説明

ミリメートル波信号を変調および復調する方法ならびに方法

システムは、光プロセッサを含む。光プロセッサは、側波帯発生器と、光フィルタと、位相シフト・キーイング(PSK)変調器とを含む。側波帯発生器は、光信号のキャリア周波数を中心とする光周波数側波帯を発生する。光フィルタは、光ミリメートル波信号を発生するために対象の光側波帯を用いることができるように、前記光周波数側波帯と前記光キャリア周波数との間で弁別する。PSK変調器は、光スプリッタと、光位相遅延ユニットと、2つ以上の光ゲートと、光コンバイナとを含む。光スプリッタは、前記光ミリメートル波信号を2つ以上の中間信号に分割する。光位相遅延ユニットは、各中間信号が残りの中間信号に対して別個の位相関係を有するように、前記中間信号の内1つ以上を遅延させる。光ゲートは、制御入力に基づいて、相対的に高い振幅と相対的に低い振幅との間で各中間信号を個々に変調する。光コンバイナは、前記ゲートされた中間信号を組み合わせて、1つのPSK変調光ミリメートル波信号を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ミリメートル波信号を変調および復調する方法ならびにシステムに関する。更に特定すれば、本開示は、光ミリメートル波信号を変調するように動作可能なフォトニック・デバイス(photonic device)および電気ミリメートル波信号を復調するように動作可能な電気デバイスに関与する。
【従来技術】
【0002】
限定ではなく、例示として、高周波信号の発生および変調に対する関心が高まりつつある。例えば、本発明者は、THzスペクトル(0.1から10THz)における信号が、撮像用途およびワイヤレス用途において重大な利用価値を見出す可能性があると考えている。撮像では、THzスペクトルは、壁、カーゴ・コンテナ、およびその他の可視障壁を貫通する高い分解能の撮像を提供することができる。これらの高周波信号上への変調は、分解能を高めることができ、所望のターゲットをクラッタから分離する能力を設けることができると考えられる。ワイヤレス・データ通信では、THzスペクトルによって、非圧縮高品位テレビジョン・チャネルの送信のために、超高データ伝送(10Gb/s)が可能になると見られる。THzスペクトルには、未だ発見されていないものも含めて、他の使用も考えられている。しかしながら、コヒーレントなTHzおよびその他の高周波信号の発生および変調のためのシステムを設計しようとする者には、重大な設計上の課題が直面する。
【0003】
例えば、ミリメートル波キャリア周波数(30GHzから300GHz)は、高データ・レートを達成するのに前途有望な手法を提供する。70GHzで動作する商用ミリメートル波システムは、1Gb/sのレートでデータ・リンクを復調している。これらのデータ・レートは、このキャリア周波数で期待されていた程には高くない。何故なら、ミリメートル波ソースは、従前より直接変調されておらず、変わりに、それよりも低い中間周波数において変調が行われるからである。一般に、中間周波数(典型的に11GHz)では、データ・レートは約10パーセントに、約1Gb/sに制限される。
【0004】
公開特許出願US2008/0199124A1において紹介されているような、ミリメートル波信号を発生および変調する光学的手法では、光キャリア上で変調を実行し、10Gb/sを超えるデータ・レートを容易に扱うことができる。今日まで、これらの光学的手法は、オン−オフ・キーイング変調方式(on-off keying modulation scheme)を用いている。しかしながら、オン−オフ・キーイング変調は、スペクトル効率が高くなく、データ・レートのビット/秒毎に約1Hzの帯域幅を消費する。例えば、約100GHzのミリメートル波キャリアに対する10Gb/s(ギガビット/秒)のワイヤレス・データ・レートは、通例、10GHzの帯域幅を占有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、ディジタル・データ送信のスペクトル効率を高めるための努力において、ミリメートル波キャリア上での位相および/または振幅変調を行うための電気光学変調器の使用に関する。直角位相シフト・キーイング(quadrature phase shift keying)のような位相変調技法は、スペクトル効率が高いことが示されており、スペクトル効率が2、即ち、1Hzの帯域幅が2ビット/秒のデータを含む。位相変調技法および直角振幅変調(QAM)のような振幅変調技法の組み合わせにより、更に一層高いスペクトル効率を提供することができる。
【0006】
本開示は、ミリメートル波発生および変調のフォトニック手法を、ミリメートル波の振幅および位相双方を制御するために用いることができることを示す。これによって、高次の位相変調およびQAMを行うことができるようになる。これらは双方共、スペクトル効率が高い。スペクトル効率が高い変調方式は、標準的なオン−オフ・キーイング変調手法よりも消費する帯域幅が少なくて済む。
【0007】
典型的な経験法則では、キャリア周波数はその帯域幅の10パーセントをデータのために用いることができることが示唆されている。言い換えると、10GHzキャリアは1Gb/sでデータを送信するために用いることができ、100GHzキャリアは10Gb/sでデータを送信するために用いることができる等となる。スペクトル効率が高いコーディングによって、許容帯域幅内により多くのビットを収容することが可能になる。一例として、直角位相シフト・キーイング(QPSK)は、ヘルツ当たり2ビット/秒のスペクトル効率を有し、10GHzの帯域幅内に20Gb/sをエンコードすることができる。直角振幅変調(QAM)のような更に効率的なコーディング方法では、同じ帯域幅内において更に高いデータ・レートを得ることができる。
【0008】
変調ミリメートル波信号の発生に加えて、その中に含まれるエンコード・データを再現するために、受信時にこのような信号を復調することも望まれる。位相シフト・キーイング(PSK変調)ミリメートル波信号を復調するように設計されている多くの受信機は、位相ロック・ループ(PLL)回路を用いることが多い。位相ロック・ループは、変調ミリメートル波信号の位相を検出することができるように、キャリア周波数に同期しそれに「ロックする」。しかしながら、ミリメートル波周波数(例えば、70GHz)でPLLを設計することは、困難であり比較的費用が嵩む可能性がある。したがって、PLLを必要とせずに、位相変調ミリメートル波信号を復調することができる受信機の設計が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、システムは光プロセッサを備えている。光プロセッサは、側波帯発生器と、光フィルタと、位相シフト・キーイング(PSK)変調器とを含み、側波帯発生器が、光信号のキャリア周波数を中心とする光周波数側波帯を発生するように構成されており、光フィルタが、光ミリメートル波信号を発生するために対象の光側波帯を用いることができるように、光周波数側波帯と光キャリア周波数との間で弁別するように構成されており、PSK変調器が、光スプリッタと、光位相遅延ユニットと、2つ以上の光ゲートと、光コンバイナとを含み、光スプリッタが、光ミリメートル波信号を2つ以上の中間信号に分割するように構成されており、光位相遅延ユニットが、各中間信号が残りの中間信号に対して別個の位相関係を有するように、中間信号の内1つ以上を遅延させるように構成されており、光ゲートが、制御入力に基づいて、相対的に高い振幅と相対的に低い振幅との間で各中間信号を個々に変調するように構成されており、光コンバイナが、ゲートされた中間信号を組み合わせて、1つのPSK変調光ミリメートル波信号を得るように構成されている。
