説明

メインローラ用リフタおよびメインローラ運搬方法

【課題】メインローラの昇降や搬送、ワイヤソーの軸受けユニットに対するメインローラの取り付けや取り外しに際して、メインローラの高さ方向、横方向および水平出しの調整などの作業を容易にできるようにする。
【解決手段】
昇降案内用の支柱2を有する台車3と、支柱2に支持され、支柱2に沿って昇降自在の昇降部4と、昇降部4に支持され、横方向に移動可能な横移動部5と、横移動部5に対して水平方向の支軸6により揺動自在に支持された水平出し部7と、水平出し部7に取付けられ、搬送・保持対象としてのワイヤソーのメインローラ10の両端のボス11を支えるローラ受け8を有する一対のフォーク9と、一対のフォーク9のローラ受け8上のボス11を押さえる押さえレバー12とによって、メインローラ用リフタ1を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤソーのメインローラを保持して搬送するとき、メインローラをワイヤソーの軸受けユニットに取り付けるとき、およびワイヤソーの軸受けユニットからメインローラを取り外すときに利用するリフタ、およびリフタを利用するメインローラ運搬方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤソーは、複数のメインローラの間にワイヤを多重に巻き掛け、走行状態のワイヤを半導体などのワークに押し当てることによって、ワークを所定の厚みに切断する。そのワイヤソーの組み立て時に、メインローラを軸受けユニットに取り付ける作業がある。またワイヤソーのユーザ側では、メインローラが磨耗したとき、またはワークの切断仕様が変わったときに、メインローラの軸受けユニットからメインローラを取り外し、別のメインローラを軸受けユニットに取り付ける作業がある。
【0003】
特許文献1は、メインローラの搬送のための移動台車163を開示している。その移動台車163は、図15に示すように、ローラ受け台165の上の凹部65aにメインローラとしての加工用ローラ115、116、117を載せて搬送し、ローラ受け台165を昇降させて、加工用ローラ115、116、117をワイヤソー101に取り付けやすい高さの位置に案内する。この後、作業員は、ローラ受け台165上の加工用ローラ115、116、117をローラ受け台165から下側レール62Bまたは上側レール62Aの上に転がし、それらの加工用ローラ115、116、117をワイヤソー101の軸受けユニットに対し位置決めし、その位置で加工用ローラ115、116、117を軸受けユニットに取り付ける。
【0004】
ところが、メインローラが重いときに、ローラ受け台165の上や、レール62A、62Bの上で転がすことが不可能となり、そのままでは作業性が非常に悪い。また、軸受けユニットに対する加工用ローラ115、116、117の位置決めも重量をともなう困難な作業となり、その作業に長い作業時間がかかるという、作業能率上の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−283209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、ワイヤソーのメインローラ用のリフタにおいて、重量のあるメインローラの昇降や搬送、ワイヤソーの軸受けユニットに対するメインローラの取り付け、取り外しに際して、メインローラの高さ方向、横方向および水平出しの調整などの作業を容易にできるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題のもとに、本発明は、台車の支柱に対して昇降自在の昇降部と、昇降部に対して横方向に移動可能な横移動部と、横移動部に対して水平出し可能な状態で揺動自在に支持された水平出し部とによって、メインローラ用リフタを構成し、水平出し部と一体のフォークによりメインローラを支持し、フォークに付属する押さえレバーによって、メインローラを動き止め状態とするとともに、昇降部、横移動部および水平出し部の機能によって、メインローラを高さ方向、横方向に位置決めし、また傾きの調整によりメインローラを水平出しできるようにしている。
【0008】
