説明

ミノキシジル含有液剤

【課題】保存安定性が改善された、液剤に対して5w/v%以上のミノキシジルと塩化カルプロニウム又はその水和物とを同時に含有した液剤を提供する。
【解決手段】
a)液剤に対して5w/v%以上のミノキシジル、b)塩化カルプロニウム又はその水和物、c)ジブチルヒドロキシトルエン、及びd)リン酸またはその塩、を含有する液剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミノキシジル、及び塩化カルプロニウム又はその水和物を含有する液剤に関し、医薬品及び医薬部外品の分野に応用することができる。
【背景技術】
【0002】
ミノキシジルは化学名を6−(1−ピペリジニル)−2,4−ピリミジンジアミン−3−オキサイドと称し、育毛剤としての適応が知られている(特許文献1参照)。ミノキシジルは外用により優れた育毛、養毛作用があるため、ミノキシジルを配合した育毛剤は広く受け入れられ、その販売高も記録的である。
塩化カルプロニウムは化学名を(3−メトキシカルボニルプロピル)トリメチルアンモニウムクロリドと称し、局所血管作用を有する化合物として知られている(特許文献2参照)。
【0003】
また、ミノキシジルと塩化カルプロニウムとを化粧料基剤中に同時に配合した液剤を塗布した場合、各単独塗布した場合と比較して高い育毛、養毛効果を得ることが知られている(特許文献3参照)。
【0004】
ミノキシジルを液剤として使用した場合、経時的に着色しやすい欠点があり、特にpHを低くした場合はその傾向が強くなる。この欠点を改善する方法としてジブチルヒドロキシトルエン及び/又はジブチルヒドロキシアニソールを配合する方法(特許文献4参照)などが挙げられる。
【0005】
従来、ミノキシジルと塩化カルプロニウムを同時に含有した液剤に、抗酸化剤を配合して(特許文献5参照)、又はエチレンジアミン四酢酸及びジブチルヒドロキシトルエンを配合して(特許文献6参照)、液剤の経時的着色を防止する方法が知られている。また、塩酸及び/又は乳酸を配合して(特許文献7参照)塩化カルプロニウムを安定に保存し、液剤の経時的着色を防止する方法が知られている。これらはいずれも、ミノキシジルの配合量が多くて液剤に対して2w/v%であり、5w/v%以上のミノキシジルを配合した液剤については報告が無かった。
【0006】
【特許文献1】米国特許第4139619号明細書
【特許文献2】特公昭42−5680号公報
【特許文献3】特許第1948458号明細書
【特許文献4】特開2002−308740号公報
【特許文献5】特開2006−22091号公報
【特許文献6】特開2006−22092号公報
【特許文献7】特開2007−191473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、液剤に対して5w/v%以上のミノキシジル、塩化カルプロニウムを同時に含有した液剤を調整したところ、液剤の経時的着色が確認されただけでなく、結晶が析出するという問題を見出した。
【0008】
本発明は、経時的着色、及び結晶の析出を抑制して保存安定性が改善された、液剤に対して5w/v%以上のミノキシジルと塩化カルプロニウム又はその水和物とを同時に含有した液剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、液剤に対して5w/v%以上のミノキシジルと塩化カルプロニウム又はその水和物を含有する液剤に、ジブチルヒドロキシトルエン及びリン酸またはその塩、を含有させることにより、保存安定性が改善されることを見出し本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は、
(1)a)液剤に対して5w/v%以上のミノキシジル、b)塩化カルプロニウム又はその水和物、c)ジブチルヒドロキシトルエン、及びd)リン酸またはその塩、を含有する液剤。
(2)外用液剤である(1)に記載の液剤。
(3)a)液剤に対して5w/v%以上のミノキシジル、及びb)塩化カルプロニウム又はその水和物を含有した液剤に対して、c)ジブチルヒドロキシトルエン、及びd)リン酸またはその塩、を配合して、該液剤の着色及び結晶析出を防止する方法。
である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、液剤に対して5w/v%以上のミノキシジルと塩化カルプロニウム又はその水和物を含有する液剤の経時的着色、及び結晶の析出を抑制して保存安定性を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を以下に詳細に説明する。
【0013】
本発明において用いるミノキシジルの含有量は、液剤中5w/v%以上であり、通常医薬品に用いられる品質のものを適宜使用することができる。
【0014】
塩化カルプロニウム又はその水和物の含有量は、塩化カルプロニウムとして液剤中2〜5w/v%が好ましく、用いる塩化カルプロニウム又はその水和物は、通常医薬品に用いられる品質のものを適宜使用することができる。
【0015】
ジブチルヒドロキシトルエンの含有量は、液剤中0.005〜0.5w/v%が好ましく、更に好ましくは液剤中0.1〜0.5w/v%である。用いるジブチルヒドロキシトルエンは、通常医薬品に用いられる品質のものを適宜使用することができる。
【0016】
用いるリン酸またはその塩は、通常医薬品に用いられる品質のものを適宜使用することができる。
【0017】
本発明の液剤には、さらに水、エタノール、多価アルコール等を配合しても良い。エタノールの含有量は、液剤中25〜70w/v%、水の含有量は、液剤中5〜30w/v%とすることが好ましい。用いるエタノール及び水については、それぞれ医薬品に用いられる品質のものを適宜使用することができる。
【0018】
