説明

マンガン乾電池

【課題】優れた保存特性を有するマンガン乾電池を提供することを目的とする。
【解決手段】一端開口の有底円筒形の亜鉛缶4に発電要素を収納し、前記亜鉛缶4の開口部に樹脂封口体5を配置して、前記亜鉛缶4の底外面の周縁部から前記樹脂封口体5の周縁部までを熱収縮性樹脂チューブ8で覆い、前記周縁部の両方を金属外装缶10でかしめたマンガン乾電池において、前記周縁部の両方に第1の環状パッキング7、および第2の環状パッキング14を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンガン乾電池に関し、さらに詳しくはマンガン乾電池の封止構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の電池において、保存特性の向上を図る技術の検討が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1では、樹脂封口体の亜鉛缶の開口端部の当接部に環状で縦断面形状がV字状の溝を設け、亜鉛缶の開口端部を上記樹脂封口体のV字状の溝に圧入し、該V字状の溝の壁面によって亜鉛缶の開口端部を径方向に押圧状態で挟み付けることが開示されている。そして、この構成によって、高温−低温サイクル貯蔵や、長期貯蔵、振動などにより金属外装缶による押圧固定力にわずかなゆるみが生じた場合でも、亜鉛缶の開口端部と樹脂封口体との気密性が損なわれず、放電性能の低下が少ない筒形マンガン乾電池を提供できるとされている。
【0004】
一方、特許文献2では、亜鉛缶の開口端部を、内側下方にカールすることにより、樹脂封口体との嵌合圧着部を面接触とし、さらにその嵌合圧着部に封止剤を介在させることが開示されている。そして、この構成によって、樹脂封口体と亜鉛缶との圧着を長期にわたって保ち、気密性を維持し、電池の保存特性を向上できるとされている。
【0005】
また、一般的なマンガン乾電池にあっては、耐漏液特性を確保するために、電池の負極端子に熱収縮性樹脂チューブが圧接された個所に環状パッキングが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−320703号公報
【特許文献2】特開平7−45260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に関わる構成では、樹脂封口体に環状で縦断面形状がV字状の溝を形成するためには、樹脂封口体を射出成形する際に、樹脂と金型との型離れが低下するなど樹脂封口体のV字状の溝形状を一定に形成することが困難であり、保存特性の向上に改良の余地があった。
【0008】
また、特許文献2に関わる構成では、亜鉛缶の開口端部を内側下方にカールすることは、亜鉛缶の強度が弱いために一定形状に形成することが困難であり、樹脂封口体と亜鉛缶との嵌合圧着部の全面を均一に接触させることができず、保存特性の向上に改良の余地があった。
【0009】
そこで、本発明は上記の問題点を解決するため、保存特性のバラツキの少ない高信頼性のマンガン乾電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を解決するために本発明は、一端開口の有底円筒形の亜鉛缶に発電要素を収納し、前記亜鉛缶の開口部に樹脂封口体を配置して、前記亜鉛缶の底外面の周縁部から前記樹脂封口体の周縁部までを熱収縮性樹脂チューブで覆い、前記周縁部の両方を金属外装缶でかしめたマンガン乾電池において、前記周縁部の両方に環状パッキングを配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、亜鉛缶の底外面の周縁部から前記樹脂封口体の周縁部までを熱収縮性樹脂チューブで覆い、前記周縁部の両方に環状パッキングを配置させることによって、樹脂封口体と正極端子の鍔部の間に適度なクッション性が確保できる。これにより、金属外装缶でかしめた時の金属外装缶の上下部のかしめ度合いのバランスが良好となり、樹脂封口体への亜鉛缶の開口端部の食い込み寸法のバラツキが低減できるために、電池の気密性が保持され、保存特性が向上するという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のマンガン乾電池の一部を断面にした正面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明によれば、一端開口の有底円筒形の亜鉛缶に発電要素を収納し、前記亜鉛缶の開口部に樹脂封口体を配置して、前記亜鉛缶の底外面の周縁部から前記樹脂封口体の周縁部までを熱収縮性樹脂チューブで覆い、前記周縁部の両方を金属外装缶でかしめたマンガン乾電池において、前記周縁部の両方に環状パッキングを配置することによって、保存特性が向上できるという効果を奏するものである。
【0014】
ここで、上記亜鉛缶の底外面側に配置する環状パッキングを第1の環状パッキングとし、上記亜鉛缶の開口部側に配置する環状パッキングを第2の環状パッキングとする。
【0015】
