説明

メタン発酵装置及びメタン発酵装置の運転方法

【課題】脱水等の余剰汚泥処理設備の小型化、ランニングコストの低減、メンテナンスの容易化を図る。
【解決手段】有機物をメタン発酵槽1でメタン発酵し、このメタン発酵した発酵汚泥を含む発酵液を、当該発酵液に夾雑物と共に浸漬する多孔金属体6により固液分離し、この固液分離による濾過によって透過液を得る一方で、濃縮した余剰な発酵汚泥及び夾雑物を排出ラインL7により排出し、このように、夾雑物により損傷してしまう有機膜に代えて多孔金属体6を用いることにより、発酵汚泥を含む発酵液に夾雑物と共に浸漬した状態での固液分離を可能とし、余剰汚泥濃度の高濃度化を一層図る。また、このように有機膜に代えて多孔金属体6を用いることで、長期間の使用を可能とすると共に、洗浄による損傷を起こり難くし洗浄を容易とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物をメタン発酵するメタン発酵装置及びメタン発酵装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メタン発酵装置として、有機性廃棄物をメタン発酵槽でメタン発酵しメタンと二酸化炭素を主成分とするバイオガスを得る一方で、このメタン発酵槽の発酵汚泥を膜分離槽に導入し、当該膜分離槽に浸漬する濾過膜により固液分離して透過液を得ると共に、分離濃縮された発酵汚泥をメタン発酵槽に返送し、これにより、メタン発酵槽の汚泥濃度を高濃度に維持し、メタン発酵槽の小型化を図るメタン発酵装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の装置にあっては、濾過膜として例えばポリエチレン等の樹脂から成る有機膜(孔径0.1〜0.5μm)が用いられる。また、メタン発酵槽の底部に堆積する余剰汚泥は当該底部に堆積する異物と共に引き抜かれ系外に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−24661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記特許文献1に記載の装置にあっては、余剰汚泥濃度をより一層高め、脱水等の余剰汚泥処理設備の小型化を図ることが望まれている。
【0005】
また、有機膜は経時的に劣化したり、メタン発酵汚泥に含まれる夾雑物が有機膜に接触することにより破損するため、2〜3年に一度交換する必要があり、ランニングコストが高いという問題がある。
【0006】
また、有機膜はガスや汚泥の上昇流による表面洗浄を行いながら使用されるのが一般的であるが、それでも使用を続けていくと経時的に目詰まりしてしまい、そのため、目詰まりを除去すべく有機膜の内側から外側に向かって洗浄水を通す所謂逆洗が効果的に行われるが、次亜塩素酸ナトリウムやシュウ酸ナトリウム等の薬品を用いて洗浄しなければならず、メンテナンスが面倒であり、膜の寿命にも悪影響を与える。
【0007】
また、有機膜はフラックス(透過流速束;単位面積単位時間あたりに膜を透過する液量)の温度依存性が大きく、温度が高い方が高いフラックスを得ることができるため、発酵温度は高温であることが、経済性を悪化させないための必須条件となるが、高温発酵(メタン発酵温度が55°C前後)は中温発酵(メタン発酵温度が38°C前後)に比較してアンモニアによる発酵阻害を受けやすく、従って、アンモニア濃度を低く維持するために高い希釈率とする必要があり、このように希釈率を高めると、膜を透過する透過量が増加し排水処理設備の負荷が大きくなり過ぎるという問題がある。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、余剰汚泥濃度の高濃度化が一層図られ脱水等の余剰汚泥処理設備の小型化が図られると共に、ランニングコストが低減され、且つ、メンテナンスが容易となるメタン発酵装置を提供することを目的とする。また、高温発酵以外にアンモニアによる発酵阻害を受け難い中温発酵も可能とされるメタン発酵装置の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるメタン発酵装置は、有機物をメタン発酵するメタン発酵槽を具備したメタン発酵装置において、メタン発酵された発酵汚泥を含む発酵液に夾雑物と共に浸漬し固液分離による濾過を行い透過液を得るための多孔金属体と、多孔金属体により濃縮された余剰な発酵汚泥及び夾雑物を排出するための排出ラインと、を備えたことを特徴としている。
