説明

メカニカル切り替え器

【課題】コネクタを挿入し又は引き抜くだけで複数のポート間の信号の伝送経路を簡単に切り替えることができる、接触形のメカニカル切り替え器を提供する。
【解決手段】コネクタが第3のポートP3に挿入されること、及びコネクタが第3のポートP3から引き抜かれることに応じて機械的にスライドするスライダが、第3の入出力端2cを含む移動素子4を移動させる。移動素子4の移動により、移動素子4の第3の入出力端2cの端面が、固定素子3に含まれる第1の入出力端の端面と対向し、かつ接する状態と、固定素子3に含まれる第2の入出力端の端面と対向し、かつ接する状態との間の切り替えが行われる。移動素子4が移動する間、スライダ6により、移動素子4の入出力端2c、2dの端面と固定素子3の入出力端2a、2bの端面が、互いに接しないよう保たれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメカニカル切り替え器に関し、特に、信号を入力し又は出力するための複数のポートのうちの、あるポートにコネクタを挿入するか又はそのポートからコネクタを引き抜くことにより、複数のポート間の信号の伝送経路を簡単に切り替えることができる、メカニカル切り替え器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
切り替え器は、信号を入力し又は出力するための複数のポート間の信号の伝送経路を切り替える機器である。かかる切り替え器には、光信号を伝送する伝送路に光ファイバを利用した光切り替え器と、及び電気信号を伝送するための伝送路に電線を利用した電気切り替え器がある。
【0003】
切り替え器の各ポートには、コネクタを介して様々な機器を接続することができる。一例として、切り替え器の一方側には複数のポートが設けられており、そのうちの一つのポートには、ビデオモニタ等の出力装置が接続され、他のポートには、ビデオ記録装置が接続される。切り替え器の他方側にも複数のポートが設けられており、複数のポートのそれぞれにはビデオ記録装置が接続される。切り替え器がある状態にあるとき、切り替え器の一方側のポートに接続されたビデオ記録装置から出力される、例えばHDTV(High−Definition Television)信号等のビデオ信号は、切り替え器を経由して、切り替え器の一方側の他のポートに接続された出力装置に入力される。他方、切り替え器が別の状態にあるとき、切り替え器の他方側の一つのポートに接続された別のビデオ記録装置から出力されるビデオ信号は、切り替え器を経由して、切り替え器の一方側の他のポートに接続された出力装置に入力される。このようにして、切り替え器を使用して、ビデオ信号の伝送経路を、例えば、切り替え器の一方側の一つのポートに接続されたビデオ記録装置から切り替え器の一方側の別のポートに接続された出力装置に至る経路、切り替え器の他方側のポートに接続されたビデオ記録装置から切り替え器の一方側の別のポートに接続された出力装置に至る経路のいずれかに、選択的に切り替えることができる。
【0004】
メカニカル光切り替え器の例は、特許文献1(特開昭64−32225号公報)、特許文献2(特開平5−232390号公報)、特許文献3(特開平7−104200号公報)、特許文献4(特開2003−140066号公報)、特許文献5(WO2010/091056A1)に開示されている。
【0005】
特許文献1に開示されている光切り替え器は、光導入側と光導出側の固定部と、これら固定部に対して回転自在に支持された回転部とを有する。固定部を貫通状に固定されている2本の光ファイバが、光ファイバにより伝送される光を、固定部を通して回転部の端面部に導入する。回転部の内部には、別の2本の光ファイバと、直角プリズムが固定されている。そして、回転部を回転させることにより、回転部の回転角度に応じて、光の伝送形態を光ファイバの通過と、直角プリズムによる反射に切り替える。
【0006】
特許文献2に開示されている光切り替え器は、ベース基板の上下に貫通させられた拡径穴を有するベース基板と、ベース基板の拡径穴に嵌め込まれる円盤型回転基板と、回転基板を回転させる駆動装置とを備える。ベース基板には拡径穴の周りに複数の入出力用光通路が設けられ、拡径穴の内壁面に入出力用光通路の入出力口を分配してある。回転基板には、複数の切り替え用光通路が設けられ、回転基板の外周面に切り替え用光通路の入出力口を分配してある。そして、回転基板の回転によって、光通路を切り替える。
【0007】
特許文献3に開示されている光切り替え器は、複数のフェルールの組を用いた2×2光切り替え器であって、一方の群を内部に保持している円柱形の第1の切替部材と、他方の群を内部に保持している円柱形の内側切替部材、及び内側切替部材を中心線の周りに回転自在に内部に保持する円筒形の外部切替部材からなる第2の切替部材を有する。円筒は、第1の切替部材を後退及び復帰自在に、第1の切替部材と第2の切替部材の端面相互を対面させて内部に保持する。そして、円筒に対して外側切替部材を回転させることにより、第1の切替部材を後退及び復帰させ、これが後退している間にフェルールの他方の群を回転させて光ファイバの結合を切り替える。
【0008】
特許文献4に開示されている光切り替え器は、複数本の光ファイバ位置決め用の溝が平行に配列されて形成された光ファイバ支持部材と、複数本の固定側光ファイバと、移動側光ファイバとを有する。移動側光ファイバの一端部が溝に押し付けられていない待機状態では、光ファイバ支持部材状で固定側光ファイバの一端部より高い位置でその一端部と対向するように支持され、移動側光ファイバの一端部を、揺動レバーによって複数本の溝の配列方向に沿って移動させた後、溝に押し付けることにより、移動側光ファイバの一端部の端面を固定側光ファイバのいずれかの一端部の端面に選択的に突き合わせて、光ファイバの光路を切り替える。
【0009】
特許文献5に開示されている光切り替え器は、光ファイバジャックであって、フロント側の複数のポートと、バック側の複数のポートと、フロント側のポートとバック側のポートの間に設けられた、移動可能なリフレクタ(プリズム)を有する。ノーマルモードにおいて、バック側の一方のポートから入力された光信号は、バック側の一方のポートからバック側の他方のポートに至る経路に伝送される。フロント側の一方のポートに、光ファイバコネクタを嵌合している状態、すなわちパッチコードコネクタを差し込んでいる状態の割り込みモードにおいて、バック側の一方のポートから入力された光信号は、バック側の一方のポートからフロント側の一方のポートに至る経路に伝送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭64−32225号公報
