説明

ミートネットに充填した食肉製品の製造方法

【課題】ミートネットに充填した食肉製品において、食肉の結着性を維持しながら、ミートネットからの剥離が容易な食肉製品を、簡易な手法で製造する方法の提供。
【解決手段】ミートネットに充填した食肉製品を製造する方法において、原料肉の表面を、トランスグルタミナーゼ、乳タンパク質、及び、植物性タンパク質で処理した後、当該原料肉をミートネットに充填し、加熱加工を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミートネットに充填した食肉製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ハムや焼き豚等の食肉製品を製造するにあたっては、まず原料肉に調味のためにピックル液を注入し、ロータリーマッサージ機を用いてタンブリングして味をなじませた後に、原料肉に糸を巻き付けたり、ミートネットに充填したりして原料肉を締結した後、加熱加工をする方法が行われている。ミートネットとは、通常、表面が綿等で被覆されたゴム紐のような伸縮性の紐を網目状に編み上げて構成された袋であり、その内部に原料肉を収納した後、特定の紐を引っ張ることによって原料肉を締結するために使用される。ミートネットは食肉製品の形態を整え、結着性を高める(すなわち、肉の切片同士を一体化させる)ことができる。食肉製品は、このミートネットに充填された状態で販売に供されるものも多い。
【0003】
このようなミートネット充填製品においては、加熱加工前の原料肉表面が柔らかいために、ミートネットが食肉にかたく食い込んでしまっていることが多く、消費者がミートネットを剥離する際にミートネットがはがれにくい、という問題があった。
【0004】
ミートネットを用いたものではないが、特許文献1では、燻製終了時にリテイナーから燻製食肉製品を容易に取り出すために、食肉表面にトランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムを添加した後、食肉を0℃以上10℃以下の温度で15時間以上保存しトランスグルタミナーゼを反応させて、ケーシングやセロハン等を用いることなくリテイナーに直接充填し燻煙する方法が記載されている。この方法では、低温下で長時間冷蔵庫保管する必要があったため、保管スペース確保や製造コスト上昇の問題があった。また、本方法では、食肉同士の結着性を問題にしておらず(段落番号[0016])、食肉製品の結着が必要な用途においては十分な効果を達成することができなかった。
【特許文献1】特開2006−136268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した現状に鑑み、ミートネットに充填した食肉製品において、食肉の結着性を維持しながら、ミートネットからの剥離が容易な食肉製品を、簡易な手法で製造する方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々検討したところ、原料肉をミートネットに充填する前に、原料肉の表面を、トランスグルタミナーゼ、乳タンパク質、及び、植物性タンパク質で処理するという簡便な処理によって、結着性は維持しながらも、ミートネットからの食肉製品の剥離が容易になることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、ミートネットに充填した食肉製品を製造する方法であって、原料肉の表面を、トランスグルタミナーゼ、乳タンパク質、及び、植物性タンパク質で処理した後、当該原料肉をミートネットに充填し、加熱加工を行う、ことを特徴とする製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって製造されるミートネット充填食肉製品は、ミートネットからきわめて容易に剥離することができ、しかも良好な味を保持している。本発明の製造方法は長時間にわたる保存時間を設定する必要がないので、きわめて簡便にかつ低コストで実施することが可能であり、しかも肉の結着性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で製造する食肉製品としてはミートネットに充填した食肉製品であれば特に限定されないが、具体的にはハムや焼き豚が挙げられる。本発明により製造された食肉製品はきわめて容易に食肉製品とミートネットとを分離することが可能なので、本発明は、ミートネットに充填された状態で最終消費者に販売される食肉製品の製造に適している。
【0010】
