説明

ミスト生成器

【課題】 粒径が均一な微小粒径のミストを効率よく生成できるミスト生成器を提供すること。
【解決手段】 本発明のミスト生成器22は、一端に流入口24、他端に流出口25を有し、内部の空洞部が複数個の微細穴を有する第1ミスト整流板26と、この第1ミスト整流板の微細穴と異なる位置に複数個の微細穴を有する第2ミスト整流板30とで仕切られ、複数個の小室R〜Rが形成されている。また、流入口24からキャリアガスにより供給された液滴は、第1小室R内において第1ミスト整流板26に高速で衝突して打ち砕かれ、第1ミスト整流板26の微細穴27を通過して次の第2小室R内で再び第2ミスト整流板30の表面に高速で衝突して打ち砕かれ、第2ミスト整流板30の微細穴31を通過して第3小室Rへ送られ、この第3小室Rにおいてキャリアガスと均一に混合されて流出口25から外部へ流出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミスト生成器に係り、更に詳しくは、各種の有機溶媒及び薬液等の液体から微小粒子のミストを生成するミスト生成器に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の有機溶剤及び薬液等の液体から微小粒子のミストを生成するミスト生成器は、ウェーハ等の基板を乾燥処理する基板処理装置、或いは病院の病室、電車の車室等を消毒或いは消臭する装置等に使用されている(例えば、下記特許文献1、2参照)。
【0003】
図4、図5は、蒸気発生部を備えた基板処理装置を示し、下記特許文献1に記載されたものである。図4は、下記特許文献に記載の基板処理装置の概要図、図5はミスト整流板を示し、図5(a)は斜視図、図5(b)はミスト整流板から放射されるミスト粒径及び放射状態を説明する正面図である。
この基板処理装置40は、図4に示すように、複数枚のウェーハWを収容できるスペースを有する基板処理槽41と、この処理槽内に配設された蒸気発生部Aと、この処理槽に接続され各種処理液を供給する処理液供給システム46と、同様にこの処理槽に接続され使用済み処理液を排出する廃液処理システム49とで構成されている。
基板処理槽41は、上下2槽に別れ、下部は洗浄槽42、上部は乾燥槽43となっている。乾燥槽43は、その内側の側壁面に、ウェーハWの外周面を挟むように2枚のミスト整流板44、44が対向配置され、主にこのミスト整流板44、44で蒸気発生部A(ミスト発生器)が構成されている。
各ミスト整流板44は、図5(a)に示すように、全体が横長の中空直方体からなり、複数枚のウェーハ表面に同時にミストを供給できる幅長になっている。
ミスト整流板44は、図5に示すように、ウェーハWの周面側に位置する面44Fに、複数の微細な開口44aが形成されている。この開口44aの大きさは5mm程度となっている。このミスト整流板44内部の下方には流体スプレーノズル45が装着されている。この流体スプレーノズル45の口径は1mm程度となっている。これらの開口44aは、ミスト整流板44の下方(流体スプレーノズル45の取付け位置)から所定距離S間は形成されていない。
【0004】
このミスト整流板44において、高密度の有機溶剤(IPA)ミストMが流体スプレーノズル45から中空のミスト整流板44内部の下部に噴射されると、距離S(100mm程度)の領域aには、粒径20μm以上の大きさのIPAミストMLで満たされ、上方の領域bには、20μm以上の大きさのIPAミストMLと20μm以下の大きさのIPAミストMSとが混じった混合ミストで満たされる。そして、この混合ミストML、MSのうち、粒径の小さいミストMSは、ミスト整流板44の開口44aを通り抜けてウェーハWに供給されて、基板の乾燥処理に使用される。一方、粒径の大きいミストMLは、ミスト整流板44の内部で凝縮されて流出口44bから放出されるようになっている。
【0005】
また、図6は、消毒、消臭する装置等に使用される霧発生装置を示し、下記特許文献2に開示されたものである。
この霧発生装置(ミスト発生器)50は、基部側にミストを発生させる発生部51、先端側にミストを放出する送出口52aを有し、発生部51で発生したミストを送出側に送り出す送風機を設けた筒状容器52を備え、この容器52内に霧粒子の選別を行う複数枚の遮閉部材54が複数段に配設された構成を有している。
