する際にサービスに影響を与えることなく経路などを変更する方法を示している。具体的なパスの収容関係の変更例については後述するが、電気パスや光パスの設定を順次変更していくことでネットワーク全体の最適化を図る。
【0033】
新しい光パスが必要である場合は(ステップ201、Yes)、装置制御部30は、統合ネットワーク制御部20からの指示により、インタフェース部40をオンにすると共に(ステップ202)、光クロスコネクトを設定する(ステップ203)。これにより、新しい光パスを生成する。次に、電気パスの複製を生成することにより、電気クロスコネクトを設定し(ステップ204)、遅延差の調整を行い(ステップ205)、電気パスを切り替え(ステップ206)、もともとの電気パスを削除し、電気クロスコネクトを設定する(ステップ207)ことにより、電気パスの再配置を行う。さらに、ユーザトラフィックがないかを判定し、ない場合は(ステップ208、Yes)、インタフェースをオフにし(ステップ209)、光クロスコネクトを開放する(ステップ210)ことで、光パス削除または、光パスの再構成を行う。
【0034】
以下、図4を用いて最適化の例を説明する。図3のフローチャートに示すような光パス、電気パスの操作を繰り返すことで最適化を図る。図4は4つのノードA、 B、 C、 Dからなるネットワークを示している。筒状に示したものは光パス(波長)、細線(実線、破線、一点鎖線)は電気パスを示している。図4では3つの時刻におけるネットワークの状態をパスの収容関係(電気パスと光パスの収容関係)に着目して描いている。一番左側の時点においては光パスがノードA-B、 B-C、 C-D、 A-C、 C-D間に設定されており複数の電気パスが光パスに収容されている。図4の真ん中の図は時間が経過してトラフィックが増加した様子を示している。もともと使用していた光パス、電気パスはそのまま存在している。加えて新しく発生したトラフィックを収容するために新たな光パスが生成されている。最下段に示すようにこの例ではノードA-B、 B-C、 C-D間に新たな光パスが生成されている。トラフィックは様々なノード間に発生するので設定する光パスは隣接するノード間に設定されることが多くなる。ここで最適化を実行する。図4の一番右側の図が最適化後を示している。トラフィックの状況、光パス、電気パスの使用状況をもとに統合ネットワーク制御部20が最適化を図る。この例では最下段に示す新しい光パスA-Dを設定し、A-D間の電気パスをこの新しい光パスに移設することで、点線で示した光パス4つを削除することができる。このようにパスの収容を最適化することでリソースの削減が可能となる。
【0035】
[第2の実施の形態]
本実施の形態では、最適化について具体的に説明する。
【0036】
最適化処理には、本格的な最適化処理と軽微な最適化処理がある。
【0037】
本格的な最適化処理は、大局的、時間経過による最適解からのずれを補正し、定期的実行やネットワークの最適化指標がある閾値を超えたときなどに実行する。統合ネットワーク制御部20において、ある最適化指標、あるアルゴリズムに基づいて電気パス移設、光パス移設、波長変換などを繰り返しネットワークの最適化を図るものである。
【0038】
以下、本格的な最適化処理について図を用いて詳細に説明する。複数レイヤの例として電気パスレイヤ(OTNにおけるODUパスやMPLSやMPLS-TPにおけるLSPなど)と光パスレイヤ(波長)の例を示す。説明を簡単にするためにシンプルな例を示す。図5(a)にはノードA,B,Cからなるネットワーク構成を、同図(b)には最適化前のパスの収容関係を、同図(c)には最適化後のパスの収容関係を示す。図6には最適化前のパスの収容関係とそのときの装置の使用状況を示す。電気パスレイヤと光パスレイヤのインタフェースとクロスコネクトの使用状況は図に示すとおりである。例えば電気パス1について説明すると図6(b)で分かるように、電気パス1はノードAからノードBへのトラフィックを提供するパスであり、同じくノードAからノードBへ設定された光パス1に収容されている。図6(c)に示すように、装置の使用状況としては電気パス1のIFが電気パス1の始点となり、電気パスクロスコネクトを介して光パス1のIFに渡されて、電気パス1が光パス1に収容される。光パス1はノードAの光パスクロスコネクトを介してノードBに向かう。ノードBでは光クロスコネクトを介して光パス1のIFで受信され、光パス1の中に収容されている電気パス1はノードBの電気パスクロスコネクトに渡される。その後、電気パス1のIFに渡される。
【0039】
ここで図1に示す統合ネットワーク制御部20(図5,6では図示せず)は、図6に示したパス情報、リソース情報から最適化を実施する。統合ネットワーク制御部20は図2に示したようにデータベース部21、計算部22、条件判断部23からなるが、データベース部21はパス情報、リソース情報を保持している。図6の例で言うと、
