説明

メイククレンジング用洗浄剤組成物

【課題】保存安定性が良好で、メイク汚れに対する洗浄力に優れ、尚且つ使用感に優れたメイククレンジング用洗浄剤組成物に関する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される非イオン界面活性剤を含むことを特徴とするメイククレンジング用洗浄剤組成物。
O-EO-AO-EO-R (1)R:炭素数8〜22の直鎖または分岐鎖状の飽和または不飽和の脂肪酸残基R:炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖状の短鎖アルキル基EO:エチレンオキサイド単位AO:炭素数3以上のアルキレンオキサイド単位x:1以上の整数y:2〜10の整数z:1以上の整数

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存安定性が良好で、メイク汚れに対する洗浄力に優れ、尚且つ使用感に優れたメイククレンジング用洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
メイククレンジング用洗浄剤は石鹸など水性洗浄料で落としにくいメイクアップ化粧品を効果的に除去する目的で使用され、油性汚れを溶解・分散し、ふき取りや洗い流しによって除去する効果をもつ。
【0003】
一般に溶剤型と呼ばれるメイククレンジング洗浄剤はクレンジングクリーム、クレンジングミルク、クレンジングローション、クレンジングジェル、クレンジングオイル等の形態があり、それぞれの使用性によって使い分けされている。
【0004】
最近は水や汗による化粧崩れを防ぐ製剤の開発が進められており、このような落ちにくい化粧を落とす為に、高い洗浄力を有するメイククレンジング用洗浄剤が求められている。
【0005】
さらにこのような製剤は高温下(40℃以上)、低温下(0℃以下)いずれにおいても保管される場合がある為、分離・白濁など商品価値を損なう事が無い様、保存安定性が高い製剤も同時に求められている。
【0006】
一般的に油分を多量に含むクレンジング化粧料は落ちにくい化粧、汚れに対してクレンジング効果が高いが、洗い流し時にべた付き、ヌルつきが生じ、また洗いあがり後に油性感が残ってしまう。また、保存安定性が悪いという欠点がある。
【0007】
油分を減らすことで油性感を低減させることはある程度できるが、油分を多量に含むクレンジング化粧料の特徴である落ちにくい化粧、汚れに対しての高いクレンジング効果を発揮できなくなる。その一方、アニオン活性剤を配合することで油性感を低減し、クレンジング効果は高められるが、皮膚安全性の点での問題が危惧される。
【0008】
また、これらのものは油性感の低減は改善されているものの十分とは言えず、保存安定性も十分でないことから温度によって霞みがかった外観になったり、沈殿が生じたりしてしまい、商品価値と使用性を損なってしまう問題があった。
【0009】
これらに対して特許文献1や特許文献2のように油性感の低減及び、保存安定性の向上に対して様々な試みが示されている。特許文献1にはHLBが5〜15の非イオン界面活性剤と液体油を必須成分とする非水クレンジング料が開示されているが、油性感の低減に関しては改善されているものの、保存安定性は十分ではない。特許文献2にはHLB7〜14の非イオン界面活性剤と水、常温で液体の油を配合するクレンジング化粧料が開示されているが、保存安定性がある程度改善されているものの、未だ十分とは言えない。
【0010】
この中で油性汚れに対して高い洗浄力有し、低温安定性が良好で使用感に優れる洗浄剤組成物として特許文献3にはポリオキシアルキレンアルキルエーテルと界面活性剤を含有することを特徴とする毛髪又は皮膚用洗浄剤組成物が開示されており、メイクアップ汚れ等に高い洗浄力を有し、低温安定性が良好で使用感に優れるとしているが、感触面で改善はされているものの、寒冷地における保存安定性については改善の余地があった。
【0011】
【特許文献1】特開昭62−108806号公報
【特許文献2】特開平3−161428号公報
【特許文献3】特開平11−148091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、メイク汚れに対する洗浄力に優れ、尚且つ使用感に優れたメイククレンジング用洗浄剤組成物であって、従来のものよりもより広い温度範囲で保存安定性に優れたメイククレンジング用洗浄剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる実情において、本発明者らは上記課題を解決する為に鋭意研究を重ねた結果、特定の非イオン界面活性剤を含むことを特徴とするメイククレンジング用洗浄剤組成物が、従来のよりも寒冷地における保存安定性が特に良好で、油性汚れ、皮脂汚れ等に対する洗浄力に優れ、尚且つ使用感に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は下記一般式(1)で表される非イオン界面活性剤を含むことを特徴とするメイククレンジング用洗浄剤組成物である。