【0010】
本発明の他の実施形態によれば、PSK変調電気ミリメートル波信号Aを復調する受信機は、信号調整モジュールと、移相モジュールと、弁別モジュールとを備えている。信号調整モジュールが、ミリメートル波信号Aを受信し、ミリメートル波信号にエンコードされているデータのシンボル遅延に遅延が対応するように、遅延ミリメートル波信号Bを発生し、移相モジュールが、移相ミリメートル波信号Aを生成するように、ミリメートル波信号Aの位相をシフトし、移相モジュールが、移相遅延ミリメートル波信号Bを生成するように、遅延ミリメートル波信号Bの位相をシフトし、弁別モジュールがAおよびBの位相を比較し、BおよびAの位相を比較し、これら2つの比較に基づいて4つの出力を発生し、各出力が、当該出力の相対的振幅がAのBに対する位相に対応するように、ミリメートル波信号の位相の内1つと関連している。
【0011】
本発明の更に別の実施形態によれば、データをミリメートル波信号によって送信する方法は、光信号のキャリア周波数を中心とする光周波数側波帯を発生するステップと、光ミリメートル波信号を発生するために、光周波数側波帯と光キャリア周波数との間で弁別するステップと、光ミリメートル波信号を2つ以上の中間信号に分割するステップと、各中間信号が残りの中間信号に対して別個の位相関係を有するように、中間信号の内1つ以上を遅延させるステップと、中間信号の1つが相対的に高い振幅を有し、残りの中間信号が相対的に低い振幅を有するように、制御入力に基づいて、中間信号を変調するステップと、中間信号を再度組み合わせて、1つの位相変調光ミリメートル波信号を得るステップとを備えている。
【0012】
図面に示す実施形態は、その本質上例示的(illustrative and exemplary)であり、特許請求の範囲によって定められる発明を限定することを意図するのではない。例示的な実施形態の以下の詳細な説明は、以下の図面と合わせて読むと理解することができる。図面においては、同様の構造は同様の参照番号で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本開示の一実施形態によるシステムの模式図である。
【図2】図2は、本開示の一実施形態による受信機の模式図である。
【図3A】図3Aは、本開示の一実施形態による指向性カプラの模式図である。
【図3B】図3Bは、本開示の一実施形態による指向性カプラの入力/出力関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において記載する実施形態は、一般的に、ミリメートル波信号を変調および復調する方法ならびにシステムに関する。光ミリメートル(MMW)信号の位相および/または振幅を変調するために、フォトニック・デバイスを用いることができる。信号調整モジュール、遅延モジュール、および弁別モジュールを備えている受信機を、電気MMW信号を復調するために用いることができる。尚、「光MMW信号」とは光ドメインにおけるMMW信号であり、一方「電気MMW信号」とは電気または電磁ドメインにおけるMMW信号であることを記しておく。
【0015】
MMW通信においてデータを変調するために、フォトニック方法およびシステムを用いることができる。例えば、フォトニック・デバイスは、光MMW信号に、ディジタル・データ入力を表す情報をエンコードするように、その位相を変調するように動作可能なものもある。この光MMW信号は、同様に振幅変調することもできる。変調後、光MMW信号を電気信号に変換し、アンテナによって対応する受信機にワイヤレスで送信することができる。別の実施形態では、受信機が変調ワイヤレス信号を受信し、それを電気信号に変換し、変調電気MMW信号にエンコードされているディジタル・データを再現するように、それを復調することができる。
【0016】
図1は、MMW信号を変調および/または復調することができるシステム100の一実施形態を示す。MMW信号の変調に関して、システム100は光プロセッサ200を備えることができる。光プロセッサ200は、変調光MMW信号を発生するために光信号を操作するフォトニック・デバイスを備えることができる。更に、本システムは、出力/電気(O/E)変換器340を備えることができる。変換器340は、変調光MMW信号を変調電気MMW信号に変換するように動作可能であればよい。加えて、本システムは、変調電気MMW信号をワイヤレスMMW信号360に変換することができる送信アンテナ350も備えることができる。また、本システムは受信機400も備えることができる。受信機400は、ワイヤレスMMW信号を受信し、この信号内にエンコードされているあらゆるデータを再現できるように、これを復調することができる。
【0017】
図1の光プロセッサ200は、側波帯発生器210、光フィルタ220、および位相シフト・キーイング(PSK)変調器230を備えることができる。一般に、光プロセッサ200は、光信号をプロセッサ全体に送出するように構成されている導波路および光ファイバの組み合わせを含むことができる。具体的には、光プロセッサ200は、光キャリアおよび関連する側波帯をレーザ・ソース300から側波帯発生器210、光フィルタ220、およびPSK変調器230に送出するように構成することができる。
【0018】
側波帯発生器210は、電気光学干渉計として構成することができる。更に具体的には、これは、マッハ−ゼンダー干渉計として構成することができ、この干渉計の入力セグメントにおいて伝搬する光信号が、例えば、Y−スプリッタにおいて2つの等しい部分に分割される。これら2つの信号は、干渉計の2本のアームを伝搬して行き、その後、例えば、Y−コンバイナによって再結合される。2つの光信号がY−コンバイナにおいて同相である場合、これらの信号は加算的に干渉し、最大強度が出力導波路を伝搬する。しかしながら、2つの光信号が位相シフトの場合、信号は減算的に干渉し、出力強度は低下する。Y−コンバイナにおける信号がπラジアンだけ位相シフトである場合、2つの信号は減算的に干渉し、出力が最小になると考えられる。
