説明

メモリカード用アダプタ

【課題】小型メモリカードをそれよりも大型のメモリカード用のカードコネクタで使えるようにするメモリカード用アダプタにおいて、アダプタの厚さを増やすことなく、アダプタの剛性を維持しながら、アダプタの一面側に絶縁エリアを任意に設定する。
【解決手段】樹脂製のベース10とで大型のメモリカードの外形に対応する形状のアダプタ本体を構成する金属製のカバー30の表面に、該カバー30の材厚を部分的に薄くすることにより段差41,42を設け、薄くなった前記カバー30の表面に前記段差41,42分以下の厚さで絶縁層43,44を形成し、アダプタの一面側に絶縁エリアB,Cを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は小型メモリカードをそれよりも大型のメモリカード用のカードコネクタで使えるようにするメモリカード用アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりSDカード(24×32×2.1mm:縦×横×厚さ)の小型版メモリカードとして図12(A)(B)(C)に示したミニSDカード(20×21.5×1.4mm:縦×横×厚さ)200が提供されている。このミニSDカード200は正規挿入姿勢での挿入時の前側(以下、「後側」という)の端部裏面側に11本のコンタクト204a〜kが前後方向と厚さ方向に直交する方向(以下、「左右方向」という)に並設されている。またミニSDカード200の後側には一方の角を落として切欠き部201が形成されると共に、この切欠き部201によって幅が狭められたミニSDカード200の後側端部における表面側の左右両側縁には上向きの段部202が設けられ、これら切欠き部201と段部202とでカードコネクタに対するミニSDカード200の正規挿入姿勢以外での誤挿入(前後が逆の姿勢、表裏が逆の姿勢での挿入)を防止している。さらにミニSDカード200の切欠き部201より前側の幅広部分における表面側の左右両側部にはロック用切欠き203が設けられ、ミニSDカード200をカードコネクタに装着した際にカードコネクタ側のロック部材がロック用切欠き203に係止することにより、ミニSDカード200の脱落を防止するようになっている。なおミニSDカード200の11本のコンタクト204a〜kは裏面側から見て左から右に1〜11番のコンタクト204a〜kが順番に配置されており、1,2,10,11番の4本のコンタクト204a,b,j,kがデータ用、3番のコンタクト204cがコマンド用、4,9番の2本のコンタクト204d,iがグランド用、7番のコンタクト204gが電源用、8番のコンタクト204hがクロック用である。そして、5,6番の2本のコンタクト204e,fはミニSDカード200で予備に追加されたもので、有効コンタクト数は9本となりSDカードのコンタクト数9本に対応している。
【0003】
またミニSDカード200よりさらに小型版メモリカードとしてトランスフラッシュやこの仕様を採用した図13(A)(B)(C)に示すようなマイクロSDカード(11×15×1mm:縦×横×厚さ)300が提供されている。このマイクロSDカード300は正規挿入姿勢での挿入時の前側(以下、「後側」という)の端部裏面側に8本のコンタクト303a〜hが前後方向と厚さ方向に直交する方向(以下、「左右方向」という)に並設されている。またマイクロSDカード300の後側には一方の角を落として誤挿入防止用の切欠き部301が形成されている。またマイクロSDカード300の切欠き部301より前側の幅広部分における切欠き部301側の一側部にはロック用切欠き302が設けられている。なおマイクロSDカード300の8本のコンタクト303a〜hは裏面側から見て左から右に1〜8番のコンタクト303a〜hが順番に配置されており、1,2,7,8番の4本のコンタクト303a,b,g,hがデータ用、3番のコンタクト303cがコマンド用、4番のコンタクト303dが電源用、5番のコンタクト303eがクロック用、6番のコンタクト303fがグランド用である。つまりマイクロSDカード300でグランド用コンタクトが1本になり、コンタクト数がSDカード及びミニSDカード200の9本(ただしミニSDカード200は有効コンタクト数)から8本に削減されている。
【0004】
