説明

ミシンの生産管理装置

【課題】より好適にミシンの生産管理を行うことが可能なミシンの生産管理装置を提供する。
【解決手段】ミシン1は、オペレータによってミシン1に関する各種情報が入力されると共にミシン1の各種情報が表示される操作パネル20と、ミシン1の各種動作制御を行う制御装置40と、を備え、操作パネル20は、所定の縫製作業の目標完了数を入力する目標完了数入力手段61と、現在の終了数Aを計数する終了数計数手段62と、として機能し、制御装置40は、所定の縫製作業のピッチタイムを取得するピッチタイム取得手段51と、ピッチタイムの平均を算出する平均ピッチタイム算出手段52と、平均ピッチタイムと目標完了数とから、目標完了数分の所定の縫製作業の終了予想時間を算出する終了予想時間算出手段53と、として機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシンの生産管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ミシンの縫製作業による被縫製物の生産を効率的に管理するためのミシンの生産管理装置及び当該生産管理装置を備えたミシンが知られている。
従来のミシンの生産管理装置としては、所定の縫製作業を1単位として繰り返し行うミシンにおいて1日の作業時間と所定の縫製作業による被縫製物の生産数(終了数)とから所定の縫製作業ごとにかかった時間(ピッチタイム)の平均を算出して表示する機能や、あらかじめ定められた1日の作業時間を複数に区分し、当該区分された時間ごとの被縫製物の生産数を表示する機能等を有する生産管理装置が知られている(例えば特許文献1)。また、当該区分された時間ごとの被縫製物の生産数を時刻対被縫製物数のグラフで表示する機能を有する生産管理装置が知られている(例えば特許文献2)。また、当該区分された時間ごとの平均ピッチタイムを算出して表示する機能を有する生産管理装置が知られている(例えば特許文献3)。
また、所定の縫製作業の作業開始タイミングと作業終了タイミングとを入力することでピッチタイムを測定する作業を2回以上連続して行い、その平均ピッチタイムを算出することでより正確なピッチタイムを算出して表示する機能を有する生産管理装置が知られている(例えば特許文献4)。
ミシンのオペレータや生産管理を行う者は、これらの生産管理装置による表示内容から当該ミシンによる所定の縫製作業のピッチタイムや出来高を確認し、生産計画やその実施及び生産効率の向上に向けた施策等を行う。
また、あらかじめ定められた1日の作業時間内に行うべき所定の縫製作業の目標完了数即ち被縫製物の目標生産数を生産管理装置に設定し、1日の出来高と比較することで生産効率を測ることも一般的に行われている。さらに、1日の作業時間と被縫製物の目標完了数とに基づいて、作業中にその時点での目標完了数つまりその時点で生産完了していることが望ましい被縫製物の数を表示する生産管理装置も一般的に知られている。
【特許文献1】特開昭60−234685号公報
【特許文献2】特開2006−198395号公報
【特許文献3】特開昭64−86994号公報
【特許文献4】特開2004−105392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述のような従来技術による生産管理装置では、そのとき行われた所定の縫製作業のピッチタイムに基づいて目標完了数分の縫製作業が完了するまでにかかる時間(終了予想時間)を算出することができなかった。このため、ミシンのオペレータはそれまでのピッチタイムで作業を続けた場合、目標完了数分の縫製作業が終了する時間が予定された目標完了時間に対してどの程度遅れが発生してしまうのかを速やかに把握することが難しく、気が付いたときには挽回不可能な遅れが発生してしまっているといった問題があった。
また、一日の作業ペースは時々刻々と変化する場合もあるので、ある程度作業が進むごとに目標時間内に縫製作業を完了させるためのピッチタイムを確認し、ピッチタイムをその都度調節できるようにすることが望ましいが、そのようなピッチタイムの確認を行えるミシンはなく、オペレータは完成した被縫製物の数や残りの被縫製物の数等から作業ペースを計らざるを得ないといった問題点があった。
また、上述のような問題点により、ミシンのオペレータは縫製作業に集中できないため、ミシンの生産効率を低下させるといった問題点があった。
【0004】
本発明は、上述の問題点に鑑み、より好適にミシンの生産管理を行うことが可能なミシンの生産管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、所定の縫製作業を1単位として繰り返し行うミシンの縫製作業時間を管理するミシンの生産管理装置において、前記所定の縫製作業の目標完了数を入力する目標完了数入力手段と、前記所定の縫製作業の終了数を計数する終了数計数手段と、
前記所定の縫製作業が行われるごとに当該実行中の縫製作業のピッチタイムを取得するピッチタイム取得手段と、前記ピッチタイム取得手段によって取得されたピッチタイムのうち所定条件に該当するピッチタイムのみを用いて平均ピッチタイムの算出を行う第1の算出手段と、前記ピッチタイム取得手段によって取得された全てのピッチタイムを用いて平均ピッチタイムの算出を行う第2の算出手段と、前記第1の算出手段と前記第2の算出手段のいずれか一方による平均ピッチタイムの算出結果を選択する選択手段と、前記選択手段により選択された平均ピッチタイムの算出結果と前記所定の縫製作業の目標完了数とから、目標完了数分の前記所定の縫製作業の終了予想時間を逐次算出する終了予想時間算出手段と、前記終了予想時間を表示する終了予想時間表示手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載のミシンの生産管理装置において、前記ミシンによる前記目標完了数分の前記所定の縫製作業の目標完了時間を入力する目標完了時間入力手段と、前記目標完了数と前記所定の縫製作業の終了数とから、前記目標完了数に対する未完了数を算出する未完了数算出手段と、前記目標完了時間内に前記未完了数分の前記所定の縫製作業を完了するために残された残り作業時間を算出する残り作業時間算出手段と、前記残り作業時間と前記未完了数とから、前記残り作業時間内に前記未完了数の前記所定の縫製作業を完了させるための残り作業用ピッチタイムを算出する残り作業用ピッチタイム算出手段と、前記算出された前記残り作業用ピッチタイムを表示する残り作業用ピッチタイム表示手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項2に記載のミシンの生産管理装置において、前記残り作業用ピッチタイム算出手段による残り作業用ピッチタイムの算出の実行を指示する指示手段と、前記指示手段が操作された際に前記残り作業用ピッチタイムを前記残りピッチタイム表示手段に表示する表示制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、平均ピッチタイム算出手段によって算出された平均ピッチタイムに基づいて終了予想時間算出手段が終了予想時間を算出し、終了予想時間表示手段が終了予想時間を表示する。