【0010】
このようなメタン発酵装置によれば、有機物はメタン発酵槽によりメタン発酵され、このメタン発酵された発酵汚泥を含む発酵液は、当該発酵液に夾雑物と共に浸漬する多孔金属体により固液分離され、この固液分離による濾過によって透過液が得られる一方で、濃縮された余剰な発酵汚泥及び夾雑物は、排出ラインにより排出される。このように、夾雑物により損傷してしまう有機膜に代えて多孔金属体が用いられるため、発酵汚泥を含む発酵液に夾雑物と共に浸漬した状態での固液分離が可能とされ、その結果、余剰汚泥濃度の高濃度化が一層図られ脱水等の余剰汚泥処理設備の小型化が図られる。また、このように有機膜に代えて多孔金属体が用いられるため、長期間の使用が可能とされ、ランニングコストが低減されると共に、洗浄による損傷が起こり難く、洗浄が容易となりメンテナンスが容易となる。
【0011】
また、このように、経時劣化や夾雑物により破損しやすい有機膜に代えて多孔金属体を用いているため、メタン発酵槽内に多孔金属体を浸漬させて設置することも可能であり、このようにメタン発酵槽内に多孔金属体を設置することによって、排出ラインを、メタン発酵槽に接続されて当該メタン発酵槽の余剰な発酵汚泥及び夾雑物を排出する構成とすることができる。
【0012】
また、上記作用を好適に奏する構成として、多孔金属体は、メタン発酵槽の発酵汚泥を固液分離するための分離槽内に浸漬し、メタン発酵槽の底部の発酵汚泥及び夾雑物を供給ラインを通して分離槽に供給する一方で、分離槽の多孔金属体による固液分離により濃縮された発酵汚泥を返送ラインを通してメタン発酵槽に返送し、発酵汚泥をメタン発酵槽と分離槽との間で循環させるための汚泥循環ラインを備え、排出ラインは、分離槽に接続されて当該分離槽の余剰な発酵汚泥及び夾雑物を排出する構成も採用できる。
【0013】
このようなメタン発酵装置によれば、有機物はメタン発酵槽によりメタン発酵され、このメタン発酵槽の底部の発酵汚泥及び夾雑物は供給ラインを通して分離槽に導入され、当該分離槽内に浸漬する多孔金属体により固液分離され、この固液分離による濾過によって透過液が得られる一方で、分離濃縮された発酵汚泥は返送ラインを通してメタン発酵槽に返送され、分離槽の余剰な発酵汚泥及び夾雑物は排出ラインを通して排出される。このような構成を採用しても、上記と同様な効果、すなわち、余剰汚泥濃度の高濃度化が一層図られ脱水等の余剰汚泥処理設備の小型化が図られると共に、多孔金属体により、長期間の使用が可能とされランニングコストが低減され、且つ、洗浄による損傷が起こり難く洗浄が容易となってメンテナンスが容易となるという効果が得られる。
【0014】
また、分離槽は、当該分離槽と供給ラインとの接続口近傍に遮蔽板を備えていると、夾雑物が直接多孔金属体に接触することを防止できるため、好ましい。
【0015】
また、多孔金属体下部に散気管を備え、供給ラインと分離槽との接続口は、散気管よりも下方に位置していると、夾雑物が散気による流れに乗って多孔金属体に接触することを防止できるため、好ましい。
【0016】
また、供給ラインと分離槽との接続口と、分離槽と返送ラインとの接続口とは、対角線上に位置していると、分離槽内での汚泥濃度勾配が発生しないため、好ましい。
【0017】
また、本発明によるメタン発酵装置の運転方法は、上記メタン発酵装置の運転方法であって、先ず、多孔金属体を有する多孔金属体ユニットのその内外の水頭差のみを透過推進力とした水頭差濾過を行い、次いで、水頭差濾過を止め、多孔金属体に対して、ポンプによる吸引を利用したポンプ吸引濾過を行うことを特徴としている。
【0018】
