説明

メンブレンスイッチ

【課題】スイッチをオンにするための荷重の大きさを設定することができるメンブレンスイッチを提供する。
【解決手段】可撓性を有し、一対の対向する絶縁基板11、16と、一方の絶縁基板11の対向面上に形成され、第1の電極121を有する第1の導電回路と、他方の絶縁基板16の対向面上に形成され、前記第1の電極に対応する位置に設けられた第2の電極151と、第2の電極151と接続する配線部とを有する第2の導電回路と、一対の絶縁基板11、16の間に狭持され、第1の電極121と第2の電極151との間に隙間132を形成するスペーサとを備え、前記第2の電極151の少なくとも一部が、配線部の位置より高い位置にあることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メンブレンスイッチ及びスイッチユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
絶縁体で構成されたフィルム状基材と、当該フィルム状基材の一方の面に、一端部側に第1端子部及び他端部側に第1電極部を有する第1導電体と、当該フィルム状基材の一方の面に、一端部側に第2端子部及び他端部側に第2電極部を有し当該第1導電体と絶縁している第2導電体と、当該フィルム状基材の当該一方の面側でスペーサを介し当該フィルム状基材から僅かに離隔して当該フィルム状基材とほぼ平行に設けられたフィルム状部材と、当該フィルム状部材における当該フィルム状基材側の面に設けられた第3の導体とを備え、当該フィルム状基材の一部、当該フィルム状部材の一部の少なくとも一方が撓むことにより、第1導電体、第2導電体及び第3導電体が導通し、スイッチをオンにするメンブレンスイッチが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−38828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記メンブレンスイッチにおいて、スイッチをオンにする荷重の大きさを設定する場合、スペーサの開口面積を設定することが考えられるが、メンブレンスイッチの大きさは回路設計等により予め決まっているため、スペーサの開口面積の大きさを設定し、該荷重を調整することが困難であった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、絶縁基板の面上に形成される、回路部から電極の接点までの高さを設定し、スイッチをオンにするための荷重の大きさを設定することができるメンブレンスイッチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、可撓性を有し、一対の対向する絶縁基板と、前記一方の絶縁基板の対向面上に形成され、第1の電極を有する第1の導電回路と、前記他方の絶縁基板の対向面上に形成され、前記第1の電極に対応する位置に設けられた第2の電極と前記第2の電極と接続する配線部とを有する第2の導電回路と、前記一対の絶縁基板の間に狭持され、前記第1の電極と前記第2の電極との間に隙間を形成するスペーサとを備え、前記第2の電極の少なくとも一部が、前記第2の導電回路の位置より高い位置にあることを特徴とするメンブレンスイッチにより上記課題を解決する。
【0007】
上記発明において、前記第2の電極と前記他方の絶縁基板との間に形成される荷重調整部をさらに備えてもよい。
【0008】
また上記発明において、他方の絶縁基板の前記隙間に対応する位置は、前記一方の絶縁基板に向かって凸状にしてもよい。
【0009】
また上記発明において、第2の電極と前記荷重調整部とが、同材料により形成されてもよい。
【0010】
また上記発明において、荷重調整部が絶縁性樹脂により形成されてもよい。
【0011】
また上記発明において、前記第2の電極は、前記前記第1の電極に向かってドーム状になっていてもよい。
【0012】
また上記発明において、荷重調整部が光硬化性樹脂により形成されてもよい。
【0013】
また上記発明において、第2の導電回路は、前記第1の導電回路より下側に配設され、前記第2の導電回路に対向する、前記第1導電回路の対向面は、平面状であってもよい。
【0014】
また上記発明において、第2の電極は、少なくとも2層の電極層を有しており、前記2層の電極層は、それぞれ異なる導電材料により形成されてもよい。
【0015】