つまり、平均ピッチタイムの変化に応じて変化する終了予想時間が逐次算出され表示される。よって、ピッチタイム取得手段によってピッチタイムが取得されるごとに平均ピッチタイム算出手段が平均ピッチタイムを算出することにより、そのときのピッチタイムに応じた終了予想時間が算出される。これによって、ミシンのオペレータはそのときのピッチタイムに基づく終了予想時間を知ることが可能となる。つまり、あらかじめ定められた目標完了時間(例えば、1日の作業時間)に対してそのときのピッチタイムに基づく縫製作業の進退の程度として終了予想時間を確認することが容易となり、オペレータは当該進退の程度に応じたピッチタイムの調節を心がけることができる。よって、従来技術においてオペレータがそれまでのピッチタイムで作業を続けた場合、目標完了数分の縫製作業が終了する時間が予定された目標完了時間に対してどの程度遅れが発生してしまうのかを速やかに把握することが難しく、気が付いたときには挽回不可能な遅れが発生してしまっているといった問題が解消されるとともに、完成した被縫製物の数や残りの被縫製物の数等から作業ペースを計らざるを得ないというオペレータの負担が大幅に軽減されることによってミシンの生産性が大幅に向上する。
また、終了予想時間が目標完了時間よりも早くなることが算出された場合は、縫製工場の管理者は、終了予想時間作業が早く終了すると予想されるオペレータに対して、他の遅れている縫製作業を割り振る等の計画を予め設定することも可能となる。
【0009】
また、平均ピッチタイム算出手段が平均ピッチタイムを算出する際には、ピッチタイム取得手段によって取得されたピッチタイムのうち所定条件に該当するピッチタイムのみを用いて平均ピッチタイムの算出を行う第1の算出手段による平均ピッチタイムの算出結果と、ピッチタイム取得手段によって取得された全てのピッチタイムを用いて平均ピッチタイムの算出を行う第2の算出手段により算出された平均ピッチタイムの算出結果との何れかが選択手段により選択され、平均ピッチタイム算出手段は、選択された方の算出結果に基づいて平均ピッチタイムを算出する。このとき、所定条件として例えばそれまでの平均ピッチタイムに対して一定の誤差範囲内のピッチタイムのみを対象とするように設定することで、それまでの平均ピッチタイムに対して大きくかけ離れたピッチタイムを除外することが可能となる。例えば、実際は縫製作業が終了していないにも関らずオペレータがミシンに対して誤った操作をしてしまった等の理由によりミシンが縫製作業の終了としてカウントしてしまった場合に、当該カウントの際のピッチタイムがそれまでの平均ピッチタイムに対して異常に短時間あるいは長時間であれば、第1の算出手段は当該カウントの際のピッチタイムは所定条件に該当しないとして除外する。つまり、第1の算出手段は平均ピッチタイムの算出に際し、不適切なピッチタイムと判断されるピッチタイムを除外して算出することが可能である。よって、第1の算出手段によってより精度の高い平均ピッチタイムを算出することが可能となる。よって、平均ピッチタイムに基づいて生産管理を行う場合の精度が大幅に向上し、ミシンの生産性がより一層向上する。
また、第2の算出手段は、ピッチタイム取得手段によって取得された全てのピッチタイムを用いて平均ピッチタイムの算出を行う。よって、第1の算出手段に設けられた所定条件によっては除外されてしまったピッチタイムも含まれた平均ピッチタイムが算出される。これによって、縫製作業のピッチタイムとしてカウントするに相応しいにも関らず第1の算出手段に設けられた所定条件に該当しなかったために第1の算出手段による平均ピッチタイムに用いられなかったピッチタイムが発生した場合であっても、第2の算出手段による平均ピッチタイムの算出によってフォロー可能となる。よって、第1の算出手段と第2の算出手段とを併用することにより、さらに精度の高い平均ピッチタイムを算出することが可能となる。よって、平均ピッチタイムに基づいて生産管理を行う場合の精度がより一層向上し、ミシンの生産性がさらに向上する。
【0010】
よって、オペレータは所定条件に該当するピッチタイムのみを用いた平均ピッチタイムを算出するか、全ての平均ピッチタイムを算出するかを選択可能となる。このとき、例えば安定した時間で行える縫製作業の場合には第1の算出手段を選択することによって、平均ピッチタイムから大きくかけ離れたピッチタイムを自動的に除外するよう設定することでピッチタイムの精度を保つことができる。また、何らかの理由(不慣れである等)によりピッチタイムが安定しない縫製作業の場合には第2の算出手段を選択することによって、ピッチタイムのばらつきがあった場合であってもいずれのピッチタイムも除外されることなく平均ピッチタイムの算出が行われる。つまり、選択手段によってオペレータは状況に応じた平均ピッチタイム算出方法を選択することが可能となり、平均ピッチタイムに基づいて生産管理を行う場合の精度がより一層向上し、ミシンの生産性がさらに向上する。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、残り作業用ピッチタイム算出手段が、残り作業時間と未完了数とから、残り作業時間内に未完了数の所定の縫製作業を完了させるための残り作業用ピッチタイムを算出する。また、表示制御手段が、残り作業用ピッチタイムを残り作業用ピッチタイム表示手段に表示する。つまり、オペレータは残り作業時間内に未完了の所定の縫製作業を完了させるための残り作業用ピッチタイムを見て所定の縫製作業を行う。これによって、オペレータは残り作業時間内に未完了数の所定の縫製作業を完了させるための作業ペースを的確に把握して縫製作業を進めることができる。つまり、目標完了時間内に目標完了数の所定の縫製作業を完了させるための作業ペース調整を行うことが容易となるので、オペレータが完成した被縫製物の数や残りの被縫製物の数等から作業ペースを計らざるを得ないといった問題点を解消できる。よって、オペレータの負担が大幅に軽減され、ミシンの生産性がより一層向上する。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、表示制御手段は、指示手段による指示があった際に残り作業用ピッチタイムを残り作業用ピッチタイム表示手段に表示する。これによって、オペレータは残り作業時間内に未完了数の所定の縫製作業を完了させるための作業ペースの確認を行いたい任意のタイミングで残り作業用ピッチタイムを確認することが可能となる。よって、オペレータは残り作業時間内に未完了数の所定の縫製作業を完了させるための作業ペースをより的確に把握して縫製作業を進めることができる。よって、オペレータは目標完了時間内に目標完了数の所定の縫製作業を完了させるための作業ペース調整を行うことがより一層容易となるので、オペレータの負担がさらに軽減され、ミシンの生産性がさらに向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(発明の全体構成)
