説明

ミラーユニット

【課題】 取付部と被取付部との位置精度にバラツキが生じた場合であっても、取付部が被取付部の内部にてスムーズに回転し、反射ミラーの回転動作に悪影響を与える虞のないミラーユニットを提供する。
【解決手段】 樹脂からなる基板43の前面部44に反射膜44aが形成された反射ミラーである凹面鏡41を少なくとも有し、基板43の一側面部46に凹面鏡41をハウジング50に設けられた被取付部54aに取り付けるための取付部47を設け、取付部47には、取付部47が被取付部54aに取り付けられた際に、取付部47に作用する応力を吸収する応力吸収部47aが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ等の表示装置に用いられるミラーユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、表示光を反射させる反射ミラーを有するミラーユニットを用いた表示装置としては、ヘッドアップディスプレイがあり、例えば特許文献1に開示されている。かかる特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイは、車両のインストルメントパネル(以下、インパネと言う)内部に取り付けられており、表示装置が発する表示光を車両のフロントガラス(投影部材)に投影し、車両の利用者(運転者)に対し虚像を表示するものである。
【0003】
前述した表示装置は、光源と、この光源の発光に伴い表示光を発する表示器と、この表示器が発する表示光をフロントガラス側に反射させるためのミラーユニットと、光源と表示器とミラーユニットとを収容する収納部及びミラーユニット(前記反射ミラー)によって反射された表示光を透過させる透光部を有する合成樹脂からなるハウジングとから主に構成されており、反射ミラーによって反射された表示光を前記透光部を通じてフロントガラスに投影し、虚像を表示するものである。
【0004】
そして、表示装置の一構成部品であるミラーユニットは、反射ミラーである凹面鏡と、この凹面鏡を所定の回転軸線を中心として回転駆動させ、凹面鏡の傾斜角度を調整する駆動手段とを有し、この場合、駆動手段はステッピングモータと、このステッピングモータの駆動軸先端に装着される出力ギヤとから構成され、適宜固定手段を用いてハウジングに固定されている。
【0005】
凹面鏡は、その母材となる基板と、この基板の前面部(表示器と向かい合う面)に形成された反射膜とを備えている。基板は、所定の板厚を有するポリカーボネート等の合成樹脂からなり、略矩形状に形成され、その前面部と前面部とは反対側となる背面部とが所定の曲率を有する凹状の曲面をなすように成形される。
【0006】
また、この場合、基板の長手方向と直交する方向の側面箇所となる基板の両側面部には、円柱形状からなる軸部がそれぞれ突出形成され、さらにこれら2つの軸部のうち一方の軸部先端には歯車部が設けられている。2つの軸部は、その軸線がともに前記回転軸線に一致するように両側面部から外方に向けて突出形成され、歯車部は、ステッピングモータの駆動軸先端に装着された出力ギヤと噛み合うように基板に一体形成されている。
【0007】
なお、2つの軸部のうち歯車部の形成されない他方の軸部(取付部)は、ハウジングに設けられた窪み形状からなる被取付部に取り付けられることで、ミラーユニットがハウジングに装着される。このとき、窪み形状からなる被取付部の開口寸法は、他方の軸部の径寸法と略等しくなっている。
【0008】
一方、反射膜は、アルミニウム等の金属からなり、蒸着法等の手段により基板の前面部に形成される。従って、反射膜形成後の凹面鏡の前面部は、凹状の曲面(つまり凹面)からなる反射面となる。このように基板の前面部に反射膜が形成された凹面鏡は、表示器が発した表示光を拡大し、この拡大された表示光を前記透光部を通じてフロントガラスに投射する機能を有する。
【0009】