また上記発明に係るメンブレンスイッチを複数有し、複数のメンブレンスイッチうち、一のメンブレンスイッチに含まれる第2の電極の少なくとも一部が、他のメンブレンスイッチに含まれる第2の電極の位置より高い位置にあるメンブレンスイッチユニットにより上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第2の電極の少なくとも一部が、配線部の位置より高い位置にあるため、スイッチをオンし易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】発明の実施形態に係るメンブレンスイッチユニットの平面図である。
【図2】図1のメンブレンスイッチの平面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】図1のメンブレンスイッチの製造工程を示す平面図である。
【図5】図1のメンブレンスイッチの製造工程を示す平面図である。
【図6】図3のスペーサシートの平面図である。
【図7】比較例のメンブレンスイッチの平面図である。
【図8】発明の他の実施形態に係るメンブレンスイッチの断面図である。
【図9】発明のさらに他の実施形態に係るメンブレンスイッチの断面図である。
【図10】発明のさらに他の実施形態に係るメンブレンスイッチの断面図である。
【図11】発明のさらに他の実施形態に係るメンブレンスイッチの断面図である。
【図12】発明のさらに他の実施形態に係るメンブレンスイッチの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
《第1実施形態》
図1は、本実施形態のメンブレンスイッチユニットの平面図を示す。また、図2は図1のメンブレンスイッチユニットのうち、X部分を拡大した、メンブレンスイッチ10の平面図を示し、図3は、図2のA−A線に沿う断面図を示す。
【0020】
図1〜図3に示すように、本例のメンブレンスイッチユニットには、複数のメンブレンスイッチ10を含み、メンブレンスイッチ10は、一対の絶縁シートである絶縁基板11及び絶縁基板16を、後述するスペーサを介して重ね併せることにより形成される。絶縁基板11及び絶縁基板16は、可撓性を有した絶縁性のフィルムであって、例えばポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene Terephthalate)やPEN等からなるシートである。また絶縁基板11及び絶縁基板16の主面には、それぞれ銀、銅、カーボン等からなる導電体12及び導電体15がスクリーン印刷等により形成される。
【0021】
図1に示すように、絶縁基板11には、それぞれのメンブレンスイッチ10を形成する位置に電極121が形成され、電極121には、配線122が接続されている。配線122の一端は、絶縁基板11のテイル部101に集約される。同様に、絶縁基板16には、それぞれのメンブレンスイッチ10を形成する位置に電極151が形成され、電極151には、配線152が接続されている。配線152の一端は、絶縁基板11のテイル部101に集約される。なお、導電体12の回路設計は、電極121の配設位置、電極121と配線122との接続形態により、適宜設計され、導電体15についても、同様である。
【0022】
次に、本例のメンブレンスイッチ10の詳細な構造について、図3を用いて説明する。メンブレンスイッチ10には、絶縁基板16が下側に配設され、導電体15及び絶縁部17が絶縁基板16の主面上に、形成される。導電体15は、電極151及び配線152により形成される。電極151と配線152は、スクリーン印刷により形成され、同一の厚さである。そのため、電極151及び配線152は、一体的に形成される。絶縁基板11は、絶縁基板16の上側であり、導電体12と導電体15とを対向させ、配設される。導電体12は、電極121及び配線122により形成される。電極121と配線122は、スクリーン印刷により形成され、同一の厚さである。また、電極151及び配線152は、一体的に形成される。これにより絶縁基板11及び絶縁基板16の主面が対向する。
【0023】
スペーサシート13は、絶縁基板11、12と同様の材料からなり、電極121及び電極151に対応する開口部131が設けられており、スペーサシート13の両面には粘着材14が形成される。そして、絶縁基板11及び絶縁基板16は、粘着材14を介して、スペーサシート13を狭持して固着する。スペーサシート13は、絶縁性のフィルムにより形成される。上記の通り、スペーサシート13には開口部131が設けられており、開口部131において電極121及び電極151が対向するよう、絶縁基板11、絶縁基板16及びスペーサシート13が配置される。そのため、スペーサシート13により、電極121及び電極151の間に、隙間132が形成される。
【0024】
