説明

メラミン−ホルムアルデヒド樹脂からなるマイクロカプセルのホルムアルデヒド低減された分散液

【課題】ホルムアルデヒド低減されたマイクロカプセルの分散液の製造方法であって、該分散液で被覆された紙の、冷水抽出によって確認できるホルムアルデヒド含有率ができる限り低くなる製造方法と、低粘度のマイクロカプセル分散液、特に高い固体含有率を有する低粘度のマイクロカプセル分散液を提供する。
【解決手段】少なくとも1種のカルシウム塩を、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂を基礎とするマイクロカプセル分散液からのホルムアルデヒド放出を低減させるために用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂を基礎とするマイクロカプセル分散液からのホルムアルデヒド放出を低減するためのカルシウム塩の使用に関する。更に、本発明は、マイクロカプセルの分散液の製造方法において、部分メチル化されたメラミン−ホルムアルデヒド樹脂を、実質的に水不溶性の、カプセルコア形成性材料が分散されている水中で、アニオン性保護コロイドの存在下に縮合させることによって行う製造方法、並びに前記方法により得られるマイクロカプセルの分散液、そして印刷インキ及び紙被覆材料の製造のためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
約0.1〜100μmの範囲の直径を有してよい微分散性粒子は、種々の分野で広範に使用されている。例えば、球体(Vollkugel)としてポリシング剤及び/又は洗浄剤において、スペーサー(Abstandhalter)として印刷インキにおいて、寸法尺度(Massgroesse)として医学的検鏡調査などにおいて使用される。球体以外にも、液状の、固体のもしくは気体状の、水中に不溶性のもしくは実質的に不溶性の物質をコア材料として含有しうるマイクロカプセルが知られている。カプセル壁のための材料としては、例えばメラミン−ホルムアルデヒドポリマー、ポリウレタン、ゼラチン、ポリアミド又はポリ尿素が一般に使用されている。広く普及しているのは、ノーカーボン紙の製造のためのオイル充填されたマイクロカプセルの使用である。
【0003】
オイル充填されたマイクロカプセルを、そのために紙被覆材料中に混加ささせて、それで基紙を被覆する。目下、慣用の高い被覆速度は、紙被覆材料の低い粘度を必要とし、これは、他方でマイクロカプセル分散液の低い粘度も必要とする。それでもやはり、不必要な湿式作業を回避するためには、分散液のカプセル濃度はできる限り高いことが望ましかった。更に、良好な色強度歩留まりを達成するために、できる限り狭いカプセルサイズ分布を得ようと努められる。
【0004】
メラミン−ホルムアルデヒド樹脂などのアミノプラスト樹脂からなるマイクロカプセルの分散液は、製造に応じて、多かれ少なかれ遊離のホルムアルデヒドを含有する。環境的理由と産業衛生的理由から、マイクロカプセル分散液の他の特性に悪影響を与えずに、ホルムアルデヒド含有率をできるだけ低く保とうとすることに努力がなされている。その際、分散液自体のホルムアルデヒド含有率と、分散液で被覆された材料のホルムアルデヒド含有率との間で区別がなされるべきである。カプセル水性分散液中の遊離ホルムアルデヒドの低い濃度とは、必ずしも、被覆された材料中のホルムアルデヒド含有率を、例えばDIN EN 645及びDIN EN 1541によるいわゆる冷水抽出(Kaltwasserauszug)により測定したときに、低いホルムアルデヒド値がもたらされるということを意味するわけではない。
【0005】
ホルムアルデヒド含有率の低減のためには、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂を基礎とするマイクロカプセル分散液にホルムアルデヒド捕捉剤を添加することが慣用である。最も頻繁に使用されるホルムアルデヒド捕捉剤には、アンモニア、尿素、エチレン尿素及びメラミンが該当し、これらはカプセル分散液中のホルムアルデヒドの残留含有率を多かれ少なかれ効果的に低減させる。
【0006】
EP−A0383358号及びDE−A3814250号から、マイクロカプセル壁がメラミン−ホルムアルデヒド樹脂から形成されるマイクロカプセルからなる感光性材料が知られている。過剰のホルムアルデヒドの除去のために、硬化に際して尿素が添加される。
【0007】