ミートネットとは、通常、表面が綿等で被覆されたゴム紐のような伸縮性の紐を網目状に編み上げて構成された袋のことをいう。その袋の内部に原料肉を収納した後、特定の紐を引っ張ることによって原料肉を締結する。そのため、特許文献1に記載されたような金属等の硬質素材で組まれているリテイナーとは相違する。一般には、原料肉にピックル液を注入して調味を行った後に、当該原料肉をミートネットに充填して、充填した状態で、最終的な加熱加工を行う。
【0011】
本発明では、原料肉をミートネットに充填する前に、原料肉の表面を、トランスグルタミナーゼ、乳タンパク質、及び、植物性タンパク質で処理する。
【0012】
トランスグルタミナーゼは、タンパク質中のグリシン残基とリジン残基間を架橋することによって、タンパク質を高分子化する作用を有しており、動植物を問わず自然界に広く存在する酵素である。例えば特許文献1等で、トランスグルタミナーゼを食肉表面に添加すると、表面部分の弾力及び硬さを増加させることが知られている。
【0013】
本発明においてトランスグルタミナーゼとしては、トランスグルタミナーゼを含有する酵素製剤を使用することができる。そのような酵素製剤としては、味の素社製のアクティバTGSや、アクティバTGB等が挙げられる。なお、アクティバTGSはトランスグルタミナーゼを1重量%含有しており、アクティバTGBはトランスグルタミナーゼ0.6重量%と、カゼインナトリウムを60重量%含有している。
【0014】
トランスグルタミナーゼの使用量は、原料肉の種類や調理方法等により変動し、一概には規定できないが、少なすぎるとミートネットからの剥離性を改善する効果を達成することができず、また、多すぎると食肉製品の食感が悪化したり、食肉表面が硬くなりすぎて結着性が悪化する傾向がある。なお、結着性とは、ミートネットで締結することで肉の切片同士が結着する性質のことをいい、結着性が悪化すると、ミートネットで締結しても切片同士が結着せず、食肉製品としての商品価値が低下する。以上の観点から、トランスグルタミナーゼの好適な使用量は肉総量(ピックル液が注入されている場合にはそれを含む)に対して0.001〜0.03重量%の範囲であり、より好ましくは0.005〜0.02重量%の範囲である。
【0015】
本発明で使用する乳タンパク質とは牛乳や乳製品から取得されるタンパク質である。本発明では、トランスグルタミナーゼと乳タンパク質とが、原料肉の蛋白に反応にして肉表面層のみを蛋白変性させることにより、肉表面層の硬さが向上して、ミートネットの食込みを防止することができる。また、乳タンパク質は、高い保水効果を有するため、肉中から滲出した肉汁を吸収する機能を果たし、肉汁による肉表面とミートネットとの接着を抑制することもできる。
【0016】
乳タンパク質の具体例としては特に限定されないが、例えば、カゼイン、カゼインの塩(例えばカゼインナトリウム)や、ホエー蛋白等が挙げられる。上述したアクティバTGBはトランスグルタミナーゼのほか、カゼインナトリウムも含有しているので、この製剤を使用する場合には、別途、乳タンパク質を添加する必要はない。
【0017】
乳タンパク質の使用量は、原料肉の種類や調理方法等により変動し、一概には規定できないが、少なすぎるとミートネットからの剥離性を改善する効果を達成することができず、また、多すぎると食肉表面が硬くなりすぎて結着性が悪化する傾向がある。これらの観点から、乳タンパク質の好適な使用量は肉総量に対して0.1〜2.0重量%の範囲であり、より好ましくは0.2〜1.0重量%の範囲である。
【0018】
本発明では、さらに植物性タンパク質を使用する。植物タンパク質は適度な粘性を有するために、肉切片同士の結着性を高めることができる。また、トランスグルタミナーゼと乳タンパク質による肉タンパク質の変性作用を促進する効果がある。さらには、食肉に添加する以前に乳タンパク質と混合しておくと、乳タンパク質の分散剤として作用し、乳タンパク質が吸湿してダマが発生するのを防止することができる。
【0019】
植物性タンパク質の具体例としては特に限定されないが、具体的には、大豆タンパク質や、えんどう豆タンパク質等の豆類由来タンパク質が挙げられる。
【0020】
植物性タンパク質の使用量は、原料肉の種類や調理方法等により変動し、一概には規定できないが、少なすぎると食肉表面の粘りが弱くなり結着性が悪化する傾向があり、また、上述した乳タンパク質の分散剤としての作用が得られにくくなる。逆に多すぎると食肉の味に悪影響を及ぼす傾向がある。これらの観点から、植物性タンパク質の好適な使用量は肉総量に対して0.1〜2.0重量%の範囲であり、より好ましくは0.2〜1.0重量%の範囲である。
【0021】
