説明

ミシンの縫製記憶装置

【課題】ミシンモータおよびペダルのそれぞれの動作情報を時間に関連させて記憶するとともに、記憶したミシンモータおよびペダルのそれぞれの動作情報を時間に関連したグラフとして表示することのできるミシンの縫製記憶装置を提供する。
【解決手段】モータ動作検出手段12と、ペダル動作検出手段13と、表示手段34と、情報の入力操作に用いる入力手段33と、各部の動作の制御を司るための記憶部42および演算部41を具備する制御手段35とを設けるとともに、制御手段35は、モータ動作検出手段12およびペダル動作検出手段13により検出されたそれぞれの動作情報を時間に関連させて記憶部42に記憶させるとともに、ミシンモータ6およびペダル8のそれぞれの動作情報を時間に関連したグラフとして表示手段34により表示させるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシンの縫製記憶装置に係り、特に、作業者によるミシンの稼働状況の情報を記憶するとともに、記憶した情報を表示するのに好適なミシンの縫製記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、縫製工場などにおいて設置される工業用ミシンのミシン操作に関する高技能者の技能解析や、作業者に対するミシン操作の技能教育などを目的として、縫製作業に従事する作業者一人一人のミシンの稼働状況としてのミシン主軸を回転駆動させるミシンモータの動作情報、詳しくはミシンモータの回転速度(単位時間当たりの回転数)を時間に関連させて記憶するとともに、記憶したミシンモータの回転速度と時間との関係をグラフとして表示することのできるミシンの縫製記憶装置(ソーイングレコーダ)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなミシンの縫製記憶装置は、例えば、作業者の人手により縫製物としての布地を動かしつつ、ペダルを踏んで縫製作業を行う本縫いミシンなどに用いられている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−167069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のミシンの縫製記憶装置によるミシンモータの動作情報である回転速度の表示からは、ミシンモータがどのように動作したかという結果がわかるだけであり、作業者がどのようにミシンを操作したのか、具体的にはミシンモータの駆動に用いるペダル操作をどのようにしたのかということが分からないという問題点があった。
【0006】
これは、作業者によるペダルを操作するときの操作応答性(縫製を終了した後に前踏み操作をやめるまでの応答時間など)や、ペダルの踏み込み量による縫い速度の変化などの特性があるため、表示が作業者によるペダル操作と同一にならないからである。
【0007】
その結果、高技能者がミシン操作したときの手本となる表示、すなわち、ミシンモータの回転速度のグラフを見て、その通りにミシンを動作させようとしても、ペダルの操作イメージがつかみづらいという問題点があった。
【0008】
また、従来のミシンの縫製記憶装置によるミシンモータの回転速度の表示からは、無駄なペダル操作があったとしても判断することができないという問題点もあった。
【0009】
なお、無駄なペダル操作としては、縫い目の形成が所定の針数に到達したときにミシンモータを自動的に停止するミシンにおけるミシンモータの停止後もペダルを踏み込んでいる操作状態などが挙げられる。
【0010】
そこで、ミシンモータおよびペダルの動作情報のそれぞれを時間に関連させて記憶するとともに、記憶したミシンモータの回転速度と時間との関係を時間に関連したグラフとして表示することのできるミシンの縫製記憶装置が求められている。
【0011】
本発明はこの点に鑑みてなされたものであり、ミシンモータおよびペダルのそれぞれの動作情報を時間に関連させて記憶するとともに、記憶したミシンモータおよびペダルのそれぞれの動作情報を時間に関連したグラフとして表示することのできるミシンの縫製記憶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するため、特許請求の範囲の請求項1に記載の本発明のミシンの縫製記憶装置の特徴は、ミシン主軸を駆動させるミシンモータの動作情報を検出するモータ動作検出手段と、前記ミシンモータを駆動させるために作業者によって操作されるペダルの動作情報を検出するペダル動作検出手段と、情報の表示に用いる表示手段と、情報の入力操作に用いる入力手段と、各部の動作の制御を司るための記憶部および演算部を具備する制御手段とを有しており、前記制御手段は、前記モータ動作検出手段および前記ペダル動作検出手段により検出されたそれぞれの動作情報を時間に関連させて前記記憶部に記憶させるとともに、前記ミシンモータおよび前記ペダルのそれぞれの動作情報を時間に関連したグラフとして前記表示手段により表示させる点にある。そして、このような構成を採用したことにより、ミシンモータの動作情報である回転速度とペダルの操作情報である踏み込み量を時間に関連させて記憶するとともに、ミシンモータおよびペダルのそれぞれの動作情報を時間に関連したグラフとして確実かつ容易に表示することができる。その結果、高技能者の縫製操作技能を容易に取得することができるとともに、縫製技能訓練で目標となる操作手本とすることができる。
【0013】
また、請求項2に係る本発明のミシンの縫製記憶装置の特徴は、請求項1において、前記制御手段は、前記ペダルが操作されたときに、ミシンモータの自動停止信号に基づいて、ペダル操作の有効・無効を判別するとともに、ペダル操作の有効部分と無効部分とを明示して表示させる点にある。そして、このような構成を採用したことにより、無駄なペダル操作となっている操作部分および無駄なペダル操作の時間が特定でき、効率が悪い操作の特定に役立てることができる。