そして、ステッピングモータが駆動すると、ステッピングモータによる駆動力が、出力ギヤを介して歯車部に伝達する。かかる歯車部への動力(駆動力)の伝達に伴い、歯車部が軸部の軸線(つまり前記回転軸線)を中心として回転し、これにより凹面鏡が、前記回転軸線を中心として所定角度だけ回転する構成となっている。このように凹面鏡の傾斜角度が変化することで、表示光のフロントガラスに対する投射方向を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−278100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した特許文献1に記載の表示装置に備えられるミラーユニットの場合、凹面鏡(反射ミラー)の母材となる基板の一側面部に設けられた円柱形状からなる前記他方の軸部(取付部)が、ハウジングに設けられた窪み形状からなるとともに前記他方の軸部の径寸法と略等しい開口寸法を有する被取付部に取り付けられることで、凹面鏡が前記回転軸線を中心として所定角度だけ回転できるようにミラーユニットをハウジングに装着した構成となっている。
【0012】
ところで、凹面鏡の母材である基板や表示装置の外装ケースを構成するハウジングは、ともに合成樹脂材料からなり、射出成形によって成形されることから、基板やハウジング成形時の成形誤差に起因して、基板の一側面部に設けられた前記他方の軸部(取付部)が、相手側となるハウジングに設けられた被取付部にぴったり嵌らず、前記他方の軸部における外周部の一部が、被取付部の内壁部を押し付けるように前記他方の軸部が被取付部に組み付けられてしまう場合があった。
【0013】
このように、成形誤差に伴う前記他方の軸部(取付部)と被取付部との位置精度のバラツキによって、前記他方の軸部における外周部の一部が被取付部の内壁部を押し付けるように前記他方の軸部が被取付部に組み付けられてしまうと、前記他方の軸部には本来は働くべきではない不慮の応力が作用し、これにより反射ミラーの回転動作時に、前記他方の軸部は、その前記外周部が被取付部の内壁部と接触しながら被取付部の内部を回転移動することになるため、前記他方の軸部の被取付部内でのスムーズな回転が阻害され、反射ミラーの回転動作に悪影響を与えてしまうという問題点があり、この点で更なる改良の余地が残されていた。
そこで本発明は、前述の課題に対して対処するため、取付部と被取付部との位置精度にバラツキが生じた場合であっても、取付部が被取付部の内部にてスムーズに回転し、反射ミラーの回転動作に悪影響を与える虞のないミラーユニットの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、樹脂からなる基板の前面部に反射膜が形成された反射ミラーを少なくとも有し、前記前面部を除いた前記基板の所定箇所に前記反射ミラーを被取付部に取り付けるための取付部を設け、前記取付部には、前記取付部が前記被取付部に取り付けられた際に、前記取付部に作用する応力を吸収する応力吸収部が設けられてなることを特徴とする。
【0015】
また本発明は、樹脂からなる基板の前面部に反射膜が形成された反射ミラーと、前記反射ミラーを保持する保持部材とを少なくとも有し、前記基板との当接箇所を除いた前記保持部材の所定箇所に前記保持部材を被取付部に取り付けるための取付部を設け、前記取付部には、前記取付部が前記被取付部に取り付けられた際に、前記取付部に作用する応力を吸収する応力吸収部が設けられてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、初期の目的を達成でき、取付部と被取付部との位置精度にバラツキが生じた場合であっても、取付部が被取付部の内部にてスムーズに回転し、反射ミラーの回転動作に悪影響を与える虞のないミラーユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態によるヘッドアップディスプレイの概略図。
【図2】同実施形態による表示装置の断面図。
【図3】図2中、ミラーユニットを拡大して示す図。
【図4】図2中、矢印A方向から見たときの反射ミラーの正面図。
【図5】図4のB−B断面図。
【図6】同実施形態の変形例によるミラーユニットの断面図。
【図7】本発明の第2実施形態によるミラーユニットの断面図。
