説明

ミセル封入リポソーム

【課題】 本発明は、親水性セグメントと疎水性セグメントとからなるブロック共重合体及び非荷電性セグメントと荷電性セグメントとからなるブロック共重合体のDDSとしての可能性ないし適用範囲を拡大することを目的とする。
【解決手段】親水性セグメントと疎水性セグメントを有するブロック共重合体からなるミセル、又は非荷電性セグメント及び荷電性セグメントを有するブロック共重合体と該荷電性セグメントの荷電と反対の荷電を有する化合物との複合体からなるミセルを封入してなる、ミセル封入リポソーム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体に対して高いドラッグデリバリー機能を有するブロック共重合ミセルをさらに多機能化した、リン脂質二重膜小胞体すなわちリポソームに関する。
【背景技術】
【0002】
薬物を生体内の標的部位へ送達するための薬物運搬システム(Drug Delivery system、DDS)の一つに、親水性セグメントと疎水性セグメントとからなるブロック共重合体(特許文献1、特許文献2)が報告されている。このブロック共重合体は、適当な条件の下で、疎水性セグメントを内側に、親水性セグメントを外側にした高分子ミセルを形成する。
【0003】
このブロック共重合体ミセルの場合、その原理から、運搬される薬物は疎水性セグメントに物理的に結合することのできる疎水性薬物に限定されるという問題点があった。これに対して、運搬される薬物の範囲等を疎水性薬物からタンパク質や核酸などの生体高分子にまで拡げることを目的として、非荷電性セグメントと荷電性セグメントとからなるブロック共重合体が開発されている(特許文献3)。このブロック共重合体は、荷電性セグメントの荷電と反対の荷電を有する物質、例えばタンパク質、ペプチドホルモン、核酸、荷電性官能基を有する低分子性薬物などを、荷電性セグメントに静電的に担持することができ、荷電性セグメント及びこれに静電的に結合した化合物を内側に、非荷電性セグメントを外側にした高分子ミセルを形成することができる。
【0004】
さらに、上記のブロック共重合体の改良型として、親水性高分子構造部分と高分子カルボン酸部分とを有するブロック共重合体の高分子カルボン酸部分の側鎖であるカルボキシル基に抗癌剤以外の疎水性化合物を結合させる方法(特許文献4)、ブロック共重合体の末端アミノ基を修飾する方法(特許文献5)、アドリアマイシンとの複合体(特許文献6)、疎水性セグメントの側鎖に薬物を結合せしめて疎水性薬理機能セグメントとしたブロック共重合体をミセルとする技術(特許文献7)、荷電性セグメントを改良してpKaの低い嵩高い側鎖を有するポリカチオンセグメントとし、ミセルからの薬物(遺伝子)の放出速度やミセルの安定性などを制御可能する技術(特許文献8)も報告されている。上記の改良は、主としてブロック共重合体それ自体の構造等の改変に関するものである。
【0005】
一方、荷電性セグメントと非荷電性セグメントからなるブロック共重合体を、該ブロック共重合体の荷電とは反対の荷電を有するリポソームの表面に静電的に結合させた、ポリマー修飾リポソームが報告されている(特許文献9)。ただし、この技術では、ブロック共重合体のリポソーム表面への結合は静電的に行われる必要がある。これに対して、親水性セグメントを外側とする上記ブロック共重合体からなる高分子ミセルは、全体として電荷を有しないかあるいはごくわずかにしか電荷を有しないことから、荷電を有するリポソームの表面に当該高分子ミセルを静電的に結合させることは難しい。
【0006】
また本発明者らの一部は、核酸などの生体高分子を運搬するDDS技術として、ポリカチオンとこれに静電的に結合した生体高分子とからなる正に帯電したコンプレックスを負に帯電するSUV型リポソームで封入する方法を開発した(特許文献10)。しかしながらこの方法は、封入されるコンプレックスを帯電させ、これとは逆の電荷に帯電させたリポソームを用いて、静電的にコンプレックスをリポソームで被覆しなければならないことから、全体として荷電を有しないかあるいはごくわずかにしか荷電を有しない前記高分子ミセルに対しては適用できない。
【特許文献1】特開平6−107565号公報
【特許文献2】特開平6−206830号公報
【特許文献3】特開平8−188541号公報
【特許文献4】特開平6−206815号公報
【特許文献5】特開平6−206832号公報
【特許文献6】特開平7−69900号公報
【特許文献7】特開平8−310970号公報
【特許文献8】特開2004−352972号公報
【特許文献9】特開2006−56864号公報
【特許文献10】特開2006−167521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、親水性セグメントと疎水性セグメントとからなるブロック共重合体及び非荷電性セグメントと荷電性セグメントとからなるブロック共重合体のDDSとしての可能性ないし適用範囲を拡大することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、それ自体DDSとして使用される親水性セグメントと疎水性セグメントとからなるブロック共重合体又は非荷電性セグメントと荷電性セグメントとからなるブロック共重合体を含むミセルをさらに脂質膜、特にドラッグデリバリー用機能性素子を表面に有する脂質膜で被覆することにより、飛躍的に両親媒性ブロック共重合体のDDS機能を高めることができることを見いだし、下記の各発明を完成した。
