説明

メラノコルチン−1受容体特異的環状ペプチド

次(I)のメラノコルチン受容体特異的環状ペプチド(式中、R、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、本明細書で定義した通りのものである)、前述の式のペプチドまたはその塩を含む組成物および製剤、ならびにメラノコルチン−1受容体介在性または応答性の疾患、適応症、状態および症候群を予防、改善、または治療する方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年11月23日に出願された、「メラノコルチン−1受容体特異的環状ペプチド」という名称の米国仮特許出願第61/263,490号明細書の出願に対する優先権およびそのような出願の恩典を主張するものであり、その明細書および特許請求の範囲は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、メラノコルチン−1受容体介在性または応答性の疾患、適応症、状態および症候群の治療で使用し得る、メラノコルチン受容体特異的環状ペプチド、特に、メラノコルチン−1受容体に選択的かつ特異的な環状ペプチドに関する。
【背景技術】
【0003】
以下の議論は、著者によるいくつかの出版物および出版の年に言及するものであり、しかも、出版日が最近であるため、特定の出版物は、本発明に関して先行技術とみなすべきではないということに言及するものである。本明細書におけるそのような出版物の議論は、より完全な背景説明のために与えられているのであって、そのような出版物が特許性を決定する目的のための先行技術であるという是認と解釈されるべきものではない。
【0004】
メラノコルチン受容体タイプおよびサブタイプのファミリーが同定されている。受容体タイプとしては、正常ヒトメラニン形成細胞およびメラノーマ細胞で発現されることが一般に知られているが、単球、好中球、リンパ球、樹状細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞および内皮細胞などの免疫応答に関与する細胞を含む、他の様々な細胞で発現されることも報告されているメラノコルチン−1(MC−1)受容体(MCR−1)が挙げられる。一般には、Kang,L.,et al.,“A selective small molecule agonist of melanocortin−1 receptor inhibits lipopolysaccharide−induced cytokine accumulation and leukocyte infiltration in mice”,J.Leuk.Biol.80:897−904(2006)、およびその中に引用されている参考文献を参照されたい。米国特許第6,693,184号明細書および同第7,115,393号明細書に開示されているものを含め、種々のヒトMCR−1サブタイプおよび変異体が知られている。MCR−1に加えて、他のメラノコルチン受容体タイプとしては、副腎の細胞で発現される、ACTH(アドレノコルチコトロピン)のためのメラノコルチン−2受容体(MCR−2)、視床下部、中脳および脳幹の細胞で主に発現される、メラノコルチン−3およびメラノコルチン−4(MC−4)受容体(MCR−3およびMCR−4)、ならびに広範に分布する末梢組織で発現される、メラノコルチン−5受容体(MCR−5)が挙げられる。
【0005】
主な内在性メラノコルチンアゴニストは、環状α−メラニン形成細胞刺激ホルモン(「α−MSH」)ペプチドである。メラノコルチン受容体特異的ペプチドは、通常、天然のα−MSHの中心のテトラペプチド配列、His−Phe−Arg−Trp(配列番号1)、または1つ以上の位置での様々な置換を含むその模倣体もしくはバリエーションを含む(例えば、Hruby,V.J.,et al.,“Alpha−Melanotropin:the minimal active sequence in the frog skin bioassay”,J.Med.Chem.,30:2126−2130(1987);Castrucci,A.M.L.,et al.,“Alpha−melanotropin:the minimal active sequence in the lizard skin bioassay”,Gen.Comp.Endocrinol.,73:157−163(1989);Haskell−Luevano,C.,et al.,“Discovery of prototype peptidomimetic agonists at the human melanocortin receptors MC1R and MC4R”,J.Med.Chem.,40:2133−2139(1997);Holder,J.R.,et al.,“Structure−activity relationships of the melanocortin tetrapeptide Ac−His−DPhe−Arg−Trp−NH.1.Modifications at the His position”,J.Med.Chem.,45:2801−2810(2002);Abdel−Malek,Z.A.,et al.,“Melanoma prevention strategy based on using tetrapeptide α−MSH analogs that protect human melanocytes from UV−induced DNA damage and cytotoxicity”,FASEB J.,20:E888−E896(2006);Bednarek,M.A.,et al.,“Cyclic analogs of α−melanocyte−stimulating hormone(αMSH) with high agonist potency and selectivity at human melanocortin receptor 1b”,Peptides,29:1010−1017(2008);Koikov,L.N.,et al.,“Analogs of subnanomolar hMC1R agonist LK−184[Ph(CHCO−His−D−Phe−Arg−Trp−NH].An additional binding site with the human melanocortin receptor 1?”Bioorg.Med.Chem.Lett.14:3997−4000(2004);and Abdel−Malek,Z.A.,et al.,“Alpha−MSH tripeptide analogs activate the melanocortin 1 receptor and reduce UV−induced DNA damage in human melanocytes”,Pigment Cell Melanoma Res.22:635−44(2009)を参照されたい)。
【0006】
1つ以上のメラノコルチン受容体に特異的であると主張されているペプチドまたはペプチド様化合物は、米国特許第5,576,290号明細書、同第5,674,839号明細書、同第5,683,981号明細書、同第5,714,576号明細書、同第5,731,408号明細書、同第6,051,555号明細書、同第6,054,556号明細書、同第6,284,735号明細書、同第6,350,430号明細書、同第6,476,187号明細書、同第6,534,503号明細書、同第6,600,015号明細書、同第6,613,874号明細書、同第6,693,165号明細書、同第6,699,873号明細書、同第6,887,846号明細書、同第6,951,916号明細書、同第7,008,925号明細書、同第7,049,398号明細書、同第7,084,111号明細書、同第7,176,279号明細書、同第7,473,760号明細書、および同第7,582,610号明細書;米国特許出願公開第2001/0056179号明細書、同第2002/0143141号明細書、同第2003/0064921号明細書、同第2003/0105024号明細書、同第2003/0212002号明細書、同第2004/0023859号明細書、同第2005/0130901号明細書、同第2005/0187164号明細書、同第2005/0239711号明細書、同第2006/0105951号明細書、同第2006/0111281号明細書、同第2006/0293223号明細書、同第2007/0027091号明細書、同第2007/0105759号明細書、同第2007/0123453号明細書、同第2007/0244054号明細書、同第2008/0039387号明細書、および同第2009/0069242号明細書;ならびに国際特許出願の国際公開第98/27113号パンフレット、国際公開第99/21571号パンフレット、国際公開第00/05263号パンフレット、国際公開第99/54358号パンフレット、国際公開第00/35952号パンフレット、国際公開第00/58361号パンフレット、国際公開第01/30808号パンフレット、国際公開第01/52880号パンフレット、国際公開第01/74844号パンフレット、国際公開第01/85930号パンフレット、国際公開第01/90140号パンフレット、国際公開第02/18437号パンフレット、国際公開第02/26774号パンフレット、国際公開第03/006604号パンフレット、国際公開第2004/046166号パンフレット、国際公開第2005/000338号パンフレット、国際公開第2005/000339号パンフレット、国際公開第2005/000877号パンフレット、国際公開第2005/030797号パンフレット、国際公開第2005/060985号パンフレット、国際公開第2006/048449号パンフレット、国際公開第2006/048450号パンフレット、国際公開第2006/048451号パンフレット、国際公開第2006/048452号パンフレット、国際公開第2006/097526号パンフレット、国際公開第2007/008684号パンフレット、国際公開第2007/008704号パンフレット、国際公開第2007/009894号パンフレットおよび国際公開第2009/061411号パンフレットに開示されている。
【0007】
メラノコルチン受容体特異的ペプチドへの強い科学的および薬学的関心にもかかわらず、薬学的用途で用いられる極めて選択的かつ特異的なMCR−1アゴニストペプチドに対する必要性が依然として存在する。本発明がなされたのはこうした背景の下である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、本発明は、式(I)の環状ペプチドであって、その全てのエナンチオマー、立体異性体もしくはジアステレオ異性体を含む環状ペプチド、または前述のもののいずれかの薬学的に許容される塩を提供する。

(式中、
は、−H、−NH−R10、−NH−R10−R11または−NH−R11であり;
は、−CH−または−N−であり;
は、−H、−CHまたは−CH−であり、かつそれが−CH−である場合、Rとともに一般構造

の環を形成し;
が−CH−である場合、Rは−H、−(CH−であり、かつそれが−(CH−である場合、Rとともに環を形成し、ここで、−(CH−中のHはいずれもR12で任意に置換されているか、またはRは−(CH−R13−(CH−R14であり、ここで、どちらかの(CH中のHはいずれも−(CH−CHで任意に置換されており;
は−(CH−R15であり;
は、−H、−CHまたは−CH−であり、かつそれが−CH−である場合、Rとともに一般構造

の環を形成し;
が−CH−である場合、Rは−(CH−であり、かつそれが−(CH−である場合、Rとともに環を形成するか、またはRは−(CH−R16であり;
は、−R17−R18または−R18であり;
は、
−(CH−C(=O)−NH−(CH−、
−(CH−NH−C(=O)−(CH−、
−(CH−C(=O)−(CH−C(=O)−(CH−、
−(CH−C(=O)−NH−C(=O)−(CH−、
−(CH−NH−C(=O)−NH−(CH−、
−(CH−NH−C(=O)−(CH−C(=O)−NH−(CH−、または
−(CH−S−S−(CH
であり;
10は、1〜3個のアミノ酸残基であり;
11は、HまたはC〜C17アシル基であり、ここで、C〜C17は、線状または分岐状アルキル、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、アリールまたはアルキルアリールを含み;
12は存在していてもよく、存在する場合、各々の場合において独立に、−R13−(CH−R14であり;
13は存在していてもよく、存在する場合、各々の場合において独立に
−O−、
−S−、
−NH−、
−S(=O)−、
−S(=O)−、
−S(=O)−NH−、
−NH−S(=O)−、
−C(=O)−、
−C(=O)−O−、
−O−C(=O)−、
−NH−C(=O)−O−、
−O−C(=O)−NH−、
−NH−C(=O)−、または
−C(=O)−NH−
であり;
14は、各々の場合において独立に、−H、−CH、−N(R19a)(R19b)、−NH−(CH−N(R19a)(R19b)、−NH−CH(=NH)−N(R19a)(R19b)、−NH−CH(=O)−N(R19a)(R19b)、−O(R19a)、−(R19a)(R19b)、−S(=O)(R19a)、−C(=O)−O(R19a)、

であり、ここで、R14中の環はいずれも1つ以上の環置換基で任意に置換されており、かつ1つ以上の置換基が存在するとき、同じものまたは異なるものであり、独立に、ヒドロキシル、ハロゲン、スルホンアミド、アルキル、−O−アルキル、アリール、−O−アリール、C(=O)−OH、またはC(=O)−N(R19a)(R19b)であり;
15は、ハロ、(C−C10)アルキル−ハロ、(C−C10)アルキル、(C−C10)アルコキシ、(C−C10)アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ニトロ、ニトリル、スルホンアミド、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、およびアルコキシ−カルボニルから独立に選択される1つ以上の置換基で任意に置換されたフェニル、ナフチルまたはピリジルであり;
16は、−H、−N(R19a)(R19b)、−NH−(CH−N(R19a)(R19b)、−NH−CH(=NH)−N(R19a)(R19b)、−NH−CH(=O)−N(R19a)(R19b)、−O(R19a)、線状または分岐状C〜C17アルキル鎖、−C(=O)−N(R19a)(R19b)、−S(=O)(R19a)、

であり、ここで、環はいずれも1つ以上の任意の環置換基で任意に置換されており、かつ1つ以上の置換基が存在するとき、同じものまたは異なるものであり、独立に、ヒドロキシル、ハロゲン、スルホンアミド、アルキル、−O−アルキル、アリール、アラルキル、O−アラルキル、または−O−アリールであり;
17は、1〜3個のアミノ酸残基であり;
18は、−OH、−N(R19a)(R19b)、− N(R19a)(CH−(C−C)シクロアルキル、または−O−(CH−(C−C)シクロアルキルであり;
19aおよびR19bは、各々独立に、HまたはC〜C線状もしくは分岐状アルキル鎖であり;
wは、各々の場合において独立に、0〜5であり;
xは1〜5であり;
yは1〜5であり;かつ
zは、各々の場合において独立に、1〜5である。)
【0009】
式(I)の環状ペプチドにおいて、R17は、次式の単一アミノ酸残基であることができる。

(式中、
20は、1つ以上の環置換基で任意に置換された

であり、かつ1つ以上が存在するとき、同じものまたは異なるものであり、独立に、ヒドロキシル、ハロゲン、スルホンアミド、アルキル、−O−アルキル、アリール、または−O−アリールである。)
【0010】
別の態様では、式(II)の環状ペプチドを提供する。

(式中、変数は、式(I)について特定した通りのものである。)
【0011】
別の態様では、式(III)の環状ペプチドを提供する。

(式中、R21a、R21bおよびR21cは、各々の場合において独立に、ハロゲン、ハロ、(C−C10)アルキル−ハロ、(C−C10)アルキル、(C−C10)アルコキシ、(C−C10)アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ニトロ、ニトリル、スルホンアミド、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、またはアルコキシ−カルボニルであり、他の全ての変数は、式(I)について特定した通りのものである。)
【0012】
別の態様では、式(IV)の環状ペプチドを提供する。

(式中、R22は、HまたはC〜C線状もしくは分岐状アルキル、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、アリールもしくはアルキルアリールであり;
21a、R21bおよびR21cは、式(III)について定義した通りのものであり;かつ
他の全ての変数は、式(I)について特定した通りのものである。)
【0013】
別の態様では、式(V)の環状ペプチドを提供する。

(式中、変数は、式(IV)の環状ペプチドについて特定した通りのものである。)
【0014】
別の態様では、式(VI)の環状ペプチドを提供する。

(式中、変数は、式(III)の環状ペプチドについて特定した通りのものである。)
【0015】
式(I)の環状ペプチドでは、Rは、−(CH−C(=O)−NH−(CH−であってもよく、ここで、xは4でかつyは3であるか、xは3でかつyは2であるか、またはxは2でかつyは1である。あるいは、Rは、−(CH−NH−C(=O)−(CH−であってもよく、ここで、xは1でかつyは2であるか、xは2でかつyは3であるか、またはxは3でかつyは4である。
【0016】
式(I)の環状ペプチドでは、Rは、Rとともに、以下の一般構造の環を形成することができる。

(式中、zは3である。)
【0017】
式(I)の環状ペプチドでは、R17は、次式の単一アミノ酸残基であることができる。

【0018】
別の態様では、本発明は、メラノコルチン受容体介在性の疾患、適応症、状態および症候群の治療で用いられるメラノコルチン受容体特異的ペプチドベースの医薬組成物を提供する。
【0019】
別の態様では、本発明は、ペプチドベースのメラノコルチン受容体特異的医薬を提供するものであり、ここで、このペプチドは、MCR−1関連の障害、疾患、適応症、状態および/または症候群の治療で用いられる選択的MCR−1リガンドである。
【0020】
別の態様では、本発明は、メラノコルチン受容体MCR−1に特異的であり、かつアゴニストであるペプチドを提供する。
【0021】
別の態様では、本発明は、治療で用いられるメラノコルチン受容体特異的医薬を提供するものであり、ここで、この治療の投与は肺投与を介するものである。
【0022】
別の態様では、本発明は、かなりの用量範囲にわたって有効な特異的MCR−1環状ペプチドを提供する。
【0023】
本発明のまた別の態様は、低用量での効力が増大しているために、限定するものではないが、経口送達系、吸入送達系、肺送達系、鼻腔送達系および粘膜送達系を含む、当技術分野で標準的な静脈内、皮下または筋肉内注射以外の送達系によって投与することができる特異的なMCR−1環状ペプチドを提供する。
【0024】
本発明の他の態様および新規の特徴、ならびにさらなる適用可能範囲は、一部は、以下の詳細な説明に示され、一部は、以下を検証したときに当業者に明白となるか、または本発明の実施によって理解することができる。本発明の態様は、特に添付の特許請求の範囲で指摘されている手段および組合せによって実現および達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
1.0 定義
本発明の説明を進める前に、特定の用語を本明細書に示すように定義する。
【0026】
本発明によるペプチドに対して与えられた配列において、米国特許審査便覧第8版の第2400章に示されているように、アミノ酸残基は、その従来の意味を有する。したがって、「Nle」はノルロイシンであり、「Asp」はアスパラギン酸であり、「His」はヒスチジンであり、「Phe」はフェニルアラニンであり、「Arg」はアルギニンであり、「Trp」はトリプトファンであり、「Lys」はリジンであるなどのようである。例えば、D−PheがD−フェニルアラニンであるように、「D」異性体が3文字暗号またはアミノ酸名の前の「D−」によって指定されることを理解すべきである。前述のものに包含されないアミノ酸残基は、以下の定義を有する。
【0027】

【0028】

【0029】

【0030】
「α,α−二置換アミノ酸」は、α−位にさらなる置換基を有する任意のα−アミノ酸を意味し、この置換基は、α−アミノ酸の側鎖部分と同じものであっても、異なるものであってもよい。α−アミノ酸の側鎖部分の他に、好適な置換基としては、C〜C線状または分岐状アルキルが挙げられる。Aibは、α,α−二置換アミノ酸の一例である。α,α−二置換アミノ酸は、従来のL−およびD−異性体基準を用いて表すことができるが、そのような基準は便宜のためであり、α−位の置換基が異なる場合、そのようなアミノ酸は、必要に応じて、指定されたアミノ酸側鎖部分を有する残基のL−またはD−異性体から誘導されたα,α−二置換アミノ酸と互換的に表すことができることを理解すべきである。したがって、(S)−2−アミノ−2−メチル−ヘキサン酸は、L−Nleから誘導されたα,α−二置換アミノ酸、またはD−Alaから誘導されたα,α−二置換アミノ酸のいずれかと表すことができる。同様に、AibはAlaから誘導されたα,α−二置換アミノ酸と表すことができる。α,α−二置換アミノ酸が提供される場合はいつでも、その全ての(R)および(S)配置を含むものと理解すべきである。特許請求の範囲または本明細書中の説明で「アミノ酸」に言及するときはいつでも、そのような指定は、限定するものではないが、「α,α−二置換アミノ酸」を含む。
【0031】
「N−置換アミノ酸」は、アミノ酸側鎖部分が骨格アミノ基に共有結合している任意のアミノ酸を意味し、α−炭素位にH以外の置換基が存在しない場合を任意に含む。サルコシンはN−置換アミノ酸の一例である。例として、サルコシンとAlaのアミノ酸側鎖部分が同じメチルであるという点で、サルコシンは、AlaのN−置換アミノ酸誘導体と表すことができる。特許請求の範囲または本明細書中の説明で「アミノ酸」に言及するときはいつでも、そのような指定は、限定するものではないが、「N−置換アミノ酸」を含む。
【0032】
特定の例では、アミノ酸の代わりに基を用いることができ、例えば、特に、アミノ酸の代わりにジカルボン酸を用いる。本明細書で利用される特定のジカルボン酸の1つは、「Suc」と略されるコハク酸であり、これは、以下の構造式を有する。