絶縁部17は、絶縁基板16の主面上であって、電極151の下側に形成され、電極121と絶縁基板16との間に、形成される。絶縁部17はドーム状であり、上から見ると円形状をしている。また絶縁部17の厚さについて、絶縁部17の底面(絶縁基板16の主面)を基準とすると、中央部の高さが一番高く、周囲に向かって低くなっている。また絶縁部17は、絶縁基板16側の開口部131に臨むように配設され、隙間132に収まるよう配設される。そして、電極151が絶縁部17に当接し、導電体15は、絶縁部17を覆うように、絶縁基板16の主面上に形成される。電極151の表面は、絶縁部17の表面に沿って形成されるため、電極151は電極121に向かってドーム状になる。
【0025】
そして電極151の頂点部分について、電極121に荷重が加わると、電極121は電極151に向かって変形し、メンブレンスイッチ10がオンになると、少なくとも図3に示す点Aを接点として、電極121は電極151と接触する。
【0026】
すなわち、電極121と接触する電極、電極151の接点Aは、絶縁部17の厚さが大きい部分の上に配設され、配線152の位置より高くなっている。言い換えると、電極151は、絶縁基板16と対向する絶縁基板11の対向面に向かって突出する形状をしている。さらに言い換えると、電極151の接点Aを含む部分が、絶縁基板11に向けて底上げされている。これにより、電極151の少なくとも一部が、配線152の位置より高い位置に形成される。
【0027】
次に、本例のメンブレンスイッチ10の製造方法について、図4〜図6を用いて、説明する。図4は絶縁基板16に絶縁部17を形成した後のメンブレンスイッチの平面図を示し、図5は図4の絶縁基板10に導電体15を形成した後のメンブレンスイッチの平面図を示し、図6は、スペーサシート13の平面図を示す。
【0028】
最初に、絶縁基板16として、例えば厚さ100μmの絶縁性フィルムシートを用意する。そして、図4に示すように、絶縁基板16の主面上において、電極151が形成される位置に、ソルダーレジストをスクリーン印刷により印刷し、乾燥させて、例えば厚さ40μmの絶縁部17を形成する。
【0029】
そして、図5に示すように、絶縁部17を覆うように、絶縁基板16の主面上に、銀パターンを印刷し、乾燥させて、例えば厚さ10μmの導電体15を形成する。導電体15について、電極151は、絶縁部17を覆う位置に形成され、配線152は、電極151に接続される位置に形成される。絶縁部17の直径は例えば2.5mm、電極151の直径は例えば3.0mmである。
【0030】
同様に、絶縁基板11として、例えば厚さ100μmの絶縁性フィルムシートが用意され、絶縁基板11の主面上において、銀パターンが印刷され、乾燥され、例えば厚さ10μmの導電体12が形成される。導電体12について、電極121は、電極151と対応する位置に形成される。また電極121の直径は、例えば3.0mmである。絶縁基板16と異なる点は、絶縁基板11には、絶縁部17が形成されない点である。
【0031】
図6に示す、例えば直径5.0mmの開口部131が設けられた、例えば厚さ50μmのスペーサシート13を、図3に示すように、接着層14を介して、絶縁基板11と絶縁基板16との間に挟む。接着層14には、両面粘着材が用いられる。また絶縁基板11の電極121及び絶縁基板16の電極151は、開口部131に臨む位置に、配設され、電極121及び電極151は対向している。これにより、電極121と電極151の間には、隙間132が形成される。
【0032】
次に、上記の製造方法により形成された本例と、下記の比較例のメンブレンスイッチとオン加重及びオンストロークを測定し、その結果を以下に記載する。
【0033】
本例のメンブレンスイッチ10について、絶縁基板11及び絶縁基板16は、帝人デュポンフィルム(株)社製 型番:HSL 厚さ:100μmを用い、銀ペーストは、東洋紡(株)社製 型番:DX−351H−30を、ソルダ−レジストは、日立化成工業(株)社製 型番:SN9000を、両面粘着材は、東洋インキ製造(株)社製 型番:DF9720を用いた。
【0034】
一方、比較例のメンブレンスイッチは、図7に示すように。本例のメンブレンスイッチ10に対して、絶縁部17を有さない点が異なり、残りの構成は同様である。また使用した材料も同じである。図7は、比較例のメンブレンスイッチの断面図を示し、図3に対応する図である。
【0035】
測定は、直径2mmのアルミ製で、先端がフラット形状であるアクチュエータを用いて、それぞれのメンブレンスイッチの電極121に荷重を加え、回路抵抗が100Ωになった時点のオン荷重の大きさ(N:ニュートン)及びオンストロークの大きさ(mm)を測定した。測定結果を表1に示す。なお、本例及び比較例のサンプル数を4つずつ用意し、それぞれ測定を行った。
【0036】
【表1】

【0037】