EP−A319337号及びUS4,918,317号に記載される方法では、硬化の終わり頃に尿素が添加される。
【0008】
EP−A0415273号は、メラミン−ホルムアルデヒド縮合物からなる単分散性及び多分散性の球体粒子の製造と使用を記載している。縮合に際して遊離するホルムアルデヒドの結合のために、アンモニア、尿素又はエチレン尿素の使用が提案されている。
【0009】
メラミン−ホルムアルデヒド樹脂からなるマイクロカプセルであってその一様なカプセルサイズと密度の点で優れているものは、EP−A0218887号及びEP−A0026914号から知られている。しかしながら、これらのカプセル分散液は、なおも残留する遊離のホルムアルデヒドを含有し、その存在は、更なる加工において望ましくない。
【0010】
従って、EP−A0026914号は、ホルムアルデヒドを、その硬化に引き続き、ホルムアルデヒド捕捉剤としてのエチレン尿素及び/又はメラミンと結合させることを推奨している。
【0011】
DE19835114号から、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂を基礎とするマイクロカプセルの分散液が知られており、その際、そのメラミン−ホルムアルデヒド樹脂は、部分的にエーテル化されており、かつ水溶性の第一級の、第二級のもしくは第三級のアミンもしくはアンモニアを含有している。その硬化の前には、ホルムアルデヒド捕捉剤として尿素が添加される。
【0012】
DE19833347号は、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂及び/又はそのメチルエーテルの縮合によってマイクロカプセルを製造するための方法を記載しており、その際、その硬化の前には、尿素又は、尿素であってそのアミノ基がエチレン架橋もしくはプロピレン架橋と結合されているものが、ホルムアルデヒド捕捉剤として添加される。得られた分散液は、確かにホルムアルデヒドが少ないが、硬化前に尿素を添加することによって、マイクロカプセルの安定性とマイクロカプセル分散液の粘度に悪影響が及ぼされる。
【0013】
WO01/51197号は、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂の縮合によってマイクロカプセルを製造するための方法において、硬化の間に、メラミンと尿素とからなる混合物を添加する製造方法を教示している。
【0014】
上述のホルムアルデヒド捕捉剤を完成したマイクロカプセル分散液に添加することによって、あるいはマイクロカプセル分散液の製造に際して、規則正しく、分散液のホルムアルデヒド含有率は低下する。しかしながら、そのマイクロカプセル分散液を含有する被覆材料で被覆された紙の、冷水抽出によって測定できるホルムアルデヒド含有率は、多量のホルムアルデヒド捕捉剤を添加した場合にも、規定の限界未満には下がらない。
【特許文献1】EP−A0383358号
【特許文献2】DE−A3814250号
【特許文献3】EP−A319337号
【特許文献4】US4,918,317号
【特許文献5】EP−A0415273号
【特許文献6】EP−A0218887号
【特許文献7】EP−A0026914号
【特許文献8】DE19835114号
【特許文献9】DE19833347号
【特許文献10】WO01/51197号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、ホルムアルデヒド低減されたマイクロカプセルの分散液の製造方法であって、該分散液で被覆された紙の、冷水抽出によって確認できるホルムアルデヒド含有率ができる限り低くなる製造方法を提供することである。更なる課題は、低粘度のマイクロカプセル分散液、特に高い固体含有率を有する低粘度のマイクロカプセル分散液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題は、少なくとも1種のカルシウム塩を、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂を基礎とするマイクロカプセル分散液からのホルムアルデヒド放出を低減させるために用いる本発明による使用によって解決される。更に、本発明は、マイクロカプセルの分散液の製造方法において、部分メチル化されたメラミン−ホルムアルデヒド樹脂を、実質的に水不溶性の、カプセルコア形成性材料が分散されている水中で、アニオン性保護コロイドの存在下に縮合させることによって行う製造方法、並びに前記方法により得られるマイクロカプセルの分散液、そして印刷インキ及び紙被覆材料の製造のためのそれらの使用に関する。
