説明

メチルフェニデート誘導体の使用方法

本発明は、式Iの化合物並びにその塩及びプロドラッグの使用方法を提供し、ここで、n、R及びRは、本明細書で定義されている。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメチルフェニデート誘導体の使用に関する。これらの使用は、免疫反応を阻害すること及び炎症を阻害することを含む。
【背景技術】
【0002】
メチルフェニデートは、注意欠陥のサブタイプ(以前は、注意欠陥障害又はADDとして知られていた)を含む注意力欠陥/多動性障害(ADHD)と診断された子供及び成人のための治療の選択肢である。メチルフェニデートの特定の誘導体も、ADDの治療のため(特許文献1を参照)及び他の神経障害及び病状の治療のため(特許文献2、特許文献1、特許文献3及び特許文献4を参照)に提唱されている。
【0003】
免疫系に対するメチルフェニデートの効果を試験するために複数の実験が実施され、矛盾した結果が報告されている。非特許文献1及び特許文献5を参照されたい。
【特許文献1】米国特許第6,025,502号明細書
【特許文献2】米国特許第5,859,249号明細書
【特許文献3】米国特許第第6,486,177号明細書
【特許文献4】国際公開第WO99/36403号パンフレット
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0192290号明細書
【非特許文献1】アウシ(Auci)ら、J.Am.Acad.Child Adolesc.Psychiatry、第36巻、1015−1016頁、1997年8月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記した懸案を鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、式I:
【0006】
【化1】

で示される化合物を使用する方法を提供する(式中、nは、1〜5の整数であり、そしてRは、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、カルボキシル、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ又はスルフヒドリルである)。各アルキルは、選択的に、ヒドロキシル、アミノ又はスルフヒドリルで置換され得る。Rは、水素又は低級アルキルである。
【0007】
第1の実施態様において、本発明は、動物において免疫反応を阻害する方法を提供する。同方法は、式Iの化合物の有効量を動物に投与する工程を含む。
第2の実施態様において、本発明は、動物においてT細胞の活性化を阻害する方法を提供する。同方法は、式Iの化合物の有効量を動物に投与する工程を含む。
【0008】
別の実施態様において、本発明は、動物においてT細胞媒介型の疾患又は病状を治療する方法を提供する。同方法は、式Iの化合物の治療有効量を動物に投与する工程を含む。
別の実施態様において、本発明は、動物において単球の活性化を阻害する方法を提供する。同方法は、式Iの化合物の有効量を動物に投与する工程を含む。
【0009】
更なる実施態様において、本発明は、動物において炎症誘発性サイトカインの産生及び放出の少なくとも一方を阻害する方法を提供する。同方法は、式Iの化合物の有効量を動物に投与する工程を含む。
【0010】
別の実施態様において、本発明は、動物においてIL−8の産生及び放出の少なくとも一方を阻害する方法を提供する。同方法は、式Iの化合物の有効量を動物に投与する工程を含む。
【0011】
更なる実施態様において、本発明は、動物においてIL−13の産生及び放出の少なくとも一方を阻害する方法を提供する。同方法は、式Iの化合物の有効量を動物に投与する工程を含む。
【0012】
別の実施態様において、本発明は、動物においてインターフェロンγ(IFNγ)の産生及び放出の少なくとも一方を阻害する方法を提供する。同方法は、式Iの化合物の有効量を動物に投与する工程を含む。
【0013】
更なる実施態様において、本発明は、動物において腫瘍壊死因子α(TNFα)の産生及び放出の少なくとも一方を阻害する方法を提供する。同方法は、式Iの化合物の有効量を動物に投与する工程を含む。
【0014】
さらに別の実施態様において、本発明は、動物において炎症を阻害する方法を提供する。同方法は、式Iの化合物の有効量を動物に投与する工程を含む。
更なる実施態様において、本発明は、動物において炎症性の疾患又は病状を治療する方法を提供する。同方法は、式Iの化合物の有効量を動物に投与する工程を含む。
【0015】
別の実施態様において、本発明は、動物においてリンパ球の望ましくない増殖を阻害する方法を提供する。同方法は、式Iの化合物の有効量を動物に投与する工程を含む。
更なる実施態様において、本発明は、動物においてリンパ球の望ましくない付着を阻害する方法を提供する。同方法は、式Iの化合物の有効量を動物に投与する工程を含む。
【0016】
式Iの化合物は、中枢神経系興奮剤及びドーパミン取り込み阻害因子であると考えられる。従って、更なる実施態様において、本発明は、(1)第1の疾患又は病状が、中枢神経系興奮剤又はドーパミン取り込み阻害因子で治療可能な神経性の疾患又は病状であり、(2)第2の疾患又は病状が、免疫性又は炎症性の疾患若しくは病状である、併存疾患又は併存症状に罹患している動物を治療する方法を提供する。同方法は、式Iの化合物の有効量を動物に投与する工程を含む。
【0017】
「阻害する」とは、低減(完全に、若しくは部分的に)すること、又は妨げることを意味するものとして本明細書では使用されている。
「媒介された」とは、関わること、引き起こされること、又は悪化されることを意味するものとして本明細書では使用されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
一態様において、式Iの化合物は、本発明の実施に有用である。
【0019】
【化2】

式Iにおいて、nは、1〜5の整数である。好ましくは、nは、1又は2である。
各Rは、同一でも、異なっていてもよく、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、カルボキシル、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ又はスルフヒドリルである。各アルキルは、選択的に、ヒドロキシル、アミノ又はスルフヒドリルで置換され得る。Rは、好ましくは、アリール、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ又はアシルである。より好ましくは、Rは、アリール、アルキル又はシクロアルキルであり、さらにより好ましくはアリールであり、最も好ましくはフェニルである。
【0020】
式Iにおいて、Rは、水素又は低級アルキルである。好ましくは、Rは−CHである。
特定の一実施態様において、式IIの化合物は、本発明において特に有用である。
【0021】
【化3】

