説明

メタノールの酸化的変換方法

【課題】メタノールからポリオキシメチレンジメチルエーテルを生成する方法の提供。
【解決手段】メタノールと酸化剤とを触媒の存在下において接触反応させる。上記触媒は少なくとも1種類のVIB族金属成分と、少なくとも1種類のVIII族金属成分と、酸触媒活性を示す少なくとも1種類の分子篩とを含有し、上記少なくとも1種類のVIB族金属成分の含有量(金属酸化物換算)は、触媒の総重量に対して約0.5〜約50重量%であり、上記少なくとも1種類のVIII族金属成分の含有量(金属酸化物換算)は、触媒の総重量に対して約0.2〜約20重量%であり、上記酸触媒活性を示す少なくとも1種類の分子篩の含有量は、触媒の総重量に対して約40〜約95重量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメタノールの変換方法に関し、特にメタノールをポリオキシメチレンジメチルエーテルへと酸化的に変換させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
C1化学における技術研究では、原料であるメタノールから多種の有益な化学物質を生成することを重視している。
【0003】
例えば、触媒の存在下においてメタノールを脱水することにより、ジメチルエーテルを得ることができる。ジメチルエーテルは、ヘキサデカンの数が多いことから、優れた燃焼特性を持ち、液状石油ガスや車両用の燃料の代用品として広く用いられている。また、ジメチルエーテルはエアゾール、起泡剤、溶媒、抽出剤等に用いられる高圧ガスとしても使用される。
【0004】
米国特許第6,166,266号明細書には、MFI結晶構造を有するホウケイ酸塩を用いるか、プロトン酸を触媒として含有するイオン交換樹脂を用いて、ホルムアルデヒドおよびジメチルエーテルの含有物からポリオキシメチレンジメチルエーテル(CHO(CHO)CH、DMM、2≦X≦8)を合成する方法が開示されている。
【0005】
また、欧州特許出願公開第1,505,049号明細書には、フルオロスルホン酸を触媒に使用して、メチラールとポリオキシメチレンとからポリオキシメチレンジメチルエーテル(CHO(CHO)CH、DMM、2≦X≦5)を合成する方法が開示されている。
【0006】
ヘキサデカン数が60以上である高ヘキサデカンのポリオキシメチレンジメチルエーテル(DMM)は、圧縮点火型の内燃ディーゼルエンジン用の燃料又はディーゼル燃料の添加剤として用いられる。また、ポリオキシメチレンジメチルエーテル(DMM)は常温下で液状となるため、簡単に保管や運搬することができる。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、新たなメタノールの酸化的変換方法を提供することである。
【0008】
本発明は、メタノールからポリオキシメチレンジメチルエーテルを生成する新たな方法を提供するものであり、上記方法とは、メタノールと酸化剤とを触媒の存在下において接触反応させる工程を含み、上記触媒が、少なくとも1種類のVIB族金属成分と、少なくとも1種類のVIII族金属成分と、酸触媒活性を示す少なくとも1種類の分子篩(モレキュラーシーブ)とを含有し、且つ、上記少なくとも1種類のVIB族金属成分の含有量は、金属酸化物としてみたとき、当該触媒の総重量に対して約0.5〜約50重量%であり、上記少なくとも1種類のVIII族金属成分の金属酸化物としての含有量は、金属酸化物としてみたとき、当該触媒の総重量に対して約0.2〜約20重量%であり、上記酸触媒活性を示す少なくとも1種類の分子篩の含有量は、触媒の総重量に対して約40〜約95重量%であることを特徴としている。
【0009】
また本発明は、メタノールからポリオキシメチレンジメチルエーテル(DMM)を生成するための気相方法を更に提供するものであり、上記気相方法は、メタノールと酸化剤とを混合して、メタノールと酸化剤との混合ガスを調整する工程と、上記混合ガスを反応器へ導入する工程と、上記混合ガスを触媒層に通過させてDMMを含有する混合物を作成する工程とを含み、制御温熱条件に基づいて反応器の温度を調節する工程を含むことを特徴としている。
【0010】
従来の方法と比べ、本発明に係る方法では、メタノールから、ジメチルエーテルおよびポリオキシメチレンジメチルエーテル(DMM,2≦X≦8)への変換を1工程で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態を示すものであり、メタノールからポリオキシメチレンジメチルエーテルを1工程で生成する方法を示す概略図である。
