説明

ミルパージ停止方法

【課題】 ミルを停止させる際に、面倒な操作を行うことなく、確実かつ適切な残炭パージを行う。
【解決手段】 ミルの停止条件が整ったことを検知して(S1)、ミルへ原燃料を供給するためのバンカ出口に設けられたコールゲートを自動閉止させる工程(S2)と、コールゲートからミルへ原燃料を輸送する給炭機ベルト上に原燃料が存在しないことを確認して(S3)、給炭機を停止させる工程(S5)と、ミルの内部に原燃料が存在しないことを確認して(S8)、ミルを停止させる工程(S10)とを実施することにより、ミルパージ停止を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粉炭を燃焼空気とともにボイラに送出するミルを備えたボイラ設備において、ミルの定期修理、定期点検、長期休転、週末停止時等に残炭パージを行ってミルを停止させるための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タービンを用いて発電機を駆動するようにした発電プラントでは、ボイラ内で微粉炭等の燃料を燃焼させることにより蒸気を発生させ、この蒸気によりタービンを回転させ、タービンの回転軸に駆動軸が接続された発電機を駆動して発電を行っている。このような発電プラントでは、ボイラの前段に、石炭等の原燃料を粉砕して、燃焼空気とともに火炉へ供給するためのミル(微粉炭機)が設置されている。
【0003】
ミルはボイラへ燃料を供給するための重要な装置であり、このミルにおいて石炭等の原燃料が正常に供給されないと、ボイラを安定して運転することができなくなる。特に、ミルの定期修理、定期点検、長期休転、週末停止時には残炭パージを行う必要があり、残炭パージの方法が適切でないとミル内に原燃料が残ってしまい、定期修理や定期検査等に支障を生じたり、ミルの再稼働後にボイラの安定運転を行うことができなくなったりするおそれがあった。
【0004】
そこで、従来、ミルの定期修理、長期休転、週末停止時等における残炭パージに関する技術が種々提案されている。例えば、ミル差圧に基づいて残炭パージの完了を検知する技術が開示されている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0005】
上記特許文献1に記載された技術は、ミル差圧を検出し、炭種による石炭の粉砕性に関係なくミル差圧がパージの完了時に一定の完了時差圧になることを利用して、パージが完了した直後に竪型ミルを停止させるようになっている。そして、粉砕性が高い(軟らかい)石炭の場合におけるミルローラと粉砕テーブルとのメタルタッチの時間を短縮し、粉砕性が低い(硬い)石炭の場合における残炭の状態でのミルモータ停止による爆発の問題を防止することができるとしている。
【0006】
上記特許文献2に記載された技術は、粉砕性の良い石炭における最短パージ時間と、粉砕性の悪い石炭における最長パージ時間とを予め設定しておく。そして、給炭機停止後に、最短パージ時間から最長パージ時間までの範囲内で、かつミル差圧の変化レートが規定値以下になった時点で、竪型ミルの駆動装置へ停止信号を出力し、竪型ミルを停止させ、ミルパージを完了するようになっている。
【0007】
【特許文献1】特開平9−29130号公報
【特許文献2】特開2001−224972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来の技術では、差圧検出によりパージ停止の判定を行っている。しかしながら、常にミル内の残炭量とミル差圧とが連関するとは言い切れず、差圧に影響を及ぼす何らかの状況が発生した場合には、正確にパージ停止の判定を行うことができなかった。
【0009】
また、炭種毎にパージ停止を行うミル差圧を設定しているため、予めパージ停止を行うミル差圧を測定しておく必要がある。さらに、測定値に基づき、炭種毎にパージ停止を行うミル差圧を設定しなければならず、設定操作が面倒であった。
【0010】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、ミルを停止させる際に、面倒な操作を行うことなく、確実かつ適切な残炭パージを行うことが可能なミルパージ停止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るミルパージ停止方法は、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を備えている。
すなわち、本発明に係るミルパージ停止方法は、テーブルとローラとの間に投入された石炭等の原燃料を粉砕して微粉炭とし、該微粉炭を燃焼空気とともにボイラに送出するミルを備えたボイラ設備において、残炭パージを行ってミルを停止させるための方法である。このミルパージ停止方法は、ミルの停止条件が整ったことを検知して、ミルへ原燃料を供給するためのバンカ出口に設けられたコールゲートを自動閉止させる工程と、コールゲートからミルへ原燃料を輸送する給炭機ベルト上に原燃料が存在しないことを確認して給炭機を停止させる工程と、ミルの内部に原燃料が存在しないことを確認してミルを停止させる工程とを含むことを特徴としている。
【0012】