この遮閉部材54は、渦流室55内に中心部からの霧の移動を抑制すると共に、送気口56から送出される風が中心部から発生室57側に向かうことを阻止し、遮閉部材54の外周と筒状容器52の内周との間で形成されるリング状の霧通過間隙Lから、旋回風(渦流)の誘導によって霧を上方の送出方向に旋回する渦流状態にして放出させ、下方から上昇する霧の粒子の大きいものの上昇を阻止して貯液部58に還元し、微粒子状の小さい霧のみを上方に送出させて霧粒子の選別を行うものである。
筒状容器内に遮閉部材54を配設することにより、発生部51から送出されたミストのうち、小粒径のミストは送出口から外へ放出され、比較的大粒径のミストは、各遮閉部材によって凝集されて貯液部58へ還元される。
【0006】
【特許文献1】特開2003−257926号公報(図1〜図3、段落〔0025〕〜〔0029〕)
【特許文献2】特開2002−52355号公報(図5、段落〔0012〕〜〔0014〕)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載された蒸気発生部は、基板処理槽内にミスト整流板を配設し、この整流板に設けた複数個の開口の開口径と重力を利用してIPA粒を選別し、粒径の小さいIPAミストを被処理基板に供給し、粒径の大きいIPAミストは整流板下部の排液口から排出させるようにしたものである。
【0008】
この蒸気発生部によれば、ミスト整流板の開口径を利用してIPAミストの粒径を選別することができるが、この整流板では、例えば開口径が5mm程度となっているので、より粒径の小さいミスト、更に粒径が小さい、例えばサブミクロンサイズのミストであって、しかも、これらのミストのサイズを均一化したものを生成することができない。また、粒径の大きいミストは、排出口から外へ排出されるので、乾燥処理に利用されるミスト量が少なくなり、ミスト生成効率が悪く、IPAが無駄に消費される恐れがあり経済的でなく、更に、別途排出処理システムが必要となる。
【0009】
また、上記特許文献2に記載された霧発生装置は、ミスト発生部から送出されたミストのうち、小粒径のミストは送出口から外へ放出し、大粒径のミストは、各遮閉部材によって凝集させて貯液部へ還元するようにしたものである。
【0010】
しかしながら、この装置では、容器と遮閉部材間の間隙Lを利用し、粒径の小さいミストは、この隙間を通して上昇させ、大径のミストは遮閉部材の裏面に接触又は衝突させ、凝集付着させて下方へ落下させているので、ミスト粒径の調節、例えば粒径の小さいミストや、更に粒径が小さい、例えばサブミクロンサイズのミストを発生させることができず、しかも、これらのミストのサイズを均一化したものを生成することができない。また、粒径の大きいミストは、下方へ落下されるので、送出口から放出されるミスト量が少なくなりミスト生成効率が悪い等の課題がある。
【0011】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、粒径が均一な微小粒子のミストを効率よく生成できるミスト生成器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、以下の手段により解決することができる。すなわち、本願の請求項1に係るミスト生成器は、一端に流入口、他端に流出口を有し内部に空洞部が形成された筒状容器を備えたミスト生成器において、前記筒状容器は、その空洞部が複数個の微細穴を有する第1ミスト整流板と、前記第1ミスト整流板の微細穴と異なる位置に複数個の微細穴を有する第2ミスト整流板とで仕切られ、前記空洞部に複数個の小室が形成されたものであることを特徴とする。
【0013】
本願の請求項2に係る発明は、請求項1に記載のミスト生成器において、前記第1ミスト整流板の複数個の微細穴の開口面積の合計は、前記流入口の開口面積より小さくなっていることを特徴とする。
【0014】