【0033】
「アルカン」という用語は、線状または分岐状の飽和炭化水素を含む。線状アルカン基の例としては、メタン、エタン、プロパンなどが挙げられる。分岐状または置換アルカン基の例としては、メチルブタンまたはジメチルブタン、メチルペンタン、ジメチルペンタンまたはトリメチルペンタンなどが挙げられる。一般に、アルキル基はいずれも、アルカンの置換基であることができる。
【0034】
「アルケン」という用語は、1つ以上の炭素−炭素二重結合を含む不飽和炭化水素を含む。そのようなアルケン基の例としては、エチレン、プロペンなどが挙げられる。
【0035】
「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの二重結合を含む、2〜6個の炭素原子の線状一価炭化水素ラジカルまたは3〜6個の炭素原子の分枝状一価炭化水素ラジカルを含み、その例としては、エテニル、2−プロペニルなどが挙げられる。
【0036】
本明細書で特定される「アルキル」基は、直鎖状または分枝状のどちらかの形状の、指定された長さのアルキルラジカルを含む。そのようなアルキルラジカルの例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、3級ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシルなどが挙げられる。
【0037】
「アルキン」という用語は、少なくとも1つの三重結合を含む、2〜6個の炭素原子の線状一価炭化水素ラジカルまたは3〜6個の炭素原子の分枝状一価炭化水素ラジカルを含み、その例としては、エチン、プロピン、ブチンなどが挙げられる。
【0038】
「アリール」という用語は、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ハロ、ニトロ、アシル、シアノ、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、またはアルコキシ−カルボニルから選択される1つ以上の置換基で独立に任意に置換された、6〜12個の環原子の単環式または二環式芳香族炭化水素ラジカルを含む。アリール基の例としては、フェニル、ビフェニル、ナフチル、1−ナフチル、および2−ナフチル、それらの誘導体などが挙げられる。
【0039】
「アラルキル」という用語は、Rがアルキレン(二価のアルキル)基であり、Rが上で定義したアリール基であるラジカル−Rを含む。アラルキル基の例としては、ベンジル、フェニルエチル、3−(3−クロロフェニル)−2−メチルペンチルなどが挙げられる。
【0040】
「脂肪族」という用語は、例えば、アルカン、アルケン、アルキン、およびそれらの誘導体などの炭化水素鎖を有する化合物を含む。
【0041】
「アシル」という用語は、Rが有機基である基R(C=O)−を含む。一例として、本明細書では「Ac」と表される、アセチル基CH−C(C=O)−がある。本明細書で使用するように、Rは、C〜C17線状または分岐状アルキル、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、アリールまたはアルキルアリールを含むことができる。
【0042】
上で定義したアルキル基または置換アルキル基が1つ以上のカルボニル{−(C=O)−}基を介して結合している場合、ペプチドまたは脂肪族部分は「アシル化」されている。ペプチドは、N末端でアシル化されていることが最も多い。
【0043】
「オメガアミノ脂肪族鎖」は、末端アミノ基を有する脂肪族部分を含む。オメガアミノ脂肪族鎖の例としては、アミノヘプタノイルならびにオルニチンおよびリジンのアミノ酸側鎖部分が挙げられる。
【0044】
「ヘテロアリール」という用語は、窒素、酸素および硫黄から選択される1〜4個のヘテロ原子を含む単環式および二環式の芳香族環を含む。5員または6員ヘテロアリールは、単環式のヘテロ芳香族環であり、その例としては、チアゾール、オキサゾール、チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、イソキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、オキサジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジンなどが挙げられる。二環式のヘテロ芳香族環としては、ベンゾチアジアゾール、インドール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンズイミダゾール、ベンズイソキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、ベンゾトリアゾール、ベンズオキサゾール、イソキノリン、プリン、フロピリジンおよびチエノピリジンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
「アミド」としては、例えば、メチルアミド、エチルアミド、プロピルアミドなどの、カルボニル基に結合した三価の窒素(−C(=O)−NH)を有する化合物が挙げられる。
【0046】
「イミド」としては、イミド基(−C(=O)−NH−C(=O)−)を含有する化合物が挙げられる。
【0047】
「アミン」としては、アミノ基(−NH)を含有する化合物が挙げられる。
【0048】
「ニトリル」としては、有機基に結合する(−CN)基を含有する化合物が挙げられる。
【0049】
「ハロゲン」という用語は、ハロゲン原子のフッ素、塩素、臭素、およびヨウ素、ならびに1つ以上のハロゲン原子を含む基(例えば、−CFなど)を含む。
【0050】
医薬組成物に見られる「組成物」という用語は、活性成分と、担体を構成する不活性成分とを含む生成物、およびこれらの成分のうちのいずれか2つ以上の組合せ、錯化もしくは凝集によるか、またはこれらの成分のうちの1つ以上の解離によるか、またはこれらの成分のうちの1つ以上の他の種類の反応もしくは相互作用によって直接的または間接的に得られる任意の生成物を包含する。したがって、本発明で利用される医薬組成物は、活性成分と1種以上の薬学的に許容される担体を混合することによって作られる任意の組成物を包含する。
【0051】
メラノコルチン受容体「アゴニスト」とは、メラノコルチン受容体と相互作用し、限定するものではないが、アデニルシクラーゼの活性化を含む、メラノコルチン受容体に特徴的な薬理学的反応を開始することができる、内因性物質、薬剤物質、または化合物(本発明のペプチドなどの化合物を含む)を意味する。本発明については、MCR−1に対するアゴニストであるメラノコルチン受容体アゴニストが好ましい。
【0052】
「α−MSH」とは、ペプチドAc−Ser−Tyr−Ser−Met−Glu−His−Phe−Arg−Trp−Gly−Lys−Pro−Val−NH(配列番号2)ならびにその類似体およびホモログを意味し、これには、限定するものではないが、NDP−α−MSHが含まれる。
【0053】
「NDP−α−MSH」とは、ペプチドAc−Ser−Tyr−Ser−Nle−Glu−His−D−Phe−Arg−Trp−Gly−Lys−Pro−Val−NH(配列番号3)ならびにその類似体およびホモログを意味する。
【0054】
「EC50」とは、そのアゴニストの最大可能応答の50%を生じさせたアゴニスト(部分アゴニストを含む)のモル濃度を意味する。例として、MCR−1細胞発現系におけるcAMPアッセイで決定したときに、72nMの濃度で、その化合物の最大可能応答の50%を生じさせる試験化合物は、72nMのEC50を有する。別途特定しない限り、EC50決定と関連するモル濃度は、1リットル当たりのナノモル(nM)単位で示す。
【0055】
「Ki(nM)」とは、放射性リガンドまたは他の競合因子の非存在下で、平衡状態にある受容体の結合部位の半分に結合する競合化合物のモル濃度を表す、阻害剤の平衡解離定数を意味する。一般に、Kiの数値は、Kiが低ければ、親和性が高いというように、受容体に対する化合物の親和性と逆相関する。Kiは、ChengおよびPrusoff(Cheng Y.,Prusoff W.H.,Biochem.Pharmacol.22:3099−3108,1973)の以下の方程式を用いて決定することができる。