【0014】
また、請求項3に係る本発明のミシンの縫製記憶装置の特徴は、請求項2において、作業者にペダル操作の無効を認識せしめる通報を行う通報手段が設けられており、前記制御手段は、ペダル操作を無効と判断した状態が継続したときに、通報手段を動作させる点にある。そして、このような構成を採用したことにより、作業者に対して無駄なペダル操作を確実かつ容易に認識させることができる。
【0015】
また、請求項4に係る本発明のミシンの縫製記憶装置の特徴は、請求項3において、前記制御手段がペダル操作を無効と判断したときから前記通報手段を動作させるまでの時間を設定する通報待機時間設定手段が設けられている点にある。そして、このような構成を採用したことにより、作業者の労力が過大になるのを防止することができる。
【0016】
また、請求項5に係る本発明のミシンの縫製記憶装置の特徴は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記記憶部には、複数のデータ記憶領域が設けられており、前記入力手段には、前記ミシンモータおよび前記ペダルのそれぞれの動作情報の記憶先を前記複数のデータ記憶領域から選択するための選択スイッチが設けられており、前記制御手段は、前記複数のデータ記憶領域に記憶されたそれぞれのデータを前記表示手段により同時に表示可能に構成されている点にある。そして、このような構成を採用したことにより、複数の作業者のミシンモータおよびペダルのそれぞれの動作情報を重ねて表示して、比較することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るミシンの縫製記憶装置によれば、ミシンモータの動作情報である回転速度とペダルの操作情報である踏み込み量を時間に関連させて記憶するとともに、ミシンモータおよびペダルのそれぞれの動作情報を時間に関連したグラフとして確実かつ容易に表示することができるなどの優れた効果を奏する。その結果、高技能者の縫製操作技能を容易に取得することができるとともに、縫製技能訓練で目標となる操作手本とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を図面に示す実施形態により説明する。
【0019】
図1から図3は本発明に係るミシンの縫製記憶装置の実施形態を示すものであり、図1はミシンとともに示す正面図、図2は要部の構成を示すブロック図、図3はタッチパネルの拡大正面図である。
【0020】
本実施形態のミシンの縫製記憶装置は、ミシンの一構成要素としてミシンに備えられているものを例示している。また、本実施形態のミシンの縫製記憶装置は、ミシンの縫製動作制御に係わる情報(作業者により設定されるデータなど)の入力機能を併せ持つように構成されているものを例示している。
【0021】
図1に示すように、本実施形態のミシン1は、ミシン本体2およびミシンの縫製記憶装置3(以下、単に、縫製記憶装置と記す。)を有している。
【0022】
前記ミシン本体2は、縫製物としての布地(生地)に縫い目を形成して縫製を行うためのものであり、例えば、本縫いミシンが用いられている。このミシン本体2の針棒4には縫い針5の基端部が取り付けられている。また、針棒4は、ミシンモータ6によって回転駆動されるミシン主軸(上軸)の回転に連動する針棒駆動機構によって上下方向に所定のストロークをもって往復動可能にされている。また、縫い針5の下方には、縫製物としての布地(生地)を所定の布送りピッチで送るための布送り装置7が針棒4と対向するように配設されており、この布送り装置7も、ミシンモータ6によって回転駆動されるミシン主軸の回転に連動して駆動される。そして、縫い針5を上下動させつつ布地を所定の布送りピッチで送ることにより縫い目を形成する縫製が行われるようになっている。この縫製は、種々の命令、縫製パラメータ、縫製データおよび作業者により設定されるデータにしたがってペダル8(ペダルスイッチ)の動きに応じて制御される。また、制御ボックス9には、ミシン1による縫製動作を制御するミシン制御装置としてのミシン用制御手段10(図2)が内蔵されている。
【0023】
前記ミシンモータ6は、電源スイッチ11のオン操作によりミシン1への給電が行われた後に、作業者がペダル8を操作することにより駆動される。また、ミシン本体2あるいはミシンモータ6には、ミシンモータ6の駆動力によって動作するエンコーダ12(ロータリーエンコーダ:図2)が配設されており、ミシンモータ6が回転するごとにミシンモータ6の出力軸、ひいてはミシン主軸の回転速度に比例した周波数のパルス信号を発生してミシン用制御手段10に送出できるようになっている。これにより、ミシン用制御手段10は、ミシンモータ6の出力軸、ひいてはミシン主軸の回転速度を検出することができるようになっている。
【0024】
前記エンコーダ12により、本実施形態の縫製記憶装置3におけるミシン主軸を駆動させるミシンモータ6の動作情報を検出するモータ動作検出手段が構成されている。すなわち、エンコーダ12は、本実施形態の縫製記憶装置3の一部を構成している。
【0025】
前記ペダル8は、シーソーのように動作するものであり、常時はミシンモータ6を停止状態とする中立位置に保持されており、作業者がペダル8を前方に踏み込む操作(前踏み)により発生する縫製開始信号により、ミシンモータ6が回転駆動して縫製動作が行われるように構成されている。また、作業者がペダル8を深く踏む(踏み込み量が大)とミシンモータ6の回転速度が高くなって縫い速度が速くなり、浅く踏む(踏み込み量が少)とミシンモータ6の回転速度が低くなって縫い速度が遅くなるように構成されている。さらに、作業者が足踏みペダル8を後方に踏み込む操作(後踏みあるいは逆踏み)により発生する糸切り開始信号により、ミシンモータ6が回転駆動して糸切り動作が行われるように構成されている。