さらに具体的に記載すると、本発明に係るメインローラ用リフタ(1)は、昇降案内用の支柱(2)を有する台車(3)と、支柱(2)に支持され、支柱(2)に沿って昇降自在の昇降部(4)と、昇降部(4)に支持され、横方向に移動可能な横移動部(5)と、横移動部(5)に対して水平方向の支軸(6)により揺動自在に支持された水平出し部(7)と、水平出し部(7)に取付けられ、搬送・保持対象としてのワイヤソーのメインローラ(10)の両端のボス(11)を支えるローラ受け(8)を有する一対のフォーク(9)と、一対のフォーク(9)のローラ受け(8)上のボス(21)を押さえる押さえレバー(12)とによって構成されている(請求項1)。
【0009】
昇降部(4)は、昇降部(4)の付属装置として昇降駆動装置(17)を備えている。昇降駆動装置(17)は、台車(3)側に搭載されているバッテリ(13)、台車(3)の支柱(2)側に取付けられバッテリ(13)により駆動される昇降用のモータ(14)、台車(3)の支柱(2)側に取付けられ、モータ(14)の回転によって駆動されて、昇降部(4)を昇降方向に駆動する伝達手段(15、16)によって構成されている(請求項2)。
【0010】
横移動部(5)は、横移動部5の付属装置として横移動駆動装置(21)を備えている。横移動駆動装置(21)は、昇降部(4)に取り付けられ、回転操作可能な横送りねじシャフト(19)、横移動部(5)に取付けられ、横送りねじシャフト(19)にねじ対偶として連結される横送りナット(20)によって構成されている(請求項3)。
【0011】
水平出し部(7)は、水平出し部(7)の付属装置として水平出し駆動装置(26)を備えている。水平出し駆動装置(26)は、横移動部(5)に取り付けられ、回転操作可能な水平出し送りねじシャフト(23)、水平出し部(7)に水平方向の連結軸(24)により取付けられ、水平出し送りねじシャフト(23)にねじ対偶として連結される水平出し送りナット(25)によって構成されている(請求項4)。
【0012】
また、押さえレバー(12)は、各フォーク(9)に対して水平方向の支点軸(27)により回動自在に取り付けられ、押さえレバー(12)の一端に取付けたインデックスプランジャ(28)を各フォーク(9)の側面に形成されている係止孔(29)に係り止めることによって固定されている(請求項5)。
【0013】
さらに、メインローラ運搬方法は、メインローラ用リフタ(1)および運搬箱(50)を利用して、メインローラ(10)を運搬する方法であり、上面および前面を開放可能な運搬箱(50)内に位置決め状態としてメインローラ(10)を収納し、メインローラ(10)の運搬を運搬箱(50)と共に行い、メインローラ(10)のボス(11)の下にメインローラ用リフタ(1)の一対のフォーク(9)を挿入し、フォーク(9)の上昇によって、運搬箱(50)内からメインローラ(10)を運び出し、またメインローラ用リフタ(1)の一対のフォーク(9)により支持されているメインローラ(10)を運搬箱(50)の上で一対のフォーク(9)の下降により運搬箱(50)内に位置決め状態として納め、一対のフォーク(9)の後退によって、運搬箱(50)内へメインローラ(10)を運び入れる(請求項6)。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るメインローラ用リフタ(1)によれば、一対のフォーク(9)によってワイヤソーのメインローラ(10)の両端のボス(11)を支えた状態で、昇降部(4)、横移動部(5)、水平出し部(7)による上下方向、横方向および傾き修正方向に移動または位置調整できる。このため、ワイヤソーの一対の軸受けユニット(45、46)に対するメインローラ(10)の位置決めや水平出し作業が容易となり、メインローラ(10)の取り付けや、取り外し作業が能率よく行える。また、メインローラ(10)の両端のボス(11)が一対のフォーク(9)のローラ受け(8)上で支えられているときに、押さえレバー(12)によって押さえられるから、メインローラ(10)の落下や不安定な状態がなくなり、メインローラ(10)の搬入、取り付け・取り外し、搬出作業が合理化できる(請求項1)。
【0015】
昇降部(4)に付属する昇降駆動装置(17)によると、支柱(2)の間の伝達手段(15、16)によって昇降移動の大きな距離が設定でき、しかも支柱(2)に沿ってモータ(14)による駆動方式として組み込める(請求項2)。
【0016】