【0017】
カルシウム塩とは、本発明の範囲においては、有機カルシウム塩、例えば酢酸カルシウムと同様に、好ましくは無機カルシウム塩、例えば炭酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム及び、特に水酸化カルシウムをも表す。
【0018】
メラミン−ホルムアルデヒド樹脂に対して、好ましくは0.5〜15質量%、特に好ましくは1〜10質量%、特に2〜8質量%のカルシウム塩が使用される。より多量のカルシウム塩も可能であるが、部分的に、マイクロカプセル分散液の薄い着色に導かれ、このことは用途の種類に応じては望ましくないことがある。
【0019】
マイクロカプセル分散液は、原則的に、部分メチル化されていてよいメラミン−ホルムアルデヒド樹脂を、実質的に水不溶性のカプセルコア形成性の材料が分散されている水中で、保護コロイドの存在下に縮合させることによって製造することができる。その際、マイクロカプセルの予備形成が行われ、それに引き続きカプセル壁の硬化が行われる。その予備形成は、好ましくは低いpH値、例えば3〜6.5のpH値で行われ、それに引き続き硬化は、温度上昇によって引き起こされる。本発明によれば、硬化の間に、及び/又は硬化の後に、少なくとも1種のカルシウム塩が添加される。
【0020】
例として、特に好ましい一方法での製造を詳説する:
この方法によれば、マイクロカプセルの分散液は、メラミン:ホルムアルデヒド:メタノールのモル比1:3.0:2.0〜1:6.0:4.0を有する部分メチル化されたメラミン−ホルムアルデヒド樹脂を、実質的に水不溶性の、カプセルコア形成性の材料が分散されている水中で、保護コロイドの存在下に、有利には保護コロイドとしての、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のホモポリマーもしくはコポリマーのアルカリ金属塩の存在下に、3〜6.5のpH値において縮合させ、そのマイクロカプセルを温度20〜50℃で予備形成させ、引き続きカプセル壁を、50℃より高く、100℃までの温度で硬化させ、その際、硬化の間に、及び/又は硬化の後に、少なくとも1種のカルシウム塩を添加することで得られる。
【0021】
本発明による方法は、一般に、カプセル化するコア材料と、メラミン:ホルムアルデヒド:メタノールのモル比1:3.0:2.0〜1:6.0:4.0、好ましくは1:3.5:2.2〜1:4.5:2.8、特に約1:3.9:2.4を有する部分メチル化されたメラミン−ホルムアルデヒド樹脂と、保護コロイドと、水とを合して予備混合物とし、該予備混合物を、酸、好ましくはギ酸によって、3〜6.5のpH値に調整し、そして該予備混合物を剪断条件にさらして、コア材料を分散させることで実施される。20〜50℃の範囲、好ましくは約35℃の温度において、マイクロカプセルは予備形成する。すなわち、分散されたコア材料の小滴の周りに、十分に架橋されていないメラミン−ホルムアルデヒド樹脂の壁が形成する。引き続き、温度を高めて、マイクロカプセルのカプセル壁を、架橋の形成によって硬化させる。カプセル壁の硬化は、50℃より高い温度で既に確認できるが、好ましくは65℃、特に好ましくは75℃が、硬化のための温度範囲の下限として選択される。水性分散液に関連するものなので、その硬化は、100℃未満の温度で、好ましくは95℃未満の温度で、特に好ましくは90℃未満の温度を温度の上限として実施することが望ましい。分散液のpH値に応じて、硬化は、異なる速度で起こり、その際、当該分散液は、3〜5のより低い温度で特に良好に硬化する。しかしながら、50℃より高い温度では、弱酸性ないし中性のpHの範囲においても硬化は明らかに観察できる。
【0022】
カプセル予備形成とカプセル硬化といった両方の段階に最適な温度は、その都度のpH値に依存して、簡単な一連の試験によって簡単に決定することができる。
【0023】
カプセル分散液を硬化温度にまで加熱することは、種々の様式で行うことができる。好ましい一実施態様においては、高温の水蒸気を、カプセル分散液中に注入する。水蒸気の温度は、例えば105〜120℃であり、圧力は、1.5〜3バールである。その際、凝縮によって、分散液の固体含有率がいくらか低減されることを顧慮すべきである。
【0024】