<パス情報>
・電気パス1: ノードA−ノードB間,光パス1に収容
・電気パス2: ノードA−ノードC間,光パス1と光パス3に収容

<リソース情報>
・ノードA: 電気パスIF 使用中4枚
・ノードA: 光パスIF 使用中2枚
・ノードA: 電気パスクロスコネクト,電気パス1IFの信号を光パス1IFに接続
・ノードA: 電気パスクロスコネクト,電気パス2IFの信号を光パス1IFに接続
・ノードA: 光パスクロスコネクト,光パス1IFの信号をノードBのファイバに接続

といった情報を保持している。
【0040】
計算部22はあるアルゴリズムによりパス収容の最適化を図る。アルゴリズムの例としては整数線形計画法、ヒューリスティックなどが挙げられる。この例の場合、計算部22が図5に示す最適化前の状態から最適化後の状態を求める。最適化後の状態を決めた後は、最適化前から最適化後への移行する手順をauxiliary graphを使った方法などを使用して求め、その後に各ノードの装置のIFやクロスコネクトの設定を行なう。最適化後のパスの収容関係を実現する装置の設定は図7(c)に示すもののようになる。最適化前後の装置の状況を比較するために図8にそれらの比較を示す。点線の丸をつけた部分が装置設定の変更がなされた部分である。これは統合ネットワーク制御部20の指示に基づいて設定が変更される。例えば、ノードAの電気クロスコネクトは電気パス2と電気パス3のクロスコネクト設定が変更されている。電気パス2は、最適化前は光パス1IF(1031A)に入力されていたが、最適化後は光パス5I F(1032A)に入力されている。なお、光パス5は最適化後に新たにノードA−ノードC間に設定された新しい光パスである。その他、ノードBでは電気クロスコネクトの設定変更、光パスIFのオフ設定(ノードBの2枚)、光パスクロスコネクトの設定変更、ノードCでは電気パスクロスコネクトの設定変更、光パス5IFの設定がなされている。最適化前の光パス2と光パス4は廃止され、光パス5が新設されているが、光パス5新設時には廃止した光パス2のIFを流用してもよい。
【0041】
条件判断部23は最適化指針を持っている。最適化の指針とは使用IF数最小化、伝送距離最小化、電気パスクロスコネクト使用容量最小化、などがある。これまで説明してきた例は使用IF数最小化の例と考えることが出来る。図8に示すように最適化後にはノードBにおいて光IF2枚を削減できている。またそれに付随してノードBの電気クロスコネクトの使用容量も削減できている。
【0042】
軽微な最適化処理は、局所的、単発事象の解決、あるアクション(例えば、電気パスの開通)などに付随して行われる。
【0043】
以下、軽微な最適化処理についていくつかの例を図を用いて詳細に説明する。
・空き容量の確保:
図9,図10に空き容量確保の様子を示す。図9は空き容量確保前後のパスの収容関係を示し、図10は、空き容量確保前後の装置の状況を示す。簡単な例としてノードAとノードBの2つのノードから構成されるネットワークを考える。空き容量確保前には、ノードAとノードBの間には2つの電気パス(電気パス1と電気パス2)及び2つの光パス(光パス1と光パス2)が設定されており、電気パス1は光パス1に、電気パス2は光パス2にそれぞれ収容されている。ここでノードAとノードB間に新たなトラフィックが生じて電気パス3を増設する場合を考える。このとき電気パス3は電気パス1/電気パス2よりも容量が大きく、電気パス1と電気パス2は一つの光パスに同時に収容できるが、電気パス1と電気パス3あるいは電気パス2と電気パス3は同時に一つの光パスに収容できないとする。この場合、空き容量確保を行なわないと図9の右側に示すように、電気パス3を収容するための光パス3を新設する必要がある。空き容量確保を行なう場合は図9の左側に示すようにまず光パス2に収容されていた電気パス2を光パス1に移設することで光パス2の空き容量を増加させることが出来る。その結果、図9左側の最下段に示すように光パス2に電気パス3を収容することができ、空き容量確保をしない場合と比較して光パスの本数を少なくすることができる。図10は空き容量確保前後の装置の状況を示している。電気パスクロスコネクトの設定を変更することで電気パス2を光パス2から光パス1へ移設している。そのことによって光パス2の空き容量を増加させている。その結果、光パス2には新たに電気パス3(図10では図示せず)を収容することができる。
【0044】
以上の説明は空き容量確保の最も簡単な例であって、例えばOTNにおける可変容量の電気パスであるODUflexの容量を動的に変更(増加)する際に空き容量が足りない場合などにも適用できる。
【0045】
・波長変更:
図11,12,13,14を用いて波長変更について説明する。光ネットワークでは波長衝突という問題がある。波長衝突はある拠点間に光パスを生成する際に各リンクには波長の空きがあるのに、すべてのリンクで同じ空き波長持たないために光パスを生成できないことを言う。よって波長を変更することで波長衝突を回避できる。また波長を変更できると所要リソースの削減も可能となる。