以下、図を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明によるミシンの生産管理装置は、所定の縫製作業を1単位として繰り返し行うミシンの縫製作業時間を管理するミシンの生産管理装置である。
図1は本発明によるミシンの生産管理装置を備えたミシン1の構成を示す説明図である。
ミシン1は、ミシンフレームのアーム部の下面部に上下動可能に設けられてその先端部が縫い針2aを保持する針棒2と、針棒2を上下動させる駆動源としてのミシンモータ3と、針棒2の下方であってミシンフレームのベッド部に設けられて針棒2の上下動タイミングに応じて被縫製物を移動させる布送り装置4と、オペレータによって操作されてミシン1の動作を指令する操作ペダル5と、オペレータによってミシン1に関する各種情報が入力されると共にミシン1の各種情報が表示される操作パネル20と、ミシン1の各種動作制御を行う制御装置40と、オペレータによって操作されてミシン1の電源の入/切を切り替える電源スイッチ30と、を備えている。
【0014】
(操作パネル)
図2は操作パネル20の構成を示す説明図である。図3は操作パネル20、制御装置40並びに操作パネル20及び制御装置40に接続された各部の構成を示すブロック図である。
操作パネル20は、ミシン1の動作に関する各種情報を表示する表示器21と、オペレータによって操作されてミシン1の動作に関する各種情報が入力される複数の操作スイッチ22と、着脱可能に設けられた外部記憶媒体30とミシン1とを接続可能なインターフェイス24と、を備えている。
【0015】
表示器21はミシン1の動作に関する各種情報を表示する。このとき表示器21は制御装置40の出力に応じた内容を表示する。
複数の操作スイッチ22は、表示器21の周囲に配置されており、オペレータの操作によってミシン1に関する各種情報が入力される。複数の操作スイッチ22による入力内容は制御装置40に入力され、制御装置40は当該入力内容に応じた処理を行う。操作スイッチ22に含まれるスイッチとしては、所定の縫製作業が終了するごとに1回操作することでミシン1の制御装置40に所定の縫製作業が1回終了したことを入力する実績スイッチや、後述する残り作業用ピッチタイム算出手段57による残り作業用ピッチタイムの算出の実行を指示する残り作業用ピッチタイム算出指示スイッチ等がある。これらのスイッチについては後述する。
【0016】
(制御装置)
制御装置40は、ミシン1に関する各種処理を行うCPU41と、CPU41が処理する各種のプログラム及びデータを書き換え不可能に記憶するROM42と、CPU41が処理する各種のプログラム及びデータを一時的に格納するRAM43と、CPU41が処理する各種プログラム及びデータを書き換え可能に記憶するEEPROM44と、現在時刻を管理するタイマー45と、を備えている。また、制御装置40は、ミシンモータ3、操作ペダル5等のミシン1の各部と接続されている。
CPU41は、操作パネル20の複数の操作スイッチ22や、操作ペダル5等を介した入力内容に応じた各種のプログラム及びデータをROM42やEEPROM44から呼び出して実行、処理する。また、CPU41は該処理内容に応じた出力をミシン1の各部に対して行い、ミシン1の各種動作制御を行う。
タイマー45は現在時刻を管理しており、CPU41の呼び出しに応じて現在時刻を示すパラメータを出力する。CPU41は当該パラメータに基づいて現在時刻や所定の縫製作業の開始から終了までの時間(ピッチタイム)を得る。なお、ピッチタイムを得る場合は、開始時点の時刻と終了時点の時刻との間の時間を算出することで得る。また、タイマー45は周期的(例えば1[sec])に現在時刻を示すパラメータをCPU41に出力し、CPU41は時刻に応じた処理を行う。
【0017】
(生産管理機能)
次に、制御装置40が行う処理のうち、ミシン1の生産管理に関する機能について詳細に説明する。図4は制御装置40及び操作パネル20の生産管理に関する機能を示す機能ブロック図である。
ミシン1は、所定の縫製作業の目標完了数を入力する目標完了数入力手段61と、所定の縫製作業の終了数を計数する終了数計数手段62と、所定の縫製作業が行われるごとに当該所定の縫製作業の開始時間と終了時間とからピッチタイムを取得するピッチタイム取得手段51と、ピッチタイム取得手段51によって取得されたピッチタイムの平均を算出する平均ピッチタイム算出手段52と、平均ピッチタイム算出手段52の算出方法を選択する選択手段63と、平均ピッチタイムと所定の縫製作業の目標完了数とから、目標完了数分の所定の縫製作業の終了予想時間を算出する終了予想時間算出手段53と、所定の縫製作業の目標完了時間を入力する目標完了時間入力手段64と、目標完了数と目標完了時間とから、目標完了時間内に目標完了数の所定の縫製作業を完了させるための目標ピッチタイムを算出する目標ピッチタイム算出手段54と、目標完了時間に対する残り作業時間を算出する残り作業時間算出手段55と、目標完了数と所定の縫製作業の終了数とから目標完了数に対する未完了数を算出する未完了数算出手段56と、残り作業時間と未完了数とから残り作業時間内に未完了数の所定の縫製作業を完了させるための残り作業用ピッチタイムを算出する残り作業用ピッチタイム算出手段57と、算出された残り作業用ピッチタイムを目標ピッチタイムに置き換えて表示器21に表示する表示制御手段58と、残り作業用ピッチタイム算出手段による未完了数の算出の実行を指示する指示手段65と、その時点での目標終了数を算出する目標終了数算出手段59と、を備えている。