ある好適な実施形態において、第2の環状パッキングは、上記樹脂封口体と前記熱収縮性樹脂チューブの間に配置することが好ましい。
【0016】
また、第2の環状パッキングは、前記熱収縮性樹脂チューブと上記正極端子の鍔部の間に配置してもよい。
【0017】
上記第1の環状パッキングとしては、密度が0.25〜0.45g/cm3の紙材を基材とし、パラフィンを少なくとも25質量%含浸していることが好ましい。
【0018】
上記第2の環状パッキングとしては、第1の環状パッキングと同じであっても良いが、密度が0.45〜0.65g/cm3の紙材を基材とし、パラフィンを少なくとも20質量%含浸していることがより好ましい。
【0019】
以下に本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施例に限定されない。
【実施例】
【0020】
(実施例1)
以下に示す手順で、図1に示した単1形マンガン乾電池を作製した。図1は、本発明の1形態としての単1形マンガン乾電池の一部を断面にした正面図である。
【0021】
負極として、鉛を0.01質量%、インジウムを0.0025質量%、マンガンを0.05質量%含有させた亜鉛合金片をプレス加工して、一端開口の有底円筒形の亜鉛缶4を作製した。
【0022】
亜鉛缶4に後述するセパレータ3と底紙13とを介して正極合剤1を収納した。
【0023】
セパレータ3には、クラフト紙に架橋デンプンと酢酸ビニルを主とする結着剤とを水に分散させた糊材を塗布し乾燥させたものを用いた。このとき、その糊材が塗布された面を亜鉛缶4に対向するようにセパレータ3を配置した。
【0024】
底紙13は、厚さが0.3mmのクラフト紙を円形に打ち抜いた後、セパレータ3の内側にカップ状に絞って配置した。
【0025】
正極合剤1には、活物質として電解二酸化マンガンと、導電材としてアセチレンブラックと、塩化亜鉛30質量%、塩化アンモニウム2質量%、および水68質量%を含む電解液と、添加剤として酸化亜鉛とを、質量比50:10:40:0.5で混合したものを用いた。そして、正極合剤1の中央部に、カーボン粉末を焼結して得られた炭素棒2を差し込んだ。
【0026】
ポリエチレンからなる樹脂封口体5の中央部に、炭素棒2を挿入させる孔を設けた。クラフト紙を環状に打ち抜いて得られる鍔紙9にも炭素棒2を挿入させる孔を設けた。鍔紙9および樹脂封口体5の孔に炭素棒2をそれぞれ挿入し、これらを正極合剤1の上部に配置した。そして、正極の集電体として作用するように炭素棒2の上部を正極端子11に接触させた。
【0027】
第1の環状パッキング7として、厚さが0.5mmで、密度が0.35g/cm3の紙材を基材とし、パラフィンを30質量%含浸しているものを準備した。
【0028】
第2の環状パッキング14として、厚さが0.5mmで、密度が0.55g/cm3の紙材を基材とし、パラフィンを25質量%含浸しているものを準備した。
【0029】
亜鉛缶4の外周は、絶縁を確保するための熱収縮性樹脂チューブ8で覆った。なお、その際、亜鉛缶4の開口部側では、樹脂封口体5の周縁部の上面と熱収縮性樹脂チューブ8の間に第2の環状パッキング14を配置して、熱収縮性樹脂チューブ8で覆った。
【0030】
また、亜鉛缶4の底部側では、負極端子6と、その平板状外周部の外面側に第1の環状パッキング7を配置して熱収縮性樹脂チューブ8で覆った。
【0031】
ブリキ板で作製した正極端子11には、炭素棒2の上端部に被せるキャップ状の中央部および平板状の鍔部を有する形状に構成した。この正極端子11の平板状の鍔部には、樹脂製の絶縁リング12を配した。
【0032】
筒状のブリキ板で作製された金属外装缶10を、熱収縮性樹脂チューブ8の外側に配置し、その下端部を内側に折り曲げ、その上端部を内方にカールさせるとともに、その上端部の先端を絶縁リング12にかしめて、当該電池を得た。
【0033】
(実施例2)
第2の環状パッキング14を熱収縮性樹脂チューブ8と前記正極端子11の間に配置したこと以外は、実施例1と同様の単1形マンガン乾電池を作製した。
【0034】
(従来例)
第2の環状パッキングを配置しないこと以外は、実施例と同様の単1形マンガン乾電池を作製した。
【0035】
ついで、上記で得た各電池の評価とその結果について説明する。
【0036】
(樹脂封口体への亜鉛缶の開口端部の食い込み寸法の評価方法)
上記で得られた単1形マンガン乾電池を分解し、樹脂封口体を取り出し、その樹脂封口体を径方向に対して中央位置から垂直方向に切断し、その断面の亜鉛缶の開口端部の圧着部分の食い込み寸法を光学顕微鏡を使用して測定した。なお、試験数は各10個である。評価結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
(保存特性の評価方法)
上記で得られた単1形マンガン乾電池について、初期、および温度45℃、湿度65%の環境下で3ヶ月、6ヶ月保存後の開路電圧の劣化とバラツキ状態を比較した。なお、試験数は各100個である。評価結果を表2に示す。
【0039】
【表2】