【0019】
振幅コントローラ310は、光周波数側波帯の振幅を調節するために、側波帯発生器210を駆動する電気駆動信号315を発生し、究極的に変調すべき光ミリメートル波信号を発生するように構成することができる。電気駆動信号315のレベルがこれらの振幅を決定することができる。例えば、比較的低い電圧で側波帯発生器210を駆動する場合、高調波の振幅は非常に低くなると考えられる。しかしながら、駆動電圧が高くなるに連れて、高調波の振幅は基本波よりも大きくなる。
【0020】
一実施形態では、振幅コントローラ310は、側波帯発生器210に対象の光周波数側波帯を発生させるために、比較的一定電圧の電気駆動信号を印加することができる。この実施形態では、システム100は光MMW信号の位相だけを変調すればよい。代替実施形態では、振幅コントローラ310は、2つ以上の電圧レベルを有する電気駆動信号315を印加することもできる。これによって、光MMW信号の振幅を2つ以上の別個の状態間で変化させることが可能になる。このように、振幅コントローラ310は、光MMW信号の振幅を変調するように動作可能であればよい。
【0021】
側波帯発生器210の一例として、1550nm光信号を12GHzで変調する場合、基本変調周波数および任意の高調波が、1550nmキャリアから±0.08nmにおいて、光キャリア上に側波帯として現れることができる。つまり、優勢な側波帯は1549.52nmおよび1550.48nmに存在することができる。周波数ドメインでは、これらの波長は、それぞれ、193,608.4GHzおよび193,488.4GHzに対応する。これら2つの周波数の間の差は、120GHzとなる。これは、12GHz変調周波数の第5高調波に対応する(即ち、±5*12GHzまたは±60GHz)。対象の側波帯は、側波帯発生器210からの光信号出力よりも優勢である必要はないと考えられる。むしろ、本開示の多くの実施形態では、側波帯発生器の出力において、対象の周波数側波帯の大きさは、光フィルタの光入力における光キャリア信号の大きさの少なくも10%であることが確保できさえすれば十分であると思われる。
【0022】
引き続き図1を参照すると、光フィルタ220は、所望の側波帯を選択し、キャリア周波数およびあらゆる不要な側波帯を除去するように構成されている。この光濾波機能は、種々の技術を用いて遂行することができ、ブラッグ格子反射フィルタ、波長選択マッハ−ゼンダーフィルタ、多層薄膜光フィルタ、アレイ状導波路格子(AWG)、マイクロ・リング共振フィルタ、および波長選択的な指向性カプラ・フィルタが含まれる。アレイ状導波路格子は、非常に狭い帯域幅を特徴とする複数のチャネルを有する一体化光デバイスであるので、特に有用である。以下の論述は、AWGの使用に焦点を当てるが、他のフィルタも本発明にしたがって用いることができる。
【0023】
AWGの役割は、望ましくない側波帯を濾波し、信号コンバイナ(図示せず)の協同により、対象の2つの側波帯を組み合わせることである。例えば、チャネル間隔が60GHz(Δλ=0.48nm)またはチャネル間隔が30GHz(Δλ=0.24nm)のAWGは、120GHzシステムに非常に適している。側波帯の各々は、光フィルタ220の特性波長にしたがってその別々の出力チャネルから来ることができる。限定ではなく、例示として、側波帯発生器210の出力をAWGに挿入すると、2つの所望の5次高調波が、比較的離れている2つのポートから出てくることができる。しかしながら、60GHzのAWGを用いると、所望の5次側波帯は、変位は少ないがなおも別個のポートから出てくる。30GHzのAWGの利点は、ポートの帯域幅が遥かに狭いことである。しかしながら、30GHzのAWGの方が、生産および動作が難しいことが多い。これらの理由のために、本発明の実施形態の中には、60GHzのAWGを光フィルタ220として利用することによって動作させることが好ましいものもあり得る。
【0024】
光フィルタ220は、側波帯コンバイナ222を備えることができる。側波帯コンバイナ222は、濾波された側波帯を組み合わせて1つの光MMW信号225を得るように構成するとよい。例えば、光フィルタ220が、120GHz離間されている2つの側波帯を生成する場合、側波帯コンバイナ222はこれらの信号を組み合わせて、120GHzの基本周波数を有する1つの光MMW信号を得るように動作するとよい。
【0025】
更に図1を参照すると、位相シフト・キーイング(PSK)変調器230は、光スプリッタ232、光位相遅延ユニット234、2つ以上の光ゲート236、および光コンバイナ238を備えることができる。光スプリッタ232は、光MMW信号225を2つ以上の中間信号231に分割するように動作するとよい。例えば、直角位相シフト・キーイング(QPSK)システムでは、スプリッタは4つの中間信号を発生することができる。別の例として、オクタル(octal)位相シフト・キーイング・システム(OPSK)では、スプリッタは8つの中間信号を発生することができる。システムの要件に応じて、他の数の中間信号も発生することができる。
【0026】
光位相遅延ユニット234は、各中間信号が残りの中間信号に対して別個の位相関係を有するように、中間信号231の内1つ以上を遅延させることができる。別個の位相関係を確立するために、中間信号の内1つを除いて全てを遅延させることが可能である。例えば、QPSKシステムでは、先に論じたように、4つの中間信号があり得る。第1中間信号は全く遅延されなくてもよい。第2中間信号はπ/2ラジアン(即ち、波長の90電気角度)だけ遅延させることができる。第3中間信号はπラジアンだけ遅延させることができる。第4中間信号は3π/2ラジアンだけ遅延させることができる。このように、4つの中間信号は、互いに対してπ/2(90電気角度)だけ位相がシフトしていればよい。この例では、光MMW周波数が94GHzであると、第1中間信号は0ピコ秒(ps)遅延され、第2中間信号は2.66psだけ遅延され、第3中間信号は5.32psだけ遅延され、第4中間信号は7.98psだけ遅延されることになる。あるいは、これらの中間信号全てを遅延させて、同じ位相関係を得ることもできる。別の例として、OPSKシステムでは、8つの中間信号が互いに対してπ/4(45電気角度)だけ位相はずれとなるように、遅延させることもできる。他の位相関係も同様に確立することができる。中間信号毎の遅延は、光プロセッサにおいて、中間信号毎に光路長を変化させることによって確立することができる。当技術分野において周知のものや今後発見されるものというような、遅延を確立するための他の技法も同様に用いることができる。
【0027】