【0046】
図11に波長変更を行なうことで所要リソースが削減できる簡単な例を示す。ノードA,ノードB,ノードCからなるネットワークで当初はノードA,ノードB間に波長1が、ノードB,ノードC間に波長2が使用されている状況を考える(図11上段)。その後、ノードA,ノードC間に別の波長を生成する場合、波長変更をしないとノードA,ノードC間には波長1もしくは波長2が部分的にすでに使用されているので使用することができない。そのため図11中段に示すように別の波長3の光を設定する必要がある。波長変更が可能な場合、例えばノードB,ノードC間で使用されていた波長2を波長1に変換するとノードA,ノードC間の波長2がすべて空き波長となるので新しく設定する波長は波長2とすることができる(図11下段)。このように利用波長数を削減することができる。
【0047】
図12,13,14を用いてより具体的に装置の動作を説明する。図12に波長変更のパスの収容関係の例を示す。ノードA,ノードBからなるネットワークを考え、波長変更前にはノードA,ノードB間に光パス1(波長1)が設定されており、その光パス1に電気パス1と電気パス2が収容されている例を考える。ここで何らかの理由(図11を用いて説明したような理由など)でノードA,ノードB間の波長1を変更する必要が生じたとする。このとき、まずノードA,ノードB間に光パス2(波長2)を新設する。その後、電気パス1,電気パス2を光パス1から光パス2へ移設する。電気パスを移設した後、光パス1を削除することで、ノードA,ノードB間の電気パス1と電気パス2を収容していた光パスの波長を変更したことになる。このときの装置の状況を図13と図14に示す。なお、図13と図14に示した4つの状態は図12に示した4つの状態と対応している。波長変更前には、電気パス1と電気パス2の信号は電気パスクロスコネクトを介して光パス1のIFに渡される。光パス1は光パスクロスコネクトを介してノードBに到達し、光パス1のIF,電気パス1,電気パス2のIFでそれぞれの信号が終端される。その後、光パス2(波長2)新設のために統合ネットワーク制御部(図示せず)の指示により光パス2のIFがオンにされ、さらにノードAとノードBの光パスクロスコネクトの設定がなされて光パス2が開通する(図13下段)。さらにその後、同じく統合ネットワーク制御部(図示せず)の指示により電気パス1,2を光パス1から光パス2に移設するためにノードAとノードBの電気パスクロスコネクトの設定が切り替えられ、電気パス1,電気パス2が光パス2に収容されるようになる(図14上段)。最終的に光パス1のIFがオフにされて波長の変更が完了する(図14下段)。
【0048】
・電気パスクロスコネクト挿入・抜去
図15,16を用いてクロスコネクトの挿入もしくは抜去について説明する。図15に示すようにノードA,ノードB,ノードCからなるネットワークを考える。当初、ノードA,ノードC間に設定されている電気パス1は光パス1と光パス2によってノードAからノードCまで伝送されている。電気パス1はノードBにおいて光パス1から取り出されるため電気パスクロスコネクトを介して再度光パス2に収容されることとなる。この電気パス1を図15下段に示すようにノードA,ノードC間に設定された光パスに収容すると途中のノードBで電気パス1を操作する必要がなくなり、その結果、電気パスクロスコネクトの使用容量を削減することができる(電気パスクロスコネクト抜去)。逆に当初、電気パスクロスコネクトを介していない電気パスをクロスコネクトを介すように変更することも出来る(電気パスクロスコネクト挿入)。
【0049】
図16はクロスコネクト抜去の際の装置の状況を示したものである。なお図16の2つの状態は図15で示した2つの状態と対応している。クロスコネクト抜去前には電気パス1はノードAにおいて光パス1に収容され、ノードBにおいて光パス1のIFから電気パスクロスコネクトに渡される。電気パスクロスコネクトは電気パス1を光パス2のIFに出力して電気パス1を光パス2に収容する。光パス3はノードAからノードCに設定されている(なければ新設する)。
【0050】
その後、統合ネットワーク制御部20(図示せず)の指示によりノードA,ノードCの電気パスクロスコネクトの設定を変更して電気パス1が光パス3に収容されるようにする。このような処理により電気パス1がノードBの電気パスクロスコネクトを介さなくなり、クロスコネクトを抜去したことになる。
【0051】
・ビットレート変更:
ビットレートが混在したシステムにおいて、同一対地間の電気パスが増加してきたときに高ビットレートの光パスを増設し、低ビットレートの光パスに収容されている電気パスを移設するといった、ビットレート変更が考えられる。
【0052】