このようなメタン発酵装置の運転方法によれば、先ず、多孔金属体を有する多孔金属体ユニットのその内外の水頭差のみを透過推進力とした水頭差濾過が行われるため、適度なフラックスにより、短時間で多孔金属体に対して発酵汚泥が付着し始める。次いで、水頭差濾過が止められ、多孔金属体に対して、ポンプによる吸引を利用したポンプ吸引濾過が行われるため、発酵汚泥が付着し始めた多孔金属体に対してケーキ層が容易且つ適度な厚さに形成され、適度なフラックスの安定した濾過が実施される。このように、短時間で多孔金属体に発酵汚泥が付着し始めるため、短時間で透過液SSを少なくできると共に、この透過液SSの少ない状態を維持した適度なフラックスの安定した濾過を続けて実施できる。また、このように、有機膜ではなく多孔金属体を用いることで、温度に関係なく、適度なフラックスの安定した濾過を実施できるため、発酵温度を高くする必要がなく、従って、アンモニアによる発酵阻害の影響を受け難い中温発酵とすることができる。
【0019】
なお、最初からポンプ吸引濾過を行うと、ケーキ層を形成するために必要なフラックスを得にくいため、多孔金属体に対してケーキ層形成に時間がかかるという問題がある。また、水頭差濾過のみを続けた場合には、ケーキ層の形成に従って濾過抵抗が大きくなるため、フラックスが極端に小さくなってしまうという問題がある。
【0020】
ここで、上記作用を効果的に奏する方法として、具体的には、槽内の気相部又はメタン発酵により生じたバイオガスが流れるガスラインと、多孔金属体ユニット内とを連通し、この状態で、水頭差濾過を行う方法が挙げられる。
【0021】
これによれば、上記水頭差濾過が支障無く行われると共に、発酵汚泥が酸素と接触しないため好ましい。
【発明の効果】
【0022】
このように本発明によるメタン発酵装置によれば、(1)余剰汚泥濃度の高濃度化を一層図り脱水等の余剰汚泥処理設備の小型化を図ることができ、(2)ランニングコストを低減でき、(3)メンテナンスを容易にできるメタン発酵装置を提供できる。また、本発明によるメタン発酵装置の運転方法によれば、短時間で透過液SSを少なくできると共にこの透過液SSの少ない状態を維持した適度なフラックスの安定した濾過を続けて実施でき、加えて、フラックスの低下無しに、アンモニアによる発酵阻害の影響を受け難い中温発酵の採用も可能となるメタン発酵装置の運転方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係るメタン発酵装置を示す構成図である。
【図2】図1に示すメタン発酵装置の運転方法を説明するためのタイミングチャートである。
【図3】本発明の第2実施形態に係るメタン発酵装置を示す構成図である。
【図4】実施例におけるフラックスの経時変化を示す図である。
【図5】実施例におけるポンプ吸引圧の経時変化を示す図である。
【図6】実施例における透過液SSの経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明によるメタン発酵装置の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るメタン発酵装置を示す構成図である。
【0025】
図1に示すように、メタン発酵装置100は、処理対象物をメタン発酵するメタン発酵槽1と、このメタン発酵槽1の底部に堆積する発酵汚泥(消化汚泥)及び重量異物を含む夾雑物を導入し固液分離する分離槽2と、を具備している。
【0026】
メタン発酵槽1は、導入される有機物、具体的には、生ごみ、食品廃棄物、農業系及び水産系廃棄物、脱水汚泥等の固形性有機物及び下水濃縮汚泥、屎尿汚泥、畜産廃棄物、パームオイル工場排水、グリーストラップ排水、焼酎粕、醤油粕等の高濃度有機性排水等で、土砂、卵殻、貝殻等の重量異物、プラスチック片、ビニール片、布片等の軽量異物、食物繊維等のメタン発酵難分解性有機物等の夾雑物を含んだ有機物等を、嫌気性微生物によりメタン発酵するものであり、メタンと二酸化炭素を主成分としたバイオガスを生成する。なお、メタン発酵槽1の前段に、メタン発酵を速やかに行うべく、処理対象物を可溶化する可溶化槽を設けても良い。