多価アルコールの含有量は、液剤中5〜30w/v%が好ましく、更に好ましくは液剤中5〜20w/v%である。本発明において用いる多価アルコールとしては1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、又はグリセリンが好ましく、更に好ましくは1,3−ブチレングリコールである。また、多価アルコールは1種類のみ用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。用いる多価アルコールについては、それぞれ医薬品に用いられる品質のものを適宜使用することができる。
【0019】
本発明の液剤においては、上記した成分の他、一般の外用剤に使用される種々の成分、賦形剤、育毛成分(6−ベンジルアミノプリン、アデノシン、ペンタデカン酸グリセリド、何首鳥、竹節人参等)、血管拡張剤(ニコチン酸ベンジル、センブリ抽出液、オタネニンジンエキス、トウガラシチンキ等)、抗ヒスタミン剤(塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸イソチペンジル等)、抗炎症剤(グアイアズレン等)、角質溶解剤(尿素、サリチル酸等)、殺菌剤(グルコン酸クロルヘキシジン、イソプロピルメチルフェノール、第4級アンモニウム塩、ピロクトンオラミン等)、保湿剤(コンドロイチン硫酸等)、各種動植物(イチイ、ボタンピ、カンゾウ、オトギリソウ、附子、ビワ、カワラヨモギ、コンフリー、アシタバ、サフラン、サンシシ、ローズマリー、セージ、モッコウ、セイモッコウ、ホップ、プラセンタ等)の抽出物、ビタミン類(トコフェロール酢酸エステル、酢酸レチノール、アスコルビン酸、硝酸チアミン、パントテニールエチルエーテル、シアノコバラミン、ビオチン等)、抗酸化剤(ピロ亜硫酸ナトリウム、トコフェロール、エデト酸ナトリウム、アスコルビン酸、イソプロピルガレート等)、溶解補助剤(アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、各種植物油、各種動物油、炭化水素類等)、代謝賦活剤(パンテノール等)、高分子(カルボキシビニルポリマー等)、粘着剤、香料、清涼化剤(メントール、ハッカ油、カンフル等)、及び染料等の通常使用される成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0020】
本発明の液剤の調製は、常法に従い、上記各成分を配合することにより調製される。この場合、液剤のpHは、5〜9の範囲とすることが好ましい。
【0021】
かくして得られる本発明の液剤は、ローション剤、エアゾール剤、トニック剤等の適当な外用液剤、より具体的には頭髪用剤、皮膚適用製剤等として使用することができる。
【0022】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例等により何ら制約されるものではない。
【実施例】
【0023】
実施例1
ミノキシジル5g、塩化カルプロニウム2g、1,3−ブチレングリコール10g、ジブチルヒドロキシトルエン0.2g及びエタノール60gを混合し、リン酸を適量添加しpHを6に調整した後、精製水を加えて100mLとし、液剤を得た。
【0024】
比較例1
ミノキシジル5g、塩化カルプロニウム2g、1,3−ブチレングリコール10g及びエタノール60gを混合し、リン酸を適量添加しpHを6に調整した後、精製水を加えて100mLとし、液剤を得た。
【0025】
比較例2
ミノキシジル5g、塩化カルプロニウム2g、1,3−ブチレングリコール10g、ジブチルヒドロキシトルエン0.2g及びエタノール60gを混合し、塩酸を適量添加しpHを6に調整した後、精製水を加えて100mLとし、液剤を得た。
【0026】
試験例1
実施例1、比較例1〜2の液剤を使用し、これをプラスチック製容器に充填してサンプルとした。このサンプルを50℃にて2箇月間静置後、外観の確認及び波長420nmにてその吸光度を測定した。結果を表1に示した。
【0027】
試験例2
実施例1、比較例2の液剤を使用し、これをプラスチック製容器に充填してサンプルとした。このサンプルを5℃にて5日間静置後、結晶析出性を観察した。結果を表2に示した。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
表2から明らかなように、液剤に対して5w/v%以上のミノキシジルと塩化カルプロニウム、及びジブチルヒドロキシトルエンを配合した処方に対して、塩酸を配合した処方では結晶の析出が見られるが、リン酸を使用することで結晶の析出を防止することができた。また表1から明らかなように、ジブチルヒドロキシトルエンを配合しないと液剤が経時的に着色してしまうが、ジブチルヒドロキシトルエンの配合量を一定にした場合には、塩酸を配合するより、リン酸を配合する方が、液剤の経時的着色を抑える効果が大きいことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明により、液剤に対して5w/v%以上のミノキシジルと塩化カルプロニウム又はその水和物を同時に含有することにより生じる経時的着色、及び結晶の析出を抑制して保存安定性を改善することができたので、外用液剤として医薬品などに使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)液剤に対して5w/v%以上のミノキシジル、b)塩化カルプロニウム又はその水和物、c)ジブチルヒドロキシトルエン、及びd)リン酸またはその塩、を含有する液剤。
【請求項2】
外用液剤である請求項1に記載の液剤。
【請求項3】
a)液剤に対して5w/v%以上のミノキシジル、及びb)塩化カルプロニウム又はその水和物を含有した液剤に対して、c)ジブチルヒドロキシトルエン、及びd)リン酸またはその塩、を配合して、該液剤の着色及び結晶析出を防止する方法。

【公開番号】特開2010−18555(P2010−18555A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180810(P2008−180810)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【Fターム(参考)】