このうち、ピッチタイム取得手段51と、平均ピッチタイム算出手段52と、終了予想時間算出手段53と、目標ピッチタイム算出手段54と、残り作業時間算出手段55と、未完了数算出手段56と、残り作業用ピッチタイム算出手段57と、表示制御手段58と、は制御装置40のCPU41によって実行処理されるROM24に記憶された各種プログラムによってその機能を実現している。また、目標完了数入力手段61と、終了数計数手段62と、選択手段63と、目標完了時間入力手段64と、指示手段65と、は操作パネル20の複数の操作スイッチ22に対するオペレータの操作によって実現している。
【0018】
目標完了数入力手段61は、オペレータによる操作スイッチ22の操作によって所定の縫製作業の目標完了数が入力されることで、制御装置40に当該目標完了数を入力して設定する。
図5は操作パネル20の表示器21に表示されたテンキー入力画面21aを示す説明図である。
目標完了数の入力は、テンキー入力画面21aから行われる。ミシン1に対して目標完了数、目標完了時間等の各種設定が行われていない場合、またはオペレータによって各種設定を行うための画面呼出が行われた場合、操作パネル20の表示器21に対応する設定画面(図示略)が表示される。設定画面にはミシン1に対する各種の設定項目を入力するための画面へと遷移するメニューが表示されており、その中から所定の縫製作業の目標完了数を入力するための目標完了数入力画面へと遷移するようオペレータによって入力されると、図5に示すテンキー入力画面へと遷移する。
図5に示すように、テンキー入力画面21aには、複数の操作スイッチ22にそれぞれ対応するように0〜9の数値とリターンキーを示すアイコンR等がそれぞれのスイッチ22の近傍に表示されており、オペレータは各数値やリターンキーに対応する操作スイッチ22を操作することで目標完了数を数値入力することが可能となっている。目標完了数は4桁の数値として管理され、オペレータによって上の位から順に入力される。例えば、2,8,8,0の順で入力された場合、目標完了数は2880[回]として設定される。設定された目標完了数は制御装置40のEEPROM44に記憶される。
【0019】
終了数計数手段62は、所定の縫製作業の終了数を計数する。
図6は縫製作業中に表示器21に表示される縫製画面21bを示す説明図である。
終了数計数手段62は、操作パネル20に表示された実績入力アイコンPの近傍に実績スイッチとして機能するように配置されている操作スイッチ22が操作されると、図6に示す縫製画面21bの現在の終了数Aのカウントに1を加算して所定の縫製作業の終了数を計数する。つまり、実績スイッチの操作タイミングで所定の縫製作業が1回終了したと見なされ、現在の終了数Aが1増える。ただし、このとき実績スイッチの操作タイミングにおいて、後述するピッチタイム取得手段51によって取得されたピッチタイムが平均ピッチタイム算出手段52による平均ピッチタイムの算出に用いられなかった場合は、その実績スイッチの操作は所定の縫製作業の終了数とは見なされず、現在の終了数Aのカウントも行われない。この詳細は後述する。
また、何らかの理由により実際の終了数と縫製画面21bの現在の終了数Aとの間に差異が生じた場合(例えば縫製作業完了前に誤って実績スイッチを操作した場合)、手動で現在の終了数Aを変更することも可能である。この場合、実績入力減算アイコンNの近傍に配置された操作スイッチ22を操作する毎に終了数が操作回数分だけ減算されて現在の終了数Aとして設定される。
【0020】
ピッチタイム取得手段51は、実行中の所定の縫製作業の1回ごとの開始時刻から終了時刻までの時間を取得する。このとき、開始時刻はオペレータによって複数の操作スイッチ22のうち縫製作業開始を入力するスイッチが操作された時の時刻(縫製作業開始時刻)または前回の所定の縫製作業が終了した時即ち前回の実績スイッチが操作された時の時刻である。一方、終了時刻は最も最近に実績スイッチが操作された時の時刻である。つまり、ピッチタイム取得手段51は、最初の1回目の所定の縫製作業の際には縫製作業開始時刻から該縫製作業の終了時刻の間の時間をピッチタイムとして取得する。一方、2回目以降の所定の縫製作業の際には前回の所定の縫製作業の終了時の時刻からそのときの所定の縫製作業の終了時の時刻の間の時間をピッチタイムとして取得する。なお、それぞれの時刻の取得は制御装置40のCPU41がタイマー45を呼び出すことで行われる。
取得されたピッチタイムはEEPROM44に累積して記憶される。また、取得されたピッチタイムのうち最近の縫製作業のピッチタイムが実績ピッチタイムCとして縫製画面21bに表示される。
【0021】
平均ピッチタイム算出手段52は、ピッチタイム取得手段51によって取得されたピッチタイムの平均を算出する。つまり、EEPROM44に記憶されたピッチタイムを合計してこの合計値を所定の縫製作業の終了数で除算して平均ピッチタイムを算出する。
このとき、平均ピッチタイムの算出方法として、所定条件に該当するピッチタイムのみを用いて平均ピッチタイムを算出するパターン(第1の算出手段)と、全てのピッチタイムを用いて平均ピッチタイムを算出するパターン(第2の算出手段)と、がある。第1の算出手段は、新たにピッチタイムが取得された場合、該ピッチタイムがそれまでの平均ピッチタイムの所定割合(例えば、二分の一)以下でなかった場合のみ該ピッチタイムを用いて新たな平均ピッチタイムを算出する。つまり、該ピッチタイムがそれまでの平均ピッチタイムの所定割合未満であった場合、該ピッチタイムは何らかの理由により縫製作業の終了が誤入力されたピッチタイムだと見なし、該ピッチタイムを有効なピッチタイムとして扱わないものとする。この場合、第1の算出手段は、該ピッチタイムで終了した所定の縫製作業をピッチタイムの平均値の算出に用いない。つまり、この場合、第1の算出手段が平均ピッチタイムを算出するために用いるピッチタイムの所定条件として、それまでの平均ピッチタイムの所定割合以上であることが設定されており、この所定条件に該当するピッチタイムのみの合計値を、所定条件に該当するピッチタイムが得られた所定の縫製作業の終了数で除算して平均ピッチタイムを算出する。一方、第2の算出手段は、全てのピッチタイムを全ての所定の縫製作業の終了数で除算して平均ピッチタイムを算出する。
【0022】
選択手段63は、平均ピッチタイム算出手段52の算出方法を選択する。つまり、第1の算出手段と第2の算出手段のいずれか一方による平均ピッチタイム算出結果を用いることを選択可能とする。具体的には、平均ピッチタイムの算出方法設定即ち平均ピッチタイムの算出において第1の算出手段と第2の算出手段とのいずれを用いるかの設定を行うための設定画面が表示され、オペレータによっていずれか一方を用いて算出を行う設定がなされる。このとき、選択手段63によって選択された方の算出した平均ピッチタイムが、平均実績ピッチタイムEとして縫製画面21bに表示される。