【特許文献2】特開平5−232390号公報
【特許文献3】特開平7−104200号公報
【特許文献4】特開2003−140066号公報
【特許文献5】WO2010/091056A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1から3が開示する切り替え器では、人手により又は駆動装置により部品を回転し、信号経路を切り替えている。しかし、この切り替え器は、コネクタを嵌合可能なように構成されておらず、また、コネクタを挿入すること又は引き抜くことに応じて信号経路が切り替わるように構成されていない。
【0012】
特許文献4が開示する切り替え器では、移動側光ファイバを移動させるための、揺動レバー、ギヤ列、及びモータが用いられている。光路の切り替えが電気駆動によるため、周囲の電気機器からのノイズの影響を受けないような対策が必要となる場合ある。
【0013】
特許文献5が開示する切り替え器では、外部からコネクタを挿入し又は引き抜くことに応じて、切り替え用のリフレクタホルダが上下に動くように構成されている。しかしながら、この切り替え器は、光ビームの経路に空気層を含む、非接触形の切り替え器であり、空気層によりフレネル反射が発生する可能性がある。また、リフレクタ(プリズム)を含むため、ノーマルモードの高精度な光軸合わせとリフレクタの固定作業が面倒であり、コストの増加を招く可能性がある。さらに、この切り替え器に接続される光ファイバコネクタは、切り替え器のポートに勘合可能に構成されているだけでなく、中空の位置合わせスリーブを有し、そのスリーブは、スリーブの一端が、リフレクタホルダに届くように長尺であり、スリーブの他端が、光ファイバフェルールの端面からリフレクタまで光ビームを導くのに必要なレンズを含むレンズホルダと結合されているような、特殊な構成を有していなければならない。
【0014】
したがって、本発明は、上記した従来技術の問題点を解決し、コネクタを挿入し又は引き抜くだけで複数のポート間の信号の伝送経路を簡単に切り替えることができる、接触形のメカニカル切り替え器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記した課題を解決するために、本発明は、第1の入出力端及び第2の入出力端を含む固定素子と、第3の入出力端を含む移動素子と、第1のポート、第2のポート、及びコネクタと嵌合するように構成された第3のポートと、前記第1のポート、第2のポート、及び第3のポートと、前記第1の入出力端、第2の入出力端、及び第3の入出力端との間をそれぞれ結ぶ複数の伝送路と、前記コネクタが前記第3のポートに挿入されること、及び前記コネクタが前記第3のポートから引き抜かれることに応じて機械的にスライドするスライダとを備えた、メカニカル切り替え器を提供する。前記スライダは、前記コネクタが前記第3のポートに挿入されるときに前記移動素子を第1の位置から第2の位置に移動させ、前記コネクタが前記第3のポートから引き抜かれるときに、前記移動素子を前記第2の位置から前記第1の位置に移動させる。前記スライダは、前記コネクタが前記第3のポートに嵌合されていないとき、前記移動素子を前記第1の位置に保持する。この第1の位置では、前記移動素子の前記第3の入出力端の端面が、前記固定素子の前記第2の入出力端の端面に対向し、かつ前記端面が互いに接するよう位置している。また、前記スライダは、前記コネクタが前記第3のポートに嵌合されているとき、前記移動素子を前記第2の位置に保持する。この第2の位置では、前記移動素子の第3の入出力端の端面が、前記固定素子の前記第1の入出力端の端面に対向し、かつ前記端面が互いに接するよう位置している。さらに、前記スライダは、前記移動素子が前記第1の位置から前記第2の位置に移動する間、及び前記第2の位置から前記第1の位置に移動する間、前記移動素子の前記入出力端の端面と前記固定素子の前記入出力端の端面が、互いに接しないよう保つ。
【0016】
本発明に係るメカニカル切り替え器の好ましい実施の形態において、前記スライダは、前記コネクタの挿入に応じて前記移動素子を前記第1の位置から前記第2の位置へ移動させ、そして前記コネクタの引き抜きに応じて前記移動素子を前記第2の位置から前記第1の位置へ移動させるように、前記移動素子を案内する、一組の壁を有するよう構成して良い。
【0017】
また、本発明に係るメカニカル切り替え器の好ましい実施の形態によれば、メカニカル切り替え器が、前記第1の位置において、前記第2の入出力端の端面と前記第3の入出力端の端面の突き合わせ接続を構成し、前記第2の位置において、前記第1の入出力端の端面と前記第3の入出力端の端面の突き合わせ接続を構成するように、前記入出力端を位置合わせする押さえ機構と、前記移動素子が第1の位置と第2の位置の間にあるとき、前記押さえ機構による押さえを解く解除機構と、前記移動素子が第1の位置と第2の位置の間にあるとき、前記移動素子の前記第3の入出力端の端面、又は固定素子の第1及び第2の入出力端の端面を後退させる後退機構と、をさらに備えるよう構成しても良い。
【0018】
本発明に係るメカニカル切り替え器の好ましい実施の形態において、前記スライダの一つの面には、第1の凹部及び第2の凹部が形成されており、前記押さえ機構は、前記スライダの一つの面上を接触回転するローラとばねとによって弾性的に支持されたV溝押さえ板を含み、前記後退機構は、前記第3の入出力端、又は第1及び第2の入出力端を軸方向に弾性的に支持する支持部材を含んで良い。そして、前記押さえ機構の前記ローラが、前記第1の凹部又は前記第2の凹部にあるとき、前記ばねが前記V溝押さえ板を押し下げることにより前記押さえ機構を作動させ、前記押さえ機構の前記ローラが、前記第1の凹部と前記第2の凹部との間の面上にあるとき、前記V溝押さえ板を持ち上げることにより前記解除機構を作動させるとともに、前記V溝押さえ板の持ち上がりに応じて前記支持部材を押し込むことにより前記後退機構を作動させるよう構成して良い。
【0019】