【図8】本発明の第3実施形態によるミラーユニットの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)以下、図1〜図5に基づいて、本発明のミラーユニットを車両用のヘッドアップディスプレイに適用した一実施形態を説明する。
【0019】
ヘッドアップディスプレイは、図1に示すように車両10のインパネ11内部に配設された表示ユニットである表示装置12が投射する表示光Lを投影部材である車両10のフロントガラス13で車両10の運転者(利用者)14の方向に反射させ、虚像Vの表示を行うものである。換言すれば、ヘッドアップディスプレイは、表示装置12の後述する液晶表示器から発せられる表示光Lをフロントガラス13(前記投影部材)に出射(投射)し、この出射によって得られた表示像(虚像)Vを運転者14に視認させるものである。これにより運転者14は、運転席前方に表示される虚像Vを風景と重畳させて観察することができる。
【0020】
表示装置12は、図2に示すように液晶表示器20と、第1反射器30と、ミラーユニットである第2反射器40と、ハウジング50とから主に構成されている。
【0021】
液晶表示器20は、配線基板Hに実装された発光ダイオードからなる光源21と、この光源21からの照明光を透過して表示光Lを形成するように光源21の前方側(真上)に位置するTFT型の液晶表示素子22とから主に構成される。このことは、液晶表示素子22の背後(直下)に光源21が配設され、液晶表示素子22は、光源21から発せられる光により、所定情報(後述する表示すべき情報)を表示することを意味している。かかる液晶表示器20は、表示光Lの出射側の面が第1反射器30の後述するコールドミラーに対向するようにしてハウジング50内に設けられ、表示光Lの光軸が前記コールドミラーに交わるような位置や向きにて固定保持される。
【0022】
また液晶表示素子22は、図示しない素子駆動回路によって表示すべき情報(例えば車両の速度やエンジン回転数)を、数値等で発光表示する。液晶表示器20は、可視波長域の光からなる表示光Lを出力するもので、例えば赤色光(主に発光波長域610〜640nm)を発する光源21を適用することができる。なお、前記表示すべき情報は、車両の速度やエンジン回転数に限らず、あらゆる表示形態を採用できることは言うまでもない。
【0023】
第1反射器30は、コールドミラー31と、このコールドミラー31を所定の固定手段を用いて取付固定するための固定部材32とを有している。コールドミラー31は、略矩形状のガラス基板31aと、このガラス基板31aの片面(第2反射器40の後述する凹面鏡と向かい合う面)に形成された反射層31bとからなるものである。かかる反射層31bは、膜厚が異なる多層の干渉膜からなるものであり、蒸着等の方法で形成されている。また、コールドミラー31は、液晶表示器20(液晶表示素子22)が発した表示光Lを、第2反射器40(前記凹面鏡)側へ反射させるような位置に傾斜状態にて配設される。
【0024】
なお、コールドミラー31は、液晶表示器20の発光波長域を含む可視波長域(450〜750nm)の光を高い反射率(例えば80%以上)で反射し、前記可視波長域以外の光を低い反射率で反射するものである。この場合、コールドミラー31は、前記可視波長域以外の特に赤外波長域の光(赤外線あるいは太陽光の熱線)を低い反射率(例えば15%以下)にて反射するものが適用される。なお、反射層31bにて反射されない光は、コールドミラー31を透過するように構成される。また固定部材32は、合成樹脂材料からなり、ハウジング50に固定されてなる。
【0025】
ミラーユニットである第2反射器40は、図3に詳しく示すように、コールドミラー31からの表示光Lを反射させるべく、ハウジング50内に傾斜するように配設された反射ミラーである凹面鏡41と、この凹面鏡41を回転駆動させ、凹面鏡41の傾斜角度を調整する駆動手段42とを備えている。
【0026】
凹面鏡41は、樹脂(例えばポリカーボネート)からなる基板43と、この基板43の前面部44(つまりコールドミラー31の反射層31bと向かい合う面)に蒸着形成されるアルミニウム等の金属からなる反射膜44aとを備え、前面部44並びに前面部44とは反対側に位置する基板43の背面部45は、ともに所定の曲率を有する凹状の曲面(凹面)となっている。なお、この場合、基板43は、射出成形によって成形される。