硬化の間に、及び/又は硬化の後に、カルシウム塩を分散液に添加する。その際、硬化温度に達した後にカルシウム塩を、硬化の間に分けてもしくは連続的にマイクロカプセル分散液に入れることが好ましいものと見なされ、その際、連続的な添加が好ましい。カルシウムの添加量は、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂に対して、好ましくは0.5〜15質量%、特に好ましくは1〜10質量%、特に2〜8質量%である。特に好ましい添加様式は、硬化温度に達した後に、予備形成されたマイクロカプセルの分散液に、カルシウム塩のスラリーもしくはカルシウム塩の溶液を、ある時間にわたって実質的に一定な質量流量で供給し始めることである。質量流量は、有利には、その添加が、硬化期間の少なくとも50%、特に少なくとも65%にまたがるように選択される。硬化期間は、一般に、0.5〜10時間、典型的には1〜3時間である。
【0025】
その際、pH値は、有利には、酸によって、例えばギ酸によって、3.8〜5.0に、好ましくは約4.5に調整され、そして場合によりそのpH値は保持される。
【0026】
更に、硬化温度に達した後に、メラミン、すなわちシアヌル酸トリアミドを、分けてもしくは連続的にマイクロカプセル分散液に入れることが好ましいものと見なされ、その際、連続的な添加が好ましい。メラミンの添加量は、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂に対して、5〜95.5質量%、好ましくは7〜40質量%、特に12.5〜35質量%であってよい。その添加は、その際、好ましくは、前記にカルシウム塩について記載されるように行われる。スラリー中のメラミン粒子の平均粒度は、好ましくは1〜50μm、特に約1〜5μmである。平均粒度は、好適には、Malvern Sizerによって測定することができる。
【0027】
特に好ましくは、マイクロカプセル分散液の硬化の間に、カルシウム塩とメラミンとからなる混合物を、分けてもしくは連続的に、好ましくは前記のようにして供給する。その際好ましくは、カルシウム塩とメラミンを含有する混合物は、質量比20:1〜1:20、好ましくは1:1〜1:10である。
【0028】
更に、尿素の併用は、冷水抽出によって確認できるホルムアルデヒド含有率の低下に対して相乗作用を有することが判明した。従って、本発明による方法は、好ましくは、硬化の間に、カルシウム塩と、尿素と、メラミンとの、例えば質量比1:1:3〜1:10:15、好ましくは1:2:4〜1:6:10を有する混合物を添加することで実施でき、目的に応じて、尿素を溶解して含有するカルシウム塩−メラミン水性スラリーの形で添加することで実施できる。
【0029】
好ましくは、硬化の後に、その分散液を水性塩基、有利には苛性ソーダ液で中和するかあるいは塩基性に、好ましくは9〜12の範囲のpH値に、有利には10〜11.5の範囲にして、"後硬化"が実施される。
【0030】
壁材料のための出発物質としては、好ましくは部分メチル化されたメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、すなわちメラミン:ホルムアルデヒド:メタノールのモル比1:3.0:2.0〜1:6.0:4.0、好ましくは1:3.5:2.2〜1:4.5:2.8、特に約1:3.9:2.4を有するメラミン−ホルムアルデヒド樹脂の部分メチルエーテルが使用される。メチルエーテルは、例えばDE19835114号に示されるのと同様にして製造され、その際、アルコールとしてメタノールが使用され、メラミン誘導体を添加せずに作業される。カプセル製造のために使用されるメラミン−ホルムアルデヒド樹脂のメラミン:ホルムアルデヒド:メタノールのモル比は、カプセル分散液に生ずる粘度に決定的な影響を有する。示されたモル比では、マイクロカプセル分散液の好ましい固体含有率と粘度との組合せが得られる。
【0031】
マイクロカプセルのためのコア材料としては、液状の、固体のもしくは気体状の、水中に不溶性ないし実質的に不溶性の物質が該当する。例えば、以下のもの:液体、例えばアルキルナフタリン、部分水素化されたテルフェニル、芳香族炭化水素、例えばキシレン、トルエン、ドデシルベンゼン、脂肪族炭化水素、例えばベンジン及び鉱油、パラフィン、クロロパラフィン、種々の化学的構成のワックス、フルオロ炭化水素、天然油、例えば落花生油、大豆油、さらに接着剤、芳香物質、香油、モノマー、例えばアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステル、スチレン、作用物質、例えば植物保護剤、赤リン、無機顔料及び無機顔料、例えば酸化鉄顔料;さらに着色物質、とりわけ発色剤や顔料を、アルキルナフタリン、部分水素化されたテルフェニル、ドデシルベンゼンや他の高沸点液体中に入れた溶液もしくは懸濁液が挙げられる。