本発明に係るメカニカル切り替え器の好ましい実施の形態において、前記第1のポートと前記第3の入出力端との間を結ぶ第1の伝送路、前記第2のポートと前記第2の入出力端との間を結ぶ第2の伝送路、及び前記第3のポートと前記第1の入出力端との間を結ぶ第3の伝送路が、それぞれ光ファイバであり、前記コネクタは光ファイバコネクタであり、前記第1、第2、及び第3の入出力端は、それぞれ前記光ファイバの一端を支持する光ファイバフェルールを含んで良い。
【0020】
また、本発明に係るメカニカル切り替え器の好ましい実施の形態において、前記第1のポートと前記第3の入出力端との間を結ぶ第1の伝送路、前記第2のポートと前記第2の入出力端との間を結ぶ第2の伝送路、及び前記第3のポートと前記第1の入出力端との間を結ぶ第3の伝送路が、それぞれ電線であり、前記コネクタは電気コネクタであり、前記第1、第2、及び第3の入出力端は、それぞれ電線の一端を支持するフェルール、又は電線の一端が接続される端子を端面に有するフェルールを含んでよい。
【0021】
本発明はまた、第1の入出力端及び第2の入出力端を含む固定素子と、第3の入出力端及び第4の入出力端を含む移動素子と、第1のポート、第2のポート、コネクタと嵌合するように構成された第3のポート、及びコネクタと嵌合するように構成された第3のポートと、前記第1のポート、第2のポート、第3のポート、及び第4のポートと、前記第1の入出力端、第2の入出力端、第3の入出力端、及び第4の入出力端との間をそれぞれ結ぶ複数の伝送路と、前記コネクタが前記第3のポート及び第4のポートの少なくとも一方に挿入されること、及び前記コネクタが前記第3のポート及び前記第4のポートから引き抜かれることに応じて機械的にスライドするスライダと、を備えるメカニカル切り替え器を提供する。前記スライダは、前記コネクタが前記第3のポート及び前記第4のポートの少なくとも一方に挿入されるときに前記移動素子を第1の位置から第2の位置に移動させ、前記コネクタが前記第3のポート及び前記第4のポートから引き抜かれるときに、前記移動素子を前記第2の位置から前記第1の位置に移動させる。前記スライダは、前記コネクタが前記第3のポート及び第4のポートのいずれにも嵌合されていないとき、前記移動素子を前記第1の位置に保持する。この第1の位置では、前記移動素子の前記第3の入出力端の端面が、前記固定素子の前記第2の入出力端の端面に対向し、かつ前記端面が互いに接するよう位置している。また、前記スライダは、前記コネクタが前記第3のポート又は第4のポートに嵌合されているとき、前記移動素子を前記第2の位置に保持する。この第2の位置では、前記移動素子の第3の入出力端の端面が、前記固定素子の前記第1の入出力端の端面に対向し、前記移動素子の第4の入出力端の端面が、前記固定素子の前記第2の入出力端の端面に対向し、かつこれら対向する端面が互いに接するよう位置している。さらに、前記スライダは、前記移動素子が前記第1の位置から前記第2の位置に移動する間、及び前記第2の位置から前記第1の位置に移動する間、前記移動素子の前記入出力端の端面と前記固定素子の前記入出力端の端面が、互いに接しないよう保つ。
【0022】
本発明に係るメカニカル切り替え器の好ましい実施の形態では、メカニカル切り替え器が、前記第1の位置において、前記第2の入出力端の端面と前記第3の入出力端の端面の突き合わせ接続を構成し、前記第2の位置において、前記第1の入出力端の端面と前記第3の入出力端の端面の突き合わせ接続と、前記第2の入出力端の端面と前記第4の入出力端の端面の突き合わせ接続を構成するように、前記入出力端を位置合わせする押さえ機構と、前記移動素子が第1の位置と第2の位置の間にあるとき、前記押さえ機構による押さえを解く解除機構と、前記移動素子が第1の位置と第2の位置の間にあるとき、前記移動素子の前記第3及び第4の入出力端の端面、又は前記固定素子の第1及び第2の入出力端の端面を後退させる後退機構と、をさらに備えるよう構成して良い。
【0023】
本発明に係るメカニカル切り替え器の好ましい実施の形態において、前記スライダの一つの面には、第1の凹部及び第2の凹部が形成されており、前記押さえ機構は、前記スライダの一つの面上を接触回転するローラとばねとによって弾性的に支持されたV溝押さえ板を含み、前記後退機構は、前記第3及び第4の入出力端、又は第1及び第2の入出力端を軸方向に弾性的に支持する支持部材を含み、前記押さえ機構の前記ローラが、前記第1の凹部又は前記第2の凹部にあるとき、前記ばねが前記V溝押さえ板を押し下げることにより前記押さえ機構を作動させ、前記押さえ機構の前記ローラが、前記第1の凹部と前記第2の凹部との間の面上にあるとき、前記V溝押さえ板を持ち上げることにより前記解除機構を作動させるとともに、前記V溝押さえ板の持ち上がりに応じて前記支持部材を押し込むことにより前記後退機構を作動させるよう構成して良い。
【0024】
本発明に係るメカニカル切り替え器の好ましい実施の形態において、前記第1のポートと前記第3の入出力端との間を結ぶ第1の伝送路、前記第2のポートと前記第2の入出力端との間を結ぶ第2の伝送路、前記第3のポートと前記第1の入出力端との間を結ぶ第3の伝送路、及び前記第4のポートと前記第4の入出力端との間を結ぶ第4の伝送路が、それぞれ光ファイバであり、前記コネクタは光ファイバコネクタであり、前記第1、第2、第3、及び第4の入出力端は、それぞれ前記光ファイバの一端を支持する光ファイバフェルールを含んで良い。
【0025】
本発明に係るメカニカル切り替え器の好ましい実施の形態において、前記第1のポートと前記第3の入出力端との間を結ぶ第1の伝送路、前記第2のポートと前記第2の入出力端との間を結ぶ第2の伝送路、前記第3のポートと前記第1の入出力端との間を結ぶ第3の伝送路、及び前記第4のポートと前記第4の入出力端との間を結ぶ第4の伝送路が、それぞれ電線であり、前記コネクタは電気コネクタであり、前記第1、第2、第3、及び第4の入出力端は、それぞれ電線の一端を支持するフェルール、又は電線の一端が接続される端子を端面に有するフェルールを含んで良い。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、コネクタが第3のポートに挿入されること、及びコネクタが第3のポートから引き抜かれることに応じて機械的にスライドするスライダが、第3の入出力端を含む移動素子を移動させる。この移動素子の移動により、移動素子の第3の入出力端の端面が、固定素子に含まれる第1の入出力端の端面と対向し、かつ接する状態と、移動素子の第3の入出力端の端面が、固定素子に含まれる第2の入出力端の端面と対向し、かつ接する状態との間の切り替えが行われる。したがって、接触形の切り替え器において、コネクタを挿入し又は引き抜くだけで複数のポート間の信号の伝送経路を簡単に切り替えることができる。また、本発明によると、移動素子が移動する間、スライダにより、移動素子の入出力端の端面と固定素子の入出力端の端面が、互いに接しないよう保たれる。したがって、切り替えの際に入出力端の端面同士が擦れ合うことにより端面が損傷し、伝送特性の劣化が生じるのを、防ぐことができる。