横移動部(5)に付属する横移動駆動装置(21)によると、横移動用のハンドル(18)の回転操作によって、横移動部(5)が昇降部(4)に対して横方向に移動するから、メインローラ(10)の横方向の位置調整が容易であり、ワイヤソーの一対の軸受けユニット(45、46)に対するメインローラ(10)の横方向の位置決めが簡単かつ能率よく行える(請求項3)。なお、横送りねじシャフト(19)と横送りナット(20)とのねじ作用(操作時と逆方向の力に対する止まり作用)によって、横移動の後に、横移動部(5)が横方向に妄動することはない(請求項3)。
【0017】
水平出し部(7)に付属する水平出し駆動装置(26)によると、水平出し部(7)が傾いているときに、横移動部(5)に取り付けられた水平出し調整用のハンドル(22)を回転させることによって、水平出し送りねじシャフト(23)と水平出し送りナット(25)とのねじ対偶により、水平出し部(7)が水平出しされ、これによってメインローラ(10)も水平になり、メインローラ(10)のワイヤソーへの組み込みや、ワイヤソーからメインローラ(10)の取り外し作業が能率よく行える(請求項4)。また、水平出し後、水平出し部(7)は、水平出し送りねじシャフト(23)と水平出し送りナット(25)とのねじ作用、すなわち操作時と逆方向の力に対する止まり作用によって、メインローラ(10)の荷重を受けて、傾くことはない(請求項4)。
【0018】
押さえレバー(12)の開放時およびメインローラ(10)に対する押さえレバー(12)の押さえ時に、押さえレバー(12)の一端に取付けたインデックスプランジャ(28)がフォーク(9)の側面に形成されている係止孔(29)に係り止められるから、押さえレバー(12)の開放時に、押さえレバー(12)が不意に閉じず、また、メインローラ(10)に対する押さえレバー(12)の押さえ時に、押さえレバー(12)の意図しない開放によって、メインローラ(10)の落下事故などが未然に防止でき、安全上も有利である(請求項5)。
【0019】
さらに、メインローラ用リフタ(1)および運搬箱(50)を利用したメインローラ運搬方法によると、運搬箱(50)内にメインローラ(10)が収納されるため、搬送中のメインローラ(10)の損傷が確実に防止でき、また運搬箱(50)の上面および前面が開放可能となっており、運搬箱(50)の内部にメインローラ(10)が位置決め状態として収納されるため、運搬箱(50)からのメインローラ(10)の運び出し、運搬箱(50)へのメインローラ(10)の運び入れに際し、メインローラ用リフタ(1)の一対のフォーク(9)の挿入、進退および昇降の動作が障害なくでき、メインローラ用リフタ(1)によるメインローラ(10)の運搬が能率よく実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のワイヤソー用リフタの平面図である。
【図2】本発明のワイヤソー用リフタの側面図である。
【図3】本発明のワイヤソー用リフタの背面図である。
【図4】本発明のワイヤソー用リフタにおいて、支柱による昇降部の支持構造の拡大水平断面図である。
【図5】本発明のワイヤソー用リフタにおいて、昇降部に対する昇降駆動装置の拡大正面図である。
【図6】本発明のワイヤソー用リフタにおいて、昇降部による横移動部の支持構造の拡大垂直断面図である。
【図7】本発明のワイヤソー用リフタにおいて、横移動部に対する横移動駆動装置の拡大水平断面図である。
【図8】本発明のワイヤソー用リフタにおいて、横移動部による水平出し部の支持構造の拡大正面図である。
【図9】本発明のワイヤソー用リフタにおいて、水平出し部に対する水平出し駆動装置の拡大水平断面図である。
【図10】メインローラ用の運搬箱の正面図である。
【図11】メインローラ用の運搬箱の正面から見た水平断面図である。
【図12】メインローラ用の運搬箱の水平断面図である。
【図13】メインローラ用の運搬箱の側面から見た垂直断面図である。
【図14】ワイヤソーの一対の軸受けユニットにメインローラを取り付けるときの水平断面図である。
【図15】従来の移動台車を利用して、ワイヤソーの一対の軸受けユニットにメインローラを取り付けるとき側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1ないし図3は、本発明に係るメインローラ用リフタ1の全体的な構成を示しており、図4ないし図9は、各部の構造を示している。図1ないし図3に示すように、メインローラ用リフタ1は、搬送・保持対象としてのワイヤソーのメインローラ10を支えるために台車3、昇降部4、横移動部5、水平出し部7、一対のフォーク9および押さえレバー12を有している。