「アシル」は、式:−C(O)−Rの部分を意味し、ここでRは、H、アルキル、シクロアルキル又はアリールである。
【0022】
「アミノ」は、式:−NRの部分を意味し、ここでR及びRは、それぞれ独立して、H又はアルキルであり、好ましくは低級アルキルである。
「アルコキシ」は、式:−ORの部分を意味し、ここでRはアルキルである。アルコキシ基の例は、メトキシ(−O−CH)である。
【0023】
「アルキル」は、炭素原子1〜8個を含有する一価の飽和した直鎖又は分岐鎖炭化水素を意味する。各アルキルは、選択的に、1つ以上のアミノ、ヒドロキシル又はスルフヒドリル基で置換され得る。
【0024】
「アリール」は、環炭素原子6〜14個の一価の単環式、二環式又は三環式の芳香族炭化水素部分を意味する。好ましくはフェニルである。
「アリールオキシ」は、式:−ORの部分を意味し、ここでRはアリールである。アリールオキシ基の例は、フェノキシである。
【0025】
「カルボキシル」は、式:−C(O)−O−Rの部分を意味し、ここでRは、H、アルキル、シクロアルキル又はアリールである。
「シクロアルキル」は、環炭素原子3〜10個の飽和した一価の単環式又は二環式の炭化水素部分を意味する。好ましくは、シクロアルキルは4〜8個の環炭素原子を含有する。最も好ましいシクロアルキルは、シクロヘキシルである。
【0026】
「ハロゲン」は、塩素、フッ素、臭素又はヨウ素を意味する。好ましいものは、塩素又は臭素である。
「ヘテロアリール」は、N、O及びSからそれぞれ独立して選択される1、2又は3個の環ヘテロ原子を含有し、残りの環原子がCである、環原子5〜12個の一価の単環式又は二環式芳香族部分を意味する。
【0027】
「ヒドロキシル」は、−OHを意味する。
「低級アルキル」は、炭素原子1〜4個を含有する飽和直鎖又は分岐鎖炭化水素を意味する。
「ニトロ」は−NOを意味する。
「スルフヒドリル」は、−SHを意味する。
「スルホ」は、−SOHを意味する。
「プロドラッグ」は、同プロドラッグが哺乳類対象に投与された場合、式Iの活性母剤を生体内で放出する任意の化合物を意味する。式Iの化合物のプロドラッグは、修飾部が生体内で開裂して親化合物を放出することができるように、式Iの化合物に存在する1つ以上の官能基を修飾することにより調製される。プロドラッグは、式Iの化合物のヒドロキシ、アミノ又はスルフヒドリル基が、生体内で開裂してそれぞれ遊離ヒドロキシル、アミノ又はスルフヒドリル基を生じることができる任意の基と結合している、式Iの化合物を含む。プロドラッグの例としては、エステル類(例えば、酢酸塩、ギ酸塩及び安息香酸塩の誘導体)、式Iの化合物のヒドロキシ官能基のカルバミン酸塩(例えば、N,N−ジメチルアミノカルボニル)などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
疾患又は病状を「治療する」或いは疾患又は病状の「治療」は、(1)疾患又は病状を予防すること、すなわち疾患又は病状に曝されるか、罹患しやすくなりうるが、まだ疾患又は病状の兆候を体感していない又は表していない哺乳動物において、疾患又は病状の臨床的な症状を発現させないこと、(2)疾患又は病状を阻害すること、すなわち疾患若しくは病状、又はその臨床的な症状の発現を阻止するか、又は低減させること、或いは(3)疾患又は病状を緩和すること、すなわち、疾患又は病状を治癒することを含む、疾患若しくは病状、又はその臨床的な症状を退行させることを含む。
【0029】
「有効量」は、疾患若しくは病状を治療するため、又は効果を引き起こすために動物に投与される場合、効果を引き起こすのに十分な化合物の量を意味する。「有効量」は、化合物、疾患若しくは病状及びその重篤度、又は引き起こそうとする効果、並びに治療される動物の年齢、体重などに応じて変更可能であり、かつ変更される可能性が極めて高い。
【0030】
本発明に有用な式Iの化合物を合成する方法は、当該技術分野において周知である。例えば、特許文献2及び特許文献1、特許文献5、パン(Pan)ら、Eur.J.Pharmacol、第264巻、177−182頁、1994年、ガトリー(Gatley)ら、Life Sci、第58巻、231−239頁、1996年、ドイチュ(Deutsch)ら、J.Med.Chem.、第39巻、1201−1209頁、1996年、タイ(Thai)ら、J.Med.Chem.、第41巻、591−601頁、1998年及びウェイメント(Wayment)ら、J.Neurochem.、第72巻、1266−1274頁、1999年、クリム、ロリ(Krim,Lori)学位論文(化学博士)、2001年、ペンシルバニア大学、Chemistry Library Reading Room(Call No.QD001 2001.K92)、大学マイクロフィルムオーダー番号(University Microfilms Order No.)3031684、ISBN 0−493−44179−4を参照されたい。これらの完全な開示は、引用された参考文献と共に参照として本明細書に援用される。
【0031】
本発明の化合物が1つ以上のキラル中心を含有する場合、同化合物は、エナンチオ選択的に合成することができるか、又は鏡像異性体及び/又はジアステレオマーの混合物を調製し、分離することができる。本発明の化合物、その出発材料及び/又は中間体の分離は、既知の手順、例えば、4巻の概論、Optical Resolution Procedures for Chemical Compounds(Optical Resolution Information Center、マンハッタン大学、ニューヨーク州リバーデール所在)及びEnantiomers, Racemates and Resolutions、ジーン ジャクェス(Jean Jacques)、アンドレ コレット(Andre Collet)及びサムエル エイチ.ウィレン(Samuel H. Wilen)、John Wiley & Sons社(ニューヨーク)発刊、1981年、に記載されているように実施することができる。これらの文献は、その全体が参照として本明細書に援用される。基本的に、化合物の分離は、分別結晶、蒸留又はクロマトグラフィーにより分離可能である形態をもたらす、鏡像異性的に純粋な部分の、化学的又は触媒的のいずれかの結合による、ジアステレオマーの物理的特性の差に基づいている。
【0032】
式Iの化合物の薬学的に許容される塩を、本発明の実施に使用することもできる。薬学的に許容される塩には、従来の非毒性の塩、例えば、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸など)、有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、安息香酸、サリチル酸、シュウ酸、アスコルビン酸など)又は塩基(例えば、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、D−グルコサミン又はエチレンジアミンから誘導される、薬学的に許容される金属カチオン又は有機カチオンの水酸化物、炭酸塩又は重炭酸塩)から誘導される塩が含まれる。塩は、従来の方法、例えば化合物のフリーの塩基形態を酸と反応させることにより、調製される。
【0033】
本発明の範囲は、式Iの化合物それ自体の使用のみならず、その塩及びプロドラッグの使用も包含することを理解するべきである。加えて、本発明は、純粋な異性体及び同異性体の種々の混合物を含む、式Iの化合物並びにその塩及びプロドラッグの異性体の使用を考慮する。
【0034】
式Iの化合物、薬学的に許容されるその塩又はプロドラッグは、免疫抑制剤として使用することができる。これらの化合物は、広範囲にわたる免疫反応を阻害する。
例えば、式Iの化合物は、T細胞の活性を阻害するため、及びT細胞媒介型疾患を治療するために使用できる。本発明により治療可能なT細胞媒介型疾患としては、移植片拒絶、移植片対宿主拒絶反応、望ましくない遅延型過敏反応(例えば、遅延型アレルギー反応)、T細胞媒介肺疾患、自己免疫性疾患及びT細胞媒介炎症が含まれる。T細胞媒介肺疾患としては、サルコイドーシス、過敏性肺炎、急性間質性肺炎、肺胞炎、肺線維症、突発性肺線維症及び炎症性肺障害により特徴づけられる他の疾患が含まれる。自己免疫性疾患としては、多発性硬化症、神経炎、多発性筋炎、乾癬、白斑症、シューグレン症候群、リウマチ様関節炎、1型糖尿病、自己免疫性膵炎、炎症性腸疾患(例えば、クローン病及び潰瘍性大腸炎)、セリアック病、糸球体腎炎、強皮症、サルコイドーシス、自己免疫性甲状腺疾患(例えば、橋本甲状腺炎及びグレーブス病)、重症筋無力症、アジソン病、自己免疫性ブドウ膜網膜炎、尋常性天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変、悪性貧血、及び全身性エリテマトーデスが含まれる。
【0035】
式Iの化合物は、インターロイキン−8(IL−8)、IL−13、インターフェロンγ(IFNγ)及び腫瘍壊死因子α(TNFα)を含むサイトカインの産生、放出、又はその両方を阻害するために使用することもできる。IL−8は、炎症促進性サイトカインであり、かつ強力な化学誘引物質であり、好中球の活性化剤である。これは、Tリンパ球及び好酸球の化学誘引物質及び活性化剤であることも、報告されている。IL−8は、免疫細胞(リンパ球、好中球、単球及びマクロファージを含む)、線維芽細胞及び上皮細胞により産生される。IL−13は、活性化T2細胞により作られ、IL−13の主な標的は、B細胞及び単球である。IL−13は、体液性免疫反応を刺激し、喘息の病原と関係している。IFNγ及びTNFαは、いずれも活性化T細胞及び他の細胞により作られる炎症誘発性サイトカインである。TNFαは、転写因子NFκB及びAP−1を急速に活性化し、内皮細胞に接着分子を発現させ、そして炎症部位に免疫細胞を動員する役割を果たす場合がある。IFNγは、好中球、内皮細胞及びマクロファージを活性化することができ、同様に、MHC分子発現を増加させることができる。INFγは、細胞媒介型の免疫反応を促進する。
【0036】
式Iの化合物、薬学的に許容されるその塩又はプロドラッグは、炎症を阻害するため、並びに炎症性の疾患及び病状を治療するために使用できる。炎症性の疾患又は病状は、炎症を伴う、又は炎症により引き起こされる、また炎症により悪化する、疾患又は病状である。本発明の化合物で治療可能な特定の炎症性疾患及び炎症性の病状としては、急性呼吸促迫症候群、アレルギー、関節炎、喘息、自閉症、自己免疫性疾患(例えば、多発性硬化症及び全身性エリテマトーデス)、気管支炎、癌、クローン病、嚢胞性線維症、肺気腫、心内膜炎、胃炎、感染(細菌、ウイルス、酵母菌、真菌及び寄生虫)、炎症性腸疾患、炎症性皮膚障害、虚血再潅流、多臓器機能不全症候群、多臓器不全、腎炎、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病及び認知症)、膵炎、乾癬、呼吸器ウイルス感染症、敗血症、ショック、全身性炎症反応症候群、外傷、潰瘍性大腸炎、並びに他の炎症性の疾患、病状及び障害が含まれる。その薬学的に許容される塩及びプロドラッグを含む本発明の化合物は、自閉症、アルツハイマー病、多発性硬化症、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、老年認知症、及びHIV感染に関連する認知症のような、炎症性神経疾患及び同病状を治療するのに特に有用である。
【0037】
式Iの化合物、薬学的に許容されるその塩又はプロドラッグは、リンパ球の望ましくない増殖を阻害するために使用できる。リンパ球の望ましくない増殖は、例えば、特定の種類の癌(例えば、胸腺腫、リンパ腫及び白血病)並びに炎症にて起こる。
【0038】
式Iの化合物、薬学的に許容されるその塩又はプロドラッグは、リンパ球の望ましくない付着を阻害するために使用できる。リンパ球の望ましくない付着は、例えば、炎症、炎症性の疾患及び病状並びに免疫反応に関与している。