本願の請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載のミスト生成器において、前記筒状容器の外周囲にヒータが付設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、ミスト生成器を構成する筒状容器は、その空洞部を複数個の微細穴を有する第1ミスト整流板と、この第1ミスト整流板の微細穴と異なる位置に複数個の微細穴を有する第2ミスト整流板とで仕切られ、空洞部に複数個の小室を形成したものであるので、流入口から、例えばキャリアガス中に粒径がバラついた液滴を含んだ流体が高速で供給されると、粒径の大きい液滴は、第1小室内で第1ミスト整流板に高速で衝突して打ち砕かれ、この打ち砕かれた液滴は、微小の液滴粒、いわゆるミストとなって第1ミスト整流板の微細穴を通り、次の第2小室内に移送される。このミストは、第1ミスト整流板の微細穴を通過する際に粒径が均一化される。この第2小室内において、このミストは一部が更に第2ミスト整流板の表面に高速で衝突して更に打ち砕かれ、この打ち砕かれ極小化されたミスト、いわゆるマイクロミストが第2ミスト整流板の微細穴を通って第3小室へ送られる。このマイクロミストは、第2整流板の微細穴を通過する際にその粒径が均一化される。第3小室に移送されたマイクロミストは、キャリアガスと均一に混合された状態で流出口からミスト発生器の外へ放出される。したがって、このミスト生成器では、有機溶剤の粒径が均一な粒径のミスト、このミストより粒径の更に小さいマイクロミスト、有機溶剤の蒸気及びキャリアガスを含む混合流体を効率よく生成することができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、第1ミスト整流板の複数個の微細穴の合計開口面積が流入口の開口面積より小さくなっているので、第1ミスト整流板の両側の圧力差が大きくなり、第1ミスト整流板の微細穴を通過する混合流体の流速を高められるようになる。
したがって、流入口から供給された液滴等は、第1ミスト整流板をスムーズに通過し、しかも第2ミスト整流板に高速で衝突し、液滴等が効率よく打ち砕かれることになる。
【0017】
請求項3の発明によれば、容器の外周囲にヒータを付設して容器を高温に加熱することにより、有機溶剤の気化熱の損失による温度低下を防止することができるとともに、ミストの気化による粒径の微小化を加速して流出口から放出することができるので、マイクロミストの生成効率が向上する。また、容器内に溜まった液滴を蒸発させて流出口から外へ放出させることができるので、容器内に残留する液滴の処理手段が不要になると共に、薬液等の無駄をなくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのミスト生成器を例示するものであって、本発明をこのミスト生成器に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものも等しく適応し得るものである。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の実施例に係るミスト生成器を備えた基板処理装置の概要図、図2は図1のミスト生成器を示し、図2(a)は拡大断面図、図2(b)及び図2(c)は図2(a)のミスト整流板の平面図、図3はミスト生成プロセスを模式して説明する断面図である。
基板処理装置1は、図1に示すように、複数枚の被処理基板W(ウェーハ)を収容できる容積を有する基板処理槽2と、この処理槽に接続され有機溶剤等を供給する有機溶剤供給ライン6と、同様にこの処理槽に接続され使用済み有機溶剤等を含有するキャリアガス及び洗浄液を外へ排出する廃液等処理ライン(図示省略)と、を備えている。なお、この基板処理装置の処理槽には、各種処理液供給源及びこれらの供給源からの供給ラインが接続されているが、これらは省略されている。
【0020】
基板処理槽2は、上下2槽に別れ、下部は洗浄槽3、上部は乾燥槽4となっている。乾燥槽4は、その上部に複数本の噴射ノズル5が配設されている。各噴射ノズル5には、ヒータHが付設され、乾燥ガスが所定の温度に加熱されるようになっている。
この基板処理槽2では、被処理基板Wは、下部の洗浄槽3で洗浄処理され、この洗浄された基板Wは上部の乾燥槽4へ移送されて、噴射ノズル5から噴射される乾燥ガスにより乾燥処理されるようになっている。なお、この基板処理槽は、既に公知であるので詳細な説明を省略する。
【0021】