(式中、「リガンド」は放射性リガンドの濃度であり、Kは、放射性リガンドによる50%の受容体占有を生じさせる、放射性リガンドに対する受容体親和性の逆尺度である。)別途特定しない限り、Ki決定と関連するモル濃度はnM単位で示す。Kiは、特定の受容体(例えば、MCR−1、MCR−3、MCR−4またはMCR−5)、特定の種(例えば、ヒトまたはマウス)、および特定のリガンド(例えば、α−MSHまたはNDP−α−MSH)に関して表すことができる。
【0056】
「阻害」とは、既知の標準と比較した競合阻害アッセイでの減弱パーセント、または受容体結合の減少を意味する。したがって、「1μM(NDP−α−MSH)での阻害」とは、例えば、後に記載するアッセイ条件下での、所定量の試験すべき化合物(例えば、1μMの試験化合物)の添加によるNDP−α−MSHの結合の減少パーセントを意味する。例として、NDP−α−MSHの結合を阻害しない試験化合物は0%阻害を有し、NDP−α−MSHの結合を完全に阻害する試験化合物は100%阻害を有する。通常、後に記載するように、ラジオアッセイ(例えば、I125標識NDP−α−MSHを用いるもの)、またはランタニドキレート蛍光アッセイ(例えば、Eu−NDP−α−MSHを用いるもの)を競合阻害実験に用いる。しかしながら、放射性同位体以外の標識またはタグシステムの使用を含む、競合阻害を試験する他の方法が公知であり、一般に、競合阻害を試験するための当技術分野で公知の任意の方法を本発明で利用することができる。したがって、「阻害」は、試験化合物がメラノコルチン受容体に対するα−MSHの結合を減弱させるかどうかを決定するための1つの尺度であるということを理解することができる。
【0057】
「結合親和性」とは、その生物学的標的に結合する化合物または薬物の能力を意味し、本明細書ではKi(nM)と表される。
【0058】
一般に、「機能的活性」は、化合物により活性化されたときの、メラノコルチン受容体、特に、MCR−1またはhMCR−1などの、受容体のシグナリングの尺度、または受容体関連シグナリングの変化の尺度である。メラノコルチン受容体は、ヘテロ三量体Gタンパク質の活性化によってシグナル伝達を開始する。一態様では、メラノコルチン受容体は、アデニリルシクラーゼによるcAMPの産生を触媒するGαを介してシグナルを伝達する。したがって、アデニリルシクラーゼの刺激の測定、例えば、アデニリルシクラーゼの最大刺激の測定は、機能的活性の1つの尺度であり、かつ本明細書で例示される主な尺度である。しかしながら、機能的活性の代わりの尺度を本発明の実施で利用することができ、かつこれらは具体的に想定されており、本発明の範囲内に含まれることを理解すべきである。したがって、1つの例では、例えば、Mountjoy,K.G.,et al.,“Melanocortin receptor−medicated mobilization of intracellular free calcium in HEK293 cells”,Physiol.Genomics 5:11−19(2001)、またはKassack,M.U.,et al.,“Functional screening of G protein−coupled receptors by measuring intracellular calcium with a fluorescence microplate reader”,Biomol.Screening 7:233−246(2002)によって報告されているように、また、これらの文献中に開示されている方法を用いて、細胞内の遊離カルシウムを測定することができる。例えば、ラジオアッセイの使用による、ホスファチジルイノシトール4,5−二リン酸からのイノシトール三リン酸またはジアシルグリセロールの産生の測定によって、活性を測定することもできる。機能的活性のまた別の尺度は、例えば、Nickolls,S.A.,et al.,“Functional selectivity of melanocortin 4 receptor peptide and nonpeptide agonists:evidence for ligand specific conformational states”,J.Pharm.Exper.Therapeutics 313:1281−1288(2005)に開示されている方法を用いた調節経路の活性化によって生じる、受容体内在化である。機能的活性のさらに別の尺度は、Gタンパク質受容体の活性化と関連するヌクレオチドの変換(例えば、Gタンパク質αサブユニット上でのGDP(グアノシン二リン酸)のGTP(グアノシン三リン酸)への変換)、および変換率であり、これは、Manning,D.R.,“Measures of efficacy using G proteins as endpoints:differential engagement of G proteins through single receptors”,Mol.Pharmacol.62:451−452(2002)に開示されているような、グアノシン5’−(γ−[35S]チオ)−三リン酸を用いるラジオアッセイをはじめとする、任意の数の手段によって測定することができる。G共役タンパク質の活性化を測定するために、例えば、Chen,W.,et al.,“A colorimetric assay from measuring activation of Gs− and Gq−coupled signaling pathways”,Anal.Biochem.226:349−354(1995);Kent,T.C.,et al.,“Development of a generic dual−reporter gene assay for screening G−protein−coupled receptors”,Biomol Screening 5:437−446(2005);またはKotarsky,K.,et al.,“Improved receptor gene assays used to identify ligands acting on orphan seven−transmembrane receptors”,Pharmacology & Toxicology 93:249−258(2003)に開示されているような、遺伝子ベースの様々なアッセイが開発されている。Chenらの比色アッセイは、Hruby,V.J.,et al.,“Cyclic lactam α−melanocortin analogues of Ac−Nle−cyclo[Asp,D−Phe,Lys10] α−melanocyte−stimulating hormone−(4−10)−NH with bulky aromatic amino acids at position 7 shows high antagonist potency and selectivity at specific melanocortin receptors”,J.Med.Chem.,38:3454−3461(1995)に開示されているように、メラノコルチン受容体活性化の測定に用いられている。一般に、機能的活性は、G共役受容体の活性化および/またはシグナリングを決定する方法、さらには今後開発または報告される可能性のある方法を含む、任意の方法によって測定することができる。前述の文献の各々、およびその中に開示されている方法は、あたかも完全に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0059】
本明細書で使用される「治療する(treat)」、「治療する(treating)」および「治療(treatment)」という用語は、患者が特定の疾患または障害に罹患している間に起こる作用であって、疾患または障害の重症度を軽減するものを想定している。
【0060】
本明細書で使用するように、「治療的有効量」は、医師または他の臨床医によって治療されている哺乳動物において生物学的または医学的応答を誘発する本発明のペプチドを含む化合物の量を意味する。
【0061】
本明細書で使用するように、「予防的有効量」または「予防的」という用語は、患者が特定の疾患または障害に罹患し始める前に、医師または他の臨床医が予防、阻害、または緩和しようとしている医学的状態を有する哺乳動物の苦痛を予防もしくは阻害するか、または苦痛を緩和する本発明のペプチドを含む化合物の量を意味する。
【0062】
「循環性ショック」とは、対象(この対象はヒトであっても動物であってもよい)の身体の器官および/または組織が十分な血流を受け取らない全身性の医学的状態を意味する。循環性ショックとしては、例えば、血液量減少性ショック、心原性ショック、血管拡張性ショックなどの状態が挙げられる。循環におけるこれらの状態または機能不全には、細菌血液感染(敗血症性ショックもしくは感染)、重度のアレルギー反応(アナフィラキシーショック)、外傷(外傷性ショック)、重度の出血もしくは失血(出血性ショック)、血管の異常な開口を引き起こす神経学的機能不全(神経原性ショック)または内分泌関連のもの(内分泌性ショック)などの様々な原因があり得る。循環性ショックはさらに、身体の器官、組織、細胞または部分に対する虚血および虚血性障害をもたらすことがある。再灌流、すなわち、血流の回復によって、虚血−再灌流傷害が生じ、これもまた身体の器官、組織、または細胞に障害をもたらすことがある。
【0063】
「炎症状態」と呼ばれることもある「炎症性疾患」とは、1つには、炎症細胞および限定するものではないが、サイトカインをはじめとする内在性メディエーター化学物質(このメディエーター化学物質は、限定するものではないが、増大したNF−κB活性、増大したTNF−α産生、増大したIL−1産生および増大したIL−6産生のうちの1つまたは複数を含む)の動員を引き起こす特異的なTリンパ球反応または抗体−抗原相互作用などの炎症機構を特徴とする疾患または状態を意味する。
【0064】
2.0 臨床的適応症および有用性
本明細書に開示された組成物および方法は、医療用途と畜産または獣医学的用途の両方に用いることができる。通常、本方法はヒトで用いられるが、他の哺乳動物でも用いることができる。「患者」という用語は、哺乳動物個体を表し、本明細書を通しておよび特許請求の範囲においてそのように用いられる。本発明の主な用途は、ヒト患者を含むものであるが、本発明は、実験動物、家畜、動物園の動物、野生動物、ペット動物、競技用動物または他の動物に適用することができる。臨床的適応症および特定の有用性としては、以下のものが挙げられる。
【0065】
2.1 炎症性疾患、適応症、状態および症候群
本発明のペプチド、組成物および方法は、対象における炎症性疾患および炎症状態の治療に関するものである。そのように治療し得るいくつかの炎症性疾患および炎症状態がある。一態様では、炎症状態は、限定するものではないが、変形性関節炎、関節リウマチ、敗血症性関節炎、痛風および偽痛風、若年性特発性関節炎、スティル病および強直性脊椎炎を含む、関節炎の一形態、ならびに他の疾患に続発する関節炎、例えば、エリテマトーデス、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、乾癬性関節炎、反応性関節炎、ヘモクロマトーシス、肝炎、ウェゲナー肉芽腫症、血管炎症候群、ライム病、家族性地中海熱、回帰熱を伴う高免疫グロブリンD血症、TNF受容体関連周期性症候群ならびに炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎を含む)に続発する関節炎をはじめとする疾患に起因する。別の態様では、炎症状態は、クローン病、潰瘍性大腸炎、コラーゲン蓄積大腸炎、リンパ球性大腸炎、虚血性大腸炎、空置性大腸炎(diversion colitis)、ベーチェット症候群、感染性大腸炎および分類不能大腸炎などの炎症性腸疾患の一形態を含む疾患に起因する。別の態様では、炎症状態は、限定するものではないが、全身エリテマトーデス、シェーグレン症候群、強皮症、関節リウマチおよび多発性筋炎などの全身性症候群、または局所的な体組織、例えば、内分泌系(真性1型糖尿病、橋本甲状腺炎、アジソン病など)、皮膚系(尋常性天疱瘡)、血液系(自己免疫性溶血性貧血)、または神経系(多発性硬化症)のみに影響を及ぼす症候群を含む自己免疫疾患に起因する。したがって、自己免疫疾患には、上で論じた全身性症候群の他に、急性散在性脳脊髄炎、アジソン病、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、再生不良性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎、セリアック病、クローン病、妊娠性類天疱瘡、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本病、特発性血小板減少性紫斑病、川崎病、エリテマトーデス、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群、視神経炎、オード甲状腺炎(Ord’s thyroiditis)、天疱瘡、悪性貧血、原発性胆汁性肝硬変、ライター症候群、シェーグレン症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎、自己免疫性溶血性貧血およびウェゲナー肉芽腫症などの疾患および状態が含まれる。
【0066】
別の態様では、炎症状態は、慢性閉塞性気道疾患としても知られる、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に起因するか、またはこれに関連するものであり、この疾患は、例えば、慢性気管支炎、肺気腫、塵肺、肺新生物および他の肺障害などの、完全には元に戻らない気道における病的な気流制限を特徴とする疾患を含むが、これらに限定されない。他の炎症状態としては、上気道または下気道の疾患および障害、例えば、アレルギー性喘息、非アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、血管運動神経性鼻炎、アレルギー性結膜炎、非アレルギー性結膜炎など、ならびに外部の毒素または物質に関連する気道疾患、例えば、様々な形態の塵肺(炭鉱労働者の塵肺、石綿症、珪肺症、ボーキサイト線維症、ベリリウム症、もしくは鉄沈着症)、綿肺症または過敏性肺炎(農夫肺もしくは鳥飼育者肺)が挙げられる。炎症状態を含む他の肺疾患としては、急性呼吸促迫症候群が挙げられる。本発明のペプチドおよび組成物は、グルココルチコイドが、所望の薬理学的応答をもたらすのに効果がないかまたは十分でないかのいずれかである状態、例えば、COPD、喫煙者の喘息、ならびに全体としてであれ部分的であれ、肺における好酸球の蓄積、好中球の浸潤および活性化、肺胞マクロファージの動員および活性化、上皮細胞によるIL−8発現または増大したTNF−α発現を特徴とする他の状態の治療に特に有用である。気道障害または肺障害のために、一態様では、本発明のペプチドを全身送達し、別の態様では、本発明のペプチドを、例えば、吸入投与によって局所送達する。
【0067】
また別の態様では、炎症状態は、移植関連状態または症候群のいくつかの形態、例えば、移植片対宿主疾患、超急性拒絶、急性拒絶、または慢性拒絶に起因するか、またはこれらに関連する。移植片対宿主疾患は、同種骨髄移植のよく見られる合併症であるが、これは、他の移植、特に、夾雑物としてか、または故意に導入されるかのいずれかでT細胞が移植片に存在する移植が原因で起こることがある。超急性拒絶、急性拒絶または慢性拒絶は、腎臓、肝臓、膵臓、脾臓、子宮、心臓または肺などの身体器官、および骨、角膜、顔、手、陰茎または皮膚の移植が原因で起こることがある。一実施形態では、本発明のペプチドの1つまたは複数を含む医薬組成物を、例えば、身体の流体、器官または部分の移植の直前、移植中または移植後に予防的に投与して、移植関連状態または症候群を制限または予防する。別の実施形態では、移植される身体の流体、器官または部分に、本発明のペプチドの1つまたは複数を含む医薬組成物の溶液を灌流する。また別の実施形態では、本発明のペプチドの1つまたは複数を、移植拒絶のための1種以上の他の薬剤、例えば、シクロスポリンまたはタクロリムスをはじめとするカルシニューリン阻害剤、シロリムスまたはエベロリムスをはじめとするmTOR阻害剤、アザチオプリンまたはミコフェノール酸をはじめとする抗増殖剤、プレドニゾロンまたはヒドロコルチゾンをはじめとするコルチコステロイド、モノクローナル抗IL−2Rα受容体抗体、バシリキシマブもしくはダクリズマブ、またはポリクローナル抗T細胞抗体(例えば、抗胸腺細胞グロブリンもしくは抗リンパ球グロブリン)などの抗体と同時に、これらの薬剤と組み合わせて、またはこれらの薬剤と一連にして投与する。
【0068】
2.2 線維性および硬化性疾患、適応症、状態および症候群
本発明のペプチド、組成物および方法は、対象における線維性および硬化性疾患、適応症、状態および症候群の治療に関するものである。そのように治療し得るいくつかの線維性および硬化性疾患、適応症、状態および症候群がある。線維性および硬化性疾患、適応症、状態および症候群は、多くの場合、炎症性要素を含み、したがって、多くのものは炎症性疾患または状態と同じように分類することができ、かつ上記の第2.1節に記載されている。炎症性要素を含むことに加えて、線維性および硬化性疾患および状態は、特発性、毒性、遺伝性および/または薬剤誘導性障害であることもできる。一般に、線維性障害は、器官機能の喪失をもたらし得る細胞外マトリックス、主にI型コラーゲンの過剰産生を特徴とする。特定の理論に束縛されることを望まないが、MCR−1の作動は、ヒト皮膚線維芽細胞による形質転換増殖因子−β誘導性コラーゲン合成の抑制をもたらし、それにより、線維性および硬化性疾患、適応症、状態および症候群に対する治療的および/または予防的利益を提供することができると考えられている。そのようにして治療することができる代表的な線維性および硬化性疾患および状態としては、限局性強皮症、全身性硬化症、強皮症による皮膚の移植片対宿主病、特発性肺線維症、ブレオマイシン誘導性肺線維症、シクロスポリン誘導性腎症、肝硬変、肥厚性瘢痕、ケロイドなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
2.3 サイトカイン発現の増加に関連する疾患ならびに関連疾患、適応症、状態および症候群
様々なサイトカインの発現は、循環性ショック、虚血、再灌流傷害などに続発する炎症過程を含む、炎症過程で増加する。TNF−αは、主にマクロファージによって、また、他のタイプの細胞によっても産生される多面的サイトカインである。循環性ショック、虚血、再灌流傷害などに続発する炎症過程を含む、炎症過程で増加する他のサイトカインとしては、IL−1およびIL−6が挙げられる。TNF−αなどのサイトカインは多くの場合に有益な効果を有するが、顕著に増加したレベル(例えば、循環性ショック、虚血、再灌流傷害などに続発するもの)は、病的効果を有することがある。一態様では、低酸素組織または虚血組織の再灌流(例えば、循環性ショックに続発するもの)は、サイトカイン発現の増加を含む、炎症性応答をもたらす。
【0070】
一実施形態では、本発明は、本発明のペプチドの1つまたは複数を用いて、循環性ショック、虚血、再灌流傷害などに続発する炎症促進性サイトカインの産生および発現を減少させることを含む、炎症促進性サイトカインの産生および発現を減少させる方法に関する。限定するものではないが、TNF−α、IL−1およびIL−6の1つまたは複数を含む、炎症促進性サイトカインの産生および発現の減少は、本発明のペプチドの1つまたは複数を含む組成物の投与後すぐまたは短期間のうちに、好ましくは投与後少なくとも約40分以内に、より好ましくは1〜20分以内に、より好ましくは1〜15分以内に、および最も好ましくは約1〜10分以内に生じる。
【0071】
関連する実施形態では、本発明は、本発明のペプチドの1つまたは複数を用いて、抗炎症性サイトカインの産生および発現を増加させる方法に関する。限定するものではないが、IL−10を含む抗炎症性サイトカインの産生および発現の増加は、本発明のペプチドの1つまたは複数を含む組成物の投与後すぐまたは短期間のうちに、好ましくは投与後少なくとも約40分以内に、より好ましくは1〜20分以内に、より好ましくは1〜15分以内に、および最も好ましくは約1〜10分以内に生じる。
【0072】
2.4 皮膚科的疾患、適応症、状態および症候群
本発明のペプチド、組成物および方法はさらに、皮膚科的および美容的な疾患、適応症、状態および症候群の治療に関するものである。一態様では、本発明のペプチドおよび組成物は、メラニン形成細胞および関連細胞を刺激して、皮膚のメラニンのレベルを増大させるMCR−1アゴニストである。皮膚のメラニンのレベルを増大させることにより、UVR、太陽および光によって引き起こされる皮膚の光毒症および光過敏症からの保護を含む、紫外線照射(UVR)および日光からの保護が提供される。
【0073】
一態様では、本発明のペプチド、組成物および方法は、皮膚の疾患、適応症、状態および症候群、例えば、尋常性座瘡(一般に、にきびと呼ばれる)、アトピー性皮膚炎(一般に、アトピー性湿疹または湿疹と呼ばれる)、多型性光線疹、乾癬、酒さ、脂漏性皮膚炎、白斑、ポルフィリン症、晩発性皮膚ポルフィリン症、骨髄性プロトポルフィリア、日光じんましん、色素性じんましんまたは色素性乾皮症の予防的および/または治療的治療に利用することができる。別の態様では、本発明のペプチド、組成物および方法は、光感受性または光応答性ウイルス感染症、例えば、単純ヘルペスウイルス(一般に、感染部位によって、ヘルペスおよび性器ヘルペスと呼ばれる)、ヒトパピローマウイルスならびに水痘帯状疱疹ウイルスを予防、制限または治療するために利用することができる。別の態様では、本発明のペプチド、組成物および方法は、皮膚の癌を予防、制限または治療するために利用することができ、これには、前癌状態における使用、および光線性角化症、基底細胞癌、メラノーマまたは扁平上皮細胞癌における使用が含まれる。別の態様では、本発明のペプチド、組成物および方法は、光線療法(例えば、光線力学的療法)をはじめとする様々な療法の有害作用を予防または制限するために利用することができる。また別の態様では、本発明のペプチド、組成物および方法は、日焼けを誘導するために、白髪を減らすために、またはメラニン産生の増加に関する同様の目的および関連する目的のために利用することができる。
【0074】
本発明のペプチドは、例えば、オイル、軟膏(ointment)、クリーム、ゲル、軟膏(salve)などによる皮膚への直接的な適用を含む、種々の手段のいずれかによるか、またはインプラント(例えば、皮下溶解性インプラント)によるものを含む、全身投与によって投与することができる。
【0075】
2.5 サイトカインおよび/または増殖因子応答性癌
中皮腫などの特定の癌は、サイトカインおよび増殖因子の増殖促進性の影響に感受性が高いことが報告されており、MCR−1に選択的なペプチドによって治療することができる。Canania,A.,et al.,“Autocrine inhibitory influences of α−melanocyte−stimulating hormone in malignant pleural mesothelioma”,J.Leukoc.Biol.75:253−259(2004)。そのように治療し得る癌としては、MCR−1のmRHAおよびその受容体タンパク質を発現することが知られている胸膜中皮腫、ならびに限定するものではないが、腺癌(例えば、肺腺癌)をはじめとする、MCR−1を発現する他の腫瘍が挙げられる。
【0076】
2.6 眼の疾患、適応症、状態および症候群
限定するものではないが、サイトカイン産生の増大を含む、炎症を特徴とするいくつかの眼の疾患、適応症、状態および症候群がある。1つの例は、人口の約10〜20%に影響する眼の疾患であるドライアイ疾患である。この疾患は、年齢とともに人口のより大きな割合に累進的に影響し、これらの患者の大部分は女性である。さらに、ほとんど誰もが、時々、例えば、長時間視作業をすること(例えば、コンピュータでの仕事)、乾燥環境にいること、眼の乾燥を引き起こす薬物を使用することなどの特定の状況下で、眼の刺激、または病気としてのドライアイの症状および/もしくは徴候を経験する。ドライアイを罹患している個体では、1つ以上の涙液成分の不十分または不健全な産生の結果として、眼の表面を通常保護する涙液の保護層が損なわれている。これは、眼の表面を露出させ、最終的に、表面細胞の乾燥および損傷を促進することがある。ドライアイの徴候および症状としては、限定するものではないが、角膜炎、結膜および角膜の汚れ、発赤、ぼやけた視覚、涙液膜の崩壊時間の短縮、涙液の産生、涙液の量、および涙液流の減少、結膜の発赤の増加、涙液膜内の過剰な破片、眼の乾燥、眼のざらつき、眼の灼熱感、眼内の異物感、涙の分泌過剰、光恐怖症、眼部刺痛、屈折障害、眼の過敏症、および眼の刺激が挙げられる。患者は、これらの症状の1つ以上を経験し得る。過剰に涙ぐむ応答は、直観に反するように思われ得るが、これは、ドライアイによって引き起こされる刺激および異物感に対する自然な反射応答である。眼のアレルギーとドライアイ症状の組合せによる眼の痒みを経験する患者もいる。
【0077】
循環ホルモンのレベル、様々な自己免疫疾患(例えば、シェーグレン症候群および全身エリテマトーデス)、PRKまたはLASIKを含む眼の手術、多くの薬物、環境条件、コンピュータの使用などの視作業、眼の疲労、コンタクトレンズ着用、および角膜過敏症などの機械的影響、部分的閉瞼、表面不整(例えば、翼状片)、および瞼の不整(例えば、眼瞼下垂症、眼瞼内反/眼瞼外反、瞼裂斑)をはじめとする、患者のドライアイの徴候または症状に影響を及ぼし得る多くの変動要素があり得る。デフロスターを作動させている車の中に座ることまたは乾燥気候地帯に住むことなどの、低湿度の環境(例えば、脱水を引き起こす環境)は、ドライアイ症状を悪化させるかまたはドライアイ症状を引き起こすことがある。さらに、視作業は、症状を悪化させることがある。症状に大きく影響を及ぼし得る作業としては、長時間のテレビの視聴またはコンピュータの使用が挙げられ、これらの場合には、まばたきの割合が減少する。
【0078】
ブドウ膜炎は、眼の中間層またはブドウ膜の炎症を伴う眼疾患であり、眼の内部を侵す任意の炎症過程を含むことも理解され得る。ブドウ膜炎は、前部ブドウ膜炎、中間部ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎および全ブドウ膜炎の形態を含み、大部分のブドウ膜炎症例は、虹彩および前房の炎症を伴って、前部の位置で起こる。この状態は、1回の症状発現として起こり、適切な処置によって治まり得るか、または再発性もしくは慢性の性質で起こり得る。症状としては、赤い目、充血した結膜、疼痛および視力低下が挙げられる。徴候としては、毛様体血管の拡張、前房における細胞および炎症の存在、ならびに角膜の裏表面の角膜沈着物が挙げられる。中間部ブドウ膜炎は、炎症およびガラス体腔における炎症細胞の存在を含み、後部ブドウ膜炎は、網膜および脈絡膜の炎症を含む。ブドウ膜炎は、急性後部多発性小板状色素上皮症、強直性脊椎炎、ベーチェット病、散弾状網脈絡膜症、ブルセラ症、単純ヘルぺス、帯状ヘルペス、炎症性腸疾患、若年性関節リウマチ、川崎病、レプトスピラ症、ライム病、多発性硬化症、乾癬性関節炎、ライター症候群、サルコイドーシス、梅毒、全身エリテマトーデス、トキソカラ症、トキソプラズマ症、結核、フォークト・小柳・原田症候群、ホイップル病または結節性多発動脈炎をはじめとする、いくつかの疾患および障害のいずれかに続発する場合がある。
【0079】
一実施形態では、本発明は、本発明のペプチドの1つまたは複数を前述の眼の疾患、適応症、状態および症候群のいずれかの治療に用いる方法に関する。そのような治療は、点眼薬、軟膏、ゲル、洗浄液、インプラント、プラグまたは本発明のペプチドの1つまたは複数を眼の表面に送達する他の手段および方法による治療を含むことができる。
【0080】
2.7 虚血ならびに関連疾患、適応症、状態および症候群
虚血は、任意の身体器官、組織、細胞、または部分、特に、その減少または停止が、身体器官、組織、細胞、または部分に対する虚血性障害をもたらすか、またはその可能性が高い場所への血液供給の任意の減少または停止を指す。「虚血発作」は、任意の一時的または恒久的な虚血を指す。虚血は、血管系の任意の狭窄もしくは閉塞に起因する場合もあるし、または循環性ショック(例えば、出血性ショック、血液量減少性ショックなど)に起因する場合もある。血流の減少または欠如は、身体の罹患部位の酸素の減少または欠如をもたらし、また、様々なサイトカインや他の物質などの炎症性疾患メディエーター化学物質の増大をもたらし得る。心臓手術や臓器移植などの特定の外科的処置の間に、血液の流れが一時的に停止され、その後、再開され(再灌流)、これが虚血−再灌流傷害をもたらす。心臓発作時に、心臓に供給される血液が停止され、これも、梗塞に発展し得る虚血をもたらす。心臓発作を軽減する現在の治療は、例えば、血栓溶解剤または冠動脈血管形成術を用いることによる、心臓の虚血領域の再灌流を必要とする。
【0081】
本発明は、特に、腎虚血に続発する肺傷害を含む、腎虚血による傷害の予防、心筋梗塞後の虚血性心臓傷害の予防または制限、限定するものではないが、心筋梗塞、卒中などをはじめとする心臓血管傷害後の虚血性脳傷害の予防または制限に適用される。神経保護は、脳虚血または脳卒中患者、特に、低血圧症を併発している患者への本発明の組成物の投与によって提供される。本発明は、特に、心臓、腎臓、肝臓、肺、膵臓または小腸の移植をはじめとする臓器移植における虚血性臓器損傷の予防または制限にさらに適用される。一態様では、本発明の医薬組成物は、移植臓器の灌流に利用することができ、この灌流は、臓器移植前であっても、臓器移植中であっても、臓器移植後であってもよい。
【0082】
一実施形態では、本発明は、本発明のペプチドの1つまたは複数を用いて、虚血によって引き起こされる傷害から患者の心臓、脳または他の器官を保護する方法に関する。虚血に対する保護効果は、本発明のペプチドの1つまたは複数を含む組成物の投与後すぐまたは短期間のうちに、好ましくは投与後少なくとも約40分以内に、より好ましくは1〜20分以内に、より好ましくは1〜15分以内に、および最も好ましくは約1〜10分以内に生じる。
【0083】
虚血は、種々の疾患または状態のいずれかに起因する場合もあり、一実施形態では、本発明は、本発明のペプチドの1つまたは複数を用いて、虚血によって生じる傷害から患者の器官を保護する方法に関するものであり、この虚血は、疾患または状態によって引き起こされる。そのような疾患または状態には、例として、血栓形成を伴うアテロームなどのアテローム性動脈硬化症、心臓の栓塞症もしくは任意の器官から出ている血管の栓塞症、血管痙攣、心臓疾患による低血圧症、感染症もしくはアレルギー反応をはじめとする全身性疾患による低血圧症、または1つ以上の毒性化合物もしくは薬物の投与、摂取もしくは1つ以上の毒性化合物もしくは薬物へのその他の曝露により生じる低血圧症が含まれるが、これらに限定されない。虚血は、二次性虚血である場合もあり、別の実施形態では、本発明は、本発明のペプチドの1つまたは複数を用いて、二次性虚血によって生じる傷害から患者の器官を保護する方法に関する。そのような二次性虚血は、真性糖尿病、高脂血症、高リポタンパク血症、脂質異常症、バージャー病(閉塞性血栓性血管炎とも呼ばれる)、高安動脈炎、側頭動脈炎、川崎病(リンパ節症候群とも呼ばれる)、皮膚粘膜リンパ節疾患、乳児結節性動脈周囲炎、心臓血管梅毒、ならびに様々な結合組織の疾患および障害などの疾患または状態に続発する場合がある。
【0084】
2.8 虚血−再灌流傷害ならびに関連疾患、適応症、状態および症候群