【0026】
前記ペダル8には、機械的直線変位量を電気信号に直接変換する変位センサであるリニアセンサ13(差動変圧器:図2)が取り付けられており、作業者によるペダル8の操作量である踏み込み量を検出してミシン用制御手段10に送出できるようになっている。
【0027】
前記リニアセンサ13により、本実施形態の縫製記憶装置3におけるミシンモータ6を駆動させるために作業者によって操作されるペダル8の動作情報を検出するペダル動作検出手段が構成されている。すなわち、リニアセンサ13は、本実施形態の縫製記憶装置3の一部を構成している。
【0028】
図2に示すように、前記ミシン用制御手段10は、マイクロコンピュータと同様に、少なくとも演算部として機能するCPU15(MPUであってもよい)と、プログラムやデータを記憶する記憶部として機能するメモリ16とを有している。
【0029】
本実施形態のミシン用制御手段10には、少なくともミシンモータ6、エンコーダ12、ペダル8、リニアセンサ13、ミシン1の各部の動作位置などの検出に用いる各種のミシン用センサ17、ミシン1の各部の駆動系の駆動源となるアクチュエータ18などが電気的に接続されており、ミシン用制御手段10、詳しくはCPU15から送出される制御指令により、少なくともミシンモータ6などの駆動系の動作制御が行われるようになっている。
【0030】
前記ミシン用センサ17としては、ミシン主軸の上位置および/または下位置を検出する主軸位置センサ17aや、布端センサ17bなどを挙げることができる。
【0031】
前記布端センサ17bは、布端制御によるミシン1の自動停止装置として機能するものであり、ミシン用制御手段10は、布端センサ17bが布地の布端を検出した信号を受けると、ミシンモータ6を自動停止させることができるようになっている。
【0032】
前記CPU15は、従来公知の如く、ALUやアキュムレータなどから構成された演算部、命令レジスタや命令デコーダや制御信号発信回路などから構成された制御部、プログラム・カウンタやスタック・ポインタや汎用レジスタ(内部レジスタ)などから構成されたレジスタ部を有するものであり、その詳しい説明については省略する。
【0033】
前記メモリ16は、少なくともそれぞれ適宜な容量のROM19、RAM20および不揮発性メモリ21を有している。
【0034】
前記ROM19には、少なくともミシン1の初期設定動作を行うプログラムおよびデータや、ミシン1の縫製動作制御を行うためのプログラムおよびそのデータが記憶されている。この縫製動作制御を行うためのプログラムおよびそのデータとしては、例えば、ペダル8の動きに応じてミシンモータ6の動作を制御するものや、布端センサ17bが布端を検出した信号を受けてミシンモータ6を自動停止させる布端制御によるミシン1の自動停止を行うものや、現在の針数をCPU15の内部カウンタによりカウントして予め設定された針数に到達したとき(縫いの終了時)にミシンモータ6を自動停止させる針数制御によるミシン1の自動停止を行うものや、糸切り動作時に糸切りが終了したことを主軸位置センサ17aによるミシン主軸の上位置の検出信号に基づいて判別してミシンモータ6を自動停止させるミシン1の自動停止を行うものや、縫製パターンなどを挙げることができる。
【0035】
前記RAM20は、少なくともCPU15による演算データおよび中間データなどを記憶するワークエリアとして用いられており、CPU15が処理動作を行う際には、必要なプログラムやデータをROM19から読み込んで記憶するようになっている。
【0036】
前記不揮発性メモリ21は、データのバックアップに用いるためのものであり、データの消去と書き込みとを行うことのできるEEPROM、フラッシュメモリなどが用いられるようになっている。なお、不揮発性メモリ21としては、着脱自在なメモリカードあるいはフラッシュメモリであってもよい。また、不揮発性メモリ21に、ミシン1の動作制御を行うためのプログラムおよびそのデータや縫製パターンを記憶させてもよい。
【0037】
前記ミシン1のその他の構成については、従来公知のミシンと同一の構成とされているので、その詳しい説明については省略する。
【0038】
図1に示すように、本実施形態の縫製記憶装置3は、操作ボックス、コントローラなどの使用目的に応じた所定形状のケース31の一面たる正面に操作パネルとしてのタッチパネル32を配置して形成されている。このタッチパネル32は、図2に示すように、情報の入力操作に用いる入力手段としての透明なシート状の入力センサ33の背面に、情報の表示に用いる表示手段としての表示パネル34が配設されて構成されている。また、タッチパネル32は、ケース内においてタッチパネル32の背面側に配設された制御手段35(ミシン用制御手段10と区別するため、以下記憶用制御手段と記す。)と電気的に接続されている。
【0039】
前記入力センサ33は、情報の入力に用いるためのものであり、従来公知の静電容量式センサあるいは感応式センサなどの座標入力が可能な平面型のものから選択することができる。なお、入力センサ33として、入力操作体の接近あるいは接触によって信号を出力可能な複数の入力検出部としての電極を有する静電センサを用いることもできる。
【0040】
前記表示パネル34は、情報の表示に用いるためのものであり、本実施形態においては平面型の表示パネルが用いられている。このような表示パネルとしては、液晶表示パネル、有機ELパネルなどの従来公知の各種のものから設計コンセプトなどの必要に応じて選択使用されるようになっている。また、表示手段による表示としては、モノクロ表示、マルチカラー表示、フルカラー表示などから装置の仕様や設計コンセプトなどの必要に応じて選択されるようになっている。本実施形態においては、フルカラー表示を行うことのできる液晶表示パネルが用いられている。