【0023】
終了予想時間算出手段53は、平均ピッチタイムと所定の縫製作業の目標完了数とから、目標完了数分の所定の縫製作業の終了予想時間を逐次算出する。つまり、平均ピッチタイムに目標完了数を乗算して平均ピッチタイムで所定の縫製作業を目標完了数分完了させた場合にかかる総時間を算出し、縫製作業開始時刻から該総時間後の時刻を終了予想時間として算出する。このとき、平均ピッチタイムが更新されると、そのたびに終了予想時間算出手段53は更新された平均ピッチタイムから終了予想時間を算出する。算出された終了予想時間は、労働終了予想時間Fとして終了予想時間表示手段としての縫製画面21bに表示される。なお、終了予想時間の算出に用いられる平均ピッチタイムは、選択手段63によって選択された方の算出結果による平均ピッチタイムである。
【0024】
目標完了時間入力手段64は、目標完了数分の所定の縫製作業の目標完了時間を入力する。
図7は表示器21に表示された労働時間入力画面21cを示す説明図である。図8は設定された目標完了時間の一例を示す説明図である。
設定画面のメニューから予定作業時間を入力するための画面に遷移するようオペレータによって入力されると、表示器21の表示内容が図7に示す労働時間入力画面21cに遷移する。労働時間入力画面21cでは、オペレータによって労働時間と労働除外時間とが入力される。労働時間とは、00:00〜23:59で表される1日の時間のうち、労働にあてがわれる予定の時間である。労働除外時間とは、労働時間として入力、設定された時間のうち、休憩等にあてがわれて労働が行われない時間である。例えば、労働時間として、8:00〜12:00の労働時間Hと、12:45〜17:00の労働時間Iの2つの時間帯が設定され、労働除外時間Jとして15:00〜15:15が設定された場合、図8に示すように、労働時間I内に労働除外時間Jが含まれることとなる。この場合、労働除外時間Jは労働時間として見なされない。よって、この場合に労働時間とみなされる時間は、8:00〜12:00の労働時間Hと、12:45〜15:00の労働時間Iaと、15:15〜17:00の労働時間Ibの計8[時間]となり、総労働時間Kとして表示されると共に設定された労働時間と労働除外時間が労働スケジュールLに表示される。また、設定された労働時間H,I、労働除外時間J及び総労働時間KはEEPROM44に記憶される。なお、図7においては、操作パネル20の表示器21のみが示され、スイッチ22が省略されているが、各労働時間の入力に際しては、図5や図6における目標完了数や終了数の入力と同様に表示されている各労働時間の近傍の配置されている操作スイッチ22の操作により入力される。
【0025】
目標ピッチタイム算出手段54は、目標完了時間内に目標完了数分の所定の縫製作業を完了させるための目標ピッチタイムを算出する。例えば、目標完了数が1440[回]、目標完了時間の総労働時間Kが8[時間]であった場合、1440[回]の所定の縫製作業を総労働時間Kである8[時間]即ち28800[秒]で完了させる場合の目標ピッチタイムは、以下の式(1)によって求められる。
28800[秒]÷1440[回]=20[秒]/回……(1)
つまり、この場合20[秒]が目標ピッチタイムとなる。
【0026】
なお、目標ピッチタイム算出手段54によって算出された目標ピッチタイムは縫製画面21bの目標ピッチタイムDとして表示される。つまり、縫製画面21bを表示する操作パネル20の表示器21は「目標ピッチタイム表示手段」として機能する。
【0027】
未完了数算出手段56は、目標完了数と終了数計数手段62により計数された所定の縫製作業の終了数とから、目標完了数に対する未完了数を算出する。つまり、目標完了数から終了数計数手段62による現在の終了数Aを減算した算出値が未完了数となる。算出された未完了数はRAM43に格納される。
【0028】
残り作業時間算出手段55は、目標完了時間内に未完了数算出手段56で算出された未完了数分の所定の縫製作業を完了するために残された残り作業時間を算出する。つまり、目標完了時間としての総労働時間Kに対してその時点までに経過した経過時間を減算した算出結果が残り作業時間として算出される。経過時間は、目標完了時間入力手段64によって入力された労働時間の開始時刻すなわち労働時間のうち最も早い時刻から、経過時間を算出する際にタイマー45から取得された時刻までに経過している時間である。例えば、労働時間が8:00から設定されている状態で、経過時間を算出する際にタイマー45から取得された時刻が10:00だった場合の経過時間は2[時間]である。かようにして算出された経過時間を総労働時間Kから減算して残り作業時間を算出する。算出された残り作業時間はRAM43に格納される。
【0029】
残り作業用ピッチタイム算出手段57は、残り作業時間と未完了数とから残り作業時間内に未完了数の所定の縫製作業を完了させるための残り作業用ピッチタイムを算出する。例えば、残り作業時間が6[時間]即ち21600[秒]、残り作業回数が720[回]だった場合の残り作業用ピッチタイムは以下の式(2)によって求められる。
21600[秒]÷720[回]=30[秒]/回……(2)
この場合、残り作業用ピッチタイムは30[秒]となる。
【0030】
表示制御手段58は、算出された残り作業用ピッチタイムを目標ピッチタイムに置き換えて表示器21に表示する。つまり、縫製画面21bにおいて目標ピッチタイムDとして表示された目標ピッチタイムが、残り作業用ピッチタイム算出手段57によって算出された残り作業用ピッチタイムに置き換わる。なお、かかる置き換えは後述する指示手段65によるオペレータの指示入力があった場合のみ行われる。また、この場合、表示器21は、「残り作業用ピッチタイム表示手段」として機能する。
【0031】
指示手段65は、残り作業用ピッチタイム算出手段による未完了数の算出の実行を指示する。操作パネル20には指示手段65としての残り作業用ピッチタイム算出指示スイッチが設けられており、オペレータによって残り作業用ピッチタイム算出指示スイッチが操作されると、制御装置40のCPU41は残り作業用ピッチタイム算出手段57による残り作業用ピッチタイムの算出を行う。また、このとき表示制御手段58によって縫製画面21bの目標ピッチタイムDが残り作業用ピッチタイムに置き換えられる。なお、既に1回以上指示手段65に対する操作が行われて目標ピッチタイムが残り作業用ピッチタイムに置き換わっている状態でさらに指示手段65に対する操作があった場合、それまで目標ピッチタイムDとして表示されていた残り作業用ピッチタイムが新たに算出された残り作業用ピッチタイムに置き換わる。
【0032】