【0027】
分離槽2は、槽内に、固液分離による濾過を行い透過液を得るための多孔金属体6を浸漬するように備えている。
【0028】
この多孔金属体6は、例えば、多数の金属ワイヤによって格子状の多孔を有する金属メッシュや、ステンレス等の金属薄板に機械による加工を施したパンチングメタル等の金属板や、金属布等であり、夾雑物(異物)と接触しても損傷する虞がないものである。そして、複数枚の多孔金属体6により多孔金属体ユニット3が構成されている。
【0029】
この多孔金属体ユニット3は、ここでは、中空の箱形を成し、対向する両端面(図1の紙面手前側と奥側の面)の部分が多孔金属体6とされ、この多孔金属体6によりユニット内外が連通する構成とされている。なお、多孔金属体6、多孔金属体ユニット3の形状は上記形状に限定されるものではなく、また、多孔金属体6、多孔金属体ユニット3は、長期間の使用の観点から耐腐食性のものにより構成されるのがより好ましい。
【0030】
ここで、多孔金属体6の孔径は、0.05mm〜0.5mm程度、好ましくは、0.1mm〜0.3mm程度である。これは、0.05mmより小さい孔径とすると加工が難しくなると共に濾過面の開口率が低くなり、0.5mmを越える孔径とすると発酵汚泥の付着によるケーキ層の形成が難しくなるからである。
【0031】
また、このメタン発酵装置100は、メタン発酵により生成したバイオガスを一旦貯留するためのガスホルダ4と、分離槽2内で上記多孔金属体ユニット3より下方に配設され多孔金属体6に対して曝気による洗浄を行うための散気管5と、をさらに備えている。
【0032】
そして、このメタン発酵装置100にあっては、液状物ラインとして、メタン発酵槽1にポンプP3を介して接続され当該ポンプP3の駆動により夾雑物を含む有機物をメタン発酵槽1に導入するラインL1、メタン発酵槽1の底部と分離槽2の下部にポンプP1を介して接続され当該ポンプP1の駆動によりメタン発酵槽1の底部の発酵汚泥及び夾雑物を供給ラインを通して分離槽2に供給する一方で、分離槽2の上部とメタン発酵槽1の上部に接続され分離槽2の多孔金属体6による固液分離により濃縮された発酵汚泥を返送ラインを通してメタン発酵槽1に返送し、発酵汚泥をメタン発酵槽1と分離槽2との間で循環させるための汚泥循環ラインL3、分離槽2の底部にポンプP4を介して接続され当該ポンプP4の駆動により分離槽2の底部の余剰な発酵汚泥及び夾雑物を系外に排出するための排出ラインL7、多孔金属体ユニット3の下部に接続されて当該ユニット3内に連通し、バルブV2、ポンプ吸引濾過を行うためのポンプP2、バルブV3、バルブV6をこの順に介して透過液を後段に排出するためのラインL4、ラインL4にバルブV4を介して接続されバルブV2、ポンプP2、バルブV3をバイパスするラインL5、ラインL4のラインL5に対する合流点とバルブV6との間から分岐しバルブV5を介してメタン発酵槽1に接続されたラインL6が、それぞれ設けられている。なお、分離槽2の水位がメタン発酵槽1の水位より低い場合には、ラインL6上にポンプ(図示せず)を設ける必要がある。
【0033】
また、このメタン発酵装置100にあっては、気体ラインとして、メタン発酵槽1の気相部1aとガスホルダ4に接続され当該メタン発酵槽1で生成したバイオガスをガスホルダ4に導くガスラインL2、分離槽2の気相部2aとラインL2に接続され気相部2aのバイオガスをラインL2に導くラインL8、ラインL8から分岐しブロワB1の駆動により散気管5に曝気のためのバイオガスを供給するラインL9、多孔金属体ユニット3の上部と分離槽2の気相部2aにバルブV1を介して接続され水頭差による透過推進力を与え水頭差濾過を行うためのラインL10が、それぞれ設けられている。
【0034】
そして、このメタン発酵装置100にあっては、分離槽2は、当該分離槽2と供給ラインとの接続口2b近傍に遮蔽板2dを備えており、これにより下向きの流れが発生し、夾雑物が直接多孔金属体6に接触することを防止できる構成とされている。