O-(EO)-(AO)-(EO)-R (1)
:炭素数8〜22の直鎖または分岐鎖状の飽和または不飽和脂肪酸残基
:炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖状の短鎖アルキル基
EO:エチレンオキサイド単位
AO:炭素数3以上のアルキレンオキサイド単位
x:1以上の整数
y:2〜10の整数
z:1以上の整数
【0015】
本発明の好ましい態様として、前記非イオン界面活性剤が常温で液状のものであることを特徴とするメイククレンジング用洗浄剤組成物がある。
【0016】
また本発明の別の好ましい態様として、前記非イオン界面活性剤の脂肪酸残基がイソステアリン酸、オレイン酸由来のものであることを特徴とするメイククレンジング用洗浄剤組成物がある。
【0017】
更に本発明の別の好ましい態様として、炭化水素油、エステル油、シリコン油、植物油から選ばれる1種以上の常温で液体の油を含むことを特徴とする前記メイククレンジング用洗浄剤組成物がある。
【発明の効果】
【0018】
本発明の特定の非イオン界面活性剤を含むことを特徴とするメイククレンジング用洗浄剤組成物は、従来のものよりもより広い温度範囲で保存安定性が良好で、油性汚れ、皮脂汚れ等に対する洗浄力に優れ、尚且つ使用感に優れる洗浄剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明で用いられる特定の非イオン界面活性剤は、前記一般式(1)で表されるものであり、Rは炭素数8〜24の直鎖または分岐鎖状の飽和または不飽和脂肪酸残基である。例えば、直鎖状の飽和脂肪酸としてはオクタン酸、デセン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等が挙げられ、直鎖状の不飽和脂肪酸としてはオレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。分岐鎖状飽和脂肪酸としてはオクチル酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸イソヘプタン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、イソアラキン等が挙げられ、分岐状不飽和脂肪酸としては2,5−ジメチル−2−ヘプタデセン酸等が挙げられるが、これらの中で低温時の保存安定性とハンドリング性の点で特にイソステアリン酸、オレイン酸が好ましい。
【0020】
また、一般式(1)においてRは炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖状のアルキル基であり、使用時の感触の点で好ましくは炭素数1である。炭素数4を超えると洗い流し時にべた付き、ヌルつきが生じ、また洗いあがり後に油性感が残り感触が悪くなってしまう。
【0021】
さらに、一般式(1)においてEO付加モル数であるx及びzは1以上の整数で、好ましくはxは3〜9の整数で、zは1〜5の整数である。x及びzが0の場合、油分との相溶性、保存安定性に問題は無いが、油性感が残り感触が悪くなってしまう。PO付加モル数であるyは2〜10の整数であり、好ましくは4〜6の整数である。yが2未満の場合、油分との相溶性が悪くなり、また保存安定性に問題が出てしまう。yが10を越えると油との相溶性、保存安定性は良くなるが、油性感が残り感触が悪くなってしまう。
【0022】
この非イオン界面活性剤は通常の方法のように、短鎖アルコールにアルカリ触媒下で順にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイドをブロック付加し製造したポリオキシアルキレンアルキルエーテルに、脂肪酸を120〜230℃で酸又はアルカリ触媒の存在下で脱水反応をするなど、一般的な方法によって製造することが出来る。
【0023】