【0039】
上記の活性に加えて、本発明の化合物は、中枢神経系興奮剤及びドーパミン取り込み阻害因子であると考えられる。従って、これらは、(1)第1の疾患又は病状が中枢神経系興奮剤又はドーパミン取り込み阻害因子で治療可能な神経性の疾患又は病状であり、(2)第2の疾患又は病状が免疫性又は炎症性の疾患若しくは病状である、併存性の疾患又は病状に罹患している動物を治療するのに特に有用である。中枢神経系興奮剤で治療可能な神経性の疾患及び病状としては、ADHD、うつ病、神経不安、ナルコレプシー、疲労(例えば、麻薬性鎮痛薬を用いる化学療法又は治療による)、過眠症、認知障害、衝動買い障害が含まれる。ドーパミン取り込み阻害因子で治療可能な神経性の疾患及び病状としては、コカイン乱用又は中毒、及びパーキンソン病が含まれる(単独で、又はドーパ、レボドパ、若しくは別のドーパミン前駆体と組み合わせて)。免疫性及び炎症性の疾患若しくは病状としては、上記で記載されたものが含まれる。特に好ましい実施態様において、本発明の化合物及びその薬学的に許容される塩が、ADHDとアレルギーの併存症を治療するために使用される。
【0040】
治療の必要な動物を治療するために、式Iの化合物、薬学的に許容されるその塩又はプロドラッグを動物に投与する。好ましくは、動物は、ウサギ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウマ又はヒトのような哺乳動物である。最も好ましくは、動物はヒトである。
【0041】
本発明の化合物の有効な剤形、投与形態及び投与量は、経験的に決定され、そのような決定を行うことは、当該技術分野の技能の範囲内である。投与量が、用いられる特定の化合物、治療される疾患又は病状、疾患又は病状の重篤度、投与経路、化合物の排泄率、治療の持続時間、動物に投与される他の任意の活性成分の実体、動物の年齢、大きさ、及び種類、並びに医療及び獣医学の技術で既知の同様の要因により変更され得ることは、当業者において理解されている。一般に、本発明の化合物の適切な1日用量は、治療効果を生み出すのに有効な最低用量である化合物の量である。しかしながら、1日用量は、担当医又は獣医によって、健全な医療判断の範囲内で決定されるであろう。望ましい場合では、有効1日用量を、適切な間隔を置いて、1日を通して2、3、4、5、6回又はそれ以上の細分用量で別々に投与し得る。化合物の投与は、許容できる反応が達成されるまで、続けるべきである。
【0042】
本発明に有用な化合物(すなわち、式Iの化合物、並びに薬学的に許容されるその塩及びプロドラッグ)を、経口、鼻腔内、直腸内、膣内、非経口(例えば、静脈内、髄腔内、腹腔内、皮下、又は筋肉内)、大槽内、経皮、頭蓋内、大脳内、及び局所(頬側及び舌下を含む)を含む任意の適切な投与経路によって治療のために動物患者に投与することができる。好ましい投与経路は経口である。
【0043】
本発明に有用な化合物は単独で投与することが可能であるが、化合物を医薬製剤(組成物)として投与することが好ましい。本発明に有用な医薬組成物は、活性成分として、1つ以上の式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩若しくはプロドラッグを、1つ以上の薬学的に許容される担体、及び選択的に1つ以上の他の化合物、活性成分又は他の物質と混合して含む。各担体は、製剤中の他の成分と適合性があり、かつ動物に対して有害ではない意味において、「許容され」なければならない。薬学的に許容される担体は当該技術分野においてよく知られている。選択される投与経路に関わりなく、本発明の化合物は、当業者に既知の従来の方法によって薬学的に許容される剤形に配合される。例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」を参照されたい。
【0044】
経口投与に適切な本発明の製剤は、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、粉末剤、顆粒剤の形態、又は水性若しくは非水性液体中の液剤若しくは懸濁剤、又は水中油型若しくは油中水型乳剤、又はエリキシル剤若しくはシロップ剤、又はパステル剤(ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシアのような不活性基剤を使用する)などであり得、それぞれ活性成分として本発明に有用な1つ又は複数の化合物の所定の量を含有する。本発明に有用な化合物を、大形丸剤、舐剤又はペースト剤として投与することもできる。
【0045】
経口投与用の固体剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣剤、粉末剤、顆粒剤など)において、活性成分を、1つ以上の薬学的に許容される担体、例えば、クエン酸ナトリウム若しくはリン酸二カルシウム、及び/又は以下のいずれかと混合する:(1)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール及び/又はケイ酸のような充填剤又は増量剤;(2)例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及び/又はアカシアのような結合剤;(3)グリセロールのような保湿剤;(4)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプン、タピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩及び炭酸ナトリウムのような崩壊剤;(5)パラフィンのような溶液抑制剤;(6)第四級アンモニウム化合物のような吸収促進剤;(7)例えばセチルアルコール及びグリセロールモノステアレートのような湿潤剤;(8)カオリン及びベントナイト粘土のような吸収剤;(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム及びこれらの混合物のような潤滑剤;並びに(10)着色剤。カプセル剤、錠剤及び丸剤の場合、医薬組成物は、緩衝剤を含むこともできる。同様の種類の固体組成物を、ラクトース又は乳糖のような賦形剤並びに高分子量ポリエチレングリコール等を使用して、軟質及び硬質充填ゼラチンカプセル剤における充填剤として用いることができる。
【0046】
錠剤は、選択的に1つ以上の補助成分と共に圧縮又は成形することによって製造することができる。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えば、グリコールデンプンナトリウム又は架橋ナトリウムカルボキシメチルセルロース)、界面活性剤又は分散剤を使用して調製することができる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿潤させた粉末状化合物の混合物を、適切な機械で成形することによって製造することができる。
【0047】
錠剤及び本発明の医薬組成物の他の固体剤形、例えば糖衣剤、カプセル剤、丸剤及び顆粒剤は、選択的にコーティング剤及びシェル、例えば腸溶性コーティング及び医薬製剤技術で周知の他のコーティング剤で刻みを入れるか、調製することができる。例えば、所望の放出特性を提供するために、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを種々の割合で使用して、他のマトリクス、リポソーム及び/又はマイクロスフェアを使用して、活性成分の徐放性放出又は制御された放出を提供するように配合することもできる。これらは、例えば細菌保持フィルタを通過させる濾過により滅菌され得る。これらの組成物はまた、選択的に乳白剤を含有してもよく、活性成分のみを、又は活性成分を優先的に、胃腸管の特定の位置で、選択的に遅延的に放出する組成物であってもよい。使用できる包埋組成物の例としては、ポリマー物質及びロウが含まれる。活性成分をマイクロカプセルの形態にすることもできる。
【0048】
本発明の化合物の経口投与用の液体剤形としては、薬学的に許容される乳剤、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁剤、シロップ剤及びエリキシル剤が含まれる。上記活性成分に加えて、液体剤形は、例えば、水若しくは他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油類(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油及びゴマ油)グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、並びにこれらの混合物のような当該技術分野で慣用的に使用される不活性希釈剤を含み得る。
【0049】
不活性希釈剤の他に、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤及び懸濁化剤、甘味料、風味剤、着色剤、香料及び防腐剤のようなアジュバンドを含むこともできる。
懸濁剤は、活性化合物に加えて、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微晶質セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天及びトラガカント、並びにこれらの混合物のような懸濁化剤を含有し得る。
【0050】
直腸内又は膣内投与用の医薬組成物の製剤は坐剤として存在してもよく、同坐剤は、本発明の化合物の1つ以上を、例えば、カカオ脂、ポリエチレングリコール、坐剤用ロウ又はサリチル酸塩を含有し、かつ室温で固体であるが、体温で液体であり、従って、直腸又は膣腔内で溶融して活性化合物を放出する、適切な非刺激性賦形剤又は担体の1つ以上と混合することによって調製され得る。膣内投与に適切な本発明の製剤としては、また、当該技術分野において適切であることが知られている担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレー製剤が含まれる。
【0051】
本発明に有用な化合物の局所又は経皮投与用の剤形としては、粉末剤、噴霧剤、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、液剤、パッチ剤、滴下剤及び吸入剤が含まれる。活性成分を、滅菌条件下で、薬学的に許容される担体と、任意の緩衝剤と、必要であれば噴射推進剤と、混合し得る。
【0052】
軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤及びゲル剤は、活性成分に加えて、動物性及び植物性脂肪、油、ロウ、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク及び酸化亜鉛、又はこれらの混合物のような賦形剤を含有し得る。
【0053】
粉末剤及び噴霧剤は、活性成分に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム及びポリアミド粉末、又はこれらの物質の混合物のような賦形剤を含有することができる。噴霧剤は、付随的に、クロロフルオロ炭化水素のような慣用の噴射推進剤、並びにブタン及びプロパンのような揮発性かつ非置換の炭化水素を含有することができる。
【0054】
経皮パッチ剤は、本発明の化合物の身体への制御された送達を提供する更なる利点を有する。そのような剤形は、本発明の化合物の1つ以上を、エラストマーマトリクス材料のような適切な媒質に溶解する、分散する、そうでなければ組み込むことによって、製造することができる。吸収促進剤はまた、皮膚を透過する化合物の流動を増大するために使用され得る。その流動速度は、速度制御膜を提供すること、又は化合物をポリマーマトリクス若しくはゲルに分散することのいずれかによって、制御され得る。