【0035】
また、分離槽2と供給ラインとの接続口2bは、散気管5よりも下方に位置しており、夾雑物が散気による流れに乗って多孔金属体6に接触することを防止できる構成とされている。
【0036】
また、供給ラインと分離槽2との接続口2bと、分離槽2と返送ラインとの接続口2cとは、対角線上に位置しており、分離槽2内での汚泥濃度勾配が発生しない構成とされている。
【0037】
次に、このような構成を有するメタン発酵装置100の作用について説明する。
【0038】
メタン発酵槽1にラインL1を通して導入された夾雑物を含む有機物は、当該メタン発酵槽1において、例えば、機械撹拌機M1による撹拌や、ポンプによる液撹拌や、ガスブロワ又はガスコンプレッサによるガス撹拌や、これらを併用した撹拌等に供せられることで、メタン発酵してバイオガスが生成され、このバイオガスは、気相部1aからガスラインL2を通してガスホルダ4に送られ一旦貯留され、ガスエンジンや燃料電池といった発電機やボイラの燃料として用いられたり、バイオガス中のメタン濃度を気体分離膜方式やPSA方式や液吸収方式等により濃縮することで自動車燃料等として用いられる。また、メタン濃度を濃縮したバイオガスを発電やボイラ燃料とする場合もある。
【0039】
メタン発酵槽1では、槽内底部に発酵汚泥及び例えば貝殻等の夾雑物が堆積し、この発酵汚泥及び夾雑物は底部から引き抜かれ汚泥循環ラインL3を構成する往路である供給ラインを通して分離槽2に供給される。この分離槽2では、発酵汚泥を含む発酵液に夾雑物と共に浸漬した多孔金属体ユニット3の多孔金属体6により固液分離が行われ、多孔金属体6により濾過された透過液はラインL4を通して後段に排出され、一方、多孔金属体6を透過せずに分離濃縮された発酵汚泥は、オーバーフローにより汚泥循環ラインL3を構成する復路である返送ラインを通してメタン発酵槽1に返送される。また、分離槽2では、槽内底部に余剰な発酵汚泥及び夾雑物が堆積し、この余剰な発酵汚泥及び夾雑物は底部から引き抜かれラインL7を通して系外に排出される。
【0040】
このように、本実施形態においては、夾雑物により損傷してしまう有機膜に代えて多孔金属体6が用いられているため、発酵汚泥を含む発酵液に夾雑物と共に浸漬した状態での固液分離が可能とされ、その結果、余剰汚泥濃度の高濃度化が一層図られ脱水等の余剰汚泥処理設備の小型化が図られている。因みに、メタン発酵槽1内の汚泥濃度が50g/Lであり、分離槽2での濃縮率が1.2とすると、メタン発酵槽1に返送される汚泥濃度は60g/Lとなる。
【0041】
また、本実施形態においては、経時劣化が激しい有機膜に代えて多孔金属体6が用いられているため、長期間の使用が可能とされ、ランニングコストが低減されている。
【0042】
また、損傷しやすい有機膜に代えて多孔金属体6が用いられているため、洗浄による損傷が起こり難く、洗浄が容易とされメンテナンスが容易とされている。
【0043】
このように、第1実施形態では、メタン発酵槽1と分離槽2を別々に設けているが、図3に示す第2実施形態のように、メタン発酵槽1内に多孔金属体6を浸漬させても良い。具体的には、メタン発酵槽1内において、多孔金属体6を、メタン発酵された発酵汚泥を含む発酵液に夾雑物と共に浸漬させても良い。このように構成しても、上記第1実施形態と同様な効果、すなわち、余剰汚泥濃度の高濃度化が一層図られ脱水等の余剰汚泥処理設備の小型化が図られると共に、多孔金属体6により、長期間の使用が可能とされランニングコストが低減され、且つ、洗浄による損傷が起こり難く洗浄が容易となってメンテナンスが容易となるという効果が得られる。
【0044】
加えて、この第2実施形態によれば、メタン発酵槽2の汚泥濃度を分離槽2と同程度まで高めることができる。具体的には、第1実施形態では、メタン発酵槽1内の汚泥濃度は50g/Lであり、分離槽2内の汚泥濃度は60g/Lであったが、メタン発酵槽1と分離槽2とを一体化することにより、メタン発酵槽1内の汚泥濃度を60g/Lまで高めることできる。また、このようにメタン発酵槽1と分離槽2とを一体化することにより、槽の数を少なくできると共に、分離槽2からメタン発酵槽1への返送ラインや返送ポンプが不要となる。