引き続き図1を参照すると、光ゲート26は、制御入力325に基づいて、相対的に高い振幅および相対的に低い振幅の間で各中間信号を個々に変調するように構成することができる。光ゲート236は、中間光信号の強度を変調するために、任意の従来のデバイスまたは今後開発されるデバイスを備えることができる。例えば、限定としてではなく、図示した実施形態では、光ゲート236は、米国特許第7,123,793号に開示されている変調器アレイのような、個々に制御可能な電気光学変調器として構成されている。ゲートされた中間信号は、相対的に高いまたは相対的に低いと呼ばれる。何故なら、比較すると、相対的に高い中間信号は、相対的に低い中間信号よりも高い振幅を有するからである。この振幅の差は、受信機による2つの信号間の弁別を可能にする程に十分大きいとよい。一例として、相対的に高い中間信号は、光ゲートの前では、中間信号とほぼ同じ振幅を有してもよく、相対的に低い中間信号は0に近い振幅を有してもよい。
【0028】
位相シフト・キーイングでは、一般に、光ゲート236への制御入力325は、2つの中間信号が同時に相対的に高い振幅とならないように構成されている。例えば、データ入力信号を位相変調するとき、各中間信号は、このデータ入力信号によって表される特定のデータ・パターンを表すことができる。QPSKシステムでは、4つの位相の各々が、2ビット・データ入力信号の4つの状態00、01、10、および11の内の1つを表すことができる。つまり、光ゲート236への制御入力325は、しかるべき中間信号が「ゲート・オン」(即ち、相対的に高くなる)とされ、残りの中間信号が「ゲート・オフ」(即ち、相対的に低くなる)とされるように構成するとよい。尚、光ゲートがそのそれぞれの中間信号を2つの状態に切り換えている遷移時間中に、中間信号の全てが相対的に低い状態になる場合、または2つ以上の中間信号が比較的高い状態になる場合があり得ることは、記すべきであろう。しかしながら、これらは一過性の状態であり、中間信号のタイミングが位相変調技法に適していることを確認する(例えば、中間信号を後に再度組み合わせるときに重複していないことを確認する)ために、これらの状態が必要となることもある。
【0029】
光コンバイナ238は、中間信号を組み合わせて、1つのPSK変調光MMW信号を得るように動作する。本開示に関して、光スプリッタまたは光コンバイナは、任意の従来からの構造または今後開発される構造を用いればよいと考えられる。例えば、光信号を分割し組み合わせるのに適した代替構造には、限定ではないが、2×2指向性結合領域、1×2指向性結合領域、1×2Y信号スプリッタおよびコンバイナ、ならびに1×2および2×2マルチモード干渉エレメント・スプリッタおよびコンバイナが含まれる。これらの構造の具体的な設計パラメータは、本発明の範囲を超えており、米国特許第6,853,758号を含む、既存の情報源または今後の開発の情報源から得ることができる。
【0030】
光プロセッサ200は、更に、光増幅器240も備えることができる。これは、光コンバイナ238の出力に配置するとよい。何故なら、中間信号が遅延ユニット、光ゲート、および/または光コンバイナを通過するときに、何らかの減衰が中間信号に生じることがあるからである。光増幅器240は、組み合わされた中間信号の振幅を増大させるように動作することができる。これは、PSK変調光MMW信号と呼ばれる。
【0031】
更に図1を参照すると、システム100は、更に、光/電(O/E)変換器340も備えることができる。このO/E変換器は、PSK変調光MMW信号をPSK変調電気MMW信号に変換するように動作することができる。つまり、O/E変換器は、本質的に、変調信号を光ドメインから電気ドメインに変換する。これは、信号の更なる処理または送信に有用となることができる。O/E変換器340は、ミリメートル波変調周波数を超過する3dB帯域幅を有する、単一走行キャリア(UTC:uni-traveling carrier) フォトダイオードのような、高速フォトダイオードを備えるとよい。
【0032】
送信アンテナ350は、PSK変調電気MMW信号を、例えば、受信機400にワイヤレスで送信することができる信号に送信する(transmit)ように動作することができる。このアンテナは、例えば、O/E変換器から電気信号を受信することができる。このアンテナは、電気MMW信号を送信するための任意の適した技術を備えていればよく、ワイヤレス信号を受信機400または検出器(図示せず)に送出することができる。
【0033】
加えて、システム100は、光プロセッサ200に光学的に結合することができるレーザ・ソース300も備えることができる。レーザ・ソース300は、光信号305を発生するように構成することができ、光信号305は側波帯発生器210に送出することができる。レーザ・ソースは、当技術分野で周知であるような、任意の適した技術を備えていればよい。
【0034】
振幅コントローラ310は、本明細書において論ずる場合、光MMW信号の振幅を調節するために、電気駆動信号を側波帯発生器210に対して発生するように動作可能であるとよい。振幅変調がシステムによって必要とされない場合、振幅コントローラ310は、光周波数側波帯の振幅が比較的一定となるように、駆動信号を側波帯発生器に発生することができる。あるいは、振幅変調がシステムによって必要とされる場合、振幅コントローラ310は、光周波数側波帯の2つ以上の別個の振幅が発生されるように、側波帯発生器への電気駆動信号を調節するように動作可能であるとよい。光周波数側波帯の振幅を変化させることにより、PSK変調光MMW信号の振幅を比例的に変化させるように動作可能となるとよい。振幅コントローラ310は、データ入力330に基づいて、振幅を調節するように構成することができる。例えば、SおよびSと呼ばれる2つの別個の状態間で振幅を変調する場合、振幅コントローラは、データ入力が論理「0」であるときには振幅をSに設定することができ、データ入力が論理「1」状態であるときには振幅をSに設定することができる。振幅コントローラ310は、直角振幅変調(QAM)を有する光MMW信号を発生するように、PSK変調器230と合わせて動作することができる。任意の数の別個の振幅状態が可能であるが、多くのディジタル・システムは2状態または4状態のいずれかを用いる。
【0035】
ゲート発生回路320はPSK変調器230の光ゲート236の各々を制御するように動作可能であればよい。本明細書において論ずる場合、位相シフト・キーイングでは、一般に、中間信号の内1つだけが相対的に高い状態にゲートされ、残りの中間信号は同時に相対的に低い状態にゲートされる。ゲート発生回路320は、データ入力330を受けることができ、位相シフト・キーイングを遂行するように、光ゲート236への制御入力325を確定することができる。直角位相シフト・キーイング変調方式では、ゲート発生回路320は、各々論理「0」状態および論理「1」状態を有する2つの二進ディジット(ビット)を備えているデータ入力を受けることができる。このデータ入力に応答して、ゲート発生回路は、データ入力のビット・パターンに応じて、4つの中間信号の内1つのみが相対的に高い状態にゲートされるように、制御入力を設定することができる。以下の表1は、1つの可能な結果を示す。