【0027】
上記した本発明の目的および利点並びに他の目的および利点は、以下の実施の形態の説明を通じてより明確に理解される。もっとも、以下に記述する実施の形態は例示であって、本発明はこれに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のメカニカル切り替え器の一例の斜視図である。
【図2】本発明のメカニカル切り替え器の一例の分解斜視図である。
【図3】コネクタが挿入されていない状態における平面図である。
【図4】コネクタが挿入されている状態における平面図である。
【図5】メカニカル切り替え器のスライダ部分と、固定素子及び移動素子の部分とを示す拡大断面図である。
【図6】メカニカル切り替え器のスライダ部分と、固定素子及び移動素子の部分とを示す拡大断面図である。
【図7】メカニカル切り替え器のスライダ部分と、固定素子及び移動素子の部分とを示す拡大断面図である。
【図8】メカニカル切り替え器のスライダ部分と、固定素子及び移動素子の部分とを示す拡大断面図である。
【図9】メカニカル切り替え器のスライダ部分と、固定素子及び移動素子の部分とを示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係るメカニカル切り替え器の好ましい実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0030】
本実施の形態に係るメカニカル切り替え器は、光信号を伝送する伝送路に光ファイバを利用した光切り替え器に本発明を適用した例である。このメカニカル切り替え器の各ポートには光ファイバコネクタが嵌合される。好ましい実施の形態において、光ファイバコネクタは、着脱式のプラグであり、メカニカル切り替え器のポートは、レセプタクル又はアダプタの一方に形成されたプラグ挿入口である。本発明によれば、光ファイバコネクタは、特許文献5に開示されたような専用品の光ファイバコネクタである必要はなく、SC(JIS C 5973,IEC 61754−4)、MU(JIS C 5983,IEC 61754−6)、LC(IEC 61754−20)等の現在の規格に適合又は準拠する光コネクタであって良く、又は将来制定される同様の又は類似の規格に適合又は準拠する光コネクタであって良い。
【0031】
図1は、本発明を適用したメカニカル切り替え器の一例の斜視図、図2はその分解斜視図、図3及び図4は、天板を外したメカニカル切り替え器の平面図である。
図1から図2を参照して、メカニカル切り替え器1は、下筐体11、天板12、下筐体11の一端に設けられたレセプタクル13、下筐体11の他端に設けられたレセプタクル14を含む。レセプタクル13は、ポートP1及びP2を有し、ポートP1及びP2のそれぞれは、光ファイバコネクタ(例えば、SC形光ファイバコネクタプラグ)を嵌合可能に構成されている。レセプタクル13のポートP1及びP2の反対側には、ポートP1及びP2にそれぞれ対応して、入出力端(例えば、簡易SC形フェルール)22a、22bが結合されている。他方、レセプタクル14は、ポートP3及びP4を有し、下筐体11に対してその長手方向にスライド可能に構成されたキャッチャ15との組み合わせにより、ポートP3及びP4のそれぞれに光ファイバコネクタ(例えば、SC形光ファイバコネクタプラグ)を嵌合可能に構成されている。そして、レセプタクル14のポートP3及びP4の反対側には、ポートP3及びP4にそれぞれ対応して、入出力端(例えば、簡易SC形フェルール)22c、22dが結合されている。なお、図3及び図4に示すように、入出力端22c、22dは、キャッチャ15内に設けられている。
【0032】
下筐体11の内部には、固定素子3、移動素子4、光ファイバ5a、5b、5c、5d、スライダ6が設けられている。固定素子3は、上部素子3aと、下筐体11に固定された下部素子3bからなり、固定素子3の内部には、第1及び第2の入出力端(例えば、MU形フェルール)2a、2bを含む。移動素子4は、支持部材18にそれぞれ挿入された、第3及び第4の入出力端(例えば、MU形フェルール)2c、2dを含む。支持部材18は、第3及び第4の入出力端2c、2dを、その軸方向に弾性的に支持する。
【0033】
光ファイバ5aは、ポートP1に対応する入出力端22aと第3の入出力端2cとを結ぶ第1の伝送路を提供する。同様に、光ファイバ5bは、ポートP2に対応する入出力端22bと第2の入出力端2bとを結ぶ第2の伝送路を提供し、光ファイバ5cは、ポートP3に対応する入出力端22cと第1の入出力端2aとを結ぶ第3の伝送路を提供し、光ファイバ5dは、ポートP4に対応する入出力端22dと第4の入出力端2dとを結ぶ第4の光伝送路を提供する。
【0034】
スライダ6は、コネクタが第3のポートP3及び第4のポートP4の少なくとも一方に挿入されること、及びコネクタが第3のポートP3及び第4のポートP4のいずれからも引き抜かれることに応じて、機械的にスライドするよう構成されている。具体的には、スライダ6は、キャッチャ15と共に、下筐体11の内側両側壁、底板、及び天板12により区画された空間内を、長手方向に前後にスライド可能に構成されている。本実施の形態において、スライダ6の両側には、キャッチャ15側と反対側に延びる、一対であるが非対称のアーム41a、41bが形成されており、これらアーム41a、41bの先端からは、バネ25を支持する一対の軸43a、43bが延びている。アーム41a、41bの内壁によって、図示のように、幅方向の距離が一定であるが、長手方向の途中で曲折している空間が形成されている。移動素子4は、スライダ6のこの空間内に配置され、移動素子4の幅方向に設けられた一組のローラ31a、31bが、アーム41a、41bの内壁上を接触回転することにより、移動素子4が、スライダ6の長手方向のスライドに応じて、幅方向に移動する。