【0045】
次に、第1実施形態におけるメタン発酵装置100の特に効果的な運転方法について説明する。ここでは、図2に示すタイミングチャートに従って運転を行う。なお、図2中の黒太線は、バルブV1〜V6にあっては開を、ポンプP1,P2及びブロワB1にあってはオンの状態を示し、黒太線が無いところは、バルブV1〜V6にあっては閉を、ポンプP1,P2及びブロワB1にあってはオフの状態を示す。
【0046】
図2に示すように、先ず、ポンプP1をオンすると共に、バルブV1,V4,V5を開とする。このポンプP1のオンにより、メタン発酵槽1と分離槽2との間で発酵汚泥が循環し、このとき、バルブV1の開により、多孔金属体ユニット3内と分離槽2の気相部2aとが連通し、多孔金属体ユニット3内外の水頭差のみを透過推進力とした水頭差濾過が行われる。なお、ポンプP1は、運転中は常時オンとなる。
【0047】
この水頭差濾過にあっては、適度なフラックスにより、短時間で多孔金属体6に対して発酵汚泥が付着し始める。この水頭差濾過では、多孔金属体6を通過するSS量が多く透過液SSが高いため、透過液はラインL4を通して後段に排出されるのではなく、ラインL5,L6を通してメタン発酵槽1に返送される。
【0048】
そして、水頭差濾過を行う水頭差濾過時間T1が経過したら(多孔金属体6に対して発酵汚泥が付着し始めたら)、バルブV1,V4を閉とすると共にバルブV2,V3を開とし、ポンプP2をオンする。また、ポンプP1のオン、バルブV5の開は継続する。このバルブV1の閉により、水頭差濾過が止められると共に、ポンプP2のオン、バルブV2,V3の開、バルブV4の閉により、多孔金属体6に対して、ポンプP2による吸引を利用したポンプ吸引濾過が行われる。
【0049】
このポンプ吸引濾過では、多孔金属体6に対して付着し始めた発酵汚泥がケーキ層となっていく。このケーキ層を透過した透過液SSは未だ高いため、透過液はラインL5,L6を通してメタン発酵槽1に返送される。その際、分離槽2の水位がメタン発酵槽1の水位より高い位置にある場合には、分離槽2とメタン発酵槽1の水頭差によって返送が可能であるが、分離槽2の水位がメタン発酵槽1の水位より低い位置にある場合には、ラインL6上にポンプ(図示せず)を設ける必要がある。
【0050】
そして、吸引圧が所定圧になるポンプ吸引濾過時間T2が経過したら(吸引圧が所定圧になったら)、バルブV5を閉とすると共にバルブV6を開とし、ブロワB1をオンする。また、ポンプP1,P2のオン、バルブV2,V3の開は継続する。このブロワB1のオンにより、ポンプ吸引濾過が行われると同時に多孔金属体6に対して曝気洗浄が行われる。但し、処理の過程で処理対象物貯留量が低下し、ポンプP3がオフすることで分離槽2の水位が低下してしまう場合には、分離槽2に設置した液位計(図示せず)によってポンプP2がオフする。ここで、ポンプP2がオフした状態でブロワB1のオンが維持されると、多孔金属体6に付着したケーキ層が過剰に剥離されてしまうため、このような場合には、工程中であってもブロワB1は停止することになる。
【0051】
この曝気洗浄を伴う通常濾過により、多孔金属体6に対してケーキ層が容易且つ適度な厚さに形成され(適度な厚さが概ね維持され)、これにより、適度なフラックスの安定した濾過が実施される。この通常濾過では、透過液SSが十分に低いため、透過液はラインL4を通して後段に排出され所定の処理に供される。
【0052】
なお、最初からポンプ吸引濾過を行うと、ケーキ層を形成するために必要なフラックスを得にくいため、多孔金属体6に対してケーキ層形成に時間がかかるという問題がある。また、水頭差濾過のみを続けた場合には、ケーキ層の形成に従って濾過抵抗が大きくなるため、フラックスが極端に小さくなってしまうという問題がある。
【0053】