【0036】
【表1】

【0037】
また、ゲート発生回路320は、他のタイプの位相変調キーイング(phase-modulated keying)を用いることができるように、光ゲート236に制御入力325を発生することもできる。例えば、オクタル位相シフト・キーイング(OPSK)方式では、光スプリッタ232は光MMW信号を8つの中間信号に分割する。光位相遅延ユニット234は、これらの中間信号が互いに対して45電気角度だけ位相がシフトするように、これらの中間信号の内1つ以上を遅延させるように構成することができる。その結果、8つの光ゲート236があり、1つを各中間信号と関連付けることができる。ゲート発生回路320は、3ビットの情報(8つの別個の状態を有する)を受けることができ、データ入力のビット・パターンに応じて、8つの中間信号の内1つのみが相対的に高い状態にゲートされるように、制御入力を設定することができる。他のタイプの位相シフト・キーイング変調も同様に用いることができる。
【0038】
一般に、データ入力がn−ビット・コードを表す場合、PSK変調器230および振幅コントローラ310は、電気信号315および制御入力325の位相を、n−ビット・コードのビット・シーケンスに対応するn個の利用可能な位相および振幅値の間で調節するように構成することができる。好ましくは、1組のn個の利用可能な位相および振幅値は、少なくともn/4個でn/2個までの利用可能な位相値、および少なくともn/8個でn/4個までの0でない振幅値によって定められる。例えば、4−ビット・コードの場合、1組で16個の利用可能な位相および振幅値が、少なくとも4つで8つまでの利用可能な振幅値および少なくとも2つで4つまでの0でない振幅値によって定められることが好ましいと考えられる。
【0039】
これより図2を参照すると、受信機400はPSK変調電気MMW信号を復調するように動作可能であるとよく、信号調整モジュール410、移相モジュール420、および弁別モジュール430を備えることができる。加えて、受信機400は、受信アンテナ450も備えることができる。位相変調ワイヤレスMMW信号360は、先に説明したシステムによって送信されたもののように、受信アンテナ450によって受信することができる。受信アンテナ450は、このワイヤレス信号を受信し、これを電気信号(PSK変調電気MMW信号と呼ぶ)に変換することができる。この電気信号は、シンボルAによって便利に表すことができる。
【0040】
信号調整モジュール410は、第1ディバイダ412およびシンボル遅延ユニット414を備えることができる。第1ディバイダ412は、Aを2つの実質的に同様な信号に分割するように動作可能であるとよい。シンボル遅延ユニット414は、Aを1シンボル遅延だけ遅延させるように動作可能であるとよく、1シンボル遅延は、Aにエンコードされているデータ・パターン毎にシステムによって割り当てられる時間量として定められる。これは、通例、キャリア周波数の周期の約10倍である。つまり、例えば、100GHzでは、1シンボル遅延は約100psとすればよい。1シンボル遅延だけ遅延されたA信号は、Bと呼ぶと都合がよい。本質的に、AおよびBは、それぞれ、現在および直前の「シンボル」、即ち、位相シフト・キーイング変調電気MMW信号にエンコードされているデータ・パターンを表す。例えば、QPSKシステムでは、電気MMW信号が「01」およびそれに続く「11」というデータ・パターンを含む場合、Aは「11」(現在の)データでエンコードされた変調MMW信号を表し、Bは「01」(直前の)データでエンコードされた変調MMW信号を表す。
【0041】
第1ディバイダ412は、MMW方向カプラを備えるとよい。これは、混成カプラと呼ばれることもある。指向性カプラの一例に、Millitech社が製造するCSSシリーズのShort Slot Hybrid Coupler(ショート・スロット混成カプラ)がある。典型的な指向性カプラ500の模式図を図3Aに示す。2つの入力P1およびP3、ならびに2つの出力P2およびP4がある。1つの入力のみを用いる場合(他方の入力は開放のまま放置される)、実質的に等しい振幅の2つの出力がP2およびP4において発生される。一方の出力は他方の出力に対して位相がシフトしておらず、一方、他方の入力は−π/2ラジアン(−90電気角度)だけ位相がシフトしている。P1入力のみを用いる場合、出力P2は位相がシフトしていないが、P4は−90゜だけ位相がシフトしている。P2入力のみを用いる場合、出力P4は位相がシフトしていないが、P2は−90゜だけ位相がシフトしている。
【0042】
再度図2の実施形態を参照すると、シンボル遅延ユニット414への入力は、第1ディバイダ412の出力P2となる。この出力は−90゜位相がシフトしているので、Bは理論上1シンボル遅延+90゜だけ遅延されることになる。しかしながら、シンボル遅延は、通例、第1ディバイダ412によって生ずる90゜の位相シフトよりも約40倍大きくなる。この結果、第1ディバイダ412によって生ずる比較的小さい位相シフトを補償するように、シンボル遅延ユニット414を調節することができる。つまり、Bは、Aに対して約1シンボル遅延だけ遅延させたままにしておくことができる。あるいは、第1ディバイダ412によってBに生じたあらゆる位相シフトを補償するように、第1位相遅延ユニット424および/または第2位相遅延ユニット428を調節することもできる。他の補償技法も同様に用いることができる。
【0043】
移相モジュール420は、第2ディバイダ422、第1位相遅延ユニット424、第3ディバイダ426、および第2位相遅延ユニット428を備えることができる。第2ディバイダ422は、MMW方向カプラを備えることができ、Aを2つの実質的に同様な信号に分割するように動作可能であるとよい。これらの信号の1つは、本明細書において既に論じたように、第2ディバイダ422によって−π/2ラジアン(−90電気角度)だけ遅延させることができる。この同じ信号は、更に、Aの位相シフト・バージョンを生成するように、第1位相遅延ユニット424によって遅延することができる。Aの位相シフトをAと呼ぶ。第1位相遅延ユニット424によって生じる位相遅延量は、電気MMW信号の0と2πラジアン(360電気角度)との間とすることができる。例えば、受信機400がQPSK信号を復調するように設計されている場合、第1位相遅延ユニット424は90度の位相遅延を生ずることができ、第2ディバイダによって生ずる90度の遅延に加算されると、全遅延は180度になることができる。この場合、移相モジュール420は、0度の位相シフトを有するAと、180度の位相シフトを有するAとを発生することができる。Aに対する他の位相シフト量(第2ディバイダ422または第1位相遅延ユニット424によって生ずる)も考えられる。
【0044】