上記のようにメモリカードの小型化が進む中で小型メモリカードをそれよりも大型のメモリカード用のカードコネクタで使うためにはそのためのメモリカード用アダプタが必要となり、このアダプタのアダプタ本体は必然的に大型のメモリカードの外形に対応する形状に形成されるが、メモリカードは元々薄型で小型化では縦横の寸法はかなり小さくなっているものの厚さ寸法に大差がないため、小型メモリカード収容空間の外周部(表裏面)はどうしても薄肉となり、アダプタの剛性を維持することが困難になるという課題がある。
【0005】
上記課題を解決するため従来のメモリカード用アダプタはそのアダプタ本体の裏面側(内蔵コンタクトを一端部で露出させている一面側)を樹脂製のベースで構成し、表面側の薄肉部分に金属製のカバーを使用する場合が多い(例えば、「特許文献1」参照。)。
【特許文献1】特開2005−50280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決する課題は上記のように従来のメモリカード用アダプタはそのアダプタ本体を樹脂製のベースと金属製のカバーとで構成しているが、アダプタ本体の表面、つまりアダプタの表面には電気的絶縁必要エリアの規定があり、金属製のカバーを電気的絶縁必要エリア外のみで使用すると、本来の目的であるアダプタの剛性維持が達成できない点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明は小型メモリカードをそれよりも大型のメモリカード用のカードコネクタで使えるようにするメモリカード用アダプタにおいて、樹脂製のベースとで大型のメモリカードの外形に対応する形状のアダプタ本体を構成する金属製のカバーの表面に、該カバーの材厚を部分的に薄くすることにより段差を設け、薄くなった前記カバーの表面に前記段差分以下の厚さで絶縁層を形成したことを特徴とする。
【0008】
段差は異形材(材厚が一部異なる材料)を採用したり、部品加工(プレス)工程にて作製することができ、段差面積や場所は任意に設定が可能である。また絶縁層は段差作製後に絶縁塗装や絶縁シールの貼付けで形成することができる他、金属製のカバーにモールドをインサート成形やアウトサート成形することで行うことができる。
【0009】
上記構成によりベースとでアダプタ本体を構成する金属製のカバーの表面に任意の絶縁エリアを設けることができる。このためアダプタの一面側の電気的絶縁必要エリアを含んで金属製のカバーを使用することができるようになる。またアダプタの厚さ寸法は規格で決まっており、表面全体に絶縁層を形成した金属製のカバーを使用する場合はカバー全体の材厚を絶縁層分薄くする必要があり、アダプタの剛性の低下を招いてしまう、言換えればアダプタの剛性を維持するためにはアダプタの厚さを増やす必要があるが、金属製のカバーの表面全体ではなく該カバーの材厚を部分的に薄くすることにより段差を設け、薄くなった前記カバーの表面に前記段差分以下の厚さで絶縁層を形成したので、アダプタの剛性を極力低下させることなく、かつアダプタの厚さを増やすことなく金属製のカバーの表面に任意の絶縁エリアを設けることができる。
【0010】
また前記カバーはその一部分をかしめることにより前記ベースに固定することが望ましい。この構成により省スペースにて前記ベースと前記カバーやコンタクト等の内蔵部品を強固に結合一体化することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によればアダプタの厚さを増やすことなく、アダプタの剛性を維持しながら、アダプタの一面側に絶縁エリアを任意に設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態に係るメモリカード用アダプタの表面側の外観斜視図、図2は同アダプタの裏面側の外観斜視図、図3はアダプタの内部構造を示す斜視図、図4は同アダプタの分解状態を示す斜視図である。このアダプタ100は小型メモリカードであるマイクロSDカード300を装着してそれより大型のメモリカード用のカードコネクタであるミニSDカード200用のカードコネクタで使えるようにするもので、ミニSDカード仕様に対応すべくミニSDカード200と略同じ外形寸法(縦・横・厚さの各寸法)に形成され、マイクロSDカード300を装着する図1,図2に示したミニSDカード型のアダプタ本体1と、このアダプタ本体1に内蔵する図3,図4,図8(A)(B)に示したコンタクトセット50及び図3,図4に示したロック部材90とで構成される。
