説明

マレイン酸ベンゾアゼピニウム誘導体の結晶形

本発明は、マレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムの新規の多形およびこの医薬として許容可能な溶媒和物と、医薬製剤と、この調製方法と、この薬剤としての使用、特に抗精神病薬としての使用とに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンのマレイン酸塩の結晶形と、その製造および単離とに関する。
【背景技術】
【0002】
出典明示により本明細書の一部とされる国際特許出願WO03/099786に記載され、かつ特許請求されている7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンは、例えば、統合失調症、統合失調感情障害、および統合失調症様障害と、精神病性うつ病(この用語には、双極性うつ病、単極性うつ病、精神病的特徴、緊張病的特徴、黒胆汁質的特徴、非定型的特徴を有するもしくは有さない、単発性もしくは再発性の大うつ病エピソード、または産後発症、季節性感情障害および気分変調症、心筋梗塞、糖尿病、堕胎もしくは流産を含むが、それだけに限らない一般身体状態から生じる抑うつ障害が挙げられる)、不安障害(これには、全般性不安および社会不安障害が挙げられる)、躁病、急性躁病、妄想障害および妄想性障害などの他の障害とを治療する際の抗精神病薬として有用であると記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンのマレイン酸塩は、これにより、7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンを、例えば経口投与用錠剤に便利に製剤できるので、特に重要である。したがって、マレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムを、医薬として厳格な要求品質および規格を満たすために、できる限り純粋かつ高結晶の状態で製造する必要がある。
【0004】
マレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムを製造するプロセスも、工場規模で操作するのに便利なプロセスである必要がある。
【0005】
マレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムは例えば、国際特許出願WO05/051916に記載のように、7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの遊離塩基の適切な理論量をマレイン酸と適切な溶媒中で接触させることによって調製できる。7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの遊離塩基は、例えば、固体として添加される適切な酸と共に溶液中に存在してもよく、または、7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの遊離塩基と適切な酸の双方が、独立して溶液中に存在してもよい。特性記述データが含まれるWO05/051916の実施例1に報告されている、マレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムの結晶形は、以下で無水物1型と称する特定の多形である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
マレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムが、以下で2型と称する新規の結晶形に調製でき、前記の新規結晶形についての製造プロセスが、上述の所望の特徴を満たすことが今回見出された。
【0007】
7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの遊離塩基を溶解する適切な溶媒には、例えば、エタノールおよびメタノールなどのアルコール、アセトンなどのケトン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素と、テトラヒドロフランなどのエーテルが挙げられる。マレイン酸を、ある溶媒の溶液として添加しようとすれば、使用される溶媒には、アセトン、エタノール、メタノール、プロパン−2−オール、または水を挙げ得る。
【0008】
2型マレイン酸塩を調製する場合、7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの遊離塩基の濃度は、例えば、3〜25%の重量/容量範囲内となり得る。溶液中で使用される場合のマレイン酸の濃度は、例えば、0.5〜5モル濃度の範囲内となり得る。遊離塩基および/または酸の溶解性を向上させるために、昇温(例えば、使用される溶媒の沸点まで)してもよい。
【0009】
2型のマレイン酸結晶塩を、この塩の溶解性が限定的な溶媒から直接結晶化させることによって、または非結晶塩を粉砕するか、さもなければ結晶化させることによって調製できる。例えば、マレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムを、アセトン、アセトニトリル、ブタノン、1−ブタノール、エタノール、メタノール、1−プロパノールもしくはテトラヒドロフランまたはこのような溶媒の混合溶媒などの様々な有機溶媒から再結晶化してもよい。このような溶媒の混合溶媒は、水を更に含んでもよく、したがって前述の溶媒の水性混合溶媒も再結晶化のために使用し得る。
【0010】
この塩の改良された収率は、溶媒の一部もしくは全てを蒸発させることによって、または、高温で結晶化させ、次いで制御しながら、例えば段階的に冷却することによって得ることができる。析出温度およびシード添加緻密に制御することにより、製造プロセスの再現、生成物の粒径分布および製品の形態を改良し得る。例えば、個別の多形は、塩の溶液から直接結晶化してもよいが、この多形の種結晶を使用した、特定の多形の溶液を再結晶化してもよい。
【0011】
7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩は、溶媒和物として、例えば水和物として、または非溶媒和物の形態、例えば無水物として存在し得る。
【0012】
したがって、本発明は、マレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムを、2型と称する新規の結晶形で提供する。したがって、本発明の第1の態様として、2型のマレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムの結晶形およびこの医薬として許容可能な溶媒和物から選択される1種または複数種の化合物を提供する。
【0013】
2型マレイン酸塩を回収する溶媒に応じて、2型マレイン酸塩は、溶媒和物として得てもよく、このような溶媒和物も、本発明の一態様を形成する。この溶媒和物は、医薬として許容可能な溶媒和物となり得る。適切な溶媒には、アセトン、アセトニトリル、2−ブタノン、シクロヘキサノン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、トルエンおよび水、またはこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0014】
あるいは、2型マレイン酸塩は、無水物として得てもよい。この無水物は、水を2%未満、例えば水を1%未満含有してもよい。2型のマレイン酸塩無水物は、吸湿性および水分損失に関して特有の安定性を示す。更に、2型のマレイン酸塩無水物は、非常に高い湿度に曝されると可逆変化を示す。
【0015】
したがって、更なる態様では、2型マレイン酸塩およびこの医薬として許容可能な溶媒和物から選択される1種または複数種の化合物を単離形態で提供する。また更なる態様では、マレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムの代替塩、代替溶媒和物、もしくは遊離塩基または他の不純物を実質的に含まない、2型マレイン酸塩およびこの医薬として許容可能な溶媒和物から選択される1種または複数種の化合物を提供する。
【0016】
「マレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムの代替塩、代替溶媒和物、もしくは遊離塩基または他の不純物を実質的に含まない」とは、マレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムの代替塩、代替溶媒和物、もしくは遊離塩基または他の不純物を10%未満、例えば2%未満などの5%未満含有していることを意味する。「他の不純物」という用語は、マレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウム以外の任意の化合物を含んでいる。
【0017】
本発明の更なる態様は、図1に示される粉末X線回折パターンおよび/または図2に示されるラマンスペクトルを特徴とする、2型のマレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウム無水物を提供する。
【0018】
したがって、本発明の更なる態様は、表1に挙げるシグナルを実質的に有する粉末X線回折(XRPD)パターンを特徴とする、2型のマレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウム無水物を提供する。
【0019】
本発明の更なる態様は、図4に示される粉末X線回折パターンおよび/または図5に示されるラマンスペクトルを特徴とする、2型のマレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムのテトラヒドロフラン溶媒和物を提供する。
【0020】
本発明の更なる態様は、表2に挙げるシグナルを実質的に有する粉末X線回折(XRPD)パターンを特徴とする、2型のマレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムのテトラヒドロフラン溶媒和物を提供する。
【0021】
2型マレイン酸塩の溶媒和物は、2型マレイン酸塩の溶液から、または本発明の説明1に従って調製されるマレイン酸塩の溶液から従来の手段によって調製できる。例えば、2型マレイン酸塩のテトラヒドロフラン溶媒和物は、高温、例えば約50℃で、2型マレイン酸塩をシード添加し、次いで生じた混合物を結晶化が起こるまで室温に冷却後、テトラヒドロフランから再結晶化することによって調製できる。
【0022】
本明細書で使用する場合、「2型マレイン酸塩およびこの医薬として許容可能な溶媒和物」という語句は、2型マレイン酸塩か、2型マレイン酸塩の医薬として許容可能な溶媒和物か、または2型マレイン酸塩と1種もしくは複数種の医薬として許容可能な溶媒和物との混合物を含むことが意図される。任意の特定の溶媒和物中の溶媒の量が様々であり得ることと「医薬として許容可能な溶媒和物」という用語が、様々な量の溶媒和物が存在する溶媒和物を包含することが意図されることは、当業者なら理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
スペクトルおよび回折データは、温度、濃度および使用される装置などの様々な因子によってわずかに変化することが認識されよう。当業者なら、XRPDのピーク位置が、試料の高さの違いによって影響されることが認識されよう。したがって、本明細書で引用するピーク位置は、+/−0.15度2シータの変動が生じる。
【0024】
2型のマレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムの塩およびこの医薬として許容可能な溶媒和物は、ドパミン受容体、特にDおよびD受容体に対して親和性を示すことが見出され、精神病態などの、このような受容体の調節作用を必要とする病態の治療に有用である。これらの塩は、ドパミンD受容体よりドパミンD受容体に対して高い親和性を有することも見出された。現在利用可能な抗精神病薬(神経抑制薬)の治療効果は、D受容体の遮断により現れると一般に考えられているが、このメカニズムは、多くの神経抑制薬と関連する望ましくない錐体外路系副作用(eps)の原因であるとも考えられている。理論で縛られることを望まないが、ドパミンD受容体の遮断により、有意なepsが無く、有益な抗精神病活性が生じ得ることが示唆されてきた(例えば、Sokoloff et al,Nature,1990;347:146−151;およびSchwartz et al,Clinical Neuropharmacology,Vol 16,No.4,295−314,1993参照)。
【0025】
2型のマレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムの塩およびこの医薬として許容可能な溶媒和物は、セロトニン5−HT2C、5−HT2A、および5−HT受容体に対してアンタゴニスト親和性を有することも見出された。これらの特性により、抗精神病活性(例:認知機能障害の改善作用)、eps低減活性、および/または抗不安/抗うつ活性が生じ得る。これらの活性には、以下のものに限らないが、5−HT受容体遮断による認知症状の減退(Reavill,C.and Rogers,D.C.,2001,Investigational Drugs 2,104−109参照)と、5−HT2C受容体遮断による、不安低減(例えば、Kennett et al.,Neuropharmacology 1997 Apr−May;36(4−5):609−20参照)、epsに対する防護(Reavill et al.,Brit.J.Pharmacol.,1999;126:572−574)、および抗うつ活性(Bristow et al.,Neuropharmacology 39:2000;1222−1236)とを挙げることができよう。
【0026】
2型のマレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムの塩およびこの医薬として許容可能な溶媒和物は、前記とは異なる他の受容体に対しても親和性を示す結果、有益な抗精神病活性を生起し得る。
【0027】
7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩またはこの医薬として許容可能な溶媒和物は、精神病性障害の治療に有用である。
【0028】
したがって、更なる態様では、本発明は、治療に使用するための、7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩およびこの医薬として許容可能な溶媒和物から選択される、1種または複数種の化合物を提供する。
【0029】
別の態様では、本発明は、ドパミン受容体の調節作用を必要とする病態の治療に使用するための、7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩およびこの医薬として許容可能な溶媒和物から選択される、1種または複数種の化合物を提供する。
【0030】
別の態様では、本発明は、精神病性障害の治療に使用するための、7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩およびこの医薬として許容可能な溶媒和物から選択される、1種または複数種の化合物を提供する。
【0031】
別の態様では、本発明は、ドパミン受容体の調節作用を必要とする病態を治療するための薬剤の製造における、7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩およびこの医薬として許容可能な溶媒和物から選択される、1種または複数種の化合物の使用を提供する。
【0032】
別の態様では、本発明は、精神病性障害を治療するための薬剤の製造における、7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩およびこの医薬として許容可能な溶媒和物から選択される、1種または複数種の化合物の使用を提供する。
【0033】
別の態様では、本発明は、ドパミン受容体の調節作用を必要とする病態を治療する方法であって、7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩およびこの医薬として許容可能な溶媒和物から選択される、1種または複数種の化合物の有効量を、その治療の必要がある哺乳類に投与することを含む方法を提供する。
【0034】
