説明

メッキ厚み制御装置

【課題】鋼板ストリップの幅方向に反りが発生していても、溶融金属のメッキ厚みを幅方向に均一化できるメッキ厚み制御装置を提供する。
【解決手段】鋼板ストリップ11に溶融金属12をメッキするメッキ鋼板製造設備13に設けられ、ワイピングノズル14、15を備えたメッキ厚み制御装置10において、ワイピングノズル14、15は鋼板ストリップ11の幅より大きな幅を有する一体物であって、ワイピングノズル14、15のチャンバー16内にはチャンバー16の基端から先端手前までをワイピングノズル14、15の幅方向に分割する仕切り板17が配置されて複数の小チャンバー18が形成され、小チャンバー18には圧力調整弁19を備えたガス配管20が接続され、仕切り板17の先端面から鋼板ストリップ11との間の距離Xが10mm以上200mm以下で、仕切り板17の厚さが0.05mm以上1mm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属を鋼板ストリップにメッキするメッキ鋼板製造設備のメッキ厚み制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のメッキ鋼板製造設備のメッキ厚み制御装置に設けられたワイピングノズルでは、ワイピングノズル先端側のスリットギャップの幅を一定にし、ワイピングノズルのノズルチャンバー内のワイピングガスのガス圧力を一定に保ち、ワイピングノズルの位置は鋼板ストリップの通板位置に対して距離を有して固定している。そして、ノズルチャンバー内のワイピングガスのガス圧力又はワイピングノズルと鋼板ストリップ間の距離を調整してワイピングガスを溶融金属が付着している鋼板ストリップに吹付け、余分な溶融金属を取除いてメッキ厚みの制御を行っている。ここで、実際の鋼板ストリップには、鋼板ストリップの幅方向の反り(C反り)等の形状不良が存在し、通板する鋼板ストリップに対してワイピングノズルの位置を固定すると、ワイピングノズルと鋼板ストリップ間の距離が鋼板ストリップの幅方向に変化し、鋼板ストリップの幅方向にメッキ厚みのバラツキが生じる。このC反りは、ロールによって鋼板ストリップに曲げを与えることにより矯正できるが、このC反りがなくなると鋼板ストリップの長手方向の剛性が小さくなって通板中に鋼板ストリップのバタツキが発生し易くなり、これが原因でメッキ厚みにバラツキが発生するという問題が生じる。
【0003】
そこで、ワイピングノズルを幅方向に分割して複数の小ノズルを形成し、小ノズルと鋼板ストリップ間の距離をそれぞれ調節するか、又は小ノズルからのガス流量をそれぞれ調整することによって、鋼板ストリップの幅方向のメッキ厚みのバラツキを制御することが開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、ワイピングノズルにガスを供給する複数の配管をワイピングノズルの幅方向に沿って並べて接続し、各配管の途中に圧力調整弁を設けてワイピングノズルの幅方向に異なる圧力でガスを供給して、ワイピングノズルから噴出されるガス圧力をワイピングノズルの幅方向に変えることでワイピングノズルの幅方向のワイピング力を調整し、鋼板ストリップの幅方向におけるメッキ厚みのバラツキを制御することが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−239745号公報
【特許文献2】特開平7−3420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、隣接する小ノズル間の圧力差により、鋼板ストリップに形成されたメッキ層の表面に小ノズル同士の境界部に対応したすじ模様が付くという問題が生じる。