【0009】
(1)親水性セグメントと疎水性セグメントを有するブロック共重合体からなるミセル、又は非荷電性セグメント及び荷電性セグメントを有するブロック共重合体と該荷電性セグメントの荷電と反対の荷電を有する化合物との複合体からなるミセルを封入してなる、ミセル封入リポソーム。
【0010】
(2)親水性セグメント及び非荷電性セグメントが、末端が修飾されていてもよいポリアルキレングリコールである、(1)に記載のミセル封入リポソーム。
【0011】
(3)疎水性セグメントが側鎖に薬物を結合した疎水性薬理機能セグメントである、(1)に記載のミセル封入リポソーム。
【0012】
(4)荷電性セグメントが、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリヒスチジン、DEAE−デキストラン、キトサン、ポリエチレンイミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリアリルアミン、ポリビニルヒスチジン、ポリ(N,N−ジメチルアミノメチルスチレン)、ポリ(メタクリル酸2−N,N−ジメチルアミノエチル)、スペルミンからなる群より選ばれる1種以上のポリカチオンである、(1)に記載のミセル封入リポソーム。
【0013】
(5)荷電性セグメントが、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリンゴ酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、オリゴ核酸からなる群より選ばれる1種以上のポリアニオンである、(1)に記載のミセル封入リポソーム。
【0014】
(6)化合物が、荷電性官能基を有する薬物、タンパク質、核酸、多糖類及びそれらの複合体よりなる群から選ばれる一種以上である、(1)に記載のミセル封入リポソーム。
【0015】
(7)ドラッグデリバリー用機能性素子を脂質膜表面に有する、(1)〜(6)の何れかに記載のミセル封入リポソーム。
【0016】
(8)ドラッグデリバリー用機能性素子が、細胞膜透過性ペプチド、血中滞留性ポリアルキレングリコール、特異抗体、標的化リガンド、pH応答性膜融合性ペプチド、トランスサイトーシス誘導性ペプチドよりなる群から選ばれる一種以上である、(7)に記載のミセル封入リポソーム。
【発明の効果】
【0017】
本発明のリポソームは、親水性セグメントと疎水性セグメントとからなるブロック共重合体又は非荷電性セグメントと荷電性セグメントとからなるブロック共重合体を含むミセルをさらに脂質膜、特にドラッグデリバリー用機能性素子を表面に有する脂質膜で被覆する構成により、飛躍的に高められた薬物運搬能を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明で使用されるブロック共重合体の一つは、親水性セグメントと疎水性セグメントとからなるブロック共重合体であり、その代表例は前記特許文献1に記載されている。また各セグメントの側鎖又は末端に種々の改変が加えられたブロック共重合体や、薬物が物理的又は化学的に結合したブロック共重合体も、本発明で使用することができる。さらに前記特許文献1に記載されたブロック共重合体以外にも、親水性セグメントと疎水性セグメントとからなるブロック共重合体であってミセルを形成することができるものであれば、本発明において利用可能である。以下、親水性セグメントと疎水性セグメントからなるブロック共重合体を「両親媒型ブロック共重合体」と表すことにする。
【0019】
本発明で利用可能な両親媒型ブロック共重合体の基本構造は、前記特許文献1に記載されている通りである。具体的には、親水性のセグメントとしては、例えばポリエチレンオキシド、ポリアルキレンオキシド、ポリリンゴ酸、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリシン、ポリサッカライド、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリルアミド、ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、ポリアミノ酸あるいはこれらの誘導体由来のセグメントが挙げられる。また疎水性セグメントとしては、例えばポリ(β−ベンジル L−アルパルテート)、ポリ(γ−ベンジル L−グルタメート)、ポリ(β−置換アスパルテート)、ポリ(γ−置換グルタメート)、ポリ(L−ロイシン)、ポリ(L−バリン)、ポリ(L−フェニルアラニン)、疎水性ポリアミノ酸、ポリスチレン、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸アミド、ポリアクリル酸アミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアルキレンオキシド、疎水性のポリオレフィン等を挙げることができる。
【0020】