虚血−再灌流は、身体組織への血流の遮断、およびその後の、また多くの場合、突然の組織への血流の再開である。虚血後の血流の再開は、機能的な組織を維持するのに不可欠であるが、再灌流それ自体は、組織に有害であることが知られている。虚血と再灌流は両方とも、組織壊死の重要な寄与因子であることが知られている。いくつかの機構が、虚血−再灌流傷害と関連する組織損傷の発生の原因として働くと見られている。
【0085】
誘導低体温法(induced hypothermia)、再灌流障害コントロール(controlled reperfusion)、および虚血プレコンディショニングなどの、再灌流傷害を制限する様々な方法が記載されている。誘導低体温法は、中等度低体温の誘導であり、再灌流傷害と関連する化学反応の多くを抑制すると考えられている。再灌流障害コントロールは、高浸透圧となり、アルカローシスとなり、かつ基質が豊富となるように改変された血液を用いて、低圧で組織を再灌流することにより、再灌流の初期をコントロールすることを指す。虚血プレコンディショニングは、より長時間の虚血イベント時に細胞の代謝を鈍化させることによって短時間の虚血イベントを意図的に引き起こし、保護効果を持たせることである。こうした治療は、外科手術時(例えば、予定された心臓手術の前後)においては有用であり得るが、緊急時には不可能である。
【0086】
本発明は、特に、腎再灌流に続発する肺損傷を含む、腎再灌流傷害の重症度の予防または制限、心筋梗塞後の再灌流心臓傷害の予防または制限、限定するものではないが、心筋梗塞、卒中などをはじめとする心臓血管傷害後の再灌流脳傷害の予防または制限に適用される。本発明は、特に、心臓、腎臓、肝臓、肺、膵臓または小腸の移植をはじめとする臓器移植における再灌流臓器損傷の予防または制限にさらに適用される。一態様では、本発明の医薬組成物は、移植臓器の灌流に利用することができ、この灌流は、臓器移植前であっても、臓器移植中であっても、臓器移植後であってもよい。
【0087】
一実施形態では、本発明は、本発明のペプチドの1つまたは複数を用いて、再灌流によってまたは再灌流の間に引き起こされる傷害を含む、虚血−再灌流傷害によって引き起こされる傷害から患者の心臓、脳または他の器官を保護する方法に関する。虚血−再灌流傷害に対する保護効果は、本発明のペプチドの1つまたは複数を含む組成物の投与後すぐまたは短期間のうちに、好ましくは投与後少なくとも約40分以内に、より好ましくは1〜20分以内に、より好ましくは1〜15分以内に、および最も好ましくは約1〜10分以内に生じる。
【0088】
2.9 循環性ショックならびに関連疾患、適応症、状態および症候群
本発明のペプチド、組成物および方法は、対象の循環性ショックの治療に利用することができる。本明細書で提供される組成物および方法は、ステージIのショック、ステージIIのショックまたはステージIIIのショックを治療するために用いることができる。特定の実施形態の一つでは、本発明の方法は、初期段階のショックを治療するために用いられるが、この初期段階のショックは、身体の代謝要求に応えるには不十分であるが、その他の面で、顕著な症状を生じさせるほど低くはない心拍出量を特徴とする。患者は、不安と警戒心を抱き、呼吸が増加する場合がある。
【0089】
「代償性ショック」または「非進行性ショック」と呼ばれることもある「ステージIのショック」とは、身体が血流または灌流の減少を検出し、最も重要な身体器官への灌流を再開するかまたは最も重要な身体器官に血流を向けるためにいくつかの反応機構のうちの1つまたは複数を活性化し始めるときに生じる状態を意味する。ステージIのショックは無症候性であることもあるが、これには、限定するものではないが、わずかな血流または灌流、急な心拍または増加した心拍、浅い呼吸または不規則な呼吸、低血圧、高血圧、蒼白およびチアノーゼなどの症状が含まれる場合もある。
【0090】
「非代償性ショック」または「進行性ショック」と呼ばれることもある「ステージIIのショック」とは、身体の代償機構が機能しなくなり始め、器官灌流を正常に回復するかまたはそれを維持することができないときに生じる状態を意味する。ステージIIのショックの症状としては、精神錯乱、不安神経症、見当識障害ならびに脳の酸素欠乏、胸痛、心拍数の増加、乏尿、多臓器機能不全、血圧の低下(低血圧)、呼吸促迫、衰弱および瞳孔拡張を示す他の精神障害が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
「不可逆性ショック」と呼ばれることもある「ステージIIIのショック」とは、身体の器官および組織が恒久的に影響を受けるような程度まで、灌流または血流の低下状態が存在した後に生じる状態を意味する。そのような症状としては、多臓器不全、腎不全、昏睡、四肢の血液貯留および死が挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
本発明は、患者の出血性ショックを治療または予防するのに使用される組成物および患者の出血性ショックを治療または予防する方法を提供するものであり、この方法は、本発明のペプチドの1つまたは複数を含む組成物を、血液の喪失に罹患していると診断された患者に投与することを含む。血液の喪失は、例えば、全血液量の約15%を上回る血液の喪失、または対象の全容積の20%、25%、30%、35%、40%、もしくは50%を上回る血液の喪失などの、対象の血液量のパーセンテージとして測定することができるが、そうする必要はない。あるいは、血液の喪失は、例えば、ヒト対象における約750mL、1000mLの喪失、約1500mLの喪失、もしくは約2000mLの喪失、またはそれを上回る喪失などの、特定の対象において出血性ショックを引き起こすのに十分な任意の量の血液量の低下に関して測定することができるが、そうする必要はない。血液の喪失は、例えば、対象の正常な収縮期血圧よりも約20mmHg、30mmHg、40mmHg、50mmHg、60mmHg、70mmHg、80mmHg、90mmHgもしくは100mmHg低いか、または100mmHgを超えて低い収縮期血圧の低下などの、収縮期血圧の低下に関して測定することもできる。特定の実施形態では、対象は、限定するものではないが、手術、輸血または出産などの、医療処置を受けているか、または受けたことがある。他の特定の実施形態では、対象は、例えば、限定するものではないが、自動車事故、労働災害、または銃創によって生じた外傷性傷害に罹患している。
【0093】
本発明のさらなる実施形態では、本組成物および方法は、心原性ショック、血液量減少性ショックおよび血管拡張性ショックを治療するために用いられ、これらは各々、前述のステージのショックのいずれかであることができる。本発明の特定の実施形態の一つでは、本方法は、心原性ショックを治療するために用いられる。心原性ショックは、一般的に言えば、心臓が十分な血液を送り出さない心機能不全によって引き起こされる低血流または低灌流である。原因としては、限定するものではないが、塞栓、虚血、逆流および弁機能不全などの、心室の充満または空洞化を妨害する任意の状態を挙げることができる。本発明の別の特定の実施形態では、本方法は、血管拡張性ショックを治療するために用いられる。血管拡張性ショックは、不十分な血流を生じさせる重度の静脈または細動脈拡張によって引き起こされる。限定するものではないが、脳外傷、薬物または毒物による毒性、アナフィラキシー、肝不全、菌血症および敗血症をはじめとする、いくつかの既知の原因が、血管拡張性ショックの一因である。本発明の別のより具体的な実施形態では、本方法は、敗血症または菌血症に起因するショックを治療するために用いられる。さらにより具体的な実施形態では、本組成物および方法は、ステージI、IIまたはIIIの敗血症性ショックまたは菌血症性ショックを治療するために用いられる。また別の実施形態では、本発明のおよび方法は、血液量減少性ショックを治療するために用いられる。血液量減少性ショックは、一般的に言えば、血管内容積の減少であり、この血管内容積の減少は、相対的または絶対的であり得る。限定するものではないが、潰瘍、胃腸傷害、外傷、事故、手術、および動脈瘤などの状態による出血は、血液量減少性ショックを引き起こす場合があるが、他の体液の喪失も血液量減少性ショックを引き起こす場合がある。例えば、腎液喪失、血管内液の喪失、水または他の腹水の喪失は、血液量減少性ショックの一因となる場合がある。本発明の特定の実施形態の一つでは、本組成物、および本発明のペプチドの1つまたは複数の投与を含む方法は、血液量減少性ショックを治療するために用いられる。さらにより具体的な実施形態では、本組成物および方法は、ステージI、ステージIIまたはステージIIIの血液量減少性ショックを治療するために用いられる。
【0094】
出血性ショックをはじめとする循環性ショックは、患者の1つ以上の内部器官または血管内での一部制御されたまたは制御されていない出血によって生じる場合もある。出血は、例として、破裂性大動脈瘤、解離性大動脈、潰瘍、外傷または他の胃腸出血によるものを含む、任意の原因によって生じる場合がある。場合によっては、患者は、低血圧を含み得るが、内出血源が不明である、循環性ショックまたは血液量減少の徴候を示す。
【0095】
一実施形態では、本発明は、本発明のペプチドの1つまたは複数を用いて、循環性ショックによって引き起こされる傷害から患者の心臓、脳または他の器官を保護する方法に関する。循環性ショックに対する保護効果は、本発明のペプチドの1つまたは複数を含む組成物の投与後すぐまたは短期間のうちに、好ましくは投与後少なくとも約40分以内に、より好ましくは1〜20分以内に、より好ましくは1〜15分以内に、および最も好ましくは約1〜10分以内に生じる。
【0096】
2.10 メラノーマおよび他の適応症に対する標的イメージングおよび細胞傷害性療法
本発明のペプチド、組成物および方法は、例えば、放射性核種を本発明のペプチドと組み合わせて用いる診断的イメージングによって、1つには、比較的高いMCR−1発現を特徴とするメラノーマおよび他の癌または疾患もしくは状態のイメージングに利用することができる。診断的イメージングのために、通常、本発明のペプチドは、リンカー、例えば、本発明のペプチドを放射性核種に共役させる架橋剤の使用によって放射性核種にコンジュゲートされる。放射性核種は、γ線検出器もしくはγ線カメラ(例えば、単光子放出コンピュータ断層撮影法)を用いてイメージングし得るγ放出体であるか、または陽電子放出断層撮影法を用いてイメージングし得る陽電子放出体であることが好ましい。そのように利用し得るγ放出体としては、とりわけ、99mTc、111In、123Iおよび67Gaが挙げられる。そのように利用し得る陽電子放出体としては、11C、13N、15Oおよび18Fが挙げられる。
【0097】
関連する態様では、本発明のペプチド、組成物および方法は、例えば、毒素をはじめとする化学療法剤、または放射線療法剤を本発明のペプチドと組み合わせて利用することによって、1つには、比較的高いMCR−1発現を特徴とする、メラノーマ、他の癌または疾患または状態の細胞傷害性療法に利用することができる。化学療法剤としては、例えば、アルキル化剤、代謝拮抗物質、アントラサイクリン、植物アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤、および他の抗腫瘍剤などの、任意の抗新生物薬または抗新生物化学物質が挙げられる。アルキル化剤の非限定的な例としては、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシルおよびイフォスファミドが挙げられ、代謝拮抗物質の例としては、アザチオプリンおよびメルカプトプリンが挙げられ、アントラサイクリンの例としては、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシンおよびミトキサントロンが挙げられ、植物アルカロイドの例としては、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビンおよびビンデシンなどのビンカアルカロイド類ならびにパクリタキセルおよびドセタキセルなどのタキサン類が挙げられ、トポイソメラーゼ阻害剤の例としては、イリノテカンおよびトポテカンなどのカンプトテシン類ならびにアムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシドおよびテニポシドなどのII型トポイソメラーゼが挙げられる。しかしながら、標的化細胞傷害性療法での使用に好適な任意の薬剤をそのように利用することができる。そのように利用し得る放射線療法剤の非限定的な例としては、とりわけ、131I、125I、211At、186Re、188Re、90Y、153Sm、212Biおよび32Pが挙げられる。
【0098】
診断的イメージングまたは細胞傷害性療法剤を、例えば、非放射性同位体の代わりに、とりわけ、11C、13N、15Oを使用することなどによって、本発明のペプチドに組み込むことができるか、例えば、ハロゲン化もしくは他の直接的な複合体形成法などによって、本発明のペプチドに直接的に結合させることができるか、またはリンカーもしくはキレート化単位によるコンジュゲーションなどによって、本発明のペプチドに間接的に結合させることができる。リンカー単位は当技術分野で周知であり、遊離反応基間の少なくとも1つのジスルフィド結合、チオエーテル結合または共有結合をはじめとする、化学的に結合したコンジュゲートを含むが、これらに限定されない。代表的な架橋試薬およびコンジュゲート化試薬は、とりわけ、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,169,603号明細書、同第7,820,164号明細書および同第5,443,816号明細書ならびに米国特許出願公開第2009/0297444号明細書に開示されている。
【0099】
3.0 特定の適応症のための組合せ療法
本発明のペプチド、組成物および方法は、1種以上の他の薬学的に活性のある化合物と組み合わせて投与することによって、前述の疾患、適応症、状態もしくは症候群のいずれか、またはMCR−1介在性もしくは応答性である任意の疾患、適応症、状態もしくは症候群を治療するために用いることができる。そのような組合せ投与は、本発明のペプチドともう1つの他の薬学的に活性のある化合物の両方を含む単回投与形態によるものであることができ、そのような単回投与形態としては、錠剤、カプセル、スプレー、吸入粉末、注射液などが挙げられる。あるいは、組合せ投与は、一方の投与形態が本発明のペプチドを含み、もう一方の投与形態が別の薬学的に活性のある化合物を含む、2つの異なる投与形態の投与によるものであることができる。この場合、これらの投与形態は、同じものでも異なるものでもよい。「共投与する」という用語は、組合せ療法における少なくとも2つの化合物の各々を、それぞれの生物学的活性または効果の期間が重複する期間内に投与することを示す。したがって、この用語は、化合物の連続投与および同時投与を含み、この場合、一方の化合物は本発明のペプチドの1つまたは複数である。2種以上の化合物を共投与する場合、この2種以上の化合物の投与経路は、同じである必要はない。組合せ療法を限定するつもりはないが、以下に、利用し得る特定の組合せ療法を例示する。
【0100】
3.1 抗炎症剤との組合せ療法
炎症関連疾患、適応症、状態および症候群の治療のために、本発明のペプチドを、1種以上の抗炎症剤との組合せ療法(共投与によるものを含む)で用いることができる。抗炎症剤の1つのクラスは、グルココルチコイド(限定するものではないが、酢酸コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、プレドニゾン、酢酸フルドロコルチゾン、酢酸デオキシコルチコステロンおよびアルドステロンをはじめとするコルチゾンを含む)である。組合せ療法(共投与によるものを含む)で使用し得る他の抗炎症剤としては、アスピリン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)(例えば、イブプロフェンおよびナプロキセン)、TNF−α阻害剤(例えば、テニダップおよびラパマイシンもしくはそれらの誘導体)、またはTNF−αアンタゴニスト(例えば、インフリキシマブ、OR1384)、シクロオキシゲナーゼ阻害剤(すなわち、COX−1および/もしくはCOX−2阻害剤、例えば、ナプロキセン(登録商標)もしくはセレブレックス(登録商標))、CTLA4−Igアゴニスト/アンタゴニスト、CD40リガンドアンタゴニスト、IMPDH阻害剤(例えば、ミコフェノレート(セルセプト(登録商標))、インテグリンアンタゴニスト、α4β7インテグリンアンタゴニスト、細胞接着阻害剤、インターフェロンγアンタゴニスト、ICAM−1、プロスタグランジン合成阻害剤、ブデソニド、クロファジミン、p38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ阻害剤、タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)阻害剤、IKK阻害剤、過敏性腸症候群の治療のための療法(例えば、ゼルマック(登録商標)およびマキシ−K(登録商標)開口薬、例えば、米国特許第6,184,231号明細書に開示されているもの)、または他のNF−κB阻害剤(例えば、コルチコステロイド、カルホスチン、CSAID、米国特許第4,200,750号明細書に開示されているような4−置換イミダゾ[1,2−A]キノキサリン;インターロイキン−10、サリチル酸塩、一酸化窒素、および他の免疫抑制剤;ならびに核転座阻害剤(例えば、デオキシスペルグアリン(DSG))が挙げられる。
【0101】
3.2 ホスホジエステラーゼ阻害剤との組合せ療法。
特定の用途および適応症のために、炎症細胞活性と関連するヌクレオチドメッセンジャーである環状アデノシン3’,5’一リン酸(cAMP)の産生を増大させるか、またはそのレベルを維持することが望ましい。本発明のペプチドは、cAMPの細胞内レベルを増大させ、cAMPの分解を阻害する化合物または物質と共投与することができる。cAMPは、ホスホジエステラーゼ(PDE)によって加水分解されて、不活性形態になる。したがって、PDEを阻害する化合物または物質は、利用可能なcAMPの維持および/または増大をもたらすことができる。PDE阻害剤として知られている化合物のクラスは、喘息、COPDおよび急性呼吸促迫症候群などの炎症性疾患の治療における使用について広く研究されている。好ましいのは、1型、2型、3型、4型、7型、8型、10型または11型PDEの阻害剤であり、一態様では、これには、例として、ロリプラム、シロミラスト、イブジラスト、およびピクラミラストなどの、選択的4型PDE阻害剤または1つの特定のタイプのPDE4アイソザイムに対する選択性を有する阻害剤である、cAMP−PDE阻害剤が含まれる。一般に、本発明の方法および組成物は、その各々が参照により本明細書に組み込まれる以下の米国特許または米国特許出願の1つまたは複数に記載されている1種以上のcAMP−PDE阻害剤の使用を含むことができる:米国特許出願公開第20090221664号明細書、「Pharmaceutical Compositions of Muscarinic Receptor Antagonist」;米国特許出願公開第20090054382号明細書、「Compositions of Phosphodiesterase Type IV Inhibitors」;米国特許出願公開第20090017036号明細書、「Pharmaceutical Compositions for Treatment of Respiratory and Gastrointestinal Disorders」;米国特許出願公開第20080292562号明細書、「Medicaments for Inhalation Comprising PDE IV Inhibitors and Enantiomerically Pure Glycopyrrolate Salts」;米国特許出願公開第20080085858号明細書、「Pharmaceutical Composition」;米国特許出願公開第20080045718号明細書、「Process and intermediates for the synthesis of 2−(quinolin−5−yl)−4,5 disubstituted−azole derivative」;米国特許出願公開第20070287689号明細書、「Therapeutic and/or Preventive Agents for Chronic Skin Diseases」;米国特許出願公開第20060239927号明細書、「Drug for airway administration」;米国特許第7,544,675号明細書、「Chemical compounds with dual activity,processes for their preparation and pharmaceutical compositions」;米国特許第7,459,451号明細書、「Pyrazolopyridine derivatives」;米国特許第7,317,009号明細書、「Pyrrolopyridazine derivatives」;米国特許第7,312,328号明細書、「Benzoylpyridazines」;米国特許第7,153,854号明細書、「Pyrrolopyridazine derivatives」;米国特許第7,115,623号明細書、「PDE IV Inhibitors」;米国特許第6,924,292号明細書、「Furoisoquinoline derivatives,process for producing the same and use thereof」;米国特許第6,872,382号明細書、「Use of selective PDE IV inhibitors to treat dry eye disorders」;米国特許第6,765,095号明細書、「2,3−disubstituted pyridine derivative,process for the preparation thereof,pharmaceutical composition containing the same,and intermediate therefor」;米国特許第6,740,662号明細書、「Naphthyridine derivatives」;米国特許第6,683,186号明細書、「2,3−Disubstituted pyridine derivative,process for the preparation thereof,pharmaceutical composition containing the same,and intermediate therefor」;米国特許第6,656,959号明細書、「PDE IV inhibiting pyridine derivatives」;米国特許第6,642,250号明細書、「1,8−naphthyridin−2(1H)−one derivatives」;米国特許第6,555,557号明細書、「2,3−disubstituted pyridine derivatives,process for the preparation thereof,drug compositions containing the same and intermediates for the preparation」;米国特許第6,440,979号明細書、「Aryl isoguanines」;米国特許第6,436,965号明細書、「PDE IV inhibiting amides,compositions and methods of treatment」;米国特許第6,417,190号明細書、「Tricyclic nitrogen heterocycles as PDE IV inhibitors」;米国特許第6,413,975号明細書、「Purine derivatives having phosphodiesterase IV inhibition activity」;米国特許第6,403,805号明細書、「1,3−dihydro−1−(phenylalkyl)−2H−imidazol−2−one derivatives」;米国特許第6,372,770号明細書、「Benzoxazoles」;米国特許第6,365,606号明細書、「6,5−fused aromatic ring systems having enhanced phosphodiesterase IV inhibitory activity」;米国特許第6,310,205号明細書、「Hypoxathine compounds」;米国特許第6,306,583号明細書、「Human brain phosphodiesterase」;米国特許第6,268,373号明細書、「Trisubstituted thioxanthines」;米国特許第6,248,769号明細書、「Phenyl−triazole compounds for PDE−IV inhibition」;米国特許第6,248,768号明細書、「Benzimidazole derivatives and pharmacologically acceptable salts thereof」;米国特許第6,248,746号明細書、「(3−(arylalkyl)xanthines」;米国特許第6,211,222号明細書および同第6,127,398号明細書、「Substituted indazole derivatives and related compounds」;米国特許第6,211,203号明細書、「Benzofuran−4−carboxamides」;米国特許第6,200,993号明細書、「Heterosubstituted pyridine derivatives as PDE4 inhibitors」;米国特許第6,191,138号明細書、「Phenanthridines」;米国特許第6,180,650号明細書、「Heterosubstituted pyridine derivatives as PDE4 inhibitors」;米国特許第6,136,821号明細書、「Naphthyridine derivatives」;米国特許第6,054,475号明細書、「Substituted dihydrobenzofuran−based phosphodiesterase 4 Inhibitors useful for treating airway disorders」;米国特許第6,043,263号明細書、「(2,3−dihydrobenzofuranyl)−thiazoles as phosphodiesterase inhibitors」;米国特許第6,011,037号明細書、「Thiazole derivatives with phosphodiesterase−inhibiting action」;米国特許第5,972,927号明細書、「Diazepinoindoles as phosphodiesterase 4 inhibitors」;米国特許第5,919,801号明細書、「N−substituted piperidines as PDE4 inhibitors」;米国特許第6,204,275号明細書、「PDE IV Inhibiting compounds,compositions and methods of treatment」;米国特許第6,143,782号明細書、「Anti−inflammatory and anti−asthma treatment with reduced side effects」;米国特許第6,103,749号明細書、「Aryl imidazole compounds having phosphodiesterase IV activity」;米国特許第6,096,768号明細書、「Compounds containing phenyl linked to aryl or heteroaryl by an aliphatic or heteroatom containing linking group」;米国特許第6,075,016号明細書、「6,5−fused aromatic ring systems having enhanced phosphodiesterase IV inhibitory activity」;米国特許第6,040,447号明細書、「Purine compounds having PDE IV inhibitory activity and methods of synthesis」;米国特許第6,034,089号明細書、「Aryl thiophene derivatives as PDE IV inhibitors」;米国特許第6,020,339号明細書、「Aryl furan derivatives as PDE IV inhibitors」;米国特許第5,935,978号明細書、「Compounds containing phenyl linked to aryl or heteroaryl by an aliphatic or heteroatom containing linking group」;米国特許第5,935,977号明細書、「Substitut