【図2】本発明の他の実施形態を示すものであり、メタノールからポリオキシメチレンジメチルエーテルを1工程で生成する方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の方法では、上記触媒に含有されるVIB族金属成分としてはモリブデンが好ましく、VIII族金属成分としては鉄が好ましい。これらの金属成分はいずれも、塩、酸化物、または硫化物の形態となっていてもよく、そのなかでは酸化物の形態が好ましい。また、VIB族金属成分の含有量は、金属酸化物としてみたとき、上記触媒の総重量に対して約2〜約20重量%であることが好ましく、VIII族金属成分の含有量は、金属酸化物としてみたとき、上記触媒の総重量に対して約0.2〜約10重量%であることが好ましい。
【0013】
酸触媒活性を示す分子篩は、メソ多孔質構造を有する分子篩、マクロ多孔質構造を有する分子篩、および、それらを組み合わせた分子篩からなる一群より選択される分子篩であることが好ましい。上記メソ多孔質構造を有する分子篩としてはZSM−5分子篩であることが好ましく、上記マクロ多孔質構造を有する分子篩としてはY型分子篩であることが好ましい。また、上記メソ多孔質構造を持つ分子篩は、SiO/Al≧50であるZSM−5分子篩であることがより好ましく、上記マクロ多孔質構造を持つ分子篩は、HY、REY、REHY,USY,REUSYのY型分子篩のうち、1種類以上のY型分子篩であることがより好ましい。
【0014】
上記触媒に含有される分子篩の含有量は、触媒の総重量に対して約60〜約90重量%であることが好ましく、約70〜約90重量%であることがより好ましい。
【0015】
上記分子篩は市販の物でもよく、この分野に周知の方法を用いて作成された物でもよい。例えば、中国特許出願公開第1187462号明細書、中国特許第1121979号明細書、及び、中国特許第1257840号明細書には、異なるシリカ・アルミナ比および異なる結晶粒を含有しているリン光体含有ZSM−5分子篩や希土類元素含有ZSM−5分子篩、および、それらの合成方法が開示されている。また、中国特許出願公告第1005387号明細書、中国特許第1069553号明細書、中国特許出願公開第1205915号明細書、及び、中国特許出願公開第10610976号明細書には、HY、REY、REHY、USY、REUSYの分子篩と、それらの分子篩の合成方法が開示されている。これら全ての文献は本明細書において参照され、援用される。
【0016】
触媒の生成方法は、上記金属成分を上記分子篩にロードすることができれば、そのほかに特に制限されない。例えば、上記触媒の生成方法の1つとしては、上記金属成分の化合物の水溶液を用意し、酸触媒活性を示す分子篩に浸透させ、その後、上記分子篩を乾燥させ、且つ、燃成/不燃成させる方法がある。上記乾燥や燃成を行う方法及び条件は、触媒生成において公知である。上記分子篩の乾燥は、約50〜約300℃で約0.5〜約12時間行うことが好ましく、約100〜約250℃で約1〜約6時間行うことがより好ましい。一方、上記分子篩の燃成は、約350〜約650℃で約0.5〜約12時間行うことが好ましく、約400〜約600℃で約1〜約4時間行うことがより好ましい。
【0017】
本発明の方法では、上記触媒が任意の成形物であってもよく、例えば、ミクロスフィア、球形(スフィア)、タブレット、細長い形状等の成形物を挙げることができる。また、成形は、タブレット成形、押出成形、又は、ローリング・スフィア成形等の従来の方法を用いて行うことができる。成形は、分子篩を成形した後で金属成分を上記分子篩にロードしてもよく、又は、分子篩と金属成分との混合物を作成し、その後に上記混合物を成形してもよい。これにより、簡単に取り扱えて且つ種類が多岐にわたる成形物を触媒に使用することができる。
【0018】
上記成形を、タブレット成形、ローリング・スフィア成形、押出成形等の従来の方法を用いて行ってもよい。なお、従来の方法により成形を行う場合、成形作業を円滑に行うために、分子篩と金属成分との混合物に補助剤を導入してもよい。例えば、ストリップの押出成形時、押出を行う前に、上記混合物に対して押出補助剤並びに水を適量導入してもよい。導入する補助剤の種類及び導入量は、この分野において公知である。例えば、補助剤としては、セスバニアの粉末と、メチル・セルロースと、澱粉と、ポリビニルアルコールと、それらの混合物とからなる一群より選択されるものが挙げられる。
【0019】