別の態様では、本発明は、精神病性障害を治療する方法であって、7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩およびこの医薬として許容可能な溶媒和物から選択される、1種または複数種の化合物の有効量を、その治療の必要がある哺乳類に投与することを含む方法を提供する。
【0035】
本発明に関しては、本明細書で使用する適応症を示す用語は、アメリカ精神医学会により出版されている、精神障害の診断と統計のためのマニュアル第4版(DSM−IV)および/または国際疾病分類第10版(ICD−10)に分類される。本明細書で述べる障害の様々な亜型は、本発明の一部として意図される。以下に挙げられる病気の後の丸括弧中の番号は、DSM−IVの分類コードを指す。
【0036】
本発明に関しては、「精神病性障害」という用語には、以下のものが挙げられる:
【0037】
亜型の、妄想型(295.30)、破瓜型(295.10)、緊張型(295.20)、未分化型(295.90)および残遺型(295.60)を含めた統合失調症、統合失調症様障害(295.40)、亜型の、双極性型およびうつ型を含めた統合失調感情障害(295.70)、亜型の、恋愛妄想型、誇大妄想型、嫉妬型、追跡型、身体型、混合型および不特定型を含めた妄想性障害(297.1)、短期精神病性障害(298.8)、共有精神病性障害(297.3)、妄想および幻覚を伴う亜型を含めた、一般身体状態による精神病性障害、妄想(293.81)および幻覚(293.82)を伴う亜型を含めた物質誘発性精神病性障害と、他に分類されない精神病性障害(298.9)。
【0038】
7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩およびこの医薬として許容可能な溶媒和物は、以下の障害の治療にも有用となり得る:
【0039】
大うつ病エピソード、躁病エピソード、混合性エピソード、および軽躁病エピソードを含めたうつ病および気分障害、大うつ病性障害、気分変調性障害(300.4)、他に分類されないうつ病性障害(311)を含めたうつ病性障害、双極性I型障害、双極性II型障害(軽躁病エピソードを伴う再発性大うつ病エピソード)(296.89)、循環病(301.13)および他に分類されない双極性障害(296.80)を含めた双極性障害、うつ病的特徴、大うつ病様エピソード、躁病的特徴および混合性の特徴のある亜型を含めた、一般身体状態による気分障害(293.83)、物質誘発性気分障害(うつ病的特徴、躁病的特徴および混合性の特徴のある亜型を含めた)と、他に分類されない気分障害(296.90)を含めた他の気分障害、
【0040】
社会不安障害、不安発作、広場恐怖症、パニック障害、パニック障害歴のない広場恐怖症(300.22)、亜型の、動物型、自然環境型、血液・注射・外傷型、状況型および他の型を含めた特定恐怖症(300.29)、社会恐怖症(300.23)、強迫性障害(300.3)、心的外傷後ストレス障害(309.81)、急性ストレス障害(308.3)、全般性不安障害(300.02)、一般身体状態による不安障害(293.84)、物質誘発性不安障害および他に分類されない不安障害(300.00)を含めた不安障害、
【0041】
薬物依存症、物質欲求、物質乱用などの物質使用障害、物質中毒、物質離脱症、物質誘発性せん妄症、物質誘発性持続性痴呆症、物質誘発性持続性健忘症、物質誘発性精神病性障害、物質誘発性気分障害、物質誘発性不安障害、物質誘発性性機能不全、物質誘発性睡眠障害、物質誘発性幻覚持続性認知障害(フラッシュバック)などの物質誘発性障害、アルコール依存症(303.90)、アルコール乱用(305.00)、アルコール中毒(303.00)、アルコール離脱症(291.81)、アルコール中毒せん妄症、アルコール離脱せん妄症、アルコール誘発性持続性痴呆症、アルコール誘発性持続性健忘症、アルコール誘発性精神病性障害、アルコール誘発性気分障害、アルコール誘発性不安障害、アルコール誘発性性機能不全、アルコール誘発性睡眠障害、および他に分類されないアルコール関連障害(291.9)などのアルコール関連障害、アンフェタミン依存症(304.40)、アンフェタミン乱用(305.70)、アンフェタミン中毒(292.89)、アンフェタミン離脱症(292.0)、アンフェタミン中毒せん妄症、アンフェタミン誘発性精神病性障害、アンフェタミン誘発性気分障害、アンフェタミン誘発性不安障害、アンフェタミン誘発性性機能不全、アンフェタミン誘発性睡眠障害、および他に分類されないアンフェタミン関連障害(292.9)などのアンフェタミン(またはアンフェタミン様)関連障害、カフェイン中毒(305.90)、カフェイン誘発性不安障害、カフェイン誘発性睡眠障害、および他に分類されないカフェイン関連障害(292.9)などのカフェイン関連障害、大麻依存症(304.30)、大麻乱用(305.20)、大麻中毒(292.89)、大麻中毒せん妄症、大麻誘発性精神病性障害、大麻誘発性不安障害、および他に分類されない大麻関連障害(292.9)などの大麻関連障害、コカイン依存症(304.20)、コカイン乱用(305.60)、コカイン中毒(292.89)、コカイン離脱症(292.0)、コカイン中毒せん妄症、コカイン誘発性精神病性障害、コカイン誘発性気分障害、コカイン誘発性不安障害、コカイン誘発性性機能不全、コカイン誘発性睡眠障害、および他に分類されないコカイン関連障害(292.9)などのコカイン関連障害、幻覚薬依存症(304.50)、幻覚薬乱用(305.30)、幻覚薬中毒(292.89)、幻覚薬持続性認知障害(フラッシュバック)(292.89)、幻覚薬中毒せん妄症、幻覚薬誘発性精神病性障害、幻覚薬誘発性気分障害、幻覚薬誘発性不安障害、および他に分類されない幻覚薬関連障害(292.9)などの幻覚薬関連障害、吸入薬依存症(304.60)、吸入薬乱用(305.90)、吸入薬中毒(292.89)、吸入薬中毒せん妄症、吸入薬誘発性持続性痴呆症、吸入薬誘発性精神病性障害、吸入薬誘発性気分障害、吸入薬誘発性不安障害、および他に分類されない吸入薬関連障害(292.9)などの吸入薬関連障害、ニコチン依存症(305.1)、ニコチン離脱症(292.0)、および他に分類されないニコチン関連障害(292.9)などのニコチン関連障害、オピオイド依存症(304.00)、オピオイド乱用(305.50)、オピオイド中毒(292.89)、オピオイド離脱症(292.0)、オピオイド中毒せん妄症、オピオイド誘発性精神病性障害、オピオイド誘発性気分障害、オピオイド誘発性性機能不全、オピオイド誘発性睡眠障害、および他に分類されないオピオイド関連障害(292.9)などのオピオイド関連障害、フェンシクリジン依存症(304.60)、フェンシクリジン乱用(305.90)、フェンシクリジン中毒(292.89)、フェンシクリジン中毒せん妄症、フェンシクリジン誘発性精神病性障害、フェンシクリジン誘発性気分障害、フェンシクリジン誘発性不安障害、および他に分類されないフェンシクリジン関連障害(292.9)などのフェンシクリジン(またはフェンシクリジン様)関連障害、鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬依存症(304.10)、鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬乱用(305.40)、鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬中毒(292.89)、鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬離脱症(292.0)、鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬中毒せん妄症、鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬離脱せん妄症、鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬持続性痴呆症、鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬持続性健忘症、鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬誘発性精神病性障害、鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬誘発性気分障害、鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬誘発性気分障害、鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬誘発性不安障害、鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬誘発性性機能不全、鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬睡眠障害、および他に分類されない鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬関連障害(292.9)などの鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬関連障害、複数物質依存症(304.80)などの複数物質関連障害と、タンパク同化ステロイド、硝酸塩吸入剤および亜酸化窒素などの他の(または未知の)物質関連障害を含めた物質関連障害、