上記の親水性セグメントと疎水性セグメントとを有するブロック共重合体の例としては、ポリエチレンオキシド−ポリスチレンブロックコポリマー、ポリエチレンオキシド−ポリブタジエンブロックコポリマー、ポリエチレンオキシド−ポリイソプレンブロックコポリマー、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンブロックコポリマー、ポリエチレンオキシド−ポリエチレンブロックコポリマー、ポリエチレンオキシド−ポリ(β−ベンジルアスパルテート)ブロックコポリマー、ポリエチレンオキシド−ポリ(γ−ベンジルグルタメート)ブロックコポリマー、ポリエチレンオキシド−ポリ(アラニン)ブロックコポリマー、ポリエチレンオキシド−ポリ(フェニルアラニン)ブロックコポリマー、ポリエチレンオキシド−ポリ(ロイシン)ブロックコポリマー、ポリエチレンオキシド−ポリ(イソロイシン)ブロックコポリマー、ポリエチレンオキシド−ポリ(バリン)ブロックコポリマー、ポリアクリル酸−ポリスチレンブロックコポリマー、ポリアクリル酸−ポリブタジエンブロックコポリマー、ポリアクリル酸−ポリイソプレンブロックコポリマー、ポリアクリル酸−ポリプロピレンブロックコポリマー、ポリアクリル酸−ポリエチレンブロックコポリマー、ポリアクリル酸−ポリ(β−ベンジルアスパルテート)ブロックコポリマー、ポリアクリル酸−ポリ(γ−ベンジルグルタメート)ブロックコポリマー、ポリアクリル酸−ポリ(アラニン)ブロックコポリマー、ポリアクリル酸−ポリ(フェニルアラニン)ブロックコポリマー、ポリアクリル酸−ポリ(ロイシン)ブロックコポリマー、ポリアクリル酸−ポリ(イソロイシン)ブロックコポリマー、ポリアクリル酸−ポリ(バリン)ブロックコポリマー、ポリメタクリル酸−ポリスチレンブロックコポリマー、ポリメタクリル酸−ポリブタジエンブロックコポリマー、ポリメタクリル酸−ポリイソプレンブロックコポリマー、ポリメタクリル酸−ポリプロピレンブロックコポリマー、ポリメタクリル酸−ポリエチレンブロックコポリマー、ポリメタクリル酸−ポリ(β−ベンジルアスパルテート)ブロックコポリマー、ポリメタクリル酸−ポリ(γ−ベンジルグルタメート)ブロックコポリマー、ポリメタクリル酸−ポリ(アラニン)ブロックコポリマー、ポリメタクリル酸−ポリ(フェニルアラニン)ブロックコポリマー、ポリメタクリル酸−ポリ(ロイシン)ブロックコポリマー、ポリメタクリル酸−ポリ(イソロイシン)ブロックコポリマー、ポリメタクリル酸−ポリ(バリン)ブロックコポリマー、ポリ(N−ビニルピロリドン)−ポリスチレンブロックコポリマー、ポリ(N−ビニルピロリドン)−ポリブタジエンブロックコポリマー、ポリ(N−ビニルピロリドン)−ポリイソプレンブロックコポリマー、ポリ(N−ビニルピロリドン)−ポリプロピレンブロックコポリマー、ポリ(N−ビニルピロリドン)−ポリエチレンブロックコポリマー、ポリ(N−ビニルピロリドン)−ポリ(β−ベンジルアスパルテート)ブロックコポリマー、ポリ(N−ビニルピロリドン)−ポリ(γ−ベンジルグルタメート)ブロックコポリマー、ポリ(N−ビニルピロリドン)−ポリ(アラニン)ブロックコポリマー、ポリ(N−ビニルピロリドン)−ポリ(フェニルアラニン)ブロックコポリマー、ポリ(N−ビニルピロリドン)−ポリ(ロイシン)ブロックコポリマー、ポリ(N−ビニルピロリドン)−ポリ(イソロイシン)ブロックコポリマー、ポリ(N−ビニルピロリドン)−ポリ(バリン)ブロックコポリマー、ポリ(アスパラギン酸)−ポリスチレンブロックコポリマー、ポリ(アスパラギン酸)−ポリブタジエンブロックコポリマー、ポリ(アスパラギン酸)−ポリイソプレンブロックコポリマー、ポリ(アスパラギン酸)−ポリプロピレンブロックコポリマー、ポリ(アスパラギン酸)−ポリエチレンブロックコポリマー、ポリ(アスパラギン酸)−ポリ(β−ベンジルアスパルテート)ブロックコポリマー、ポリ(アスパラギン酸)−ポリ(γ−ベンジルグルタメート)ブロックコポリマー、ポリ(アスパラギン酸)−ポリ(アラニン)ブロックコポリマー、ポリ(アスパラギン酸)−ポリ(フェニルアラニン)ブロックコポリマー、ポリ(アスパラギン酸)−ポリ(ロイシン)ブロックコポリマー、ポリ(アスパラギン酸)−ポリ(イソロイシン)ブロックコポリマー、ポリ(アスパラギン酸)−ポリ(バリン)ブロックコポリマー、ポリ(グルタミン酸)−ポリスチレンブロックコポリマー、ポリ(グルタミン酸)−ポリブタジエンブロックコポリマー、ポリ(グルタミン酸)−ポリイソプレンブロックコポリマー、ポリ(グルタミン酸)−ポリプロピレンブロックコポリマー、ポリ(グルタミン酸)−ポリエチレンブロックコポリマー、ポリ(グルタミン酸)−ポリ(β−ベンジルアスパルテート)ブロックコポリマー、ポリ(グルタミン酸)−ポリ(γ−ベンジルグルタメート)ブロックコポリマー、ポリ(グルタミン酸)−ポリ(アラニン)ブロックコポリマー、ポリ(グルタミン酸)−ポリ(フェニルアラニン)ブロックコポリマー、ポリ(グルタミン酸)−ポリ(ロイシン)ブロックコポリマー、ポリ(グルタミン酸)−ポリ(イソロイシン)ブロックコポリマー、ポリ(グルタミン酸)−ポリ(バリン)ブロックコポリマーなどを挙げることができる。
【0021】
上記の各セグメントは、前記特許文献2又は4〜11に開示されるように、必要に応じて側鎖や末端に置換基を導入した誘導体としてもよい。また両親媒型ブロック共重合体を用いてミセルを形成するには、両親媒型ブロック共重合体を水性溶液中で混合し、必要に応じて透析、攪拌、希釈、濃縮、超音波処理、温度制御、pH制御、有機溶媒の添加等の操作を適宜行って調製すればよい。
【0022】
上記の両親媒型ブロック共重合体で形成されるミセルは、その疎水性の内核に、疎水性薬物を封入することができる。例えばアドリアマイシン、ダウノマイシン、メントレキセート、マイトマイシンC等の抗ガン剤、インドメタシン等の鎮痛消炎剤、中枢神経系用薬、末梢神経系用薬、アレルギー用薬、循環器官用薬、呼吸器官用薬、消化器官用薬、ホルモン剤、代謝性医薬品、抗生物質、化学療法剤等の疎水性薬物が挙げられる。本発明における親水性セグメントと疎水性セグメントを有するブロック共重合体からなるミセルには、疎水性の内核に疎水性薬物を封入したミセルも含まれる。ミセルの疎水性核に疎水性薬物を封入する方法は、両親媒型ブロック共重合体と疎水性薬物を水性溶液中で混合し、必要に応じて透析、攪拌、希釈、濃縮、超音波処理、温度制御、pH制御、有機溶媒の添加等の操作を適宜行って調製すればよい。