図17,18,19を用いてビットレート変更を説明する。図17上段に示すようにノードA,ノードBからなるネットワークを考える。ビットレート変更前には光パス1(ビットレート1)に電気パス1と電気パス2が収容されているとする。このとき同一対地間のトラフィックが増加してきてビットレートを増加させたいとする。その際には、まずノードA,ノードB間に光パス2(ビットレート2)を新設する。その後、電気パス1と2を光パス2に移設する。その後、光パス1を削除することで電気パス1と2が収容されている光パスが光パス1(ビットレート1)から光パス2(ビットレート2)に変更できたことになる。例えば電気パス1と2がそれぞれ5Gbit/sの信号で光パス1(ビットレート1)が10Gbit/s、光パス2(ビットレート2)が100Gbit/sだとすると、最初は5Gbit/sの信号が二つで光パス1がすべて使用されていたが、ビットレート2に変更することで空き容量を90Gbit/s用意できることになる。この例ではビットレート変更とともに波長も変わることになるが、前述の波長変更をビットレート変更の前もしくは後に行なうことで波長を変えずにビットレートを変更することもできる。図18、19にはビットレート変更時の装置の状況を示す。統合ネットワーク制御部20(図示せず)の指示により電気クロスコネクト、光クロスコネクト、光インタフェースの設定を変更することでビットレートの変更を行なう。
【0053】
[第3の実施の形態]
統合ネットワーク制御部20の例として図2を説明したが、他の例を図を用いて説明する。
【0054】
図20,21に統合ネットワーク制御部の例を示す。統合ネットワーク制御部20はマルチレイヤ管理サブシステム210、パス制御部220からなる。運用者はHMI(Human Machine Interface)を介してシステムを操作する。運用者はパス生成、パス削除、パス再配置、データベース情報ファイル出力、最適化指示などを行なう。マルチレイヤ管理サブシステム210はマルチレイヤ管理サブシステムコア部211、マルチレイヤデータベース(ネットワーク構成、収容状況を保持)212、再配置演算エンジン213などからなる。マルチレイヤ管理サブシステムコア部211は本サブシステム部分を統括する役割を担う。またデータベース(制約情報)やコンフィグファイルへのアクセスも行なう。制約情報としてはどの拠点を重点的に用いる、経路を分散させる、などの運用者の方針などが挙げられる。コンフィグファイルはどのような設定を行なうかを指示する。再配置演算エンジン213は各レイヤの再配置演算(最適化)を行なう部分と再配置順序演算(どのように最適化の状態に移行するかを決定する)を行う部分がある。前述のように再配置演算(最適化)には整数線形計画法、ヒューリスティックなどの手法が使用でき、再配置順序演算にはauxiliary graphを使った方法などが使用できる。最適化結果が得られるとマルチレイヤ管理サブシステムからパス制御部に指示が出され装置(NE:Network Element)において各レイヤのインタフェースやクロスコネクトが設定される。
【0055】
図21は、図20と比較して仮想化コアがさらに追加されている。仮想化コアを介して複数の運用者からの指示を受けることが出来る。このような構成をとることでマルチレイヤデータベース212上にネットワーク識別情報(SLA: Service Level Agreement)を管理し仮想化することが可能となる。
【0056】
図22は、マルチレイヤ管理サブシステム210の動作例を示している。大別して2つの使い方(1)と(2)を示している。図の真ん中に示しているマルチレイヤ管理サブシステム210は図20や図21で示したものである。(1)固定ルート(レギュレーション)決定は主にネットワークの運用開始時に行なうものである。伝送可能経路情報を記したファイル、波長パス需要を記したファイル、設備制約情報を記したファイルをマルチレイヤ管理サブシステム210に入力し、各対地間パスの経路情報、各リンクの収容効率が出力される。(2)波長設計・再設計は定期的もしくはあるイベントの発生、もしくは運用者からのトリガなどによって実行される。レギュレーションルート情報、波長パス需要情報、設備制約情報に加えて、既存パスの絵色波長情報を入力することで、各対地間パスの経路および波長情報、各リンクの収容効率、リンクごとの使用波長状況などが出力される。
【0057】
[第4の実施の形態]
本実施の形態におけるマルチレイヤ統合装置の構成は、前述の第1の実施の形態と同様であるが、本実施の形態では、統合ネットワーク制御部20の計算部22において、アルゴリズムとして整数線形計画法を用いるものである。
【0058】
本実施の形態は、再配置アルゴリズムに関するもので、(1)ネットワーク全体のコストを最小、もしくは装置IFの使用効率を向上させるための再配置設計を行った後で、(2)波長チャネルの使用効率を上げるための再配置設計を行う方法について説明する。
【0059】