【0013】
図1,図2に示したアダプタ本体1は図3,図4,図5(A)(B)に示した合成樹脂材料からなる絶縁性のベース10と、図4,図6(A)(B),図7に示した金属板からなる導電性のカバー30の2つの部品で構成される。
【0014】
図3,図4,図5(A)(B)に示したベース10は後側の一方の角を落とした略矩形状の底板11と、角落としにより横幅が狭められていない底板11の前側の幅広部分における左右両側域に縦横に立設した補強リブ12と、角落としにより横幅が狭められた底板11の後側の周縁に沿って立設した側壁13とを一体に有し、左右の補強リブ12の間にマイクロSDカード300を収容するカード収容空間14を画成すると共に、カード収容空間14の後側に連続してコンタクトセット50のインシュレータ収容空間15を画成している。インシュレータ収容空間15の底面には大きなコンタクト露出窓16が開口形成されている。またカード収容空間14の一側にはロック部材収容空間17が隣接して画成され、このロック部材収容空間17は連通口18を介してカード収容空間14と連通している。
【0015】
前記ベース10にはミニSDカード200の切欠き部201、段部202、ロック用切欠き203に対応するメモリカードアダプタ100の切欠き部19、段部20、ロック用切欠き21がそれぞれ設けられている。またベース10の幅広部分における左右外側面には複数のカバー係合爪22が設けられ、ベース10の幅広部分における左右内側部にはカバー係合溝23が設けられ、ベース10の裏面におけるコンタクト露出窓16の開口左右側縁に沿ってカバー係合溝24が設けられている。
【0016】
図4,6(A)(B),図7に示したカバー30は前記ベース10の前側幅広部分における上面を覆う矩形状の主部31と、この主部31の左右側縁から下向きに延設して前記ベース10の前側幅広部分における左右外側面を覆う第1延設部32と、主部31の後側縁から後側に面一に延設して前記ベース10のインシュレータ収容空間15の上面を覆う主部31よりやや幅狭の第2延設部33と、この第2延設部33の基端側の左右両側縁から下向きに延設する第1係合爪34と、第2延設部33の先端縁における左右側部から下向きに延設する第2係合爪35と、第2延設部33の先端側の左右両側縁から下向きに延設する第3係合爪39と、第2延設部33の先端縁における略中央部から延設して端部を第2延設部33の内面側に臨ませるU字状の折返し片36と、この折返し片36の端部に中間部を連設して第2延設部33の内面側で左右方向(コンタクト並設方向)に延設する板バネである弾性変形可能な接続端子37とを一体に形成している。また前記第1延設部32にはかしめ加工用の下孔を兼ねる複数のベース係合孔38が設けられ、前記第3係合爪39にはかしめ加工用の下孔40が設けられている。
【0017】
前記カバー30は金属平板(素材)から展開状態の平らなカバーを打抜いた後、孔あけ加工や曲げ加工を行うことにより、カバー30の半製品を作製するもので、このときの例えば打抜き工程を、この工程により打抜く展開状態の平らなカバーの前側の端部から所定長さ分の材厚、具体的には主部31の前側略半分とその左右両側の第1延設部32の板厚、及び後側の端部から所定長さ分の材厚、具体的には第2延設部の後側略半分とその部分から突出する第2係合片35,折返し片36,接続端子37,第3係合片39の板厚が、これらの間の材厚、具体的には主部31の後側略半分とその左右両側の第1延設部32、及び第2延設部の前側略半分とその左右両側の第1係合爪34の板厚(素材の厚さ)より僅かに薄くなるように行うことにより、打抜いた展開状態の平らなカバーの表面に、板厚が厚い(そのままの)部分と薄くなった部分との境目である前後2本の段差41,42を設けている。そしてカバー30の半製品における板厚が薄くなった前側の段差41より前部の外部に露出する表面、つまり主部31の前側略半分とその左右両側の第1延設部32の表面と、後側の段差41より後部の外部に露出する表面、つまり第2延設部の後側略半分の表面に、これら段差41,42分以下の厚さで例えば絶縁塗装を行うことにより絶縁層43,44を形成し、前記カバー30の製品を得ている。このようにして得られた前記カバー30の表面にはその前後中間部に絶縁層43,44による皮膜がない通電エリアAが設けられると共に、この通電エリアAを挟む前側の端部と後側の端部とに絶縁層43,44による皮膜がある絶縁エリアB,Cが設けられている。