【0023】
本発明で使用されるブロック共重合体のもう一つは、非荷電性セグメントと荷電性セグメントとからなるブロック共重合体である。その代表例は、前記特許文献3に記載されている。また各セグメントの側鎖又は末端に種々の改変が加えられたブロック共重合体や、薬物が物理的又は化学的に結合したブロック共重合体も、本発明で使用することができる。さらに前記特許文献3に記載されたブロック共重合体以外にも、非荷電性セグメントと荷電性セグメントとからなるブロック共重合体であって、該荷電性セグメントの荷電と反対の荷電を有する化合物と結合してミセルを形成することができるものであれば、本発明において利用可能である。以下、非荷電性セグメントと荷電性セグメントとからなるブロック共重合体を「荷電性ブロック共重合体」と表すことにする。
【0024】
本発明で利用可能な「荷電性ブロック共重合体」の各セグメントの種類あるいは構造は、前記特許文献3に記載されているとおりである。具体的には、非荷電性セグメントとしては、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールの他に、ポリアルキレンオキシド、ポリサッカライド、ポリアクリルアミド、ポリ置換アクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリ置換メタクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアミノ酸又はそれらの誘導体等を例示することができる。 また荷電性セグメントとしては、荷電性側鎖を有するポリアミノ酸、具体的にはポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリシン、ポリアルギニン、ポリヒスチジン等の他、ポリリンゴ酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルイミダゾール又はこれらの誘導体等を例示することができる。
【0025】
上記の非荷電性セグメントと荷電性セグメントの好適な組合せとしては、ポリエチレングリコール−ポリアスパラギン酸ブロック共重合体、ポリエチレンオキシド−ポリグルタミン酸ブロック共重合体、ポリエチレングリコール−ポリアルギニンブロック共重合体、ポリエチレングリコール−ポリヒスチジンブロック共重合体、ポリエチレングリコール−ポリメタクリル酸ブロック共重合体、ポリエチレングリコール−ポリエチレンイミンブロック共重合体、ポリエチレングリコール−ポリビニルアミンブロック共重合体、ポリエチレングリコール−ポリアリルアミンブロック共重合体、ポリエチレンオキシド−ポリアスパラギン酸ブロック共重合体、ポリエチレンオキシド−ポリグルタミン酸ブロック共重合体、ポリエチレンオキシド−ポリリジンブロック共重合体、ポリエチレンオキシド−ポリアクリル酸ブロック共重合体、ポリエチレンオキシド−ポリビニルイミダゾールブロック共重合体、ポリアクリルアミド−ポリアスパラギン酸ブロック共重合体、ポリアクリルアミド−ポリヒスチジンブロック共重合体、ポリメタクリルアミド−ポリアクリル酸、ポリメタクリルアミド−ポリビニルアミンブロック共重合体、ポリビニルピロリドン−ポリメタクリル酸ブロック共重合体、ポリビニルアルコール−ポリアスパラギン酸ブロック共重合体、ポリビニルアルコール−ポリアルギニンブロック共重合体、ポリアクリル酸エステル−ポリグルタミン酸ブロック共重合体、ポリアクリル酸エステル−ポリヒスチジンブロック共重合体、ポリメタクリル酸エステル−ポリビニルアミンブロック共重合体、又はポリメタクリル酸−ポリビニルイミダゾールブロック共重合体等を例示することができる。
【0026】
上記の各セグメントは、前記特許文献2又は4〜11に開示されるように、必要に応じて側鎖や末端に置換基を導入した誘導体としてもよい。上記の荷電型ブロック共重合体及びその誘導体の製造法は、特許文献3に記載されている。例えば、ポリエチレングリコール−ポリ(α,β−アスパラギン酸)ブロック共重合体は、β−ベンジル−L−アスパルテート−N−カルボン酸無水物を、片末端一級アミノ基のポリエチレングリコール(分子量約200〜250000)を開始剤として重合させてポリエチレングリコール−ポリ(β−ベンジル−L−アスパルテート)ブロック共重合体を合成し、さらにアルカリ処理して脱ベンジル化を行うことによりポリエチレングリコール−ポリ(α,β−アスパラギン酸)ブロック共重合体を得ることができる。また、ポリエチレングリコール−ポリリシンブロック共重合体は、ε−カルボベンゾキシ−L−リシン無水物を、片末端一級アミノ基のポリエチレングリコール(分子量200〜250000)を開始剤として重合させてポリエチレングリコール−ポリ(ε−カルボベンゾキシ−L−リシン)ブロック共重合体を合成し、さらにメタンスルホン酸を用いて脱保護反応を行うことで、ポリエチレングリコール−ポリリシンブロック共重合体を得ることができる。
【0027】