【0035】
図3を参照して、図3は、メカニカル切り替え器1の下筺体11の他端に設けられたレセプタクル14のポートP3及びP4のいずれにもコネクタ(図示されていない)が嵌合されていないときの、メカニカル切り替え器1の構成を示している。このとき、スライダ6及びキャッチャ15は、ばね25により、ポートP3及びP4側に押された状態にあり、移動素子4は、スライダ6のアーム41a、41bの内壁によって形成される空間内の第1の位置に保持されている。移動素子4が第1の位置に保持されているとき、移動素子4の第3の入出力端2cの端面が、固定素子3の第2の入出力端2bの端面に対向し、かつ端面が互いに接するよう位置している。したがって、例えば、ポートP1から光信号が入力されるとき、光信号は、光ファイバ5a、第3の入出力端2c、第2の入出力端2b、及び光ファイバ5bの経路に伝送され、ポートP2から出力される。ポートP2から光信号が入力されるとき、光信号は、上記と逆の経路に伝送され、ポートP1から出力される。以下、このP1からP2へ至る信号の伝送経路、又はその逆の伝送経路が確立される切り替え状態を、「ループバック接続」という場合がある。
【0036】
図4を参照して、図4は、メカニカル切り替え器1の下筺体11の他端に設けられたレセプタクル14のポートP3及びP4のいずれか一方又は両方にコネクタ(図示されていない)が嵌合されているときの、メカニカル切り替え器1の構成を示している。このとき、そのコネクタの先端が、レセプタクル14の前方に位置するキャッチャ15と結合し、キャッチャ15を所定の距離押し込んだ状態で固定されることにより、キャッチャ15及びスライダ6がばね25を圧縮する方向にスライドした状態にあり、移動素子4は、スライダ6のアーム41a、41bの内壁によって形成される空間内の第2の位置に保持されている。移動素子4が第1の位置に保持されているとき、移動素子4の第3の入出力端2cの端面が、固定素子3の第1の入出力端2aの端面に対向し、かつ端面が互いに接するよう位置し、かつ、移動素子4の第4の入出力端2dの端面が、固定素子3の第2の入出力端2bの端面に対向し、かつ端面が互いに接するよう位置している。したがって、例えば、ポートP1から光信号が入力されるとき、光信号は、光ファイバ5a、第3の入出力端2c、第1の入出力端2b、及び光ファイバ5cの経路に伝送され、ポートP3から出力される。また、ポートP2から光信号が入力されるとき、光信号は、光ファイバ5b、第3の入出力端2a、第4の入出力端2d、及び光ファイバ5dの経路に伝送され、ポートP4から出力される。以下、このP1からP3へ至る信号の伝送経路、及びP2からP4へ至る信号の伝送経路が確立される切り替え状態を、「パラレル接続」という場合がある。
【0037】
本実施の形態において移動素子4は、スライダ6のアーム41a、41bの内壁によって形成される空間内に置かれる。そして、図3及び図4に示されるように、スライダ6の内壁は、対向して斜め方向に延びる一組の壁7a、7bを含んでおり、これら一組の壁7a、7bは、コネクタが第3のポートP3又は第4のポートP4に挿入されることに応じて移動素子4を第1の位置から第2の位置へ移動させ、そしてコネクタが第3のポートP3及び第4のポートP4のいずれからも引き抜かれることに応じて、移動素子4を前記第2の位置から前記第1の位置へ移動させるように、移動素子4を案内する。
【0038】
本実施の形態において、メカニカル切り替え器1は、第1から第4の入出力端2aから2dを位置合わせする押さえ機構を含む。すなわち、押さえ機構は、第1の位置において、第2の入出力端2bの端面と第3の入出力端2cの端面の突き合わせ接続を構成し、第2の位置において、第1の入出力端2aの端面と第3の入出力端2cの端面の突き合わせ接続と、第2の入出力端2bの端面と第4の入出力端2dの端面の突き合わせ接続を構成するように、これら入出力端を位置合わせする。
【0039】
より具体的には、押さえ機構は、V溝押さえ板26、及びその上部に設けられる板ばね27を含む。V溝押さえ板26の幅方向両端下部には、一組のローラ30a、30bが設けられている。V溝押さえ板26は、スライダ6の一つの面上を接触回転する一組のローラ30a、30bと板ばね27とによって、メカニカル切り替え器1の高さ方向(天板12と垂直な方向)に弾性的に支持されている。スライダ6のアーム41a、41bの一つの面には、第1の凹部45及び第2の凹部46が形成されている。ローラ30a、30bが、スライダ6の一つの面に形成された第1の凹部45又は第2の凹部46にあるとき、板ばね27がV溝押さえ板26を押し下げることにより押さえ機構を作動させる。
【0040】
さらに、本実施の形態によると、メカニカル切り替え器1は、移動素子4が第1の位置と第2の位置の間にあるとき、すなわち、移動素子4の一組のローラ31a、31bが一組の壁7a、7bの面上を回転接触して、移動素子4が第1の位置から第2の位置に、又はその逆に案内されているとき、上記押さえ機構による押さえを解く解除機構を含む。また、メカニカル切り替え器1は、移動素子4が第1の位置と第2の位置の間にあるとき、移動素子4の第3及び第4の入出力端2c、2dの端面を後退させる後退機構とをさらに含む。かかる解除機構及び後退機構の構成と動作を、以下に詳細に説明する。
【0041】
図5から図9は、メカニカル切り替え器のスライダ6部分の拡大断面図と、固定素子3及び移動素子4の部分とを示す拡大断面図である。これら拡大断面図は、図3及び図4に示すA−A部分、B−B部分にそれぞれ相当する。
【0042】
図5を参照して、コネクタがポートP3及びポートP4のいずれにも嵌合されておらず、移動素子4が第1の位置に保持されているとき、V溝押さえ板26の下部に設けられる一組のローラ30a、30bは、スライダ6のアーム41a、41bの一つの面上に形成された第1の凹部45の最下点に位置している。このとき、板ばね27がV溝押さえ板26を押し下げることにより、入出力端を位置合わせする。固定素子3の入出力端2a、2b、及び移動素子4の入出力端2c、2dは、それぞればね51を介して弾性的に支持されており、これにより、対向する入出力端の端面同士は、振動等の外力の影響を防いで、安定した接触を保つことができる。ここで、移動素子4は、ばね51を介して弾性的に支持された支持部材18を含むこと、支持部材18は、支持部材18のV溝押さえ板26側が、上方に傾斜した面に形成されていること、V溝押さえ板26の移動素子4側は、下方に傾斜した面に形成されていること、これらにより後退機構が構成されること、及び、図5に示された状態において上記の傾斜した面は、互いに非接触の状態にあることに留意されたい。