【0018】
図3,図4,図8(A)(B)に示したコンタクトセット50はミニSDカード仕様に対応すべくミニSDカード200と同じ11本のコンタクト60a〜kと、これら11本のコンタクト60a〜kを絶縁状態で左右方向に並設して一体に保持する合成樹脂材料からなる絶縁性のインシュレータ70とで構成される。
【0019】
11本のコンタクト60a〜kは図8(C)に示すように導電性の薄板金属を打抜き加工することにより、キャリア61に連結片62を介して連続した状態で成形される。そしてこの状態の11本のコンタクト60a〜kに対してインシュレータ70をインサート成形で成形した後、連結片62の部分を切断してキャリア61と共に分離することにより、コンタクトセット50の中間組立て体が構成される。
【0020】
11本の各コンタクト60a〜kはそれぞれ矩形板状に形成されており、各コンタクト60a〜kの前端には相互に連結された連続部63を介してマイクロSDカード仕様に対応すべくマイクロSDカード300と同じ8本のコンタクトバネ片64a〜hが片持ち梁状に延ばされている。そして11本のコンタクト60a〜kは裏面側から見て左から右に1〜11番のコンタクト60a〜kが順番に配置されており、1,2,10,11番の4本のコンタクト60a,b,j,kがデータ用、3番のコンタクト60cがコマンド用、4,9番の2本のコンタクト60d,iがグランド用、5,6番の2本のコンタクト60e,fが予備、7番のコンタクト60gが電源用、8番のコンタクト60hがクロック用で、ミニSDカード200のコンタクト204a〜204kと同じ配列である。一方8本のコンタクトバネ片64a〜hは裏面側から見て左から右に1〜8番のコンタクトバネ片64a〜hが順番に配置されており、1,2,7,8番の4本のコンタクトバネ片64a,b,g,hがデータ用、3番のコンタクトバネ片64cがコマンド用、4番のコンタクトバネ片64dが電源用、5番のコンタクトバネ片64eがクロック用、6番のコンタクトバネ片64fがグランド用である。つまりマイクロSDカード300のコンタクト303a〜hと同じ配列である。
【0021】
コンタクトセット50の中間組立て体ではインシュレータ70が前記ベース10のインシュレータ収容空間15に嵌合する横長な直方体状に形成され、このインシュレータ70の下面に連続部63と共に各コンタクト60a〜kが左右方向に並べられて面一に埋設され、8本のコンタクトバネ片64a〜hがインシュレータ70の前側に前上がり傾斜状に突出されている。またインシュレータ70にはこの下面に埋設された連続部63の所定箇所を抜落とすための工具挿入孔71,74aと、前記カバー30の第2係合爪35を挿嵌するためのカバー係合溝72と、前記カバー30の第3係合爪39を前記ベース10の裏面におけるカバー係合溝24の内側に貫通させるための挿通溝76と、前記カバー30の折返し片36及び接続端子37を収容して、図9に示したように、接続端子37の一端を一方の4番のグランド用コンタクト60dに、また他端を他方の9番のグランド用コンタクト60iに上方から接触させるための収容孔73と、軽量化及びコンタクト60a〜kを挟み込むための複数の抜き孔74が形成されている。なお一つの抜き孔74aは工具挿入孔を兼ねている。
【0022】
中間組立て体を構成した後に、インシュレータ70の下面に埋設されている連続部63の所定箇所を工具挿入孔71,74aから抜落とし、同時にインシュレータ70の外側における連続部63の相互連結箇所も抜落とすことにより、図3,図4,図8(A)(B)に示したコンタクトセット50が構成される。このコンタクトセット50では8本のコンタクトバネ片64a〜hがそれぞれ分離独立した細幅の8本の連続部63を介して対応する8本のコンタクト60a〜c,60g〜kに連続一体に連設されている。また残りの4番のグランド用コンタクト60dと5,6番の2本の予備コンタクト60e,fの3本は連続部63がら切り離された状態になっている。ここでミニSDカード200と同様に4番のグランド用コンタクト60dと7番の電源用コンタクト60gは他の9本のコンタクト60a〜c、60e,f、60h〜kに比べて後端位置が後方(アダプタ挿入方向)に突出して位置ずれし、カードコネクタ側のコンタクトに他の9本のコンタクト60a〜c、60e,f、60h〜kに先立って接触するようになっているため、4,9番の2本のグランド用コンタクト60d,iの後端位置の間には段差(出代の差)が設けられている(図2,図8(B)参照)。なおコンタクトセット50の工具挿入孔71は樹脂製の栓体75が圧入されて埋められる(図3,図4参照)。