本発明の方法では、上記触媒に、耐熱性の無機酸化マトリクスが更に含まれていることが好ましい。上記耐熱性の無機酸化マトリクスの含有量は触媒の総重量に対して80重量%以下であり、好ましくは60重量%である。
【0020】
上記耐熱性の無機酸化マトリクスは、触媒用マトリクスとして通常用いられるものである。例えば、上記耐熱性の無機酸化マトリクスは、アルミナと、シリカ(酸化ケイ素)と、酸化チタンと、酸化マグネシウムと、シリカ−アルミナと、シリカ−酸化マグネシウムと、シリカ−酸化ジルコニウムと、シリカ−酸化トリウムと、シリカ酸化ベリリウムと、シリカ−酸化チタンと、シリカ−酸化ジルコニウムと、酸化チタン−酸化ジルコニウムと、シリカ−アルミナ−酸化トリウムと、シリカ−アルミナ−酸化チタンと、シリカ−アルミナ−酸化マグネシウムと、シリカ−アルミナ−酸化ジルコニウムとからなる一群より選択される耐熱性の無機酸化マトリクスであり、なかでも、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、及びそれらの混合物のうち1つ以上を含んでいることが好ましい。
【0021】
上記触媒が耐熱性の無機酸化マトリクスを含有する場合、分子篩と耐熱性の無機酸化マトリクスとの混合物上に上記金属成分をロードできればよく、本発明に係る触媒の調整方法は特に制限されない。
【0022】
上記触媒の生成方法としては、
(1) 分子篩を耐熱性の無機酸化マトリクス又はその前駆物質と混合する工程と、
(2) 金属成分を含有する化合物の水溶液を作成する工程と、
(3) 上記(1)の工程により得られた混合物へ上記(2)の工程により得られた水溶液を浸透させ、その後、上記混合物に対して乾燥、燃成、又は、不燃成を行う工程、
とを含んでいる方法が好ましい。
【0023】
上記乾燥を行う方法及び上記燃成を行う方法、並びにこれらの方法の条件は、この分野において広く知られているものを用いる。上記乾燥は約50〜約300℃で約0.5〜約12時間行うことが好ましく、約10〜約200℃で約1〜約6時間行うことがより好ましい。一方、上記燃成は約350〜約600℃で約0.5〜約8時間行うことが好ましく、約400〜約500℃で約1〜約4時間行うことがより好ましい。
【0024】
耐熱性の無機酸化マトリクスの前駆物質と分子篩とを混合することにより上記触媒を生成した場合、この混合工程の後に、燃成工程を行うことが好ましい。上記燃成工程の方法並びに条件は、それぞれ触媒の作成において一般的に用いられているものを用いられる。上記乾燥は約50〜約300℃で約0.5〜約12時間行うことが好ましく、約10〜約200℃で約1〜約6時間行うことがより好ましい。上記燃成の条件としては、約350〜約600℃で約0.5〜約8時間上記燃成を行うことが好ましく、約400〜約500℃で約1時間〜約4時間ほど上記燃成を行うことがより好ましい。
【0025】
本発明に係る方法では、上記酸化剤は、酸素、又は、酸素と、上記条件下でメタノールに対して不活性であるガスとの混合ガスの何れかであることが好ましい。上記条件下ではメタノールに対して不活性であるガスとは、空気と、窒素と、不活性ガスと、それらの混合ガスとからなる一群より選択されることが好ましく、上記混合ガスに含有される酸素の体積量は約1〜約30重量%であることが好ましい。
【0026】
本発明は、メタノールと酸化剤とを上述の条件下で十分に接触反応させればよく、反応器は特に制限されない。例えば、反応器として、バッチタンク型反応器、固定層反応器、流動層反応器等を用いることができる。また、上記接触反応の条件として、下記に挙げるものが好ましい。すなわち、反応温度は、約50〜約500℃、好ましくは約100〜約400℃、より好ましくは約100〜約300℃、最も好ましくは約200〜約300℃の範囲とする。反応圧力は、約0.1〜約5MPa、好ましくは約0.1〜約5Mpa、より好ましくは約0.1〜約2MPaの範囲とする。メタノール供給の質量空間速度は、約0.5〜約50h−1、好ましくは約3〜約30h−1、より好ましくは約8〜20h−1の範囲とする。酸化物の量は、上記接触反応における酸素とメタノールのモル比が約0.01〜約0.5になるように、より好ましくは約0.05〜約0.3となるように調節する。
【0027】
また本発明に係る、メタノールからポリオキシメチレンジメチルエーテル(DMM)を生成する気相工程は、メタノールと酸化剤とを混合してメタノールと酸化剤との二元混合ガスを生成する工程と、上記二元混合ガスを反応器へ導入する工程と、上記二元混合ガスを触媒層に通過させ、DMMを含有する混合物を生成する工程とを含む気相工程であって、制御温度条件に基づいて、上記反応器の温度を調節する反応器の温度調節工程を更に含んでいることを特徴としている。