例えば整数線形計画法を用いて、最初に、(1)ネットワーク全体のコストを最小にすることを目的関数とした演算を行い、次に、(2)ネットワーク内の総使用波長チャネル数を最小にすることを目的関数とした演算を行う。(記号の説明は図23と下記の説明を参照)
(1)で用いる数式は、
【0060】
【数1】

(2)で用いる数式は、
【0061】
【数2】

(1)、(2)で使用する共通の制約は、文献「K. Zhu, et al., "Traffic grooming in an optical WDM mesh network,"IEEE J. Select Areas Commun", vol. 20, no. 1, pp. 122-133, Jan. 2002.」で示すように、波長パスの経路・波長の設計ではフロー保存式、上位レイヤのトラフィックフローに関しては仮想トポロジを用いる。また、トラフィックをグルーミングするための制約も同様に以下の非特許文献で実現可能である。(2)に関しては、(1)で一度設計したODUパスの経路を変更しない制約及びODUIFを動かさないための制約を加える。以上から上位レイヤパスのコスト最小でかつ、その後の波長衝突を減らすことを可能とする設計が可能である。
本実施の形態で用いる記号・変数の意味は、以下に示す(図23参照)。
【0062】
●記号
v: ノード
e: リンク
f: ファイバ識別子
w: 波長番号(波長チャネル)、
p: 始点と終点のノードペア
z: ODUXCの識別子
●変数
・OTMIF,vef:ノードvにおいて、リンクe、ファイバfに接続されているOTM (Optical Transport Module) のIF (インターフェイス) の使用状況。OTMIFはWDM機能を実現するIFでありファイバと接続される。OTMIF, vef =1で使用、=0で未使用。
【0063】
・OCHIF, vefw:ノードvにおいて、リンクe、ファイバf、波長wを使用しているOCh (Optical Channel with full functionality) のIFの使用状況。OCHIF, vefw =1で使用、=0で未使用。
【0064】
・ODUXC, vz:ノードvにおいて、ODUXC (ODU(Optical channel Data Unit)パスをクロスコネクトするためのスイッチ) zの使用状況。ODUXC, vz =1で使用、=0で未使用。
【0065】
・ODUIF, vefpz:ノードv、ODUXC zにおいて、リンクe、ファイバfに接続されている始点と終点のノードペアpのODUIFの使用状況。ODUIF, vefpz ≧1で使用、=0で未使用。
【0066】
・Cxx: 装置XXのコスト値。
【0067】
本実施の形態における補足を以下に示す。
【0068】
・ODUレイヤと波長レイヤの2つのレイヤを想定しているが、ODUに関しては、SDH (Synchronous Digital Hierarchy) やMPLS-TP (Multi Protocol Label Switching Transport Profile) 等の波長レイヤよりも上位のレイヤに変更してもよい。
【0069】
・波長レイヤを含め3つ以上の複数レイヤが存在する場合も設計可能であり、その場合においては、(1)の目的関数において、複数レイヤの装置及び装置IFの変数を加えてもよい。
【0070】
・(1)で記載した装置は、コストとして考慮する必要がなければ省くことも可能である。逆に、コストとして考慮する必要があるものがあれば加えることも可能である。
【0071】
・(1)、(2)の計算はどちらか一方のみの目的関数を使用して設計をすることも可能である。
【0072】
[第5の実施の形態]
図24は、本発明の第5の実施の形態におけるレイヤYがプロテクション機能を具備する例を示す。本発明のマルチレイヤ統合伝送装置では第1の実施の形態で説明したように、例えば、電気パスレイヤ、光パスレイヤからなるネットワークでは電気パスの移設が頻繁に行なわれる。例えば、図10に示す空き容量確保の例(装置の状況)で空き容量確保前後で光パス2に収容されている電気パス2が光パス1に移設されている。このように電気パスを移設する場合にはいくつかの方法が考えられる。
【0073】
・電気パスクロスコネクトの設定を変更することで電気パスを移設する方法(信号断時間は電気パスクロスコネクトのスイッチング速度に依存する);
・電気パスプロテクションを用いて一旦2系統の電気パス信号をそれぞれの光パスに収容して、プロテクションスイッチングで切り替える方法(一般的には50ミリ秒以下のスイッチングが可能);
・無瞬断電気パスプロテクションにより切り替える方法。上述のプロテクションとほぼ同様だが2系統の電気パスの遅延差が調整されていてビット欠落なく切り替えることが可能);