【0055】
医薬製剤は、吸入若しくは通気による投与、又は鼻腔内若しくは眼球内投与に適するものを含む。吸入による上気道(鼻)又は下気道への投与では、本発明の化合物は、空気吸入器、噴霧器、又は加圧パック、又はエアゾール噴霧薬を送達する従来の他の方法により、簡便に送達される。加圧パックは、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適切なガスのような適切な噴射推進剤を含み得る。加圧エアゾールの場合、投与単位は、一定量を送達するための弁を備えることにより決定することができる。
【0056】
代替的に、吸入又は通気による投与では、組成物は、乾燥粉末の形態、例えば、本発明の化合物の1つ以上と、ラクトース又はデンプンのような適切な粉末基剤との粉末混合物の形態をとることができる。粉末組成物は、例えばカプセル若しくはカートリッジ、又は例えばゼラチン若しくはブリスターパックのような単位用量形態で存在していてもよく、同形態から粉末剤を、吸入器、空気吸入器、又は計量用量吸入器を用いて投与することができる。
【0057】
鼻腔内投与では、本発明に有用な化合物は、例えばプラスチックボトル噴霧器又は計量用量吸入器により、鼻への滴下又は液体噴霧で投与され得る。典型的な噴霧器は、Mistometer(ウィントロップ(Wintrop)社)及びMedihaler(リカー(Riker)社)である。
【0058】
点眼剤又は点鼻剤のような滴下剤は、1つ以上の分散剤、可溶化剤又は懸濁化剤も含む水性又は非水性の基剤とともに処方化され得る。液体噴霧剤は、加圧パックから簡便に送達される。滴下剤は、簡単な蓋付点眼剤ボトルにより、又は特殊な形状の封止部で液体内容物を滴下により送達するように適合したプラスチックボトルにより送達することができる。
【0059】
非経口投与に適切な医薬組成物は、本発明に有用な1つ以上の化合物を、1つ以上の薬学的に許容される滅菌された等張の水性又は非水性溶液、分散剤、懸濁液若しくは乳剤と組み合わせるか、又は使用直前に滅菌注射用液剤若しくは分散剤に再構成することができ、酸化防止剤、緩衝剤、同製剤を意図される摂取者の血液で等張にする溶質、又は懸濁化剤若しくは増粘剤を含有することができる滅菌粉末と組み合わせて含む。
【0060】
本発明の医薬組成物にて使用され得る適切な水性及び非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、及びこれらの適切な混合物、オリーブ油のような植物油、及びオレイン酸エチルのような注入用有機エステルが含まれる。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング物質の使用により、分散体の場合では必要な粒子径を維持することにより、界面活性剤の使用により、維持され得る。
【0061】
これらの組成物はまた、湿潤剤、乳化剤及び分散剤のようなアジュバンドを含有し得る。糖類、塩化ナトリウムなどのような等張剤を組成物に含めることが、望ましい場合もある。加えて、注射可能な医薬形態の持続的吸収は、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンのような吸収を遅延させる薬剤を含めることにより可能となる。
【0062】
一部の場合において、活性成分の効果を持続させるために、皮下又は筋肉内注射からの活性成分の吸収を遅らせることが望ましい。このことは、水に難溶性である結晶質又は非晶質材料の液体懸濁剤を使用することによって達成され得る。従って、活性成分の吸収速度は、溶解速度によって左右され、次に結晶の大きさ及び結晶形によって左右される場合がある。代替的に、非経口投与活性成分の遅延吸収は、活性成分を油ビヒクルに溶解又は懸濁することによって達成される。
【0063】
注射可能なデポー製剤は、ポリラクチド−ポリグリコリドのような生分解性ポリマー中に活性成分のマイクロカプセルマトリクスを形成することによって製造される。活性成分とポリマーの比率に応じて、そして用いられる特定のポリマーの性質に応じて、活性成分の放出速度を制御することができる。他の生分解ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)が含まれる。注射可能なデポー製剤は、活性成分を、体組織と適合性を有するリポソーム又はマイクロエマルジョンに閉じ込めることによっても調製される。注射可能な物質を、例えば細菌保持フィルタを通過させる濾過により滅菌することができる。
【0064】
製剤は、単位用量又は多剤用量密閉容器、例えばアンプル及びバイアル中に調製することができ、使用の直前に滅菌液体担体、例えば注射用の水の添加のみを必要とする凍結乾燥条件下で保存することができる。用時調製用の注射用液剤及び懸濁剤は、上記で記載した種類の滅菌粉末剤、顆粒剤及び錠剤から調製することができる。
【0065】
本発明の更なる目的、利点及び新規な特徴は、以下の実施例を調べることによって、当業者に明白になるであろう。同実施例は本発明を制限することを意図していない。
【実施例1】
【0066】
既知のアレルギーを有するヒト志願者GR283から全血を採取し、抗凝血薬を含有しないガラス製のバキュテナー管に入れた。この血液を凝血させ、遠心分離により血清を除去し、次に水浴中に56℃で30分間放置して、熱不活性化にした。GR283から再び全血を採取し、ヘパリンを含有するガラス製のバキュテナー管に加え、以下のようにして、末梢血リンパ球(PBL)の単離に使用した。全血を室温のHistopaque1077溶液に重層し、室温にて15分間、2000rpmで遠心分離した。次に血漿とHistopaqueとの界面の細胞を取り除き、培地(10%熱不活性化GR283血清+1%ペニシリン/ストレプトマイシンを有するIMDM培地)により37℃で洗浄した。
【0067】
培地中の式IIの化合物(上記を参照すること)及びメチルフェニデート(いずれもジェフェリー ディ.ウィンケル(Jeffrey D.Winkler)博士(ペンシルバニア州フィラデルフィアのペンシルバニア大学)から入手した)を、96ウエルプレートのウエルに加え、最終濃度が5μg/ml、15μg/ml、及び50μg/mlである式IIの化合物及びメチルフェニデートを得た。式IIの化合物の溶媒である滅菌18MΩ水、及びデキサメタゾン(シグマ社から入手)(最終濃度は10μg/mlの水溶液)を対照として使用した。次に、培地中のGR283のPBLをウエルに加えて、1ウエルあたりの最終濃度を150,000個の細胞とし、プレートを37℃かつ5%COで24時間培養した。この培養後、培地中のフィトヘマグルチニン(PHA)を加えて、最終濃度2μg/ml、5μg/ml、又は20μg/ml、最終総容量200μl/ウエルとし、細胞を、37℃かつ5%COで更に72時間培養した。全ての培養液をトリプリケート(triplicate)に実施した。
【0068】
この培養後、細胞凝集を、倒立顕微鏡に備え付けたデジタルカメラで代表的なウエルを撮影することによって調べた。式IIの化合物は、5μg/mlのPHAにより誘導された細胞凝集の量を、用量依存的に低減した。式IIの化合物は、おそらく、細胞表面での細胞付着分子の発現を減少させた結果、細胞凝集を弱めたのであろう。
【0069】
細胞増殖は、20μlのPromega細胞滴定量溶液を各ウエルに加え、プレートを更に4時間培養することによって、分析した。Promega細胞滴定量溶液はテトラゾリウム染料を含有する溶液であり、同テトラゾリウム染料は生細胞によりホルマザン染料に還元され、この還元はウエルに存在する生細胞の数と比例する。4時間の培養後、各ウエルの530nmでの光学濃度(OD)を測定した。細胞を含有していない対照液ウエルの530nmでのODを、実験ウエルのODから引いた。増殖分析の結果を図1A乃至Cに表す。図1A乃至Cから明らかなように、式IIの化合物(Cpd.II)及びデキサメタゾン(Dex)は、PHAで刺激したPBLの増殖を用量依存的に有意に阻害した。メチルフェニデート(MP)は、その最高用量及び最低PHA用量で有意な効果を示した。それ以外では、メチルフェニデートは、PHA刺激PBLの増殖を有意に低減しなかった。
【実施例2】
【0070】
既知のアレルギーを有するヒト志願者GR467から全血を採取し、実施例1で記載されたように処理して、熱不活性化血清及びPBLを得た。(熱不活性化GR467血清を使用して作製した)培地中の式IIの化合物及びメチルフェニデートを、96ウエルプレートのウエルに加えて、最終濃度が5μg/ml、15μg/ml及び25μg/mlである式IIの化合物並びに最終濃度が15μg/mlであるメチルフェニデートを得た。水及びデキサメタゾン(最終濃度10μM)を対照として使用した。次に、培地中のGR467のPBLをウエルに加えて、1ウエルあたりの最終濃度を150,000個の細胞とし、プレートを37℃かつ5%COで24時間培養した。この培養後、PHAを加えて、最終濃度2μg/ml、最終総容量200μl/ウエルとし、細胞を37℃かつ5%COで更に72時間培養した。全ての培養液をトリプリケートに実施した。
【0071】
この培養後、細胞増殖を、実施例1に記載されたように決定した。結果を図2に表す。図2から明らかなように、式IIの化合物(Cpd.II)及びデキサメタゾン(Dex)は、PHAで刺激しなかったものと刺激したものの両方で、PBLの増殖を有意に阻害したが、メチルフェニデートでは阻害しなかった。
【0072】
PBLによるサイトカインの放出も、15μg/mlの式IIの化合物、15μg/mlのメチルフェニデート又は10μMのデキサメタゾンを有する1mlの管中に、1mlあたり1.3×10細胞のPBLを、37℃かつ5%COで24時間培養することによって測定した。この培養後、PHAを加えて、最終濃度を2μg/mlとし、細胞を37℃かつ5%COで更に96時間培養した。全ての培養液をトリプリケートに実施した。1000rpmで10分間遠心分離して細胞を除去し、培地を収集した。
【0073】
培地へのIL−13及びインターフェロンγ(IFNγ)の放出をELISAで測定した。ELISAを実施するために、ヒトIL−13及びIFNγに対する抗体のマッチドペアを、それぞれピアスバイオテクノロジー(Pierce Biotechnology)社及びバイオソース(Biosource)社から購入した。ELISAストリップウエルプレートを、IL−13に対する抗体10μg/ml(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中)及びIFNγに対する抗体4μg/ml(PBS中)を用いて、室温で一晩被覆した。次にプレートを、PBS中の4%BSA溶液を使用して、1時間ブロックし、続いて1ウエルあたり50μlの実験培地をデュープリケートにて(in duplicate)添加した。プレートを室温で1時間培養し、次に0.1%のTween20を含む50mMのトリス、pH8.0を使用して洗浄した。次にIL−13に対するビオチン化した第2の抗体の溶液400ng/ml及びIFNγに対するビオチン化した第2の抗体500ng/mlの溶液を、ブロック緩衝剤中で作製し、1ウエルあたり100μlを加えた。プレートを1時間培養し、再び洗浄した。Strepavidin HRP(ピアスバイオテクノロジー社)接合体の1:8000希釈液を、ブロック緩衝剤中で作製し、100μlをウエルに加え、培養を30分間続けた。最終洗浄工程を実施し、その後、100μlのピアスバイオテクノロジーTMB基質を、各ウエルに加えた。30分で着色し、100μlの0.18N HSOを加えて停止させた。ODを、450nMフィルタを有するマイクロプレートリーダを使用して決定した。
【0074】