【0043】
図6を参照して、ポートP3及びポートP4のいずれかにコネクタを挿入する操作が開始されると、ばね25を押し込む方向にスライダ6がスライドし始める。V溝押さえ板26の下部のローラ30a、30bは、第1の凹部45の最下点を離れて面上を接触回転し、上方に移動する。換言すると、コネクタが挿入されるのに従い、スライダ6は、板ばね27の押し下げ力に対抗してV溝押さえ板26を持ち上げる。このようにして、コネクタを挿入する力を利用して、押さえ機構が解除され、V溝押さえ板26、及び板ばね27による押さえが解かれる。他方、V溝押さえ板26が持ち上がると、V溝押さえ板26の下方に傾斜した面と支持部材18の上方に傾斜した面が接し、それ以降、V溝押さえ板26を持ち上げる力が、移動素子4の支持部材18に伝達されることにより、支持部材18が、移動素子4の内部に押し込まれ始まる。ただし、図6に示された状態において、移動素子4のローラ31a、31bは、対向して斜め方向に延びる一組の壁7a、7bの面上に未だ来ていないため、移動素子4の幅方向の移動は、実質的に開始していない。
【0044】
図7を参照して、ポートP3及びポートP4のいずれかにコネクタを挿入する操作が進むと、ばね25を押し込む方向にスライダ6がさらにスライドし、V溝押さえ板26の下部のローラ30a、30bは、スライダ6の第1の凹部45と第2の凹部46との間の面上に達する。このとき、スライダ6は、板ばね27の押し下げ力に対抗してV溝押さえ板26をより高い位置に持ち上げるので、支持部材18が、移動素子4の内部により深く押し込まれる。このようにして、コネクタを挿入する力を利用して、移動素子4の第3及び第4の入出力端2c、2dの端面を後退させることができる。図7に示された状態において、移動素子4のローラ31a、31bは、対向して斜め方向に延びる一組の壁7a、7bの面上に来ており、スライダ6のスライドに応じて、移動素子4は幅方向に移動する。移動素子4が移動する間、スライダ6により、移動素子4の入出力端2c、2dの端面と固定素子3の入出力端2a、2bの端面が、互いに接しないよう保たれる。したがって、ループバック接続からパラレル接続への切り替えの際に入出力端の端面同士が擦れ合うことにより端面が損傷し、伝送特性の劣化が生じるのを、防ぐことができる。
【0045】
図8を参照して、ポートP3及びポートP4のいずれかにコネクタを挿入する操作が完了に近付くと、V溝押さえ板26の下部のローラ30a、30bは、スライダ6の第1の凹部45と第2の凹部46との間の面上から、第2の凹部45の最下点に向けて移動する。このとき、板ばね27によってV溝押さえ板26が押し下げられると、押さえ機構が再び作動する。他方、V溝押さえ板26が押し下げられると、移動素子4の支持部材18は、ばね51により外方に押し戻される。なお、図8に示された状態において、移動素子4のローラ31a、31bは、対向して斜め方向に延びる一組の壁7a、7bの面上を既に通りすぎているため、移動素子4の幅方向の移動は、実質的に終了している。
【0046】
次に図9を参照して、コネクタがポートP3及びポートP4のいずれかにコネクタを挿入する操作が完了する(コネクタが嵌合される)と、V溝押さえ板26の下部に設けられる一組のローラ30a、30bは、スライダ6の第2の凹部45の最下点に位置し、移動素子4が第2の位置に保持される。このとき、板ばね27がV溝押さえ板26を押し下げることにより、入出力端を位置合わせすること、固定素子3の入出力端2a、2b、及び移動素子4の入出力端2c、2dは、それぞればね51によって安定した接触を保つことは、移動素子4が第1の位置に保持されているときと同様である。
【0047】
以上、図5から図9を参照して、コネクタがポートP3及びポートP4のいずれかにコネクタを挿入する操作の場合の解除機構及び後退機構の動作を詳細に説明したが、コネクタがポートP3及びポートP4からコネクタを引き抜く操作の場合の、解除機構及び後退機構の動作は、スライダ6のスライド方向、V溝押さえ板26の一組のローラ30a、30bの接触回転方向を逆方向にして、図9から図5に示された各部の動きを逆に辿ることによって、当業者は容易に理解できるので、ここでの詳しい説明を省略する。
【0048】
以上要するに、本実施の形態によるメカニカル切り替え器は、(1)ポートにコネクタを挿入し、又は引き抜く操作を行うだけで、ループバック接続からパラレル接続への切り替えを行うことができる、(2)信号の伝送路の確立は、入出力端の端面同士の突き合わせ接続により行われるので、空気層によるフレネル反射の発生を防ぐことができる、(3)切り替えの際に入出力端の端面同士が一切擦れ合わないので、端面が損傷し、伝送特性の劣化が生じるのを防ぐことができる、等の多くの利点を有している。
【0049】
なお、本実施の形態において、レセプタクル14側のポート数は1以上で良く、第4のポートP4、第4の入出力端2d、及び光ファイバ5dを省略しても良い。
【0050】
また、本実施の形態において、移動素子4側に支持部材18を設けて後退機構を実現しているが、代替として、移動素子4側ではなく、固定素子3側に支持部材を設け、固定素子3の第1及び第2の入出力端2a、2bの端面を後退させるようにしても良い。
【0051】
また、本実施の形態において、V溝押さえ板26の移動素子4側に形成されている、下方に傾斜した面が、V溝押さえ板26から移動素子4側に突き出すように形成されているが、代替として、V溝押さえ板26の移動素子4側のアングルの一部を、傾斜した凹面に成形することにより、下方に傾斜した面が、V溝押さえ板26から移動素子4側に突き出さないように形成されていても良く、このような代替構造によっても、同様の後退機構を実現することができる。
【0052】