目標終了数算出手段59は、その時点での目標終了数を算出する。なお、目標終了数とは「その時点で完了していることが望ましい所定の縫製作業の終了数」である。つまり、目標ピッチタイムと目標完了時間に対する経過時間とからその時点での所定の縫製作業の目標終了数を算出する。例えば、目標ピッチタイムが20[秒]、経過時間が80[分]即ち4800[秒]であった場合、目標終了数は下記の式(3)によって求められる。
4800[秒]÷20[秒]=240[回]……(3)
算出された目標終了数は、現在の目標終了数Bとして縫製画面21bに表示される。なお、目標終了数は目標ピッチタイムの時間が経過するごとに1ずつ加算されていくこととなる。つまり、現在の目標終了数Bは目標ピッチタイムごとに更新される。これによって、オペレータは現在の目標終了数Bと現在の終了数Aとを比較することで予定された作業ペースに対する実際の作業ペースの進退を容易に把握することが可能となる。
【0033】
なお、上述の項目のうち、目標完了数、目標完了時間、選択手段63による平均ピッチタイム算出方法の設定等の設定項目や、縫製作業で取得されたピッチタイム、平均ピッチタイム等のデータはEEPROM44に記憶され、事後も継続的に活用可能である。また、上述の設定項目やデータを外部記憶媒体30に書き出し、以後の縫製作業で外部記憶媒体30から上述の設定項目やデータを呼び出すようにしてもよい。これによって、ミシン1と同様の仕組みを持つミシンであれば外部記憶媒体30のデータを用いて所定の縫製作業を行うことが可能となる。
【0034】
(ミシンの動作)
次に、オペレータによって所定の縫製作業が行われる際のミシン1の動作について詳細に説明する。図9、図10はミシン1の動作手順を示すフロー図である。図9はステップS1〜S9までのフロー図、図10はステップS10〜S17のフロー図である。
電源スイッチ30がONとなってミシン1の電源が投入されると、制御装置40のCPU41は、目標完了数、目標完了時間及び平均ピッチタイムの算出において第1の算出手段と第2の算出手段とのいずれを用いるか等の各種設定がなされているかどうか判定する(ステップS1)。既に該設定がなされていると判定された場合(ステップS1:YES)、CPU41は新しい設定をするかどうかをオペレータに確認するための選択画面を操作パネル20の表示器21に表示させる(ステップS2)。このとき、オペレータによって新しい設定をする旨の選択がなされた場合(ステップS3:YES)、CPU41は該設定を行うための設定画面を表示器21に表示させる(ステップS4)。なお、ステップS1において該設定がなされていないと判定された場合(ステップS1:NO)、ステップS4に移行する。
【0035】
設定画面では、平均ピッチタイムの算出方法設定即ち平均ピッチタイムの算出において第1の算出手段と第2の算出手段とのいずれを用いるかの設定が行われる(ステップS5)。また、目標完了時間の設定即ち労働時間と労働除外時間との設定が行われる(ステップS6)。このとき、ステップS6によって目標完了時間が決定する。また、目標完了数の設定が行われる(ステップS7)。ステップS5〜S7の設定はオペレータによって操作パネル20の操作スイッチ22が操作されることで行われる。ステップS5〜S7の設定が完了すると、CPU41は目標ピッチタイム算出手段57として機能し、目標ピッチタイムが算出され(ステップS8)、さらにCPU41は表示器21に縫製画面21bを表示させる(ステップS9)。このときステップS9で表示される縫製画面21bには、ステップS8で算出された目標ピッチタイムが目標ピッチタイムDとして表示されている。なお、ステップS3において新しい設定をしない旨の選択がなされた場合(ステップS3:NO)、ステップS8へと移行し、既に設定されている該設定から目標ピッチタイムが算出される。ステップS9において縫製画面21bが表示された後、オペレータによって縫製作業が開始される。
【0036】
その後、オペレータによって実績スイッチ、あるいはテンキー入力画面21aが操作されて、当該操作に基づく終了数計数手段62による終了数の計数により現在の終了数Aが更新されると(ステップS10:YES)、CPU41は現在の終了数Aの更新に伴う表示更新処理を行う(ステップS11)。現在の終了数の更新に伴う表示更新処理については後述する。
一方、現在の終了数Aの更新が行われないで(ステップS10:NO)、オペレータによって残り作業用ピッチタイム算出指示スイッチが操作されると(ステップS12:YES)、CPU41は残り作業時間算出手段55、未完了数算出手段56及び残り作業用ピッチタイム算出手段57として機能し、残り作業用ピッチタイムの算出が行われる(ステップS13)。また、CPU41は表示制御手段58として機能し、ステップS13にて算出された残り作業用ピッチタイムが縫製画面21bの目標ピッチタイムDに置き換えられて表示される(ステップS14)。
また、目標ピッチタイムの時間が経過すると(ステップS15:YES)、現在の目標終了数Bが+1される(ステップS16)。
また、現在の終了数Aが目標完了数以上となった場合(ステップS17:YES)、すなわち所定の縫製作業が目標完了数以上繰り返されたとみなされた場合、CPU41は目標完了数分の所定の縫製作業が終了したものとみなし、ミシン1による縫製作業は終了する。なお、現在の終了数Aが目標完了数未満の間は(ステップS17:NO)、ステップS10〜S16の処理を繰り返し行う。また、ステップS11の後はステップS17へと移行する。
【0037】
次に、現在の終了数の更新に伴う表示更新処理(ステップS11)について詳細に説明する。図11は現在の終了数の更新に伴う表示更新処理の手順を示すサブフロー図である。