【0028】
上記反応器の温度調節工程は、メタノール供給の質量空間速度を変化させる変化工程でもよい。また、上記反応器の温度調節工程は、反応器の外部にある冷却剤を用いて冷却を行う冷却工程でもよい。上記冷却剤としては空気、水、熱媒体油のうち1つ以上を含むことができる。また、上記反応器の温度調節工程は、上記DMMを含有する混合物に含有される非DMM部分の循環量を制御する制御工程でもよい。上記制御工程は、上記DMMを含有する混合物に含有される非DMM部分を部分的に又は全体的に、上記反応器の上部から触媒層へ直接供給するか、もしくは、触媒層へ複数の段階に分けた分岐形式で供給する工程と、循環物の温度が0〜150℃の範囲となるように制御する工程とを含んでいる。原料のメタノールに対する上記循環物の含有量比は、0.1〜100の範囲とする。なお、上記制御工程を上述の工程の組み合わせとしてもよい。
【0029】
上記酸化剤は、酸素か、もしくは、酸素と、上記条件下ではメタノールに対して不活性であるガスとの混合ガスの何れかであることが好ましい。上記条件下ではメタノールに対して不活性であるガスは、空気と、窒素と、不活性ガスと、それらを混合した混合ガスとからなる一群より選択されることが好ましい。上記酸化剤が上記混合ガスである場合、上記混合ガスに含まれる酸素の体積量は1〜30%の範囲とする。
【0030】
上記反応器は、メタノールと酸素含有ガスとを上述の条件下において充分に接触反応されればよく、特に制限されない。例えば、上記反応器としてバッチタンク型反応器、固定層反応器、流動層反応器等を使用することができる。接触反応の条件は、下記に挙げる条件であることが好ましい。すなわち、反応温度は、約50〜約500℃、好ましくは約100〜約400℃、より好ましくは約100〜約300℃、最も好ましくは約200〜約300℃の範囲とする。反応圧力は、約0.1〜約10MPa、好ましくは約0.1〜約5MPa、より好ましくは約0.1〜約2MPaの範囲とする。メタノール供給の質量空間速度は、約0.5〜約50h−1、好ましくは約3〜30h−1、より好ましくは約8〜約20h−1の範囲とする。酸化剤の含有量は、接触反応中の酸素とメタノールのモル比が約0.01〜約0.5、好ましくは約0.05〜0.3となるように調節する。
【0031】
上記触媒層は固定層であり、上記触媒は、少なくとも1つのVIB族金属成分と、少なくとも1つのVIII族金属成分と、酸触媒活性を示す少なくとも1つ分子篩とを含んでいる。
【0032】
上記DMMを含有する混合物を分離工程に供給してもよい。本発明の方法では、上記混合物はジメチルエーテルと、ポリオキシメチレンジメチルエーテルと、水とを含む。なお、所望の分離を行うために、フラッシュ蒸発、常圧蒸留、減圧蒸留等の作業工程のうち1つ以上を任意に行ってもよい。
【0033】
図1を参照して、本発明に係る酸化的変換方法を更に説明する。メタノール酸化手段13において、外部にある精製メタノール(GB338−2004の第1級メタノール)と空気とをそれぞれパイプライン11・12を介して反応器の上部より供給し、これらを200〜228℃で反応させる。これにより、ポリオキシメチレンジメチルエーテルを含む混合ガスを発生させる。上記混合ガスを反応器の冷却ステージにて100〜120℃まで冷却することで、上記反応の反応生産物の熱劣化、又は、上記反応の中間産出物であるホルムアルデヒドが重合してポリホルムアルデヒドが形成されるのを防ぐ。
【0034】
次に、冷却された反応生産物をパイプライン14を介して生産物分離手段15に供給する。なお、この際に、メタノールの一部を吸収液体として供給してもよい。上記生産物分離手段15において、ポリオキシメチレンジメチルエーテルは、上記反応器の錘状部の上部から下部へと流れる循環液によって吸着されるが、ポリオキシメチレンジメチルエーテルとホルムアルデヒドとを微量に含む残余排ガスは、排出ガス処理部(不図示)へと送られ、焼却される。上記生産物分離手段15では、ポリオキシメチレンジメチルエーテルに含まれるメタノール、ジメチルエーテルホルムアルデヒド、メチラール、水を蒸発させる。なお、上記生産物分離手段15では、ジメチルエーテルを不活性媒体として使用するとともに、メタノール変換時に再利用する。ジメチルエーテルにより、上記生産物分離手段15の上記反応生産物の蒸留範囲並びに引火点を制御することができるので、ディーゼルオイルに似た特性を持つポリオキシメチレンジメチルエーテル生産物をパイプライン16から得ることができる。