また、特許文献2に記載された発明では、一体物のワイピングノズルの内部でガス圧力が均一化され、ワイピングノズルの幅方向の圧力分布がなくなり、ワイピング力が均一化されて、鋼板ストリップの幅方向におけるメッキ厚みのバラツキを制御することができないという問題が生じる。これは、ガス圧力の伝播は音速で伝わるのに対して、ワイピングノズルのスリットギャップ内を移動するガスの流速はおよそ音速の1/2〜1/5程度であるので、ワイピングノズルから噴出したガスが鋼板ストリップに到達する前に鋼板ストリップの幅方向に圧力が伝播してしまうことによる。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、鋼板ストリップにその幅方向に反りが発生していても、溶融金属のメッキ厚みを鋼板ストリップの幅方向に均一化することができるメッキ厚み制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う本発明に係るメッキ厚み制御装置は、鋼板ストリップを移動させながら溶融金属をメッキするメッキ鋼板製造設備に設けられ、メッキ厚みを制御するワイピングノズルを備えたメッキ厚み制御装置において、
前記ワイピングノズルは前記鋼板ストリップの幅より大きな幅を有する一体物であって、前記ワイピングノズルのチャンバー内には該チャンバーの基端から該チャンバーの先端手前までの範囲を該ワイピングノズルの幅方向に分割する仕切り板が該ワイピングノズルの幅方向と直交する方向に向けて該ワイピングノズルの幅方向に並べて配置されて、前記チャンバーの先端側で連通する複数の小チャンバーが形成され、前記小チャンバーには圧力調整弁を備えたガス配管がそれぞれ接続され、しかも、前記仕切り板の先端面から前記鋼板ストリップまでの距離Xが10mm以上200mm以下で、前記仕切り板の厚さが0.05mm以上1mm以下である。
【0008】
本発明に係るメッキ厚み制御装置において、前記小チャンバー内にガス圧力を検出する圧力センサをそれぞれ設けると共に、前記ワイピングノズルの下流側に、前記鋼板ストリップの通板位置を検知する位置検知センサを、該位置検知センサの水平方向位置を前記小チャンバーの水平方向位置と一致させてそれぞれ配置し、前記鋼板ストリップの通板位置に基づいて前記小チャンバー内のガス圧力を調整することが好ましい。
【0009】
本発明に係るメッキ厚み制御装置において、前記小チャンバー内にガス圧力を検出する圧力センサをそれぞれ設けると共に、前記ワイピングノズルの直下流側の位置に、前記鋼板ストリップに付着した溶融金属の厚みを検出する厚みセンサを、該厚みセンサの水平方向位置を前記小チャンバーの水平方向位置と一致させてそれぞれ配置し、前記鋼板ストリップに付着した溶融金属の厚みに基づいて前記小チャンバー内のガス圧力を調整することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るメッキ厚み制御装置においては、ワイピングノズルの幅方向に複数の小チャンバーが並べて形成され、小チャンバーには圧力調整弁を備えたガス配管がそれぞれ接続されているので、各小チャンバー内のガス圧力を独立して制御することができる。その結果、鋼板ストリップに幅方向に沿って反りが発生して、ワイピングノズルと鋼板ストリップとの間の距離が鋼板ストリップの幅方向に変化しても、ワイピングノズルから鋼板ストリップまでの距離が大きい箇所には圧力の高いガスを、ワイピングノズルから鋼板ストリップとの距離が小さい箇所には圧力の低いガスを吹付けることができ、溶融金属のメッキ厚みを鋼板ストリップの幅方向に均一化することができる。更に、隣接する小チャンバーの先端側が連通して、しかも、仕切り板の先端面と鋼板ストリップとの間の距離Xを10mm以上200mm以下、仕切り板の厚さを0.05mm以上1mm以下とするので、小チャンバー同士の境界部におけるガスの圧力変化がなだらかになり、鋼板ストリップの幅方向に滑らかなワイピングを行うことができる。
【0011】