ed vinyl pyridine derivative and drugs containing same」;米国特許第5,840,724号明細書、「Compounds containing phenyl linked to aryl or heteroaryl by an aliphatic or heteroatom containing linking group」;米国特許第5,710,170号明細書、「Tri−aryl ethane derivatives as PDE IV inhibitors」;米国特許第5,710,160号明細書、「Diphenyl pyridyl ethane derivatives as PDE IV inhibitors」;米国特許第5,698,711号明細書、「Compounds containing phenyl linked to aryl or heteroaryl by an aliphatic or heteroatom containing linking group」;米国特許第5,691,376号明細書、「Substituted biphenyl derivatives」;米国特許第5,679,696号明細書、「Compounds containing phenyl linked to aryl or heteroaryl by an aliphatic or heteroatom containing linking group」;米国特許第5,665,737号明細書、「Substituted benzoxazoles」;米国特許第5,650,444号明細書、「Substituted biphenyl derivatives」;米国特許第5,616,614号明細書、「Naphthylalkylamines」;米国特許第5,541,219号明細書、「1−Alkoxy−2−(alkoxy or cycloalkoxy)−4−(cyclothio−alkyl or cyclothioalkenyl)benzenes as inhibitors of cyclic AMP phosphodiesterase and tumor necrosis factor」;米国特許第5,502,072号明細書、「Substituted oxindoles)」;米国特許第5,466,697号明細書、「8−phenyl−1,6−naphthyri− dine−5−ones」;米国特許第5,459,151号明細書、「N−acyl substituted phenyl piperidines as bronchodilators and anti−inflammatory agents」;米国特許第5,393,788号明細書、「Phenylalkyl oxamides」;米国特許第5,356,923号明細書、「1−hydroxy−4(3−cyclopentyloxy−4−methoxyphenyl)−2−pyrrolidone and anti−hypertensive use thereof」;米国特許第5,250,700号明細書、「Phenyl pyrazolidinones as bronchodilators and anti−inflammatory agents」;米国特許第5,191,084号明細書、「Phenyl pyrazolidinones as bronchodilators and anti−inflammatory agents」;米国特許第5,124,455号明細書、「Oxime carbamates and oxime carbonates as bronchodilators and anti−inflammatory agents」;米国特許第6,180,791号明細書、「Synthesis of 8−substituted xanthines」;米国特許第6,057,369号明細書、「Substituted(aryl,heteroaryl,arylmethyl or heteroarylmethyl)hydroxamic acid compounds」;米国特許第5,541,219号明細書、「cyclothioalkyl or cyclothioalkenyl)benzenes as inhibitors of cyclic AMP phosphodiesterase and tumor necrosis factor」;米国特許第5,362,915号明細書、「Phenyl substituted cycloalkenyl compounds useful as PDE IV inhibitors」;米国特許第6,040,329号明細書、「Substituted indazole analogs」;米国特許第5,958,953号明細書、「Substituted indazole derivatives」;米国特許第6,090,817号明細書、「Phenylpyridine derivatives useful as phosphodiesterase inhibitors」;米国特許第5,922,740号明細書、「Heterocyclylcarbonyl substituted benzofuranylureas」;米国特許第5,866,571号明細書、「9−substituted 2−2−n−alkoxyphenyl)−purin−6−ones−」;米国特許第5,861,404号明細書、「2,9−disubstituted purin−6−ones」;米国特許第5,861,396号明細書、「Purin−6−one derivatives」;米国特許第5,721,238号明細書、「2,8−disubstituted quinazolinones」;米国特許第5,723,463号明細書、「Pyrido 3,2−Pyrazinones with Anti−asthmatic action and Processes for their Manufacture」;ならびに米国特許第5,596,013号明細書、「ジヒドロピラゾロピロールDihydro pyrazolopyrroles」。
【0102】
3.3 眼の適応症における組合せ療法
眼の適応症のために、眼科用投与形態は、本発明のペプチドの1つまたは複数の他に、例えば、人工涙液成分、局所コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、またはカルシニューリン阻害剤(例えば、シクロスポリン−A(レスタシス(登録商標)−Allergan))などの1種以上の活性成分を含むことができる。共投与は、人工涙液成分、局所コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、またはカルシニューリン阻害剤(例えば、シクロスポリン−A)、または前述のもののいずれかの組合せを含む眼科用投与形態の個別投与などの、本発明のペプチドとは別々に投与される1種以上のさらなる化合物の投与を含むことも可能である。
【0103】
特に、2種以上の薬学的に許容される活性成分を含む溶液をはじめとする、組合せ眼科用溶液を利用することができる。一態様では、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を本発明のペプチドと組み合わせて利用する。眼科用溶液と組み合わせて使用するのに好適なNSAIDとしては、限定するものではないが、プロピオン酸化合物(例えば、ナプロキセン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、イブプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン);ケトロラクトロメタミン;酢酸誘導体(例えば、スリンダク、インドメタシン、およびエトドラク);フェニル酢酸(例えば、ジクロフェナク、ブロムフェナク、およびスプロフェン);アリール酢酸プロドラッグ(例えば、ネパフェナク、およびアムフェナク);サリチル酸(例えば、アスピリン、サルサレート、ジフルニサル、コリンマグネシウムトリサリチレート);パラ−アミノフェノール誘導体(例えば、アセトアミノフェン);ナフチルアルカノン(例えば、ナブメトン);エノール酸誘導体(例えば、ピロキシカムおよびメロキシカム);フェマネート(例えば、メフェナム酸、メクロフェナメートおよびフルフェナム酸);ピロール酢酸(例えば、トルメチン);ならびにピラゾロン(例えば、フェニルブタゾン);ならびにCOX−2選択的阻害剤(例えば、セレコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、エトリコキシブ、およびルアリコキシブ)をはじめとする、シクロオキシゲナーゼ(COX)−1および/または−2酵素を阻害する薬剤、そのエステルおよび薬学的に許容されるその塩が挙げられる。眼科用溶液はさらに、限定するものではないが、血管収縮薬、抗アレルギー剤、抗感染薬、ステロイド、麻酔薬、抗炎症薬、鎮痛剤、ドライアイ治療剤(例えば、分泌促進剤、粘液模倣物質、ポリマー、脂質、抗酸化剤)などをはじめとする、他の活性成分を含むことができるか、または限定するものではないが、血管収縮薬、抗アレルギー剤、抗感染薬、ステロイド、麻酔薬、抗炎症薬、鎮痛剤、ドライアイ治療剤(例えば、分泌促進剤、粘液模倣物質、ポリマー、脂質、抗酸化剤)などをはじめとする、他の活性成分を含む医薬組成物とともに(同時にもしくは連続的に)投与することができる。
【0104】
3.4 ショック関連適応症における組合せ療法
本発明の循環性ショックを治療または予防する方法はまた、本発明のペプチドの1つまたは複数の他に、1種以上の物質を対象に共投与することに関する。例えば、本発明のペプチドの1つまたは複数を、アンドロステントリオール、アンドロステンジオールもしくはそれらの誘導体、様々なバソプレッシンアゴニスト、または他の薬学的に活性のある物質(例えば、カテコールアミン類もしくは限定するものではないが、エピネフリン、ノルエピネフリン、ドーパミン、イソプロテレノール、バソプレッシンおよびドブタミンをはじめとする他のαアドレナリン作動性アゴニスト、αアドレナリン作動性アゴニスト、βアドレナリン作動性アゴニストもしくはβアドレナリン作動性アゴニスト)とともに共投与することができる。あるいは、本発明のペプチドの1つまたは複数を、血液量減少性ショック、血管拡張性ショックまたは心原性ショックに罹患しているか、これらのショックの症状を示しているか、またはこれらのショックに罹患するリスクがある対象の症状を緩和するか、軽減するか、予防するかまたは除去することができる流体または物質とともに共投与することができる。本発明のペプチドの1つまたは複数と共投与することができる流体の種類は、ショックに罹患しているか、ショックの症状を示しているか、またはショックに罹患するリスクがある特定の対象を取り巻く状況に固有のものであるべきである。例えば、本発明のペプチドの1つまたは複数と共投与することができる流体としては、塩溶液(例えば、塩化ナトリウムおよび重炭酸ナトリウム)ならびに全血、合成血液代替物、血漿、血清、血清アルブミンおよび膠質液が挙げられるが、これらに限定されない。膠質液としては、ヘタスターチ、アルブミンまたは血漿を含有する溶液が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の特定の実施形態の一つでは、流体(例えば、塩溶液、膠質溶液、全血、合成血液代替物、血漿または血清のうちの1つまたは複数)を、血液量減少性ショック(例えば、出血性ショック)に罹患しているかまたはその症状を示している患者において本発明のペプチドの1つまたは複数とともに共投与する。
【0105】
本発明の共投与方法の特定の実施形態は、本発明のペプチドの1つまたは複数を含む血液または合成血液代替物を対象に提供することを含む輸血法を用いて、対象に輸血を行なう方法を含む。この輸血法で使用される血液は、全血、合成血液代替物または全血の任意の分画部分(例えば、血漿、血清、もしくは赤血球)であることができる。
【0106】
4.0 投与方法および使用方法
投与方法および使用方法は、本発明の特定のペプチドの特徴、治療すべき疾患、適応症、状態または症候群、および当業者に公知の他の因子によって様々に異なる。一般に、当技術分野で知られているかまたは今後開発される任意の投与方法および使用方法を本発明のペプチドとともに利用することができる。前述のものに限定することなく、以下の投与方法および使用方法が特に適用される。
【0107】
4.1 吸入による使用
一態様では、1つ以上の本発明のペプチドを含む組成物は、例えば、単独でもしくは1種以上の不活性担体もしくはさらなる薬学的に許容される活性成分と組み合わせた、ネブライザー用のエアロゾルもしくは溶液の形態で、または(例えば、肺および/もしくは気道への局所的な)吹送もしくは吸入用の超微細粉末として、ならびに溶液、懸濁液、エアロゾルもしくは乾燥粉末製剤の形態で、気道への投与のために調剤される。一般には、Cryan,S.−A.,“Carrier−based strategies for targeting protein and peptide drugs to the lungs”,The AAPS Journal 7:E20−41(2005)を参照されたい。一般に、本発明のペプチドは、その各々が、参照により本明細書に組み込まれる以下の米国特許または特許出願のうちの1つまたは複数に記載されている装置、製剤、組成物および手段を用いることができる:米国特許出願公開第20090241949号明細書、「Dry powder inhalation system」;米国特許出願公開第20080066741号明細書、「Methods and systems of delivering medication via inhalation」;米国特許出願公開第20070298116号明細書、「Amorphous,spray−dried powders having a reduced moisture content and a high long term stability」;米国特許出願公開第20070140976号明細書、「水性吸入医薬組成物(Aqueous inhalation pharmaceutical composition」;米国特許出願公開第20060054166号明細書、「Inhalation nebulizer」;米国特許出願公開第20050211244号明細書、「Dry powder preparations」;米国特許出願公開第20050123509号明細書、「Modulating charge density to produce improvements in the characteristics of spray−dried proteins」;米国特許出願公開第20040241232号明細書、「Dry powder medicament formulations」;米国特許第7,582,284号明細書、「Particulate materials」;米国特許第7,481,212号明細書、「Increased dosage metered dose inhaler」;米国特許第7,387,794号明細書、「Preparation of powder agglomerate」;米国特許第7,258,873号明細書、「Preservation of bioactive materials by spray drying」;米国特許第7,186,401号明細書、「Dry powder for inhalation」;米国特許第7,143,764号明細書、「Inhalation device」;米国特許第7,022,311号明細書、「Powdery inhalational preparations and process for producing the same」;米国特許第6,962,151号明細書、「Inhalation nebulizer」;米国特許第6,907,880号明細書、「Inhalation device」;米国特許第6,881,398号明細書、「Therapeutic dry powder preparation」;米国特許第6,698,425号明細書、「Powder inhaler」;米国特許第6,655,380号明細書、「Inhalation device」;米国特許第6,645,466号明細書、「Dry powder for inhalation」;米国特許第6,632,456号明細書、「Compositions for inhalation」;米国特許第6,610,272号明細書、「Medicinal aerosol formulation」;米国特許第6,596,261号明細書、「Method of administering a medicinal aerosol formulation」;米国特許第6,585,957号明細書、「Medicinal aerosol formulation」;米国特許第6,582,729号明細書、「Powered pharmaceutical formulations having improved dispersibility」;米国特許第6,572,893号明細書、「Systems and processes for spray drying hydrophobic drugs with hydrophilic excipients」;米国特許第6,551,578号明細書、「Modulated release particles for aerosol delivery」;米国特許第6,520,179号明細書、「Inhalation device」;米国特許第6,518,239号明細書、「Dry powder compositions having improved dispersivity」;米国特許第6,503,481号明細書、「Compositions for aerosolization and inhalation」;米国特許第6,358,530号明細書、「Powdered pharmaceutical formulations having improved dispersibility」;米国特許第6,325,061号明細書、「Inhalation device」;米国特許第6,257,232号明細書、「Inhalation device」;米国特許第6,187,344号明細書、「Powdered pharmaceutical formulations having improved dispersibility」;米国特許第6,116,237号明細書、「Methods of dry powder inhalation」;米国特許第5,934,272号明細書、「Device and method of creating aerosolized mist of respiratory drug」;ならびに米国特許第5,558,085号明細書、「Intrapulmonary delivery of peptide drugs」。
【0108】
したがって、組成物は、吸入によって肺に局所送達するための乾燥粉末組成物であることができる。通常、組成物は、本発明のペプチドおよび好適な粉末基剤、希釈剤または担体物質(例えば、ラクトース、グルコース、デキストラン、マンニトールもしくは別の糖もしくはデンプン)の吸入用粉末混合物を含有する。組成物は、貯蔵乾燥粉末吸入器、複数用量乾燥粉末吸入器、または定量吸入器などの種々の乾燥粉末装置のいずれかにおいて用いることができる。組成物は、アルコール、界面活性剤、潤滑剤、抗酸化剤または安定化剤などのさらなる賦形剤を含むことができる。好適な噴射剤としては、炭化水素、クロロフルオロカーボンおよびヒドロフルオロアルカン噴射剤、または任意のそのような噴射剤の混合物が挙げられる。
【0109】
吸入用溶液を、例えば、加圧式定量吸入器を用いて、エアロゾル送達用の液化噴霧剤中に調剤することもできる。また別の製剤では、溶液は、好適なpHまたは張性の調整の有無に関わらず、単回用量装置または複数回用量装置のいずれかとして、ネブライザーで投与される水性懸濁液または水溶液の形態であることができる。
【0110】
4.2 皮下注射による使用
一態様では、1つ以上の本発明のペプチドを含む組成物は皮下注射用に調剤され、皮下注射は、好ましくは食前に、より好ましくは食前の約1時間から約3時間の間に、1日に1回以上投与される。別の態様では、組成物は、注射用持続放出製剤として調剤される。一実施形態では、本発明のペプチドは、ポリエチレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール3350)、および場合により、限定するものではないが、例えば、塩、ポリソルベート80、pHを調整するための水酸化ナトリウムまたは塩酸などの賦形剤を含む、1種以上のさらなる賦形剤および防腐剤とともに調剤される。別の実施形態では、本発明のペプチドは、ポリ(オルトエステル)(これは、ポリマー骨格中に任意の可変的割合の乳酸を含む自己触媒性ポリ(オルトエステル)であってもよい)、および場合により、1種以上のさらなる賦形剤とともに調剤される。一実施形態では、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)ポリマー(PLGAポリマー)、好ましくは親水性末端基を有するPLGAポリマー、例えば、Boehringer Ingelheim社(Ingelheim,Germany)製のPLGA RG502Hを利用する。そのような製剤は、例えば、好適な溶媒(例えば、メタノール)中の本発明のペプチドを、PLGAの塩化メチレン溶液と合わせ、それに、反応器中、好適な混合条件下で、ポリビニルアルコールの連続相溶液を添加することによって作製することができる。一般に、いくつかの注射可能でかつ生体分解可能なポリマー(これは、接着性ポリマーであることも好ましい)のいずれかを、持続放出注射製剤で利用することができる。米国特許第4,938,763号明細書、同第6,432,438号明細書、および同第6,673,767号明細書の教示、ならびにこれらの文献中で開示されている生体分解性ポリマーおよび調剤方法は参照により本明細書に組み込まれる。製剤は、ペプチドの濃度および量、ポリマーの生体分解速度、ならびに当業者に公知の他の因子によって、週1回、月1回またはその他の周期的基準で注射が必要とされるようなものであってもよい。
【0111】
4.3 循環性ショックならびに関連疾患、適応症、状態および症候群のための投与方法および使用方法
また別の態様では、本発明は、本発明のペプチドの1つまたは複数を含む医薬組成物の投与の前後両方で、循環性ショックの症状について対象をモニタリングすることを任意に含む方法を含む。したがって、対象には、循環性ショックを誘導する可能性がある傷害に罹患した後、しかし、心臓血管ショックの明らかな症状が現われる前(ステージI、ステージIIまたはステージIIIの循環性ショックが現われる前を含む)に、本発明の方法のうちの1つによって本発明のペプチドの1つまたは複数を投与することができる。
【0112】
投与が治療のためであるとき、本発明のペプチドの1つまたは複数は、ショック症状が出た時点で、またはそれが発症した後に提供される。本発明のペプチドの1つまたは複数の治療的投与はさらに、任意の症状を軽減するか、またはさらなる症状の発生を予防する働きをすることができる。投与がショックを予防するためであるとき(「予防的投与」)、本発明のペプチドの1つまたは複数は、何らかの目に見えるまたは検出可能な症状に先立って提供される。本発明のペプチドの1つまたは複数の予防的投与は、後に生じる症状を軽減するかまたは症状の発生をまとめて予防する働きをすることができる。本発明のペプチドの1つまたは複数の投与経路としては、局所、経皮、鼻腔内、経肺、経膣、経直腸、経口、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、骨内、腹腔内、硬膜外および髄腔内が挙げられるが、これらに限定されない。
【0113】
4.4 予防的治療のための投与方法および使用方法
本発明はまた、最初の症状の発症前または発症直後に治療的有効量の本発明のペプチドの1つまたは複数を対象に投与することによって、望ましくないサイトカイン発現を予防する方法に関する。本明細書で使用するように、ショックに関連する場合の「予防する」という用語は、ショックの1つ以上の症状が検出可能な形で現われるのを妨げるかまたはショックの1つ以上の症状の効果を軽減するために本発明の物質を対象に投与することを示す。「予防する」という用語はまた、例えば、「サイトカインストーム」を伴う、過剰なまたは望ましくないサイトカイン発現を妨げるかまたは制限することを包含する。したがって、本発明の物質を用いて望ましくないサイトカイン発現またはショックが生じるのを予防することによって、対象(例えば、外科手術時の対象)を「予め処置する」ことができる。ショックに関連する場合の「進行を予防する」という語句は、ショックの1つ以上の症状を既に示している患者においてショックの1つ以上のさらなる症状の検出可能な形での出現を妨げるように設計された手順を意味するために用いられ、かつ対象においてショックの既存の症状が悪化するのを妨げることを意味するためにも用いられる。本発明の予防的方法に含まれるショックの症状としては、本明細書で強調されているようなショックの症状、例えば、頻脈、浅い呼吸または不規則な呼吸、および死が挙げられるが、これらに限定されない。ショックのリスクがある対象は、対象を取り巻く特定の環境に基づいて認識される場合がある。同様に、細菌またはウイルス感染のある患者および発熱または低血圧を示す患者もまた、過剰なサイトカイン発現、ショックまたは炎症性疾患もしくは状態のリスクがある可能性がある。
【0114】
本発明のさらなる実施形態では、本方法は、心原性ショック、血液量減少性ショックおよび血管拡張性ショックを予防するために用いられ、これらは各々、前述の3つのショックのステージのいずれかにあることができる。本発明の特定の実施形態の一つでは、本方法は、心原性ショックを予防するために用いられる。本発明の別の特定の実施形態では、本方法は、血管拡張性ショックを予防するために用いられる。本発明の別のより具体的な実施形態では、本方法は、敗血症または菌血症に起因するショックを予防するために用いられる。さらにより具体的な実施形態では、本方法は、ステージI、IIまたはIIIショックにおける敗血症性ショックまたは菌血症性ショックを予防するために用いられる。また別の実施形態では、本発明の方法は、血液量減少性ショックを予防するために用いられる。
【0115】
本明細書に記載されたショックを治療する方法と同様に、本発明のショックを予防する方法の一実施形態は、別の物質を本発明のペプチドの1つもしくは複数またはその誘導体とともに共投与することを含む。本発明の範囲は、ショックを予防するために本発明のペプチドの1つまたは複数とともに共投与し得る物質の内容によって限定されない。例えば、本発明のペプチドの1つまたは複数は、ショックを予防するために、アンドロステントリオール、アンドロステンジオールもしくはそれらの誘導体、様々なバソプレッシンアゴニスト、または他の薬学的に活性のある物質(例えば、カテコールアミン類もしくは限定するものではないが、エピネフリン、ノルエピネフリン、ドーパミン、イソプロテレノール、バソプレッシンおよびドブタミンをはじめとする、他のαアドレナリン作動性アゴニスト、αアドレナリン作動性アゴニスト、βアドレナリン作動性アゴニストもしくはβアドレナリン作動性アゴニスト)とともに共投与することができる。
【0116】
あるいは、本発明のペプチドの1つまたは複数は、血液量減少性ショック、血管拡張性ショックまたは心原性ショックに罹患するリスクがある対象の症状を予防または除去することができる流体または他の物質とともに共投与することができる。ショックを予防するために本発明のペプチドの1つまたは複数とともに共投与することができる流体のタイプは、ショックに罹患するリスクがある特定の対象を取り巻く状況に固有であるべきである。例えば、本発明のペプチドの1つまたは複数とともに共投与し得る流体としては、塩溶液(例えば、塩化ナトリウムおよび重炭酸ナトリウム)ならびに全血、合成血液代替物、血漿、血清、血清アルブミンおよび膠質液が挙げられるが、これらに限定されない。膠質液としては、ハタスターチ、アルブミンまたは血漿を含有する溶液が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の特定の実施形態の一つでは、塩溶液、膠質液、全血、合成血液代替物、血漿または血清のうちの1つ以上のを含む流体を、血液量減少性ショック(例えば、出血性ショック)に罹患するリスクがある対象において、本発明のペプチドの1つもしくは複数またはそれらの誘導体とともに共投与する。
【0117】
4.5 炎症関連の適用、疾患、適応症、状態および症候群のための投与方法および使用方法
また別の態様では、本発明は、本発明のペプチドの1つまたは複数の投与の前後両方で、炎症、炎症性疾患または炎症状態の徴候または症状について対象をモニタリングすることを任意に含む方法を含む。したがって、対象には、炎症性応答を誘導する可能性がある状態、疾患または症候群であると診断された後、しかし、炎症、炎症性疾患または炎症状態の明らかな症状が現われる前に、本発明の方法のうちの1つによって本発明のペプチドの1つまたは複数を投与することができる。本明細書に記載された炎症、炎症性疾患または炎症状態を治療または予防する方法は、治療的有効量の本発明のペプチドの1つまたは複数を対象に投与することを含む。本明細書で使用するように、「投与する(administer)」および「投与する(administering)」という用語は、少なくとも1つの化合物を対象に導入することを意味するために用いられる。投与が治療のためであるとき、物質は、炎症、炎症性疾患もしくは炎症状態の徴候もしくは症状が出た時点で、またはそれらが発症した後に提供される。この物質の治療的投与は、任意の症状を軽減するか、またはさらなる症状の発生を予防する働きをする。投与が、炎症、炎症性疾患または炎症状態を予防または制限するためであるとき、本発明のペプチドの1つまたは複数を含む医薬組成物は、何らかの目に見えるまたは検出可能な症状に先立って提供される。本発明のペプチドの1つまたは複数の予防的投与は、後に生じる症状を軽減するかまたは症状の発生をまとめて予防する働きをする。本発明のペプチドの1つまたは複数の投与経路としては、局所、経皮、鼻腔内、経肺、経膣、経直腸、経口、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、骨内、腹腔内、硬膜外および髄腔内が挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
4.6 眼の疾患、適応症、状態および症候群のための投与方法および使用方法
眼に適用するために、一態様では、本発明のペプチドの1つまたは複数は、眼科用投与形態で調剤され、かつ点眼薬、洗眼剤の形態で、または他の眼送達系によって投与される。エマルジョン、軟膏、ゲル、眼内挿入物、生体分解性眼内挿入物、リポソーム、マイクロ粒子、ナノ粒子、ナノスフェアまたはイオン対形成製剤も利用することができ、これらは、場合によっては、本発明のペプチドの眼内滞留時間を増大させることができる。一実施形態では、眼科用製剤は、約0.0000001%〜約5%(w/v)の本発明のペプチドもしくはその塩、あるいは約0.000001%〜約0.2%(w/v)の本発明のペプチドもしくはその塩、またはあるいは約0.00001%〜約0.2%(w/v)の本発明のペプチドもしくはその塩を含む溶液である。
【0119】
5.0 作製方法
一般に、本発明のペプチドを固相合成によって合成し、当技術分野で公知の方法に従って精製することができる。種々の樹脂および試薬を用いるいくつかの周知の手順のいずれかを用いて、本発明のペプチドを調製することができる。
【0120】
本発明の環状ペプチドは、アミノ酸間のペプチド結合を形成するための既知の従来手順により容易に合成することができる。そのような従来手順としては、例えば、そのカルボキシル基および他の反応基が保護されたアミノ酸またはその残基の遊離のαアミノ基と、そのアミノ基または他の反応基が保護された別のアミノ酸またはその残基の遊離の1級カルボキシル基との縮合を可能にする任意の溶液相手順が挙げられる。好ましい従来手順では、本発明の環状ペプチドを固相合成によって合成し、当技術分野で公知の方法に従って精製することができる。種々の樹脂および試薬を用いるいくつかの周知の手順のいずれかを用いて、本発明のペプチドを調製することができる。
【0121】
環状ペプチドを合成するためのプロセスは、所望の配列中の各アミノ酸を別のアミノ酸もしくはその残基に1つずつ連続で付加する手順によるか、または所望のアミノ酸配列を有するペプチド断片をまず従来通りに合成し、その後、縮合して所望のペプチドを提供する手順によって実施することができる。その後、結果として生じたペプチドを環化して、本発明の環状ペプチドを生じさせる。
【0122】
固相ペプチド合成法は当技術分野で周知であり、かつ実施されている。そのような方法では、本発明のペプチドの合成は、固相法の一般的な原理に従って、所望のアミノ酸残基を、成長するペプチド鎖に1つずつ連続で取り込ませることによって実施することができる。これらの方法は、Merrifield,R.B.,“Solid phase synthesis(Nobel lecture)”,Angew Chem 24:799−810(1985)およびBarany et al.,The Peptides,Analysis,Synthesis and Biology,第2巻,Gross,E.and Meienhofer,J.編.Academic Press 1−284(1980)をはじめとする、多くの参考文献に開示されている。
【0123】
ペプチドの化学合成では、様々なアミノ酸残基の反応性側鎖基を好適な保護基で保護し、それにより、保護基が除去されるまで化学反応がその部位で起こるのを防ぐ。その実体がカルボキシル基で反応している間は、アミノ酸残基または断片のαアミノ基を保護し、次いで、αアミノ保護基を選択的に除去して、その後の反応がその部位で起こるのを可能にすることも一般的である。具体的な保護基が開示されており、固相合成法および溶液相合成法において知られている。
【0124】