【0023】
図3,図4に示したロック部材90は中間部より折返した細幅の薄板金属の板バネからなり、折返し部より一側の可動片の自由端側にカード係合部91を形成している。なおこのロック部材90はベース10に樹脂で一体形成して設けてもよい。
【0024】
次にアダプタ100(アダプタ本体1)を組立てるに当っては、前記ベース10のインシュレータ収容空間15にコンタクトセット50のインシュレータ70を上方から嵌込み、インシュレータ収容空間15の底面のコンタクト露出窓16を通してコンタクトセット50の11本のコンタクト60a〜kをベース10の裏面側に露出させると共に、ベース10のカード収容空間11の後部にコンタクトセット50の8本のコンタクトバネ片64a〜hを突出させる。つまりベース10に対してコンタクトセット50を組込む。また前記ベース10のロック部材収容空間17にロック部材90を組込み、ロック部材90の折返し部より他側を固定し、ロック部材90の折返し部より一側の可動片の自由端側に形成したカード係合部91を連通口18を介してカード収容空間14に突出させる(図3に示した状態)。次いで前記ベース10のカバー係合溝23に前記カバー30の第1係合爪34を、前記インシュレータ70のカバー係合溝72に前記カバー30の第2係合爪35を、前記インシュレータ70の挿通溝76に前記カバー30の第3係合爪39をそれぞれ挿入すると共に、前記インシュレータ70の収容孔73に前記カバー30の折返し片36及び接続端子37を嵌込みながら、ベース10に対してカバー30を上方から被着し、前記ベース10の前側幅広部分における補強リブ12及びカード収容空間14及びロック部材収容空間17の開放上面を前記カバー30の主部31で一体的に覆い塞ぐと共に、前記インシュレータ70の上面に前記カバー30の第2延設部33を重ねて接合させ、インシュレータ70を前記ベース10の底板11と前記カバー30の第2延設部33との間に挟込み、また前記ベース10の前側幅広部分における左右外側面に前記カバー30の第1延設部32を重ねて覆うと共に、前記ベース10の各カバー係合爪22を前記カバー30の各ベース係合孔38に嵌込む。そして最後に図1,図2に示すように前記カバー30の第1延設部32における各ベース係合孔38の下縁を内側にかしめると共に、図10に示すように前記ベース10の裏面におけるカバー係合溝24の内側に貫通する前記カバー30の第3係合爪39における下孔40の下縁を外側にかしめ、ベース10に対してカバー30を上記被着状態で固定することにより組立てが完了する。
【0025】
組立て完了状態においてアダプタ100は図1,図2に示したようにミニSDカード仕様に対応するミニSDカード200と略同じ外形寸法(縦・横・厚さの各寸法)であり、ミニSDカード200と同様に後側の端部裏面側に11本のコンタクト60a〜kが左右方向に並設されて露出し、後側の一方の角を落として切欠き部19が形成され、この切欠き部19によって幅が狭められた後側端部における表面側の左右両側縁に上向きの段部20が設けられ、切欠き部19より前側の幅広部分における表面側の左右両側部にロック用切欠き21が設けられ、ミニSDカード200用のカードコネクタに装着することができる。
【0026】
また前面にカード挿入口2が開口し、カード挿入口2にはカード収容空間11が連通し、カード収容空間11の後部(奥部)には片持ち梁状の8本のコンタクトバネ片64a〜hが左右方向に並設され、マイクロSDカード300をカード挿入口2からカード収容空間11に装着することができると共に、装着したマイクロSDカード300の8本のコンタクト303a〜hに前記8本のコンタクトバネ片64a〜hの自由端部を接触させて電気的に接続することができる。
【0027】