本発明に係るメッキ厚み制御装置において、小チャンバー内にガス圧力を検出する圧力センサをそれぞれ設けると共に、ワイピングノズルの下流側に、鋼板ストリップの通板位置を検知する位置検知センサを、位置検知センサの水平方向位置を小チャンバーの水平方向位置と一致させてそれぞれ配置し、鋼板ストリップの通板位置に基づいて小チャンバー内のガス圧力を調整するので、ワイピングノズルから鋼板ストリップまでの距離が大きい箇所には圧力の高いガスを、ワイピングノズルから鋼板ストリップとの距離が小さい箇所には圧力の低いガスをそれぞれ吹付けることができる。
【0012】
本発明に係るメッキ厚み制御装置において、小チャンバー内にガス圧力を検出する圧力センサをそれぞれ設けると共に、ワイピングノズルの直下流側に、鋼板ストリップに付着した溶融金属の厚みを検出する厚みセンサを、厚みセンサの水平方向位置を小チャンバーの水平方向位置と一致させてそれぞれ配置し、鋼板ストリップに付着した溶融金属の厚みに基づいて小チャンバー内のガス圧力を調整するので、メッキ厚みの厚い箇所には圧力の高いガスを、メッキ厚みの薄い箇所には圧力の低いガスを吹付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係るメッキ厚み制御装置が設けられたメッキ鋼板製造設備の部分断面図である。
【図2】同メッキ厚み制御装置に設けられたワイピングノズルの側断面図である。
【図3】同メッキ厚み制御装置に設けられたワイピングノズルのワイピングガスの系統図である。
【図4】同メッキ厚み制御装置に設けられた位置検知センサの説明図である。
【図5】同メッキ厚み制御装置に設けられたワイピングノズルと鋼板ストリップの位置関係を示す平面図である。
【図6】(A)、(B)は同メッキ厚み制御装置の鋼板ストリップの板幅に応じたワイピングノズルの使用方法を説明する平面図、側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1〜図4に示すように、本発明の一実施の形態に係るメッキ厚み制御装置10は、鋼板ストリップ11を移動させながら図示しない溶融金属ポット内に貯留されている溶融金属(例えば、溶融亜鉛)12をメッキするメッキ鋼板製造設備13に設けられている。そして、メッキ厚み制御装置10は、溶融金属12が両面に付着した状態で上方に移動する鋼板ストリップ11に対して、鋼板ストリップ11の厚み方向の両側に鋼板ストリップ11と隙間を設けて対向配置されてメッキ厚み(溶融金属12の付着厚み)を制御する対となるワイピングノズル14、15を備えている。
【0015】
ここで、ワイピングノズル15(以下、ワイピングノズル14についても同様)は鋼板ストリップ11の幅より大きな幅(鋼板ストリップ11の幅の1.1〜1.5倍)を有する一体物であって、ワイピングノズル15のチャンバー16内には、チャンバー16の基端からチャンバー16の先端手前までの範囲をワイピングノズル15の幅方向に分割する仕切り板17がワイピングノズル15の幅方向と直交する方向に向けてワイピングノズル15の幅方向に並べて配置され、チャンバー16の先端側で連通する複数の小チャンバー18が形成されている。そして、小チャンバー18には圧力調整弁19を備えたガス配管の一例であるフレキシブルホース20がそれぞれ接続されている。なお、ワイピングノズル15の幅を鋼板ストリップ11の幅より大きくしているので、移動する鋼板ストリップ11に幅方向の蛇行が発生しても、鋼板ストリップ11の全幅に亘ってワイピングノズル15からワイピングガスを吹付けることができる。
【0016】
図2に示すように、ワイピングノズル15は、側面視して中央部より先側に向けて徐々に先細となって、先端側にノズルスリット21が形成されている。そして、ワイピングノズル15は、対称形状の上ノズル部材23及び下ノズル部材24がパッキン22を介して当接し、上ノズル部材23及び下ノズル部材24の幅方向の両側が締結部材の一例であるボルト25及びナット26を用いて締付けられて一体化している。また、上ノズル部材23と下ノズル部材24の当接面側で、上ノズル部材23と下ノズル部材24の幅方向の両側を除いた領域には、側面視して中央部側が平底で先側に向けて徐々に浅くなる凹部27、28がそれぞれ形成されており、上ノズル部材23の凹部27と下ノズル部材24の凹部28が合体してチャンバー18が形成されている。また、図2で、Xは鋼板ストリップ11から仕切り板17先端面までの距離、Xは仕切り板17先端面からワイピングノズル15先端までの距離、Xはワイピングノズル15先端から鋼板ストリップ11までの距離である。