本発明のメイククレンジング用洗浄剤組成物に炭化水素油、エステル油、シリコン油、植物油から選ばれる1種以上の常温で液体の油を配合することにより、より優れたメイククレンジング効果が得られる。炭化水素油としては例えば流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が、エステル油としては例えば2−エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、イソノナン酸イソデシル、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール等が、シリコン油としてはジメチルポリシロキサン、ポリメチルシクロシロキサン、ポリエーテル変性メチルポリシロキサン、アミノ酸変性ジメチルポリシロキサン等が、植物油としてはオリーブ油、サフラワー油、ツバキ油等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0024】
また、本発明の効果を損なわない程度に、その用途の必要性に応じて他の成分を配合することができる。
【0025】
メイククレンジング用洗浄剤組成物の形状としてはクリーム状、ミルク状、ローション状、ジェル状、オイル状のいかような形態でも取ることができ、従来の製剤化技術において製造することができる。
【実施例】
【0026】
以下に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に指定のない限り、配合量は質量%で示す。
【0027】
(前記一般式(1)の非イオン界面活性剤の製造)
[実施例1]
(POE(5)POP(5)POE(3)メチルエーテルイソステアレートの製造)
5LオートクレーブにハイモールTM(東邦化学(株)製、ポリオキシエチレン(3)メチルエーテル)950gとKOH 7.8gを仕込み十分に窒素置換をした後、減圧下100〜110℃でアルコラート化を行った後、120〜130℃に昇温し密閉下でプロピレンオキサイド1683gを4時間かけて滴下し、圧変化が無くなるまで熟成した。続けて160〜170℃に昇温し、エチレンオキサイド1274gを2時間かけて滴下し圧変化が無くなるまで熟成した。60℃以下まで冷却した後、10%シュウ酸水溶液で触媒を中和した後、減圧脱水しPOE(5)POP(5)POP(3)メチルエーテルを得た。この内容物3500gとイソステアリン酸1430g、炭酸カリウム12gを5Lフラスコを仕込み十分に窒素置換をした後、200〜210℃まで昇温し、10時間熟成した。30℃に冷却後10%シュウ酸水溶液で触媒を中和した後、減圧脱水し、POE(5)POP(5)POE(3)メチルエーテルイソステアレートを得た。これを試料番号1とした。
【0028】
[実施例2]
(POE(5)POP(5)POE(3)メチルエーテルオレートの製造)
実施例1と同様にPOE(5)POP(5)POP(3)メチルエーテルを得た。この内容物3500gとオレイン酸1390g、炭酸カリウム12gを5Lフラスコを仕込み十分に窒素置換をした後、200〜210℃まで昇温し、10時間熟成した。30℃に冷却後10%シュウ酸水溶液で触媒を中和した後、減圧脱水し、POE(5)POP(5)POE(3)メチルエーテルオレートを得た。これを試料番号2とした。
【0029】
[実施例3]
(POE(9)POP(8)POE(3)メチルエーテルイソステアレートの製造)
5LオートクレーブにハイモールTM
700gとKOH8.7gを仕込み十分に窒素置換をした後、減圧下100〜110℃でアルコラート化を行った後、120〜130℃に昇温し密閉下でプロピレンオキサイド1984gを4時間かけて滴下し、圧変化が無くなるまで熟成した。続けて160〜170℃に昇温し、エチレンオキサイド1690gを2時間かけて滴下し圧変化が無くなるまで熟成した。60℃以下まで冷却した後、10%シュウ酸水溶液で触媒を中和した後、減圧脱水しPOE(9)POP(8)POP(3)メチルエーテルを得た。この内容物3500gとイソステアリン酸940g、炭酸カリウム11gを5Lフラスコを仕込み十分に窒素置換をした後、200〜210℃まで昇温し、10時間熟成した。30℃に冷却後10%シュウ酸水溶液で触媒を中和した後、減圧脱水し、POE(9)POP(8)POE(3)メチルエーテルイソステアレートを得た。これを試料番号3とした。
【0030】
[比較例1]
(POE(5)POP(5)POE(3)オクチルドデシルエーテルの製造)
実施例1と同様に、1Lオートクレーブにイソホール20(SASOL社製、オクチルドデシルアルコール)229gとKOH1.4gを仕込み十分に窒素置換をした後、減圧下100〜110℃で1時間アルコラート化を行った。160〜170℃に昇温し密閉下でエチレンオキサイド16gを2時間かけて滴下し、圧変化が無くなるまで熟成した。続けて120〜130℃に冷却し、プロピレンオキサイド213gを4時間かけて滴下し圧変化が無くなるまで熟成した。更に160〜170℃に昇温しエチレンオキサイド97gを1時間かけて滴下し圧変化が無くなるまで熟成した。60℃以下まで冷却した後、10%シュウ酸水溶液で触媒を中和した後、減圧脱水しPOE(5)POP(5)POP(3)オクチルドデシルエーテルを得た。これを比較品1とした。
