説明

メラニン生成抑制組成物及びそれを含有する飲食品

【課題】安全性が高く、経口摂取することにより、充分なメラニン生成抑制効果が期待できるメラニン生成抑制組成物を提供する。
【解決手段】経口摂取することによりメラニン生成抑制作用を得るためのメラニン生成抑制組成物の有効成分として、マコモタケ抽出物及び/又はマコモタケ粉砕物を含有させる。前記マコモタケ抽出物は、マコモタケを熱水又はクロロホルム又はエタノール抽出して得られたものであることが好ましい。また、前記マコモタケ抽出物及び/又はマコモタケ粉砕物を、乾燥固形分換算で0.01〜50質量%含有することが好ましい。このメラニン生成抑制組成物はそのまま、あるいは飲食品に配合して摂取することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マコモタケ抽出物及び/又はマコモタケ粉砕物を有効成分として含有し、経口摂取することによりメラニン生成抑制作用が期待できるメラニン生成抑制組成物及びそれを含有する飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
人の皮膚色を決定する最も重要な因子の一つにメラニン色素が挙げられる。メラニン色素は、皮膚が紫外線を浴びると色素細胞内でチロシンにチロシナーゼが活性作用して生成され、通常皮膚の新陳代謝によって角質層の剥離と共に脱落して排出される。しかし、多量の紫外線を浴びた後に新陳代謝機能が充分に働かないと、生成したメラニン色素が真皮内に沈着してシミ・ソバカス等といった色素沈着が起こり、中高年齢層や女性にとって肌の大きな悩みの一つとなっている。
【0003】
上記のようなメラニン色素の生成や沈着を防止・改善するために、様々な美白薬剤が開発されているが、合成品は安全性の面で問題があるため、より安全性の高い植物抽出物を有効成分とする美白薬剤が多数報告されている。
【0004】
例えば、外用の美白薬剤として、下記特許文献1にはイネ科植物であるササクサの茎葉の抽出物を含む皮膚外用剤、下記特許文献2にはチシマザサ留出液を含む美容液、下記特許文献3、4には植物抽出物と共に美白成分として公知のアスコルビン酸配糖体又はコウジ酸誘導体を含有する化粧料、下記特許文献5には、ジザニア ラティフォリアの菌えい(マコモ)から抽出したエキスを配合した化粧品が開示されている。
【0005】
一方、内用の美白薬剤としては、下記特許文献6にはローズマリー抽出エキス、セージ抽出エキス、夏枯草抽出エキス等を有効成分として含有する経口投与用組成物、下記特許文献7には米の水抽出物又は有機溶媒抽出物を含有してなる美容食品、下記特許文献8にはケール又はその抽出物を含む美白剤及びメラニン生成抑制剤、下記特許文献9にはヤナギタデ抽出物を配合したことを特徴とする美白用飲食品、下記特許文献10にはバラの抽出エキス又はキクの抽出エキスを有効成分として含有する経口用メラニン生成抑制組成物が開示されている。
【特許文献1】特開平9−249550号公報
【特許文献2】特開2004−224750号公報
【特許文献3】特開2002−128657公報
【特許文献4】特許第2903412号公報
【特許文献5】特許第2952016号公報
【特許文献6】特開2005−112817号公報
【特許文献7】特開2005−177号公報
【特許文献8】特開2004−91396号公報
【特許文献9】特開2004−83488号公報
【特許文献10】特開2001−48801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように植物由来の成分を有効成分として含有する美白製剤が数多く提案されているものの、外用製剤は手軽に使用しにくい上、充分満足できる美白効果が期待できるとは言えなかった。一方、内用製剤は、健康食品等として手軽に摂取できるものの、味や風味の問題があり、美白効果が期待できる充分な量を配合することが難しい場合もあった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、安全性が高く、経口摂取することにより、充分なメラニン生成抑制効果が期待できるメラニン生成抑制組成物及びそれを含有する飲食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のメラニン生成抑制組成物は、経口摂取することによりメラニン生成抑制作用を得るためのメラニン生成抑制組成物において、マコモタケ抽出物及び/又はマコモタケ粉砕物を有効成分として含有することを特徴とする。