【0041】
図3に示すように、タッチパネル32には、各種の情報の表示に用いる表示部36および各種の情報の入力操作に用いる操作部37が設けられている。
【0042】
前記表示部36には、少なくともミシンモータ6およびペダル8のそれぞれの動作情報の少なくとも一方が時間に関連したグラフとして表示される動作パターン表示部36aが設けられている。
【0043】
前記操作部37には、ミシンモータ6の動作情報としての回転速度のグラフ表示の有無を設定するモータ表示ボタン38a、ペダル8の動作情報としての踏み込み量のグラフ表示の有無を設定するペダル表示ボタン38b、動作パターン表示部36aに表示されているグラフのスクロールに用いるための右スクロールボタン38cおよび左スクロールボタン38dを始め、縫製記憶装置3の動作制御に係わる各種の情報(設定値など)の入力操作を行う各種の操作ボタン38が設けられている。また、本実施形態の操作部37には、ミシン1の動作制御に必要な各種の情報(設定値など)の入力操作を行う入力ボタンや入力の終了に用いる決定ボタンなどの各種の操作ボタン38も設けられている。
【0044】
前記モータ表示ボタン38aおよびペダル表示ボタン38bにより、本実施形態のミシンモータ6の動作情報およびペダル8の動作情報のグラフ表示のうちの一方もしくは両方を選択する表示選択スイッチ39が構成されている。
【0045】
すなわち、モータ表示ボタン38aをON操作することにより、表示部36に回転速度のグラフが表示され、ペダル表示ボタン38bをON操作することにより、表示部36に踏み込み量のグラフが表示され、モータ表示ボタン38aおよびペダル表示ボタン38bの両者をON操作することにより、表示部36に回転速度と踏み込み量との両者のグラフが同時に表示されるようになっている。
【0046】
前記各操作ボタン38は、実際の突起物ではなく、タッチパネル32の予め設定された位置に絵記号などで表示されているものであり、各操作ボタン38の表示部分を作業者が指などで接触あるいは押下することにより、どの操作ボタン38が操作されたかを入力センサ33で検出して、表示されている操作ボタン38の機能が実行されるようになっている。
【0047】
前記操作ボタン38の表示は、プルダウンメニューとされており、特定の操作ボタン38の操作に関連づけて、操作部37の操作ボタン38の表示や表示部36の表示内容などの画面を切り換えることができるようになっている。これにより操作部37の操作性の向上と小型化、ひいては縫製記憶装置3の小型化を容易に図ることができるようになっている。なお、各操作ボタン38の配置は、設計コンセプトなどの必要に応じて設定すればよい。また、画面を切り換えることにより、後述するタイマー44の動作時間を設定するためのタイマー時間ボタン38e(図2)が表示されるようになっており、タイマー時間ボタン38eをON操作するとともに、数値キーを操作して時間を入力し、その後決定キーを操作することで、タイマー44の作動時間を設定することができるようになっている。
【0048】
前記記憶用制御手段35は、図3に示すように、前述したミシン用制御手段10と同様に、少なくとも演算部として機能するCPU41(MPUであってもよい)と、プログラムやデータを記憶する記憶部として機能するメモリ42とを有している。
【0049】
本実施形態の記憶用制御手段35には、少なくとも表示パネル34、入力センサ33(操作ボタン38)、通報手段としてのブザー43、ブザー43が動作するまでの時間をカウントする通報時間設定手段としてのタイマー44などが電気的に接続されている。また、記憶用制御手段35は、第1のI/F(インターフェース)45を介してミシン用制御手段10と接続されており、相互にデータを交換することができるとともに、ミシン1の動作信号、例えば、エンコーダ12により検出したミシンモータ6の回転速度、リニアセンサ13により検出したペダル8の踏み込み量、ミシンモータ6の自動停止信号などの動作信号が入力されるようになっている。さらに、記憶用制御手段35は、第2のI/F46を介して外部のコンピュータ47と相互にデータを交換することができ、さらにまた、第3のI/F48を介して外部記憶装置49と相互にデータを交換することができるようにされている。なお、ミシン用制御手段10は、記憶用制御手段35に対して常時接続されており、コンピュータ47および外部記憶装置49は、必要に応じて記憶用制御手段35に接続されるようになっている。
【0050】
前記通報手段としては、作業者の聴覚を刺激するブザー43に加えて作業者の視覚を刺激するもの、例えば、回転灯や点滅灯などを付加してもよい。
【0051】
前記CPU41は、従来公知の如く、ALUやアキュムレータなどから構成された演算部、命令レジスタや命令デコーダや制御信号発信回路などから構成された制御部、プログラム・カウンタやスタック・ポインタや汎用レジスタ(内部レジスタ)などから構成されたレジスタ部を有するものであり、その詳しい説明については省略する。
【0052】
前記メモリ42は、少なくともそれぞれ適宜な容量のROM51、RAM52および不揮発性メモリ53を有している。
【0053】
前記ROM51には、少なくとも縫製記憶装置3の初期設定動作を行うプログラムおよびそのデータや、縫製記憶装置3の動作制御を行うためのプログラムおよびそのデータが記憶されている。
【0054】