本発明において、これら添加剤で原料肉の表面を処理するには、ミートネットに充填する前の原料肉の表面に対してこれら添加剤をふりかけた後、表面層の肉タンパク質と反応するようにマッサージをすることが好ましい。この場合、特許文献1に記載のような、低温、長時間での保存処理は必要でない。
【0022】
トランスグルタミナーゼ、乳タンパク質、及び、植物性タンパク質からなる添加剤は、それぞれ個別に原料肉に添加してもよいが、あらかじめ混合してから原料肉に添加してもよい。上述したように、植物性タンパク質は乳タンパク質の分散剤としての機能を果たし得るので、少なくとも、植物性タンパク質と、乳タンパク質とはあらかじめ混合してから原料肉に添加することが好ましい。特に、トランスグルタミナーゼ、乳タンパク質、及び、植物性タンパク質のすべてをあらかじめ混合しておき、この混合物を原料肉に添加することが最も好ましい。これにより、ダマの発生を防止するとともに、工程を簡略化することができる。
【0023】
これら添加剤の処理の後、当該原料肉をミートネットに充填し、そのミートネットに充填された状態で加熱加工を行う。これによってミートネットに充填した食肉製品を製造することができる。加熱温度や時間等の加熱加工の条件は製造する食肉製品に応じて決定される。
【0024】
以下、本発明の実施形態に沿って本発明の製造方法を具体的に説明する。
【0025】
本発明の一実施形態によると、原料肉にピックル液を注入する第一工程、ピックル液を注入された原料肉をマッサージする第二工程、マッサージ後の原料肉をミートネットに充填する第三工程、及び、ミートネットに充填した原料肉の加熱加工を行う第四工程からなる製造方法において、第一工程の後で第二工程の前、又は、第二工程の後で第三工程の前において、原料肉の表面を、トランスグルタミナーゼ、乳タンパク質、及び、植物性タンパク質で処理する。
【0026】
第一工程でのピックル液は、ハムや焼き豚等の食肉製品の味を調整するために一般的に使用されているものであり、通常、食塩、グルタミン酸ナトリウム、有機酸、pH調整剤、野菜エキス、肉エキス等を含むものである。ピックル液は通常、インジェクター等を用いて肉の内部に注入される。ピックル液の使用量は適宜決定可能であるが、通常、原料肉100重量部に対して5重量部以上使用される。
【0027】
第二工程では、味をなじませるために、ピックル液が注入された原料肉をマッサージする。具体的には、原料肉をロータリーマッサージ機に投入してタンブリングを行えばよい。この際の条件としては、例えば、4℃で15時間といった条件が挙げられる。
【0028】
第三工程では、マッサージ後の原料肉をミートネットに充填する。これには、市販の充填機を使用することができる。
【0029】
第四工程では、ミートネットに充填された状態で加熱加工を行う。加熱温度や時間等の加熱加工の条件は製造する食肉製品に応じて決定される。
【0030】
トランスグルタミナーゼ、乳タンパク質、及び、植物性タンパク質の添加は、第一工程でピックル液を注入した後で、第二工程のマッサージを行う前にすることができる。この場合、第二工程のマッサージによって添加剤と表面層の肉タンパク質との反応が進行するので、当該反応のために別途工程を設ける必要がなく好ましい。また、第二工程でマッサージを行った後、第三工程でミートネットに充填する前に、前記添加剤の添加を行ってもよい。この場合、添加剤を添加した後に、表面層の肉タンパク質との反応を進行させるために、追加して短時間(例えば30分程度)のマッサージ工程を実施することが好ましい。
【0031】
従来、ピックル液を注入すると、原料肉がピックル液を吸収しきれず、原料肉からピックル液が漏出してドリップが発生する問題があった。ところが、本発明で前述した添加剤を使用すると、原料肉によるピックル液の吸収性が向上し、ドリップが発生しなくなる。これによって製造作業場の床が汚れにくくなるので、衛生面や環境面、排水負荷の点で非常に大きな利点である。
【0032】
以上によって、ミートネットに充填した食肉製品を製造することができる。得られたミートネット充填食肉製品は、肉の結着性が良好でありながら、肉がミートネットに食い込んでおらず、肉からミートネットを容易に剥離することができるので、食するにあたってきわめて便利である。
【0033】
また、従来法による食肉製品は肉が軟らかいため、製品の形状が崩れてしまう場合があったが、本発明ではトランスグルタミナーゼと乳タンパク質によって、肉表面のタンパク質が変性して若干硬くなるため、製品の形状が崩れにくくなり、初期の形状を維持することができる。
【実施例】
【0034】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0035】