【0022】
台車3は、前方左右位置で方向固定の車輪31、後方の左右位置の一方でキャスター車32、他方でハンドル30付き方向変換可能な自在車33によって牽引または手押し式のものとして構成されており、やや後方の位置で昇降案内用として左右一対の支柱2を有している。ハンドル30は引きスプリング69によって常に直立するように付勢されている。なお、支柱2の背面側に手押し用ハンドル61が付設されている。
【0023】
台車3の前方中央位置には、必要に応じて、左右で対向する複数の位置決めガイドローラ66が前進方向に設けられている。これらの位置決めガイドローラ66は、台車3の前進時に後述の図14に例示するように、床面などに形成されている位置決めガイド65に案内される。なお、キャスター車32、自在車33の双方に、または何れか一方にモータを付設することによって、台車3を自走式のものとして構成することもできる。
【0024】
図4に示すように、昇降部4は、例えばC形鋼による一対の支柱2の間に位置し、左右上下のガイドローラ34によって支柱2に沿って昇降自在に設けられており、昇降部4に付属する昇降駆動装置17によって上下方向に駆動されるようになっている。
【0025】
図1ないし図5に示すように、昇降駆動装置17は、台車3に搭載されているバッテリ13、支柱2の間の連結板35の背面に取付けられた昇降用のモータ14、一対の支柱2の間で上下の位置に取付けられたスプロケットホイール16、これらのスプロケットホイール16に巻き掛けられたエンドレス状のチェーン15などによって構成されている。チェーン15の一部は、一対の支柱2の間の中央にあって連結部となっており、この連結部のアタッチメント60により昇降部4に連結されている。
【0026】
モータ14は、減速機付きモータであり、バッテリ13からの電力によって駆動され、そのときの出力回転を減速して、上側のスプロケットホイール16を回転させることによって、チェーン15をいずれかの方向に駆動し、チェーン15のアタッチメント60に連結されている昇降部4を支柱2に沿って上昇または下降させる。モータ14に内蔵されている減速機は、本来の減速機能のほかに、昇降部4に掛かる荷重に基づく逆駆動によってもチェーン15やスプロケットホイール16を回転させず、昇降部4を所定の高さに維持するという、自動止まり作用(停止機能)を営んでいる。
【0027】
前記のスプロケットホイール16やチェーン15は、モータ14によって駆動され、昇降部4を昇降方向に駆動する伝達手段を構成しているが、この伝達手段は、チェーン・スプロケットホイールに代わるものとして、タイミングベルト・タイミングプーリ、ラック・ピニオン、送りねじ・送りナットなどであってもよい。また、前記の停止機能は、モータ14に内蔵されている減速機の自動止まり作用によらないで、モータ14をブレーキ手段付きとし、モータ14の停止位置をブレーキ手段によって確保することもできる。
【0028】
図1ないし図3のほか、図6および図7に示すように、横移動部5は、昇降部4の前面にあって、上下左右のローラ36により昇降部4の前面で平行に取付けられているC形鋼製上下一対の案内レール37にそって各支柱2に直行する方向、つまり横方向に移動可能な状態として昇降部4に支持されており、横移動部5に付属する横移動駆動装置21によって横方向に駆動されるようになっている。
【0029】
図7に示すように、横移動駆動装置21は、昇降部4に支持された横移動用のハンドル18によって操作可能な横送りねじシャフト19、横移動部5に取付けられ、横送りねじシャフト19にねじ対偶として連結される横送りナット20によって構成されている。この例で、横移動用のハンドル18は、背面から見て右側にあり、背面位置の作業者によって操作しやすいように、背面に向けられた状態として、ギヤボックス38に回転自在に取り付けられている。ハンドル18の回転は、ギヤボックス38の内部の一対のベベルギヤ39、40によってハンドル18の軸に対して直角方向の横送りねじシャフト19に伝達され、横送りナット20を横送りねじシャフト19の方向に横移動させる。なお、横送りねじシャフト19の回転操作は、ハンドル18に代えて、専用のモータにより行うようにすることもできる。