【0032】
好適な発色剤は、冒頭に挙げた刊行物中に記載されている。
【0033】
コア材料の分散は、製造されるべきカプセルのサイズに応じて、例えばEP−A0026914号に記載されているような公知の様式で行われる。小さなカプセルは、特にそのサイズが50μm未満にあることが望ましい場合には、均質化装置もしくは分散装置を必要とし、その際、強制貫流装置を備えたもしくは備えない前記の装置を使用することができる。その均質化装置もしくは分散装置は、主として、予備形成段階の開始時に使用される。硬化段階の間には、分散液は、ただ、均一な完全混合のために低い剪断条件下で完全混合又は循環されるにすぎない。
【0034】
保護コロイドとしては、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のホモポリマーもしくはコポリマーのアルカリ金属塩、有利にはナトリウム塩が使用される。コモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、C1〜C3−アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ−C2〜C4−(メタ)アクリレート及び/又はN−ビニルピロリドンが適している。前記コポリマーは、好ましくは少なくとも40質量%の2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸単位を有する。好適なホモポリマー及びコポリマーは、EP−A0562344号に記載されている。保護コロイドは、好ましくは、100〜170のフィッケンチャーのK値又は200〜5000mPasの粘度(ブルックフィールド社製のRVT型装置において、スピンドル3、50rpmで23℃において20質量%水溶液中で測定した)を有する。特に、115〜150のK値を有するポリマー、あるいは粘度が400〜4000mPasであるポリマーが好ましい。
【0035】
メラミン−ホルムアルデヒド樹脂と保護コロイドとの質量比は、好ましくは3:1〜4.5:1、特に3.5:1〜4.0:1である。樹脂と保護コロイドとの比率及び保護コロイドの種類は、カプセルサイズとカプセルサイズ分布に影響を及ぼす。
【0036】
本発明により製造されるマイクロカプセル分散液は、望ましくは低粘度を有するので、好ましい再加工特性を有した高い固体含有率を有するマイクロカプセル分散液を製造することもできる。得られるマイクロカプセル分散液は、一般に、15〜60質量%の、有利には少なくとも40質量%の固体含有率を有するが、好ましくは少なくとも45質量%の、特に少なくとも48質量%の、特に好ましくは50〜53質量%の固体含有率を有する。マイクロカプセル分散液の粘度(ブルックフィールド社製のRVT型装置において、スピンドル3、50rpmで23℃において測定した)は、一般に、100mPas未満であり、特に90mPas未満である。
【0037】
高い固体含有率を有するマイクロカプセル分散液の製造のために、より適切には、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂と、保護コロイドと、カプセルコア形成性材料とからなる、少なくとも50質量%、好ましくは約55質量%の固体含有率を有する予備混合物を製造し、20〜50℃でマイクロカプセルの予備形成をもたらし、そして該分散液を、高温の水蒸気の注入によって硬化温度にまで加熱することで硬化させるという措置がとられ、その際、分散液の固体含有率は、蒸気凝縮物によって所望の値、例えば約50質量%の値に低下する。
【0038】