第2、第3の切り替え方法を電気パス移設に適用することでサービスに与える影響を小さくして第1の実施の形態に示すような最適化を図ることが可能になる。無瞬断電気パスプロテクションを用いるとサービスに全く影響を与えずに(1ビットの欠落もなく)ネットワークの最適化を図ることが可能になる。
【0074】
本実施の形態では、レイヤYがプロテクション機能を具備する例を示しているが、少なくとも1つ以上のレイヤにおいてプロテクション機能を備えるものとする。
【0075】
図24ではレイヤYインタフェース部40(40Y、40Y)にプロテクション機能を具備している例を示してある。プロテクション機能を備えたレイヤYインタフェース部40は一つ以上のレイヤX信号を受信し必要に応じて多重してレイヤY信号を生成する。レイヤYインタフェースは当該レイヤY信号の複製を生成し、少なくとも2つに分岐してレイヤYクロスコネクトないしは下位レイヤのインタフェースに渡す。
【0076】
図25は、本発明の第5の実施の形態におけるレイヤYインタフェースの構成例を示し、同図(a)は多重なしの場合、同図(b)は多重ありの場合を示す。
【0077】
(a)多重なしの場合は、レイヤX信号受信部41がレイヤXクロスコネクト50XからレイヤX信号を受信し、レイヤX-レイヤY間アダプテーション部42がレイヤX信号からレイヤY信号を生成し、その後、分岐・選択部43に送出して2分岐されて2つのレイヤY信号送信部44に渡される(逆の信号の流れもあり)。レイヤY信号送信部44はレイヤY信号をレイヤYクロスコネクト50Yに送出する。
【0078】
(b)多重ありの場合は、レイヤX-レイヤY間アダプテーション部42の後に多重・分離部45が存在する。多重・分離部45では複数の信号が多重された後に分岐・選択部43に渡される。なお多重・分離部45と分岐・選択部43の順が逆になっていても良い。その場合は多重・分離部45、分岐・選択部43は複数備えられることとなる。
【0079】
図26は、本発明の第5の実施の形態におけるレイヤY信号のプロテクションの概要を示す。
【0080】
左側の拠点(ノードA)と右側の拠点(ノードB)間にプロテクションパスが設定されている様子を点線a,bで示している。レイヤY信号はレイヤYインタフェース部40Yで2分岐される。分岐された2つのレイヤY信号はレイヤYクロスコネクト50Yを介してレイヤZインタフェース40Z,40Zに渡される。レイヤZインタフェース40ZではレイヤY信号が収容されてそれぞれのレイヤZ信号としてもう一方の拠点まで伝送される。
【0081】
受信側の拠点(ノードB)ではレイヤZインタフェース部40,40でレイヤZ信号が終端され、レイヤY信号がそれぞれ復元される。レイヤY信号はレイヤYクロスコネクト50Yに入力されてクロスコネクション設定に基づき単一のレイヤYインタフェースに入力される。レイヤYインタフェース40Yは2つのレイヤY信号を受信するがその一方を選択して上位レイヤに渡すことになる。
【0082】
図27は、本発明の第5の実施の形態におけるレイヤY信号を同一のレイヤZパス内に二重化した例を示す。
【0083】
同図に示すように、レイヤZにおける同一パス内(図27では、レイヤYインタフェース40Z)において2つのレイヤY信号を収容する構成としても良い。
【0084】
図28は、本発明の第5の実施の形態におけるクロスコネクトが分岐・選択も兼ねる例を示す。
【0085】
同図では、レイヤYインタフェース部40Yが、図25に示すような分岐・選択部43を具備せずに、レイヤYクロスコネクト50Yが分岐・選択部の役割を果たしても良い。
【0086】
プロテクションの具体例としてはODU 1+1 プロテクション、OCh 1+1 プロテクションなどが挙げられる。ODU 1+1 プロテクションをはじめとした電気パスのプロテクションは遅延調整用のバッファを設けて複数系統の信号の遅延差を調整することで無瞬断切替も可能である。
【0087】
図29は、本発明の第5の実施の形態における電気パスプロテクションの例を示す。同図に示すように、ノードAとノードBのクライアント側インタフェース120間に現用系と予備系の電気パスを設定する。クライアント側インタフェース120で2分岐された信号はTDMクロスコネクト130を介して、NW側インタフェース140とNW側インタフェース140に渡される。NW側インタフェース140とNW側インタフェース140からの光信号は光クロスコネクト150を介してノードBまで伝送される。ノードBではNW側インタフェース140とNW側インタフェース140で光信号が終端された後、それぞれの信号に多重されているクライアント信号が分離される。分離された信号はTDMクロスコネクト130に渡されて、クライアント側インタフェース120に入力される。クライアント側インタフェース120では2系統受信した信号の一方からもう一方に切り替えることが可能である。ネットワーク最適化の際にプロテクションを使用する場合には、最初は一系統の電気パスのみを使用していて、その後、当該電気パスの複製も同じ宛先に開通させ、図29に示すような電気パス(現用系)と電気パス(予備系)が存在する状態にして、その後もともと運用していた電気パス(現用系)を電気パス(予備系)に切り替えた後に、電気パス(現用系)を削除することで電気パスの移設を行なうことが出来る。