IL−13の結果を図3に示す。図から明らかなように、式IIの化合物(Cpd.II)及びデキサメタゾン(Dex)は、PHAにより誘導されたIL−13の放出を有意に阻害した。メチルフェニデート(MP)は、IL−13の放出を阻害しなかった。事実、メチルフェニデートは、PHA刺激細胞によるIL−13の放出を増加した。
【0075】
IFNγの結果を図4に示す。図から明らかなように、式IIの化合物(Cpd.II)及びデキサメタゾン(Dex)は、非刺激細胞とPHAで刺激された細胞の両方において、IFNγの放出を有意に阻害した。メチルフェニデート(MP)は、非刺激細胞によるIFNγの放出に対していくらかの効果があったが、PHAで刺激された細胞からのIFNγの放出を有意に抑制しなかった。事実、メチルフェニデートは、PHA刺激細胞によるIFNγの放出を増加した。
【実施例3】
【0076】
健康なヒト志願者GR191から全血を採取し、実施例1で記載されたように処理して、熱不活性化血清及びPBLを得た。(熱不活性化GR191血清を使用して作製した)培地中の式IIの化合物及びメチルフェニデートを、96ウエルプレートのウエルに加えて、最終濃度が5μg/ml、15μg/ml、25μg/ml及び50μg/mlである式IIの化合物並びに最終濃度が50μg/mlであるメチルフェニデートを得た。水、マウス神経成長因子(NGF)(アップステートバイオテクノロジー(Upstate Biotechnology)社)(最終濃度250ng/ml)及びデキサメタゾン(最終濃度10μM)を対照として使用した。次に、培地中のGR191のPBLをウエルに加えて、1ウエルあたりの最終濃度を150,000個の細胞とし、プレートを37℃かつ5%COで24時間培養した。この培養後、PHAを加えて、最終濃度2μg/ml及び5μg/ml、最終総容量200μl/ウエルとし、細胞を37℃かつ5%COで更に72時間培養した。全ての培養液をトリプリケートに実施した。
【0077】
この培養後、細胞増殖を、実施例1に記載されたように決定した。結果を図5A及びBに表す。図5A及びBから明らかなように、式IIの化合物(Cpd.II)及びデキサメタゾン(Dex)は、PHAで刺激しなかったものと刺激したものの両方で、PBLの増殖を有意に阻害したが、メチルフェニデート(MP)は阻害しなかった。
【0078】
PBLによるサイトカインの放出も、15μg/ml及び50μg/mlの式IIの化合物又は10μMのデキサメタゾンを有する1mlの管中に、1mlあたり1×10細胞のPBLを、37℃かつ5%COで24時間培養することによって測定した。この培養後、PHAを加えて、最終濃度を5μg/mlとし、細胞を37℃かつ5%COで更に72時間培養した。全ての培養液をトリプリケートに実施した。次に細胞を1000rpmで10分間遠心分離して除去した。
【0079】
上澄み液を収集し、上澄み液中のIL−13及び腫瘍壊死因子α(TNFα)の濃度をELISAにより測定した。IL−13のELISAは、実施例2に記載されたように実施した。結果を図6に表す。図6から明らかなように、式IIの化合物(Cpd.II)及びデキサメタゾン(Dex)は、PHA刺激PBLからのIL−13の放出を有意に阻害した。
【0080】
TNFαのELISAは、ピアスエンドーゲン(Pierce Endogen)社からのマッチドペアの抗体を使用して、実施例2に記載されたように実施した(被覆抗体に対して2μg/ml及び第2の抗体に対して250ng/ml)。結果を図7に表す。図7から明らかなように、式IIの化合物(Cpd.II)及びデキサメタゾン(Dex)は、PHA刺激PBLからのTNFαの放出を有意に阻害した。
【0081】
細胞をフローサイトメトリーで更に分析した。アネキシンを使用して、死んでいる、又は死につつある細胞の集団を決定した。抗CD69抗体を使用して、細胞活性化のレベルを確立した。T細胞レセプターαβ(TCR)の抗体も使用した。組み換えアネキシン5(PE及びFITC接合体)並びに抗体は、全てカルタグ(Caltag)社(カリフォルニア州バーリンガム所在)から購入し、製造会社の推奨に従って使用した。以下の結果が観察された。
【0082】
(細胞死)
TCR陽性細胞のアネキシン染色は、50μg/ml及び15μg/mlの式IIの化合物により7.3%(バックグラウンド)から、それぞれ45%及び23%に増加し、T細胞集団における細胞死の増加を示した。5μg/mlでのPHAによる刺激は、TCR陽性細胞のアネキシン染色を67%に増加した。このことは、PHAがT細胞集団において細胞死も誘導できることを示す。細胞死は、PHA+15μg/mlの式IIの化合物による処置の結果、僅かに減少した(PHA及びIMM0001ではアネキシン染色されたTCR陽性細胞は62%であったのに対して、PHA単独では67%)。PHA+50μg/mlの式IIの化合物は、アネキシン染色で見られるように、TCR陽性サブセット細胞において87%の細胞死を引き起こした。この結果は、式IIの化合物のより高い50μg/ml濃度が、T細胞の有意な細胞死を引き起こしたが、より低い15μg/ml濃度では引き起こさなかったことを示す。デキサメタゾンは、TCR陽性細胞のアネキシン染色におけるPHA誘導増加を救済し(84%から48%への減少)、対照化合物が適切に機能していることを実証した。
【0083】
(T細胞の活性化)
CD69+TCR染色(活性化T細胞)は、いずれの対照(無添加、式II化合物単独及びデキサメタゾン単独)においても検出されなかった。PHAは、CD69+TCR染色を84%に増加した。CD69染色の増加により検出されたように、PHAのみがT細胞の活性化を引き起こした。PHA刺激細胞のCD69+TCR染色は、50μg/mlの式IIの化合物により84%から54%に低下し、15μg/mlの式IIの化合物により64%に低下した。デキサメタゾンは、PHA刺激細胞のCD69+TCR染色を低減することに関しては、式IIの化合物よりも効果が低かった。従って、式IIの化合物は、T細胞活性化の減少において、強力な抗炎症剤であるデキサメタゾンよりも効果的である。
【実施例4】
【0084】
健康なヒト志願者GR−192から全血を採取し、実施例1で記載されたように処理して、熱不活性化血清及びPBLを得た。次に、GR−192のPBLを、(10%熱不活性化GR−192血清を使用して作製された培地中の)15μg/mlの式IIの化合物又は10μMのデキサメタゾンを有する1mlの管中に、1mlあたり1.3×10細胞を、37℃かつ5%COで24時間培養した。この培養後、PHAを加えて、最終濃度2μg/mlを得て、細胞を37℃かつ5%COで更に96時間培養した。全ての培養液をトリプリケートに実施した。次に細胞を、1000rpmで10分間遠心分離して除去し、培地を収集した。
【0085】
培地へのIL−8の放出をELISAで測定した。ELISAを実施するために、ヒトIL−8に対する抗体のマッチドペアを、ピアステクノロジー社及びバイオソース社からそれぞれ購入した。ELISAストリップウエルプレートを、IL−8(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中)に対する抗体2μg/mlを用いて室温で一晩被覆した。次にプレートを、PBS中の4%BSA溶液を使用して、1時間ブロックし、続いて1ウエルあたり50μlの実験培地をデュープリケートにて添加した。プレートを室温で1時間培養し、次に0.1%のTween20を含む50mMのトリス、pH8.0を使用して洗浄した。次に、IL−8に対するビオチン化した第2の抗体100ng/mlの溶液を、ブロック緩衝剤中で作製し、1ウエルあたり100μlを加えた。プレートを1時間培養し、再び洗浄した。Strepavidin HRP(ピアスバイオテクノロジー社)接合体の1:8000希釈液を、ブロック緩衝剤中で作製し、100μlをウエルに加え、培養を30分間続けた。最終洗浄工程を実施し、その後、100μlのピアスバイオテクノロジーTMB基質を、各ウエルに加えた。30分で着色し、100μlの0.18N HSOを加えて停止させた。ODを、450nmフィルタを有するマイクロプレートリーダを使用して決定した。
【0086】
結果を図8に示す。図から明らかなように、式IIの化合物(Cpd.II)及びデキサメタゾン(Dex)は、PHAにより誘導されたIL−8の放出を有意に阻害した。
インフルエンザ免疫化提供者から単離され、かつ赤血球凝集素ペプチド307−319に特異的である、CD4陽性ヒトTリンパ球細胞株(TRiPS)を、前回の刺激の18〜20日後におよそ4×10細胞を使用して継代のために刺激した。細胞を、冷イスコーブ改変ダルベッコ最小必須培地(IMDM,シグマ社)+10%ウシ胎仔血清(FCS;アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC))中で一回洗浄し、(マウス腹水から調製した)抗CD3モノクローナル抗体OKT3の1:500希釈物を含有する1.0mlの冷IMDM培地に再懸濁させた。細胞を抗体と共に氷上で30分間培養し、次にFCSを含んでいない冷培地で洗浄し、培地+50U/mlのヒトIL−2(ゼノメトリックス(Xenometrix)社)中で、支持細胞として、およそ2×10の4000R照射された健康なヒト提供者の末梢血リンパ球(PBL)と合わせた。培養を、3日目に、FCS+IL−2を有する新鮮なIMDM培地を添加して延長した。培養日数は、OKT3で刺激した日から測定した。細胞を、7日目(最大増殖)から出発して、典型的には14日目(再刺激に対する感受性が最も高い)、そして21日目(静止細胞が老化に近づいている)まで実験に使用することができる。
【0087】
活性化実験は、細胞のアリコートを採取し、温IMDM(37℃)で2回洗浄することによって実施した。各々の特定の分析のために、2×10個の生存細胞を、15μg/mlの式IIの化合物又は10μMのデキサメタゾンを含有する総容量が0.9mlである温IMDM培地の中にて、37℃で15分間プレ培養した。次に、0.1mlの温IMDM中に、活性化刺激剤として2×10個のCD3/CD28のダイナビーズ(ダイナル(Dynal)社)のアリコートを加え、培養液を37℃で24時間培養した。細胞を遠心分離によりペレット化した後、細胞培養液の上澄み液を採取した。
【0088】
サイトカイン含有物を、特異的IL−8のELISAにより上記で記載したように分析した。式IIの化合物は、TRiPS細胞株によるIL−8産生に効果がないことが見出された。
【実施例5】
【0089】
THP−1は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)(カタログ番号TIB−202)から入手した、単球細胞株である。THP−1細胞を、1mlあたり250,000細胞の濃度で培地(ATCCから入手した10%ウシ胎仔血清(FCS)及びシグマ社から入手した8ng/mlのモノチオグリセロールを含有するRPMI)中に加え、15μg/mlの式IIの化合物又は10μMのデキサメタゾンと共に、37℃かつ5%COで1時間培養した。1時間後、リポ多糖類(LPS)(シグマ社から入手した)を培養液に加えて、最終濃度200ng/mlとし、次に細胞を更に4時間又は更に24時間培養した。培養後、細胞を遠心分離し、上澄み液を収集した。上澄み液中のIL−8及びTNFαの濃度をELISAで測定した。
【0090】
上澄み液中のIL−8の濃度を、実施例4で記載されたように、ELISAにより決定した。結果を下記の表1に表す。表1から明らかなように、式IIの化合物(Cpd.II)及びデキサメタゾン(Dex)は、LPS刺激単球からのIL−8の放出を有意に阻害した。
【0091】
TNFαのELISAは、実施例2に記載されたように実施した。結果を下記の表2に表す。表2から明らかなように、式IIの化合物(Cpd.II)及びデキサメタゾン(Dex)は、LPS刺激単球からのTNFαの放出を有意に阻害した。
【0092】
【表1】