例えば、エンコーダ12により検出されたミシンモータ6の回転速度を時間に関連させて、すなわち一定の時間毎の回転速度の値を不揮発性メモリ53に設けられた回転速度を記憶するための記憶領域に記憶するとともに、モータ表示ボタン38aがON操作されている場合、表示部36に回転速度のグラフの表示を行うためのプログラムおよびデータを挙げることができる。
【0055】
また、リニアセンサ13により検出されたペダル8の踏み込み量を時間に関連させて、すなわち一定の時間毎の踏み込み量の値を不揮発性メモリ53に設けられた踏み込み量を記憶するための記憶領域に記憶するとともに、ペダル表示ボタン38bがON操作されている場合、表示部36に踏み込み量のグラフの表示を行うためのプログラムおよびデータを挙げることができる。
【0056】
さらに、ペダル8が操作されたときに、ミシンモータ6の自動停止信号に基づいて、ペダル操作の有効・無効を判別するとともに、ペダル操作の有効部分と無効部分とを明示して表示部36にグラフの表示をさせるためのプログラムおよびデータを挙げることができる。
【0057】
ここで、ペダル操作の無効部分とは、例えば、ミシンモータ6の停止後もペダル8を踏み込んでいる操作状態であり、ミシン用制御手段10によるミシンモータ6の自動停止信号の出力を受けた時点以降にペダル8が操作されて動作している部分である。また、ペダル操作の有効部分と無効部分とを明示するのは、例えば、有効部分と無効部分との表示色を変えたり、表示に用いる線種を変えたりすることにより実行できる。勿論、不揮発性メモリ53に記憶される踏み込み量のデータには、有効部分および無効部分を明示するための付帯属性としてのコマンドが対にして記憶されることになる。
【0058】
さらにまた、ペダル操作を無効と判断したときに、ブザー43を動作させるプログラムおよびデータを挙げることができる。
【0059】
なお、縫製記憶装置3の動作制御を行うためのプログラムおよびそのデータを不揮発性メモリ53に記憶させてもよい。
【0060】
前記RAM52は、少なくともCPU41による演算データおよび中間データなどを記憶するワークエリアとして用いられており、CPU41が処理動作を行う際には、必要なプログラムやデータをROM51および/または不揮発性メモリ53から読み込んで記憶するようになっている。
【0061】
前記不揮発性メモリ53は、データのバックアップに用いるためのものであり、少なくとも回転速度および踏み込み量のデータが記憶されるようになっている。この不揮発性メモリ53としては、データの消去と書き込みとを行うことのできるEEPROM、フラッシュメモリなどが用いられるようになっている。なお、不揮発性メモリ53としては、着脱自在なメモリカードあるいはフラッシュメモリなどであってもよい。
【0062】
なお、本実施形態においては、縫製記憶装置3の動作制御を司る記憶用制御手段35をミシン1のミシン用制御手段10から独立させた構成としたが、記憶用制御手段35の機能をミシン用制御手段10に併せ持たせる構成としてもよい。
【0063】
このように、縫製記憶装置3の記憶用制御手段35は、ミシン1の全体の動作制御を行うミシン用制御手段10の機能の一部を借りて実現してもよいし、独立した記憶用制御手段35により実現させてもよい。
【0064】
つぎに、前述した構成からなる本実施形態の作用について説明する。
【0065】
説明の便宜上、まず、本実施形態の縫製記憶装置による縫製記憶動作について説明する。
【0066】
図4は本発明に係るミシンの記憶装置の実施形態を適用したミシンにおける縫製記憶動作の要部を説明するフローチャートである。
【0067】
図4に示すように、本実施形態のミシン1における縫製記憶動作は、記憶用制御手段35がペダル8の前踏み操作を検出し、その要求受付が有効(ペダル操作が有効)であれば、ミシンモータ6を起動して縫製を開始する(S001Y、S002Y)。そして、ミシン用制御手段10は、ペダル8の踏み込み量に基づいてミシンモータ6の回転速度を制御し、記憶用制御手段35は、ミシン1の稼働中、すなわちミシンモータ6の駆動中、エンコーダ12からの検出信号に基づいてミシンモータ6の回転速度を検出して、この回転速度を時間に関連させて、すなわち、一定時間、例えば100ミリ秒毎の回転速度を不揮発性メモリ53に記憶するとともに、リニアセンサ13からの検出信号に基づいてペダル8の踏み込み量を検出し、この踏み込み量を時間に関連させて、すなわち、一定時間、例えば100ミリ秒毎の踏み込み量を不揮発性メモリ53に記憶することにより記憶する(S003、S004、S005)。
【0068】
なお、回転速度および踏み込み量を同一の時間単位で記憶することが、それぞれのグラフにより回転速度と踏み込み量との関連を容易に解析することができるという意味で好ましい。また、回転速度の記憶(S004)と踏み込み量の記憶(S005)の順序は、どちらを先に行ってもよい。
【0069】
前記ミシン用制御手段10は、ペダル8を中立位置に復帰させる操作が行われて前踏みが無くなったとき(S006Y、S007)や、ミシンモータ6の回転中に、設定された針数の縫製が終了したときや、布端センサ17bによる布端の検出信号を受けたときには、ミシンモータ6の駆動を停止する(S006N、S002N、S008)。
【0070】
また、ミシン用制御手段10は、ミシンモータ6の停止中に、設定された針数の縫製が終了や、布端センサ17bによる布端検出による自動停止などのペダル8の前踏み操作によるミシンモータ6の駆動を受け付けない状態において、ペダル8の前踏み操作が検出されたときには、ペダル操作の要求を無効(ペダル操作を無効)とし、ミシンモータ6を停止状態に保持する(S002N、S008)。 この時、記憶用制御手段35は、リニアセンサ13からの検出信号に基づいてペダル8の踏み込み量を検出し、この踏み込み量を時間に関連させて、すなわち、一定時間ごとの踏み込み量とともに、ペダル操作の無効情報、例えば「無効」コマンドを対の付帯属性として不揮発性メモリ53に記憶することにより記憶する(S009、S010)。すなわち、記憶用制御手段35は、針数制御信号や布端検出信号などのミシンモータ6の自動停止信号に基づいて、ペダル操作の有効・無効を判別し、ペダル操作が無効のときは、踏み込み量とペダル操作の無効情報を記憶させる。