【0017】
図1に示すように、ワイピングノズル14、15は図示しない支持部材を介してメッキ鋼板製造設備13のフレーム部材(図示せず)に取付けられている。そして、支持部材には、上方に移動する鋼板ストリップ11に対して、ワイピングノズル14、15を鋼板ストリップ11の厚み方向に移動させるノズル進退機構と、鋼板ストリップ11の移動方向に昇降させるノズル昇降機構が設けられている。
【0018】
上ノズル部材23及び下ノズル部材24には、上ノズル部材23及び下ノズル部材24が一体化された際に、チャンバー18の先部と連通するノズルスリット21(例えば、隙間が0.6〜1mm)が形成される。また、上ノズル部材23の凹部27の縁部で先端側を除いた領域と、下ノズル部材24の凹部28の縁部で先端側を除いた領域には、ワイピングノズル15(ワイピングノズル14も同様)の幅方向の位置を一致させると共に、ワイピングノズル15の幅方向と直交する方向に向けてガイド溝31、32がそれぞれ形成されている。これによって、仕切り板17の外周縁をガイド溝31、32に嵌入させることで、仕切り板17をワイピングノズル15の幅方向と直交する方向に向けてワイピングノズル15の幅方向に並べて配置することができる。
【0019】
ここで、仕切り板17をチャンバー18内に配置した際に、仕切り板17により、チャンバー18の基端からチャンバー18の先端手前までの範囲がワイピングノズル15の幅方向に分割されるように、例えば、チャンバー18内に配置した仕切り板17の先端面は、ワイピングノズル15の先端から距離Xだけ短くなっている。これによって、複数の小チャンバー18を形成した際に、隣接する小チャンバー18はチャンバー16の先端側で連通することができる。なお、仕切り板17は、例えば、平面視して、ワイピングノズル15の側断面形状より小さく、小チャンバー18の側断面形状より大きな相似形(ここでは五角形)の先端側が切り欠かれた形状(ここでは六角形)として形成されている。また、チャンバー18の幅Wはできるだけ小さくすることが好ましく、例えば50〜200mmとする。
【0020】
ここで、仕切り板17先端面と鋼板ストリップ11との間の距離Xの下限値は、10mm、好ましくは40mm、より好ましくは50mm、上限値は200mm、好ましくは100mm、より好ましくは80mmであり、仕切り板17の厚さは0.05mm以上1mm以下、好ましくは0.05mm以上0.5mm以下、より好ましくは0.05mm以上0.3mm以下である。距離Xが10mm未満、仕切り板17の厚さが1mmを超えると、隣接する小チャンバーの境界部の圧力差により鋼板ストリップ11に形成されたメッキ層にすじ模様が発生するので好ましくない。また、仕切り板17の厚さが0.05mm未満では仕切り板17の剛性が低下して形状を保持することが困難になる。一方、距離Xが200mmを超えると、小チャンバー18内から噴出したワイピングガスが、鋼板ストリップ11に到達するまでに、ワイピングノズル15の幅全域に亘ってガス圧力が均一化され、ノズルスリット21から放出されるワイピングガスの幅方向の圧力分布がなくなるので好ましくない。
【0021】