【表2】

【実施例6】
【0093】
MC/9マウス繊維芽細胞株(ATCCから入手した、カタログ番号CRL−8305)を、25,000細胞/ウエルで96ウエル組織培養プレートのウエルに中に入れた。培地は、10%ウシ胎仔血清(FCS)(ATCCから入手した)を含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(ケンブレックス社から入手した)であった。無対照ウエルは添加剤を含まなかった。残りのウエルは、25ng/mlのマウス神経生長因子(NGF)(アップステートバイオテクノロジー社(ニューヨーク州レークプラシッドに所在)から入手した)、又は25ng/mlのNGF及び5%のTSTIM(ビーディー バイオサイエンシーズ(BD Biosciences)社から入手した、ラットから調製し、かつコンナカバリンAを含有する培養補充物)のいずれかを含有した。加えて、以下の添加剤を細胞に加えた:水(ビヒクル対照);5μg/mlの式IIの化合物(Cpd.II);15μg/mlのCpd.II;又は30μg/mlのCpd.II。37℃かつ5%COにて72時間培養した後、細胞増殖を、実施例1で記載したように、Promega細胞滴定量分析により評価した。結果を下記の表3に示す。
【0094】
【表3】

【実施例7】
【0095】
継代4(即ち、4細胞集団倍加)のヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、ヒト供給源ロット番号9713(ATCCから入手した)を、ITSS(インスリン、トランスフェリン及び亜セレン酸ナトリウム)(シグマ社から入手した)で補充した500μlの内皮増殖培地−2(EGM−2)完全培地(血清又はアスコルビン酸は含まない)(ケンブレックス社から入手した)中に、20,000細胞/ウエルで48ウエル組織培養プレートの各ウエルに入れた。また、継代4のHUVEC、ヒト供給源ロット番号7016(ATCCから入手した)を、ITSSで補充した、500μlのEGM−2完全培地(血清又はアスコルビン酸は含まない)中に、20,000細胞/ウエルで48ウエル組織培養プレートのウエルに加えた。以下の添加剤を細胞に加えた:水(ビヒクル対照)及び15μg/mlの式IIの化合物(Cpd.II)。37℃かつ5%COで1時間の培養後、リポ多糖類(LPS)(シグマ社から入手した)を加えて、最終濃度200ng/mlとして、細胞を37℃かつ5%COで一晩培養した。この培養後、上澄み液を収集し、上澄み液中のIL−8の量を、実施例4で記載されたようにELISAで決定した。
【0096】
結果を下記の表4に示す。表4から明らかなように、Cpd.IIは、7016HUVECによるIL−8の放出を完全に排除し、9713HUVECでは、IL−8の放出を90%減少した。
【0097】
【表4】

【実施例8】
【0098】
継代4のHUVEC、ヒト供給源ロット番号8710(ATCCから入手した)を、EGM−2培地(ケンブレックス社から入手した)中に、5,000細胞/ウエルで24ウエル組織培養プレートのウエルに入れ、37℃かつ5%COで72時間培養した。次に、培地を新鮮な培地に変えて、以下の添加剤を細胞に加えた:水(ビヒクル対照);1μg/ml、5μg/ml、10μg/ml、15μg/ml若しくは30μg/mlの式IIの化合物(Cpd.II);15μg/mlのメチルフェニデート(MP);10μMのLY294002(シグマ社から入手したPI3キナーゼ阻害因子);又は10μMのデキサメタゾン(Dex)。37℃かつ5%COで1時間の培養後、TNFα(ピアス社から入手した)を加えて、最終濃度10ng/mlとし、細胞を37℃かつ5%のCOで更に18時間培養した。この培養後、上澄み液を収集し、上澄み液中のIL−8の量を、実施例4で記載されたようにELISAで決定した。
【0099】
結果を下記の表5に示す。表5から明らかなように、Cpd.IIは、TNFαで刺激されたIL−8の放出を用量依存的に減少するが、高い用量(30μg/ml)によりいくらかの細胞死が引き起こされたことは明白であった。Dex及びMPは、IL−8の放出を僅かに減少し、LY294002は、IL−8の放出を有意に減少した。
【0100】
【表5】

【実施例9】
【0101】
転写因子NFκB(核性因子κB)は、免疫、急性期及び炎症性反応のメディエーターをコードする種々の遺伝子の発現の調節に関与している。哺乳動物においてNFκBファミリーの5個のサブユニットがある:即ち、p50、p65(ReIA)、c−Rel、p52及びReIBである。p50/p65ヘテロ二量体及びp50ホモ二量体は、NFκBシグナル経路で見出される最も一般的な二量体である。NFκBは、リポ多糖類のような細菌細胞壁の成分、又はTNFα若しくはIL−1βのような炎症性サイトカインを含む多数の刺激により活性化され得る。
【0102】
活性化タンパク質−1(AP−1)は、細胞周期の間に活性化して細胞生存、分化及び適応応答を促進する転写因子である。AP−1タンパク質は、増殖及び細胞周期進行に関わる多くの遺伝子の発現において役割を果たす。例えば、ras、rasF、及びmekのような、増殖因子シグナル伝達経路で機能する癌遺伝子による細胞形質転換は、AP−1成分タンパク質発現の高い増加をもたらす。従って、AP−1は、悪性及び転移の際に観察される侵襲性過程を支持する遺伝子を調節する。AP−1は、ATFI−4、c−Fos、c−Jun、c−Myc及びC/EBPを含む、構造的に関連する転写因子の大きなファミリーに属する。AP−1は、c−Fos、FosB、Fra−1、Fra−2、c−Jun、JunB及びJunDを含む、Fos及びJunファミリーから誘導されるタンパク質のヘテロ二量体複合体の混合物から構成される。主に、AP−1二量体は、TPA−応答配列(TRE)のDNAに結合する。AP−1の発現は、血清、増殖因子、ホルボールエステル、癌遺伝子、TGF−βのサイトカイン、TNF及びインターフェロンファミリー、ニューロン脱分極、並びに細胞ストレスのような複数の刺激により誘導される。
【0103】
継代5のHUVEC、ヒト供給源ロット番号8750(ATCCから入手した)を、25cmのフラスコ中のEGM−2培地でコンフルエンスまで増殖した。以下の添加剤を、フラスコ(総容量5ml/フラスコ)中にて、2%FCS、GA1000(ゲンタマイシン)、ヘパリン及びアスコルビン酸(全てケンブレックス社から入手した)を含有するEGM−2培地に加えた:1μg/mlの式IIの化合物(Cpd.II);5μg/mlのCpd.II;15μg/mlのCpd.II;15μg/mlのメチルフェニデート(MP);又は10μMのLY294002。フラスコを37℃かつ5%COで一晩培養した。この培養後、血管内皮増殖因子(VEGF)(シグマ社から入手した)を加えて、最終濃度10ng/mlとして、フラスコを更に30分間培養した。
【0104】
次に、NFκBの量を、アクティブモチーフノースアメリカ(Active Motif North America)社(カリフォルニア州、カールスバッド所在)から入手したTransAM(登録商標)NFκB p65/NFκB p50転写因子アッセイキット及び核抽出キットを製造会社の使用説明書に従って使用して、決定した。要するに、細胞の核抽出液は核抽出キットを使用して調製した。次に、核抽出液を、TransAM(商標)キットの96ウエルプレートのウエルに加えた。NFκBコンセンサス結合部位を含有するオリゴヌクレオチドをウエル中に固定化し、核抽出液に含有された活性化NFκBをオリゴヌクレオチドと結合した。次に、NFκBのp65又はp50サブユニットに対する抗体を加え、オリゴヌクレオチドに結合したNFκB複合体を検出した。次に、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)と結合した第2抗体を加えて、吸光光度分析(450nmで測定)により定量化した、比色分析の測定値を提供した。
【0105】
c−Junの量を、アクティブモチーフノースアメリカ社(カリフォルニア州、カールスバッド所在)から入手したTransAM(登録商標)AP−1ファミリー転写因子アッセイキット及び核抽出キットを製造会社の使用説明書に従って使用して、決定した。要するに、細胞の核抽出液は核抽出キットを使用して調製した。次に、核抽出液を、TPA応答配列(TRE)を含有するオリゴヌクレオチドが固定化されている、96ウエルプレートのウエルに加えた。核抽出液に含有されている活性化タンパク質−1(AP−1)二量体を、このオリゴヌクレオチドに結合し、c−Junに特異的な抗体を使用して検出した。次に、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)と結合した第2抗体を加えて、吸光光度分析(450nmで測定)により定量化した、比色分析の測定値を提供した。
【0106】
結果を下記の表6及び7に示す。表6から明らかなように、HUVECのVEGF処置は、TransAM分析で検出されたように、ほぼ2倍の活性化NFκBをもたらした。15μg/ml及び5μg/mlでのCpd.IIは、活性化NFκBの量を基礎レベルにまで低減した。表7から明らかなように、HUVECのVEGF処置は、c−Junの増加をもたらした。15μg/ml及び5μg/mlでのCpd.IIは、c−Junの量の増加を、完全に排除した。
【0107】
【表6】