実施例1(焼き豚の製造)
まず、肩ロース肉30kgを縦半分にカットした。インジェクターを使用して、下記成分を含むピックル液を肩ロース肉に対して30重量%注入した。
【0036】
(焼き豚用ピックル液)
食塩 7.0
砂糖 8.0
醤油 5.0
重合リン酸塩 1.5
亜硝酸Na 0.03
アスコルビン酸Na 0.15
分離大豆蛋白 2.0
卵蛋白 2.0
カゼインNa 1.0
水 73.32
計 100.0
【0037】
肉のうち10kgに対して下記成分からなる添加剤を添加した(例No.1)。これら添加剤は、添加前にあらかじめ混合しておき、混合物として添加した。なお、各成分の割合は、ピックル液が注入された肉総量に対する割合を示す。
【0038】
残りの20kgの肉には添加剤を添加しなかった。
(添加剤)
アクティバTGS(味の素社製) 1.0重量%
(この製剤はトランスグルタミナーゼを1重量%含むので、トランスグルタミナーゼ基準では0.01重量%)
カゼインNa(商品名:ハプロ、日本新薬社製) 0.5重量%
分離大豆蛋白(商品名:プロファム974 ADM社製) 0.5重量%
添加剤を添加した肉、添加しなかった肉それぞれを、ロータリーマッサージ機に投入してタンブリングを行った。タンブリングは、4℃の温度条件で、15分回転と15分休止を繰り返して15時間継続した。
【0039】
この後、添加剤を添加しなかった肉のうち10kgに対して、上記の添加剤を同様に添加した(例No.2)。その後、再度ロータリーマッサージ機に投入して同条件で30分間タンブリングを行った。
【0040】
残りの10kgに対しては、添加剤を添加しなかった(例No.3)。
【0041】
例No.1〜3の肉をそれぞれ500gの大きさにカットして、充填機を用いてミートネット(加藤製紐社製)に充填した。
【0042】
その後、それぞれの肉をオーブンに投入して、120℃で180分間の加熱処理を行った。加熱後の肉を冷蔵庫に入れて2℃で18時間冷却した。こうしてミートネットに充填された焼き豚を製造した。
【0043】
その後、各例のミートネットの剥離状態を評価したところ、添加剤処理後にタンブリングを行った例No.1では、ミートネットの肉への食い込みがなく、容易にミートネットが剥がれた。タンブリング後に添加剤で処理した例No.2では、ミートネットが肉から浮いており、非常に容易にミートネットが剥がれた。添加剤をまったく使用しなかった例No.3では、ミートネットが肉に食い込み、肉から剥がれなかった。
【0044】
実施例2(焼き豚の製造)
まず、肩ロース肉80kgを縦半分にカットした。インジェクターを使用して、上記ピックル液を肩ロース肉に対して30重量%注入した。
【0045】
肉1kgに対して、表1〜3に示す成分からなる添加剤を添加した。これら添加剤は、添加前にあらかじめ混合しておき、混合物として添加した。なお、各成分の割合は、ピックル液が注入された肉総量に対する重量割合を示す。
【0046】
各添加剤を添加した肉を、真空包装したうえで、ロータリーマッサージ機に投入してタンブリングを行った。タンブリングは、4℃の温度条件で、15分回転と15分休止を繰り返して15時間継続した。
【0047】
各漬け上りの肉から包装を剥がし、それぞれ500gの大きさにカットして、充填機を用いてミートネット(加藤製紐社製)に充填した。
【0048】
その後、それぞれの肉をオーブンに投入して、120℃で180分間の加熱処理を行った。加熱後の肉を冷蔵庫に入れて2℃で18時間冷却した。こうしてミートネットに充填された焼き豚を製造した。
【0049】
得られた各焼き豚についてミートネットの剥離状態、肉の結着状態、及び、味を評価した。結果を表1〜3に示す。なお、各表中の記載は以下のことを意味する。
良好:ミートネットの剥離状態、肉の結着状態、及び、味すべての面で非常に良好であった。
概ね良好:ミートネットの剥離状態、肉の結着状態、及び、味の面で概ね良好であった。
剥離不良:ミートネットが肉に食い込み、ミートネットが剥がれにくい問題があった。
結着不良:肉の折れた部分が結着していない問題があった。
味不良:焼き豚としての味が商品化可能なレベルになかった。
ダマ発生:添加物によるダマが発生し、外観上問題があった。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
実施例3(ロースハムの製造)
ロース肉30kgを500gの大きさにカットした。インジェクターを使用して、下記成分を含むピックル液をロース肉に対して30重量%注入した。
【0054】
(ロースハム用ピックル液)