【0030】
また、図1ないし図3のほか、図8および図9に示すように、水平出し部7は、横移動部5の前面にあって、上から見て、コ字状であり、横移動部5に対して中央の上側位置で水平な前後方向の支軸6により支持されている。支軸6による支持構造によって、水平出し部7は、正面から見て、横移動部5に対して振り子のように揺動し、水平出し部7に付属する水平出し駆動装置26の操作によって水平出し方向に傾き調整できるようになっている。
【0031】
なお、支軸6は、横移動部5の前面に固定されており、水平出し部7の例えば滑り形式の軸受け部70に対して回転自在となっているが、これとは逆に、水平出し部7の背面に固定されていて、横移動部5の軸受け部70に対して回転自在とすることもできる。また、水平出し部7と横移動部5との間に複数の受けローラ73が介在している。受けローラ73は、水平出し部7の揺動を許容しながらその下部を支えるために、水平出し部7の背面または横移動部5の前面に固定されており、それらの受けローラ73の軸線は、支軸6の中心線に交差する位置関係となっている。
【0032】
図8および図9に示すように、水平出し駆動装置26は、横移動部5に支持された水平出し調整用のハンドル22によって操作可能な水平出し送りねじシャフト23、水平出し部7に水平方向の連結軸24により取付けられた水平出し送りナット25により構成されている。水平出し送りナット25は、水平出し部7の連結軸24の水平な軸線の方向に回転自在であり、水平出し送りねじシャフト23にねじ対偶として連結される。なお、水平出し送りねじシャフト23の回転操作は、ハンドル22に代えて、専用のモータにより行うようにすることもできる。
【0033】
この例で、水平出し調整用のハンドル22は、背面から見て右側にあり、背面位置の作業者によって操作しやすいように、ハンドル18よりも低い位置で背面に向けられており、ギヤボックス41に取付けられている。水平出し調整用のハンドル22の回転は、ギヤボックス41の内部の一対のベベルギヤ42、43によりハンドル22の軸に対して直角方向の水平出し送りねじシャフト23に伝達され、水平出し送りナット25を移動させる。なお、水平出し部7にインジケータ67が取り付けられ、その先細りの指針は、横移動部5に取り付けられている目盛り板68の目盛りを指している。
【0034】
そして、水平出し部7は、搬送・保持対象としてのワイヤソーのメインローラ10を支えるために、前面側において一対のフォーク9、および押さえレバー12を有している。一対のフォーク9は、その後ろ側の部分で、水平出し部7の外側面に取付けられ、また前側の先端上部分でメインローラ10のボス11を受けて支えるために円弧状のローラ受け8を形成しており、補強のために2本のロッド71により左右で連結されている。
【0035】
押さえレバー12は、ローラ受け8によって支えられているボス11を押さえるためのものであり、各フォーク9の外側位置にあって、フォーク9に対して中間位置で水平方向の支点軸27により回動自在に取付けられ、一端でローラ受け8の円弧状の受けパッド64に対応する円弧状の押さえパッド44を有し、他端でインデックスプランジャ28を有している。インデックスプランジャ28は、各フォーク9の側面に1または2以上形成されている係止孔29に内蔵ばねの付勢力により入り込み、押さえレバー12を回り止め状態とする。
【0036】
次に、図10ないし図13は、メインローラ10の運搬箱50を示している。運搬箱50は、箱本体51、落とし込み式の前板52、開閉蓋53などからなる。箱本体51は、前面および上面で開放しており、左右の内側面に下側のローラ受け板54を有している。また開閉蓋53は、箱本体52の背面側に蝶番55によって開閉自在で、取り外し可能な状態として取付けられ、箱本体52の上開放面を塞ぐような平板状として構成されており、ローラ受け板54に上下で対応する位置に上側のローラ押さえ板56を有している。
【0037】
ローラ受け板54やローラ押さえ板56は、メインローラ10のボス11の外周形状に合わせて半円弧状またはV字状の窪みを形成している。ローラ受け板54と左右の側面板62の内面との間にスペーサ74があり、このスペーサ74は、ボス11の端面に当たってメインローラ10の軸線方向の動きを規制する。なお、運搬箱50は、運搬用フォークリフトによる持ち上げ・運搬を可能とするために、一般の荷役用パレットと同様に、底部の脚部57の間でフォークリフトのフォーク挿入空間を形成している。