また、上記の荷電型ブロック共重合体と共にミセルを形成することができる化合物としては、荷電性ブロック共重合体の荷電と反対の荷電を有する化合物であれば特にその種類に限定はないが、タンパク質(ペプチド、オリゴペプチドを含む)、核酸(DNA、RNA、オリゴヌクレオチド等を含む)、分子内に荷電性官能基を有する低分子化合物等を例示することができる。
【0028】
これらの化合物と荷電性ブロック共重合体とを用いてミセルを形成するには、荷電性ブロック共重合体と化合物とを水性溶液中で混合し、必要に応じて透析、攪拌、希釈、濃縮、超音波処理、温度制御、pH制御、有機溶媒の添加等の操作を適宜行って調製すればよい。この様にして形成されるミセルは安定な高分子ミセル構造をとり、その内核に効率よくタンパク質やDNA等の荷電物質を取り込むことができる。このため、生体内で分解されやすい荷電性薬物を安定化して体内投与することができる。
【0029】
なお、両親媒型ブロック共重合体の親水性セグメントと荷電型ブロック共重合体の非荷電性セグメントは同じ構造となる場合もある。その様な例としてはポリアルキレングリコールであり、特にポリエチレングリコールが、両セグメントとして好ましい。
【0030】
上記ブロック共重合体からなるミセルを封入するリポソームを構成するリン脂質は、一般的に用いられている各種のリン脂質であれば、いずれも利用可能である。その具体例としては、ホスファチジルコリン(例えば、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン等)、ホスファチジルグリセロール(例えば、ジオレオイルホスファチジルグリセロール、ジラウロイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジグリセロール)、ホスファチジルエタノールアミン(例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、ジラウロイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジエタノールアミン)、N−スクシニルホスファチジルエタノールアミン(N−スクシニルPE)、ホスファチジルエチレングリコール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、カルジオリピン等のリン脂質又はこれらの水素添加物、セファリン、セレブロシド、セラミド、スフィンゴミエリン、ガングリオシド等の糖脂質が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を使用することができる。リン脂質は、卵黄、大豆その他の動植物に由来する天然脂質(例えば、卵黄レシチン、大豆レシチン等)、合成脂質又は半合成脂質のいずれであってもよい。
【0031】
本発明のリポソームには、脂質二重層の構成脂質としてカチオン性脂質を必要に応じて含ませることもできる。カチオン性脂質としては、例えば、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロライド(dioctadecyldimethylammonium chloride、DODAC)、N−(2,3−オレイルオキシ)プロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウム(N−(2,3−dioleyloxy)propyl−N,N,N−trimethylammonium、DOTMA)、ジドデシルアンモニウムブロミド(didodecylammoniumbromide、DDAB)、1,2−ジオレイルオキシ−3−トリメチルアンモニウムプロパン(1,2−dioleoyloxy−3−trimethylammonio propane、DOTAP)、3β−N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモールコレステロール(3β−N−(N’,N’,−dimethyl−aminoethane)−carbamol cholesterol、DC−Chol)、1,2−ジミリストイルオキシプロピル−3−ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム(1,2−dimyristoyloxypropyl−3−dimethylhydroxyethyl ammonium、DMR IE)、2,3−ジオレイルオキシ−N−[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパンアンモニウムトリフルオロアセテート(2,3−dioleyloxy−N−[2(sperminecarboxamido)ethyl]−N,N−dimethyl−1−propanaminum trifluoroacetate、DOSPA)等が挙げられる。特にDOPE、DOTAPの利用が好ましい。これらのカチオン性脂質を含むリポソームは、自己融合性、すなわち互いに接触したリポソーム同士が自発的に膜融合してより大きなサイズのリポソームへと変化する性質)を有しており、前記のブロック共重合体からなるミセルを封入したリポソームの調製において特に有利である。
【0032】
また、リポソームの脂質二重層には、脂質二重層を物理的又は化学的に安定させたり、膜の流動性を調節したりするために、例えば、コレステロール、コレステロールコハク酸、ラノステロール、ジヒドロラノステロール、デスモステロール、ジヒドロコレステロール等の動物由来のステロール、スチグマステロール、シトステロール、カンペステロール、ブラシカステロール等の植物由来のステロール(フィトステロール)、チモステロール、エルゴステロール等の微生物由来のステロール、グリセロール、シュクロース等の糖類、トリオレイン、トリオクタノイン等のグリセリン脂肪酸エステルのうち、1種又は2種以上を含有させることができる。その含有量は特に限定されるものでないが、脂質二重層を構成する総脂質に対して5〜40%(モル比)であることが好ましく、10〜30%(モル比)であることがさらに好ましい。