食塩 8.0
水あめ 10.0
砂糖 2.0
大豆蛋白 2.0
カゼインNa 1.0
重合リン酸塩 1.0
亜硝酸Na 0.05
アスコルビン酸Na 0.5
水 75.45
計 100.00
【0055】
肉のうち10kgに対して下記成分からなる添加剤を添加した(例No.4)。これら添加剤は、添加前にあらかじめ混合しておき、混合物として添加した。なお、各成分の割合は、ピックル液が注入された肉総量に対する割合を示す。
【0056】
残りの20kgの肉には添加剤を添加しなかった。
(添加剤)
アクティバTGS(味の素社製) 1.0重量%
(トランスグルタミナーゼ基準では0.01重量%)
カゼインNa(商品名:ハプロ、日本新薬社製) 0.5重量%
分離大豆蛋白(商品名:プロファム974 ADM社製) 0.5重量%
添加剤を添加した肉、添加しなかった肉それぞれを、ロータリーマッサージ機に投入してタンブリングを行った。タンブリングは、4℃の温度条件で、15分回転と15分休止を繰り返して15時間継続した。
【0057】
この後、添加剤を添加しなかった肉のうち10kgに対して、上記の添加剤を同様に添加した(例No.5)。その後、再度ロータリーマッサージ機に投入して同条件で30分間タンブリングを行った。
【0058】
残りの10kgに対しては、添加剤を添加しなかった(例No.6)。
【0059】
例No.4〜6の肉をそれぞれ500gの大きさにカットして、充填機を用いてミートネット(加藤製紐社製)に充填した。
【0060】
その後、それぞれの肉を次の加熱処理を行った:乾燥(55℃、60分)、くん煙(60℃、20分)、及び、蒸煮(70℃、60分)。加熱処理後の肉を冷蔵庫に入れて2℃で18時間冷却した。こうしてミートネットに充填されたロースハムを製造した。
【0061】
その後、各例のミートネットの剥離状態を評価したところ、添加剤処理後にタンブリングを行った例No.4では、ミートネットの肉への食い込みがなく、容易にミートネットが剥がれた。タンブリング後に添加剤で処理した例No.5では、ミートネットが肉から浮いており、非常に容易にミートネットが剥がれた。添加剤をまったく使用しなかった例No.6では、ミートネットが肉に食い込み、肉から剥がれなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミートネットに充填した食肉製品を製造する方法であって、
原料肉の表面を、トランスグルタミナーゼ、乳タンパク質、及び、植物性タンパク質で処理した後、当該原料肉をミートネットに充填し、加熱加工を行う、ことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
原料肉にピックル液を注入する第一工程、ピックル液が注入された原料肉をマッサージする第二工程、マッサージ後の原料肉をミートネットに充填する第三工程、及び、ミートネットに充填した原料肉の加熱加工を行う第四工程からなり、
第一工程の後で第二工程の前、又は、第二工程の後で第三工程の前において、原料肉の表面を、トランスグルタミナーゼ、乳タンパク質、及び、植物性タンパク質で処理する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
第一工程の後で第二工程の前において、トランスグルタミナーゼ、乳タンパク質、及び、植物性タンパク質を用いた処理を行う、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
肉総量に対して、トランスグルタミナーゼの使用量が0.001〜0.03重量%であり、乳タンパク質の使用量が0.1〜2.0重量%であり、植物性タンパク質の使用量が0.1〜2.0重量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
乳タンパク質がカゼイン又はその塩であり、植物性タンパク質は分離大豆蛋白である、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
食肉製品が焼き豚又はハムである、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2009−296959(P2009−296959A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156233(P2008−156233)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(000118497)伊藤ハム株式会社 (57)
【Fターム(参考)】