有機溶剤供給ライン6は、有機溶剤供給源と、この有機溶剤を所定量貯留する貯留槽8と、有機溶剤を霧化するとともにキャリアガスと混合する混合器21と、所定粒径のミストを生成するミスト生成器22とを備え、これらはそれぞれ配管で接続されている。有機溶剤には、例えばイソプロピルアルコール(以下、IPAという)が使用される。なお、図1では有機溶剤供給源は省略されている。
【0022】
貯留槽8は、所定量の有機溶剤を貯留できる容積を有する容器からなり、この容器の上部は閉鎖されている。この貯留槽8の閉鎖された上部は不活性ガス供給源7に供給管10により接続され、底部は混合器21に流出管12により接続されている。不活性ガスは有機溶剤の表面を加圧して混合機21に移相するための加圧手段であって、例えば窒素ガスNが使用される。この貯留槽8は、温水槽9に浸漬されており、この温水槽9には、純水DIWが貯留されてこの純水が加熱手段(図示省略)により温められ、貯留槽8内の有機溶剤が所定温度に保温される。供給管10には、圧力調節器11が接続され、この調節器11に圧力計Pが連結されている。また、流出管12にはバルブ13及び積算流量計14が接続されている。
【0023】
このような有機溶剤供給ライン6により、不活性ガス供給源7から貯留槽8に不活性ガスが供給されると、密閉された貯留槽8内の圧力が高められ、この圧力上昇によりこの貯留槽8に貯留された有機溶剤の表面が下方へ押し下げられ、この押し下げによって所定温度に保温された有機溶剤が流出管12を通して混合器21へ供給される。
この有機溶剤の供給量は、不活性ガス供給源7からの不活性ガスを圧力計Pで監視しながら調節器11を制御することにより行われる。したがって、不活性ガス供給源7からの供給量を調節することにより、有機溶剤の供給量を簡単にコントロールすることができる。
【0024】
混合器21は、不活性ガス供給ライン15及び有機溶剤供給ライン6に接続されているとともに内部にアスピレータ(図示せず)を備えており、有機溶剤の霧化とキャリアガスとの混合を同時に行うものである。不活性ガス供給ライン15の配管17には、圧力調節器18、流量積算計19及び加熱器20がそれぞれ接続され、また調節器18には圧力計Pが連結されている。不活性ガスには、例えば窒素ガスNが使用される。
この不活性ガス供給ライン6により、不活性ガス供給源16から供給された不活性ガスは加熱器20で所定温度に加熱されて配管17を経て混合器21へ供給される。このときの不活性ガスの供給量は、不活性ガス供給源16からのガス量を圧力計Pで監視しながら調節器18を制御することにより行われる。
【0025】
上記2つの供給ラインによれば、有機溶剤の供給量及びキャリアガスの供給量をそれぞれ独立して調節することができるため、有機溶剤の流量及び濃度を広範囲にコントロールできる。
【0026】
ミスト生成器22は、図2に示すように、長手方向の両端部に短長の筒状体24、25が連結され、外形直径D及び長手方向の長さLを有する胴長な円筒状の容器23からなり、所定厚さ(例えば2.0mm)の金属材、例えばステンレスで形成されている。各筒状体24、25は、開口24a、25aを有し、また内周面に雌ネジが形成され、それぞれ配管と接続される。各筒状体24、25は、前者が流入口、後者が流出口となっている。
また、容器23の外周囲には、ヒータH(図1参照)が付設されている。このヒータHにより、容器23内を所定温度に加熱すると共に外周囲からの熱伝導により第1、第2ミスト整流板も加熱する。この加熱により、容器23内を通過する液滴の気化による粒径の減少を加速することができるとともに、必要に応じて加熱温度を変えることにより容器内に残留する液滴を加熱蒸発させて、速く且つ無駄なく流出口へ流出させることができる。ヒータHには、例えばベルトヒータが使用される。なお、この容器は、合成樹脂材で形成してもよいが、耐熱性及び熱伝導効率を考慮すると金属材が好ましい。また、容器23の内部は鏡面加工するのが好ましい。
また、この胴長な円筒状の容器23は、長手方向の胴体部をほぼ等間隔L、L、Lの距離で仕切る2枚の仕切り板、すなわち第1、第2ミスト整流板26、30で仕切られて3個の個室、すなわち第1小室R、第2小室R、及び第3小室Rが形成される。
第1、第2ミスト整流板26、30は、例えば、筒状容器にミスト整流板を設ける箇所で切断して、この切断した箇所に各ミスト整流板を溶接等で結合して取り付ける。
【0027】