【0033】
さらに、リポソームの脂質二重層には、トコフェロール、没食子酸プロピル、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシトルエン等の抗酸化剤、ステアリルアミン、オレイルアミン等の正荷電を付与する荷電物質、ジセチルホスフェート等の負電荷を付与する荷電物質、膜表在性タンパク質、膜内在性タンパク質等の膜タンパク質を含有させることができ、その含有量は適宜調節することができる。
【0034】
また、本発明のリポソームには、例えばポリアルギニンペプチド(国際特許出願公開第WO2005/032593号パンフレット)などの細胞膜透過性ペプチド、血中滞留性ポリアルキレングリコール(Theresa M.Allen,Trends Pharmacological Science誌 15巻、第215−220頁、1994年)、GALAペプチド(国際特許出願公開第WO2005−032593号パンフレット)などのpH応答性膜融合性ペプチド、トランスサイトーシス誘導性ペプチド(特許出願番号2006−179955)、特異抗体、標的化リガンドその他のドラッグデリバリー用機能性素子を、それぞれ公知の方法に従って含ませてもよい。
【0035】
本発明のリポソームは、前記ブロック共重合体からなるミセルを脂質層で封入することにより調製される。リポソームの調製法としては、例えば、水和法、超音波処理法、エタノール注入法、エーテル注入法、逆相蒸発法、界面活性剤法、凍結・融解法等の公知の方法を用いて作製することができる。例えば水和法の場合、脂質二重層の構成成分である脂質を有機溶剤に溶解し、有機溶剤を蒸発除去することにより脂質膜を得た後、脂質膜を前記ブロック共重合体からなるミセルを含む水性溶媒で水和させ、攪拌又は超音波処理することにより、製造することができる。また、脂質二重層の構成成分である脂質を有機溶剤に溶解した後、有機溶剤を蒸発除去することにより脂質膜を得、この脂質膜を前記ブロック共重合体からなるミセルを含む水性溶媒で水和させ、攪拌又は超音波処理することによりリポソームを製造する。必要に応じて、ドラッグデリバリー用機能性素子を有機溶媒に添加する、あるいはリポソームを含む外液にドラッグデリバリー用機能性素子を添加することにより、リポソームにドラッグデリバリー用機能性素子を導入することができる。
【0036】
上記の方法において、有機溶媒として、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール等の低級アルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類等を、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
また、所定のポアサイズのフィルターを通過させることにより、一定の粒度分布を持ったリポソームを得ることができる。また、公知の方法に従って、多重膜リポソームから一枚膜リポソームへの転換、一枚膜リポソームから多重膜リポソームへの転換を行うことができる。
【0038】
また、本発明のリポソームは、前記のブロック共重合体からなるミセルに予め調製したリポソーム(前記ミセルは封入されていない)を加え、リポソーム間の膜融合を誘導してミセルを封入する方法によっても製造することができる。この方法の場合、予め調製されるリポソームには、脂質膜に膜融合性脂質(国際特許出願番号PCT/JP2006/319601)を含有させ、自己融合性を持たせておくことが好ましい。あるいは膜融合性脂質を含有させる方法以外のリポソーム間の膜融合を促す種々の公知の方法を、当該予め調製されるリポソームに適用してもよい。リポソーム間の膜融合を促す種々の公知の方法としては、溶液のpHを変化させることで膜融合を促す方法やCa2+などのイオンを加えて膜融合を誘導する方法等を挙げることができる。この方法では、リポソームでミセルを取り囲むことが必要であり、ミセルに対して過剰量の予め調製したリポソームを加える、特にミセル1容量に対して予め調製したリポソームを2容量以上、さらには9容量以上加えることが好ましい。
【0039】
また、互いに親和性を示す一組の化学物質、例えばビオチンとアビジンや抗原と特異抗体などを、ミセルを形成するブロック共重合体の親水性セグメント又は非荷電性セグメントの側鎖又は末端と、予め調製されるリポソームの表面に、それらの間で対を形成するように結合させておき、当該化学物質の親和性を利用してミセルをリポソームで取り囲んでもよい。
【0040】
本発明のリポソームは、例えば、分散液の状態で使用することができる。分散溶媒としては、例えば、生理食塩水、リン酸緩衝液,クエン緩衝液,酢酸緩衝液等の緩衝液を使用することができる。分散液には、例えば、糖類、多価アルコール、水溶性高分子、非イオン界面活性剤、抗酸化剤、pH調節剤、水和促進剤等の添加剤を添加して使用してもよい。
【0041】
本発明のリポソームは、分散液を乾燥(例えば、凍結乾燥、噴霧乾燥等)させた状態で使用することもできる。乾燥させたリポソームは、生理食塩水、リン酸緩衝液,クエン緩衝液,酢酸緩衝液等の緩衝液を加えて分散液とすることができる。