さらに表面の略前後中間部には前記カバー30の表面の前後中間部に設けた通電エリアAが対応して露出し、表面の前側の端部と後側の端部には前記カバー30の表面の前側の端部と後側の端部とに設けた絶縁エリアB,Cが対応して露出している。また前記カバー30に一体に形成した接続端子37は、図9に示したように折返し片36と共に内蔵のコンタクトセット50のインシュレータ70に形成した収容孔73に収容され、一端が一方の4番のグランド用コンタクト60dに、また他端が他方の9番のグランド用コンタクト60iに上方から自身の弾性により押付いて接触し、この接触により11本のコンタクト60a〜kのうちの隣接しない2本のグランド用コンタクト60d,i同士と、グランド用コンタクト60d,iと前記カバー30間が電気的に接続されている。なお前記ベース10と前記カバー30の主部31及び第1延設部32との接合面、前記インシュレータ70のカバー30の第2延設部33との接合面はその周囲外面よりカバー30の板厚分凹状に形成され、前記カバー30の主部31及び第1延設部32の表面とその周囲のベース10の表面、前記カバー30の第2延設部33の表面とその周囲のインシュレータ70の表面は面一になっている。
【0028】
以上のように組立てられたアダプタ100にマイクロSDカード300を装着する際にはマイクロSDカード300を前後方向及び表裏方向を正規の方向に向けた正規挿入姿勢でカード挿入口2を通してカード収容空間14に挿入すると、マイクロSDカード300はこのロック用切欠き302を設けた側部でロック部材90のカード係合部91をバネ力に抗して押退けながらカード収容空間14の内奥部へと嵌込み、マイクロSDカード300の後側の端部裏面側に設けられた8本のコンタクト303a〜303hが、カード収容空間14の後部に並設されている前記8本のコンタクトバネ片64a〜hの自由端部と接触し電気的に接続される。さらにマイクロSDカード300をカード収容空間14に押込むと、マイクロSDカード300の後側の端部が、カード収容空間14の後端で立設しているインシュレータ70の前側の側面に突当たり、それ以上の挿入が規制されると共に、マイクロSDカード300のロック用切欠き302にロック部材90のカード係合部91が対向し、バネ力によりカード係合部91がロック用切欠き302に係合することにより、マイクロSDカード300の脱落が防止される。
【0029】
アダプタ100に装着されたマイクロSDカード300を抜取る際にはマイクロSDカード300の前端部を把持し、ロック部材90のバネ力に抗してマイクロSDカード300を前方に引抜くと、マイクロSDカード300のロック用切欠き302とロック部材90のカード係合部91との係合が解除されて、マイクロSDカード300をアダプタ100から抜取ることができる。
【0030】
アダプタ100に装着されたマイクロSDカード300はこの8本のコンタクト303a〜hが対応する8本のコンタクト60a〜c,60g〜kに電気的に接続されているため、アダプタ100をミニSDカード200用のカードコネクタに正規挿入姿勢で装着することにより、マイクロSDカード300の8本のコンタクト303a〜hが対応する8本のコンタクト60a〜c,60g〜kを介してカードコネクタの対応する8本のコンタクトと電気的に接続される。この結果マイクロSDカード300がミニSDカード200と同様にミニSDカード200用のカードコネクタで使えるようになる。
【0031】
以上から明らかなようにアダプタ100は11本のコンタクト60a〜kのうちの隣接しない2本のグランド用コンタクト60d,i同士と、グランド用コンタクト60d,iと前記カバー30間が電気的に接続されているので、内部に浮遊グランドとなるグランド用コンタクトをなくすことができると共に、表面の略前後中間部とその左右側面には前記カバー30の表面の通電エリアA(金属表面)が対応して露出しているので、使用者からの静電気を前記カバー30を通してグランドに逃がすことができ、電子部品の静電破壊を防止することができる。また表面の前側の端部とその左右側面及び表面の後側の端部には前記カバー30の表面の絶縁エリアB,C(絶縁層43,44)が対応して露出しているので、ミニSDカード200用のカードコネクタに正規挿入姿勢以外の姿勢(前後が逆の姿勢、表裏が逆の姿勢)で誤挿入された場合、この誤挿入によってもカードコネクタのコンタクトが前記カバー30の金属表面と接触して静電破壊を起こさないようになっている。つまり前記カバー30の表面の絶縁エリアB,Cがアダプタ100の誤挿入によっても静電破壊を起こさないようにするため等でメモリカード用アダプタに規定された表面側の電気的絶縁必要エリアに対応している。