【0009】
本発明のメラニン生成抑制組成物においては、前記マコモタケ抽出物は、マコモタケを熱水又はクロロホルム又はエタノール抽出して得られたものであることが好ましい。
【0010】
また、前記マコモタケ抽出物及び/又はマコモタケ粉砕物を、乾燥固形分換算で0.01〜50質量%含有することが好ましい。
【0011】
本発明のメラニン生成抑制組成物は、マコモタケ抽出物及び/又はマコモタケ粉砕物を有効成分として含有することにより、優れたメラニン生成抑制作用を有しており、経口摂取することにより充分な美白効果が期待できる。また、マコモタケは、食経験が豊富な素材であり、高い安全性を有しているので、長期間にわたって手軽に摂取することが可能である。
【0012】
更に、本発明の飲食品は、上記メラニン生成抑制組成物を含有することを特徴とする。この場合、上記メラニン生成抑制組成物を乾燥固形分換算で0.5〜50質量%含有することが好ましい。本発明の飲食品によれば、上記メラニン生成抑制組成物を飲食品として手軽に摂取することができ、それによってメラニン生成を抑制して優れた美白効果が期待できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、経口摂取することにより、充分な美白効果が期待できるメラニン生成抑制組成物を提供することができる。このメラニン生成抑制組成物は、豊富な食経験により安全性が確認されているマコモタケ由来の成分を有効成分として含有するので安全性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
マコモタケは、イネ科マコモ属・多年草の水生植物であるマコモの若茎が黒穂菌によって肥大生育したものであり、中国、台湾を中心とした東アジアから東南アジアにかけて栽培されている中国野菜である。近年では日本でも栽培が行われており、これらの市販品を簡単に入手することができる。
【0015】
本発明で用いられるマコモタケ抽出物は、マコモタケを必要に応じて乾燥、粉砕した後、好ましくはマコモタケの5〜100倍量(質量比)の有機溶媒や水等を用いて任意の温度で抽出することにより得ることができる。抽出後は、遠心分離や濾過等により残渣を除去し、必要に応じて濃縮してもよく、更に乾燥してもよい。
【0016】
上記有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、クロロホルム、酢酸エチル、ブタノール、プロパノール、2−プロパノール、エタノール、メタノール等を用いることができるが、本発明においては、クロロホルム、エタノールが好ましく用いられ、食品にも安全に用いることができることから、特にエタノールが好ましく用いられる。
【0017】
有機溶媒で抽出した場合は、抽出後、減圧濃縮、送風乾燥等により有機溶媒を充分に除去することが好ましい。抽出温度や抽出時間は、抽出溶媒によって異なるため限定できるものではないが、例えば、クロロホルムを用いた場合は、室温(20℃)〜50℃で2〜12時間抽出することが好ましく、エタノールを用いた場合は、室温(20℃)〜70℃で2〜24時間抽出することが好ましい。
【0018】
本発明で用いられるマコモタケ粉砕物は、マコモタケを必要に応じて乾燥した後、公知の粉砕手段(例えば、粉砕機、ホモジナイザー、ミル、ジェットミル、ボールミル等)で粉砕することによって得ることができる。粉砕物の形状や大きさは特に制限はなく、用途に応じて適宜決定できる。
【0019】
本発明においては、上記マコモタケ抽出物及び/又はマコモタケ粉砕物をそのままメラニン生成抑制組成物として用いることもできるが、公知の美白効果を有する成分(以下、美白成分という)、例えばアスコルビン酸及びその誘導体、コウジ酸及びその誘導体、トコフェロール及びその誘導体、システイン、グルタチオン、ハイドロキノン、コンドロイオウ、胎盤抽出物、生薬抽出物、植物抽出物等から選ばれた1種類若しくは2種類以上の成分を配合してもよく、その他にも、無機塩類、有機酸類、糖質類、タンパク類、ペプチド類、アミノ酸類、脂質類を適宜配合することができる。上記成分を配合することにより、マコモタケ抽出物及び/又はマコモタケ粉砕物との相乗効果が期待できる。
【0020】