【0035】
図1に示す手順では、メタノールと酸化剤とをそれぞれパイプライン11・12を介してメタノール変換手段13へ導入する。次に、反応生産物をパイプライン14を介して生産物分離手段15へと導入し、ジメチルエーテルと、ホルムアルデヒドと、メチラールと、水と、ポリオキシメチレンジメチルエーテルとを得る。このようして得られた物質はパイプライン16を介して排出する。上記メタノール変換手段13は急冷交換機を備え、ポリオキシメチレンジメチルエーテルの熱劣化や中間生産物であるホルムアルデヒドが重合してポリホルムアルデヒドを形成することを防いでいる。なお、上記急冷交換機の内部では、上述の熱劣化や重合が発生する温度(100〜120℃)より低い温度まで、上記反応生産物を冷却する。その後、パイプライン14を介して、上記反応生産物を生産物分離手段15へ導入する。
【0036】
本発明に係る他の実施様態は、図2に示す手順によって行われる。
【0037】
図2に示す手順は、少なくとも反応生産物の非DMM部分を反応装置13へと循環させる手段17を含んでいる。その他の点では、図1に示す手順と図2に示す手順とは相違しない。
【0038】
本発明の実施形態は、上記実施形態と、対応する記述並びに図面とに関連して説明されているが、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる態様にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0039】
下記の実施例に基づき、本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限らない。
【0040】
実施例1−7に、本発明に係る方法において用いられる触媒並びに触媒の作成方法を示す。
【0041】
〔実施例1〕
51gのモリブデン酸アンモニウムと5gの硝酸鉄を3Lの脱イオン水に溶かし、水溶液を作成した。その後、上記水溶液に700gのZSM−5分子篩(Changling Catalyst Plant 社製のSiO/ Al(モル)50)を加え、それらの混合物を作成した。5時間後、上記混合物を濾過し、200℃で2時間乾燥させた後に500℃で1時間燃成させた。これにより、触媒C1を得た。上記触媒C1の成分を下記の表1に示す。
【0042】
〔実施例2〕
51gのモリブデン酸アンモニウムと5gの硝酸鉄を3Lの脱イオン水に溶かし、水溶液を作成した。その後、上記水溶液に700gのUSY分子篩(Changling Catalyst Plant社製)を加え、これらの混合物を作成した。5時間後、上記混合物を濾過し、200℃で2時間乾燥させた後に500℃で1時間燃成させた。これにより、触媒C2を得た。上記触媒C2の成分を下記の表1に示す。
【0043】
〔実施例3〕
51gのモリブデン酸アンモニウムと5gの硝酸鉄を3Lの脱イオン水に溶かし、水溶液を作成した。その後、上記水溶液に700gのREY分子篩(希土類含有量6重量%、Changling Catalyst Plant社製)を加え、混合物を作成した。5時間後、上記混合物を濾過し、200℃で2時間乾燥した後に500℃で1時間燃成した。これにより、触媒C3を得た。上記触媒C3の成分を下記の表1に示す。
【0044】
〔実施例4〕
80gのモリブデン酸アンモニウムと4gの硝酸鉄を3Lの脱イオン水に溶かし、水溶液を作成した。その後、上記水溶液に700gのREY分子篩(希土類含有量6重量%、Changling Catalyst Plant社製)を加え、混合物を作成した。5時間後、上記混合物を濾過し、200℃で2時間乾燥した後に500℃で1時間燃成した。これにより、触媒C4を得た。上記触媒C4の成分を下記の表1に示す。
【0045】
〔実施例5〕
51gのモリブデン酸アンモニウムと5gの硝酸鉄を3Lの脱イオン水に溶かし、水溶液を調整した。その後、30℃にて5時間攪拌しながら、上記水溶液に7000gのREY分子篩(希土類含有量6重量%、Changling Catalyst Plant社製)を加えた。このようにして得られた触媒を200℃のオーブンに2時間入れ、触媒C5を得た。上記触媒C5の成分を下記の表1に示す。
【0046】
〔実施例6〕
51gのモリブデン酸アンモニウムと5gの硝酸鉄を3Lの脱イオン水に溶かし、水溶液を調整した。その後、上記水溶液に700gのHY分子篩(Changling Catalyst Plant社製)を加え、混合物を作成した。5時間後、上記混合物を濾過し、200℃で2時間乾燥させた後に500℃で1時間燃成させた。これにより、触媒C6を得た。上記触媒C6の成分を下記の表1に示す。