【0032】
そして前記カバー30の表面に、該カバー30の板厚(材厚)を部分的に薄くすることにより段差41,42を設け、薄くなった前記カバー30の表面に前記段差41,42分以下の厚さで絶縁層43,44を形成したことにより、前記ベース10とでアダプタ本体1を構成する前記カバー30の表面に任意の絶縁エリアB,Cを設けることができる。具体的には前記カバー30の表面に、該カバー30における前側の端部と後側の端部の板厚を部分的に薄くすることにより前後2本の段差41,42を設け、前記カバー30における板厚が薄くなった前側の段差41より前部の表面と後側の段差42より後部の表面に前記段差41,42分以下の厚さで絶縁層43,44を形成したことにより、前記ベース10とでアダプタ本体1を構成する前記カバー30の前側の端部と後側の端部の表面、つまりメモリカード用アダプタに規定された表面側の電気的絶縁必要エリアに対応する絶縁エリアB,Cを設けることができる。このためアダプタ100の表面側の電気的絶縁必要エリアを含んでアダプタ100の表面側の略全面に金属製のカバー30を使用することができるようになる。またアダプタ100の厚さ寸法は規格で決まっており、表面全体に絶縁層を形成した金属製のカバーを使用した場合はカバー全体の材厚を絶縁層分薄くする必要があり、アダプタの剛性の低下を招いてしまう、言換えればアダプタの剛性を維持するためにはアダプタの厚さを増やす必要があるが、上記のように前記カバー30の表面に絶縁層B,Cを形成したので、アダプタ100の剛性を極力低下させることなく、かつアダプタ100の厚さを増やすことなく金属製のカバー30の表面に任意の絶縁エリアB,Cを設けることができる。具体的には上記のように前記カバー30の前側の端部と後側の端部の表面に絶縁層B,Cを形成したので、アダプタ100の剛性を極力低下させることなく、かつアダプタ100の厚さを増やすことなく金属製のカバー30の前側の端部と後側の端部の表面、つまりメモリカード用アダプタに規定された表面側の電気的絶縁必要エリアに対応する絶縁エリアB,Cを設けることができる。
【0033】
また前記カバー30はその一部分、具体的には前記ベース10の前側幅広部分における左右外側面に重ね、かつ前記ベース10の各カバー係合爪22を各ベース係合孔38を介して嵌込む前記カバー30の第1延設部32における各ベース係合孔38の下縁と、前記ベース10の裏面におけるカバー係合溝24の内側に貫通する前記カバー30の第3係合爪39における下孔40の下縁をかしめることにより、前記ベース10に固定するので、省スペースにて前記ベース10と前記カバー30並びに内装部品であるコンタクトセット50のインシュレータ50を強固に結合一体化することができる。しかも第1延設部32と第3係合爪39を逆方向にかしめるので、ガタツキもなくして結合一体化することができる。
【0034】
したがってアダプタ100の厚さを増やすことなく、アダプタ100の剛性を維持しながら、アダプタ100の表面側に絶縁エリアB,Cを任意に設定することができる。そして絶縁エリアB,Cをメモリカード用アダプタに規定された表面側の電気的絶縁必要エリアに対応するアダプタ100の表面の前側の端部と後側の端部に設けたものである。
【0035】
ここでアダプタ100の挿抜を行い易くするために、アダプタ100の表面の前側の端部(アダプタ100を挿抜時に把持する端部)の絶縁エリアBの摩擦抵抗が後側の端部の絶縁エリアCの摩擦抵抗より大きくなるように、前記カバー30に絶縁層43,44を形成し、アダプタ100を確実に把持できる(滑止め)ようにすることが望ましい。これに伴いアダプタ100の表面の後側の端部(カードコネクタへの挿入側端部)の摩擦抵抗が前側の端部の絶縁エリアBの摩擦抵抗より小さいため、アダプタ100の挿抜抵抗を小さくすることができる。
【0036】
アダプタ100の表面の前側の端部の絶縁エリアBとなる前記カバー30の表面の前側の端部の絶縁層43とアダプタ100の表面の後側の端部の絶縁エリアCとなる前記カバー30の後側の端部の絶縁層44は全く同じに形成してもよいが、異ならせることにより、上記のように摩擦抵抗の相違でアダプタ100の挿抜を行い易くすることができる他、外観や質感・触感等の相違で例えばアダプタ100の誤挿入を防止することもできる。