本発明のメラニン生成抑制組成物は、上記マコモタケ抽出物及び/又はマコモタケ粉砕物を、乾燥固形分換算で0.01〜50質量%含有することが好ましく、0.5〜10質量%含有することがより好ましい。また、上記美白成分を併用する場合は、該美白成分を0.01〜99質量%含有することが好ましく、0.1〜50質量%含有することがより好ましい。
【0021】
本発明のメラニン生成抑制組成物の摂取形態は、液剤、散剤、錠剤、丸剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、ゼリー、チュアブル、ペースト等が挙げられ、生理活性を損わない範囲で、食品及び医薬的に許容される担体、賦形剤、糖類、甘味料、香料、酸味料、着色料、その他補助的添加剤を使用してもよい。
【0022】
本発明のメラニン生成抑制組成物の有効摂取量は、摂取者の体重、性別、年齢等によって適宜設定すればよいが、通常、乾燥マコモタケ換算で、体重1kg当り0.01〜5g、好ましくは0.05〜0.5gである。
【0023】
本発明のメラニン生成抑制組成物は、飲食品に配合して摂取することもでき、例えば、(1)清涼飲料、炭酸飲料、果実飲料、野菜ジュース、乳酸菌飲料、乳飲料、豆乳、ミネラルウォーター、茶系飲料、コーヒー飲料、スポーツ飲料、アルコール飲料、ゼリー飲料等の飲料類、(2)トマトピューレ、キノコ缶詰、乾燥野菜、漬物等の野菜加工品、(3)乾燥果実、ジャム、フルーツピューレ、果実缶詰等の果実加工品、(4)カレー粉、わさび、ショウガ、スパイスブレンド、シーズニング粉等の香辛料、(5)パスタ、うどん、そば、ラーメン、マカロニ等の麺類(生麺、乾燥麺含む)、(6)食パン、菓子パン、調理パン、ドーナツ等のパン類、(7)アルファー化米、オートミール、麩、バッター粉等、(8)焼菓子、ビスケット、米菓子、キャンデー、チョコレート、チューイングガム、スナック菓子、冷菓、砂糖漬け菓子、和生菓子、洋生菓子、半生菓子、プリン、アイスクリーム等の菓子類、(9)小豆、豆腐、納豆、きな粉、湯葉、煮豆、ピーナッツ等の豆類製品、(10)蜂蜜、ローヤルゼリー加工食品、(11)ハム、ソーセージ、ベーコン等の肉製品、(12)ヨーグルト、プリン、練乳、チーズ、発酵乳、バター、アイスクリーム等の酪農製品、(13)加工卵製品、(14)干物、蒲鉾、ちくわ、魚肉ソーセージ等の加工魚や、乾燥わかめ、昆布、佃煮等の加工海藻や、タラコ、数の子、イクラ、からすみ等の加工魚卵、(15)だしの素、醤油、酢、みりん、コンソメベース、中華ベース、濃縮出汁、ドレッシング、マヨネーズ、ケチャップ、味噌等の調味料や、サラダ油、ゴマ油、リノール油、ジアシルグリセロール、べにばな油等の食用油脂、(16)スープ(粉末、液体含む)等の調理、半調理食品や、惣菜、レトルト食品、チルド食品、半調理食品(例えば、炊き込みご飯の素、カニ玉の素)等が挙げられる。
【0024】
上記飲食品におけるメラニン生成抑制組成物の配合量は、乾燥固形分換算で0.5〜50質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。配合量が上記範囲よりも少ないと、効果が期待できる充分な量を1食で摂取するのが困難となり、上記範囲よりも多いと飲食品の味や品質安定性に不具合が生じる他、飲料や加工食品においては、それらの持つ本来の風味を損う場合があるため好ましくない。
【実施例】
【0025】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0026】
<実施例1>
市販のマコモタケ5,000gを天日乾燥した後、ミキサーを用いて粉砕を行い、マコモタケ粉砕物350gを得た。
【0027】
<実施例2>
実施例1で得られたマコモタケ粉砕物100gに、1,000mlのクロロホルムを加えて、室温で2時間撹拌しながら抽出を行った。吸引濾過にて残渣を除去後、得られた抽出液をロータリーエバポレーターを用いてクロロホルムを完全に除去後、減圧乾固させて、4.0gのマコモタケ抽出物を得た。
【0028】
<実施例3>
実施例1で得られたマコモタケ粉砕物100gに、1,000mlのエタノールを加えて、30℃で3時間撹拌しながら抽出を行った。吸引濾過にて残渣を除去後、得られた抽出液をロータリーエバポレーターを用いて減圧濃縮によりエタノールを除去し、21.0g(固形分87%)のペースト状のマコモタケ抽出物を得た。
【0029】
<実施例4>