【0042】
本発明のリポソームは、in vivo及びin vitroのいずれにおいても使用することもできる。本発明のリポソームをin vivoにおいて使用する場合、投与経路としては、例えば、静脈、腹腔内、皮下、経鼻等の非経口投与が挙げられ、投与量及び投与回数は、リポソームに封入されたブロック共重合体からなるミセルに応じて適宜調節することができる。
【0043】
以下、非限定的な実施例によって、本発明をさらに詳しく説明する。
【実施例】
【0044】
<実施例1>
非荷電性セグメントがポリエチレングリコールであり、荷電性セグメントがP[Asp(DET)](重合数71)である荷電型ブロック共重合体(PEG−DET:分子量31394)を、N/P=10となるように10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)で溶解した(ブロック共重合体の最終濃度は1.36mg/mL)。この溶液1容量を0.1mg/mLのルシフェラーゼをコードする遺伝子を有するpDNA(pcDNA3.1−luciferase)を含む10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)溶液2容量に対して加え、ピペッティングでよく混合した後、室温で一晩インキュベートして、pDNAを含む荷電型ブロック共重合体からなるミセル(PIC)を調製した。
【0045】
0.675mmolのDOPE及び0.15mmolのCHEMS(DOPE:CHEMS=9:2)を150μLのクロロホルムに溶解した溶液をガラス試験管に分取し、窒素ガスを吹き付けて蒸発乾固させ、脂質膜を形成させた。脂質濃度が0.55mMになるように10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)を脂質膜に添加し、室温で10分間放置することによって水和させた。水和後、超音波槽で数秒間超音波処理した後にプローブ型超音波発生装置(BRABSON社SONIFIER 250D)で10分間超音波処理することによりリポソーム(SUV)を調製した。混入した金属粒子を遠心処理により除いた後、上清のSUV懸濁液を使用した。
【0046】
上記のように調製したPICの粒子径およびゼータ電位、及びPIC:SUV=1:1〜1:9(容量比)となるように混合した後の粒子径をMalvern instruments社(英国)製のZetasizer Nano seriesを用いて、ゼータ電位をPHOTAL ELS 8000(大塚電子株式会社)を用いて測定した(図1)。PIC単独の粒子径は約75nm、ゼータ電位は約5mVであった。このPICに対してSUV(約−34mVの負電荷を有する)を増量しながら添加していくと、PIC:SUV=1:9において、ゼータ電位と粒子径の反転が生じたことから、ミセルを封入したリポソームが形成されたと考えられる。
【0047】
<実施例2>
実施例1で調製したPICと、実施例1におけるDOPE/CHEMS=9:2を、DOPE/CHEMS/Rhodamine−DOPE=8.98/2/0.02に変更して調製したSUVとを、PIC:SUV=1/2又は1/9の容量比で混合した。混合物に対して下記の表1に示す%のショ糖溶液を重層して、ショ糖密度勾配遠心分離用のサンプルを用意した。
【0048】

Beckman社の遠心分離機L−90K及び附属ローターsw41Tiを使用して、36000rpm、2時間の条件で超遠心分離し、1mLずつフラクションを回収した。脂質は蛍光強度を測定することで確認し、pDNAの分布を見るために各フラクションを1% Triton X−100、pAsp(1mg/mL)で処理した後、1%アガロースゲル電気泳動(100mV、30分)を行い、EtBrで15分間染色してUV照射した。
【0049】
その結果、PICのみでは、ショ糖濃度20〜60%の範囲にDNAが存在しているのに対して、PICとSUVの混合物では、ショ糖濃度10%〜20%の境界にDNAが濃縮されており、また脂質成分も10%〜20%の境界にのみ認められた(図2a、図2b)。ミセルがリポソームに封入されると見かけ比重が軽くなるので、上記の結果から、ミセルを封入したリポソームが形成されたと考えられる。
【0050】
<実施例3>
実施例1で調製したPIC:SU=1:9の混合物にステアリル化オクタアルギニンを脂質量の5mol%となるように添加し、室温で30分間インキュベーションして、表面にオクタアルギニンを有するミセル封入リポソームを調製した。24穴プレートに分裂細胞であるNIH3T3細胞を4×10cells/well/DMEM血清培地となるように播種して一晩培養し、0.4μgの前記pDNAのみ、実施例1で調製したPIC単独0.4μg(DNA量として)、及び上記ミセル封入リポソーム0.4μg(DNA量として)をそれぞれ細胞に添加して最終容量250μl(DMEM無血清培地)で37℃、3時間インキュベーション後、さらにDMEM血清培地1mLを加えて45時間インキュベーションした。
【0051】
遠心処理して回収した細胞をReporter lysis buffer((Promega社)に溶解し、−80℃で30分以上凍結した後に室温で融解して得た細胞溶解液20μLと、Luciferase assay reagent(Promega,社)50μLとを混合し、ルミノメーター(Luminescencer−PSN,アトー社)にて活性を測定した。その後、細胞溶解液のタンパク質量をBCA protein assay Kit(PIERCE,Rockford,IL)にて定量した。