図1、図3に示すように、フレキシブルホース20の一端側は、例えば、上ノズル部材23の中央部に取付けられ小チャンバー18内と外部とを連通する接続部材33に接続され、フレキシブルホース20の他端側は、メッキ鋼板製造設備13の図示しないフレーム部材に昇降機構34を介して取付けられたヘッダー管35に接続している。そして、ヘッダー管35に設けられたヘッダーフランジ部36と、メッキ鋼板製造設備13のフレーム部材37に支持されたワイピングガスのガス供給配管38に設けられたワイピングガスの排出用フランジ部39が、フレキシブル配管40を介して連結している。なお、ワイピングノズル14の場合は、メッキ鋼板製造設備13のフレーム部材37とは別のフレーム部材37aに支持されたワイピングガスのガス供給配管38aに設けられた排出用フランジ部39がフレキシブル配管40を介してヘッダーフランジ部36と連結している。そして、小チャンバー18内には、ガス圧力を検出する、例えば、シリコンダイヤフラム式等の電子式の圧力センサ41(図4参照)が設けられている。
【0022】
図1、図4に示すように、ワイピングノズル15の直下流側(上方)には、鋼板ストリップ11の通板位置を検知する位置検知センサの一例であるレーザ距離計42が、水平方向位置を小チャンバー18の水平方向位置と一致させてそれぞれ配置されている。ここで、通板位置を検知する位置検知センサは、鋼板ストリップ11と位置検知センサとの距離を検知するものであればよい。また、水平方向位置は、鋼板ストリップ11の板幅方向の位置であり、例えばライン中心からの位置で表すことができる。なお、各レーザ距離計42の設置高さ位置は同一である。これによって、レーザ距離計42から鋼板ストリップ11までの距離が測定できる。その結果、水平方向位置が一致しているレーザ距離計42と小チャンバー18の鋼板ストリップ11の厚み方向における位置関係から、図5に示すように、小チャンバー18毎に、小チャンバー18の先側のノズルスリット21の先端から鋼板ストリップ11までの距離Dが分かり、ワイピングノズル14、15と鋼板ストリップ11の位置関係が求まる。
【0023】
ここで、レーザ距離計42の測定値は、レーザ距離計42と同一水平方向位置に配置されている小チャンバー18に接続するフレキシブルホース20に取付けられた圧力調整弁19の開度を、圧力センサ41からの出力値に基づいて調整する圧力調節器43に入力される。そして、圧力調節器43では、予め設定されているノズルスリット21の先端から鋼板ストリップ11までの距離とワイピングガス圧力の関係に基づいて、距離Dに対応するワイピングガス圧力のワイピングガスが小チャンバー18に供給されるように圧力調整弁19の開度を調整する。これによって、鋼板ストリップ11の通板位置に基づいて小チャンバー18内のワイピングガスのガス圧力が調整される。なお、図4では、圧力センサ41、圧力調節器43、圧力調整弁19、フレキシブルホース20を、2つの小チャンバー18にて例示しているが、これらは全ての小チャンバー18に設けられている。
【0024】
続いて、本発明の一実施の形態に係るメッキ厚み制御装置10の作用について説明する。
図1、図3に示すように、鋼板ストリップ11の表面に付着した過剰な溶融金属を取除く(溶融金属ポット内に戻す)ワイピングガスは、一度ヘッダー管35内に溜めてから各フレキシブルホース20を介して小チャンバー18内にそれそれ供給するので、ガス圧力が均一化されたワイピングガスをフレキシブルホース20内に供給できる。そして、小チャンバー18内には、圧力調整弁19で設定されたガス圧力のワイピングガスが供給され、ワイピングガスは小チャンバー18内に溜められた後、小チャンバー18の先側のノズルスリット21の先端から放出するので、小チャンバー18の先側のノズルスリット21の先端からは、圧力調整弁19で設定されたガス圧力のワイピングガスを放出させることができる。
【0025】
また、レーザ距離計42の測定値から、レーザ距離計42と同一水平方向位置に配置されている小チャンバー18の先側のノズルスリット21の先端から鋼板ストリップ11までの距離Dが分かる。ここで、レーザ距離計42の測定値(距離D)は、レーザ距離計42と同一水平方向位置に配置されている小チャンバー18に供給するワイピングガスのガス圧力を調整する圧力調整弁19の圧力調節器43に入力される。そして、圧力調節器43では、予め設定されているノズルスリット21の先端から鋼板ストリップ11までの距離とワイピングガス圧力の関係に基づいて、距離Dに対応するワイピングガスの目標ガス圧力が算出され、小チャンバー18内のワイピングガスのガス圧力が目標ガス圧力となるように、圧力センサ41の出力値に基づいて圧力調整弁19の開度が調整される。