αアミノ基は、ベンジルオキシカルボニル(Z)および置換ベンジルオキシカルボニル(例えば、p−クロロベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、p−ブロモベンジルオキシカルボニル、p−ビフェニル−イソプロポキシカルボニル、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)およびp−メトキシベンジルオキシカルボニル(Moz))などのウレタン型保護基ならびにt−ブチルオキシカルボニル(Boc)、ジイソプロピルメトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、およびアリルオキシカルボニル(Alloc)などの脂肪族ウレタン型保護基を含む、好適な保護基で保護することもできる。αアミノ保護のために、Fmocが好ましい。
【0125】
グアニジノ基は、ニトロ、p−トルエンスルホニル(Tos)、Z、ペンタメチルクロマンスルホニル(Pmc)、アダマンチルオキシカルボニル、ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル(Pbf)およびBocなどの好適な保護基で保護することができる。PbfおよびPmcは、Argのための好適な保護基である。
【0126】
本明細書に記載の本発明のペプチドは、固相合成を用いて、例えば、製造元によって提供されているプログラミングモジュールを用い、かつ製造元のマニュアルに示されているプロトコルに従って、Symphony Multiplex Peptide Synthesizer(Rainin Instrument Company)自動ペプチド合成機により調製された。
【0127】
固相合成は、保護されたαアミノ酸を好適な樹脂にカップリングさせることにより、ペプチドのC末端から開始される。そのような出発材料は、αアミノ保護アミノ酸をアミド結合で9−Fmoc−アミノキサンテン−3−イルオキシ−メリフィールド樹脂(Sieberアミド樹脂)もしくは4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmoc−アミノメチル)フェノキシ樹脂(Rinkアミド樹脂)に付着させるか、エステル結合でp−ベンジルオキシベンジルアルコール(Wang)樹脂、2−クロロトリチルクロリド樹脂もしくはオキシム樹脂に付着させるか、または当技術分野で周知の他の手段で付着させることにより調製される。これらの樹脂は、連続的にアミノ酸を付加するために、必要に応じて、繰返しのサイクルで持ち越される。αアミノFmoc保護基は、塩基性条件下で除去される。N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中のピペリジン、ピペラジン、ジエチルアミン、またはモルホリン(20〜40% v/v)をこの目的で用いることができる。
【0128】
αアミノ保護基の除去に続き、その後の保護されたアミノ酸を所望の順序で段階的にカップリングさせて、中間体、保護されたペプチド−樹脂を得る。ペプチドの固相合成におけるアミノ酸のカップリングに用いられる活性化試薬は当技術分野で周知である。ペプチドを合成した後、望ましい場合、ペプチドのさらなる誘導体化のために、直交的に保護された側鎖保護基を、当技術分野で周知の方法を用いて除去することができる。
【0129】
通常、必要に応じて、直交性保護基を用いる。例えば、本発明のペプチドは、アミノ基含有側鎖を有する複数のアミノ酸を含有する。一態様では、アリル−Alloc保護スキームは、その側鎖を介してラクタム架橋を形成するアミノ酸と、アミノ基含有側鎖を有する他のアミノ酸に用いられる、異なる反応条件下で切断可能な、直交性保護基とともに利用される。したがって、例えば、Fmoc−Lys(Alloc)−OH、Fmoc−Orn(Alloc)−OH、Fmoc−Dap(Alloc)−OH、Fmoc−Dab(Alloc)−OH、Fmoc−Asp(OAll)−OHまたはFmoc−Glu(OAll)−OHアミノ酸を、環化によってラクタム架橋を形成する位置に利用することができ、その一方で、アミノ基含有側鎖を有する他のアミノ酸、例えば、Fmoc−Arg(Pbf)−OH、Fmoc−Lys(Boc)−OH、Fmoc−Dab(Boc)−OHなどを含むアミノ酸は、異なる、直交性保護基を有する。他の保護基も同様に利用することができ、限定するものではないが、例として、Mtt/OPp(4−メチルトリチル/2−フェニルイソプロピル)を、環化によってラクタム架橋を形成する側鎖で利用し、直交性保護基をMtt/OPpの切断に好適な条件を用いて切断することができない他の位置に利用することができる。
【0130】
ペプチド中の反応基は、固相合成の間かまたは樹脂から除去した後かのいずれかに、選択的に修飾することができる。例えば、ペプチドを、樹脂上にある間に修飾して、アセチル化などのN末端修飾を得ることができ、または切断試薬の使用によって樹脂から除去し、その後、修飾することができる。同様に、アミノ酸の側鎖を修飾するための方法は、ペプチド合成の当業者に周知である。ペプチド上に存在する反応基に対して行なわれる修飾の選択は、1つには、ペプチド中に望まれる特性によって決定される。
【0131】
本発明のペプチドにおいて、一実施形態では、N末端基は、N−アシル基の導入によって修飾される。一態様では、N末端の保護基を除去した後、樹脂に結合しているペプチドを、ピリジンなどの有機塩基の存在下で、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中の無水酢酸と反応させる方法が用いられる。溶液相アセチル化をはじめとする、N末端アセチル化の他の方法が当技術分野で公知であり、かつこれを利用することができる。
【0132】
一実施形態では、ペプチド樹脂から切断する前に、ペプチドを環化させることができる。反応性側鎖部分を介して環化させるために、所望の側鎖を脱保護し、ペプチドを好適な溶媒に懸濁して、環状カップリング試薬を添加する。好適な溶媒としては、例えば、DMF、ジクロロメタン(DCM)または1−メチル−2−ピロリドン(NMP)が挙げられる。好適な環状カップリング試薬としては、例えば、2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロフォスフェート(BOP)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロフォスフェート(PyBOP)、2−(7−アザ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TATU)、2−(2−オキソ−1(2H)−ピリジル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TPTU)またはN,N’−ジクロロヘキシルカルボジイミド/1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(DCCI/HOBt)が挙げられる。カップリングは、標準的には、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、sym−コリジンまたはN−メチルモルホリン(NMM)などの好適な塩基の使用によって開始される。
【0133】
非ラクタム環状架橋を有するペプチド、例えば、以下の架橋:
−(CH−NH−C(=O)−(CH−C(=O)−NH−(CH
(式中、x、yおよびzは、各々独立に、1〜5である)を含有するペプチドについては、環化すべき位置に側鎖保護ジアミンアミノ酸を利用する固相合成を用いてペプチドを作製することができる。好ましくは、Alloc、Mtt、Mmt(メトキシトリチル)、Dde(1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘクス−1−イリデン))エチル)、ivDde(1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘクス−1−イリデン)−3−メチルブチル)などのアミン保護基または任意の他の直交的に切断可能な保護基を有する、Dap、DabまたはLysが、そのような位置において特に好ましい。通常、例えば、ジクロロメタン中の2%TFAを用いてMttを除去するように、1つの側鎖保護基をまず除去する。樹脂を洗浄した後、例えば、0.5Mの環状無水物(例えば、コハク酸無水物またはグルタル酸無水物)の1:1のジクロロメタン/ピリジン溶液を用いて、結果として得られる、樹脂に結合している保護されていないアミンをアシル化する。さらなる洗浄工程の後、例えば、ジクロロメタン中のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)およびフェニルシランを用いてAllocを除去するように、第2のジアミノアミノ酸の直交的に切断可能な保護基を切断する。ジクロロメタンおよびDMFで洗浄した後、TBTUおよび塩基などの標準的なカップリング試薬を用いて、樹脂に結合しているペプチドを環化する。あるいは、5%ヒドラジンのDMF溶液を用いて、樹脂に結合しているivDde保護ジアミノアミノ酸を脱保護することができ、DMFで洗浄した後、結果として得られる、樹脂に結合しているアミンを、環状無水物でアシル化することができるか、または樹脂に結合しているカルボン酸で環化することができる。
【0134】
その後、環化したペプチドを、任意の好適な試薬、例えば、DCM中のエチルアミンまたは例えば、トリフルオロ酢酸(TFA)、トリ−イソプロピルシラン(TIS)、ジメトキシベンゼン(DMB)、水などの作用剤の様々な組合せを用いて、固相から切断することができる。得られた粗ペプチドを乾燥させ、もしあれば、残りのアミノ酸側鎖保護基を、水の存在下の(TFA)、TIS、2−メルカプトペタン(ME)、および/または1,2−エタンジチオール(EDT)などの、任意の好適な試薬を用いて切断する。最終産物を、冷エーテルの添加により沈殿させ、濾過により回収する。最終的な精製は、C18カラムなどの好適なカラムを用いる逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)によるものであるか、または他の分離もしくは精製方法、例えば、ペプチドのサイズもしくは電荷に基づく方法を利用することもできる。一旦精製すれば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、アミノ酸分析、質量分析法などの、任意の数の方法によって、ペプチドを特徴付けることができる。
【0135】
C末端置換アミド誘導体またはN−アルキル基を有する本発明のペプチドについては、保護されたαアミノ酸を好適な樹脂にカップリングすることによってペプチドのC末端から開始される固相合成により、合成が進められてもよい。固相で置換アミド誘導体を調製するためのそのような方法は、当技術分野で記載されている。例えば、Barn,D.R.,et al.,“Synthesis of an array of amides by aluminum chloride assisted cleavage on resin bound esters”,Tetrahedron Letters,37:3213−3216(1996);DeGrado,W.F.and Kaiser E.T.,“Solid−phase synthesis of protected peptides on a polymer bound oxime:Preparation of segments comprising the sequences of a cytotoxic 26−peptide analogue”,J.Org.Chem.,47:3258−3261(1982)を参照されたい。そのような出発材料は、αアミノ保護アミノ酸を、周知の手段によって、エステル結合でp−ベンジルオキシベンジルアルコール(Wang)樹脂またはオキシム樹脂に付着させることにより調製することができる。所望のアミノ酸配列を有するペプチド鎖を成長させ、ペプチドを環化し、ペプチド−樹脂を適当なアミン(例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミンなど)の溶液で処理する。p−ベンジルオキシベンジルアルコール(Wang)樹脂を利用するペプチドは、DCM中の塩化アルミニウムによって樹脂から切断することができ、オキシム樹脂を利用するペプチドは、DCMによって樹脂から切断することができる。C末端置換アミドを有するペプチドを調製する別の方法は、還元アミノ化によって、アルキルアミンを4−(4−ホルミル−3−メトキシフェノキシ)ブチリル−AM樹脂(FMPB AM樹脂)などのホルミル樹脂に付着させ、その後、固相合成の一般的な原理を利用して、所望のアミノ酸残基を連続的に取り込ませることである。
【0136】
合成を主に固相Fmoc化学反応に関して説明したが、本発明の環状ペプチドを作製するために、他の化学反応および合成方法、例えば、限定するものではないが、例として、Boc化学反応、溶液化学反応、および他の化学反応および合成方法を利用する方法を利用することができることを理解すべきである。
【0137】
6.0 製剤
所望の投与経路によって、1つ以上の本発明の環状ペプチドを含む組成物の製剤は様々に異なり得る。したがって、製剤は、皮下注射、または静脈内注射、局所適用、眼内適用、鼻スプレー適用、吸入適用、他の経皮適用などに好適なものであり得る。
【0138】
6.1 本発明の環状ペプチドの塩形態
本発明の環状ペプチドは、任意の薬学的に許容される塩の形態であることができる。「薬学的に許容される塩」という用語は、無機塩基または有機塩基および無機酸または有機酸を含む、薬学的に許容される無毒な塩基または酸から調製される塩を指す。無機塩基に由来する塩としては、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、第二マンガン塩、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などが挙げられる。特に好ましいのは、アンモニウム塩、カルシウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、およびナトリウム塩である。薬学的に許容される無毒な有機塩基に由来する塩としては、1級、2級、および3級アミン、置換アミン(天然の置換アミンを含む)、環状アミン、および塩基性イオン交換樹脂、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどの塩が挙げられる。
【0139】
本発明の環状ペプチドが塩基性である場合、酸付加塩は、無機酸および有機酸を含む、薬学的に許容される無毒な酸から調製することができる。そのような酸としては、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、カルボン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、マロン酸、ムチン酸、硝酸、パモン酸、パントテン酸、リン酸、プロピオン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられる。本発明のペプチドの酸付加塩は、好適な溶媒中で、ペプチドと過剰な酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸またはメタンスルホン酸とから調製される。酢酸塩、酢酸アンモニウムおよびトリフルオロ酢酸塩形態が特に有用である。本発明のペプチドが酸性部分を含む場合、薬学的に許容される好適な塩としては、ナトリウム塩もしくはカリウム塩などのアルカリ金属塩、またはカルシウム塩もしくはマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩を挙げることができる。
【0140】
6.2 医薬組成物
本発明は、本発明の環状ペプチドおよび薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。担体は液体製剤であってもよく、緩衝化した等張水溶液であることが好ましい。薬学的に許容される担体としては、後に記載するような、賦形剤(例えば、希釈剤、担体など)、および添加剤(例えば、安定化剤、防腐剤、可溶化剤、緩衝剤など)を挙げることもできる。
【0141】
本発明の環状ペプチド組成物は、少なくとも1つの本発明の環状ペプチドを、望ましい場合、賦形剤(例えば、希釈剤、担体など)、および添加剤(例えば、安定化剤、防腐剤、可溶化剤、緩衝剤など)をはじめとする、1種以上の薬学的に許容される担体とともに含む医薬組成物へと調剤または配合することができる。製剤賦形剤としては、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、ヒドロキシセルロース、アカシアゴム、ポリエチレングリコール、マンニトン、塩化ナトリウムおよびクエン酸ナトリウムを挙げることもできる。注射製剤または他の液体投与製剤について、少なくとも1種以上の緩衝成分を含有する水が好ましく、安定化剤、防腐剤および可溶化剤を利用することもできる。固体投与製剤について、例えば、デンプン、糖類、脂肪酸などの、種々の増粘剤、充填剤、増量剤および担体添加剤のいずれかを利用することができる。局所投与製剤について、種々のクリーム、軟膏、ゲル、ローションなどのいずれかを利用することができる。ほとんどの医薬製剤について、非活性成分は、重量または体積で、調製物の大半を占める。医薬製剤について、ある期間にわたって本発明のペプチドの送達をもたらすように投与量を調剤することができるように、種々の定量放出性(measured−release)、徐放性または持続放出性の製剤および添加剤のいずれかを利用することができることも想定されている。
【0142】
一般に、患者に投与される本発明の環状ペプチドの実際の量は、投与様式、使用される製剤、および所望の応答に応じて、かなり広い範囲で変動する。
【0143】
実用的用途では、本発明の環状ペプチドを、従来の医薬配合技術に従って医薬担体と混合した活性成分として組み合わせることができる。担体は、例えば、経口または非経口(静脈内を含む)、尿道、膣、鼻腔、口腔、舌下などへの投与に望ましい調製物の形態によって、多種多様な形態を取ることができる。経口投与形態用の組成物を調製する際、例えば、懸濁液、エリキシルおよび溶液などの経口液体調製物の場合は、例えば、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、防腐剤、着色剤などの通常の医薬媒体のいずれかを、または例えば、粉末、硬質カプセルおよび軟質カプセルならびに錠剤などの経口固体調製物の場合は、例えば、デンプン、糖類、ミクロクリスタリンセルロース、希釈剤、顆粒化剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などの担体を利用することができる。
【0144】
その投与の容易さのために、錠剤およびカプセルは、有利な経口投与単位形態を表す。望ましい場合、錠剤を標準的な水性または非水性技術によりコーティングすることができる。そのような治療的に有用な組成物中の活性ペプチドの量は、有効投与量が得られる程度である。別の有利な投与単位形態では、例えば、シート、ウエハース、錠剤などの、舌下用構築物を利用することができる。
【0145】
錠剤、丸薬、カプセルなどは、トラガカントゴム、アカシアゴム、トウモロコシデンプンまたはゼラチンなどの結合剤;第二リン酸カルシウムなどの賦形剤;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプンまたはアルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;およびスクロース、ラクトースまたはサッカリンなどの甘味剤を含有することもできる。投与単位形態がカプセルである場合、それは、上記のタイプの材料の他に、脂肪油などの液体担体を含有することができる。
【0146】
他の様々なタイプの材料を、コーティングとして、または投与単位の物理的形態を改変するために利用することができる。例えば、錠剤は、セラック、糖または両方でコーティングすることができる。シロップまたはエリキシルは、活性成分の他に、甘味剤としてのスクロース、防腐剤としてのメチルパラベンおよびプロピルパラベン、色素、ならびにサクランボまたはオレンジフレーバーなどの香味剤を含有することができる。
【0147】
環状ペプチドは非経口投与することもできる。これらの活性ペプチドの溶液または懸濁液を、ヒドロキシ−プロピルセルロースなどの界面活性剤と好適に混合した水の中で調製することができる。分散液を、グリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびそれらの油中混合物中で調製することもできる。これらの調製物は、場合により、微生物の増殖を予防するための防腐剤を含有することができる。
【0148】
注射による使用に好適な医薬形態としては、滅菌水溶液または分散液および滅菌注射溶液または分散液の即時調製用の滅菌粉末が挙げられる。全ての場合において、この形態は滅菌性でなければならず、注射器で投与し得る程度に流動性がなければならない。この形態は、製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、細菌や真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールまたは液体ポリエチレングリコール、それらの好適な混合物)、および植物油を含有する溶媒または分散媒体であることができる。
【0149】
本発明の環状ペプチドは、経鼻投与によって治療的に適用することができる。「経鼻投与」とは、本発明の環状ペプチドのいずれかの鼻腔内投与の任意の形態を意味する。ペプチドは、水溶液、例えば、食塩水、クエン酸塩または他の一般的な賦形剤もしくは防腐剤を含む溶液中にあることができる。ペプチドは、乾燥製剤または粉末製剤中にあることもできる。
【0150】
本発明の環状ペプチドは、ペプチド薬をはじめとする薬物の効果的な経鼻吸収を増大させる種々の薬剤のいずれかとともに調剤することができる。これらの薬剤は、許容できない粘膜の損傷を伴わずに、経鼻吸収を増大させるべきである。とりわけ、米国特許第5,693,608号明細書、同第5,977,070号明細書、および同第5,908,825明細書には、吸収促進剤をはじめ、利用し得るいくつかの医薬組成物が教示されており、前述の文献の各々の教示、ならびにそれらの文献中に引用されている全ての参考文献および特許は、参照により組み込まれる。
【0151】
水溶液中にある場合、環状ペプチドは、食塩水、酢酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩または他の緩衝剤により適切に緩衝化することができ、これらの緩衝剤は、任意の生理的に許容されるpH、通常、約pH4〜約pH7であってもよい。例えば、リン酸緩衝食塩水、食塩水および酢酸塩緩衝剤などの、緩衝剤の組合せを利用することもできる。食塩水の場合、0.9%食塩水溶液を利用することができる。酢酸塩、リン酸塩、クエン酸塩などの場合、50mM溶液を利用することができる。緩衝剤の他に、細菌や他の微生物の増殖を予防または制限するために、好適な防腐剤を利用することができる。利用し得るそのような防腐剤の一つは、0.05%塩化ベンザルコニウムである。
【0152】
代わりの実施形態では、本発明の環状ペプチドは、肺に直接投与することができる。肺内投与は、定量吸入器によって実施することができる。定量吸入器は、吸気中に患者によって稼働されたときに本発明のペプチドの定量ボーラスの自己投与を可能にする装置である。本実施形態の一態様では、環状ペプチドは、その粒子が肺表面に定着して吐き出されないほどの十分な質量を有するが、肺に届く前に気道の表面に堆積しない程度に十分に小さいものであるように、乾燥した粒子状の形態、例えば、約0.5μm〜6.0μmの粒子として存在していてもよい。種々の異なる技術のいずれかを用いて、限定するものではないが、マイクロ製粉化、噴霧乾燥および後に凍結乾燥を伴う急速凍結エアロゾルをはじめとする、乾燥粉末微粒子を作製することができる。微粒子を用いて、ペプチドを肺深部に堆積させ、それにより、血流中への迅速かつ効率的な吸収を提供することができる。さらに、そのようなアプローチを用いれば、経皮的、経鼻的または経口的な粘膜送達経路の場合に時々必要とされるような、浸透促進剤が必要とされない。噴射剤をベースとするエアロゾル、ネブライザー、単回用量乾燥粉末吸入器および複数回用量乾燥粉末吸入器をはじめとする、種々の吸入器のいずれかを利用することができる。現在使用されている一般的な装置としては、喘息、慢性閉塞性肺疾患などの治療用の医薬を送達するために用いられる定量吸入器が挙げられる。好ましい装置としては、常に約6.0μm未満の粒子径を有する微粉末の雲またはエアロゾルを形成するよう設計された、乾燥粉吸入器が挙げられる。
【0153】
平均粒径分布をはじめとする微粒子サイズは、作製方法によって制御することができる。マイクロ製粉化については、フライスヘッドのサイズ、ローターの速度、処理の時間などが微粒子サイズを制御する。噴霧乾燥については、ノズルサイズ、流速、乾燥機熱などが微粒子サイズを制御する。後に凍結乾燥を伴う急速凍結エアロゾルによる作製については、ノズルサイズ、流速、エアロゾル化される溶液の濃度が微粒子サイズを制御する。これらのパラメータおよびその他のパラメータを利用して、微粒子サイズを制御することができる。
【0154】
本発明の環状ペプチドは、持続放出製剤の注射によって治療的に投与することができる。一実施形態では、本発明の環状ペプチドは、ポリエチレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール3350)、および場合により、限定するものではないが、塩、ポリソルベート80、pHを調整するための水酸化ナトリウムまたは塩酸などの賦形剤をはじめとする、1種以上のさらなる賦形剤および防腐剤を含む製剤の、例えば、臀部または三角筋における深部筋肉内注射用に調剤される。別の実施形態では、本発明の環状ペプチドは、ポリ(オルトエステル)(これは、ポリマー骨格中に任意の可変的割合の乳酸を含む自己触媒性ポリ(オルトエステル)であってもよい)、および場合により、1種以上のさらなる賦形剤とともに調剤される。一実施形態では、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)ポリマーを利用する。一般に、いくつかの注射可能でかつ生体分解可能なポリマー(これは、接着性ポリマーであることも好ましい)のいずれかを、持続放出注射製剤で利用することができる。あるいは、皮下注射を可能にする製剤をはじめとする、他の持続放出製剤を利用することができ、これらの他の製剤は、ナノ/マイクロスフェア(例えば、PLGAポリマーを含む組成物)、リポソーム、エマルジョン(例えば、油中水型エマルジョン)、ゲル、不溶性塩類または油中懸濁液のうちの1つ以上を含むことができる。製剤は、環状ペプチドの濃度および量、利用される材料の持続放出速度、ならびに当業者に公知の他の因子によって、毎日、週1回、月1回またはその他の周期的基準で、注射が必要とされるようなものであることができる。
【0155】
6.3 本発明のペプチドの経口製剤
一態様では、本発明のペプチドは、経口送達用に調剤される。ペプチドは、好ましくは、腸溶性保護剤に包み込まれるように、より好ましくは、錠剤またはカプセルが胃を通過するまで、および場合によっては、さらに小腸の一部を通過するまで、放出されないように、調剤および作製される。本出願の文脈において、腸溶性のコーティングまたは材料という用語は、本質的に無傷で胃を通過するが、小腸で速やかに崩壊して、活性のある原薬を放出するコーティングまたは材料を指すことが理解されるであろう。使用し得る腸溶性コーティング溶液の一つは、酢酸フタル酸セルロースと、場合により、水酸化アンモニウム、トリアセチン、エチルアルコール、メチレンブルーおよび精製水などの他の成分とを含む。酢酸フタル酸セルロースは、錠剤やカプセルなどの個々の投与形態を腸溶的にコーティングするための製薬工業において用いられているポリマーであり、これは、約5.8未満のpHでは水に溶解しない。酢酸フタル酸セルロースを含む腸溶性コーティングは、胃の酸性環境からの保護を提供するが、十二指腸の環境(pH約6〜6.5)で溶解し始め、投与形態が回腸(pH約7〜8)に達する時までに完全に溶解する。酢酸フタル酸セルロースの他に、限定するものではないが、ヒドロキシプロピルメチルエチルセルローススクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリ酢酸ビニルフタレート、およびメタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマーをはじめとする他の腸溶性コーティング材料が公知であり、本発明のペプチドとともに用いることができる。利用される腸溶性コーティングは、主として胃の外側の部位で投与形態の溶解を促進し、およそ少なくとも6.0のpHで、より好ましくは約6.0〜約8.0のpHで腸溶性コーティングが溶解するように選択することができる。好ましい態様の一つでは、腸溶性コーティングは、回腸付近で溶解および分解する。
【0156】
腸溶性コーティングが溶解したときに腸での取込みを増大させるために、種々の浸透促進剤のいずれかを利用することができる。一態様では、浸透促進剤は、傍細胞輸送システムまたは経細胞輸送システムのいずれかを増大させる。傍細胞輸送の増大は、細胞の密着結合を開くことによって達成することができる。経細胞輸送の増大は、細胞膜の流動性を増大させることによって達成することができる。そのような浸透促進剤の非限定的な代表例としては、カルシウムキレート剤、胆汁酸塩(例えば、コール酸ナトリウム)、および脂肪酸が挙げられる。傍細胞輸送を増大させるために、本発明のペプチドは、腸溶性コーティングされたカプセル中に、例えば、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、カプリン酸ナトリウム、または、共役リノール酸などの脂肪酸を含む、腸溶性コーティングされた個々の投与形態で存在していてもよい。
【0157】
一態様では、錠剤またはカプセルなどの個々の投与形態は、場合によりさらに、ポビドンなどの一般的な医薬結合剤、希釈剤、流動促進剤、微結晶性セルロースなどの充填剤、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、クロスカルメロースナトリウムなどの崩壊剤、防腐剤、着色剤などを、通常の知られているサイズおよび量で含む。いくつかの実施形態では、腸のプロテアーゼの基質として作用するペプチドまたはポリペプチドがさらに添加される。
【0158】
6.4 眼科用製剤
一実施形態では、例えば、ドライアイ疾患またはブドウ膜炎のいずれかのような、眼の疾患、適応症、状態および症候群は、本発明のペプチドの1つまたは複数を含む眼科用投与形態を用いて治療することができる。眼科用投与形態は、本発明のペプチドの1つまたは複数の他に、例えば、人工涙液成分、局所コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、またはカルシニューリン阻害剤(例えば、シクロスポリン−A(レスタシス(登録商標)−Allergan)などの、1種以上の活性成分を含むことができる。関連する実施形態では、1つのまたはさらなる化合物は、人工涙液成分、局所コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、またはカルシニューリン阻害剤(例えば、シクロスポリン−A)、または前述のもののいずれかの組合せを含む眼科用投与形態の個別投与のように、本発明のペプチドの1つまたは複数とは別々に投与することができる。