【0042】
原発性不眠症(307.42)、原発性過眠症(307.44)、ナルコレプシー(347)、呼吸関連睡眠障害(780.59)、日周期リズム睡眠障害(307.45)、および他に分類されない睡眠異常(307.47)などの睡眠異常などの原発性睡眠障害、悪夢障害(307.47)、夜驚症(307.46)、夢遊病(307.46)、および他に分類されない睡眠時随伴症(307.47)などの睡眠時随伴症などの原発性睡眠障害、別の精神障害に関連する不眠症(307.42)、別の精神障害に関連する過眠症(307.44)などの別の精神障害に関連する睡眠障害、一般身体状態による睡眠障害と、亜型の、不眠症型、過眠症型、睡眠時随伴症型および混合型を含めた物質誘発性睡眠障害を含めた睡眠障害、
【0043】
亜型の、制限型およびむちゃ食い/排出型を含めた神経性食欲不振症(307.1)、亜型の、排出型および非排出型を含めた神経性過食症(307.51)、肥満症、強迫性摂食障害と、他に分類されない摂食障害(307.50)などの摂食障害、
【0044】
自閉性障害(299.00)、亜型の、注意欠陥多動障害混合型(314.01)、注意欠陥多動障害注意力障害有意型(314.00)、注意欠陥多動障害多動衝動型(314.01)、および他に分類されない注意欠陥多動障害(314.9)を含めた注意欠陥多動障害、多動性障害、亜型の、小児期発症型(321.81)、青年期発症型(312.82)、および不特定発症型(312.89)、反抗挑戦性障害(313.81)と、他に分類されない破壊的行動障害を含めた行為障害などの破壊的行動障害、ならびにトゥーレット障害(307.23)などのチック障害、
【0045】
亜型の、妄想性人格障害(301.0)、統合失調症人格障害(301.20)、統合失調型人格障害(301.22)、反社会性人格障害(301.7)、境界型人格障害(301.83)、演技性人格障害(301.50)、自己愛性人格障害(301.81)、回避性人格障害(301.82)、依存性人格障害(301.6)、強迫性人格障害(301.4)、および他に分類されない人格障害(301.9)を含めた人格障害、
【0046】
統合失調症、双極性障害、うつ病、他の精神病性障害、認知障害と関連する精神病性病態、例えばアルツハイマー病などの他の病気の際の、認知障害の治療を含めた、認知の強化、ならびに
【0047】
性的欲求低下障害(302.71)、性嫌悪障害(302.79)などの性的欲求障害、女性の性的興奮障害(302.72)、男性勃起障害(302.72)などの性的興奮障害、女性オルガズム障害(302.73)、男性オルガズム障害(302.74)、早漏(302.75)などのオルガズム障害、性交疼痛症(302.76)、膣痙(306.51)などの性交疼痛障害、および他に分類されない性機能不全(302.70)を含めた性機能不全、露出症(302.4)、フェティシズム(302.81)、窃触症(302.89)、ペドフィリア(302.2)、性的マゾヒズム(302.83)、性的サディズム(302.84)、服装倒錯性フェティシズム(302.3)、窃視(302.82)、および他に分類されない性嗜好異常(302.9)などの性嗜好異常(302.2)、小児期性同一性障害(302.6)、青年期または成人期性同一性障害(302.85)などの性同一性障害と、他に分類されない性障害(302.9)。
【0048】
本明細書で述べた障害の様々な型および亜型の全ては、本発明の一部として意図される。
【0049】
「治療」には、関連病態(複数も)に対して適切である場合には、予防が含まれる。
【0050】
本発明による、7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩およびこの医薬として許容可能な溶媒和物から選択される1種または複数種の化合物は、1種または複数種の他の治療薬、例えば5HTアンタゴニスト、セロトニンアゴニスト、NK−1アンタゴニスト、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、1種または複数種のセロトニン、ノルアドレナリンおよびノルエピネフリンの非選択的再取り込み阻害薬、CRF−1アンタゴニスト、三環系抗うつ薬、ドパミン系抗うつ薬、Hアンタゴニスト、5HT1Aアンタゴニスト、5HT1Bアンタゴニスト、5HT1Dアンタゴニスト、5HT部分アゴニスト、D1アゴニスト、M1アゴニスト、抗痙攣薬、ならびに/またはシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害薬と併せて有利に使用し得ることは、当業者なら認識されよう。
【0051】
組合せまたは組成物の化合物が、同時に(同じかまたは異なる医薬製剤として)、個別にまたは逐次的に投与し得ることは認識されよう。
【0052】
7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩およびこの医薬として許容可能な溶媒和物と組み合わせて使用し得る好適な5HTアンタゴニストには、例えばオンダンセトロン、グラニセトロンおよびメトクロプラミドから選択される1種または複数種の化合物が挙げられる。
【0053】
7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩およびこの医薬として許容可能な溶媒和物と組み合わせて使用し得る好適なセロトニンアゴニストには、例えばスマトリプタン、ラウオルシン、ヨヒンビンおよびメトクロプラミドから選択される1種または複数種の化合物が挙げられる。
【0054】
7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩およびこの医薬として許容可能な溶媒和物と組み合わせて使用し得る好適なSSRIには、例えばフルオキセチン、シタロプラム、フェモキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、インダルピン、セルトラリンおよびジメルジンから選択される1種または複数種の化合物が挙げられる。
【0055】
7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩およびこの医薬として許容可能な溶媒和物と組み合わせて使用し得る好適なSNRIには、例えばベンラファキシンおよびレボキセチンから選択される1種または複数種の化合物が挙げられる。
【0056】
7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩およびこれらの医薬として許容可能な溶媒和物と組み合わせて使用し得る好適な三環系抗うつ薬には、例えばイミプラミン、アミトリプチリン、クロミプラミンおよびノルトリプチリンから選択される1種または複数種の化合物が挙げられる。
【0057】
7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩およびこの医薬として許容可能な溶媒和物と組み合わせて使用し得る好適なドパミン系抗うつ薬には、例えばブプロピオンおよびアミネプチンから選択される1種または複数種の化合物が挙げられる。
【0058】
7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩およびこの医薬として許容可能な溶媒和物と組み合わせて使用し得る好適な抗痙攣薬には、例えばジバルプロエックス、カルバマゼピンおよびジアゼパムから選択される1種または複数種の化合物が挙げられる。