本発明による方法によって、狭いカプセルサイズ分布を有する、例えば商(d90−d10)/d50(ばらつき度)が0.3〜0.8、好ましくは0.3〜0.5であることを特徴とするマイクロカプセルの分散液が得られる。前記のd10値、d50値、d90値は、10%、50%、あるいは90%のカプセルが、限界値以下のカプセル直径を有するときのその限界値を示す。d10値、d50値、d90値は、好適には、Malvern Sizerによって測定できる。驚くべきことに、当業者の予想に反して、高い固体含有率、例えば50質量%より高い固体含有率を有する予備混合物から出発したときにも、望ましく狭いサイズ分布を有するマイクロカプセル分散液が得られる。マイクロカプセルは、一般に、1〜50μm、特に3〜8μmの範囲の平均直径(d50)を有する。係るマイクロカプセル水性分散液であって、そのコアが実質的に水不溶性の材料からなり、かつそのカプセル壁が縮合されたメラミン−ホルムアルデヒド樹脂からなり、マイクロカプセルの直径のd50値が3〜8μmの範囲にあり、商(d90−d10)/d50が0.3〜0.8の範囲にあり、分散液の固体含有率が少なくとも40質量%、好ましくは少なくとも45質量%であり、かつ23℃及び50rpmでの分散液のブルックフィールド粘度が100mPas未満であり、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂に対して0.5〜15質量%のカルシウム塩を含有している分散液が好ましい。
【0039】
更に、本発明は、一般に、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂を基礎とし、そのメラミン−ホルムアルデヒド樹脂に対して0.5〜15質量%のカルシウム塩を含有するマイクロカプセル水性分散液に関する。
【0040】
以下の実施例は、本発明による方法をより詳細に説明するものである。実施例において示される部及び%は、特に記載がない限り、質量部及び質量%である。
【実施例】
【0041】
使用した測定方法
1. 固体含有率
実施例で示される固体含有率は、乾燥(105℃で4時間)を通じて測定され、実質的に、マイクロカプセルと水溶性ポリマーとから構成される。カプセル直径は、主観的に顕微鏡下で、客観的にMalvern Sizerを用いて測定した。カプセル直径は、μmでd50値として示される。
【0042】
2. 粘度
カプセル分散液の粘度並びに水溶性保護コロイドの20%溶液の粘度は、23℃で、ブルックフィールド社製のRVT型装置を用いて、スピンドル3で50rpmにおいて測定した。K値は、フィッケンチャー法(Cellulosechemie 13(1932)58頁以降)に従って、水中0.5%で測定した。
【0043】
3. DIN EN 645及びDIN EN 1541による紙中のホルムアルデヒド濃度の測定
水8.75gと、マイクロカプセル分散液8.25gと、スペーサーとしての粉砕セルロース(Arbocel(登録商標)BSM55)1.30gと、スチレン及びブチルアクリレートからなる共重合体を基礎とする市販の50質量%バインダー分散液(Acronal(登録商標)S 320D)1.30gの念入りな均質化によって得られた塗工液で被覆された紙(約4.6g/m2)を、DIN EN 645に従って細砕し、そして冷水抽出を行った。濾液中のホルムアルデヒドを、DIN 1541に従ってアセチルアセトンを用いて測光測定を行った。
【0044】
実施例1
直径50mmを有する市販の分散ディスクを有する無段調節可能な分散機が取り付けられた円筒形状の2lの撹拌槽中に、連続して、フルオラン系反応性着色剤混合物(5部のPergascript(登録商標)I−2RNと、20部のPergascript I−2GNと、8部のPergascript I−Gと、67部のPergascript I−Rからなる、CIBA社)とをジイソプロピルナフタリン及び直鎖状アルカン(沸点220℃)の比率80:20の混合物中に溶かした5%溶液400gと、メチル化されたメラミンホルムアルデヒド樹脂(メラミン:ホルムアルデヒド:メタノールのモル比1:3.9:2.4)の70%溶液69gと、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸/ナトリウム塩の20%溶液(K値123;ブルックフィールド粘度770mPas)64gと、水道水350gと、10%ギ酸15gを仕込み、そして撹拌速度を約20m/sまでの周辺速度に調整することで加工して、カプセル分散液を得た。温度は、約35℃に保持した。
【0045】
60分の分散後に分散液はオイル不含であった;粒度は約5μmに調整した。分散ディスクの撹拌速度を、次に、槽内容物の均一な循環のために十分な値にまで下げた。高温蒸気注入により80℃の硬化温度に調整した後に、質量比6:3:1のメラミン/尿素/水酸化カルシウムからなる64.2%の水性スラリーを供給することで開始させ、そして90分間の期間にわたって全体で39.5gの該スラリー計量供給した。pH値は、前記の期間の間に、25%のギ酸(HCOOH)を用いて4.4で一定に保った。引き続き25%の苛性ソーダ液24gを添加した後に、その分散液は、11.0のpH値を有していた。30分間の後硬化を、80℃及びpH11.0で行った。全体で120分間の前記の硬化段階の後に、分散液を室温に冷却させた。測定されたpH値は、11.0であった。