この円筒状の容器23における図2に示す寸法線で示した部分の長さの一例は以下のとおりである。L=100mm、D=42.7mm、D=20mm、L=32.5mm、L=32mm、L=32.5mmである。なお、この容器形状、大きさ及び流入口24流出口25の数は、用途に応じて任意に変更され、上記の形状及び大きさはその一例に過ぎない。
【0028】
第1、第2ミスト整流板26、30は、それぞれ所定厚さ、例えば2.0mmの円盤状の金属板材、例えばステンレスの板材で形成されている。このミスト整流板は、その表裏面を鏡面加工するのが好ましい。鏡面加工を施すことにより、表裏面への液体等の付着がし難くなり、また液滴が付着しても簡単に流れ落ちるため、その後の処理が容易になる。
また、第1、第2ミスト整流板26、30には、図2(b)及び図2(c)に示すように、それぞれ板体を貫通する複数個の微細穴27、31が形成されている。これらの微細穴27、31は、それぞれ第1、第2ミスト整流板26、30とで形成される位置が異なるようにされている。すなわち、この位置は、第1、第2ミスト整流板26、30を重ねたとき、それぞれの微細穴が重ならず、連通しない箇所が選択されている。
【0029】
第1ミスト整流板26の微細穴27は、図2(b)に示すように、円盤状板体の中心を通る水平線aに対して所定角度で右上がりの等間隔で設けた複数本の傾斜線X〜Xと、前記傾斜線X〜Xと直交する右下がりで等間隔の傾斜線Y〜Yが交差する交点に形成されている。傾斜線の傾斜角度は、例えば45度、間隔2.65mm、微細穴の直径は0.5mmである。なお、板体の中心部Sには、微細穴は形成されていない。
【0030】
第2ミスト整流板30の微細穴31は、円形板の中心を通る水平線に対して等間隔で水平な複数本の水平線X'〜X'及び垂直線Y'〜Y'が交差する交点31に形成されている。なお、各線X〜X、Y〜Y、X'〜X'及び垂直線Y'〜Y'は、説明を分かりやすくするために設けたもので、実際の板体には設けられていない。各線の間隔は、例えば2.65mm、微細穴直径は、例えば0.5mmである。板体の中心部Sには、微細穴は形成されない。
【0031】
第1、第2ミスト整流板26、30は、各微細穴27、31の大きさ及び個数は同じになっている。また、各微細穴27の開口面積を合計した合計面積をS2とし、流入口24の開口面積をS1とすると、両者の関係は、S1>S2になっている。
【0032】
第1、第2ミスト整流板26、30は、各微細穴27、31を設ける位置を異ならせることにより、これらのミスト整流板26、30が円筒状の容器23に装着された状態において、第1ミスト整流板26の微細穴27と第2ミスト整流板30の微細穴31とが重なることがないため、ストレートに連通することがなくなる。すなわち、流入口24から、例えば液滴とキャリアガスとの混合流体が高速で供給されると、粒径の大きい液滴は、第1小室R内において第1ミスト整流板26に高速で衝突して打ち砕かれ、この打ち砕かれた微小な液滴は粒径の小さい液滴粒、いわゆるミストとなって第1ミスト整流板26の微細穴27を通過し、次の第2小室R内に移送される。この第2小室R内では、再び第2ミスト整流板30の表面に高速で衝突して打ち砕かれ、この打ち砕かれ更に微小化されたミスト、いわゆるマイクロミストは、第2ミスト整流板30の微細穴31を通過して第3小室Rへ送られ、この第3小室Rにおいて、キャリアガスと均一に混合されて、流出口25から外へ流出される。各ミストは、第1、第2ミスト整流板26、30の微細穴27、31を通過する際に、ミストの粒径が均一化される。
ここで、第1、第2ミスト整流板26、30の各微細穴27、31の大きさ及び個数を同じにしておくと、第2小室Rでの流速の減少を少なくできる。また、第1ミスト整流板26の微細穴27の大きさを第2ミスト整流板30の微細穴31より大きくしてもよい。更に、流入口24の開口面積S1と各微細穴27の合計面積S2との関係がS1>S2となるようにする。これにより、流入口24から流入した混合流体は、第1ミスト整流板26の両側の圧力差が大きくなるので、第1ミスト整流板26の微細穴27を通る混合流体の流速が高められ、この混合流体の第1ミスト整流板26から第2小室Rへの移送がスムーズになる。
【0033】
次に、図1〜図3を参照して、この装置を用いた被処理基板Wの乾燥プロセスを説明する。