【0052】
PIC単独で遺伝子導入したNIH3T3細胞では1000程度の遺伝子発現が確認されたのに対して、ミセル封入リポソームで遺伝子導入したNIH3T3細胞では10万倍以上の遺伝子発現が観察された(図3)。
【0053】
<実施例4>
実施例1で調製したPICと、実施例1におけるDOPE:CHEMS=9:2をDOPE:PA=7:2に代えて調製したSUVとを、PIC:SUV=1:9の容量比で混合した後、ステアリル化オクタアルギニンを脂質量の10mol%となるように添加し、室温で30分間インキュベーションして、表面にオクタアルギニンを有するミセル封入リポソームを調製した。24穴プレートに非分裂細胞であるJaws II細胞を8×10cells/well/αMEM血清培地となるように播種して二晩培養し、実施例1で調製したPIC単独0.4μg(DNA量として)、及び上記ミセル封入リポソーム0.4μg(DNA量として)をそれぞれ細胞に添加して最終容量250μl(αMEM無血清培地)で37℃、3時間インキュベーション後、さらにαMEM血清培地1mLを加えて21時間インキュベーションした。
【0054】
遠心処理して回収した細胞をReporter lysis buffer(Promega社)に溶解し、−80℃で30分以上凍結した後に室温で融解して得た細胞溶解液20mLと、Luciferase assay reagent(Promega,社)50μLとを混合し、ルミノメーター(Luminescencer−PSN,アトー社)にて活性を測定した。その後、細胞溶解液のタンパク質量をBCA protein assay Kit(PIERCE,Rockford,IL)にて定量した。
【0055】
PIC単独で遺伝子導入したJaws II細胞では1000程度の遺伝子発現が確認されたのに対して、ミセル封入リポソームで遺伝子導入したJaws II細胞では1000倍以上の遺伝子発現が観察された(図4)。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】PICとSUVの混合比と、及びゼータ電位と粒子径との関係を示す。図中、■がゼータ電位を、●が粒子径を示す。
【図2a】PICのショ糖密度勾配遠心分析の結果を示す。
【図2b】PICとSUVの混合により得られたリポソームのショ糖密度勾配遠心分析の結果を示す。
【図3】実施例3において形質転換されたNIH3T3細胞におけるルシフェラーゼ活性を示す。
【図4】実施例4において形質転換されたJaws II細胞におけるルシフェラーゼ活性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性セグメントと疎水性セグメントを有するブロック共重合体からなるミセル、又は非荷電性セグメント及び荷電性セグメントを有するブロック共重合体と該荷電性セグメントの荷電と反対の荷電を有する化合物との複合体からなるミセルを封入してなる、ミセル封入リポソーム。
【請求項2】
親水性セグメント及び非荷電性セグメントが、末端が修飾されていてもよいポリアルキレングリコールである、請求項1に記載のミセル封入リポソーム。
【請求項3】
疎水性セグメントが側鎖に薬物を結合した疎水性薬理機能セグメントである、請求項1に記載のミセル封入リポソーム。
【請求項4】
荷電性セグメントが、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリヒスチジン、DEAE−デキストラン、キトサン、ポリエチレンイミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリアリルアミン、ポリビニルヒスチジン、ポリ(N,N−ジメチルアミノメチルスチレン)、ポリ(メタクリル酸 2−N,N−ジメチルアミノエチル)、スペルミンからなる群より選ばれる1種以上のポリカチオンである、請求項1に記載のミセル封入リポソーム。
【請求項5】
荷電性セグメントが、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリンゴ酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、オリゴ核酸からなる群より選ばれる1種以上のポリアニオンである、請求項1に記載のミセル封入リポソーム。
【請求項6】
化合物が、荷電性官能基を有する薬物、タンパク質、核酸、多糖類及びそれらの複合体よりなる群から選ばれる一種以上である、請求項1に記載のミセル封入リポソーム。
【請求項7】
ドラッグデリバリー用機能性素子を脂質膜表面に有する、請求項1〜6の何れかに記載のミセル封入リポソーム。
【請求項8】
ドラッグデリバリー用機能性素子が、細胞膜透過性ペプチド、血中滞留性ポリアルキレングリコール、特異抗体、標的化リガンド、pH応答性膜融合性ペプチド、トランスサイトーシス誘導性ペプチドよりなる群から選ばれる一種以上である、請求項7に記載のミセル封入リポソーム。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−214324(P2008−214324A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−85626(P2007−85626)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】