【0047】
〔実施例7〕
700gのREY分子篩(Changling Catalyst Plant社、希土類含有量6重量%)をREY分子篩比で10重量%のAlと混合させ、これらの混合物を直径1.2mmの円柱状のオリフィス板を用いて押出成形し、ストリップを作成した。次に、上記ストリップを120℃で3時間乾燥させ、その後、500℃で2時間燃成させた。これにより、触媒担体を得た。上記触媒担体の温度を室温まで下げた後、上記触媒担体に、51gのモリブデン酸アンモニウムと5gの硝酸鉄とを含有する水溶液3Lを5時間浸透させた。その後、上記触媒担体を濾過し、200℃で2時間乾燥させた後に500℃で1時間燃成させた。これにより触媒C7を得た。上記触媒C7の成分を下記の表1に示す。
【0048】
〔実施例8〕
700gのREY分子篩(希土類含有量6重量%)をREY分子篩比で30重量%のSiO−Alと混合させ、これらの混合物を作成した。次に、51gのモリブデン酸アンモニウムと5gの硝酸鉄を3Lの脱イオン水に溶かし、水溶液を作成した。その後、上記水溶液に上記混合物を加えた。5時間後、上記混合物を濾過し、200℃で2時間乾燥させた後に500℃で1時間燃成させた。これにより、触媒C8を得た。上記触媒C8の成分を下記の表1に示す。
【0049】
〔実施例9〕
102gのモリブデン酸アンモニウムと10gの硝酸鉄を3Lの脱イオン水に溶かし、水溶液を作成した。その後、上記水溶液に700gのREY分子篩(希土類含有量6重量%、Changling Catalyst Plant社製)を加え、これらの混合物を作成し、上記混合物を30℃で5時間攪拌した。このようして得られた触媒を200℃のオーブンに2時間入れ、触媒C9を得た。上記触媒C9の成分を下記の表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
〔実施例10〕
メタノールの変換を図2に示す手順で行った。なお、供給するメタノールはGB338−2004の第1級メタノールとし、反応器にはシェルアンドチューブ式(shell and tube)の固定層反応器を使用し、冷却剤には水を使用し、触媒には触媒C5を使用した。
【0052】
上記メタノールを12000kg/hにて供給し、1回の運転にて変換されるメタノールの変換率の範囲を96〜98%とする。また、上記DMMを4080kg/hにて排出し、循環用ジメチルエーテルを10000kg/hにて供給する。表2に他の反応条件を示し、下記の表3に反応生産物を示す。これにより、上述の条件下におけるDMMの選択性は34.6%に達することが示された。
【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

【0055】
実施例11〜24に、本発明が提供する方法及び、この方法がもたらす技術的効果を示す。
【0056】
接触反応は固定層反応器を用いて行い、メタノールにはBeijing Chemical Works社の分析用試薬を使用し、酸化剤には空気を使用した。触媒C1〜C6を圧縮してタブレット状にしたものを粉砕し、その後、篩に掛けることで20〜40メッシュの粒子を作成した。一方、触媒C7〜C8を粉砕後に篩に掛けることで、20〜40メッシュの粒子を作成した。
【0057】
下記の表4に実施例11〜24の触媒および反応条件をまとめる。
【0058】
接触反応から2時間経過した後、試料を取り出し、Agilent 6890クロマトグラフィによる分析を行った。
【0059】
メタノール変換=((MOH反応前−MOH反応後)/MOH反応前)×100%
ポリオキシメチレンジメチルエーテルの選択性=(DMM/MOH反応前−MOH反応後)×100%
下記の表5に結果を示す。
【0060】
〔比較例1〜2〕
実施例1および実施例4の分子篩を圧縮してタブレット状にしたものを粉砕し、篩に掛けることで20〜40メッシュの粒子を作成した。次に、実施例11の反応条件下で評価を行った。下記の表5に結果を示す。
【0061】
【表4】

【0062】
【表5】

【0063】
比較例の方法と比較した場合、本発明に係る方法、特に実施例17に示す方法では、メタノールからジメチルエーテルとポリオキシメチレンジメチルエーテル(DMM、2≦x≦8)への変換を1工程で行うことができた。触媒に含まれる分子篩をREY分子篩とした場合、メタノールの変換率は98.4%に達し、DMMの選択性は34.1に達した。したがって、本発明はDMMの高い歩留まりを必要とする生成手段に特に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタノールと酸化剤とを触媒の存在下で接触反応させる工程を含む、メタノールからポリオキシメチレンジメチルエーテルを生成する方法において、