【0059】
7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩およびこの医薬として許容可能な溶媒和物と組み合わせて使用し得る好適なNSAID薬には、例えばイブプロフェン、アスピリンおよびその活性代謝産物のサリチル酸塩から選択される1種または複数種の化合物が挙げられる。
【0060】
7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩およびこの医薬として許容可能な溶媒和物と組み合わせて使用し得る好適なCOX−2阻害剤には、例えばロフェコキシブ(Merck製商品名VIOXX(登録商標)で入手できる、米国特許第5474995号)、セレコキシブ(Pfizer製商品名CELEBREX(登録商標)で入手できる、米国特許第5466823号)、バルデコキシブ(Pfizer製商品名BEXTRA(登録商標)で入手できる、米国特許第6633272号)、エトリコキシブ(Merck製商品名ARCOXIA(登録商標)で入手できる、米国特許第5861419号)、ルミラコキシブ(Novartis製商品名PREXIGE(登録商標)で入手できる)、パラコキシブ(米国特許第5932598号)、Novartis製COX−189、Bristol Myers Squibb製BMS347070、日本たばこ製チラコキシブ(JTE522)、Abbott製ABT963、三共製CS502、2−(4−エトキシフェニル)−3−(3−メタンスルホニルフェニル)ピラゾロ[1,5−b]ピリダジン(GlaxoSmithKline)、および2−ブトキシ−4−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−6−(トリフルオロメチル)ピリミジン(GlaxoSmithKline)が挙げられる。
【0061】
7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩およびこの医薬として許容可能な溶媒和物は、精神病性障害の治療改善を得るために他の定型および非定型抗精神病薬との組合せにも適している。7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩またはこの医薬として許容可能な溶媒和物の治療の組合せ、使用および方法と関連する特有の利点には、個別の成分に通常使用される投与量より少ない投与量での、同等かまたは向上した効力が挙げられる。精神病性障害の陽性症状および/または陰性症状ならびに/あるいは認知症状の治療の改善も認められる。本発明の治療の組合せ、使用および方法は、特定の抗精神病薬(神経抑制薬としても公知の)を使用する治療に対して十分に反応できないかまたは抵抗する患者の治療における利点ももたらし得る。
【0062】
本発明の併用療法薬は、補助的に投与されることが好ましい。補助的投与とは、個別の医薬組成物または器具の形態で各成分を連続投与または重複投与することを意味する。2種以上の治療薬のこの治療投与計画は、当業者によって一般におよび本明細書において、補助的治療投与として称され、これは、追加(add−on)治療投与としても公知である。7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩またはこの医薬として許容可能な溶媒和物および少なくとも1種の抗精神病薬の、個別であるが連続または重複治療投与を患者が受ける、任意のおよび全ての治療計画は、本発明の範囲内にある。本明細書に記載の補助的治療投与の一実施形態では、患者は、1種または複数種の成分をある期間治療投与すると通常安定し、次いで別の成分の投与を受ける。7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩またはこの医薬として許容可能な溶媒和物は、補助的治療投与として、少なくとも1種の抗精神病薬の投与を受けている患者に投与してもよいが、本発明の範囲は、式(I)の化合物の2型マレイン酸塩またはこの医薬として許容可能な溶媒和物の投与を受けている患者に対する、少なくとも1種の抗精神病薬の補助的治療投与も含む。
【0063】
本発明の併用療法薬は、同時に投与してもよい。同時投与とは、単一の医薬組成物の形態かまたは両成分を含むもしくは含有する器具の形態で、あるいはその各々が各成分の1種を含んで同時に投与される個別の組成物または器具として、個別の成分が一緒に投与される治療計画を意味する。同時投与の組合せのための個別の成分のこのような組合せは、パーツキットの形で得られる。
【0064】
したがって、更なる態様では、本発明は、少なくとも1種の抗精神病薬の治療投与を受ける患者に対する、7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩またはこの医薬として許容可能な溶媒和物の補助的治療投与による、精神病性障害の治療方法を提供する。更なる態様では、本発明は、少なくとも1種の抗精神病薬の治療投与を受ける患者の精神病性障害を治療するための補助的治療投与薬の製造における、7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩またはこの医薬として許容可能な溶媒和物の使用を提供する。本発明は、少なくとも1種の抗精神病薬の治療投与を受ける患者の精神病性障害を治療するための補助的治療投与に使用する、7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩またはこの医薬として許容可能な溶媒和物も更に提供する。
【0065】
更なる態様では、本発明は、7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩またはこの医薬として許容可能な溶媒和物の治療投与を受ける患者に対する、少なくとも1種の抗精神病薬の補助的治療投与による、精神病性障害の治療方法を提供する。更なる態様では、本発明は、7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩またはこの医薬として許容可能な溶媒和物の治療投与を受ける患者の精神病性障害を治療するための補助的治療投与薬の製造における、少なくとも1種の抗精神病薬の使用を提供する。本発明は、7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩またはこの医薬として許容可能な溶媒和物の治療投与を受ける患者の精神病性障害を治療するための補助的治療投与のための少なくとも1種の抗精神病薬も更に提供する。
【0066】
更なる態様では、本発明は、7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩またはこの医薬として許容可能な溶媒和物の、少なくとも1種の抗精神病薬と組み合わせた同時治療投与による、精神病性障害の治療方法を提供する。本発明は、精神病性障害の治療の際の同時治療投与薬の製造における、7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩またはこの医薬として許容可能な溶媒和物と少なくとも1種の抗精神病薬との組合せの使用も更に提供する。本発明は、精神病性障害の治療の際の、少なくとも1種の抗精神病薬を使用する同時治療投与薬の製造における、7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩またはこの医薬として許容可能な溶媒和物の使用も更に提供する。本発明は、精神病性障害の治療の際の、少なくとも1種の抗精神病薬を使用する同時治療投与に使用するための、7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩またはこの医薬として許容可能な溶媒和物も更に提供する。本発明は、精神病性障害の治療の際の、7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩またはこの医薬として許容可能な溶媒和物を使用する同時治療投与薬の製造における、少なくとも1種の抗精神病薬の使用も更に提供する。
【0067】