【0026】
このため、図5に示すように、鋼板ストリップ11にC反りが発生してワイピングノズル14、15の先端と鋼板ストリップ11との間の距離が鋼板ストリップ11の幅方向に変化している場合、ワイピングノズル14、15の先端から鋼板ストリップ11までの距離が大きい箇所には圧力の高いワイピングガスが、ワイピングノズル14、15から鋼板ストリップ11との距離が小さい箇所には圧力の低いワイピングガスが当たるように鋼板ストリップ11の幅方向にワイピングガスの分布を設定できる。そして、隣接する小チャンバー18は連通して、しかも、仕切り板17の先端面と鋼板ストリップ11との間の距離Xを10mm以上200mm以下、仕切り板17の厚さを0.05mm以上1mm以下とするので、小チャンバー18同士の境界部におけるガスの圧力変化がなだらかになり、小チャンバー18同士の境界部に対応する鋼板ストリップ11の特定領域にすじ模様が現れるのを防止できる。
【0027】
更に、ワイピングノズル14、15の幅方向に複数の小チャンバー18が並べて形成され、小チャンバー18には圧力調整弁19を備えたフレキシブルホース20がそれぞれ接続されているので、各小チャンバー18内のガス圧力を独立して制御することができる。その結果、ワイピングノズル14、15の先端から鋼板ストリップ11までの距離が大きい箇所には圧力の高いワイピングガスを、ワイピングノズル14、15から鋼板ストリップ11との距離が小さい箇所には圧力の低いワイピングガスを当てることができ、ワイピングノズル14、15の先端から鋼板ストリップ11までの距離が鋼板ストリップ11の幅方向に変化しても、ワイピングガスで鋼板ストリップ11の表面に付着した過剰な溶融金属12を一様に取除く(ワイピングする)ことができ、溶融金属12のメッキ厚みを鋼板ストリップ11の幅方向に均一化することができる。
【0028】
また、ワイピングノズル14、15の幅方向に形成した複数の小チャンバー18の中から、鋼板ストリップ11の幅に合わせてワイピングガスを噴出する小チャンバー18を選定してもよい。例えば、図6(A)、(B)に示すように、1000mm、1250mm、1650mmの3種類の板幅の鋼板ストリップ44、45、46が通板する場合、幅が1000mmの鋼板ストリップ44のときは、ワイピングノズル47の小チャンバーa〜dを使用し、幅が1250mmの鋼板ストリップ45のときは、ワイピングノズル47の小チャンバーa〜eを使用し、幅が1650mmの鋼板ストリップ46のときは、ワイピングノズル47の小チャンバーa〜fを使用する。
また、3種類の板幅の鋼板ストリップ44、45、46に対して、ワイピングノズル47のガス圧力の調整を容易にするため、ワイピングノズル47の仕切り板48の幅方向位置は、鋼板ストリップ44、45、46の端面位置と一致しないように配置する。図6(A)、(B)に示すワイピングノズル47の場合、鋼板ストリップ44、45、46の中心に対応するワイピングノズル47の中心位置から鋼板ストリップ44、45、46の両端面のいずれか一方の側に50mmずれた位置を基準位置にして仕切り板48を設置すると共に、基準位置に設置した仕切り板48の両側にそれぞれ100mmピッチで仕切り板48を設置している。ここで、仕切り板48の厚さTは0.5mmで、先端を先鋭にし、仕切り板48の先端から鋼板ストリップ44、45、46までの距離Lは40mmとしている。
【0029】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