第3ディバイダ426は、指向性カプラを備えることができ、Bを2つの実質的に同様な信号に分割するように動作可能であるとよい。本明細書において既に論じたように、これらの信号の内1つを、第2ディバイダ422によって90電気角度だけ遅延させることができる。Bの位相シフト・バージョンを生成するように、この同じ信号を更に第2位相遅延ユニット428によって遅延させることができる。Bの位相シフトをBと呼ぶ。第2位相遅延ユニット428によって生じる位相遅延量は、電気MMW信号の0と2π(360電気角度)との間とすることができる。例えば、受信機400がQPSK信号を復調するように設計されている場合、第2位相遅延ユニット428は0度の位相遅延を生ずることができ、第3ディバイダによって生ずる90度の遅延に加算されると、全遅延は90度になることができる。この場合、移相モジュール420は、0度の位相シフトを有するBと、90度の位相シフトを有するBとを発生することができる。Bに対する他の位相シフト量(第3ディバイダ426または第2位相遅延ユニット428によって生ずる)も考えられる。
【0045】
引き続き図2を参照すると、弁別モジュール430は、AおよびBの相対的な位相を比較し、BおよびAの相対的な位相を比較し、これら2つの比較に基づいて、4つの出力を発生するように動作可能であるとよい。4つの出力の各々は、出力の相対的な振幅がAのBに対する位相に対応するように、PSK変調ミリメートル波信号の位相の1つと関連している。これらの比較を行うために、弁別モジュール430は第1比較器432および第2比較器434を備えることができる。これらの比較器は、例えば、本明細書において既に説明し図3Aに示したような、MMW指向性カプラを備えることができる。しかしながら、ディバイダとは異なり、2つの比較器は、比較を容易にするために、指向性カプラの双方の入力を用いることができる。指向性カプラについての入力/出力関係を図3Bに示す。例えば、双方の入力の位相が同じであるとき(即ち、P1およびP3)、双方の出力(即ち、P2およびP4)は「1」の相対強度を有する。P1における入力とP3における入力との間の位相差が90゜であるとき、P2出力は「0」の相対振幅を有し、P4出力は「2」の相対振幅を有する。
【0046】
指向性カプラのこの入力/出力関係を用いて、弁別モジュール430は4つの位相状態0゜、90゜、180゜、および270゜を有するQPSK信号例を復調することができる。この例では、第1位相遅延ユニット424は、Aが合計180゜遅延されるように、Aに90゜の位相遅延を生ずることができる。同様に、第2位相遅延ユニット428は、Bが合計90゜遅延されるように、Bに0゜の位相遅延を生ずることができる。表2は、連続するシンボル(即ち、AおよびB)間における位相差(Δφ)の関数として相対的出力を示す。
【0047】
【表2】

【0048】
表2から分かるように、位相変化毎に、4つの出力の内1つだけが「2」の相対振幅を有し、残りの3つの出力は「0」または「1」のいずれかの相対振幅を有する。このように、受信機400はPSK変調ワイヤレスMMW信号360を復調することができる。これらのコンポーネントの異なる配置および/または異なる位相遅延も考えられる。本明細書において記載した受信機400は、シンボルの実際の位相を供給しなくてもよく、代わりにそれに先立つシンボルから位相変化を供給してもよい。したがって、例えば、何らかの形態のヘッダ・データ・ストリングを用いて、受信機におけるデータを同期させなければならないこともある。一旦データを同期させれば、受信機400は位相変化を追跡するだけでよく、シンボル(つまりはデータ)の実際の位相を判定することができる。
【0049】
更に、受信機400は、弁別モジュール430の出力の相対振幅を検出するように動作可能な検出モジュール440も備えることができる。検出モジュール440は、弁別モジュール430の出力の各々の振幅を測定するために、ショットキ・ダイオード検出器のような、1つ以上のミリメートル波電力検出器を備えることができる。検出モジュール440は、PSK変調ワイヤレスMMW信号360にエンコードされているデータを表す二進出力を供給することができる。
【0050】
図2に示した受信機400のコンポーネントは、導波路または他の適した手段によって結合することができる。導波路が用いられる場合、各個々の導波路は、導波路自体によって不要な位相シフトが混入されないように、その長さを調節する必要がある場合もある。例えば、移相モジュール420において示すように、第3ディバイダ426のP2と第2位相遅延ユニット428との間に配置された導波路の長さは、延長しなければならない場合もある。これは、図2において「馬蹄形」エレメントとして図式的に示されている。当技術分野では周知のように、導波路に対する他の調節も同様に行ってもよい。
【0051】
代替実施形態では、図2の受信機400は、電気MMW信号にエンコードされている二進位相シフト・キーイング(BPSK)を復調するように構成することができる。BPSKでは、MMW信号の位相は、0ラジアン(0電気角度)およびπラジアン(180電気角度)のような、2つの別個の状態を取ることができる。当技術分野では周知のように、他の位相状態も同様に用いることができる。この実施形態では、既に本明細書において論じたように、信号調整モジュール410は、PSK変調電気MMW信号Aを1シンボル遅延信号Bに変換することができる。移相モジュール420は、AまたはBのいずれかを形成するように、AまたはBのいずれかを遅延させることができる。尚、これらの位相遅延信号の1つを形成するだけでよい場合もあることを記しておく。弁別モジュール430は、AおよびBを比較するか、またはAおよびBを比較するように構成されている1つの比較器432、434のみを備えていてもよい。この比較の結果、2つの出力を発生することができる。各出力は、これらの出力の相対振幅がAのBに対する位相に対応するように、BPSK MMW信号の2つの位相の内1つと関連している。一例として、BPSK受信機は、2つの位相状態0゜および180゜を有するBPSK信号例を復調することができる。この例では、Aは、Aを生成するために90電気角度だけ遅延させればよく、またはBを生成するためにBを90電気角度だけ遅延させてもよい。表3は、連続するシンボル(即ち、AおよびB)間における位相差(Δφ)の関数としてこれらの相対的出力を示す。
【0052】
【表3】

【0053】
およびB(例えば、BPSK MMW信号)のみを比較する受信機400の実施形態は、移相モジュール420を省き、任意の対応する位相遅延を信号調整モジュール410に組み込んでもよいことが考えられる。例えば、Bを発生するためにBを90電気角度だけ遅延させる場合、Bが1シンボル+90電気角度だけ遅延されるように、この遅延をシンボル遅延ユニット414に組み込んでもよい。シンボル遅延ユニット414の構造には些細な変更のみで済むので、これは実現するのに都合がよいと思われる。