表1に示すように、本例のメンブレンスイッチ10は、比較例のメンブレンスイッチに対して、オン荷重の大きさを小さくすることができ、またオンストロークの大きさを小さくすることができる。
【0038】
ところで、メンブレンスイッチ10において、オン荷重及びオンストロークの大きさを調整し、小さくするためには、絶縁基板11又は絶縁基板16の厚さを調整する、スペーサシート12の開口部131の大きさを調整する、又は、スペーサシート13及び接着層14の厚さを調整することが考えられる。しかし、絶縁基板11又は絶縁基板16の厚さの調整は、フィルムの剛性を保つために、薄くするには限界がある。また開口部131の大きさは、電極121又は電極151を含めた回路設計上、決まるものであるため、調整することは困難であった。また、スペーサシート13及び接着層14の厚さは、絶縁基板11と絶縁基板16との間の粘着力と関係するため、当該厚さの調整には限界があった。
【0039】
また、絶縁基板11、絶縁基板16又はスペーサシート13の厚さを薄くした場合、スイッチの組み立て工程やスクリーン印刷工程の際、構成部品の取り扱い(ハンドリング)が難しくなるため、例えばフィルムの折れ曲がり等が生じてしまい、作業時間が延びる問題があり、フィルムが折れて傷がつく可能性があった。
【0040】
本例は、電極151の少なくとも一部を、配線152の位置より高くするため、当該一部が電極121と接触し、電極121と電極151との接点間の距離を短くすることができ、メンブレンスイッチ10のオン荷重を小さくすることができる。また、従来と異なり、絶縁基板11、絶縁基板17又はスペーサシート13の厚さを調整し薄くしていないため、設計上の膜厚の規定の制限を受けず、生産性の低下を防ぎ、オン荷重を小さくし、スイッチをオンし易くすることができる。
【0041】
また本例は、絶縁部17の厚さを規定することにより、電極151の少なくとも一部の位置を、配線152の位置より高くし、電極121と電極151との接点距離を調整し、メンブレンスイッチ10のオン荷重を設定することができる。これにより、従来のメンブレンスイッチに比べて、容易にスイッチのオン荷重又はオンストロークの大きさを調整することができる。
【0042】
また本例の導電体15は、電極151の少なくとも一部分が、電極121に向かって、ドーム状になっている。これにより、電極151は、角を有さず、尖った部分を有さないため、電極151を絶縁基板16における絶縁基板11側の対向面上に形成する際、電極151が角又は尖った部分により破れることを防ぐことができ、導電体15の耐久性を高めることができる。また、メンブレンスイッチ10がオンになる際、電極121は、ドーム状の電極151の頂点部分を接点として接するため、本例は、当該頂点部分以外の部分の電極材料の量を削減することができる。
【0043】
また本例において、導電体15は、導電体12の下側に配設し、電極151の少なくとも一部を、配線152の位置より高くし、導電体12の絶縁基板16側の対向面を、平面状とする。メンブレンスイッチ10がオンになる際、絶縁基板11及び導電体12が撓るため、導電体15より導電体12の耐久性を高めることが好ましい。そのため、本例は、導電体12の絶縁基板16側の対向面を平面状にし、導電体15の絶縁基板11側の対向面を凸状又はドーム状にする。これにより、本例は、スイッチオンにより撓りにくい方に導電体15を配設するため、撓りに対し、スイッチとしての耐久性を向上させることができる。
【0044】
また、本例のメンブレンスイッチユニットに含まれる、複数のメンブレンスイッチ10において、一のメンブレンスイッチ10の導電体15の少なくとも一部を、他のメンブレンスイッチ10の導電体15の位置より高い位置にしてもよい。これにより、本例は、当該一のメンブレンスイッチ10と当該他のメンブレンスイッチ10のオン荷重を異なるよう設定することができる。
【0045】
なお、本例のメンブレンスイッチ10は、電極121と接触する電極151の接点の位置が、配線152の位置より高くなるよう構成されるが、隙間132において、電極121と当該接点との間の距離が、他の電極121と電極151との距離より短くしてもよい。また、隙間132において、絶縁基板16を基準として、導電体15のうち、電極151の接点の高さが、一番高くなるように構成してもよい。
【0046】
また本例において、絶縁部17は光硬化性樹脂により形成されてもよい。絶縁部17が熱硬化性樹脂により形成される場合、溶剤の蒸発により体積収縮が生じるが、絶縁部17が光硬化性樹脂により形成される場合、光を照射させることで材料を硬化させ、体積収縮が生じにくいため、本例は、絶縁部17の厚さの調整を容易に行うことができ、電極121と電極151との間の距離を容易に設定することができる。
【0047】