まず、CPU41によって、現在の終了数Aが更新された際の入力がテンキー入力画面21aからであったかどうかの判定が行われる(ステップS21)。テンキー入力画面21aからであった場合(ステップS21:YES)、現在の終了数Aがテンキー入寮画面21aから入力された値に変更される(ステップS22)。テンキー入力画面21aからでなかった場合(ステップS21:NO)、即ち実績スイッチの操作によるものであった場合、実績スイッチが操作されたタイミングが労働時間中であったかどうかの判定が行われる(ステップS23)。ステップS23において労働時間中でなかった場合(ステップS23:NO)、現在の終了数の更新に伴う表示更新処理を終了する。ステップS23において労働時間中であった場合(ステップS23:YES)、CPU41はピッチタイム取得手段51として機能し、実績スイッチが操作された際の縫製作業についてピッチタイムの取得が行われる。(ステップS24)。次に、平均ピッチタイムの算出において第1の算出手段を用いる設定となっているかの判定が行われる(ステップS25)。ステップS25において第1の算出手段を用いる設定となっていた場合(ステップS25:YES)、ステップS24において取得されたピッチタイムがその時点での平均ピッチタイムの四分の一以下であるかどうか判定される(ステップS26)。ステップS26において該ピッチタイムが四分の一以下であった場合(ステップS26:YES)、該ピッチタイムは有効なピッチタイムとして扱われないので破棄され、(ステップS27)現在の終了数の更新に伴う表示更新処理が終了する。ステップS26において該ピッチタイムが四分の一以下でなかった場合(ステップS26:NO)、該ピッチタイムは有効なピッチタイムとして扱われ、現在の終了数Aが+1され(ステップS28)、ステップS24で取得されたピッチタイムが実績ピッチタイムCとして縫製画面21bに更新表示される(ステップS29)。また、CPU41は平均ピッチタイム算出手段52として機能し、該ピッチタイムを用いて平均ピッチタイムの算出が行われ(ステップS30)、算出された平均ピッチタイムが平均実績ピッチタイムEとして縫製画面21bに更新表示される(ステップS31)。なお、ステップS25において第1の算出手段を用いる設定となっていなかった場合(ステップS25:NO)、即ち第2の算出手段を用いる設定となっていた場合、ステップS28へと移行する。
その後、CPU41が終了予想時間算出手段53として機能し、終了予想時間が算出され(ステップS32)、算出された終了予想時間が労働終了予想時間Fとして縫製画面21bで更新表示され(ステップS33)、現在の終了数の更新に伴う表示更新処理が終了する。なお、ステップS22の後はステップS32へと移行する。即ち、テンキー入力画面21aから入力された現在の終了数Aとその時点での平均ピッチタイムとから終了予想時間が算出され、労働終了予想時間Fが更新表示される。
【0038】
(本発明のミシンの生産管理装置の作用効果)
上述の実施例によれば、平均ピッチタイム算出手段52によって算出された平均ピッチタイムが変更されると、終了予想時間算出手段53が終了予想時間を再度算出する。つまり、平均ピッチタイムの変化に応じて変化する終了予想時間が逐次算出される。よって、ピッチタイム取得手段51によってピッチタイムが取得されるごとに平均ピッチタイム算出手段が平均ピッチタイムを算出することにより、そのときのピッチタイムに応じた終了予想時間が算出され、労働終了予想時間Fとして表示される。これによって、ミシンのオペレータはそのときのピッチタイムに基づく終了予想時間を知ることが可能となる。つまり、所定の縫製作業を完了させるための目標完了時間としてあらかじめ定められた1日の作業時間に対してそのときのピッチタイムに基づく縫製作業の進退の程度を確認することが容易となり、オペレータは当該進退の程度に応じたピッチタイムの調節を心がけることができる。よって、従来技術においてオペレータがそれまでのピッチタイムで作業を続けた場合、目標完了数分の縫製作業が終了する時間が予定された目標完了時間に対してどの程度遅れが発生してしまうのかを速やかに把握することが難しく、気が付いたときには挽回不可能な遅れが発生してしまっているといった問題が解消されるとともに、完成した被縫製物の数や残りの被縫製物の数等から作業ペースを計らざるを得ないというオペレータの負担が大幅に軽減されることによってミシンの生産性が大幅に向上する。
【0039】
また、平均ピッチタイム算出手段52の第1の算出手段は、ピッチタイム取得手段によって取得されたピッチタイムのうち所定条件(その時点での平均ピッチタイムの四分の一以下でないこと)に該当するピッチタイムのみを用いて平均ピッチタイムの算出を行う。これによって、それまでの平均ピッチタイムに対して大きくかけ離れたピッチタイムを除外することが可能となる。よって、第1の算出手段によってより精度の高い平均ピッチタイムを算出することが可能となる。よって、平均ピッチタイムに基づいて生産管理を行う場合の精度が大幅に向上し、ミシンの生産性がより一層向上する。
また、第2の算出手段は、ピッチタイム取得手段によって取得された全てのピッチタイムを用いて平均ピッチタイムの算出を行う。よって、第1の算出手段に設けられた所定条件によっては除外されてしまったピッチタイムも含まれた平均ピッチタイムが算出される。これによって、縫製作業のピッチタイムとしてカウントするに相応しいにも関らず第1の算出手段に設けられた所定条件に該当しなかったために第1の算出手段による平均ピッチタイムに用いられなかったピッチタイムが発生した場合であっても、第2の算出手段による平均ピッチタイムの算出によってフォロー可能となる。よって、第1の算出手段と第2の算出手段とを使い分けることにより、さらに精度の高い平均ピッチタイムを算出することが可能となる。よって、平均ピッチタイムに基づいて生産管理を行う場合の精度がより一層向上し、ミシンの生産性がさらに向上する。
【0040】
さらに、選択手段63は、第1の算出手段と第2の算出手段のいずれか一方によって平均ピッチタイムを算出することを選択可能とする。よって、オペレータは所定条件に該当するピッチタイムのみを用いた平均ピッチタイムを算出するか、全ての平均ピッチタイムを算出するかを選択可能となる。このとき、例えば安定した時間で行える縫製作業の場合には第1の算出手段を選択することによって、平均ピッチタイムから大きくかけ離れたピッチタイムを自動的に除外するよう設定することでピッチタイムの精度を保つことができる。また、何らかの理由(不慣れである等)によりピッチタイムが安定しない縫製作業の場合には第2の算出手段を選択することによって、ピッチタイムのばらつきがあった場合であってもいずれのピッチタイムも除外されることなく平均ピッチタイムの算出が行われる。つまり、選択手段によってオペレータは状況に応じた平均ピッチタイム算出方法を選択することが可能となり、平均ピッチタイムに基づいて生産管理を行う場合の精度がより一層向上し、ミシンの生産性がさらに向上する。
【0041】
さらに、残り作業用ピッチタイム算出手段57が、残り作業時間と未完了数とから、残り作業時間内に未完了数の所定の縫製作業を完了させるための残り作業用ピッチタイムを算出する。また、表示制御手段58が、残り作業用ピッチタイムを目標ピッチタイムに置き換えて操作パネル20の表示器21に表示する。つまり、オペレータは目標完了時間内に目標完了数の所定の縫製作業を完了させるための目標ピッチタイムに代えて、残り作業用ピッチタイムを見て所定の縫製作業を行う。これによって、オペレータは残り作業時間内に未完了数の所定の縫製作業を完了させるための作業ペースを的確に把握して縫製作業を進めることができる。よって、オペレータは目標完了時間内に目標完了数の所定の縫製作業を完了させるための作業ペース調整を行うことが容易となるので、オペレータの負担が大幅に軽減され、ミシンの生産性がより一層向上する。