更なる態様では、本発明は、7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩またはこの医薬として許容可能な溶媒和物と少なくとも1種の気分安定薬または抗躁薬とを含む医薬組成物の同時治療投与による、精神病性障害の治療方法、7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩またはこの医薬として許容可能な溶媒和物と少なくとも1種の気分安定薬または抗躁薬とを含む医薬組成物、精神病性障害の治療薬の製造における、7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩またはこの医薬として許容可能な溶媒和物と少なくとも1種の気分安定薬または抗躁薬とを含む医薬組成物の使用、ならびに精神病性障害の治療に使用する、7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩またはこの医薬として許容可能な溶媒和物と少なくとも1種の気分安定薬または抗躁薬とを含む医薬組成物を提供する。
【0068】
更なる態様では、本発明は、7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンの2型マレイン酸塩またはこの医薬として許容可能な溶媒和物を含む第1用量形態と各々が同時治療投与用抗精神病薬を含む1つまたは複数の更なる用量形態とを含む、精神病性障害の治療に使用するパーツキットを提供する。
【0069】
本発明で有用な抗精神病薬の例には、これに限らないが、ハロペリドール、ピモジド、ドロペリドールなどのブチロフェノン、クロルプロマジン、チオリダジン、メソリダジン、トリフルオペラジン、ペルフェナジン、フルフェナジン、チフルプロマジン(thiflupromazine)、プロクロルペラジン、アセトフェナジンなどのフェノチアジン、チオチキセン、クロルプロチキセンなどのチオキサンテン、チエノベンゾジアゼピン、ジベンゾジアゼピン、ベンゾイソオキサゾール、ジベンゾチアゼピン、イミダゾリジノン、ベンゾイソチアゾリルピペラジン、ラモトリジンなどのトリアジン、ロクサピンなどのジベンゾオキサゼピン、モリンドンなどのジヒドロインドロン、アリピプラゾール、および抗精神病活性を有するこれらの誘導体が挙げられる。
【0070】
選択され、本発明での使用に適する抗精神病薬の商品名およびサプライヤーの例は、以下の通りである:クロザピン(Mylan,Zenith Goldline製、商品名CLOZARIL(登録商標)で入手できる、UDL,Novartis)、オランザピン(Lilly製、商品名ZYPREXA(登録商標)で入手できる)、ジプラシドン(Pfizer製、商品名GEODON(登録商標)で入手できる)、リスペリドン(Janssen製、商品名RISPERDAL(登録商標)で入手できる)、フマル酸クエチアピン(AstraZeneca製、商品名SEROQUEL(登録商標)で入手できる)、セルチンドール(商品名SERLECT(登録商標)で入手できる)、アミスルプリド(Sanofi−Synthelabo製、商品名SOLION(登録商標)で入手できる)、ハロペリドール(Ortho−McNeil製、商品名HALDOL(登録商標)で入手できる)、デカン酸ハロペリドール(商品名HALDOL decanoate(登録商標)で入手できる)、乳酸ハロペリドール(商品名HALDOL(登録商標)およびINTENSOL(登録商標)で入手できる)、クロルプロマジン(SmithKline Beecham(GSK)製、商品名THORAZINE(登録商標)で入手できる)、フルフェナジン(Apothecon、Copley、Schering、Teva、およびPasadenaにある米国の製薬系パートナー企業から、商品名PROLIXIN(登録商標)で入手できる)、デカン酸フルフェナジン(商品名PROLIXIN decanoate(登録商標)で入手できる)、エナント酸フルフェナジン(商品名PROLIXIN(登録商標)で入手できる)、塩酸フルフェナジン(商品名PROLIXIN(登録商標)で入手できる)、チオチキセン(Pfizer製、商品名NAVANE(登録商標)で入手できる)、塩酸チオチキセン(商品名NAVANE(登録商標)で入手できる)、トリフルオペラジン(10−[3−(4−メチル−1−ピペラジニル)プロピル]−2−(トリフルオロメチル)フェノチアジンジヒドロクロライド(SmithKlien Beckman製、商品名STELAZINE(登録商標)で入手できる)、ペルフェナジン(Schering製、商品名TRILAFON(登録商標)で入手できる)、塩化ペルフェナジンおよびアミトリプチリン(商品名ETRAFON TRILAFON(登録商標)で入手できる)、チオリダジン(Novartis、Roxane、HiTech、Teva、およびAlpharma製、商品名MELLARIL(登録商標)で入手できる)、モリンドン(Endo製、商品名MOBAN(登録商標)で入手できる)、塩化モリンドン(商品名MOBAN(登録商標)で入手できる)、ロクサピン(Watson製、商品名LOXITANE(登録商標)で入手できる)、塩化ロクサピン(商品名LOXITANE(登録商標)で入手できる)と、コハク酸ロクサピン(商品名LOXITANE(登録商標)で入手できる)。更に、ベンペリドール(Glianimon(登録商標))、ペラジン(Taxilan(登録商標))またはメルペロン(Eunerpan(登録商標))も使用できる。
【0071】
他の好適な抗精神病薬には、プロマジン(商品名SPARINE(登録商標)で入手できる)、トリフルプロマジン(商品名VESPRIN(登録商標)で入手できる)、クロルプロチキセン(商品名TARACTAN(登録商標)で入手できる)、ドロペリドール(商品名INAPSINE(登録商標)で入手できる)、アセトフェナジン(商品名TINDAL(登録商標)で入手できる)、プロクロルペラジン(商品名COMPAZINE(登録商標)で入手できる)、メトトリメプラジン(商品名NOZINAN(登録商標)で入手できる)、ピポチアジン(商品名PIPOTRIL(登録商標)で入手できる)、イロペリドン、ピモジドおよびフルペンチキソールが挙げられる。
【0072】
本発明の更なる一態様では、好適な抗精神病薬には、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、アリピプラゾール、ハロペリドール、クロザピン、ジプラシドンおよびオサネタントが挙げられる。
【0073】
薬剤中に使用する場合、2型のマレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムまたはこの医薬として許容可能な溶媒和物は、標準的な医薬組成物として通常投与される。この医薬組成物は、本明細書で記載した任意の病態の治療に使用することができる。
【0074】
したがって、本発明の更なる態様では、2型のマレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムおよびこの医薬として許容可能な溶媒和物から選択される1種または複数種の化合物を、医薬として許容可能な担体と共に含む医薬組成物を提供する。
【0075】
2型のマレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムまたはこの医薬として許容可能な溶媒和物は、任意の便利な方法によって、例えば経口、非経口(例:静脈)、口腔、舌下、経鼻、直腸内、または経皮投与によって投与してもよく、それに応じて医薬組成物も適合させ得る。
【0076】
2型のマレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムまたはこの医薬として許容可能な溶媒和物は、液体または固体として、例えばシロップ、懸濁液またはエマルジョン、錠剤、カプセル、およびロゼンジとして製剤できる。
【0077】
液体製剤は、一般的に、2型のマレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムまたはこの医薬として許容可能な溶媒和物の、適切な液体担体(複数も)、例えば水、エタノールもしくはグリセリンなどの水溶性溶媒、またはポリエチレングリコールもしくはオイルなどの非水溶性溶媒における懸濁液または溶液からなろう。この製剤は、懸濁薬、防腐剤、香味物質または着色剤も含有してもよい。
【0078】
錠剤形態の組成物は、固形製剤を調製するために慣用される任意の適切な医薬担体(複数も)を使用して調製できる。このような担体の例には、ステアリン酸マグネシウム、デンプン、乳糖、白糖およびセルロースが挙げられる。