【0071】
前記ミシン用制御手段10は、ミシン1による縫い目の形成が終了した縫製終了時に、ペダル8の後踏み操作を検出して糸切りを実行する(S011Y、S012)。この糸切りにおけるミシンモータ6の駆動は、エンコーダ12からの上位置信号(糸切り終了)を受けたときに停止する。そして、記憶用制御手段35は、リニアセンサ13からの検出信号に基づいてペダル8の後踏みによる踏み込み量(変位は前踏みとは逆方向)を検出し、この踏み込み量を時間に関連させて、すなわち、一定時間ごとの踏み込み量とともに、ペダル操作の有効(糸切り)情報を対の付帯属性として不揮発性メモリ53に記憶することにより記憶する(S013)。
【0072】
また、ミシン用制御手段10は、糸切り終了後(エンコーダ12からの上位置信号が発せられた後)に、ペダル8の後踏みがあるか否かをリニアセンサ13からの検出信号に基づいて判断し、ペダル8の後踏みがある場合には、ペダル操作の要求を無効(ペダル操作を無効)とし、ミシンモータ6を停止状態に保持する。
【0073】
この時、記憶用制御手段35は、糸切り終了後に、ペダル8の踏み込みがあるかを判断し、ペダル8の後踏みがある場合には、リニアセンサ13からの検出信号に基づいてペダル8の踏み込み量を検出し、この踏み込み量を時間に関連させて、すなわち、一定時間ごとの踏み込み量とともに、ペダル操作の無効情報、例えば「無効」コマンドを対の付帯属性として不揮発性メモリ53に記憶することにより記憶する(S014Y、S015)。すなわち、記憶用制御手段35は、ミシンモータ6の自動停止信号に基づいて、ペダル操作の有効・無効を判別し、ペダル操作が無効のときは、踏み込み量とペダル操作の無効情報を記憶させる。
【0074】
前記不揮発性メモリ53におけるデータの記憶状態の一例を図5に示す。この図5に示すように、一定時間が経過するごとに、その経過した時間T1、T2、T3・・・に、そのときのミシンモータ6の回転速度と、ペダル8の踏み込み量と、ペダル操作の有効・無効情報をあらわすコマンドが記憶される。
【0075】
つぎに、本実施形態の縫製記憶装置による記憶したデータの表示動作について説明する。
【0076】
図6は本発明に係るミシンの縫製記憶装置の実施形態を適用したミシンにおけるデータの表示動作の要部を説明するフローチャートである。
【0077】
図6に示すように、本実施形態のミシン1におけるデータ(縫製データ)の表示動作において、記憶用制御手段35は、一定時間が経過するごとに、ミシンモータ6の回転速度、ペダルの踏み込み量およびペダル操作の有効・無効情報をあらわすコマンドからなるデータをミシン用制御手段10の不揮発性メモリ21から受け取る(S101)。
【0078】
前記記憶用制御手段35は、受け取ったデータから回転速度と時間との関係、踏み込み量と時間との関係のそれぞれのグラフを作成して表示部36、詳しくは動作パターン表示部36aに表示する(S102、S103N、S109)。
【0079】
なお、グラフの表示は、表示選択スイッチ39の設定状態に応じて、回転速度および踏み込み量のグラフ表示の位置の一方もしくは両者が実行される。
【0080】
この時、踏み込み量のグラフ表示を行うに際し、ペダル操作の有効・無効を「無効」コマンドの有無により判別し、ペダル操作の有効部分と無効部分とを、例えば色を変えたり、線種を変えたりしてグラフ表示する(S103Y、S104)。この動作パターン表示部36aに表示されるグラフの表示状態の一例(イメージ)を図7に示す。なお、図7においては、ペダル操作の無効部分(図7の無効操作部分)を破線にて表示してある。
【0081】
前記記憶用制御手段35は、ペダル操作の無効情報を連続して受けた場合、ペダル操作の無効情報を受けた時点でタイマー44を作動(タイマーカウント)させ、タイマー44が予め設定された時間を経過しても、無効情報が続いている場合はブザー43を作動させて、ペダル操作の応答が遅れていることを作業者に通報する(S105、S106Y、S107)。また、ペダル操作の有効情報を受けた時点でタイマー44はクリアする(S110)。
【0082】
ついで、糸切りを含む1サイクルの縫製動作が終了したら、表示部36に表示している表示を更新する(S108)。
【0083】
なお、表示の更新は、ミシンモータ6を停止したときに実行するようにしてもよいし、縫製の開始時点から予め設定された時間を経過したときに更新するようにしてもよい。
【0084】
このような構成からなる本実施形態の縫製記憶装置3によれば、ミシンモータ6の動作情報である回転速度とペダル8の操作情報である踏み込み量を記憶するとともに、ミシンモータ6およびペダル8のそれぞれの動作情報を時間に関連したグラフとして確実かつ容易に表示することができる。その結果、高技能者の縫製操作技能を容易に取得することができるとともに、縫製技能訓練で目標となる操作手本とすることができる。さらに、高技能者の技能解析や、作業者に対するミシン操作の技能教育を短期間で確実に行うことができる。
【0085】
また、本実施形態の縫製記憶装置3によれば、ペダル操作の有効・無効が表示されるので、無駄なペダル操作となっている部分、時間が特定でき、効率が悪い操作の特定に役立てることができる。
【0086】
また、本実施形態の縫製記憶装置3によれば、モータ表示ボタン38aおよびペダル表示ボタン38bが設けられているから、ミシンモータ6の動作情報である回転速度のグラフ表示の有無と、ペダル8の操作情報である踏み込み量のグラフ表示の有無を個別に選択することができる。