そして、ポンプ吸引濾過が行われている多孔金属体6に対して曝気洗浄を行う通常濾過時間T3が経過したら、バルブV1を開とすると共にバルブV2,V3,V6を閉とし、ポンプP2をオフする。また、ポンプP1のオン、ブロワB1のオンは継続する。このブロワB1のオンの継続及びポンプP2のオフにより、ポンプ吸引濾過を止めて多孔金属体6に対する曝気洗浄のみが行われる。この曝気洗浄のみにより、多孔金属体6に付着したケーキ層の剥離が行われる。
【0054】
このとき、バルブV1の開及びバルブV2,V4の閉により、多孔金属体ユニット3内の圧力が開放されるため、ケーキ層が多孔金属体6から剥がれやすくされ、ケーキ層の剥離時間の短縮化が図られている。
【0055】
そして、ポンプ吸引濾過を止めて多孔金属体6に対する曝気洗浄を行う洗浄時間T4が経過したら、最初に戻り、これらのT1〜T4を1サイクルとする運転を繰り返し行う。
【0056】
このように、本実施形態のメタン発酵装置の運転方法によれば、先ず、多孔金属体6を有する多孔金属体ユニット3のその内外の水頭差のみを透過推進力とした水頭差濾過が行われるため、適度なフラックスにより、短時間で多孔金属体に対して発酵汚泥が付着し始め、次いで、水頭差濾過が止められ、多孔金属体6に対して、ポンプP2による吸引を利用したポンプ吸引濾過が行われるため、発酵汚泥が付着し始めた多孔金属体6に対してケーキ層が容易且つ適度な厚さに形成され、適度なフラックスの安定した濾過が実施される。このように、短時間で多孔金属体6に発酵汚泥が付着し始めるため、短時間で透過液SSを少なくできると共に、この透過液SSの少ない状態を維持した適度なフラックスの安定した濾過を続けて実施できる。
【0057】
また、このように、有機膜ではなく多孔金属体6を用いることで、温度に関係なく、適度なフラックスの安定した濾過を実施できるため、発酵温度を高くする必要がなく、従って、アンモニアによる発酵阻害の影響を受け難い中温発酵とすることもできる。
【0058】
また、多孔金属体ユニット3内と分離槽2の気相部2aとを連通し、この状態で、水頭差濾過を行うようにしているため、当該水頭差濾過が支障無く行われると共に、発酵汚泥が酸素と接触しないため好ましい。
【0059】
なお、ポンプ吸引濾過を止めて多孔金属体6に対する曝気洗浄を行っても、十分にケーキ層が剥離しない場合には、多孔金属体6に対して逆洗を行うようにしても良い。このように逆洗しても、多孔金属体6は、有機膜に比して損傷し難く高圧力での逆洗ができるため、十分にケーキ層を剥離することができる。
【0060】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、多孔金属体ユニット3内と分離槽2の気相部2aとを連通した状態で水頭差濾過を行うようにしているが、メタン発酵槽1の気相部1aや、メタン発酵により生じたバイオガスが流れるガスラインL2と連通した状態で水頭差濾過を行うようにしても良い。因みに、多孔金属体ユニット3内を大気と連通した場合には、発酵汚泥が酸素と接触するため、好ましくない。また、曝気洗浄は、多孔金属体6に対してケーキ層が容易且つ適度な厚さに形成されることを目的として行われるものであるが、多孔金属体6表面を発酵汚泥が適度な速度を持って移動することでも適度な厚さのケーキ層を形成することが可能であり、そのためには、ブロワを設けずにポンプによる汚泥循環とすることもできる。
【実施例】
【0061】
以下、上記効果を確認すべく本発明者が実施した実施例について述べる。
【0062】
図1に示したメタン発酵装置100を用い、図2に示したタイミングチャートにより運転を行った。運転時の発酵汚泥濃度はSS約5%とした。図4〜図6にその結果を示す。
【0063】
図4は、フラックスの経時変化を示す図、図5は、ポンプ吸引圧の経時変化を示す図、図6は、透過液SSの経時変化を示す図である。
【0064】