さらに、本実施の形態において、移動素子4の幅方向全体が、スライダ6のアーム41a、41bの内壁によって形成される空間内に位置しているが、移動素子4の幅方向の一部(例えば、移動素子4が、上部よりも幅の狭い下部を有し、その下部のみ)が当該空間内に位置するようにしても良い。
【0053】
また、本明細書及び特許請求の範囲において、「コネクタが第3のポート及び第4のポートから引き抜かれるとき」、「前記コネクタが前記第3のポート及び前記第4のポートから引き抜かれるとき」とは、第3のポート及び第4のポートのそれぞれ勘合されたコネクタが、2本同時に引き抜かれることを意味するものではなく、第3のポート及び第4のポートのいずれかから最後のコネクタが引き抜かれ、コネクタが1本も嵌合されていない状態になることを意味する。
【0054】
本実施の形態において、光信号を伝送する伝送路に光ファイバを利用した光切り替え器に本発明を適用した例を説明したが、本発明は、電気信号を伝送するための伝送路に電線を利用した電気切り替え器にも適用することができる。後者の場合、第1のポートと第3の入出力端との間を結ぶ第1の伝送路、第2のポートと第2の入出力端との間を結ぶ第2の伝送路、第3のポートと第1の入出力端との間を結ぶ第3の伝送路、及び第4のポートと第4の入出力端との間を結ぶ第4の伝送路が、それぞれ電線であり、コネクタは電気コネクタであり、第1、第2、第3、及び第4の入出力端は、それぞれ電線の一端を支持するフェルール、又は電線の一端が接続される端子を端面に有するフェルールを含んで良い。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のメカニカル切り替え器は、放送機器、音響機器、ビデオ機器、光通信機器等の相互接続における信号の伝送経路の切り替えに広く用いることができる。
【符号の説明】
【0056】
1 メカニカル切り替え器
2a、2b、2c、2d 入出力端
3 固定素子
4 移動素子
5a、5b、5c、5d 伝送路
6 スライダ
7a、7b 壁
P1、P2、P3、P4 ポート
11 下筐体
12 天板
13、14 レセプタクル
15 キャッチャ
22a、22b、22c、22d 入出力端
25 ばね
26 V溝押さえ板
27 板ばね
30a、30b ローラ
31a、31b ローラ
41a、41b アーム
43a、43b 軸
45 第1凹部
46 第2凹部
51 ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の入出力端及び第2の入出力端を含む固定素子と、
第3の入出力端を含む移動素子と、
第1のポート、第2のポート、及びコネクタと嵌合するように構成された第3のポートと、
前記第1のポート、第2のポート、及び第3のポートと、前記第1の入出力端、第2の入出力端、及び第3の入出力端との間をそれぞれ結ぶ複数の伝送路と、
前記コネクタが前記第3のポートに挿入されること、及び前記コネクタが前記第3のポートから引き抜かれることに応じて機械的にスライドするスライダと、
を備え、
前記スライダは、前記コネクタが前記第3のポートに挿入されるときに前記移動素子を第1の位置から第2の位置に移動させ、前記コネクタが前記第3のポートから引き抜かれるときに、前記移動素子を前記第2の位置から前記第1の位置に移動させ、
前記スライダは、前記コネクタが前記第3のポートに嵌合されていないとき、前記移動素子を前記第1の位置に保持し、前記第1の位置では、前記移動素子の前記第3の入出力端の端面が、前記固定素子の前記第2の入出力端の端面に対向し、かつ前記端面が互いに接するよう位置しており、
前記スライダは、前記コネクタが前記第3のポートに嵌合されているとき、前記移動素子を前記第2の位置に保持し、前記第2の位置では、前記移動素子の第3の入出力端の端面が、前記固定素子の前記第1の入出力端の端面に対向し、かつ前記端面が互いに接するよう位置しており、かつ
前記スライダは、前記移動素子が前記第1の位置から前記第2の位置に移動する間、及び前記第2の位置から前記第1の位置に移動する間、前記移動素子の前記入出力端の端面と前記固定素子の前記入出力端の端面が、互いに接しないよう保つ、
メカニカル切り替え器。
【請求項2】
前記スライダは、前記コネクタの挿入に応じて前記移動素子を前記第1の位置から前記第2の位置へ移動させ、そして前記コネクタの引き抜きに応じて前記移動素子を前記第2の位置から前記第1の位置へ移動させるように、前記移動素子を案内する、一組の壁を有する、
請求項1に記載のメカニカル切り替え器。
【請求項3】
前記第1の位置において、前記第2の入出力端の端面と前記第3の入出力端の端面の突き合わせ接続を構成し、前記第2の位置において、前記第1の入出力端の端面と前記第3の入出力端の端面の突き合わせ接続を構成するように、前記入出力端を位置合わせする押さえ機構と、
前記移動素子が第1の位置と第2の位置の間にあるとき、前記押さえ機構による押さえを解く解除機構と、
前記移動素子が第1の位置と第2の位置の間にあるとき、前記移動素子の前記第3の入出力端の端面、又は固定素子の第1及び第2の入出力端の端面を後退させる後退機構と、
をさらに備える、請求項2に記載のメカニカル切り替え器。
【請求項4】
前記スライダの一つの面には、第1の凹部及び第2の凹部が形成されており、
前記押さえ機構は、前記スライダの一つの面上を接触回転するローラとばねとによって弾性的に支持されたV溝押さえ板を含み、
前記後退機構は、前記第3の入出力端、又は第1及び第2の入出力端を軸方向に弾性的に支持する支持部材を含み、
前記押さえ機構の前記ローラが、前記第1の凹部又は前記第2の凹部にあるとき、前記ばねが前記V溝押さえ板を押し下げることにより前記押さえ機構を作動させ、
前記押さえ機構の前記ローラが、前記第1の凹部と前記第2の凹部との間の面上にあるとき、前記V溝押さえ板を持ち上げることにより前記解除機構を作動させるとともに、前記V溝押さえ板の持ち上がりに応じて前記支持部材を押し込むことにより前記後退機構を作動させる、
請求項3に記載のメカニカル切り替え器。
【請求項5】
前記第1のポートと前記第3の入出力端との間を結ぶ第1の伝送路、前記第2のポートと前記第2の入出力端との間を結ぶ第2の伝送路、及び前記第3のポートと前記第1の入出力端との間を結ぶ第3の伝送路が、それぞれ光ファイバであり、
前記コネクタは光ファイバコネクタであり、
前記第1、第2、及び第3の入出力端は、それぞれ前記光ファイバの一端を支持する光ファイバフェルールを含む、