【0159】
眼科用溶液は、好適な緩衝剤を用いて、約pH3.5〜9.0、および好ましくは約pH6.5〜pH7.2のpH範囲に維持される。pHは、既知の任意の手段によって、例えば、HClまたはNaOHの使用によって調整することができる。緩衝剤としては、酢酸塩、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸、重炭酸ナトリウム、TRIS、様々な混合リン酸塩緩衝剤(例えば、NaHPO、NaHPOおよびKHPOの組合せ)ならびにそれらの混合物を挙げることができる。通常、緩衝剤は、約0.05%〜2.5%(w/v)、および好ましくは約0.1%〜1.5%パーセントの範囲の量で用いられる。潜在的な刺激を最小限に抑えるが、それでも医薬品のpHをその製品の保存可能期間を超えて維持するために、緩衝剤は、できる限り生理的イオン濃度に近いものとすべきである。
【0160】
本発明で利用される眼科用溶液は、精製水から作製することができ、一態様では、生理食塩水溶液から作製することができることが好ましい。さらなる張性増強剤を利用することができ、これには、イオン性かもしくは非イオン性かのいずれかの張性増強剤、または両方が含まれる。イオン性の張性増強剤としては、アルカリ金属ハライドまたはアルカリ土類金属ハライド、例えば、CaCl、KBr、KCl、LiCl、NaI、NaBr、NaCl、NaSOまたはホウ酸が挙げられる。非イオン性の張性増強剤としては、尿素、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、プロピレングリコール、またはデキストロースが挙げられる。本発明の水溶液は、通常、張性剤を用いて、0.9%(w/v)塩化ナトリウム溶液または2.5%グリセロール溶液と等しい浸透圧に近似するように調整される。しかしながら、0.7%〜1.5%NaClと等しい張性範囲は、通常、許容可能であると考えられる。
【0161】
溶液は、従来の薬学的に許容される防腐剤、安定化剤、共溶媒および/または浸透促進剤、ならびに人工涙液調製物に含まれる粘弾性物質を含有することもできる。薬学的に許容される防腐剤としては、第4級アンモニウム化合物(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゾキソニウムなど);チオサリチル酸のアルキル−水銀塩(例えば、チオメルサール)、フェニル硝酸第二水銀、フェニル酢酸第二水銀もしくはフェニルホウ酸第二水銀;過ホウ酸ナトリウム;亜塩素酸ナトリウム;パラベン(例えば、メチルパラベンもしくはプロピルパラベン);アルコール(例えば、クロロブタノール、ベンジルアルコールもしくはフェニルエタノール);グアニジン誘導体(例えば、クロロヘキシジンもしくはポリヘキサメチレンビグアニド);ソルビン酸;ホウ酸;もしくは過酸化物を形成する防腐剤、または前述のものの2つ以上の組合せが挙げられる。薬学的に許容される抗酸化剤およびキレート化剤を用いることができ、これらには、様々な亜硫酸塩(例えば、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、または亜硫酸ナトリウム)、α−トコフェロール、アスコルビン酸、アセチルシステイン、8−ヒドロキシキノロム、アンチプリン、ブチル化ヒドロキシアニソールまたはブチル化ヒドロキシトルエン、EDTAなどが含まれる。アルコールなどのような共溶媒を用いることもできる。製剤の安定性を増強するために、シクロデキストリンなどの様々な物質を用いることもできる。
【0162】
界面活性剤、ジメチルスルホキシドおよび他のスルホキシドなどの特定の有機溶媒、ジメチルアセトアミドおよびピロリジン、複素環式アミンの特定のアミド、グリコール(例えば、プロピレングリコール)、プロピレンカーボネート、オレイン酸、アルキルアミンおよび誘導体、様々なカチオン性、アニオン性、非イオン性、および非イオン性の界面活性剤、両性界面活性剤などのような化合物をはじめとする、浸透増強剤を眼科用溶液中で利用することができる。利用することができるさらなる浸透増強剤としては、塩化セチルピリジニウム、イオノフォア(例えば、ラサロシド)、塩化ベンザルコニウム、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20(Tween(登録商標)20))、パラベン、サポニン、様々なポリオキシエチレンエーテル化合物(例えば、Brij(登録商標)35、Brij(登録商標)78またはBrij(登録商標)98)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、胆汁塩、および胆汁酸(例えば、コール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、グリコデオキシコール酸ナトリウム、ダウロデオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸、ケノデオキシコール酸およびウルソデオキシコール酸)、カプリン酸、アゾン、フシジン酸、ヘキサメチレンラウリンアミド、サポニン、ヘキサメチレンオクタンアミド、ならびにデシルメチルスルホキシドが挙げられる。化合物の親油性を低下させて、角膜浸透を増大させるために、電荷を帯びた賦形剤または対イオンを用いて薬物分子上の電荷を帯びた基を遮蔽/中和するイオン対形成製剤を利用することもできる。これらの製剤は、電荷を帯びたイオン対形成剤として、ソルビン酸、ホウ酸およびマレイン酸などのイオンを含むが、これらに限定されない。
【0163】
粘度増強剤または潤滑剤は、必要な場合または適切な場合に利用することができる。一態様では、粘度増強剤としては、水溶性ポリマー、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールをはじめとするポリオール、または水溶性ポリマーの組合せが挙げられる。一態様では、ポリエチレングリコール300または400を利用する。水溶性ポリマーの含量は、約0.25%〜約4.0%(w/v)であることができる。したがって、眼科用溶液は、例として、1%のポリビニルアルコール、1%のポリエチレングリコール300もしくは400、または両方を含むことができる。グリセロール、グリセリン、ポリソルベート80、プロピレングリコール、エチレングリコール、ポビドン、およびポリビニルピロリドンをはじめとする、他のポリオールを利用することができる。セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびメチルセルロース);デキストラン(例えば、デキストラン70);水溶性タンパク質(例えば、ゼラチン);カルボマー(例えば、カルボマー934P、カルボマー941、カルボマー940およびカルボマー974P);ならびにゴム(例えば、HP−グアー、キサンタンゴムまたはそれらの組合せ)をはじめとする、他の潤滑剤(涙液代用物と呼ばれることもある)を利用することもできる。利用することができる他の粘度増強剤としては、硫酸化または非硫酸化グリコサミノグリカン化合物などの多糖化合物が挙げられる。一態様では、多糖化合物は、ヒアルロン酸または薬学的に許容されるその塩(例えば、ヒアルロン酸ナトリウム)などの、非硫酸化グリコサミノグリカンである。任意の市販の分子量範囲のヒアルロン酸またはその塩を利用することができる。約0.05%〜約0.4%(w/v)のヒアルロン酸またはその塩を眼科用溶液中で利用することができる。別の態様では、多糖化合物は、デキストランなどの非硫酸化グリコサミノグリカンである。また別の態様では、多糖類は、コンドロイチン硫酸などの硫酸化グリコサミノグリカンである。
【0164】
眼科用送達に半固体製剤を利用して、薬物分子の角膜滞留時間を延長することができる。ポリエチレングリコール、ラノリンアルコール、オゾケライト、セレシン、微結晶ろう、界面活性剤、防腐剤、ソルビタンモノラウレート、白色ワセリンおよび軽流動ワセリン(鉱油)または他の石油状基剤を含有する軟膏を用いることができる。水性または非水性の懸濁液を用いることもできる。親水性ペプチドについては、薬学的に許容される油または石油を用いる懸濁液を用いることができる。懸濁液は、マイクロスフェアまたはマイクロ粒子、ナノ粒子、粘膜付着性粒子、粘度増強剤、界面活性剤および他の薬剤を含有することができる。粘膜付着性化合物としては、合成ポリマー(例えば、ポリアクリル酸およびポリカルボフィル);生体ポリマー(例えば、ヒアルロン酸もしくはカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC));ポリアニオン性ポリマー(例えば、ポリアクリル酸(PAA));ポリアクリル酸(例えば、カルボポール(登録商標)934P、ポリカルボフィル、およびプルロニック(登録商標)ポリオキシアルキレンエーテルを含むCMCもしくはPAA);またはポリカチオン性ポリマー(例えば、キトサン)が挙げられる。粘度増強剤、防腐剤、共溶媒、界面活性剤および他の薬剤のうちの1つまたは複数とともに薬学的に許容される油から構成されている(水中油型または油中水型の)エマルジョン(マイクロエマルジョンを含む)を用いることもできる。薬学的に許容される油としては、中鎖または長鎖の飽和または不飽和脂肪酸またはそのエステルを含む油をはじめとする、鉱油および有機油が挙げられる。したがって、薬学的に許容される油としては、様々な中鎖トリグリセリド、ならびにアーモンド油、ヒマシ油、綿実油、グリセリン(グリセロール)、落花生油、鉱油、ポリエチレングリコール、ケシ油、プロピレングリコール、サフラワー油、胡麻油、大豆油、オリーブ油および植物油などの油のいずれかが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシヒマシ油、チロキサポール、アルキルアリールエーテルスルホネート、レシチン、ソルビタンエステル、グリセリルモノステアレート、セチルアルコール、オクトキシノール−9、ノンオキシノール−9、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリソルベート20、60および80)などのような界面活性剤を利用することもできる。ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド、ポロキサマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボマー、ポリメチルビニルエーテル無水マレイン酸、およびヒドロキシプロピルエチルセルロースなどのポリマーから構成されていることが多い水性ゲルを利用することもできる。ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリルアミド)、およびエチレン無水マレイン酸などのポリマー、ならびに化学処理または熱処理したゼラチンを含め、膨潤性の水不溶性ポリマーを含有するハイドロゲルを利用することができる。眼内挿入物、リポソーム、ディスコーム(discome)、ニオソーム(niosome)、デドリマー、ナノ懸濁液、ナノ粒子およびマイクロ粒子を用いて、薬物の放出制御を提供することもできる。リポソームおよび他の放出制御剤に正の電荷を帯びさせて、負の電荷を帯びた角膜表面とのイオン相互作用を通じて滞留時間を延長させることができる。ナノ粒子は、生体分解性ポリマー(例えば、ポリアクチド(PLA)、ポリシアノアクリレート、ポリ(D,L−ラクチド))、および天然ポリマー(例えば、キトサン、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、アルブミンなど)から構成されていてもよい。
【0165】
6.5 製剤の投与経路
1つ以上の本発明のペプチドを含む製剤が注射によって投与される場合、注射は、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、または当技術分野で公知の他の手段によるものであってもよい。本発明のペプチドは、限定するものではないが、錠剤、カプセル、カプレット、懸濁液、粉末、凍結乾燥調製物、坐薬、点眼薬、皮膚貼付剤、経口可溶性製剤、スプレー、エアロゾルなどの製剤を含む、当技術分野で公知の任意の手段によって調剤することができ、また、緩衝剤、結合剤、賦形剤、安定化剤、抗酸化剤、および当技術分野で公知の他の薬剤と混合して調剤することができる。一般に、本発明のペプチドが細胞の表皮層を越えて導入される任意の投与経路を利用することができる。したがって、投与手段は、経粘膜投与、口腔投与、経口投与、経皮投与、吸入投与、経鼻投与、尿道内投与、経膣投与などのための製剤を含んでいてもよい。
【0166】
6.6 治療的有効量
一般に、患者に投与される本発明の環状ペプチドの実際の量は、投与様式、使用される製剤、および所望の応答に応じて、かなり広い範囲で変動する。治療のための投与量は、所望の治療効果をもたらすのに十分な量の、前述の手段または当技術分野で公知の任意の他の手段のいずれかによる投与である。したがって、治療的有効量は、患者の性的不能を治療的に緩和するか、または性的不能の発症もしくは再発を予防するもしくは遅延させるのに十分な本発明のペプチドまたは医薬組成物の量を含む。
【0167】
一般に、本発明の環状ペプチドは、活性が極めて高い。例えば、環状ペプチドは、選択される特定のペプチド、所望の治療応答、投与経路、製剤、および当業者に公知の他の因子に応じて、体重1kg当たり約0.1、0.5、1、5、50、100、500、1000または5000μg/kgで全身投与することができる。
【0168】
7.0 本発明のペプチド
一態様では、本発明は、環状部分内にHis−Phe−Argに由来するコア配列を含むが、コア部分内にTrpを含まない環状ペプチドを提供するものであり、ここで、Trp、またはその誘導体もしくは模倣体(少なくとも1つのアリールまたはヘテロアリールを含む側鎖を有するアミノ酸残基と定義され、Nal 1もしくはNal 2を含むが、これらに限定されない)は、C末端側の環状部分のすぐ外側にあるアミノ酸残基である。したがって、配列は、His−Phe−Arg−Xaa−Trpに由来するものであり、ここで、Xaaは、その側鎖が、別のアミノ酸の側鎖またはペプチドのN末端基のいずれかと環状架橋を形成するアミノ酸である。
【0169】
His−Phe−Arg−Xaa−Trpに由来するコア配列は、いくつかの置換を含むことができる。Hisの位置はHisであってもよく、または置換もしくは非置換Proもしくは少なくとも1つの1級アミン、2級アミン、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコール、エーテル、スルフィド、スルホン、スルホキシド、カルボミルもしくはカルボキシルを含む側鎖を有するアミノ酸であってもよい。置換Proとしては、Hyp、Hyp(Bzl)、Pro(4R−Bzl)またはPro(4R−NH)などのアミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。Pheの位置はPheであってもよいが、最も典型的には、置換もしくは非置換D−Phe、D−Nal 1、D−Nal 2またはピリジルを含む側鎖を有するアミノ酸である。Argの位置は、Arg、Lys、Orn、DabもしくはDapであってもよく、または置換もしくは非置換Pro、もしくはCitであってもよく、または少なくとも1つの1級アミン、2級アミン、グアニジン、尿素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはエーテルを含む側鎖を有するアミノ酸であってもよい。Xaaは、1級アミンを含む側鎖を有するアミノ酸(例えば、Lys、Orn、Dab、Dap)、カルボキシル基を有するアミノ酸(例えば、Asp、GluもしくはhGlu)、またはジスルフィド基を有するアミノ酸(例えば、CysもしくはPen)であってもよく、これらは全て、環状架橋の性質によって決まる。Trpの位置は、少なくとも1つの置換または非置換アリールまたはヘテロアリールを含む側鎖を有するアミノ酸(例えば、Trp、Nal 1またはNal 2)であってもよい。
【0170】
したがって、本発明は、式(VII)の環状ペプチドまたは薬学的に許容されるその塩を提供する。
Z−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Y(VII)
(式中、
Zは、HまたはN末端基であり;
Xaaは存在していてもよく、存在する場合、1〜3個のL−またはD−異性体アミノ酸残基であり;
XaaおよびXaaは、L−またはD−異性体アミノ酸であり、ここで、その側鎖は環状架橋を含み;
Xaaは、ヒドロキシル、ハロゲン、スルホンアミド、アルキル、−O−アルキル、アリール、アルキル−アリール、アルキル−O−アリール、アルキル−O−アルキル−アリール、もしくは−O−アリールで任意に置換されたL−もしくはD−Proであるか、またはXaaは、少なくとも1つの1級アミン、2級アミン、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、エーテル、スルフィド、もしくはカルボキシルを含む側鎖を有するアミノ酸のL−もしくはD−異性体であり;
Xaaは、フェニル、ナフチルまたはピリジルを含む側鎖を有するL−またはD−異性体アミノ酸であり、場合により、ここで、環は、ハロ、(C−C10)アルキル−ハロ、(C−C10)アルキル、(C−C10)アルコキシ、(C−C10)アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ニトロ、ニトリル、スルホンアミド、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、およびアルコキシ−カルボニルから独立に選択される1つ以上の置換基で置換されており;
Xaaは、L−もしくはD−Proであるか、またはXaaは、少なくとも1つの1級アミン、2級アミン、グアニジン、尿素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはエーテルを含む側鎖を有するL−またはD−異性体アミノ酸であり;
Xaaは存在していてもよく、存在する場合、1〜3個のL−またはD−異性体アミノ酸残基であり;かつ
YはC末端基である。)
【0171】
一態様では、Xaaは、ハロ、(C−C10)アルキル−ハロ、(C−C10)アルキル、(C−C10)アルコキシ、(C−C10)アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ニトロ、ニトリル、スルホンアミド、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、およびアルコキシ−カルボニルから独立に選択される1つ以上の置換基で任意に置換されたD−Pheであってもよい。
【0172】
別の態様では、XaaおよびXaaのうちの一方は、Asp、hGluまたはGluのL−またはD−異性体であってもよく、XaaおよびXaaのうちのもう一方は、Lys、Orn、DabまたはDapのL−またはD−異性体である。代わりの態様では、XaaおよびXaaの各々は、Cys、D−Cys、PenまたはD−Penであってもよい。
【0173】
別の態様では、Xaaは、線状もしくは分岐状アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリールまたはヘテロアリールを含む側鎖を有するアミノ酸であってもよい。
【0174】
別の態様では、Xaaは、1つ以上の環置換基で任意に置換された少なくとも1つのアリールまたはヘテロアリールを含む側鎖を有するアミノ酸であってもよく、1つ以上の置換基が存在するとき、同じものまたは異なるものであり、独立に、ヒドロキシル、ハロゲン、スルホンアミド、アルキル、−O−アルキル、アリール、または−O−アリールである。
【0175】
別の態様では、N末端基はC〜C17アシル基であってもよく、ここで、C〜C17は、線状もしくは分岐状アルキル、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、アリールもしくはアルキルアリール、線状または分岐状C〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル、もしくはアラルキル鎖またはN−アシル化された線状もしくは分岐状C〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル、もしくはアラルキル鎖を含む。
【0176】
別の態様では、Yは、ヒドロキシル、アミド、または1つもしくは2つの線状もしくは分岐状C〜C17アルキル、シクロアルキル、アリール、アルキルシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル、またはアラルキル鎖で任意に置換されたアミドであってもよい。
【0177】
したがって、本発明は、別の態様では、上記のように定義されるが、式中、
Xaaは、ハロ、(C−C10)アルキル−ハロ、(C−C10)アルキル、(C−C10)アルコキシ、(C−C10)アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ニトロ、ニトリル、スルホンアミド、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、およびアルコキシ−カルボニルから独立に選択される1つ以上の置換基で任意に置換されたD−Pheであり;
Xaaは、Arg、Lys、Orn、DabまたはDapのL−またはD−異性体であり;かつ
Xaaは、Trp、Nal 1またはNal 2のL−またはD−異性体である
式(VII)の環状ペプチドを提供する。
【0178】
前述のものにおいて、一態様では、Xaaは、HisのL−またはD−異性体であってもよく、別の態様では、ZはC〜Cアシル基であってもよく、かつXaaはNleのL−またはD−異性体であってもよい。
【0179】
前述のものにおいて、および式(I)において、置換Proは、例えば、Hyp、Hyp(Bzl)、Pro(4−Bzl)、およびPro(4−NH)であってもよい。
【0180】
式(I)から(VII)に包含されるペプチドは、式(I)に包含されるペプチドが異なる立体異性体形態で存在し得るように、立体中心または立体軸などのような1つ以上の非対称要素を含む。式(I)から(VI)に包含されるペプチドを含む、特定のペプチドと総称的に記載されるペプチドの両方について、エナンチオマーおよびジアステレオマーを含む、全てのキラル中心または他の異性中心における全ての形態の異性体が本明細書に包含されることが意図される。本発明のペプチドは各々、複数のキラル中心を含み、かつ本発明のペプチドをエナンチオピュアな調製物として用いることに加え、ラセミ混合物またはエナンチオマー的に濃縮された混合物として用いることができる。通常、本発明のペプチドは、エナンチオマー純度が維持されるような試薬、条件および方法を用いて、特定のL−またはD−アミノ酸などの、キラル的に純粋な試薬を使用して合成されるが、ラセミ混合物ができることが可能であり、かつそれが想定されている。そのようなラセミ混合物を、周知の技術を用いて任意に分離することができ、また、個々のエナンチオマーを単独で用いることができる。ペプチドが互変異性体形態で存在し得る場合、かつペプチドが互変異性体形態で存在し得る特定の温度、溶媒およびpH条件下では、各々の互変異性体形態は、平衡状態で存在するものであれ、主に1つの形態で存在するものであれ、本発明に含まれることが想定される。したがって、光学活性形態である、式(I)のペプチドの単一のエナンチオマーは、不斉合成や光学的に純粋な前駆体からの合成によるか、またはラセミ化合物の分割によって得ることができる。
【0181】
本発明はさらに、投与時に、代謝過程による化学的変換を受けた後、活性型の薬理学的ペプチドになる本ペプチドのプロドラッグを含むことが意図される。一般に、そのようなプロドラッグは、インビボで式(I)〜(VII)のペプチドに容易に変換される本ペプチドの機能的誘導体である。プロドラッグは、活性型の式(I)〜(VII)の親ペプチド薬をインビボで放出する任意の共有結合化合物である。好適なプロドラッグ誘導体の選択および調製のための従来的手順は、例えば、“Design of Prodrugs”,H.Bundgaard編,Elsevier,1985に記載されている。プロドラッグの典型例は、例えば、ヒドロキシル、カルボキシルまたはアミノ官能基のエステル化により、機能部分に生物学的に不安定な保護基を有する。したがって、限定するものではないが、例として、プロドラッグは、式(I)のペプチドを含み、その場合、例えば、式(I)のR基の低級アルキルエステル(例えば、Rが−OHである場合、この低級アルキルエステルは、アルキルラジカル中に1〜8個の炭素を含み得る)またはアラルキルラジカル中に6〜12個の炭素を有するアラルキルエステルなどの、エステルプロドラッグ形態が利用される。大まかに言うと、プロドラッグは、酸化、還元、アミノ化、脱アミノ化、ヒドロキシル化、脱ヒドロキシル化、加水分解、脱加水分解(dehydrolyzed)、アルキル化、脱アルキル化、アシル化、脱アシル化、リン酸化または脱リン酸化して、活性型の式(I)の親ペプチド薬をインビボで生じることができる化合物を含む。
【0182】
本発明はまた、式(I)〜(VI)に示された1つ以上の原子が、自然界で通常見出される原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子に置き換えられているという事実を別にすれば、式(I)〜(VI)に記載されたものと同一であるペプチドを含む。本発明の化合物に取り込ませることができる同位体の例としては、ハロゲン、炭素、窒素および酸素の同位体、例えば、それぞれ、H、H、13C、14C、15N、18Oおよび17Oが挙げられる。前述の同位体および/または他の原子の他の同位体を含有する本発明のペプチドおよび該化合物の薬学的に許容される塩または溶媒和物は本発明の範囲内である。本発明の特定の同位体標識化合物、例えば、Hおよび14Cなどの放射性同位体が取り込まれているものは、薬物および/または基質の組織分布アッセイなどの、種々のアッセイで用いることができる。重水素(H)による1つ以上の水素原子の置換などの、重同位体による置換は、場合によっては、代謝的安定性の増大をはじめとする薬理学的利点を提供することができる。同位体標識した式(I)から(VI)のペプチドは、通常、同位体標識していない試薬の代わりに、同位体標識した試薬を用いることによって調製することができる。
【0183】
8.0 本発明のペプチドの評価において利用される試験およびアッセイ
本発明のメラノコルチン受容体特異的ペプチドを種々のアッセイ系および動物モデルで試験して、結合、機能状態および効力を決定することができる。
【0184】
8.1 [I125]−NDP−α−MSHを用いる競合阻害アッセイ。
組換えhMCR−1aもしくはhMCR−4(各々の例において、接頭語のhはヒトを意味する)を発現するHEK−293細胞由来の膜ホモジネート、またはその代わりに、内在性マウスMCR−1を含有する、B16−F10マウスメラノーマ細胞由来の膜ホモジネートを用いて、競合阻害結合アッセイを実施した。以下の実施例において、全てのMCR−1値およびMCR−4値は、特に注記しない限り、ヒト組換え受容体についてものである。96ウェルポリプロピレン丸底プレート(VWRカタログ番号12777−030)中でアッセイを実施した。膜ホモジネートを、100mMのNaCl、2mMのCaCl、2mMのMgCl、0.3mMの1,10−フェナントロリン、および0.2%のウシ血清アルブミンを含む25mMのHEPES緩衝液(pH7.5)を含む緩衝液中で、0.1nMの[I125]−NDP−α−MSH(Perkin Elmer)および増加濃度の本発明の試験ペプチドとともにインキュベートした。37℃で90分間のインキュベーションの後、アッセイ混合物をGF/B Unifilterプレート(Perkin−Elmerカタログ番号6005177)上で濾過し、1ウェル当たり3mLの氷冷緩衝液で洗浄した。フィルターを風乾し、各ウェルに35μLのシンチレーションカクテルを添加した。結合した放射能について、プレートをMicrobetaカウンターでカウントした。1μM NDP−α−MSHの存在下での[I125]−NDP−α−MSHの結合阻害によって、非特異的結合を測定した。最大比結合(100%)は、1μMのNDP−α−MSHの非存在下および存在下における細胞膜に結合した放射能(cpm)の差と定義した。各アッセイを2つ1組で実施した。0%未満の結果を0%として記録し、実平均値を記載する。本発明のペプチドのKi値は、Graph−Pad Prism(登録商標)カーブフィッティングソフトウェアを用いて決定した。
【0185】
8.2 アゴニスト活性についてのアッセイ
hMCR−1を発現するヒトメラノーマ細胞株HBL(Kang,L.,et al.,“A selective small molecule agonist of melanocortin−1 receptor inhibits lipopolysaccharide−induced cytokine accumulation and leukocyte infiltration in mice”,J.Leuk.Biol.80:897−904(2006)を参照されたい)またはhMCR−4を発現するHEK−293細胞で機能的応答を誘発する本発明のペプチドの能力の尺度として、細胞内cAMPの蓄積を調べた。hMCR−1を発現するコンフルエントなHBL細胞または組換えhMCR−4を発現するHEK−293細胞を、酵素を含まない細胞解離緩衝液中でのインキュベーションによって培養プレートから剥離した。分散した細胞を、10mMのHEPES(pH7.5)、1mMのMgCl、1mMのグルタミン、0.5%のアルブミンおよび0.3mMの3−イソブチル−1−メチル−キサンチン(IBMX)(ホスホジエステラーゼ阻害剤)を含むイーグルの平衡塩類溶液に懸濁した。これらの細胞を、HBL細胞については1ウェル当たり0.4×10細胞の密度で、また、HEK−293については1ウェル当たり0.5×10細胞の密度で96ウェルプレートにプレーティングし、10分間プレインキュベートした。細胞を、200μLの総アッセイ容量中、0.05〜5000nMの濃度範囲でDMSO(最終DMSO濃度1%)に溶解した本発明のペプチドに、37℃で15分間、曝露させた。NDP−α−MSHを参照アゴニストとして用いた。クリプテート標識抗cAMPおよびd2標識cAMPを利用するCisbio Bioassays製のHTRF(登録商標)cAMP細胞ベースアッセイ系でcAMPレベルを測定し、プレートを、Perkin−Elmer Victorプレートリーダーにて665nMおよび620nMで読み取った。Graph−Pad Prism(登録商標)ソフトウェアを用いる非線形回帰分析によって、データ解析を行なった。最大効力(Emax)値は、本発明の各々の試験ペプチドについて、参照メラノコルチンアゴニストのNDP−α−MSHによって得られる最大効力値と比較して決定した。
【0186】
9.0 実施例
以下の構造のペプチドを合成し、表示したようにMCR−1およびMCR−4の平均Ki値を決定した。Ki値は全て、[I125]−NDP−α−MSHを用いて決定した。パーセンテージ値であるEmax値を除き、全ての結果をnMで表す。表題の一次配列を有するペプチドを上記の第5節に記載したように合成し、精製した。得られたペプチドは表示した配列を有している。合成および精製の後、各ペプチドを上記の第8節に記載したように試験し、示したような結果を得た。
【0187】