例えば、位置検知センサの代わりに厚みセンサを設けてもよい。厚みセンサにより鋼板ストリップに付着した溶融金属の厚みを測定し、溶融金属の厚みに基づいて小チャンバー内のガス圧力を調整することで、鋼板ストリップにC反りが発生してワイピングノズルの先端から鋼板ストリップまでの距離が鋼板ストリップの幅方向に変化しても、ワイピングガスで鋼板ストリップの表面に付着した過剰な溶融金属を一様に取除くことができ、溶融金属のメッキ厚みを鋼板ストリップの幅方向に均一化することができる。また、仕切り板の厚さは一様とせずに、先端部を先鋭にした流線形にして仕切り板の影響をできるだけ小さくしてもよい。更に、溶融金属は亜鉛に限定されず、亜鉛アルミニウム等の亜鉛合金であっても構わない。
【符号の説明】
【0030】
10:メッキ厚み制御装置、11:鋼板ストリップ、12:溶融金属、13:メッキ鋼板製造設備、14、15:ワイピングノズル、16:チャンバー、17:仕切り板、18:小チャンバー、19:圧力調整弁、20:フレキシブルホース、21:ノズルスリット、22:パッキン、23:上ノズル部材、24:下ノズル部材、25:ボルト、26:ナット、27、28:凹部、31、32:ガイド溝、33:接続部材、34:昇降機構、35:ヘッダー管、36:ヘッダーフランジ部、37、37a:フレーム部材、38、38a:ガス供給配管、39:排出用フランジ部、40:フレキシブル配管、41:圧力センサ、42:レーザ距離計、43:圧力調節器、44、45、46:鋼板ストリップ、47:ワイピングノズル、48:仕切り板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板ストリップを移動させながら溶融金属をメッキするメッキ鋼板製造設備に設けられ、メッキ厚みを制御するワイピングノズルを備えたメッキ厚み制御装置において、
前記ワイピングノズルは前記鋼板ストリップの幅より大きな幅を有する一体物であって、前記ワイピングノズルのチャンバー内には該チャンバーの基端から該チャンバーの先端手前までの範囲を該ワイピングノズルの幅方向に分割する仕切り板が該ワイピングノズルの幅方向と直交する方向に向けて該ワイピングノズルの幅方向に並べて配置されて、前記チャンバーの先端側で連通する複数の小チャンバーが形成され、前記小チャンバーには圧力調整弁を備えたガス配管がそれぞれ接続され、しかも、前記仕切り板の先端面から前記鋼板ストリップまでの距離Xが10mm以上200mm以下で、前記仕切り板の厚さが0.05mm以上1mm以下であることを特徴とするメッキ厚み制御装置。
【請求項2】
請求項1記載のメッキ厚み制御装置において、前記小チャンバー内にガス圧力を検出する圧力センサをそれぞれ設けると共に、前記ワイピングノズルの下流側に、前記鋼板ストリップの通板位置を検知する位置検知センサを、該位置検知センサの水平方向位置を前記小チャンバーの水平方向位置と一致させてそれぞれ配置し、前記鋼板ストリップの通板位置に基づいて前記小チャンバー内のガス圧力を調整することを特徴とするメッキ厚み制御装置。
【請求項3】
請求項1記載のメッキ厚み制御装置において、前記小チャンバー内にガス圧力を検出する圧力センサをそれぞれ設けると共に、前記ワイピングノズルの直下流側に、前記鋼板ストリップに付着した溶融金属の厚みを検出する厚みセンサを、該厚みセンサの水平方向位置を前記小チャンバーの水平方向位置と一致させてそれぞれ配置し、前記鋼板ストリップに付着した溶融金属の厚みに基づいて前記小チャンバー内のガス圧力を調整することを特徴とするメッキ厚み制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−248537(P2010−248537A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96132(P2009−96132)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)
【Fターム(参考)】