【0046】
50%の固体含有率と粘度83mPasを有する均一なカプセル分散液が得られた。冷水抽出における遊離のホルムアルデヒド含有率の分析によれば、その値は20ppmであり、分散液中の遊離のホルムアルデヒド含有率の分析によれば、その値は0.01%であった。
【0047】
この実施例のカプセル分散液の加工特性と複写特性(Durchschreibeeigenschaft)は、現行の要求を満たしている。
【0048】
比較例1(本発明によるものでない)
実施例1と同様に行ったが、85℃の硬化温度に達した後に、質量比6.7:3.3のメラミン/尿素からなる67.2%の水性スラリーの供給で開始し、そして90分の期間にわたって全体で37.5gの該スラリー計量供給した。pH値は、前記の期間の間に、25%のギ酸(HCOOH)を用いて4.3で一定に保った。30分間の後硬化を、85℃及びpH4.3で行った。全体で120分間の前記の硬化段階の後に、その分散液を室温に冷却させ、そしてジエタノールアミンで中和し、25%アンモニアによりpH値を9.5に調整した。
【0049】
冷水抽出における遊離のホルムアルデヒド含有率の分析によれば、その値は100ppmであり、分散液中の遊離のホルムアルデヒド含有率の分析によれば、その値は0.01%であった。
【0050】
比較例2:
実施例1と同様に行ったが、80℃の硬化温度に達した後に、質量比6.7:3.3のメラミン/尿素からなる67.2%の水性スラリーの供給で開始し、そして90分の期間にわたって全体で37.5gの該スラリー計量供給した。pH値は、前記の期間の間に、25%のギ酸(HCOOH)を用いて4.4で一定に保った。ここで、25%の苛性ソーダ液28gの添加を行った。分散液は、11.0のpH値を有していた。30分間の後硬化を、80℃及びpH11.0で行った。全体で120分間の前記の硬化段階の後に、分散液を室温に冷却させた。測定されたpH値は、11.5であった。
【0051】
冷水抽出における遊離のホルムアルデヒド含有率の分析によれば、その値は200ppmであり、分散液中の遊離のホルムアルデヒド含有率の分析によれば、その値は0.12%であった。
【0052】
実施例2:
実施例1と同様に行ったが、80℃の硬化温度に達した後に、質量比6.7:3.3のメラミン/尿素からなる67.2%の水性スラリーの供給で開始し、そして90分の期間にわたって全体で37.5gの該スラリー計量供給した。pH値は、前記の期間の間に、25%のギ酸(HCOOH)を用いて4.4で一定に保った。ここで、50%の水酸化カルシウムスラリー5gの添加を行い、引き続き25%の苛性ソーダ液24gの添加を行った。分散液は、11.0のpH値を有していた。30分間の後硬化を、80℃及びpH11.0で行った。全体で120分間の前記の硬化段階の後に、分散液を室温に冷却させた。測定されたpH値は、11.2であった。
【0053】
冷水抽出における遊離のホルムアルデヒド含有率の分析によれば、その値は20ppmであり、分散液中の遊離のホルムアルデヒド含有率の分析によれば、その値は0.01%であった。
【0054】
実施例3:
実施例1と同様に行ったが、25%の苛性ソーダ液の添加を16gに減少させた。分散液は、10.6のpH値を有していた。30分間の後硬化を、80℃及びpH10.6で行った。全体で120分間の前記の硬化段階の後に、分散液を室温に冷却させた。測定されたpH値は、9.7であった。
【0055】
冷水抽出における遊離のホルムアルデヒド含有率の分析によれば、その値は40ppmであり、分散液中の遊離のホルムアルデヒド含有率の分析によれば、その値は0.02%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のカルシウム塩を、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂を基礎とするマイクロカプセル分散液のホルムアルデヒド放出の低減のために用いる使用。
【請求項2】