【0038】
また、前板52は、左右の側面板62の案内溝63に対して一例として落とし込み式として着脱自在に取り付けられている。案内溝63に対する前板52の落とし込み状態(取り付け状態)で、前板52は、上端で開閉蓋53により押さえ付けられることによって、抜け止め状態となる。
【0039】
さて、ワイヤソーのメインローラ10は、運搬箱50の内部に位置決め状態として収納され、運搬箱50と共に運搬される。メインローラ10の収納状態で、メインローラ10のボス11は、下左右のローラ受け板54に載って、前後左右方向に動き止め状態となり、スペーサ74によっても軸線方向の動きを規制されている。ここで作業者が開閉蓋53を閉じると、ボス11は、上左右のローラ押さえ板56により押さえられる。このあと、作業者は、必要に応じて、運搬箱50に荷造り用のバンドを掛け、開閉蓋53を閉じた状態で固定する。
【0040】
運搬箱50の搬送に際して、作業者は、フォークリフトを運転して、運搬箱50の下にフォークリフトのフォークを入れ、運搬箱50と共にメインローラ10を持ち上げて目標の位置に搬送する。目標の位置でも同様な搬送によって、運搬箱50は、メインローラ用リフタ1の近くの位置に下ろされる。この後、作業者は、開閉蓋53を開き、前板52を引き上げて運搬箱50から取り外し、運搬箱50の上面および前面を開放して、運搬箱50の中からメインローラ10を取り出し可能な状態としてから、メインローラ用リフタ1を運搬箱50の近くまで移動させ、メインローラ用リフタ1を運搬箱50に対して正面から向き合わせる。
【0041】
この後に、作業者は、押さえレバー12を引き上げて、ローラ受け8を開放状態としたまま、減速機付きのモータ14を始動し、左右のフォーク9を適当な高さに設定してから、台車3の前進によって、一対のフォーク9をメインローラ10のボス11の下に挿入し、フォーク9を上昇させ、ローラ受け8の受けパッド64の位置でボス11を受け取り、次に後退させてから、押さえレバー12を下ろして、ローラ受け8の受けパッド64と押さえレバー12の押さえパッド44との間でボス11をつかんで、運搬箱50内からメインローラ10を運び出す。この状態のときに、前記のように、減速機付きのモータ14の自動止まり作用によって、昇降部4にメインローラ10の荷重が掛かっても、昇降部4は、そのときの荷重によって下降することはない。
【0042】
つぎに、作業者は、メインローラ10を取り付けようとするワイヤソーの近くの作業位置にメインローラ用リフタ1の台車3を移動させ、減速機付きのモータ14を駆動することによって、昇降部4をワイヤソーの左右一対の軸受けユニット45、46の高さに調節する。
【0043】
図14は、ワイヤソーの軸受けユニット45、46の間にメインローラ10を組み込むときの順序を示している。図14に例示するように、メインローラ用リフタ1の台車3の前進時に、床面またはワイヤソーの機械ベースなどに位置決めガイド65が形成されていると、複数の位置決めガイドローラ66が位置決めガイド65に位置規制されながら前進方向に案内されるため、台車3は一対の軸受けユニット45、46に対して作業のし易い適切な位置に案内される。なお、位置決めガイド65と位置決めガイドローラ66の設置位置は入れ替わっていてもよい。
【0044】
ここで作業者は、先ず、矢印aのように、台車3の前後移動の調節によって、保持中のメインローラ10を軸受けユニット45、46の間に案内し、それらの軸心をほぼ一致させる。
【0045】
このとき、水切り勾配の設定などによって、床面に傾きがあると、フォーク9上のメインローラ10が水平な一対の軸受けユニット45、46の中心軸に対して傾斜していることもある。フォーク9上のメインローラ10が水平な一対の軸受けユニット45、46の中心軸に対して修正可能な範囲を越えて傾斜していると認められるとき、作業者は、水平出し用のハンドル22、水平出し送りねじシャフト23を所定の方向に回転して、水平出し送りナット25を左右の方向に動かして、水平出し部7を支軸6を中心として揺動させ、フォーク9上のメインローラ10の中心線を水平な一対の軸受けユニット45の中心線にほぼ一致させて、水平出しを行う。
【0046】