【0054】
再度図1に戻って、本明細書において論じたように、システム100は直角振幅変調(QAM)を有するMMW信号を発生するように動作可能であるとよい。一実施形態では、2つの別個の振幅および4つの別個の位相(QPSK)があるも可能である。この場合、入力データは、8つの一意の状態を有する3つの二進ディジットを備えることができる。これは、図4に示すように、MMW信号にエンコードすることができる。
【0055】
【表4】

【0056】
尚、本明細書における、特定の方法で「構成されている」、特定の特性を具体化するまたは特定の態様で機能するように「構成されている」本開示のコンポーネントの詳説は、意図した使用の詳説ではなく、構造的な詳説であることを記しておく。更に具体的には、本明細書においてあるコンポーネントが「構成されている」というように引用した場合、当該コンポーネントの既存の物理的状態を示し、したがってそのコンポーネントの構造的特徴の明確な詳説として捉えられるべきものとする。
【0057】
尚、「好ましくは」、「極一般には」(commonly)、「通例」(typically)というような用語は、本明細書において利用する場合、特許請求する発明の範囲を限定するために利用されているのではなく、ある種の特徴が特許請求する発明の構造または機能にとって肝要、必須、または重要であることを暗示するために利用されているのでもないことを記しておく。むしろ、これらの用語は、単に、本発明の実施形態の特定的な態様を識別すること、または本発明の特定の実施形態において利用してもしなくてもよい代替的または追加的な特徴を強調することを意図するに過ぎない。
【0058】
本発明を定めそして説明する場合において言えば、「実質的に」および「ほぼ」という用語は、本明細書では、任意の定量的比較、値、測定、またはその他の表現に帰属することができる固有の不確実性の度合いを表すために利用されていることを記しておく。また、「実質的に」および「ほぼ」という用語は、本明細書では、問題の主題の基本機能に変化を生ずることなく、定量的表現が、明言された基準から変動してもよい度合いを表すために利用されている。
【0059】
以上、本発明を詳細にそして具体的な実施形態を参照しながら説明したが、添付した特許請求の範囲に定められる発明の範囲から逸脱することなく、修正や変形が可能であることは明らかである。更に具体的には、本明細書では、本発明の一部の態様を、好ましいものまたは特に有利であるものとして特定したが、本発明は必ずしもこれら発明の好ましい態様には限定されるのではないことを想定している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光プロセッサを含むシステムであって、
前記光プロセッサが、側波帯発生器と、光フィルタと、位相シフト・キーイング(PSK)変調器とを含み、
前記側波帯発生器が、光信号のキャリア周波数を中心とする光周波数側波帯を発生するように構成されており、
前記光フィルタが、光ミリメートル波信号を発生するために対象の光側波帯を用いることができるように、前記光周波数側波帯と前記光キャリア周波数との間で弁別するように構成されており、
前記PSK変調器が、光スプリッタと、光位相遅延ユニットと、2つ以上の光ゲートと、光コンバイナとを含み、
前記光スプリッタが、前記光ミリメートル波信号を2つ以上の中間信号に分割するように構成されており、
前記光位相遅延ユニットが、各中間信号が残りの中間信号に対して別個の位相関係を有するように、前記中間信号の内1つ以上を遅延させるように構成されており、
前記光ゲートが、制御入力に基づいて、相対的に高い振幅と相対的に低い振幅との間で各中間信号を個々に変調するように構成されており、
前記光コンバイナが、前記ゲートされた中間信号を組み合わせて、1つのPSK変調光ミリメートル波信号にするように構成された、システム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムにおいて、前記制御入力が、1つ以上の二進ディジット(ビット)を有する二進データを表す、システム。
【請求項3】
請求項1記載のシステムにおいて、前記光スプリッタが、前記光ミリメートル波信号を4つの中間信号に分割するように構成された、システム。
【請求項4】
請求項1記載のシステムにおいて、前記光位相遅延ユニットが、中間信号毎に異なる光路長を用いることによって、前記中間信号を受動的に遅延させる、システム。
【請求項5】
請求項1記載のシステムにおいて、前記光位相遅延ユニットが、1/(4f)の倍数だけ1つ以上の中間信号を遅延させるように構成されており、fが前記光ミリメートル波信号の周波数である、システム。
【請求項6】
請求項1記載のシステムにおいて、各光ゲートが、電気入力信号に応答する電気光学デバイスを含み、前記電気入力信号が、前記対応する中間信号が相対的に高い振幅または相対的に低い振幅のどちらを有するか決定するようにした、システム。
【請求項7】
請求項1記載のシステムにおいて、前記光コンバイナが4−1コンバイナである、システム。
【請求項8】
請求項1記載のシステムにおいて、
前記光スプリッタが、前記光ミリメートル波信号を4つの中間信号に分割し、
前記光位相遅延ユニットが、前記中間信号が互いに対して約90電気角度位相シフトとなるように、前記中間信号の内1つ以上を遅延させるように構成されており、
前記制御入力が、4つの別個の状態を有する2つの二進ディジット(ビット)を表す、システム。
【請求項9】
請求項8記載のシステムにおいて、前記光ミリメートル波信号の周波数fが、ほぼ94ギガヘルツであり、前記光位相遅延ユニットが、前記中間信号の内1つ以上を約2.66ピコ秒の倍数だけ遅延させるように構成された、システム。
【請求項10】
請求項1記載のシステムであって、更に、前記光ミリメートル波信号の振幅を調節するように前記側波帯発生器を駆動するための電気駆動信号を発生するように構成された振幅コントローラを含む、システム。
【請求項11】
請求項10記載のシステムにおいて、前記振幅コントローラが、前記制御入力に基づいて、前記光ミリメートル波の振幅を2つの別個の状態に調節するように動作可能である、システム。
【請求項12】
請求項1記載のシステムであって、更に、ゲート発生回路を含み、このゲート発生回路が、2つの中間信号が同時に相対的に高い振幅とならないように、前記1つ以上の光ゲートの各々に対する電気ゲート信号を発生するように構成された、システム。
【請求項13】
請求項1記載のシステムであって、更に、光/電変換器を含み、この光/電変換器が、前記位相変調光ミリメートル波信号を位相変調電気ミリメートル波信号に変換するように構成された、システム。
【請求項14】
請求項1記載のシステムであって、更に、前記位相変調電気ミリメートル波信号を受信するように、およびワイヤレスで送信するように構成されたアンテナを含む、システム。