【0087】
また、本実施形態の縫製記憶装置3によれば、作業者に対して無駄なペダル操作を確実かつ容易に認識させることができる。すなわち、作業者がペダル操作の不要時にペダル操作をしたりすると、通報手段としてのブザー43が動作するので、縫製作業中に作業者のペダル操作が素早く行われているかの目安にすることができ、作業効率を向上させることができる。
【0088】
具体的には、ペダル8の前踏み操作により縫製している状態で、針数制御や布端検出によりミシンモータ6が自動停止した場合、ペダル8の前踏み操作を継続しているとブザー43が鳴るので、ペダル8を中立状態に戻す操作の切っ掛けをブザー43の音により容易かつ確実につかむことができる。
【0089】
また、本実施形態の縫製記憶装置3によれば、通報待機時間設定手段としてのタイマー44が設けられているから、作業者の労力が過大になるのを防止することができる。
【0090】
図8および図9は本発明のミシンの縫製記憶装置の他の実施形態を示すものである。
【0091】
本実施形態の縫製記憶装置3Aは、複数のグラフ(回転速度および踏み込み量のグラフを、それぞれ複数)を同時に表示可能とするものである。
【0092】
すなわち、本実施形態の縫製記憶装置3Aにおいては、図8に示すように、記憶用制御手段35Aの不揮発性メモリ53Aの内部に、複数、本実施形態においては少なくとも第1データ記憶領域55aおよび第2データ記憶領域55bという2つのデータ記憶領域55(符号55は、第1データ記憶領域55aおよび第2データ記憶領域55bを総称する。)が設けられており、それぞれのデータ記憶領域55に、回転速度および踏み込み量のデータが記憶できるようになっている。
【0093】
また、図9に示すように、操作部37Aにはミシンモータ6およびペダル8のそれぞれの動作情報の記憶先を複数のデータ格納領域55から選択するための選択スイッチとしてのデータ記憶先選択ボタン56が設けられており、データ記憶先選択ボタン56をON操作したり、OFF操作したりすることで、回転速度および踏み込み量のデータの記憶先を、第1データ記憶領域55aおよび第2データ記憶領域55bから選択することができるように構成されている。例えば、データ記憶先選択ボタン56をOFFとすることにより、第1データ記憶領域55aにデータを記憶させ、データ記憶先選択ボタン56をONとすることにより、第2データ記憶領域55bにデータを記憶させることができるようになっている。
【0094】
さらに、記憶用制御手段35AのROM51(図3参照)には、2種類のグラフ表示を同時に行うためのプログラムおよびデータが記憶されている。
【0095】
その他の構成については、前述した実施形態の縫製記憶装置3と同様とされており、その詳しい説明は省略する。
【0096】
このような構成からなる本実施形態の縫製記憶装置3によれば、前述した実施形態の縫製記憶装置3と同様の効果を奏することができるとともに、複数、本実施形態においては、回転速度および踏み込み量のグラフの表示をそれぞれを2つ(総計4つ)同時に行うことができる。
【0097】
ここで、2つのグラフの表示について具体的に説明する。
【0098】
まず、データ選択ボタン56でデータの記憶先を第1データ記憶領域55aに選択して縫製作業を行うと、第1データ記憶領域55aにその縫製作業におけるミシンモータ6の回転速度とペダル8の踏み込み量のデータが記憶されるとともに、そのグラフが表示部36に表示される。
【0099】
つぎに、縫製の途中で、データ選択ボタン56でデータの記憶先を第2データ記憶領域55bに選択して縫製作業を行うと、第2データ記憶領域55bにそれ以降の縫製作業におけるミシンモータ6の回転速度とペダル8の踏み込み量のデータが記憶されるとともに、そのグラフが表示部36に表示される。
【0100】
この時、データ選択ボタン56により記憶先を変更する前、すなわち、第1データ記憶領域55aに記憶されたミシンモータ6の回転速度とペダル8の踏み込み量のグラフの表示が表示部36にそのまま保持されており、図9に示すように、第1データ記憶領域55aに記憶されたデータ(図9のデータ1)のグラフの表示と、第2データ記憶領域55bに記憶されたデータ(図9のデータ2)のグラフの表示との2つのグラフが1つの画面に重ねて同時に表示される。このような動作制御は、記憶用制御装置3AのROM51に記憶されたプログラムおよびデータに基づいて実施される。
【0101】
なお、図9には、図面の作成上、第1データ記憶領域55aに記憶された回転速度のグラフ(図9の回転速度第1データ)を太い実線、踏み込み量のグラフ(図9の踏み込み量第1データ)を長い破線、第2データ記憶領域55bに記憶された回転速度のグラフ(図9の回転速度第2データ)を細い実線、踏み込み量(図9の踏み込み量第2データ)を短い破線にて示す。なお、実際の表示としては、1データ記憶領域55aに記憶された回転速度のグラフ、踏み込み量のグラフ、第2データ記憶領域55bに記憶された回転速度のグラフ、踏み込み量のグラフのそれぞれを容易に判別することができる表示、例えば、第1データ記憶領域55aに記憶された回転速度のグラフ、踏み込み量のグラフ、第2データ記憶領域55bに記憶された回転速度のグラフ、踏み込み量のグラフのそれぞれを色違いで表示させるとともに、前述したように無効部分を破線表示するようにするとよい。
【0102】
また、2つのデータ記憶領域55の一方に記憶させてグラフを表示させるデータとしては、不揮発性メモリ53として着脱自在なものを用いた場合には、不揮発性メモリ53を交換して他の不揮発性メモリ53に記憶されている他のデータから表示に供するファイルを選択して読み込んで用いることもできるし、外部記憶装置49に記憶されているデータから表示に供するデータのファイルを選択して読み込んで用いることもできる。