なお本例において、図3に示すメンブレンスイッチ10は、説明のために、導電体15を有する絶縁基板16を、絶縁基板11の下側に配置するが、当該絶縁基板16を絶縁基板11の上側に配置してもよい。
【0048】
なお、本例の電極121が本発明の「第1の電極」に相当し、導電体12が「第1の導電回路」に、電極151が本発明の「第2の電極」に、配線152が「配線部」に、導電体15が「第2の導電回路」に相当する。また、本例のスペーサシート13及び接着層14、または、スペーサシート13が、本発明の「スペーサ」に相当する。
【0049】
また絶縁部17は、絶縁基板16の主面から電極151の接点までの高さを調整し、オン荷重の大きさを調整する部材であって、本発明の「荷重調整部」に含まれる。
【0050】
《第2実施形態》
図8は、発明の他の実施形態に係る、メンブレンスイッチ10の断面図を示す。本例は、上述した第1実施形態に対して、絶縁部17を備えず、代わりに、導電体15を複数層に重ねる点が異なる。これ以外の構成で上述した第1実施形態と同じ構成は、その記載を適宜、援用する。以下、図8を用いて、本例のメンブレンスイッチ10を説明する。
【0051】
本例のメンブレンスイッチ10には、絶縁基板16の対向面上に、複数の導電体15が形成される。導電体15は、隙間132において複数層になっており、スペーサシート13を介して狭持される部分において単層になっている。複数層の導電体15の部分は、下層から順に、電極151a、電極151b及び電極151cの三層の構造になっている。電極151aは、配線152と同一層である。導電体15の複数層の部分は、銀パターンを複数回、印刷し、乾燥させることで形成される。これにより、配線152は単層で形成され、電極151は複層で形成されるため、電極121と接触する、電極151の接点の位置は、配線152の位置より高い位置にある。
【0052】
本例のメンブレンスイッチ10は、電極151の少なくとも一部を配線152より高い位置となり、電極121と電極151との接点間の距離を短くすることができるため、メンブレンスイッチ10のオン荷重を小さくすることができる。また、本例の導電体15は、最下層から最上層まで同材料で形成されるため、生産工程に負荷をかけずに、電極151の接点の位置を配線152の位置より高くし、メンブレンスイッチ10のオン荷重を小さくすることができる。
【0053】
また本例は、電極151の少なくとも一部を配線152より高い位置となり、導電体15の層の数を規定することによって、層の数に応じて、電極121と電極151との接点距離を調整し、メンブレンスイッチ10のオン荷重を設定することができ、容易にスイッチのオン荷重又はオンストロークの大きさを調整することができる。
【0054】
なお、本例は、上記のように、、最上層の電極151cより下層の電極151a及び電極151bにより、絶縁基板16の主面から電極151の接点までの高さを調整し、当該電極151a及び電極151bが本発明の「荷重調整部」に含まれる。
【0055】
また、導電体15の複数層の部分は、必ずしも3層である必要なく、2層でも4層以上であってもよい。
【0056】
また本例は、電極151の接点の位置を配線152の位置より高くするが、隙間132において、電極151と接触する電極121の接点の位置を、配線122の位置より低くしてもよい。
【0057】
また本例は、絶縁部17を絶縁基板16と導電体15との間に形成するが、前記隙間132において、絶縁基板11と電極12との間に形成してもよい。
【0058】
《第3実施形態》
図9は、発明の他の実施形態に係る、メンブレンスイッチ10の断面図を示す。本例は、上述した第2実施形態に対して、隙間132における、導電体15の構造が異なる。これ以外の構成で上述した第1及び第2実施形態と同じ構成は、その記載を適宜、援用する。以下、図9を用いて、本例のメンブレンスイッチ10を説明する。
【0059】
本例のメンブレンスイッチ10には、絶縁基板16の対向面上に、複数の導電体15が形成される。導電体15は、隙間132において複数層になっており、スペーサシート13を介して狭持される部分において単層である。複数層の導電体15の部分は、下層から順に、電極151d、電極151eの2層に構造になっている。電極151eは、配線152と同一層であり、一体形成されている。
【0060】
導電体15の製造方法について、まず銀パターンを印刷し乾燥させることで電極151dを絶縁性基板16の対向面に形成し、その後、電極151bを覆うように、銀パターンを印刷し乾燥させることで電極151e及び配線152を絶縁性基板16の対向面上に形成する。これにより、配線152は単層で形成され、電極151は複層で形成されるため、電極121と接触する、電極151の接点の位置は、配線152の位置より高い位置となる。