【請求項15】
請求項1記載のシステムであって、更に、前記光プロセッサに光学的に結合されており、前記光信号を発生するように構成されたレーザ・ソースを含む、システム。
【請求項16】
請求項1記載のシステムであって、更に、前記PSK変調電気ミリメートル波信号Aを復調する受信機を含み、この受信機が、信号調整モジュールと、移相モジュールと、弁別モジュールとを含み、
前記信号調整モジュールが、前記ミリメートル波信号Aを受信し、前記ミリメートル波信号にエンコードされたデータのシンボル遅延に遅延が対応するように、遅延ミリメートル波信号Bを発生し、
前記移相モジュールが、移相ミリメートル波信号Aを生成するように、前記ミリメートル波信号Aの位相をシフトし、
前記移相モジュールが、移相遅延ミリメートル波信号Bを生成するように、前記遅延ミリメートル波信号Bの位相をシフトし、
前記弁別モジュールが、AおよびBの位相を比較し、BおよびAの位相を比較し、これら2つの比較に基づいて4つの出力を発生し、各出力が、当該出力の相対的振幅がAのBに対する位相に対応するように、前記ミリメートル波信号の位相の内1つと関連付けられた、システム。
【請求項17】
請求項16記載のシステムにおいて、前記受信機が、更に、各出力の振幅を検出して4つの二進出力信号を発生するように構成された検出モジュールを含み、各二進出力が、当該出力の相対的振幅に応じて、1つの二進出力信号のみが高状態になるように、1つの出力と関連付けられた、システム。
【請求項18】
請求項16記載のシステムにおいて、前記受信機が、更に、前記PSK変調電気ミリメートル波信号をワイヤレスで受信するように構成されたアンテナを含む、システム。
【請求項19】
PSK変調電気ミリメートル波信号Aを復調する受信機であって、この受信機が、信号調整モジュールと、移相モジュールと、弁別モジュールとを含み、
前記信号調整モジュールが、前記ミリメートル波信号Aを受信し、前記ミリメートル波信号にエンコードされたデータのシンボル遅延に遅延が対応するように、遅延ミリメートル波信号Bを発生し、
前記移相モジュールが、移相ミリメートル波信号Aを生成するように、前記ミリメートル波信号Aの位相をシフトし、
前記移相モジュールが、移相遅延ミリメートル波信号Bを生成するように、前記遅延ミリメートル波信号Bの位相をシフトし、
前記弁別モジュールがAおよびBの位相を比較し、BおよびAの位相を比較し、これら2つの比較に基づいて4つの出力を発生し、各出力が、当該出力の相対的振幅がAのBに対する位相に対応するように、前記ミリメートル波信号の位相の内1つと関連付けられた、受信機。
【請求項20】
請求項19記載の受信機であって、更に、各出力の振幅を検出して4つの二進出力信号を発生するように構成された検出モジュールを含み、各二進出力が、当該出力の相対的振幅に応じて、1つの二進出力信号のみが高状態になるように、1つの出力と関連付けられた、受信機。
【請求項21】
請求項19記載の受信機であって、更に、前記PSK変調電気ミリメートル波信号をワイヤレスで受信するように構成されたアンテナを含む、受信機。
【請求項22】
二進PSK変調電気ミリメートル波信号Aを復調する受信機であって、この受信機が、信号調整モジュールと、弁別モジュールとを含み、
前記信号調整モジュールが、前記ミリメートル波信号Aを受信し、前記ミリメートル波信号にエンコードされたデータのシンボル遅延に追加の位相遅延を加えたものに対応する遅延ミリメートル波信号Bを発生し、
前記弁別モジュールが、AおよびBの位相を比較し、この比較に基づいて2つの出力を発生し、前記出力の相対的振幅が、直前のシンボルの位相に対するAの位相に対応するように、各出力が、前記ミリメートル波信号の位相の内1つと関連付けられた、受信機。
【請求項23】
二進PSK変調電気ミリメートル波信号Aを復調する受信機であって、この受信機が、信号調整モジュールと、移相モジュールと、復調モジュールとを含み、
前記信号調整モジュールが、前記ミリメートル波信号Aを受信し、前記ミリメートル波信号にエンコードされたデータのシンボル遅延に遅延が対応するように、遅延ミリメートル波信号Bを発生し、
前記移相モジュールが、移相ミリメートル波信号AまたはBを生成するように、AまたはBの位相をシフトし、
前記弁別モジュールがAおよびBの位相またはAおよびBの位相を比較し、これらの比較に基づいて2つの出力を発生し、各出力が、当該出力の相対的振幅がAのBに対する位相に対応するように、前記ミリメートル波信号の位相の内1つと関連付けられた、受信機。
【請求項24】
データをミリメートル波信号によって送信する方法であって、
光信号のキャリア周波数を中心とする光周波数側波帯を発生するステップと、
光ミリメートル波信号を発生するために、前記光周波数側波帯と前記光キャリア周波数との間で弁別するステップと、
前記光ミリメートル波信号を2つ以上の中間信号に分割するステップと、
各中間信号が残りの中間信号に対して別個の位相関係を有するように、前記中間信号の内1つ以上を遅延させるステップと、
前記中間信号の1つが相対的に高い振幅を有し、残りの中間信号が相対的に低い振幅を有するように、制御入力に基づいて、前記中間信号を変調するステップと、
前記中間信号を再度組み合わせて、1つの位相変調光ミリメートル波信号にするステップと、
を含む、方法。
【請求項25】
請求項24記載の方法において、更に、
前記制御信号のエンコード表現を有するように、前記位相変調光ミリメートル波信号が更に振幅変調されるように、前記制御入力に更に応答して前記光ミリメートル波信号の振幅を調節するステップを含む、方法。
【請求項26】
前出の2つの請求項のいずれか1項に記載の方法において、前記制御入力が、1つ以上の二進ディジット(ビット)を有する二進データを表す、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【公表番号】特表2012−500533(P2012−500533A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523164(P2011−523164)
【出願日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/053702
【国際公開番号】WO2010/019765
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(504306714)バテル・メモリアル・インスティテュート (26)
【氏名又は名称原語表記】BATTELLE MEMORIAL INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】505 King Avenue, Columbus, OH 43201−2693 (US)
【Fターム(参考)】