【0188】

【0189】

【0190】

【0191】

【0192】

【0193】

【0194】

【0195】

【0196】

【0197】

【0198】

【0199】

【0200】

【0201】

【0202】

【0203】

【0204】

【0205】

【0206】

【0207】

【0208】

【0209】

【0210】

【0211】

【0212】

【0213】

【0214】

【0215】

【0216】

【0217】

【0218】

【0219】

【0220】

【0221】

【0222】

【0223】

【0224】

【0225】

【0226】

【0227】

【0228】

【0229】

【0230】

【0231】

【0232】

【0233】

【0234】

【0235】

【0236】

【0237】

【0238】

【0239】

【0240】

【0241】

【0242】

【0243】

【0244】

【0245】

【0246】

【0247】

【0248】

【0249】

【0250】

【0251】

【0252】

【0253】
これらの好ましい実施例を具体的に参照しながら本発明を詳細に説明したが、他の実施例でも同じ結果を達成することができる。本発明の変形および修正は当業者に明白であり、本発明は全てのそのような修正および等価物に及ぶことが意図される。上に引用した全ての参考文献、出願、特許、および刊行物の開示内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の環状ペプチドにおいて、その全てのエナンチオマー、立体異性体もしくはジアステレオ異性体を含むことを特徴とする環状ペプチド、または前述のもののいずれかの薬学的に許容される塩。

(式中、
は、−H、−NH−R10、−NH−R10−R11または−NH−R11であり;
は、−CH−または−N−であり;
は、−H、−CHまたは−CH−であり、かつそれが−CH−である場合、Rとともに一般構造

の環を形成し;
が−CH−である場合、Rは−H、−(CH−であり、かつそれが−(CH−である場合、Rとともに環を形成し、ここで、−(CH−中のHはいずれもR12で任意に置換されているか、またはRは−(CH−R13−(CH−R14であり、ここで、どちらかの(CH中のHはいずれも−(CH−CHで任意に置換されており;
は−(CH−R15であり;
は、−H、−CHまたは−CH−であり、かつそれが−CH−である場合、Rとともに一般構造

の環を形成し;
が−CH−である場合、Rは−(CH−であり、かつそれが−(CH−である場合、Rとともに環を形成するか、またはRは−(CH−R16であり;
は、−R17−R18または−R18であり;
は、
−(CH−C(=O)−NH−(CH−、
−(CH−NH−C(=O)−(CH−、
−(CH−C(=O)−(CH−C(=O)−(CH−、
−(CH−C(=O)−NH−C(=O)−(CH−、
−(CH−NH−C(=O)−NH−(CH−、
−(CH−NH−C(=O)−(CH−C(=O)−NH−(CH−、または
−(CH−S−S−(CH
であり;
10は、1〜3個のアミノ酸残基であり;
11は、HまたはC〜C17アシル基であり、ここで、前記C〜C17は、線状または分岐状アルキル、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、アリールまたはアルキルアリールを含み;
12は存在していてもよく、存在する場合、各々の場合において独立に−R13−(CH−R14であり;
13は存在していてもよく、存在する場合、各々の場合において独立に
−O−、
−S−、
−NH−、
−S(=O)−、
−S(=O)−、
−S(=O)−NH−、
−NH−S(=O)−、
−C(=O)−、
−C(=O)−O−、
−O−C(=O)−、
−NH−C(=O)−O−、
−O−C(=O)−NH−、
−NH−C(=O)−、または
−C(=O)−NH−
であり;
14は、各々の場合において独立に、−H、−CH、−N(R19a)(R19b)、−NH−(CH−N(R19a)(R19b)、−NH−CH(=NH)−N(R19a)(R19b)、−NH−CH(=O)−N(R19a)(R19b)、−O(R19a)、−(R19a)(R19b)、−S(=O)(R19a)、−C(=O)−O(R19a)、

であり、ここで、R14中の環はいずれも1つ以上の環置換基で任意に置換されており、かつ1つ以上の置換基が存在するとき、同じものまたは異なるものであり、独立に、ヒドロキシル、ハロゲン、スルホンアミド、アルキル、−O−アルキル、アリール、−O−アリール、C(=O)−OH、またはC(=O)−N(R19a)(R19b)であり;
15は、ハロ、(C−C10)アルキル−ハロ、(C−C10)アルキル、(C−C10)アルコキシ、(C−C10)アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ニトロ、ニトリル、スルホンアミド、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、およびアルコキシ−カルボニルから独立に選択される1つ以上の置換基で任意に置換されたフェニル、ナフチルまたはピリジルであり;
16は、−H、−N(R19a)(R19b)、−NH−(CH−N(R19a)(R19b)、−NH−CH(=NH)−N(R19a)(R19b)、−NH−CH(=O)−N(R19a)(R19b)、−O(R19a)、線状または分岐状C〜C17アルキル鎖、−C(=O)−N(R19a)(R19b)、−S(=O)(R19a)、

であり、ここで、環はいずれも1つ以上の任意の環置換基で任意に置換されており、かつ1つ以上の置換基が存在するとき、同じものまたは異なるものであり、独立に、ヒドロキシル、ハロゲン、スルホンアミド、アルキル、−O−アルキル、アリール、アラルキル、O−アラルキル、または−O−アリールであり;
17は、1〜3個のアミノ酸残基であり;
18は、−OH、−N(R19a)(R19b)、−N(R19a)(CH−(C−C)シクロアルキル、または−O−(CH−(C−C)シクロアルキルであり;
19aおよびR19bは、各々独立に、HまたはC〜C線状もしくは分岐状アルキル鎖であり;
wは、各々の場合において独立に、0〜5であり、
xは1〜5であり;
yは1〜5であり;かつ
zは、各々の場合において独立に、1〜5である。)
【請求項2】
請求項1に記載の環状ペプチドにおいて、R17が、次式の単一アミノ酸残基であることを特徴とする環状ペプチド。

(式中、
20は、1つ以上の環置換基で任意に置換された

であり、かつ1つ以上が存在するとき、同じものまたは異なるものであり、独立に、ヒドロキシル、ハロゲン、スルホンアミド、アルキル、−O−アルキル、アリール、または−O−アリールである。)
【請求項3】
請求項2に記載の環状ペプチドにおいて、式(II)であることを特徴とする環状ペプチド。

【請求項4】
請求項3に記載の環状ペプチドにおいて、式(III)であることを特徴とする環状ペプチド。

(式中、R21a、R21bおよびR21cは、各々の場合において独立に、ハロゲン、ハロ、(C−C10)アルキル−ハロ、(C−C10)アルキル、(C−C10)アルコキシ、(C−C10)アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ニトロ、ニトリル、スルホンアミド、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、またはアルコキシ−カルボニルである。)
【請求項5】
請求項4に記載の環状ペプチドにおいて、式(IV)であることを特徴とする環状ペプチド。

(式中、R22は、HまたはC〜C線状もしくは分岐状アルキル、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、アリールもしくはアルキルアリールである。)
【請求項6】
請求項5に記載の環状ペプチドにおいて、式(V)であることを特徴とする環状ペプチド。

【請求項7】
請求項4に記載の環状ペプチドにおいて、式(VI)であることを特徴とする環状ペプチド。

【請求項8】
請求項1に記載の環状ペプチドにおいて、Rが−(CH−C(=O)−NH−(CH−であり、式中、xが4でかつyが3であるか、xが3でかつyが2であるか、またはxが2でかつyが1であることを特徴とする環状ペプチド。
【請求項9】
請求項1に記載の環状ペプチドにおいて、Rが−(CH−NH−C(=O)−(CH−であり、式中、xが1でかつyが2であるか、xが2でかつyが3であるか、またはxが3でかつyが4であることを特徴とする環状ペプチド。
【請求項10】
請求項1に記載の環状ペプチドにおいて、Rが、Rとともに、以下の一般構造の環を形成することを特徴とする環状ペプチド。

(式中、zは3である。)
【請求項11】
請求項1に記載の環状ペプチドにおいて、R17が、次式の単一アミノ酸残基であることを特徴とする環状ペプチド。

【請求項12】
請求項1に記載の環状ペプチドまたは薬学的に許容されるその塩および薬学的に許容される担体を含むことを特徴とする、医薬組成物。
【請求項13】
ヒトまたは非ヒト哺乳動物においてメラノコルチン受容体介在性疾患、適応症、状態または症候群を治療するための方法において、請求項12に記載の医薬組成物を投与する工程を含むことを特徴とする、方法。
【請求項14】
ヒトまたは非ヒト哺乳動物においてメラノコルチン受容体機能の変化に応答する状態を治療するための方法において、請求項12に記載の医薬組成物を投与する工程を含むことを特徴とする、方法。
【請求項15】
式(VII)であることを特徴とする、環状ペプチドまたは薬学的に許容されるその塩。
Z−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Y(VII)
(式中、
Zは、HまたはN末端基であり;
Xaaは存在していてもよく、存在する場合、1〜3個のL−またはD−異性体アミノ酸残基であり;
XaaおよびXaaは、L−またはD−異性体アミノ酸であり、ここで、その側鎖は環状の架橋を含み;
Xaaは、ヒドロキシル、ハロゲン、スルホンアミド、アルキル、−O−アルキル、アリール、アルキル−アリール、アルキル−O−アリール、アルキル−O−アルキル−アリール、もしくは−O−アリールで任意に置換されたL−もしくはD−Proであるか、またはXaaは、少なくとも1つの1級アミン、2級アミン、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、エーテル、スルフィド、もしくはカルボキシルを含む側鎖を有するアミノ酸のL−もしくはD−異性体であり;
Xaaは、ハロ、(C−C10)アルキル−ハロ、(C−C10)アルキル、(C−C10)アルコキシ、(C−C10)アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ニトロ、ニトリル、スルホンアミド、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、およびアルコキシ−カルボニルから独立に選択される1つ以上の置換基で任意に置換されたフェニル、ナフチルまたはピリジルを含む側鎖を有するL−またはD−異性体アミノ酸であり;
Xaaは、L−もしくはD−Proであるか、またはXaaは、少なくとも1つの1級アミン、2級アミン、グアニジン、尿素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはエーテルを含む側鎖を有するL−またはD−異性体アミノ酸であり;
Xaaは存在していてもよく、存在する場合、1〜3個のL−またはD−異性体アミノ酸残基であり;かつ
YはC末端基である。)
【請求項16】
請求項15に記載の環状ペプチドにおいて、Xaaが、ハロ、(C−C10)アルキル−ハロ、(C−C10)アルキル、(C−C10)アルコキシ、(C−C10)アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ニトロ、ニトリル、スルホンアミド、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、およびアルコキシ−カルボニルから独立に選択される1つ以上の置換基で任意に置換されたD−Pheであることを特徴とする環状ペプチド。
【請求項17】
請求項15に記載の環状ペプチドにおいて、XaaおよびXaaのうちの一方が、Asp、hGluまたはGluのL−またはD−異性体であり、XaaおよびXaaのうちのもう一方が、Lys、Orn、DabまたはDapのL−またはD−異性体であることを特徴とする環状ペプチド。
【請求項18】
請求項15に記載の環状ペプチドにおいて、XaaおよびXaaの各々がCys、D−Cys、PenまたはD−Penであることを特徴とする環状ペプチド。
【請求項19】
請求項15に記載の環状ペプチドにおいて、Xaaが、線状または分岐状アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリールまたはヘテロアリールを含む側鎖を有するアミノ酸であることを特徴とする環状ペプチド。
【請求項20】
請求項15に記載の環状ペプチドにおいて、Xaaが、1つ以上の環置換基で任意に置換された少なくとも1つのアリールまたはヘテロアリールを含む側鎖を有するアミノ酸であり、かつ1つ以上の置換基が存在するとき、同じものまたは異なるものであり、独立に、ヒドロキシル、ハロゲン、スルホンアミド、アルキル、−O−アルキル、アリール、または−O−アリールであることを特徴とする環状ペプチド。
【請求項21】
請求項15に記載の環状ペプチドにおいて、N末端基がC〜C17アシル基であり、ここで、前記C〜C17は、線状もしくは分岐状アルキル、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、アリールもしくはアルキルアリール、線状または分岐状C〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル、もしくはアラルキル鎖またはN−アシル化された線状もしくは分岐状C〜C17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル、もしくはアラルキル鎖を含むことを特徴とする環状ペプチド。
【請求項22】
請求項15に記載の環状ペプチドにおいて、Yが、ヒドロキシル、アミド、または1つもしくは2つの線状もしくは分岐状C〜C17アルキル、シクロアルキル、アリール、アルキルシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル、またはアラルキル鎖で任意に置換されたアミドであることを特徴とする環状ペプチド。
【請求項23】
請求項15に記載の環状ペプチドにおいて、
Xaaが、ハロ、(C−C10)アルキル−ハロ、(C−C10)アルキル、(C−C10)アルコキシ、(C−C10)アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ニトロ、ニトリル、スルホンアミド、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、およびアルコキシ−カルボニルから独立に選択される1つ以上の置換基で任意に置換されたD−Pheであり、
Xaaが、Arg、Lys、Orn、DabまたはDapのL−またはD−異性体であり、かつ
Xaaが、Trp、Nal 1またはNal 2のL−またはD−異性体であることを特徴とする環状ペプチド。
【請求項24】
請求項23に記載の環状ペプチドにおいて、Xaaが、HisのL−またはD−異性体であることを特徴とする環状ペプチド。
【請求項25】
請求項23に記載の環状ペプチドにおいて、ZがC〜Cアシル基であり、かつXaaがNleのL−またはD−異性体であることを特徴とする環状ペプチド。

【公表番号】特表2013−511553(P2013−511553A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540141(P2012−540141)
【出願日】平成22年11月23日(2010.11.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/057699
【国際公開番号】WO2011/063366
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(510319982)パラティン テクノロジーズ,インコーポレイテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】PALATIN TECHNOLOGIES,INC.
【Fターム(参考)】