【0042】
さらに、表示制御手段58は、指示手段65による指示即ち残り作業用ピッチタイム算出指示スイッチの操作があった際に残り作業用ピッチタイムを表示器21に表示する。これによって、オペレータは残り作業時間内に未完了数の所定の縫製作業を完了させるための作業ペースの確認を行いたい任意のタイミングで残り作業用ピッチタイムを確認することが可能となる。よって、オペレータは残り作業時間内に未完了数の所定の縫製作業を完了させるための作業ペースをより的確に把握して縫製作業を進めることができる。よって、オペレータは目標完了時間内に目標完了数の所定の縫製作業を完了させるための作業ペース調整を行うことがより一層容易となるので、オペレータの負担がさらに軽減され、ミシンの生産性がさらに向上する。
【0043】
(その他)
なお、本発明の技術的特徴を有する範囲であれば、上述の実施の形態以外の形態をとってもよい。例えば、自動的に糸切りを行う糸切り機構と、該糸切り機構を動作させるスイッチとが設けられたミシンにおいて、糸切りスイッチが操作されたタイミングを所定の縫製作業が終了したタイミングとみなすように設定することで、上述の実施の形態における実績スイッチを糸切りスイッチに置き換えても良い。
また、平均ピッチタイム算出手段の算出方法における第1の算出手段の所定条件は上述の実施の形態における条件に限定されないことは言うまでもない。
【0044】
また、残り作業用ピッチタイム算出手段57による残り作業用ピッチタイムの算出及び表示制御手段58による目標ピッチタイムDの置き換えは、所定の時間ごとに自動的に行われるようにしてもよい。
また、上記実施の形態では、残り作業用ピッチタイムは、目標ピッチタイムDに置き換えられて表示されるようになっているが、残り作業用ピッチタイムの表示部を個別に設け、目標ピッチタイムDの表示とは別途表示させるようにしても良い。
また、目標完了時間入力手段は、上述の実施の形態のように労働時間と労働除外時間とを設定するスケジュール以外に、純粋な目標完了時間を設定するタイマーのようなものであってもよい。この場合、タイマーに設定された目標完了時間が作業開始の時点から経過時間分の時間が減じていき、タイマーが残り時間算出手段を兼ねることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明によるミシンの生産管理装置を備えたミシンの構成を示す説明図である。
【図2】操作パネルの構成を示す説明図である。
【図3】操作パネル、制御装置並びに操作パネル及び制御装置に接続された各部の構成を示すブロック図である。
【図4】制御装置及び操作パネルの生産管理に関する機能を示す機能ブロック図である。
【図5】表示器に表示されたテンキー入力画面を示す説明図である。
【図6】縫製作業中に表示器に表示される縫製画面を示す説明図である。
【図7】表示器に表示された労働時間入力画面を示す説明図である。
【図8】設定された目標完了時間の一例を示す説明図である。
【図9】ミシンの動作手順を示すフロー図のうち、ステップS1〜S9までを示すフロー図である。
【図10】ミシンの動作手順を示すフロー図のうち、ステップS10〜S17までを示すフロー図である。
【図11】現在の終了数及び労働終了予想時間の表示更新処理の手順を示すサブフロー図である。
【符号の説明】
【0046】
20 操作パネル
21 表示器
22 操作スイッチ
40 制御装置
41 CPU
42 ROM
43 RAM
44 EEPROM
45 タイマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の縫製作業を1単位として繰り返し行うミシンの縫製作業時間を管理するミシンの生産管理装置において、
前記所定の縫製作業の目標完了数を入力する目標完了数入力手段と、
前記所定の縫製作業の終了数を計数する終了数計数手段と、
前記所定の縫製作業が行われるごとに当該実行中の縫製作業のピッチタイムを取得するピッチタイム取得手段と、
前記ピッチタイム取得手段によって取得されたピッチタイムのうち所定条件に該当するピッチタイムのみを用いて平均ピッチタイムの算出を行う第1の算出手段と、
前記ピッチタイム取得手段によって取得された全てのピッチタイムを用いて平均ピッチタイムの算出を行う第2の算出手段と、
前記第1の算出手段と前記第2の算出手段のいずれか一方による平均ピッチタイムの算出結果を選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された平均ピッチタイムの算出結果と前記所定の縫製作業の目標完了数とから、目標完了数分の前記所定の縫製作業の終了予想時間を逐次算出する終了予想時間算出手段と、
前記終了予想時間を表示する終了予想時間表示手段と、を備えることを特徴とするミシンの生産管理装置。
【請求項2】
前記ミシンによる前記目標完了数分の前記所定の縫製作業の目標完了時間を入力する目標完了時間入力手段と、
前記目標完了数と前記所定の縫製作業の終了数とから、前記目標完了数に対する未完了数を算出する未完了数算出手段と、
前記目標完了時間内に前記未完了数分の前記所定の縫製作業を完了するために残された残り作業時間を算出する残り作業時間算出手段と、
前記残り作業時間と前記未完了数とから、前記残り作業時間内に前記未完了数の前記所定の縫製作業を完了させるための残り作業用ピッチタイムを算出する残り作業用ピッチタイム算出手段と、
前記算出された前記残り作業用ピッチタイムを表示する残り作業用ピッチタイム表示手段と、を備えることを特徴とする請求項1に記載のミシンの生産管理装置。
【請求項3】
前記残り作業用ピッチタイム算出手段による残り作業ピッチタイム算出の実行を指示する指示手段と、
前記指示手段が操作された際に前記残り作業用ピッチタイムを前記残りピッチタイム表示手段に表示する表示制御手段とを、備えることを特徴とする請求項2に記載のミシンの生産管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−284997(P2009−284997A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−138821(P2008−138821)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】