また、給炭機を停止させる工程は、給炭機ベルト上に原燃料が存在しないことを確認した後、一定時間が経過した場合に実施し、ミルを停止させる工程は、ミルの内部に原燃料が存在しないことを確認した後、一定時間が経過した場合に実施することが好ましい。
【0013】
また、コールゲートを自動閉止させる工程におけるミルの停止条件検知は、給炭量及びミルの出口温度に基づき実施することが好ましい。
【0014】
また、ミルを停止させる工程における原燃料の不存在確認は、ミルの駆動部への負荷電流に基づき実施することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るミルパージ停止方法では、ミルへ原燃料を供給するためのコールゲートを自動閉止させた後に、給炭機ベルト上に原燃料が存在しないことを確認して給炭機を停止させ、さらにミルの内部に原燃料が存在しないことを確認してミルを停止させる。したがって、給炭機からミルへ原燃料が供給されない状態を確認した後に、さらにミルの内部に原燃料が存在しないことを確認するという多重の確認を行っているため、ミルを停止させる際に、確実かつ適切な残炭パージを行うことが可能となる。また、炭種が異なる原燃料を使用した場合であっても、面倒な設定操作を行うことなく残炭パージを行うことができる。
【0016】
また、給炭機ベルト上に原燃料が存在しないことを確認した後、一定時間が経過してから給炭機を停止させ、ミルの内部に原燃料が存在しないことを確認した後、一定時間が経過してからミルを停止させる構成とした場合には、さらに確実かつ適切な残炭パージを行うことが可能となる。
【0017】
また、給炭量及びミルの出口温度に基づきミルの停止条件が整ったことを検知して、コールゲートを自動閉止させる構成とした場合には、さらに一層確実かつ適切な残炭パージを行うことが可能となる。
【0018】
また、ミルの駆動部への負荷電流に基づき原燃料の不存在確認を行う構成とした場合には、さらに一層確実かつ適切な残炭パージを行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係るミルパージ停止方法の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るミルパージ停止方法の手順を示すフローチャートである。また、図2は、本発明の実施形態に係るミルパージ停止方法を適用するボイラ設備の一部を示す概略構成図、図3は、本発明の実施形態に係るミルパージ停止方法を適用する給炭機を示す概略構成図である。
【0020】
<ボイラ設備>
本発明の実施形態に係るミルパージ停止方法を適用するボイラ設備は、図2に示すように、ボイラ10へ燃料である微粉炭を粉砕して供給するためのミル(微粉炭機)20を備えている。
ミル20の上方には、コールバンカ30が配設されており、ミル20内には、石炭を粉砕するためのテーブル21及びローラ22と、微粉炭を分級して所望の粒径とするための回転式分級器23が配設されている。また、ミル20には、原燃料である石炭内に混入した異物を回収するためのパイライトホッパ40と、微粉炭をボイラ10の火炉11内へ移送するための押込送風機50が接続されている。
【0021】
このミル20は、コールバンカ30から原燃料である石炭の供給を受けて、テーブル21とローラ22との間に石炭を噛み込ませ、ローラ22をテーブル21に押し付けながらテーブル21を回転させることにより、石炭を粉砕して微粉炭を製造する。また、回転式分級器23の回転速度を調整することにより微粉炭を所望の粒径とすることができる。
【0022】
ミル20で製造された微粉炭は、押込送風機50から供給される燃焼空気とともにボイラ10の火炉11に供給されて燃焼し、火炉11、過熱器及び再熱器により水を加熱して蒸気を発生させる。発生した蒸気はタービンに送出されてタービンを回転させるとともに、タービンと同軸に接続された発電機を駆動して発電が行われる。タービンを回転させた後の蒸気は、復水器により水に戻され、再び過熱器に供給される。
【0023】
図3に示すように、コールバンカ30とミル20との間には、給炭機60が配設されている。この給炭機60は、上下3段の給炭機ベルト61,62,63を備えており、最上段の給炭機ベルト61には、この給炭機ベルト61の上に石炭が存在するか否かを検知するための無炭量検出器64が設けられている。これの給炭機ベルト61,62,63は、モータ等の駆動手段により駆動される。また、無炭量検出器64は周知の機器を用いることができ、給炭機ベルト61の上に石炭が存在するか否かを検知することができればどのような機器であってもよい。
【0024】
また、コールバンカ30の下端部には、コールバンカ30の出口を開閉するためのコールゲート70が設けられている。このコールゲート70は、モータ等の駆動手段により駆動される。また、給炭機60の下端部には、給炭機60の出口を開閉するためのシャッタ80が設けられている。このシャッタ80は、モータ等の駆動手段により駆動される。また、給炭機60とミル20とを連通接続するシュート90には、ミル20へ供給される石炭を掻き取るためのスクレーパ100が設けられている。このスクレーパ100は、モータ等の駆動手段により駆動される。
【0025】