このときの調整量は、インジケータ67と目盛り板68との相対位置の変化(目盛り)から視覚的に読み取れる。一対の軸受けユニット45は正確に水平状態として据え付けられているため、インジケータ67、目盛り板68は市販の簡易水準器によって構成することもできる。
【0047】
この水平出し作業によって、メインローラ10のワイヤソーへの組み込みや、ワイヤソーからメインローラ10の取り外し作業が能率よく行える。なお、水平出し後、水平出し送りねじシャフト23と水平出し送りナット25とのねじ作用(操作時と逆方向の力に対する止まり作用)によって、水平出し部7は、メインローラ10の荷重を受けて、傾くことはない。
【0048】
次に、作業者は、横移動用のハンドル18を所定の方向に回し、横送りねじシャフト19と横送りナット20とのねじ作用によって、横移動部5を横方向(水平方向)に移動させて、矢印bのように、メインローラ10を中心軸の方向に横移動(水平移動)させることによって、一方のボス11のテーパ孔47を向き合う軸受けユニット45のテーパ軸48にはめ込む。この状態で、横送りねじシャフト19と横送りナット20とのねじ作用(操作時と逆方向の力に対する止まり作用)によって、横移動の後に、横移動部5は横方向に妄動することはない。
【0049】
続いて、作業者は、メインローラ10を挟む方向すなわち矢印cの方向に、クイル状の軸受けユニット46を移動させ、他方のボス11のテーパ孔47に軸受けユニット46のテーパ軸49をはめ込む。これにより、メインローラ10は、テーパ部分の嵌まり合いにより芯出し状態として一対の軸受けユニット45、46の間に挟み込まれる。このように、横移動部5に付属する横移動駆動装置21による横方向の移動操作によって、一対の軸受けユニット45、46に対するメインローラ10の横方向の位置決めが簡単かつ能率よく行える。
【0050】
最後に、作業者は、クイル状の軸受けユニット46の中心の軸孔58に固定ボルト59を矢印dのように挿入して、その雄ねじを軸受けユニット45の雌ねじ72にねじ込んで、メインローラ10を2つの軸受けユニット45、46の間で締めつけて固定する。このようにして、メインローラ10は、2つの軸受けユニット45、46の間に取り付けられ、これらの軸受けユニット45、46と共に回転できる状態としてワイヤーソーに組み込まれる。
【0051】
以上のように、一対のフォーク9によるメインローラ10の両端のボス11を支えた状態で、昇降部4、横移動部5、水平出し部7によって上下方向、横方向および傾き修正方向に移動または位置調整できるから、ワイヤソーの一対の軸受けユニット45、46に対するメインローラ10の位置決めや水平出し作業が容易となり、メインローラ10の取り付けや、取り外し作業が能率良く行える。
【0052】
ワイヤーソーからメインローラ10を取り外すときは、以上の動作と逆の動作、すなわちメインローラ10を一対のフォーク9により支持し、このメインローラ10を運搬箱50の上で一対のフォーク9の下降によって運搬箱50内に位置決め状態として納め、一対のフォーク9の後退によって、運搬箱50の内部へメインローラ10を運び入れることになる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、ワイヤーソーのメインローラ10に限らず、その他の類似ローラの搬送、組み込みにも利用できる。
【符号の説明】
【0054】
1 メインローラ用リフタ 2 支柱
3 台車 4 昇降部
5 横移動部 6 支軸
7 水平出し部 8 ローラ受け
9 フォーク 10 メインローラ
11 ボス 12 押さえレバー
13 バッテリ 14 モータ
15 チェーン 16 スプロケットホイール
17 昇降駆動装置 18 ハンドル
19 横送りねじシャフト 20 横送りナット
21 横移動駆動装置 22 ハンドル
23 水平出し送りねじシャフト 24 連結軸
25 水平出し送りナット 26 水平出し駆動装置
27 支点軸 28 インデックスプランジャ
29 係止孔 30 ハンドル
31 車輪 32 キャスター車
33 自在車 34 ガイドローラ
35 連結板 36 ローラ
37 案内レール 38 ギヤボックス
39 ベベルギヤ 40 ベベルギヤ
41 ギヤボックス 42 ベベルギヤ
43 ベベルギヤ 44 押さえパッド
45 軸受けユニット 46 軸受けユニット
47 テーパ孔 48 テーパ軸
49 テーパ軸 50 運搬箱
51 箱本体 52 前板