【0088】
[第6の実施の形態]
図30は、本発明の第6の実施の形態における電気パスと光パスを示す図である。
【0089】
本実施の形態で示すマルチレイヤ統合伝送装置は少なくとも2つのレイヤを含み、それが電気パスと光パスを扱うレイヤであることを特徴するものである。
【0090】
同図において、クライアント側インタフェース120は電気パスプロテクション機能を有し、ネットワーク側インタフェース140は光パスプロテクション機能を有する。
さらに光パスのクロスコネクトがカラーレスもしくはディレクションレスもしくはコンテンションレスもしくはそれらを組み合わせたものであってもよい。カレーレスとは光クロスコネクトのポートと波長の関係が任意のものを指す。波長可変のインタフェースからの光信号をいずれの光クロスコネクトのポートへも入力することができる。例えば図31に示すような状態においてノードAのネットワーク側インタフェース140が光クロスコネクト150を介して波長2でノードBへ伝送されている状態で、ネットワーク側インタフェース140と光クロスコネクト150の接続を変更することなく、例えば波長3に波長を変更できる。ディレクションレスとは、光クロスコネクト150のポートと方路(ディレクション)の関係が任意のものを指す。光クロスコネクト150の同じポートに信号を入力しても、光クロスコネクト150の設定によって異なるノード向けの光ファイバに信号をクロスコネクトできることを言う。コンテンションレスとはひとつのノードにおいて同一波長の複数の信号を扱えることを言う。これらカラーレス、ディレクションレス、コンテンションレスといった特徴を持っていると最適化を行なう際にインタフェースの流用が可能となり、より少ないリソースでの最適化が可能となる。
【0091】
電気パスと光パスの例としてはITU-Tで規定される国際標準OTNにおけるODUとOChがそれぞれ挙げられる。その他の電気パスの例としてはMPLSもしくはMPLS-TPの LSP(label switch path)が挙げられる。よって複数のパスレイヤの組み合わせとしては、例えば
・LSP + ODU + OCh
・ODU + OCh
・LSP + OCh
などが考えられる。
【0092】
[第7の実施の形態]
統合ネットワーク制御部20が運用者に対してリソース(IF、クロスコネクト、共通部など)の増設要求、増設勧告を発出することを特徴とする。統合ネットワーク制御部20がネットワークの最適化を行なう際に、最適化を実際に実現するのにリソース(例えば光パスのインタフェース)が不足していてできない場合がある。または、リソースを追加することでより一層の効率化が図れる場合がある。または最適化手順に従って最適化を進めるが、最適化の途中で一時的に余分なリソースが必要になるケースがある。もしくは余分なリソースがあれば速やかに最適化状態に移行できる場合がある。そのような際に統合ネットワーク制御部が運用者に対して増設要求(最適化には増設が必要である場合)、増設勧告(増設するとさらなる最適化が図れる場合)をすることを特徴とする。
【0093】
[第8の実施の形態]
本実施の形態では、最適化を行なう際に既設のパスも含めて全面的な最適化を行なうことを特徴とする。全面的な最適化の例としては、図4に示したネットワークの最適化が上げられる。真ん中の図から右側の図が最適化前後の様子を示しているが、既存のパスも含めて最適化を行なっていることに特徴がある。全面的な最適化を行なうことで、より一層の使用リソース削減などが実現できる。一方で全面的な最適化は多数のパス移設、パス新設、パス廃止をともなうため、パス移設時などに信号が切断してしまうことを防ぐためには別の実施例で説明したプロテクションを使用することが出来る。全面的な最適化以外にはある期間に増設するパスのみを最適化するものやネットワークの一部分を既設のパスを含めて最適化する方法などがある。
【0094】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲内において、種々変更・応用が可能である。
【符号の説明】
【0095】
10 運用者
20 統合ネットワーク制御部
21 データベース部
22 計算部
23 条件判断部
30 レイヤ装置制御部
40 レイヤインタフェース
41 レイヤX信号送受信部
42 レイヤX−レイヤY間アダプテーション部
43 分岐・選択部
44 レイヤY信号送受信部
50 レイヤクロスコネクト
120 パケットスイッチ
120 クライアント側インタフェース部
130 TDMクロスコネクト
140 ネットワーク側インタフェース部
150 光クロスコネクト
210 マルチレイヤ管理サブシステム
211 マルチレイヤ管理サブシステムコア部
