説明

メンブレンキーボード

【課題】メンブレンシート上の電極がゆがまない1枚のメンブレンシート構造のメンブレンキーボードを提供する。
【解決手段】メンブレンシート25は補強板26上に配設され、上部シート27と下部シート28で構成される。上部シート27と下部シート28は接続部29により接続されている。接続部29は上部シート27および下部シート28より幅狭で、折り曲げられたとき上部シート27および下部シート28に対して変位可能である。補強板26の、接続部29に対向する位置には逃げ穴34が形成され、接続部29の撓み部分が逃げ穴34に入り込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーソナルコンピュータなどに使用されるメンブレンキーボードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のメンブレンキーボードは、補強板の上に2枚のメンブレンシートを有し、2枚のメンブレンシートはスペーサを介して対向して配設され、メンブレンシートにはそれぞれ電極が印刷形成されている。キートップが押下されると、上側のメンブレンシートが押されて両電極が接触し、キースイッチがオンするようになっている。従来のメンブレンシートは、図2に示すように上部シート1と下部シート2に分かれており、シート1、2上のそれぞれの印刷パターンはリード引出し部3、4によって図示しないキーボード制御回路基板のコネクタに接続される。
【0003】
しかしながら上部シートと下部シートが別構造になっていると、リード引出し部がそれぞれに必要となり、キーボード制御基板のコネクタも2個必要になる。このため製造コストが高くなり、最近では図3に示すようなリード引き出し部を1箇所にまとめた1枚構造のメンブレンシートが用いられている。1枚構造のメンブレンシートを開示するものとして、例えば下記特許文献1に記載されたものがある。
【0004】
図3に示すように、メンブレンシート5を1枚構造にすると、上下部のシート6、7を接続するための接続部8が必要になる。リード引き出し部9を下部シート7に設けた場合、接続部8には上部シート6のパターンを下部シート7に引き回すためのパターンを配置するのであるが、こうした1枚構造のメンブレンシートにすることにより、リード引き出し部が少なくなり、製造コストの削減が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−245563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記従来の1枚構造のメンブレンシートを用いたキーボード構造においては、キーボードを組み立てる際、1枚のメンブレンシートは図4に示すようにキースイッチホルダ10で上部から補強板11に押さえ込んで固定されるが、メンブレンシート5の接続部8付近は折り曲げられて撓んでいる。接続部8における撓みは、図4に示すように、下側に補強板11があるために上側に大きく湾曲変形し、湾曲の頂部8aはキースイッチホルダ10の下面よりも高い位置になっている。
【0007】
接続部8の頂部8aがキースイッチホルダ10より高くなっていることにより、上部シート6がその影響を受けて上方へ浮き上がろうとし、接続部8の近くに設けられた電極12の部分がゆがむ。キースイッチホルダ10と補強板11との間にはポスト14が設けられているが、上部シート6はスイッチ押下時に電極12、13を接触させる必要から水平方向に移動可能になっており、接続部8の湾曲変形により上部シート6がゆがむことがある。
【0008】
上部の電極12の部分がゆがむと、上下の電極12、13の間隔が変化し、キー押下時のストロークや押下力などの押下特性が変化したり、最悪時には電極同士が接触してキーを押下しないにもかかわらずスイッチがオンしてしまったりするという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、接続部を有するメンブレンシートを接続部で折り曲げ、スペーサを介して対向させることにより上下のメンブレンシートを構成し、下側のメンブレンシートを前記接続部まで延在する補強板上に配設するとともに、上下のメンブレンシートにそれぞれ電極を対向して配設したメンブレンキーボードにおいて、前記接続部は、上側のメンブレンシートおよび下側のメンブレンシートより幅狭に形成され、折り曲げられた状態で上側のメンブレンシートおよび下側のメンブレンシートに対して変位可能で、前記補強板の前記接続部に対向する位置に、前記接続部の折り曲げによる撓みを逃がす逃げ穴を設け、前記接続部の撓みを前記逃げ穴内に入り込ませることにより上側のメンブレンシートのゆがみをなくしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上側のメンブレンシートと下側メンブレンシートを接続する接続部の撓みが逃げ穴に入り込むので、接続部の撓みが上側メンブレンシートにゆがみを生じさせることはなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態のメンブレンキーボードを示す断面図である。
【図2】従来のメンブレンシートを示す斜視図である。
【図3】従来のメンブレンシートを示す斜視図である。
【図4】従来の問題点を示す斜視図である。
【図5】他の実施の形態のメンブレンシートを示す斜視図である。
【図6】他の実施の形態のメンブレンシートを示す斜視図である。
【図7】他の実施の形態のメンブレンシートを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面にしたがって説明する。図1は本発明の実施の形態のメンブレンキーボードを示す断面図である。図1において、実施の形態のメンブレンキーボード20は、キートップ21、カップゴム22、アクチュエータ23、キースイッチホルダ24、メンブレンシート25および補強板26とから構成される。メンブレンシート25は、上部シート27と下部シート28が接続部29で接続されて構成されており、上部シート27には電極30が、下部シート28には電極31がそれぞれ印刷形成されている。上部シート27と下部シート28の間にはスペーサ32が配設されて所定の間隔を保っている。