上記触媒は、少なくとも1種類のVIB族金属成分と、少なくとも1種類のVIII族金属成分と、酸触媒活性を示す少なくとも1種類の分子篩を含有し、
上記少なくとも1種類のVIB族金属成分の含有量は、金属酸化物に換算して、上記触媒の総重量の0.5〜50重量%であり、
上記少なくとも1種類のVIII族金属成分の含有量は、金属酸化物に換算して、上記触媒の総重量の0.2〜20重量%であり、
上記酸触媒活性を示す少なくとも1種類の分子篩の含有量は、上記触媒の総重量の40〜95重量%であることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
上記触媒が含有するVIB族金属成分はモリブデンであり、
上記触媒が含有するVIII族金属成分は鉄であり、
上記VIB族金属成分の含有量は、金属酸化物に換算して、上記触媒の総重量の2〜20重量%であり、
上記VIII族金属成分の含有される量は、金属酸化物に換算して、上記触媒の総重量の0.2〜10重量%であることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
上記分子篩は、メソ多孔構造を持つ分子篩と、マクロ多孔構造を持つ分子篩と、それらの組み合わせと、からなる一群より選択され、
上記分子篩の含有量は、上記触媒の総重量の70〜90重量%であることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、
上記メソ多孔構造を持つ分子篩はZSM−5であり、上記マクロ多孔構造を持つ分子篩はY型分子篩であることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
上記Y型分子篩は、HYと、REYと、REHYと、USYと、REUSYと、それらの組み合わせと、からなる一群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、
上記Y型分子篩は、REYと、REHYと、REUSYと、それらの組み合わせと、からなる一群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、
上記触媒は耐熱性の無機酸化物マトリクスを更に含有し、上記耐熱性の無機酸化物マトリクスの含有量は、多くても、上記触媒の総重量の80重量%であることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、
上記耐熱性の無機酸化マトリクスは、アルミナと、シリカと、シリカ−アルミナと、それらの組み合わせと、からなる一群より選択され、
上記耐熱性の無機酸化マトリクスの含有量は、多くても、上記触媒の総重量の60重量%であることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、
上記接触反応は、温度を50〜500℃、圧力を0.1〜10MPa、メタノール供給の質量空間速度を0.5〜50h−1とする条件を含み、
上記酸化剤の量を、当該接触反応における酸素とメタノールとのモル比が0.01〜0.5となるように決定することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、
上記接触反応は、反応温度を100〜400℃、接触圧力を0.1〜5MPa、メタノール供給の質量空間速度を3〜30h−1とする条件を含み、
上記酸化剤の量を、当該接触反応における酸化剤とメタノールとのモル比が0.05〜0.3となるように決定することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
上記接触反応は、反応温度を100〜300℃、接触圧力を0.1〜2MPa、メタノール供給の質量空間速度を8〜20h−1とする条件を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、
上記酸化剤は、空気、又は、空気と、上記条件下においてメタノールに不活性であるガスとの混合ガスであることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、