なお、図2では、コールバンカ30及びミル20を1機のみ示しているが、複数組のコールバンカ30及びミル20を備えていてもよい。また、ミル20及びその付属機器には、ミル20の運転状況を監視するための機器類が取り付けられている。図示しないが、機器類は、テーブル21及びローラ22等を駆動させるための駆動部への負荷電流を測定するための電流計、ミル20へ供給される空気量を測定するための流量計、ミル20の出口温度を計測するための温度計、テーブル21の上下位置を測定するための位置測定器、ローラ22の押付油圧を測定するための油圧計、回転式分級器23の回転速度を測定するための回転計等からなる。
【0026】
図示しないが、これらの機器類は中央制御室に設けられたコンピュータに接続されており、各機器類における測定値が、パネル表示器や液晶表示器等の表示装置により表示されるようになっている。また、コンピュータ及び表示装置は、警報発生手段としても機能し、各種の異常が発生した場合に、警報を発生することができるようになっている。
【0027】
<ミルパージ停止方法>
本発明の実施形態に係るミルパージ停止方法は、特に、ミルの定期修理、長期休転、週末停止時に行う残炭パージに好適に適用することができる。
図1に示すように、本発明の実施形態に係るミルパージ停止方法では、給炭量が所定値(例えば、4.5t/h)以下となるとともに、ミル20の出口温度が所定値(例えば、65℃)以下となると(S1)、ミル20の停止条件が整ったとしてコールゲート70を自動閉止させる(S2)。
【0028】
続いて、無炭量検出器64により給炭機ベルト61の上に石炭が存在するか否かを確認する(S3)。そして、給炭機ベルト61の上に石炭が存在しなくなった状態(コールオンではない状態)となると、所定時間(例えば、70秒)の経過を待ち(S4)、給炭機60を停止させる(S5)。続いて、給炭機60の出口に設けたシャッタ80を閉止させ(S6)、ミル20の入口のシュート90に設けたスクレーパ100を停止させる(S7)。
【0029】
この状態で、ミル20の駆動部への負荷電流が所定値(例えば42A)以下となったことを確認し(S8)、さらに、所定時間(例えば、300秒)の経過を待ち(S9)、ミル20の駆動を停止させる(S10)。以降は、通常のミル停止操作と同様の操作を行えばよい。
【0030】
このように、本発明の実施形態に係るミルパージ停止方法では、多重の確認処理を行いながら、コールゲート70を自動閉止させ、給炭機60を停止させ、さらにミル20を停止させている。このような多重の確認処理を行うことにより、ミル20の内部に石炭が残留することがなく、ミル20の定期修理、定期点検、長期休転、週末停止時等において、適切かつ確実な残炭パージを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係るミルパージ停止方法の手順を示すフローチャート。
【図2】本発明の実施形態に係るミルパージ停止方法を適用するボイラ設備の一部を示す概略構成図。
【図3】本発明の実施形態に係るミルパージ停止方法を適用する給炭機を示す概略構成図。
【符号の説明】
【0032】
10 ボイラ
11 火炉
20 ミル
21 テーブル
22 ローラ
23 回転式分級器
30 バンカ
40 パイライトホッパ
50 押込送風機
60 給炭機
61,62,63 給炭機ベルト
64 無炭量検出器
70 コールゲート
80 シャッタ
90 シュート
100 スクレーパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブルとローラとの間に投入された石炭等の原燃料を粉砕して微粉炭とし、該微粉炭を燃焼空気とともにボイラに送出するミルを備えたボイラ設備において、残炭パージを行ってミルを停止させるための方法であって、
ミルの停止条件が整ったことを検知して、ミルへ原燃料を供給するためのバンカ出口に設けられたコールゲートを自動閉止させる工程と、
コールゲートからミルへ原燃料を輸送する給炭機ベルト上に原燃料が存在しないことを確認して給炭機を停止させる工程と、
ミルの内部に原燃料が存在しないことを確認してミルを停止させる工程と、
を含むことを特徴とするミルパージ停止方法。
【請求項2】
前記給炭機を停止させる工程は、給炭機ベルト上に原燃料が存在しないことを確認した後、一定時間が経過した場合に実施し、
前記ミルを停止させる工程は、ミルの内部に原燃料が存在しないことを確認した後、一定時間が経過した場合に実施する、
ことを特徴とする請求項1に記載のミルパージ停止方法。
【請求項3】
コールゲートを自動閉止させる工程におけるミルの停止条件検知は、給炭量及びミルの出口温度に基づき実施することを特徴とする請求項1又は2に記載のミルパージ停止方法。
【請求項4】
ミルを停止させる工程における原燃料の不存在確認は、ミルの駆動部への負荷電流に基づき実施することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のミルパージ停止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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