【0079】
カプセル形態の組成物は、慣行のカプセル化処理を使用して調製できる。例えば、活性成分を含有するペレットを、標準担体を使用して調製し、次いで硬質ゼラチン製カプセル中に充填することができる。あるいは、分散液または懸濁液を、任意の適切な医薬担体(複数も)、例えば水溶性ゴム、セルロース、ケイ酸塩またはオイルを使用して調製し、次いでこの分散液または懸濁液を軟質ゼラチン製カプセル中に充填することもできる。
【0080】
通常の非経口用組成物は、2型のマレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムまたはこの医薬として許容可能な溶媒和物の、無菌の水溶性担体または非経口的に許容可能な油、例えばポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、レシチン、落花生油、またはごま油の溶液または懸濁液からなる。あるいは、この溶液を、凍結乾燥し、次いで投与する直前に適切な溶媒で復元させることもできる。
【0081】
経鼻投与用組成物は、エアゾール、液滴、ゲルおよび粉末として便利に製剤できる。エアゾール製剤は、医薬として許容可能な水溶性または非水溶性溶媒中の活性物質の溶液または微細懸濁液を通常含み、噴霧器具を用いて使用するカートリッジまたは詰め替えの形態を取り得る密閉容器中に、無菌形態で単回または複数回用量として通常供給する。あるいは、密閉容器は、単回用量式経鼻吸入器または一旦容器の内容物が空になれば処分するための計量弁を備えてあるエアゾール小分け器具などの単回式小分け器具であってもよい。用量形態がエアゾール小分け器具を含む場合、これは、圧縮空気またはフルオロクロロ炭化水素などの有機噴射剤などの圧縮ガスとなり得る噴射剤を含有することになろう。エアゾールの用量形態は、ポンプ噴霧の形態もとってもよい。
【0082】
口腔内投与または舌下投与に適切な組成物には、その活性成分が、糖およびアカシア、トラガカント、またはゼラチンおよびグリセリンなどの担体を使用して製剤される、錠剤、ロゼンジ、およびトローチが挙げられる。
【0083】
直腸内投与用組成物は、カカオ脂などの従来の坐薬基剤を含有する坐薬の形態にするのが便利である。
【0084】
経皮投与に適する組成物には、軟膏、ゲル、およびパッチが挙げられる。この組成物は、錠剤、カプセル、またはアンプルなどの単位用量形態にするのが適切である。
【0085】
2型のマレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムまたはこの医薬として許容可能な溶媒和物は、1日当たり1〜4回投与される7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムの、遊離塩基として計算して、例えば、1mg〜250mg、1mg〜250mgなど、2mg〜120mgなど、例えば2〜50mgの経口投与、または0.1mg〜120mg、例えば0.1mg〜50mg、例えば1〜25mgの静脈内、皮下もしくは筋肉内投与量の毎日の投与計画(成人患者の場合)で通常投与されよう。この化合物は、連続治療期間、例えば1週間以上投与することが適切であろう。
【0086】
本発明の化合物については、治療投与用に承認されると期待される用量では、有害な毒性作用は認められなかった。
【0087】
本発明は、以下の非限定的実施例によって更に説明する。
説明1
マレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウム無水物(D1)の調製
【0088】
【化1】

【0089】
マレイン酸(0.204g、1.76mmol)のエタノール溶液(2mL)を、7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピン(0.75g、1.6mmol)のエタノール(5.5mL)沸騰溶液に添加し、生じた溶液を還流下で30分間加熱した。この溶液を室温まで冷却し、1時間攪拌することにより、幾らか油性の生成物が生じた。攪拌を止め、この混合液を一晩中放置すると2相混合液となった。この混合液を攪拌し、加熱還流した。加熱浴が55℃の場合、均質溶液がすぐに得られ、次いで生成物を結晶化させた。加熱を続けて還流し、スラリーを30分間攪拌し、次いで室温まで冷却し、30分間攪拌し、次いで0〜5℃に冷却し、更に30分間攪拌した。その結果生じたスラリーを濾過した。この固形物を冷エタノール(3.5mL)で洗浄し、50℃で真空乾燥することにより、表題の生成物(D1)が白い固体(0.86g)として生じた。
説明2
マレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウム無水物(D2)の調製
【0090】
マレイン酸(27.1g、233.4mmol)のエタノール溶液(100mL)を、7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピン(100.1g、212.0mmol)のエタノール(1.05L)沸騰溶液に分けて添加し、生じた溶液を10分間攪拌し、再び還流させた。この溶液を75℃まで冷却し、マレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウム無水物(100.8g)をシード添加し、次いで室温まで冷却した。その結果生じたスラリーを、室温で2時間攪拌し濾過した。この固形物をエタノール(300mL)で洗浄し、60℃で真空乾燥することにより、表題の生成物(D2)が白い固体(122.4g)として生じた。溶融の開始170〜172℃;δ(400MHz,DMSO)2.81(3H,s,NC)、3.10(4H,br s,C)、3.34(4H,br s,C)、3.72(3H,s,OC)、5.18(2H,s,ArC)、6.02(2H,s,−C=C−)、7.07(1H,s,ArH)、7.17(2H,d,J=7,ArH)、7.46(4H,m,ArH)、7.80(2H,d,J=7,ArH)、7.82(1H,s,ArH)、9.0〜10.0(1H,br s);MS(ES+)m/z 474(MH)、472(MH,100%)192。
【実施例1】
【0091】
2型のマレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムの無水物(E1)
上記の説明2に従って調製した、マレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムの無水物(1g)を、2−ブタノン中でスラリーにし、このスラリーを室温から40℃に加熱し、次いで0℃に冷却し、Radleys Discovery Technologiesから供給を受けたMetz Syn10 Reaction Stationを使用して毎分0.3℃で40℃まで再加熱した。この温度サイクルを、10回行い、次いでこのスラリーを20℃に冷却し、10時間保持した。このスラリーを濾過し、生じた固体を真空乾燥することにより、表題の生成物(E1)が得られた。
【実施例2】
【0092】
2型のマレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムの無水物(E2)の調製
上記の説明2に従って調製した、マレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムの無水物(25g)を、60℃の、9:1のアセトニトリル:水(60mL)に溶解させ、1時間攪拌し、50℃に冷却し、例えば上記の実施例1の方法を使用して調製し得るように、2型のマレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムの無水物(0.25g)の種結晶を使用してシード添加した。生じた混合物を12時間以上15℃に冷却し、15℃で8時間、更に攪拌した。この固体を濾過し、9:1のアセトニトリル:水(10mL)で洗浄し、40℃で真空乾燥することにより、表題の生成物(E2)が白い固体(18.79g)として得られた。試料を、100℃、6時間で更に真空乾燥した。溶融の開始171〜172℃;δ(400MHz,DMSO)2.81(3H,s,NC)、3.10(4H,br s,C)、3.31(4H,br s,C)、3.72(3H,s,OC)、5.18(2H,s,ArC)、6.02(2H,s,−C=C−)、7.07(1H,s,ArH)、7.17(2H,d,J=7,ArH)、7.45(4H,m,ArH)、7.80(2H,d,J=7,ArH)、7.82(1H,s,ArH)、9.5〜10.0(1H,br s);MS(ES+)m/z 474(MH)、472(MH,100%)192。