貯留槽8には、図示していない有機溶剤供給源からIPAが貯留槽8に供給され貯留される。この状態において、不活性ガス供給源7から貯留槽8に不活性ガスを供給すると、貯留槽8内の圧力が高められ、この圧力上昇により貯留槽8に貯留されたIPAの表面が下方へ押し下げられ、この押し下げにより所定温度に保温された所定量のIPAが流出管12を通してアスピレータを備えた混合器21へ供給される。このIPAの供給量は、不活性ガス供給源7からの不活性ガスを圧力計Pで監視しながら調節器11を制御することにより行う。
【0034】
一方、不活性ガス供給源16から所定量の不活性ガスをキャリアガスとして加熱器20で所定温度に加熱した後に、配管17を経て混合機21へ供給する。不活性ガスの供給量は、不活性ガス供給源16からのガス量を圧力計Pで監視しながら調節器18を制御することにより行う。混合器21では、不活性ガス供給源16から供給されたキャリアガスにより、貯留槽8から供給されたIPAを霧化するとともに不活性ガスと混合し、IPAの液滴と不活性ガスとの混合流体をミスト生成器22へ移送する。ミスト生成器22へ送られたIPAの液滴は、図3に示すように、容器23の開口24aを通過して第1小室Rへ送られ、この室で拡散されて第1ミスト整流板26の表面に衝突して打ち砕かれ、微小粒径の液滴、いわゆるミストとなる。
このIPAミストは、第1ミスト整流板26の微細穴27を通過して第2小室Rへ移送される。このとき、流入口24の開口面積S1が第1ミスト整流板26に設けられた各微細穴27の合計面積S2より大きくなっているので、第1小室Rの圧力と第2小室Rとの圧力の差が上昇するため、第1ミスト整流板26の微細穴27を通過する混合流体の流速が高められて第1ミスト整流板26から第2小室Rへスムーズに移送される。また、第2小室Rへ流入するIPAミストは、第1ミスト整流板26の微細穴27を通過する際に、粒径が均一化される。
【0035】
第2小室Rに送られたIPAミストは、更に第2ミスト整流板30の表面に衝突して再び打ち砕かれ更に極小化、マイクロミストとなって第2ミスト整流板30の微細穴31を通過して第3小室Rへ送られる。このマイクロミストは、第2ミスト整流板30の微細穴31を通過する際に、粒径が均一化される。第3小室Rでは、このマイクロミスト化されたIPAとキャリアガスとが均一にミックスされて、乾燥ガスとして流出口25から基板処理槽2へ供給される。
【0036】
ミスト生成器22と基板処理槽2とを接続する配管及び基板処理槽2内の噴射ノズル5には、それぞれヒータHが付設されているので、このヒータHにより、配管及び噴射ノズル5を所定温度に保持することができる。この保持温度は、噴射ノズル5から噴出される乾燥ガスの温度が有機溶剤の沸点と等しいか、それ以下であることが好ましい。この温度範囲に保持することにより、ミスト生成器22からの乾燥ガス中の有機溶剤ミストは配管を移送中に有機溶剤ミストの表面から徐々に気化するためにミストの粒径がさらに小さくなり、大量のサブミクロンサイズの有機溶剤のミストを含む気体に生成できる。
これにより、被処理基板Wに付着している洗浄液はこの大量のサブミクロンサイズの有機溶剤ミストによって効率よく置換され、乾燥処理効率が向上すると共に処理時間も短縮でき、基板表面のウォータマークの発生が極めて少なく、或いは殆ど零にできる。更に、パーティクルの付着もなくなり、しかも、乾燥処理のスピードが速くなるのでパーティクルの再付着をも防止できるようになる。
【0037】
また、容器23の外周囲に付設しヒータにより、容器23及び第1、第2ミスト整流板26、30を所定温度、例えば110℃に加熱することにより、容器内の有機溶剤の気化を加速して流出口から放出するこができるため、容器内に溜まった有機溶剤の液滴、及び第1、第2ミスト整流板26、30に接触した際に気化熱を奪われてしまうことにより発生した液滴等を蒸発させて流出口25から外へ放出させることができるので、容器内に残留した有機溶剤を処理するための手段が不用になると共に、有機溶剤の無駄をなくすることができる。
【0038】
この基板処理装置1を用い、以下の条件でIPA供給量とミストの状態の関係をテストした。このテスト内容を以下の表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