【0103】
この場合、一方のデータ記憶領域55に記憶された他の不揮発性メモリ53あるいは外部記憶装置49から読み込んだデータの表示と、他方のデータ記憶領域に記憶されたデータの表示との2つのグラフを1つの画面に同時に表示することができる。
【0104】
なお、図10に示すように、操作部37には、データの読み込み先を選択する読込先選択ボタン61や読込に供するファイル番号を選択するためのファイル選択ボタン62を設けることが好ましく、また、表示部36の動作パターン表示部36aには、データの読み込みに供する読込画面を表示させることが好ましい。この読込画面における読込状態を図10に示す。
【0105】
このような構成においては、複数の作業者のミシンモータ6およびペダル8のそれぞれの動作情報を重ねて表示して、比較することができる。その結果、高技能者の技能解析や、作業者に対するミシン操作の技能教育を短期間でより確実に行うことができる。
【0106】
なお、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明に係るミシンの縫製記憶装置の実施形態をミシンとともに示す正面図
【図2】図1の要部の構成を示すブロック図
【図3】図1のタッチパネルの要部を示す拡大正面図
【図4】本発明に係るミシンの記憶装置の実施形態を適用したミシンにおける縫製記憶動作の要部を説明するフローチャート
【図5】本発明に係るミシンの記憶装置の実施形態におけるデータの記憶状態の一例を示す説明図
【図6】本発明に係るミシンの縫製記憶装置の実施形態を適用したミシンにおけるデータの表示動作の要部を説明するフローチャート
【図7】本発明に係るミシンの縫製記憶装置の実施形態を適用したミシンにおけるグラフの表示状態の一例を示す説明図
【図8】本発明のミシンの縫製記憶装置の他の実施形態の不揮発性メモリの構成をデータの記憶状態とともに示す模式図
【図9】図8のタッチパネルの構成の要部を示す拡大正面図
【図10】図9のデータの読込画面におけるデータの読込状態の一例を示す説明図
【符号の説明】
【0108】
1 ミシン
2 ミシン本体
3、3A (ミシンの)縫製記憶装置
6 ミシンモータ
8 ペダル
10 ミシン用制御手段
12 エンコーダ
13 リニアセンサ
15、41 CPU
16、42 メモリ
17 ミシン用センサ
17a 主軸位置センサ
17b 布端センサ
19、51 ROM
20、52 RAM
21、53、53A 不揮発性メモリ
32 タッチパネル
33 入力センサ
34 表示パネル
35 記憶用制御手段
36 表示部
36a 動作パターン表示部
37 操作部
38 操作ボタン
38a モータ表示ボタン
38b ペダル表示ボタン
38c 右スクロールボタン
38d 左スクロールボタン
38e タイマー時間ボタン
39 表示選択スイッチ
43 ブザー
44 タイマー
55 データ記憶領域
55a 第1データ記憶領域
55b 第2データ記憶領域
56 データ選択ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシン主軸を駆動させるミシンモータの動作情報を検出するモータ動作検出手段と、
前記ミシンモータを駆動させるために作業者によって操作されるペダルの動作情報を検出するペダル動作検出手段と、
情報の表示に用いる表示手段と、
情報の入力操作に用いる入力手段と、
各部の動作の制御を司るための記憶部および演算部を具備する制御手段とを有しており、
前記制御手段は、前記モータ動作検出手段および前記ペダル動作検出手段により検出されたそれぞれの動作情報を時間に関連させて前記記憶部に記憶させるとともに、前記ミシンモータおよび前記ペダルのそれぞれの動作情報を時間に関連したグラフとして前記表示手段により表示させることを特徴とするミシンの縫製記憶装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記ペダルが操作されたときに、ミシンモータの自動停止信号に基づいて、ペダル操作の有効・無効を判別するとともに、ペダル操作の有効部分と無効部分とを明示して表示させることを特徴とする請求項1に記載のミシンの縫製記憶装置。
【請求項3】
作業者にペダル操作の無効を認識せしめる通報を行う通報手段が設けられており、
前記制御手段は、ペダル操作を無効と判断した状態が継続したときに、前記通報手段を動作させることを特徴とする請求項2に記載のミシンの縫製記憶装置。
【請求項4】
前記制御手段がペダル操作を無効と判断したときから前記通報手段を動作させるまでの時間を設定する通報待機時間設定手段が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のミシンの縫製記憶装置。
【請求項5】
前記記憶部には、複数のデータ記憶領域が設けられており、
前記入力手段には、前記ミシンモータおよび前記ペダルのそれぞれの動作情報の記憶先を前記複数のデータ記憶領域から選択するための選択スイッチが設けられており、
前記制御手段は、前記複数のデータ記憶領域に記憶されたそれぞれのデータを前記表示手段により同時に表示可能に構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のミシンの縫製記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−207804(P2009−207804A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56194(P2008−56194)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】