【実施例3】
【0093】
2型のマレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムのテトラヒドロフラン溶媒和物(E3)の調製
2型のマレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムの無水物(2.5g)を、還流でテトラヒドロフラン(250mL)中に溶解させ、30分間攪拌し、50℃に冷却し、2型のマレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムの無水物(0.025g)の種結晶を使用してシード添加した。生じた混合物を室温に1時間以上冷却し、室温で141.75時間攪拌した。この固体を濾過し、テトラヒドロフラン(25mL)で洗浄し、50℃で18時間真空乾燥することにより、表題の生成物(E3)が白い固体(1.16g)として得られた。溶融の開始171〜172℃;GC分析によるテトラヒドロフラン2.4%;δ(400MHz,DMSO)1.78(4H,m,C)、2.83(3H,s,NC)、3.12(4H,br s,C)、3.33(4H,br s,C)、3.62(4H,m,COC)、3.74(3H,s,OC)、5.21(2H,s,ArC)、6.04(2H,s,−C=C−)、7.10(1H,s,ArH)、7.19(2H,d,J=9,ArH)、7.48(4H,m,ArH)、7.83(2H,d,J=9,ArH)、7.84(1H,s,ArH)、9.5〜10.0(1H,br s);MS(ES+)m/z 474(MH)、472(MH,100%)192。
【0094】
【表1】



【0095】
【表2】



【0096】
図1および図4に示す粉末X線回折(XRPD)分析を、X’Celerator検出器を使用する、型式PW3040/60、シリアルナンバーDY1379のPhillips X’pert Pro粉末回折計で実施した。捕捉条件は、放射線:Cu Kα、発生電圧:40kV、発生電流:45mA、開始角:2.0°2θ、終了角:40.0°2θ、ステップサイズ:0.0167°2θ、1ステップ当たりの時間:31.75秒であった。試料は、シリコンウエハー法を使用して調製した。5%を超える相対強度を有するピークが表1および表2に含まれる。
【0097】
生成物のラマンスペクトル(図2および図5)を、シリアルナンバー5880、分解能4cm−1、Nd:VOレーザー(1064nm)からの励起による、出力400mWのNicolet 960 E.S.P.FT−ラマン分光法を使用して、NMR試料管中の試料で記録した。ピーク選択のために、絶対閾値0.5および感度65%を適用した。
【0098】
生成物のDSCサーモグラム(図3および図6)を、シリアルナンバー1000−0060のThermal Analysis DSC Q1000で記録した。試料を、開放皿の中で、毎分10℃で加熱した。
【0099】
本明細書で引用した特許および特許出願を含むが、それに限らない全ての文献は、各個別の文献が、あたかも全てが記載されて参照により本明細書に組み込まれるように、具体的に、独立に示されるように、参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】実施例2に記載のように調製した2型のマレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウム無水物に関して得られた、粉末X線回折(XRPD)のデータを示す図である。 実施例2に記載の2型のマレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウム無水物は、表1に挙げるシグナルを実質的に有するXRPDパターンを有することを特徴とする。
【図2】実施例2に記載のように調製した2型のマレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウム無水物のラマンスペクトルを示す図である。
【図3】実施例2に記載のように調製した2型のマレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウム無水物の、示差走査熱量測定(DSC)のサーモグラムを示す図である。
【図4】実施例3に記載のように調製した2型のマレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムのテトラヒドロフラン溶媒和物に関して得られた粉末X線回折(XRPD)のデータを示す図である。 実施例3に記載の2型のマレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムのテトラヒドロフラン溶媒和物は、表2に挙げるシグナルを実質的に有するXRPDパターンを有することを特徴とする。
【図5】実施例3に記載のように調製した2型のマレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムのテトラヒドロフラン溶媒和物のラマンスペクトルを示す図である。
【図6】実施例3に記載のように調製した2型のマレイン酸7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムのテトラヒドロフラン溶媒和物の示差走査熱量測定(DSC)のサーモグラムを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶形の7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムのマレイン酸塩2型またはその医薬上許容される溶媒和物より選択される、1つまたは複数の化合物。
【請求項2】
実質的に表1にて列挙されるシグナルを有するX−線粉末回折(XRPD)パターンにより特徴付けられる、7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムのマレイン酸塩の無水2型の化合物。
【請求項3】
実質的に表2にて列挙されるシグナルを有するX−線粉末回折(XRPD)パターンにより特徴付けられる、7−[4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]−8−メトキシ−3−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピニウムのマレイン酸塩の2型の化合物。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の化合物、および医薬上許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項5】
治療にて用いるための請求項1ないし3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
精神病性障害の治療にて用いるための請求項1ないし3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
精神病性障害を治療するための医薬の製造における請求項1ないし3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
ヒトを含む哺乳動物における精神病性障害を治療する方法であって、有効量の請求項1ないし3のいずれか一項に記載の化合物をその必要とする哺乳動物に投与することを含む、方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2008−542222(P2008−542222A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512761(P2008−512761)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【国際出願番号】PCT/EP2006/004954
【国際公開番号】WO2006/125622
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】