【0027】
従って、この凹面として形成された基板43の前面部44に反射膜44aが形成されると、前面部44は、コールドミラー31からの表示光Lをハウジング50の後述する透光性カバー側へ反射させるための光反射面となる。なお、凹面鏡41は、反射膜44aの形成された前面部44(つまり前記光反射面)がコールドミラー31並びに前記透光性カバーに対向し、前記透光性カバーから臨める位置に傾斜状態にて配設される。
【0028】
また、基板43の前面部44に反射膜44aが形成された凹面鏡41は、コールドミラー31からの表示光Lを拡大しつつ、前記透光性カバー(車両10のフロントガラス13)側へ反射(投射)させるものである。このことは、凹面鏡41が、コールドミラー31によって反射された表示光Lを拡大し、この拡大された表示光Lを前記透光性カバーを通じてフロントガラス13に投射することを意味している。
【0029】
ところで、図4は、図2中、矢印A方向から見たときの凹面鏡41の正面図を示したものである。この場合、凹面鏡41を正視したときの凹面鏡41の外形形状は、図4に示すように略矩形状に形成され、凹面鏡41の母材となる基板43の長手方向と直交する方向の一側面箇所(具体的には基板43の上下左右にある4つの側面部46のうち、図4中、左方に位置する側面部46)の略中央部には、この側面部46から外方に向けて略円柱形状からなる取付部である第1の軸部47が突出形成されている。
【0030】
かかる第1の軸部47は、その先端部が射出成形によって成形されるハウジング50に設けられた後述する被取付部に取り付けられる。また、前記先端部を除いた第1の軸部47の所定箇所(例えば第1の軸部47の略中央部)には、肉薄に形成された略U字形状の弾性片からなる応力吸収部47aが設けられている(図5参照)。
【0031】
かかる応力吸収部47aは、例えば基板43やハウジング50成形時の成形誤差に伴う第1の軸部47と前記被取付部との位置精度のバラツキによって、第1の軸部47の外周部の一部が前記被取付部の内壁部を押し付けるように第1の軸部47が前記被取付部に取り付けられたときに、第1の軸部47の前記所定箇所に作用する応力を緩和(吸収)する機能を有している。
【0032】
また、4つの側面部46のうち、図4中、右方に位置する側面部46の略中央部には、第1の軸部47と対をなすように略円柱状の第2の軸部48が突出形成され、この第2の軸部48の先端側には駆動手段42に備えられる後述する出力ギヤに噛み合う歯車部48aが一体形成されている。なお、この場合、各軸部47、48の中心軸線は、図5に示すように、凹面鏡41が駆動手段42からの駆動力を受けて回転駆動する際の凹面鏡41の回転軸線RAと一致しているものとする。
【0033】
また、各軸部47、48は、反射膜44aの形成される基板43の前面部44から所定距離だけ離れた位置となる側面部46箇所、この場合、前面部44から数ミリ程度下側となる側面部46の略中央部領域に設けられてなる。このように各軸部47、48を前面部44から離れた位置となる側面部46の略中央部領域に設けることで、基板43の射出成形時に各軸部47、48付近となる前面部44箇所に生じる歪みが防止され、前面部44に歪み変形のない基板43を得ることができるというメリットがある。
【0034】
一方、駆動手段42は、通電により駆動力を発生するステッピングモータ42aと、このステッピングモータ42aの駆動軸42b先端に装着される出力ギヤ42cとを備え、この出力ギヤ42cと第2の軸部48先端に装着された歯車部48aとが噛み合うようになっている。
【0035】
なお、詳細図示は省略するが、必要に応じて第2の軸部48(例えば歯車部48aの配設位置を除いた第2の軸部48箇所)に前述した応力吸収部47aに相当する応力吸収部を設けてもよい。かかる第2の軸部48に設けた応力吸収部は、例えば出力ギヤ42cや歯車部48aの位置精度のバラツキに伴い第2の軸部48に作用する応力を緩和(吸収)する機能を有する。
【0036】