【表7】

【実施例10】
【0108】
継代8のヒト腸骨動脈内皮細胞(HIAEC)(ATCCから入手した;カタログ番号CC−2545)を、25cmフラスコ中のEGM−2培地でコンフルエンスまで増殖した。実験の18時間前、培地を、0.1%FCS+ヘパリン、GA1000(ゲンタマイシン)及び牛下垂体抽出液(全てケンブレックス社から入手した)を含有するEGM−2培地に代えて、細胞を静止状態にした。実験を実施するために、培地をフラスコから吸引し、続いて以下の添加剤を、フラスコ中の新鮮な培地に加えた(総容量5ml/フラスコ):15μg/mlの式IIの化合物(Cpd.II)又は10μMのLY294002。フラスコを37℃かつ5%COで2時間培養した。この培養後、VEGF又はTNFαを加えて、最終濃度を10ng/mlとし、フラスコを更に30分間培養した。次に、NFκBの量を、実施例9で記載されたように、アクティブモチーフノースアメリカ社(カリフォルニア州、カールスバッド所在)から入手したTransAM(登録商標)NFκB p65/NFκB p50転写因子アッセイキット及び核抽出キットを使用して決定した。
【0109】
結果を下記の表8に示す。表8から明らかなように、HUVECのTNFα処理は、TransAM分析により検出されたように、活性化NFκBの量を極めて大きく増加した。15μg/mlのCpd.IIは、活性化NFκBの量を約82%低減した。VEGFによる処理は、TNFαで達成された活性化NFκBの増加と同じ大きさの増加をもたらさなかったが、増加量は、Cpd.IIにより70%低減された。
【0110】
【表8】

【実施例11】
【0111】
18日目のTRiPS細胞、1×10個を、何も添加しないか(「無添加(Nil)」)、100,000細胞あたり1μlのCD3/CD28ダイナビーズ(ダイナル社(ノルウェー国オスロに所在))(「CD3/CD28ビーズ」)を添加するか、或いはCD3/CD28ビーズと15μg/mlの式IIの化合物(Cpd.II)とを添加して、37℃で30分間培養した。培養後、細胞を細胞溶解性哺乳動物細胞抽出試薬(Cell−Lytic Mammalian Cell Extraction Reagent)(シグマ社)で溶解した。遠心分離にてペレット細胞片にした後、上澄み液(細胞抽出液)を得た。
【0112】
次に細胞抽出液(上澄み液)を、製造会社の使用説明書に従って、Custom AntibodyArray(商標)(ハイプロマトリックス(Hypromatrix)社、マサチューセッツ州ウスターに所在)を使用して分析した。Custom AntibodyArray(商標)は、下記に列挙されているタンパク質に対する抗体でブロットされたナイロン膜である。要するに、細胞抽出液を、室温でゆっくりと振とうしながら、デュープリケートCustom AntibodyArray(商標)により2時間培養し、続いてトリス緩衝剤(150mM NaCl、25mMトリス、0.05%Tween20、pH7.5)により3回洗浄した。トリス緩衝剤中に、リン酸化チロシン、リン酸化セリン及びリン酸化トレオニンに特異的なHRP標識抗体を加え、アレイを2時間培養した。トリス緩衝剤でさらに3回洗浄した後、ペルオキシダーゼ反応性ルミネセンス基質を加えた。アレイをX線フィルムに暴露して可視化した。X線フィルムの濃度測定を、走査及びコンピューター分析によって行った。結果を下記の表9に要約した。
【0113】
【表9】

【実施例12】
【0114】
THP−1細胞を、1mlあたり250,000細胞の濃度で培地(10%FCS及び8ng/mlのモノチオグリセロールを含有するRPMI)の中に加え、5μg/mlの式IIの化合物(Cpd.II)又は15μg/mlのCpd.IIと共に37℃かつ5%COで1時間培養した。1時間後、リポ多糖類(LPS)を培養液に加えて、最終濃度200ng/mlとして、次に細胞を更に24時間培養した。培養後、NFκB及びc−Junの量を、実施例9で記載されたように決定した。c−Fosの量も、アクティブモチーフノースアメリカ社(カリフォルニア州、カールスバッド所在)から入手したTransAM(登録商標)AP−1ファミリー転写因子アッセイキット及び核抽出キットを製造会社の使用説明書に従って使用して、決定した。要するに、細胞の核抽出液は核抽出キットを使用して調製した。次に、核抽出液を、TPA応答配列(TRE)を含有するオリゴヌクレオチドが固定化されている、96ウエルプレートのウエルに加えた。核抽出液に含有されている活性化タンパク質−1(AP−1)二量体を、このオリゴヌクレオチドに結合させ、c−Fosに特異的な抗体を使用して検出した。次に、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)と結合した第2抗体を加えて、吸光光度分析(450nmで測定)により定量化した、比色分析の測定値を提供した。結果を図9A及びBに示す。
【実施例13】
【0115】
10日目のTRiPS細胞、1×10個を、15μg/mlの式IIの化合物(Cpd.II)と共に37℃で1時間培養した。次に細胞を、CD3/CD28ビーズ(ダイナル社から入手した)(100,000細胞あたり1μl)を37℃で10分間培養した。次に細胞を、(以下に記載されるPierce EZ−Detect活性化キットで補充された)緩和な緩衝剤で溶解して、細胞抽出液を生成した。得られた抽出液のタンパク質濃度を、ビシンコニン酸(BCA)分析(ピアス社)により決定し、直ぐに使用するために氷の上に置いた。
【0116】
プルダウンアッセイは、RAS及びRAP−1のためにそれぞれGST−RAF−1−RBD及びGST−RalGDS−RBDを利用し、製造会社の使用説明書に従って、Pierce EZ−Detect活性化キットを使用して実施した。要するに、各抽出液からの400μgの総タンパク質を、組み換えタンパク質及びグルタチオン樹脂と合わせ、穏やかに振とうしながら、4℃で1時間培養した。次に樹脂を洗浄して非結合タンパク質を除去し、活性化RAS及びRAP−1タンパク質を、還元剤を含有するSDS−PAGE装填染料の存在下で沸騰することにより除去した。キットから供給される抗体を使用して、RAS及びRAP−1のウエスタンブロットを実施して、タンパク質を可視化した。X線フィルムの濃度測定を、走査及びコンピューター分析によって行った。
【0117】
結果を表10に示す。表10から明らかなように、TRiPS細胞をCpd.IIと共に培養することによって、RASタンパク質の非常に強力な阻害をもたらした。CD3/CD28ビーズによる細胞の刺激は、予測されたほどにはRAP−1タンパク質の量を増加しなかったが、Cpd.IIは、RAP−1も阻害したように思われる。
【0118】
【表10】