【0013】
メンブレンシート25の構造は、図3に示すものと同様である。メンブレンシート25は補強板26上に配設されており、キースイッチホルダ24との間で保持され、キースイッチホルダ24から延びた円柱状のポスト33により位置固定されている。即ち、ポスト33はキースイッチホルダ24と一体に形成されており、メンブレンシート25、スペーサ32および補強板26に形成された孔を通って補強板26の下側に突出させ、突出した下端部を加熱して変形させたもので、このようにポスト33でキースイッチホルダ24と補強板26を接続することにより、メンブレンシート25は補強板26とキースイッチホルダ24との間で固定される。キースイッチホルダ24は各キースイッチ毎に設けられ、ポスト33は各キースイッチホルダ24にそれぞれ複数個設けられている。ポスト33は、下部シート28は補強板26に押さえ付けることにより堅く固定するが、上部シート27は間隔をあけて固定していることから完全に動かないようには固定していない。キースイッチホルダ24、補強板26およびポスト33は下部シート28の固定手段を構成する。
【0014】
補強板26の、メンブレンシート25の接続部29に対向する位置には逃げ穴34が形成されている。逃げ穴34が形成されたことにより、接続部29の撓み部分が逃げ穴34に入り込み、接続部29において上側と下側の両側に撓み部分が形成される。
【0015】
逃げ穴34を設けたことにより、従来は主として上部シート27だけに撓みの影響が及ぼされてゆがみが出ていたのに対して、上部シート27に対する接続部29の撓みの影響は小さくなり、上部シート27がゆがむことがなくなる。即ち、上部シート27がゆがむほどの影響力はなくなる。
【0016】
図5、図6は他の実施の形態のメンブレンシートを示す斜視図である。なお図6は図5に対して表裏を逆にした状態を示す。図1に示す実施の形態で示したメンブレンシートでは、接続部29の撓みが上側と下側とでほぼ均等の大きさになっていたが、図5、図6に示すメンブレンシート40では、接続部43は全面的に下部シート42側に大きく撓むようになっている。図5、図6において、下部シート42には切り込み部44が形成され、切り込み部44の間に接続部43が形成されている。そして接続部43で折り曲げて上下のシート41、42を対向させる場合に、上部シート41のエッジ45と接続部43の境で折り曲げることにより、図6に示すように上部シート41側には撓みがほとんど生じないようにすることができる。即ち、切り込み部44は下部シート42をより多く撓ませる手段を構成する。
【0017】
図7は他の実施の形態のメンブレンシートを使用したメンブレンキーボードを示す。図7において、補強板26には上記の実施の形態と同様に逃げ穴34が形成されている。下部シート42側に撓んだ接続部43の撓みは逃げ穴34に入り込み、撓みの影響は上部シート41にはほとんど及ばない。このとき下部シート42は、ポスト33により補強板26に密着されることにより固定されているので、接続部43の撓みの影響を受けても下部シート42がゆがむことはない。
【0018】
なお他の実施の形態では、下部シート42に切り込み44を形成しているが、上部シート41と下部シート42のエッジ位置をずらし接続部43の撓みが全面的に下部シート42側になるようにすれば、必ずしも切り込み部は必要はない。
【0019】
上記各実施の形態では、接続部43の撓みの逃げ部として逃げ穴34を補強板26を貫通するように形成したが、逃げ穴の形状は、接続部29の撓み部分が必要なだけ逃げられる形状であればよく、必ずしも上記実施の形態の形状に限定されない。さらに撓みの逃げ部として補強板に切り欠きを設けるようにしてもよい。
【0020】
以上詳細に説明したように本発明によれば、補強板の、メンブレンシートの接続部に対向する位置に逃げ部を形成したことにより、メンブレンシートの上部シートにゆがみが発生することがなくなり、スイッチの押下特性が変化することがなく、また押下していないのにオンするという誤動作をすることもなくなる。
【符号の説明】
【0021】
20 メンブレンキーボード
25、40 メンブレンシート
26 補強板
27、41 上部シート
28、42 下部シート
29、43 接続部
34 逃げ穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続部を有するメンブレンシートを接続部で折り曲げ、スペーサを介して対向させることにより上下のメンブレンシートを構成し、下側のメンブレンシートを前記接続部まで延在する補強板上に配設するとともに、上下のメンブレンシートにそれぞれ電極を対向して配設したメンブレンキーボードにおいて、
前記接続部は、上側のメンブレンシートおよび下側のメンブレンシートより幅狭に形成され、折り曲げられた状態で上側のメンブレンシートおよび下側のメンブレンシートに対して変位可能で、
前記補強板の前記接続部に対向する位置に、前記接続部の折り曲げによる撓みを逃がす逃げ穴を設け、前記接続部の撓みを前記逃げ穴内に入り込ませることにより上側のメンブレンシートのゆがみをなくしたことを特徴とするメンブレンキーボード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−238767(P2009−238767A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173762(P2009−173762)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【分割の表示】特願2000−64510(P2000−64510)の分割
【原出願日】平成12年3月9日(2000.3.9)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】