【0037】
なお前記カバー30に前記コンタクトセット50のインシュレータ70をインシュレータ70を前記ベース10の底板11との間に挟込む第2延設部33を設けることができない場合は前記カバー30の第3係合爪39に代わる図11に示したかしめ用のL形金具39’を用いることにより、前記インシュレータ70を前記カバー30と同様に前記ベース10にかしめすることにより固定することができる。前記金具39’は第3係合爪39と同様にかしめ加工用の下孔40’を設けた一片39a’を前記インシュレータ70の挿通溝76に挿入し、他片39b’を前記インシュレータ70の表面の左右側部に重ねて接合させ、前記ベース10の裏面におけるカバー係合溝24の内側に貫通する一片39a’における下孔40の’下縁を外側にかしめることにより、前記インシュレータ70を前記ベース10に固定することができる。
【0038】
以上本実施の形態は本発明の好適な実施形態の一例を示したが、本発明はそれに限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形実施することができる。例えばマイクロSDカード300をSDカード用のカードコネクタで使えるようにするメモリカード用アダプタ以外の、他の種類のメモリカード用アダプタにも好適に実施することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態に係るメモリカード用アダプタの表面側の外観斜視図である。
【図2】同アダプタの裏面側の外観斜視図である。
【図3】同アダプタの内部構造を示す斜視図である。
【図4】同アダプタの分解状態を示す斜視図である。
【図5】(A)ベースの表面側の外観斜視図、(B)ベースの裏面側の外観斜視図である。
【図6】(A)カバーの表面側の外観斜視図、(B)カバーの裏面側の外観斜視図である。
【図7】カバーの断面図である。
【図8】(A)コンタクトセットを表面側の外観斜視図、(B)コンタクトセットの裏面側の外観斜視図、(C)インサート成形前のコンタクトの外観斜視図である。
【図9】グランド用コンタクト同士と、グランド用コンタクトとカバーとの電気接続構造を示す同アダプタの断面図である。
【図10】同アダプタの裏面側のカバーかしめ部の斜視図である。
【図11】かしめ用のL形金具によるかしめ部の斜視図である。
【図12】(A)ミニSDカードの表面図、(B)ミニSDカードの側面図、(c)ミニSDカードの裏面図である。
【図13】(A)マイクロSDカードの表面図、(B)マイクロSDカードの側面図、(C)マイクロSDカードの裏面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 アダプタ本体
10 ベース
30 カバー
41,42 段差
43,44 絶縁層
100 メモリカード用アダプタ
200 ミニSDカード(大型のメモリカード)
300 マイクロSDカード(小型メモリカード)
B,C 絶縁エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小型メモリカードをそれよりも大型のメモリカード用のカードコネクタで使えるようにするメモリカード用アダプタにおいて、樹脂製のベースとで大型のメモリカードの外形に対応する形状のアダプタ本体を構成する金属製のカバーの表面に、該カバーの材厚を部分的に薄くすることにより段差を設け、薄くなった前記カバーの表面に前記段差分以下の厚さで絶縁層を形成したことを特徴とするメモリカード用アダプタ。
【請求項2】
前記カバーはその一部分をかしめることにより前記ベースに固定した請求項1に記載のメモリカード用アダプタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−94916(P2007−94916A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285717(P2005−285717)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)
【Fターム(参考)】