本発明の前述の考察は、例示及び説明の目的のために提示されている。前述の記載は、本明細書で開示されている形態に本発明を制限することを意図していない。本発明の記載は1つ以上の実施態様、並びに特定の変形及び変更の記載を含むが、その他の変形及び変更が本発明の範囲内であり、例えば、本発明の開示を理解した後では、当業者の技術及び知識の範囲内であり得る。クレームされたものの代替の、交換可能な、及び/又は同等の構造、機能、範囲又は工程を、そのような代替の、交換可能な、及び/又は同等の構造、機能、範囲又は工程が本明細書に開示されているか否かに関わらずに包含し、あらゆる特許可能な事項を公に開放することを意図しない、許容される範囲で代替的実施態様を含む権利を得ることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1A】2μg/mlのフィトヘマグルチニン(PHA)で刺激された末梢血リンパ球(PBL)培養液に対する種々の添加剤での530nmにおける光学濃度のグラフである。
【図1B】5μg/mlのフィトヘマグルチニン(PHA)で刺激された末梢血リンパ球(PBL)培養液に対する種々の添加剤での530nmにおける光学濃度のグラフである。
【図1C】20μg/mlのフィトヘマグルチニン(PHA)で刺激された末梢血リンパ球(PBL)培養液に対する種々の添加剤での530nmにおける光学濃度のグラフである。
【図2】2μg/mlのPHAで刺激されたPBL培養液に対する種々の添加剤での530nmにおける光学濃度のグラフである。
【図3】2μg/mlのPHAで刺激されたPBL培養液に対する種々の添加剤でのIL−13の濃度のグラフである。
【図4】2μg/mlのPHAで刺激されたPBL培養液に対する種々の添加剤でのIFNγの濃度のグラフである。
【図5A】2μg/ml及び5μg/mlのPHAでそれぞれ刺激されたPBL培養液に対する種々の添加剤での530nmにおける光学濃度のグラフである。
【図5B】2μg/ml及び5μg/mlのPHAでそれぞれ刺激されたPBL培養液に対する種々の添加剤での530nmにおける光学濃度のグラフである。
【図6】5μg/mlのPHAで刺激されたPBL培養液に対する種々の添加剤でのIL−13の濃度のグラフである。
【図7】2μg/mlのPHAで刺激されたPBL培養液に対する種々の添加剤でのTNFαの濃度のグラフである。
【図8】2μg/mlのPHAで刺激されたPBL培養液に対する種々の添加剤でのIL−8の濃度のグラフである。
【図9A】リポ多糖類(LPS)で刺激されたTHP−1単球培養液に対する種々の添加剤での光学濃度のグラフである。
【図9B】リポ多糖類(LPS)で刺激されたTHP−1単球培養液に対する種々の添加剤での光学濃度のグラフである。図9Bでは、それぞれの場合において、上側の暗灰色バーはc−Junであり、下側の明灰色バーはNFκBである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

(式中、nは、1〜5の整数であり、
は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、カルボキシル、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ、又はスルフヒドリルであり、ここで各アルキルは、ヒドロキシル、アミノ、又はスルフヒドリルで選択的に置換されており;かつ
は、水素又は低級アルキルである)
で示される化合物、又はその塩若しくはプロドラッグの有効量を動物に投与する工程を含む、動物において免疫反応を阻害する方法。
【請求項2】
式I:
【化2】

(式中、nは、1〜5の整数であり、
は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、カルボキシル、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ、又はスルフヒドリルであり、ここで各アルキルは、ヒドロキシル、アミノ、又はスルフヒドリルで選択的に置換されており;かつ
は、水素又は低級アルキルである)
で示される化合物、又はその塩若しくはプロドラッグの有効量を動物に投与する工程を含む、動物においてT細胞の活性化を阻害する方法。
【請求項3】
式I:
【化3】

(式中、nは、1〜5の整数であり、
は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、カルボキシル、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ、又はスルフヒドリルであり、ここで各アルキルは、ヒドロキシル、アミノ、又はスルフヒドリルで選択的に置換されており;かつ
は、水素又は低級アルキルである)
で示される化合物、又はその塩若しくはプロドラッグの有効量を動物に投与する工程を含む、動物においてT細胞媒介型の疾患又は病状を治療する方法。
【請求項4】
前記T細胞媒介型の疾患又は病状が、自己免疫性の疾患又は病状である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記自己免疫性の疾患又は病状が多発性硬化症である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記自己免疫性の疾患又は病状が全身性エリテマトーデスである、請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記T細胞媒介型の疾患又は病状がT細胞媒介肺疾患である、請求項3記載の方法。
【請求項8】
式I:
【化4】

(式中、nは、1〜5の整数であり、
は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、カルボキシル、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ、又はスルフヒドリルであり、ここで各アルキルは、ヒドロキシル、アミノ、又はスルフヒドリルで選択的に置換されており;かつ
は、水素又は低級アルキルである)
で示される化合物、又はその塩若しくはプロドラッグの有効量を動物に投与する工程を含む、動物において単球の活性化を阻害する方法。
【請求項9】
式I:
【化5】

(式中、nは、1〜5の整数であり、
は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、カルボキシル、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ、又はスルフヒドリルであり、ここで各アルキルは、ヒドロキシル、アミノ、又はスルフヒドリルで選択的に置換されており;かつ
は、水素又は低級アルキルである)
で示される化合物、又はその塩若しくはプロドラッグの有効量を動物に投与する工程を含む、動物において炎症誘発性サイトカインの産生、放出、又はその両方を阻害する方法。
【請求項10】
式I:
【化6】

(式中、nは、1〜5の整数であり、
は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、カルボキシル、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ、又はスルフヒドリルであり、ここで各アルキルは、ヒドロキシル、アミノ、又はスルフヒドリルで選択的に置換されており;かつ
は、水素又は低級アルキルである)
で示される化合物、又はその塩若しくはプロドラッグの有効量を動物に投与する工程を含む、動物においてインターロイキン8の産生、放出、又はその両方を阻害する方法。
【請求項11】
式I:
【化7】

(式中、nは、1〜5の整数であり、
は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、カルボキシル、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ、又はスルフヒドリルであり、ここで各アルキルは、ヒドロキシル、アミノ、又はスルフヒドリルで選択的に置換されており;かつ
は、水素又は低級アルキルである)
で示される化合物、又はその塩若しくはプロドラッグの有効量を動物に投与する工程を含む、動物においてインターロイキン13の産生、放出、又はその両方を阻害する方法。
【請求項12】
式I:
【化8】

(式中、nは、1〜5の整数であり、
は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、カルボキシル、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ、又はスルフヒドリルであり、ここで各アルキルは、ヒドロキシル、アミノ、又はスルフヒドリルで選択的に置換されており;かつ
は、水素又は低級アルキルである)
で示される化合物、又はその塩若しくはプロドラッグの有効量を動物に投与する工程を含む、動物においてインターフェロンγの産生、放出、又はその両方を阻害する方法。
【請求項13】
式I:
【化9】

(式中、nは、1〜5の整数であり、
は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、カルボキシル、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ、又はスルフヒドリルであり、ここで各アルキルは、ヒドロキシル、アミノ、又はスルフヒドリルで選択的に置換されており;かつ
は、水素又は低級アルキルである)
で示される化合物、又はその塩若しくはプロドラッグの有効量を動物に投与する工程を含む、動物において腫瘍壊死因子αの産生、放出、又はその両方を阻害する方法。
【請求項14】
式I:
【化10】

(式中、nは、1〜5の整数であり、
は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、カルボキシル、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ、又はスルフヒドリルであり、ここで各アルキルは、ヒドロキシル、アミノ、又はスルフヒドリルで選択的に置換されており;かつ
は、水素又は低級アルキルである)
で示される化合物、又はその塩若しくはプロドラッグの有効量を動物に投与する工程を含む、動物において炎症を阻害する方法。
【請求項15】
式I:
【化11】

(式中、nは、1〜5の整数であり、
は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、カルボキシル、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ、又はスルフヒドリルであり、ここで各アルキルは、ヒドロキシル、アミノ、又はスルフヒドリルで選択的に置換されており;かつ
は、水素又は低級アルキルである)
で示される化合物、又はその塩若しくはプロドラッグの有効量を動物に投与する工程を含む、動物において炎症性の疾患又は病状を治療する方法。
【請求項16】
前記炎症性の疾患又は病状が、喘息である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記炎症性の疾患又は病状が、炎症性の神経疾患又は神経病状である、請求項15記載の方法。
【請求項18】
式I:
【化12】

(式中、nは、1〜5の整数であり、
は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、カルボキシル、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ、又はスルフヒドリルであり、ここで各アルキルは、ヒドロキシル、アミノ、又はスルフヒドリルで選択的に置換されており;かつ
は、水素又は低級アルキルである)
で示される化合物、又はその塩若しくはプロドラッグの有効量を動物に投与する工程を含む、動物においてリンパ球の望ましくない増殖を阻害する方法。
【請求項19】
式I:
【化13】

(式中、nは、1〜5の整数であり、
は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、カルボキシル、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ、又はスルフヒドリルであり、ここで各アルキルは、ヒドロキシル、アミノ、又はスルフヒドリルで選択的に置換されており;かつ
は、水素又は低級アルキルである)
で示される化合物、又はその塩若しくはプロドラッグの有効量を動物に投与する工程を含む、動物においてリンパ球の望ましくない付着を阻害する方法。
【請求項20】
第1の疾患又は病状が、中枢神経系興奮剤又はドーパミン取り込み阻害因子で治療可能な神経性の疾患又は病状であり、かつ第2の疾患又は病状が、免疫性又は炎症性の疾患若しくは病状である、動物における併存性の疾患又は病状を治療する方法であって、前記方法は、式I:
【化14】

(式中、nは、1〜5の整数であり、
は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、カルボキシル、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ、又はスルフヒドリルであり、ここで各アルキルは、ヒドロキシル、アミノ、又はスルフヒドリルで選択的に置換されており;かつ
は、水素又は低級アルキルである)
で示される化合物、又はその塩若しくはプロドラッグの有効量を動物に投与する工程を含む、方法。
【請求項21】
前記併存性の疾患が、アレルギー及び注意欠陥/多動性障害である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
が、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ又はスルフヒドリルである、請求項1乃至21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
が、それぞれ独立して、アリール、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ又はアシルである、請求項1乃至21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
が、それぞれ独立して、アリール、アルキル又はシクロアルキルである、請求項1乃至21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
が、それぞれ独立してアリールである、1乃至21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
n=1である、請求項1乃至21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
化合物が、下記:
【化15】

で示される、請求項1乃至21のいずれか一項に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【公表番号】特表2008−528505(P2008−528505A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552311(P2007−552311)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/002181
【国際公開番号】WO2006/078984
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(507243991)インスティチュート フォー モレキュラー メディスン インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUTE FOR MOLECULAR MEDICINE,INC.
【Fターム(参考)】