また、この場合、図5に示すように、ハウジング50に一体形成された後述する支持体が、駆動手段42の主要部を構成するステッピングモータ42aを不動状態に固定支持している。つまり、第2の軸部48は、その先端に装着される歯車部48aと、この歯車部48aに噛み合い固定される出力ギヤ42cを備えた駆動手段42とを通じてハウジング50に固定される構成となる。
【0037】
ハウジング50は、例えば黒色の遮光性合成樹脂材料からなり、略箱型形状に形成され、その内部空間である空間部51に液晶表示器20や第1、第2反射器30、40を保持して収容するものであり、第2反射器40における凹面鏡41の配設位置の上部(フロントガラス13側)が開口する開口窓部52を備えてなる。
【0038】
またハウジング50には、開口窓部52を塞ぐように透光部である透光性カバー53が配設されてなる。かかる透光性カバー53は、透光性の合成樹脂材料(例えばアクリル樹脂)からなり、湾曲形状(曲面形状)に形成され、凹面鏡41で反射された表示光Lが透過(通過)する光透過性部材としての機能を有している。つまり、凹面鏡41によって反射された表示光Lは、ハウジング50に形成された透光性カバー53を通じてフロントガラス13に投影され、これにより虚像Vの表示が運転者14に対し行われることになる。
【0039】
さらに、この場合、ハウジング50には、空間部51側(第2反射器40側)に向けてボス部54と支持体55とが一体形成されており(図5参照)、ボス部54は、凸部形状からなり、その先端部には取付部である第1の軸部47を取り付ける(軸支する)ための窪み形状からなる軸支部としての被取付部54aが設けられている。かかる被取付部54aの開口寸法は、第1の軸部47の径寸法と略等しくなっている。また支持体55は、ボス部形状からなり、その先端部にてステッピングモータ42aを載置してなる。
【0040】
ここで、ハウジング50と、反射ミラー41の母材である基板43とに着目した場合、前面部44を除いた基板43の所定箇所である基板43の側面部46には、反射膜44a形成後の基板43(つまり反射ミラー41)をハウジング50に設けられた被取付部54aに取り付けるための取付部である第1の軸部47が設けられている。具体的には、第1の軸部47が、ハウジング50に形成された軸支部としての凹部形状からなる被取付部54aに軸受け支持され、これにより反射ミラー41がハウジング50に取り付けられる状態となる。
【0041】
そして、反射ミラー41がハウジング50に取り付けられた状態で、ステッピングモータ42aが駆動すると、ステッピングモータ42による駆動力が、出力ギヤ42cを介して歯車部48aに伝達する。かかる歯車部48aへの動力(駆動力)の伝達に伴い、歯車部48aが回転軸線RAを中心として回転し、これにより凹面鏡41が、回転軸線RAを中心として所定角度だけ回転(回動)する構成となっている。
【0042】
この際、第1の軸部47や被取付部54aの前記位置精度のバラツキによって、第1の軸部47における前記先端部の外周部の一部が被取付部54aの内壁部と接触しながら、第1の軸部47の前記先端部が被取付部54aの内部を回転移動し、第1の軸部47に不要な応力が加わった場合には、応力吸収部47a自体が変形する。この変形により不要な応力が吸収されるため、第1の軸部47の前記先端部を被取付部54a内にて従来よりもスムーズに回転させることができ、凹面鏡41の回転動作に悪影響を与える虞がなくなる。
【0043】
以上のように本実施形態では、樹脂からなる基板43の前面部44に反射膜44aが形成された凹面鏡41を少なくとも有し、前面部44を除いた基板43の所定箇所である基板43の側面部46に凹面鏡41をハウジング50に設けられた被取付部54aに取り付けるための取付部である第1の軸部47を設け、この第1の軸部47には、第1の軸部47が被取付部54aに取り付けられた際に、第1の軸部47に作用する応力を吸収する応力吸収部47aが設けられているものである。
【0044】
従って、第1の軸部47や被取付部54aの前記位置精度にバラツキが生じ、第1の軸部47を被取付部54aに組み付けた際に第1の軸部47に本来不要な応力が加わった場合であっても、この不要な応力が応力吸収部47a自体の変形によって吸収されるため、第1の軸部47の前記先端部を被取付部54a内にて従来よりもスムーズに回転させることができ、凹面鏡41の回転動作に悪影響を与える虞がなくなる。