実施例1で得られたマコモタケ粉砕物100gに、1,000mlの水を加えて、95℃で1時間撹拌しながら抽出を行った。吸引濾過にて残渣を除去後、得られた抽出液をロータリーエバポレーターを用いて減圧濃縮して、51.0g(固形分82%)のペースト状のマコモタケ抽出物を得た。
【0030】
<試験例1>
実施例2で得られたマコモタケ抽出物について、以下の方法でメラニン生成抑制活性の検討を行った。
【0031】
B16メラノーマ細胞を24時間培養し、試験区においては、実施例4で得られたマコモタケ抽出物を終濃度0.25%(v/v)になるように添加した培養液に交換し、対照区においては、精製水を添加した培養液に交換した。37℃、5%炭酸ガスの条件で72時間培養した後、各区の細胞数をカウントした。次いで、細胞を1N−NaOH溶液で加熱溶解して420nmにおける吸光度を測定した。求めた細胞数と420nmの吸光度から、メラニン生成細胞1個当たりのメラニン生成量を求めた。その結果を図1に示す。
【0032】
また、下記数式1により、試験区におけるメラニン生成抑制率(%)を求めた。
【0033】
<数式1>
メラニン生成抑制率(%)={1−(試料メラニン生成量/ブランクメラニン生成量)}×100
その結果、マコモタケ抽出物を添加した試験区におけるメラニン生成量は、対照区に比べて23%抑制されており、マコモタケ抽出物がメラニン生成抑制活性を有することが示唆された。
【0034】
<実施例5>
表1に示す配合で調合した組成物を常法にしたがってハードカプセルに230mg/カプセルで充填して、ハードカプセル食品を製造した。なお、N‐アセチルグルコサミンは、商品名「マリンスウィート」(焼津水産化学工業株式会社製)を使用した。
【0035】
【表1】

【0036】
<実施例6>
表2に示す配合で常法にしたがってゼリー飲料を製造した。このゼリー飲料はマコモタケの風味を感じることなく、また食感にも優れ、非常に飲み易かった。なお、フィッシュコラーゲンペプチドは、商品名「マリンマトリックス」(焼津水産化学工業株式会社製)を使用した。
【0037】
【表2】

【0038】
<実施例7>
表3に示す配合で常法にしたがって乳飲料を製造した。この乳飲料は沈殿を生じることなく、またマコモタケの風味を感じることもなく、非常に飲み易かった。





【0039】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のメラニン生成抑制組成物は、そのまま、あるいは飲食品等に配合して摂取することにより、美白効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】マコモタケ抽出物を添加した培養液を用いてB16メラノーマ細胞を培養した場合に、メラニン生成細胞1個当たりにおけるメラニン生成量を測定した結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経口摂取することによりメラニン生成抑制作用を得るためのメラニン生成抑制組成物において、マコモタケ抽出物及び/又はマコモタケ粉砕物を有効成分として含有することを特徴とするメラニン生成抑制組成物。
【請求項2】
前記マコモタケ抽出物は、マコモタケを熱水又はクロロホルム又はエタノール抽出して得られたものである請求項1記載のメラニン生成抑制組成物。
【請求項3】
前記マコモタケ抽出物及び/又はマコモタケ粉砕物を、乾燥固形分換算で0.01〜50質量%含有する請求項1又は2記載のメラニン生成抑制組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のメラニン生成抑制組成物を含有することを特徴とする飲食品。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のメラニン生成抑制組成物を乾燥固形分換算で0.5〜50質量%含有する請求項4記載の飲食品。

【図1】
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【公開番号】特開2007−112721(P2007−112721A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303433(P2005−303433)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(390033145)焼津水産化学工業株式会社 (80)
【Fターム(参考)】