請求項1記載の使用であって、カルシウム塩として水酸化カルシウムを用いる使用。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の使用であって、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂に対して0.5〜15質量%のカルシウム塩を用いる使用。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の使用であって、メラミン:ホルムアルデヒド:メタノールのモル比1:3.0:2.0〜1:6.0:4.0を有する部分メチル化されたメラミン−ホルムアルデヒド樹脂を、実質的に水不溶性の、カプセルコア形成性材料が分散されている水中で、保護コロイドの存在下に、3〜6.5のpH値において縮合させ、温度20〜50℃でマイクロカプセルを予備形成させ、引き続きカプセル壁を50℃より高く、100℃までの温度で硬化させることによってマイクロカプセルを製造するための方法において、硬化の間に、及び/又は硬化の後に、少なくとも1種のカルシウム塩を添加する使用。
【請求項5】
部分メチル化されていてよいメラミン−ホルムアルデヒド樹脂を、実質的に水不溶性の、カプセルコア形成性材料が分散されている水中で、保護コロイドの存在下に縮合させ、マイクロカプセルを予備形成させ、引き続きカプセル壁を硬化させることによってマイクロカプセル分散液を製造するための方法において、硬化の間に、及び/又は硬化の後に、少なくとも1種のカルシウム塩を添加するマイクロカプセル分散液の製造方法。
【請求項6】
メラミン:ホルムアルデヒド:メタノールのモル比1:3.0:2.0〜1:6.0:4.0を有する部分メチル化されたメラミン−ホルムアルデヒド樹脂を、実質的に水不溶性の、カプセルコア形成性材料が分散されている水中で、保護コロイドの存在下に、3〜6.5のpH値において縮合させ、温度20〜50℃でマイクロカプセルを予備形成させ、引き続きカプセル壁を50℃より高く、100℃までの温度で硬化させることによってマイクロカプセル分散液を製造するための方法において、硬化の間に、及び/又は硬化の後に、少なくとも1種のカルシウム塩を添加するマイクロカプセル分散液の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、硬化温度に達した後に、カルシウム塩スラリー又はカルシウム塩溶液の供給を、ある時間にわたって実質的に一定な質量流量で開始させるマイクロカプセル分散液の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の方法において、硬化の間に、カルシウム塩/メラミンの質量比20:1〜1:20のカルシウム塩とメラミンとの混合物を添加するマイクロカプセル分散液の製造方法。
【請求項9】
請求項6から8までのいずれか1項に記載の方法において、50℃より高く、100℃までの温度で、少なくとも1種のカルシウム塩を添加し、引き続き水性塩基で中和させ、あるいは塩基性にするマイクロカプセル分散液の製造方法。
【請求項10】
請求項5から9までのいずれか1項に記載の方法により得られるマイクロカプセル分散液。
【請求項11】
メラミン−ホルムアルデヒド樹脂を基礎とし、そのメラミン−ホルムアルデヒド樹脂に対して0.5〜15質量%のカルシウム塩を含有するマイクロカプセル水性分散液。
【請求項12】
マイクロカプセル水性分散液であって、そのコアが実質的に水不溶性の材料からなり、かつそのカプセル壁が縮合されたメラミン−ホルムアルデヒド樹脂からなり、マイクロカプセルの直径のd50値が3〜8μmの範囲にあり、商(d90−d10)/d50が0.3〜0.8の範囲にあり、分散液の固体含有率が少なくとも40質量%であり、かつ23℃及び50rpmでの分散液のブルックフィールド粘度が100mPas未満であり、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂に対して0.5〜15質量%のカルシウム塩を含有しているマイクロカプセル水性分散液。
【請求項13】
請求項10から12までのいずれか1項に記載のマイクロカプセル分散液を、印刷インキ又は紙被覆材料の製造のために用いる使用。

【公開番号】特開2008−142708(P2008−142708A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315681(P2007−315681)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】