この結果、テスト1、2では、IPAミストが目視できなかった。また、テスト3では、IPA溶剤のミストはかすかに認識できる程度であった。しかしながら、テスト1〜3の何れにおいても、IPAの供給量は飽和蒸気圧以上となる量が供給されていることから、IPAミストは完全に気化しておらず、一部分がサブミクロンサイズのミストとして存在していることは明らかである。この結果から、IPA供給量のMAX値を、150〜200cc/minにまで高めることができる。現在の実機では、キャリアガスの最大供給流量は、150〜200L/minで、IPA供給流量は、30〜40cc/minであったものが、150〜200cc/minまで高めることができ、約5倍になる。しかも粒径の均一なミストを生成できる。
【0041】
上記実施例は、ミスト生成器を基板処理装置に適用したもので説明したが、他の装置にも利用できる。すなわち、処理液供給源として、有機溶剤に代えて、水、各種の薬液(消毒液、農薬、水に溶かした液状消臭剤等)或いはオイル等を用い、これらを上記有機溶剤と同様にミスト化することができる。また、このような薬液等を使用する場合は、キャリアガス供給源には、圧縮空気等が使用される。このミスト生成器は、用途に応じて、周辺機器が変更される。
【0042】
このミスト生成器を、例えば消毒液に適用すると、ミスト生成器から放出されるミストの径が小さく且つ効率よく大量に放出され、大気中等に放出されたときの浮遊性が良好になり、より少ない水分量で多数のミストを室内等の雰囲気中で高密度に浮遊させることができる。またミスト径を微細にすることにより、ミストの凝集による結露等も防止できる。
同様に他の薬液等に利用し、脱臭剤や殺菌剤、着香剤等を添加した雰囲気や環境室内の気体処理等を行う場合の著しい処理効率、処理性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、本発明の実施例に係るミスト生成器を備えた基板処理装置の概要図、
【図2】図2は、図1のミスト生成器を示し、図2(a)は拡大断面図、図2(b)及び図2(c)は図2(a)のミスト整流板の平面図、
【図3】図3は、気体生成プロセスを模式して説明する断面図、
【図4】図4は、従来技術の蒸気発生部を備えた基板処理装置の概要図、
【図5】図5は、図4のミスト整流板を示し、図5(a)は斜視図、図5(b)はこのミスト整流板から放射されたミストの粒径及び放射状態を説明する平面図、
【図6】図6は、他の従来技術の霧発生装置の断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 基板処理装置
2 基板処理槽
3 洗浄槽
4 乾燥槽
5 噴射ノズル
6 有機溶剤供給ライン
15 不活性ガス供給ライン
7、16 不活性ガス供給源
8 貯留槽
9 温水槽
21 混合器
23 円筒状の容器
22 ミスト生成器
24 流入口
25 流出口
26、30 第1、第2ミスト整流板
27、31 微細穴
〜R 小室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に流入口、他端に流出口を有し内部に空洞部が形成された筒状容器を備えたミスト生成器において、前記筒状容器は、その空洞部が複数個の微細穴を有する第1ミスト整流板と、前記第1ミスト整流板の微細穴と異なる位置に複数個の微細穴を有する第2ミスト整流板とで仕切られ、前記空洞部に複数個の小室が形成されたものであることを特徴とするミスト生成器。
【請求項2】
前記第1ミスト整流板の複数個の微細穴の開口面積の合計は、前記流入口の開口面積より小さくなっていることを特徴とする請求項1に記載のミスト生成器。
【請求項3】
前記筒状容器の外周囲にヒータが付設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のミスト生成器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−289219(P2006−289219A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−111456(P2005−111456)
【出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(391060395)エス・イー・エス株式会社 (46)
【Fターム(参考)】