【0061】
本例のメンブレンスイッチ10は、電極151の少なくとも一部が配線152より高い位置となり、電極121と電極151との接点間の距離を短くすることができるため、メンブレンスイッチ10のオン荷重を小さくすることができる。また、本例の導電体15は、最下層から最上層まで同材料で形成されるため、生産工程に負荷をかけずに、電極151の少なくとも一部が配線152より高い位置にし、メンブレンスイッチ10のオン荷重を小さくすることができる。
【0062】
また本例は、隙間132において、導電体151dの層の数又は厚さを規定することによって、層の数又は厚さに応じて、電極121と電極151との接点距離を調整し、メンブレンスイッチ10のオン荷重を設定することができ、容易にスイッチのオン荷重又はオンストロークの大きさを調整することができる。
【0063】
なお、本例は、上記のように、隙間132において、電極151dにより、絶縁基板16の主面から電極151の接点までの高さを調整し、当該電極151a及び電極151bが本発明の「荷重調整部」に含まれる。
【0064】
また、導電体15の複数層の部分は、必ずしも2層である必要なく、3層以上であってもよい。
【0065】
《第4実施形態》
図10は、発明の他の実施形態に係る、メンブレンスイッチ10の断面図を示す。本例は、上述した第1実施形態に対して、絶縁部17を備えず、代わりに、導電体41を備える点が異なる。これ以外の構成で上述した第1実施形態と同じ構成は、その記載を適宜、援用する。以下、図10を用いて、本例のメンブレンスイッチ10を説明する。
【0066】
本例のメンブレンスイッチ10は、絶縁基板16の対向面上に、導電体15及び導電体41を備える。導電体41は、隙間132に配設され、電極151の主面上に形成される。また
導電体41は、導電体15と異なる導電性材料により形成され、導電体15と電気的に接続される。そして、メンブレンスイッチ10がオンされることにより、導電体41は、電極121と接触するため、スイッチの電極としての作用を有する。これにより、配線152は単層で形成され、電極部分は複層で形成されるため、電極121と接触する、導電体41の接点の位置は、配線152の位置より高い位置にある。
【0067】
本例のメンブレンスイッチ10は、電極151の少なくとも一部が配線152より高い位置となり、電極121と電極151との接点間の距離を短くすることができるため、メンブレンスイッチ10のオン荷重を小さくすることができる。また隙間132において、導電体41の厚さを規定することによって、当該厚さに応じて、電極121と導電体41との接点距離を調整し、メンブレンスイッチ10のオン荷重を設定することができ、容易にスイッチのオン荷重又はオンストロークの大きさを調整することができる。
【0068】
《第5実施形態》
図11は、発明の他の実施形態に係る、メンブレンスイッチ10の断面図を示す。本例は、上述した第1実施形態に対して、絶縁部17を備えず、代わりに、導電体51を備える点が異なる。これ以外の構成で上述した第1実施形態と同じ構成は、その記載を適宜、援用する。以下、図11を用いて、本例のメンブレンスイッチ10を説明する。
【0069】
本例のメンブレンスイッチ10は、絶縁基板16の対向面上に、導電体15及び導電体41を備える。導電体51は、隙間132に配設され、絶縁基板16の主面上に形成される。そして、導電体51を覆うように、導電体15が絶縁基板16の主面上と導電体41の主面上に形成される。導電体51は、導電体15と異なる導電性材料により形成され、導電体15と電気的に接続される。これにより、配線152は単層で形成され、電極部分は複層で形成されるため、電極121と接触する、電極151の少なくとも一部は、配線152の位置より高い位置にある。
【0070】
本例のメンブレンスイッチ10は、電極151の少なくとも一部が配線152より高い位置となり、電極121と電極151との接点間の距離を短くすることができるため、メンブレンスイッチ10のオン荷重を小さくすることができる。また隙間132において、導電体51の厚さを規定することによって、当該厚さに応じて、電極121と電極151との接点距離を調整し、メンブレンスイッチ10のオン荷重を設定することができ、容易にスイッチのオン荷重又はオンストロークの大きさを調整することができる。
【0071】
なお、本例は、上記のように、隙間132において、導電体51により、絶縁基板16の主面から電極151の接点までの高さを調整し、当該電極51が本発明の「荷重調整部」に含まれる。
【0072】
《第6実施形態》