請求項1から4のいずれかに記載のメカニカル切り替え器。
【請求項6】
前記第1のポートと前記第3の入出力端との間を結ぶ第1の伝送路、前記第2のポートと前記第2の入出力端との間を結ぶ第2の伝送路、及び前記第3のポートと前記第1の入出力端との間を結ぶ第3の伝送路が、それぞれ電線であり、
前記コネクタは電気コネクタであり、
前記第1、第2、及び第3の入出力端は、それぞれ前記電線の一端を支持するフェルール、又は前記電線の一端が接続される端子を端面に有するフェルールを含む、
請求項1から4のいずれかに記載のメカニカル切り替え器。
【請求項7】
第1の入出力端及び第2の入出力端を含む固定素子と、
第3の入出力端及び第4の入出力端を含む移動素子と、
第1のポート、第2のポート、コネクタと嵌合するように構成された第3のポート、及びコネクタと嵌合するように構成された第3のポートと、
前記第1のポート、第2のポート、第3のポート、及び第4のポートと、前記第1の入出力端、第2の入出力端、第3の入出力端、及び第4の入出力端との間をそれぞれ結ぶ複数の伝送路と、
前記コネクタが前記第3のポート及び第4のポートの少なくとも一方に挿入されること、及び前記コネクタが前記第3のポート及び前記第4のポートから引き抜かれることに応じて機械的にスライドするスライダと、
を備え、
前記スライダは、前記コネクタが前記第3のポート及び前記第4のポートの少なくとも一方に挿入されるときに前記移動素子を第1の位置から第2の位置に移動させ、前記コネクタが前記第3のポート及び前記第4のポートから引き抜かれるときに、前記移動素子を前記第2の位置から前記第1の位置に移動させ、
前記スライダは、前記コネクタが前記第3のポート及び第4のポートのいずれにも嵌合されていないとき、前記移動素子を前記第1の位置に保持し、前記第1の位置では、前記移動素子の前記第3の入出力端の端面が、前記固定素子の前記第2の入出力端の端面に対向し、かつ前記端面が互いに接するよう位置しており、
前記スライダは、前記コネクタが前記第3のポート又は第4のポートに嵌合されているとき、前記移動素子を前記第2の位置に保持し、前記第2の位置では、前記移動素子の第3の入出力端の端面が、前記固定素子の前記第1の入出力端の端面に対向し、前記移動素子の第4の入出力端の端面が、前記固定素子の前記第2の入出力端の端面に対向し、かつこれら対向する端面が互いに接するよう位置しており、かつ
前記スライダは、前記移動素子が前記第1の位置から前記第2の位置に移動する間、及び前記第2の位置から前記第1の位置に移動する間、前記移動素子の前記入出力端の端面と前記固定素子の前記入出力端の端面が、互いに接しないよう保つ、
メカニカル切り替え器。
【請求項8】
前記スライダは、前記コネクタの挿入に応じて前記移動素子を前記第1の位置から前記第2の位置へ移動させ、そして前記コネクタの引き抜きに応じて前記移動素子を前記第2の位置から前記第1の位置へ移動させるように、前記移動素子を案内する、一組の壁を有する、
請求項7に記載のメカニカル切り替え器。
【請求項9】
前記第1の位置において、前記第2の入出力端の端面と前記第3の入出力端の端面の突き合わせ接続を構成し、前記第2の位置において、前記第1の入出力端の端面と前記第3の入出力端の端面の突き合わせ接続と、前記第2の入出力端の端面と前記第4の入出力端の端面の突き合わせ接続を構成するように、前記入出力端を位置合わせする押さえ機構と、
前記移動素子が第1の位置と第2の位置の間にあるとき、前記押さえ機構による押さえを解く解除機構と、
前記移動素子が第1の位置と第2の位置の間にあるとき、前記移動素子の前記第3及び第4の入出力端の端面、又は前記固定素子の第1及び第2の入出力端の端面を後退させる後退機構と、
をさらに備える、請求項8に記載のメカニカル切り替え器。
【請求項10】
前記スライダの一つの面には、第1の凹部及び第2の凹部が形成されており、
前記押さえ機構は、前記スライダの一つの面上を接触回転するローラとばねとによって弾性的に支持されたV溝押さえ板を含み、
前記後退機構は、前記第3及び第4の入出力端、又は第1及び第2の入出力端を軸方向に弾性的に支持する支持部材を含み、
前記押さえ機構の前記ローラが、前記第1の凹部又は前記第2の凹部にあるとき、前記ばねが前記V溝押さえ板を押し下げることにより前記押さえ機構を作動させ、
前記押さえ機構の前記ローラが、前記第1の凹部と前記第2の凹部との間の面上にあるとき、前記V溝押さえ板を持ち上げることにより前記解除機構を作動させるとともに、前記V溝押さえ板の持ち上がりに応じて前記支持部材を押し込むことにより前記後退機構を作動させる、
請求項9記載のメカニカル切り替え器。
【請求項11】
前記第1のポートと前記第3の入出力端との間を結ぶ第1の伝送路、前記第2のポートと前記第2の入出力端との間を結ぶ第2の伝送路、前記第3のポートと前記第1の入出力端との間を結ぶ第3の伝送路、及び前記第4のポートと前記第4の入出力端との間を結ぶ第4の伝送路が、それぞれ光ファイバであり、
前記コネクタは光ファイバコネクタであり、
前記第1、第2、第3、及び第4の入出力端は、それぞれ前記光ファイバの一端を支持する光ファイバフェルールを含む、
請求項7から10のいずれかに記載のメカニカル切り替え器。
【請求項12】
前記第1のポートと前記第3の入出力端との間を結ぶ第1の伝送路、前記第2のポートと前記第2の入出力端との間を結ぶ第2の伝送路、前記第3のポートと前記第1の入出力端との間を結ぶ第3の伝送路、及び前記第4のポートと前記第4の入出力端との間を結ぶ第4の伝送路が、それぞれ電線であり、
前記コネクタは電気コネクタであり、
前記第1、第2、第3、及び第4の入出力端は、それぞれ前記電線の一端を支持するフェルール、又は前記電線の一端が接続される端子を端面に有するフェルールを含む、
請求項7から10のいずれかに記載のメカニカル切り替え器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−234059(P2012−234059A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102824(P2011−102824)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(591181229)カナレ電気株式会社 (9)
【Fターム(参考)】