212 マルチレイヤデータベース
213 再配置演算エンジン
214 再配置演算エンジンインタフェース
220 パス制御部
230 運用インタフェース(IF)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレイヤのネットワーク装置から構成されるネットワークにおける、マルチレイヤ統合伝送装置であって、
各レイヤの情報を統合管理する統合ネットワーク制御手段と
2つ以上のレイヤにおいて入力した信号をクロスコネクトして出力するクロスコネクト手段と、
2つ以上のレイヤにおいて、インタフェースの状況を把握し、装置制御手段に当該状況に関する情報を通知し、該装置制御手段からの指示に基づいてインタフェースの設定を行うインタフェース手段と、
各レイヤのインタフェース手段から各インタフェースの情報を収集し、統合ネットワーク制御手段に収集した該情報を通知し、該統合ネットワーク制御手段からのインタフェース設定指示を受け、該インタフェース設定指示を前記インタフェース手段に通知すると共に、前記クロスコネクト手段にコネクションの設定を行う1つ以上の装置制御手段と、
を有し、
前記統合ネットワーク制御手段は、
ネットワークから収集されたインタフェースの情報を蓄積するデータベース手段と、
所定のアルゴリズムに基づいて、パスの収容関係の最適化と最適化を図るためのパスの設定手順を計算する設定手順計算手段と、
前記設定手順計算手段が算出した計算結果が最適であるかを所定の最適化の指針に基づいて判定する条件判断手段と、
前記計算結果に基づいて該当するレイヤの装置制御手段に対してインタフェースの設定を指示する指示手段と、
を有することを特徴とするマルチレイヤ統合伝送装置。
【請求項2】
前記統合ネットワーク制御手段の前記設定手順計算手段は、
前記アルゴリズムとして整数線形計画法もしくはヒューリスティックもしくはauxiliary graphを使った方法もしくはそれらの組み合わせを用いる
請求項1記載のマルチレイヤ統合伝送装置。
【請求項3】
少なくとも1つ以上のレイヤに、プロテクション機能もしくは無瞬断(または無中断)プロテクション機能を具備する
請求項1記載のマルチレイヤ統合伝送装置。
【請求項4】
少なくとも2つ以上のレイヤを含み、
前記レイヤは電気パスと光パスを扱う
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のマルチレイヤ統合伝送装置。
【請求項5】
少なくとも2つ以上のレイヤを含み、
前記レイヤは、電気パスと光パスを扱い、光パスクロスコネクトがカラーレスもしくはディレクションレスもしくはコンテンションレスもしくはそれらの組み合わせた機能を備えることを特徴とする
請求項1記載のマルチレイヤ統合伝送装置。
【請求項6】
前記条件判断手段において、
前記所定の最適化の指針として、
使用インタフェース数最小化もしくは装置コスト最小化もしくは波長数最小化もしくは使用スイッチ容量最小化もしくは消費電力最小化もしくは波長衝突最小化のいずれかを用いる
請求項1記載のマルチレイヤ統合伝送装置。
【請求項7】
複数のレイヤのネットワーク装置から構成されるネットワークの最適化方法であって、
各レイヤの情報を統合管理する統合ネットワーク制御手段において、
ネットワークから収集されたインタフェースの情報を蓄積したデータベースを参照して、
所定のアルゴリズムに基づいて、パスの設定手順を計算する計算ステップと、
計算結果が最適であるかを所定の最適化の指針に基づいて判定し、該当するネットワーク装置に対してインタフェースの設定を指示する最適化ステップを行う
ことを特徴とする最適化方法。
【請求項8】
前記計算ステップにおいて、
新しい光パスが必要になった場合は、各レイヤのインタフェースをオンにして、光クロスコネクトを設定することにより新しい光パスを生成し、
電気パスを複製することにより電気クロスコネクトを設定し、電気パスの切り替えを行い、もともとの電気パスを削除し、
前記インタフェースをオフにして、光クロスコネクトの開放を行う
処理を、前記最適化ステップで前記所定の最適化の指針を満たすまで繰り返す
請求項7記載の最適化方法。
【請求項9】
前記最適化ステップにおいて、
既設のパスも含めて全面的な最適化もしくは新たに増設するパスの増加分だけを最適化する、もしくは、ネットワークの一部分を既設のパスも含めて全面的に最適化する
請求項7記載の最適化方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate


【公開番号】特開2012−119999(P2012−119999A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268818(P2010−268818)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】