【0045】
また本実施形態では、応力吸収部47aが略U字形状の肉薄弾性片にて形成されている例について説明したが、応力吸収部47aの形状は前記位置精度のバラツキに伴い第1の軸部47を被取付部54aに組み付けた際に第1の軸部47に発生する不要な応力を吸収可能な形状であればあらゆる形状を採用することができ、例えば本実施形態の変形例として図6に示すように第1の軸部47の略中央部にV字状の切り欠き部を設け、この切り欠き部に対応する第1の軸部47箇所を応力吸収部47aとする構成としてもよい。なお、応力吸収部47aの剛性は、応力吸収部47aを除いた第1の軸部47箇所の剛性よりも低くなっていることが望ましい。
【0046】
(第2実施形態)次に、本発明の第2実施形態を図7に基づいて説明するが、前述の第1実施形態と同一もしくは相当個所には同一の符号を用いてその詳細な説明は省略する。この第2実施形態においては、前面部44を除いた基板43の所定箇所である基板43の背面部45に前記第1実施形態にて採用した第1の軸部(取付部)47に相当する第1の軸部49を設け、この第1の軸部49がハウジング50に一体形成されたボス部56の被取付部56aに取り付けられた構成となっている。
【0047】
第1の軸部49は、図7に示すように背面部45の左端側から第2の軸部48の突出方向とは逆方向に向けて突出形成された略円柱形状の突出部からなり、その軸線方向は、第2の軸部48(またはステッピングモータ42aの駆動軸42b)の軸線方向と略平行となっている。また、第1の軸部49の略中央部には前記第1実施形態にて採用した応力吸収部47aと同一形状、同一機能を有する応力吸収部49aが設けられている。
【0048】
またハウジング50には、前記第1実施形態にて採用したボス部54と略同一形状をなすボス部56が凹面鏡41側に向けて一体形成されており、このボス部56の先端に設けられた窪み形状からなる軸支部としての被取付部56aに第1の軸部49が軸支された構成となっている。
【0049】
かかる第2実施形態によれば、前記第1実施形態と同様に第1の軸部49や被取付部56aの位置精度にバラツキが生じ、第1の軸部49を被取付部56aに組み付けた際に第1の軸部49に本来不要な応力が加わった場合であっても、この不要な応力が応力吸収部49a自体の変形によって吸収されるため、第1の軸部49の先端部を被取付部56a内にてスムーズに回転させることができ、凹面鏡41の回転動作に悪影響を与える虞がなくなる。
【0050】
(第3実施形態)次に、本発明の第3実施形態を図8に基づいて説明するが、前述の第1実施形態と同一もしくは相当個所には同一の符号を用いてその詳細な説明は省略する。この第3実施形態においては、凹面鏡41を保持する略矩形状の合成樹脂からなるミラーホルダ(保持部材)60を設け、この射出成形によって成形されるミラーホルダ60における4つの側面部61のうち1つの側面部61(例えば図8中、左方に位置する一側面部61)に前記第1実施形態にて採用した第1の軸部47に相当する第1の軸部(取付部)62を設けるとともに図8中、右方に位置する一側面部61に前記第1実施形態にて採用した第2の軸部48に相当する第2の軸部63を設けた構成となっている。
【0051】
そして、第1の軸部62は、その先端部がボス部54に設けられた被取付部54aに取り付けられるとともに、この先端部を除いた第1の軸部62の所定箇所(例えば第1の軸部62の略中央部)には、前記第1実施形態にて採用した応力吸収部47aと同一形状、同一機能を有する応力吸収部62aが設けられている。また第2の軸部63の先端側には、前記第1実施形態にて採用した歯車部48aに相当する歯車部63aが一体形成されている。
【0052】
なお、この場合、基板43との当接箇所であるミラーホルダ60の前面部、並びにこの前面部とは反対側となるミラーホルダ60の背面部は、ともに凹面形状となっており、またミラーホルダ60は、所定の固着手段を用いて基板43(凹面鏡41)に固着されている。
【0053】