【0031】
[比較例2]
(POE(8)オクチルドデシルエーテルの製造)
1Lオートクレーブにイソホール20(SASOL社製、オクチルドデシルアルコール)229gとKOH1.4gを仕込み十分に窒素置換をした後、減圧下100〜110℃で1時間アルコラート化を行った。160〜170℃に昇温し密閉下でエチレンオキサイド258gを4時間かけて滴下し、圧変化が無くなるまで熟成した。60℃以下まで冷却した後、10%シュウ酸水溶液で触媒を中和した後、減圧脱水しPOE(8)オクチルドデシルエーテルを得た。これを比較品2とした。
【0032】
[比較例3]
(POE(3)POP(2)POE(3)ラウリルエーテルの製造)
1Lオートクレーブにコノール1275
(新日本理化製、ラウリルアルコール)194gとKOH1.2gを仕込み十分に窒素置換をした後、減圧下100〜110℃で1時間アルコラート化を行った。160〜170℃に昇温し密閉下でエチレンオキサイド132gを2時間かけて滴下し、圧変化が無くなるまで熟成した。続けて120〜130℃に冷却し、プロピレンオキサイド116gを4時間かけて滴下し圧変化が無くなるまで熟成した。更に160〜170℃に昇温しエチレンオキサイド132gを2時間かけて滴下し圧変化が無くなるまで熟成した。60℃以下まで冷却した後、10%シュウ酸水溶液で触媒を中和した後、減圧脱水しPOE(3)POP(2)POE(3)ラウリルエーテルを得た。
【0033】
[実施例4]
(洗浄剤組成物としての評価)
表1に示した組成の洗浄剤組成物を通常の方法により製造し、以下の項目について評価した。評価結果についても表1に併せて示した。
a)相溶性;
表1に示した洗浄剤組成物の外観を室温にて目視により以下の判定基準により評価した。この結果を表1に示した。
◎:透明で沈殿なし
○:透明で僅かに沈殿
×:白濁または分離・沈殿
b)安定性(保存安定性)
表1に示した洗浄剤組成物を−10℃及び50℃で2週間放置し、外観を目視により以下の判定基準により評価した。この結果を表1に示した。
◎:透明で沈殿なし
○:透明で僅かに沈殿
×:白濁または分離・沈殿
c)官能評価
表1に示した洗浄剤組成物を、女性パネル10名を対象とし使用感に関する官能評価を行った。「メイク汚れとのなじみ易さ」、「マッサージ感」、「洗浄後のすすぎ易さ」、「洗い上がりのサッパリ感」の評価項目について、「非常に良い:5点」、「良い:4点」、「普通:3点」、「悪い:2点」、「非常に悪い:1点」と評価し、平均点を算出し以下の判定基準により評価した。
◎:5〜4点
○:4〜3点
×:3点未満
【0034】
【表1】

【0035】
表1の結果から、本発明品の1〜3を配合した洗浄剤組成物は、保存安定性、とりわけ低温での安定性に優れており、その官能評価も良好であることが確認された。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される非イオン界面活性剤を含むことを特徴とするメイククレンジング用洗浄剤組成物。
O-(EO)-(AO)-(EO)-R (1)
:炭素数8〜22の直鎖または分岐鎖状の飽和または不飽和脂肪酸残基
:炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖状の短鎖アルキル基
EO:エチレンオキサイド単位
AO:炭素数3以上のアルキレンオキサイド単位
x:1以上の整数
y:2〜10の整数
z:1以上の整数
【請求項2】
前記非イオン界面活性剤が常温で液状のものであることを特徴とする請求項1記載のメイククレンジング用洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記非イオン界面活性剤の脂肪酸残基がイソステアリン酸、オレイン酸由来のものであることを特徴とする請求項1又は2記載のメイククレンジング用洗浄剤組成物。
【請求項4】
更に炭化水素油、エステル油、シリコン油、植物油から選ばれる1種以上の常温で液体の油を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のメイククレンジング用洗浄剤組成物。


【公開番号】特開2008−31118(P2008−31118A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−208321(P2006−208321)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000221797)東邦化学工業株式会社 (188)
【Fターム(参考)】