53 開閉蓋 54 ローラ受け板
55 蝶番 56 ローラ押さえ板
57 脚部 58 軸孔
59 固定ボルト 60 アタッチメント
61 手押しハンドル 62 側面板
63 案内溝 64 受けパッド
65 位置決めガイド 66 位置決めガイドローラ
67 インジケータ 68 目盛り板
69 引きスプリング 70 軸受け部
71 ロッド 72 雌ねじ
73 受けローラ 74 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降案内用の支柱(2)を有する台車(3)と、支柱(2)に支持され、支柱(2)に沿って昇降自在の昇降部(4)と、昇降部(4)に支持され、横方向に移動可能な横移動部(5)と、横移動部(5)に対して水平方向の支軸(6)により揺動自在に支持された水平出し部(7)と、水平出し部(7)に取付けられ、搬送・保持対象としてのワイヤソーのメインローラ(10)の両端のボス(11)を支えるローラ受け(8)を有する一対のフォーク(9)と、一対のフォーク(9)のローラ受け(8)上のボス(21)を押さえる押さえレバー(12)とによって構成されている、ことを特徴とするメインローラ用リフタ(1)。
【請求項2】
台車(3)に搭載されているバッテリ(13)、台車(3)の支柱(2)側に取付けられバッテリ(13)により駆動される昇降用のモータ(14)、台車(3)の支柱(2)側に取付けられ、昇降用のモータ(14)によって駆動されて、昇降部(4)を昇降させる伝達手段(15、16)により、昇降部(4)に付属する昇降駆動装置(17)を構成する、ことを特徴とする請求項1記載のメインローラ用リフタ(1)。
【請求項3】
昇降部(4)に取り付けられ回転操作可能な横送りねじシャフト(19)、横移動部(5)に取付けられ、横送りねじシャフト(19)にねじ対偶として連結される横送りナット(20)によって、横移動部(5)に付属する横移動駆動装置(21)を構成する、ことを特徴とする請求項1または請求項2記載のメインローラ用リフタ(1)。
【請求項4】
横移動部(5)に取り付けられ、回転操作可能な水平出し送りねじシャフト(23)、水平出し部(7)に水平方向の連結軸(24)により取付けられ、水平出し送りねじシャフト(23)にねじ対偶として連結される水平出し送りナット(25)によって、水平出し部(7)に付属する水平出し駆動装置(26)を構成する、ことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載のメインローラ用リフタ(1)。
【請求項5】
押さえレバー(12)を各フォーク(9)に対して水平方向の支点軸(27)により回動自在に取付け、押さえレバー(12)の一端に取り付けたインデックスプランジャ(28)を各フォーク(9)の側面に形成されている複数の係止孔(29)に係り止める、ことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3または請求項4記載のメインローラ用リフタ(1)。
【請求項6】
上面および前面を開放可能な運搬箱(50)内に位置決め状態としてメインローラ(10)を収納し、メインローラ(10)の運搬を運搬箱(50)と共に行い、メインローラ(10)のボス(11)の下にメインローラ用リフタ(1)の一対のフォーク(9)を挿入し、フォーク(9)の上昇によって、運搬箱(50)内からメインローラ(10)を運び出し、またメインローラ用リフタ(1)の一対のフォーク(9)により支持されているメインローラ(10)を運搬箱(50)の上で一対のフォーク(9)の下降により運搬箱(50)内に位置決め状態として納め、一対のフォーク(9)の後退によって、運搬箱(50)内へメインローラ(10)を運び入れる、ことを特徴とするメインローラ用リフタ(1)および運搬箱(50)を利用したメインローラ運搬方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−208790(P2010−208790A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55940(P2009−55940)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000152675)コマツNTC株式会社 (218)
【Fターム(参考)】