多孔金属体6に対して汚泥が付着し始める水頭差濾過時間T1は2分間と短い時間であった。また、透過液SSが1000mg/L以下になる迄の時間(T1+T2)は10分間であった。そして、10分後からのポンプ吸引濾過の際に多孔金属体6に対する曝気洗浄を実施することによって、ケーキ付着の増加を抑制でき、図5に示すように、ポンプ吸引圧が上昇することなくポンプ吸引圧一定の濾過ができた。また、図6に示すように、水頭差濾過時間T1中(開始から2分迄)の透過液SSは高いが、ケーキ厚が所定厚に形成されてからは(開始から10分後からは)、透過液SSは1000mg/L以下と低く安定していた。また、ポンプ吸引濾過を止めて多孔金属体6に対する曝気洗浄を実施する洗浄時間(ケーキ剥離時間)T4は、今回の実施例では、図5に示すように、ポンプ吸引圧の上昇が見られなかったため、不要であった。
【符号の説明】
【0065】
1…メタン発酵槽、1a,2a…気相部、2…分離槽、2b…分離槽と供給ラインとの接続口、2c…分離槽と返送ラインとの接続口、3…多孔金属体ユニット、5…散気管、6…多孔金属体、100…メタン発酵装置、L2…ガスライン、L3…汚泥循環ライン、L7…排出ライン、P2…ポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物をメタン発酵するメタン発酵槽を具備したメタン発酵装置において、
メタン発酵された発酵汚泥を含む発酵液に夾雑物と共に浸漬し固液分離による濾過を行い透過液を得るための多孔金属体と、
前記多孔金属体により濃縮された余剰な発酵汚泥及び前記夾雑物を排出するための排出ラインと、を備えたことを特徴とするメタン発酵装置。
【請求項2】
前記多孔金属体は、前記メタン発酵槽内に浸漬し、
前記排出ラインは、前記メタン発酵槽に接続されて当該メタン発酵槽の余剰な発酵汚泥及び前記夾雑物を排出することを特徴とする請求項1記載のメタン発酵装置。
【請求項3】
前記多孔金属体は、前記メタン発酵槽の発酵汚泥を固液分離するための分離槽内に浸漬し、
前記メタン発酵槽の底部の発酵汚泥及び前記夾雑物を供給ラインを通して前記分離槽に供給する一方で、前記分離槽の前記多孔金属体による固液分離により濃縮された発酵汚泥を返送ラインを通して前記メタン発酵槽に返送し、前記発酵汚泥を前記メタン発酵槽と前記分離槽との間で循環させるための汚泥循環ラインを備え、
前記排出ラインは、前記分離槽に接続されて当該分離槽の余剰な発酵汚泥及び前記夾雑物を排出することを特徴とする請求項1記載のメタン発酵装置。
【請求項4】
前記分離槽は、当該分離槽と前記供給ラインとの接続口近傍に遮蔽板を備えることを特徴とする請求項3記載のメタン発酵装置。
【請求項5】
前記多孔金属体下部に散気管を備え、
前記供給ラインと前記分離槽との接続口は、前記散気管よりも下方に位置することを特徴とする請求項3又は4記載のメタン発酵装置。
【請求項6】
前記供給ラインと前記分離槽との接続口と、前記分離槽と前記返送ラインとの接続口とは、対角線上に位置することを特徴とする請求項3〜5の何れか一項に記載のメタン発酵装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載のメタン発酵装置の運転方法であって、
先ず、前記多孔金属体を有する多孔金属体ユニットのその内外の水頭差のみを透過推進力とした水頭差濾過を行い、
次いで、前記水頭差濾過を止め、前記多孔金属体に対して、ポンプによる吸引を利用したポンプ吸引濾過を行うことを特徴とするメタン発酵装置の運転方法。
【請求項8】
前記槽内の気相部又はメタン発酵により生じたバイオガスが流れるガスラインと、前記多孔金属体ユニット内とを連通し、この状態で、前記水頭差濾過を行うことを特徴とする請求項7記載のメタン発酵装置の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−264367(P2010−264367A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116803(P2009−116803)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(507036050)住友重機械エンバイロメント株式会社 (88)
【Fターム(参考)】