上記条件下においてメタノールに不活性であるガスは、窒素と、不活性ガスとから選択される1種類以上のガスであることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項12記載の方法であって、
上記混合ガスの酸素含有量は1〜30%であることを特徴とする方法。
【請求項15】
メタノールと酸化剤とを混合して、メタノールと酸化剤との二元混合ガスを調整する工程と、
上記混合ガスを反応器へ導入する工程と、
上記ガスを触媒層に通過させて、ポリオキシメチレンジメチルエーテル(DMM)を含有する混合物を作成する工程とを含む、メタノールからDMMを作成する方法であって、
制御温熱条件に基づいて反応器の温度を調節する反応器の温度調節工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、
上記反応器の温度調節工程は、上記混合物の非DMM部分の循環量を制御して、上記温度を調節することを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、
上記混合物の非DMM部分の循環量の制御は、上記反応器の上部から非DMM部分を触媒層へと直接供給するか、又は、非DMM部分を触媒層へ複数の段階に分けた分岐形式で供給し、循環物の温度を0〜150℃に制御することを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法であて、
上記循環量と、原料であるメタノール量との比率は0.1〜100であることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項15に記載の方法であって、
上記反応器の温度調節工程は、上記反応器の外部の冷却剤を用いて冷却を行う冷却工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、
上記冷却剤は、空気、水、又は、熱媒体油であることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項15に記載の方法であって、
上記DMMを含有する混合物を分離工程に供給する工程を更に含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項15に記載の方法であって、
上記触媒層は固定層であり、
上記触媒は、少なくとも1種類のVIB族金属成分と、少なくとも1種類のVIII族金属成分と、酸触媒活性を示す少なくとも1種類の分子篩とを含有することを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項15に記載の方法であって、
上記酸化剤は、空気、又は、空気と、上記条件においてはメタノールに不活性なガスとの混合ガスであることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項15に記載の方法であって、
上記接触反応は、温度を50〜500℃、圧力を0.1〜10MPa、メタノール供給の質量空間速度を0.5〜50h−1とする条件を含み、
上記酸化剤の量を、当該接触反応における酸素とメタノールのモル比が0.01〜0.5となるような決定することを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、
上記接触反応は、反応温度を100〜400℃、反応圧力を0.1〜5MPa、メタノール供給の空間質量速度を3〜30h−1とする条件を含み、
上記酸化剤の量を、当該接触反応における酸素とメタノールのモル比が0.05〜0.3となるように決定することを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法であって、
上記接触反応は、上記反応温度を100〜300℃、上記反応圧力を0.1〜2MPa、上記メタノール供給の空間質量速度を8〜20h−1とする条件を含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−202651(P2010−202651A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42087(P2010−42087)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(503191287)中国石油化工股▲ふん▼有限公司 (35)
【出願人】(509059424)中国石油化工股▲ふん▼有限公司石油化工科学研究院 (14)
【Fターム(参考)】