かかる第3実施形態によれば、凹面鏡41を保持するミラーホルダ60を備え、基板43との当接箇所を除いたミラーホルダ60の所定箇所であるミラーホルダ60の側面部61に、ミラーホルダ60をボス部54aの被取付部54aに取り付けるための取付部である第1の軸部62を設け、第1の軸部62には、第1の軸部62が被取付部54aに取り付けられた際に、第1の軸部62に作用する応力を吸収する応力吸収部62aが設けられている。
【0054】
従って、凹面鏡41を保持するように凹面鏡41とは別部材にて形成されたミラーホルダ60並びにハウジング50の成形誤差によって第1の軸部62や被取付部54aの位置精度にバラツキが生じ、第1の軸部62を被取付部54aに組み付けた際に第1の軸部62に本来不要な応力が加わった場合であっても、この不要な応力が応力吸収部62a自体の変形によって吸収されるため、第1の軸部62の先端部を被取付部54a内にてスムーズに回転させることができ、前記第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0055】
また本第3実施形態では、ミラーホルダ60の一側面部61に第1の軸部62が突出形成されている例について説明したが、例えば第3実施形態と前記第2実施形態とを組み合わせた構成、つまり詳細図示は省略するが基板43との当接箇所を除いたミラーホルダ60の所定箇所であるミラーホルダ60の背面部左端側に、第2の軸部63の突出方向とは逆方向に向けて突出するように第1の軸部を設け、この第1の軸部がハウジングに設けられた被取付部に取り付けられる構成としてもよい。
【0056】
また前記各実施形態では、反射ミラーとして凹面鏡41を採用した例について説明したが、例えば凹面鏡41に代えて、凸面鏡や平面鏡を採用してもよい。
【0057】
なお前記各実施形態では、液晶表示素子22から発せられる表示光Lが、フロントガラス13に投射される例について説明したが、例えばフロントガラス13に表示光Lを良好に運転者14方向に反射させるコンバイナフィルムを設けてもよいし、あるいはフロントガラス13とは別の専用の反射体に表示光Lを投射する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0058】
12 表示装置
20 液晶表示器
30 第1反射器
40 第2反射器(ミラーユニット)
41 凹面鏡(反射ミラー)
42 駆動手段
42a ステッピングモータ
42c 出力ギヤ
43 基板
44 前面部(第1の凹面)
44a 反射膜
45 背面部(第2の凹面)
46、61 側面部
47、49、62 第1の軸部(取付部)
47a、49a、62a 応力吸収部
48、63 第2の軸部
48a、63a 歯車部
50 ハウジング
54、56 ボス部
54a、56a 被取付部
55 支持体
60 ミラーホルダ(保持部材)
L 表示光
RA 回転軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂からなる基板の前面部に反射膜が形成された反射ミラーを少なくとも有し、
前記前面部を除いた前記基板の所定箇所に前記反射ミラーを被取付部に取り付けるための取付部を設け、
前記取付部には、前記取付部が前記被取付部に取り付けられた際に、前記取付部に作用する応力を吸収する応力吸収部が設けられてなることを特徴とするミラーユニット。
【請求項2】
樹脂からなる基板の前面部に反射膜が形成された反射ミラーと、前記反射ミラーを保持する保持部材とを少なくとも有し、
前記基板との当接箇所を除いた前記保持部材の所定箇所に前記保持部材を被取付部に取り付けるための取付部を設け、
前記取付部には、前記取付部が前記被取付部に取り付けられた際に、前記取付部に作用する応力を吸収する応力吸収部が設けられてなることを特徴とするミラーユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−133244(P2012−133244A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286782(P2010−286782)
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】