【0040】
上記で得られた単1形マンガン乾電池について、初期、および温度45℃、湿度65%の環境下で3ヶ月、6ヶ月保存後に、20±2℃の環境下で、10Ωの負荷で閉路電圧0.9Vに達するまで連続的に放電し、このときの放電持続時間を測定した。なお、試験数は各10個である。評価結果を表3に示す。
【0041】
【表3】

【0042】
表1、表2、表3より明らかなように、本発明により構成された単1形マンガン乾電池は、従来例の単1形マンガン乾電池に比較して、樹脂封口体への亜鉛缶の開口端部の食い込み寸法のバラツキが小さくなり、また、開路電圧のバラツキが小さくなり、放電持続時間の初期に対する残存比率が向上している。
【0043】
以上の結果より、本発明による実施例の電池は、亜鉛缶の底外面の周縁部から前記樹脂封口体の周縁部までを熱収縮性樹脂チューブで覆い、前記周縁部の両方に環状パッキングを配置させることによって、樹脂封口体と正極端子の鍔部の間に適度なクッション性が確保できる。それにより、金属外装缶でかしめた時の金属外装缶の上下部のかしめ度合いのバランスが良好となり、樹脂封口体への亜鉛缶の開口端部の食い込み寸法のバラツキが低減できるために、電池の気密性が保持され、保存特性が向上するという効果を有することが明らかである。
【0044】
なお、上述の実施例では単1形について説明したが、他の形式(単2〜5形)で用いる場合に本発明を適用することも勿論可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のマンガン乾電池は、保存特性のバラツキが小さく高信頼性を有し、使用者が安心して買い置きをして、乾電池を電源とするあらゆる機器に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0046】
1 正極合剤
2 炭素棒
3 セパレータ
4 亜鉛缶
5 樹脂封口体
6 負極端子
7 第1の環状パッキング
8 熱収縮性樹脂チューブ
9 鍔紙
10 金属外装缶
11 正極端子
12 絶縁リング
13 底紙
14 第2の環状パッキング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端開口の有底円筒形の亜鉛缶に発電要素を収納し、前記亜鉛缶の開口部に樹脂封口体を配置して、前記亜鉛缶の底外面の周縁部から前記樹脂封口体の周縁部までを熱収縮性樹脂チューブで覆い、前記周縁部の両方を金属外装缶でかしめたマンガン乾電池において、前記周縁部の両方に環状パッキングを配置したことを特徴とするマンガン乾電池。
【請求項2】
前記樹脂封口体と前記熱収縮性樹脂チューブの間に環状パッキングを配置したことを特徴とする請求項1記載のマンガン乾電池。
【請求項3】
前記熱収縮性樹脂チューブと前記金属外装缶の間に環状パッキングを配置したことを特徴とする請求項1記載のマンガン乾電池。

【図1】
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【公開番号】特開2012−3876(P2012−3876A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135791(P2010−135791)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】