図12は、発明の他の実施形態に係る、メンブレンスイッチ10の断面図を示す。本例は、上述した第1実施形態に対して、絶縁部17を備えず、代わりに、絶縁基板16の形状が異なる。これ以外の構成で上述した第1実施形態と同じ構成は、その記載を適宜、援用する。以下、図12を用いて、本例のメンブレンスイッチ10を説明する。
【0073】
本例のメンブレンスイッチ10の絶縁基板16が、隙間132において、絶縁基板16の対向面、言い換えると、絶縁基板11に向けて、凸状に形成されている。凸状の絶縁基板16は、エンボス加工により、電極151に相当する部分を下側から突き出して形成される。そして電極151が絶縁基板16の凸状の部分に配設されるよう、導電体15は、絶縁基板16の対向面上に形成される。これにより、電極121と接触する、電極151の接点の位置は、配線152の位置より高い位置となり、導電体15は、当該接点を含む、電極151の少なくとも一部が、ドーム状になる。
【0074】
本例は、電極151の少なくとも一部が配線152より高い位置となり、電極121と電極151との接点間の距離を短くすることができるため、メンブレンスイッチ10のオン荷重を小さくすることができる。また隙間132において、絶縁基板16の凹み部分の高さに応じて、電極121と電極151との接点距離を調整し、メンブレンスイッチ10のオン荷重を設定することができ、容易にスイッチのオン荷重又はオンストロークの大きさを調整することができる。
【0075】
また本例の導電体15は、電極151の少なくとも一部が、電極121に向かって、ドーム状になっている。これにより、電極151は、角を有さず、尖った部分を有さないため、電極151を絶縁基板16の対向面上に形成する際、電極151が角又は尖った部分により破れることを防ぐことができ、導電体15の耐久性を高めることができる。また、メンブレンスイッチ10がオンになる際、電極121は、ドーム上の電極151の頂点部分を接点として接するため、本例は、当該頂点部分以外の部分の電極材料の量を削減することができる。
【符号の説明】
【0076】
10…メンブレンスイッチ
11…絶縁基板
12…導電体
121…電極
122…配線
13…スペーサシート
131…開口部
132…隙間
14…接着層
15…導電体
151…電極
151a、151b、151c、151d、151e…電極
152…配線
16…絶縁基板
17…絶縁部
41…導電体
51…導電体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有し、一対の対向する絶縁基板と、
前記一方の絶縁基板の対向面上に形成され、第1の電極を有する第1の導電回路と、
前記他方の絶縁基板の対向面上に形成され、前記第1の電極に対応する位置に設けられた第2の電極と、前記第2の電極と接続する配線部とを有する第2の導電回路と、
前記一対の絶縁基板の間に狭持され、前記第1の電極と前記第2の電極との間に隙間を形成するスペーサとを備え、
前記第2の電極の少なくとも一部が、前記配線部の位置より高い位置にあることを特徴とする
メンブレンスイッチ。
【請求項2】
前記第2の電極と前記他方の絶縁基板との間に形成される荷重調整部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載のメンブレンスイッチ。
【請求項3】
前記他方の絶縁基板の前記隙間に対応する位置は、前記一方の絶縁基板に向かって凸状であることを特徴とする請求項1記載のメンブレンスイッチ。
【請求項4】
前記第2の電極と前記荷重調整部とが、同材料により形成されることを特徴とする請求項2記載のメンブレンスイッチ。
【請求項5】
前記荷重調整部が絶縁性樹脂により形成されることを特徴とする請求項2記載のメンブレンスイッチ。
【請求項6】
前記第2の電極は、前記第1の電極に向かってドーム状になっていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のメンブレンスイッチ。
【請求項7】
前記荷重調整部が光硬化性樹脂により形成されることを特徴とする請求項2記載のメンブレンスイッチ。
【請求項8】
前記第2の導電回路は、前記第1の導電回路より下側に配設され、
前記第2の導電回路に対向する、前記第1導電回路の対向面は、平面状であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のメンブレンスイッチ。
【請求項9】
前記第2の電極は、少なくとも2層の電極層を有しており、
前記2層の電極層は、それぞれ異なる導電材料により形成されることを特徴とする
請求項1記載のメンブレンスイッチ。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のメンブレンスイッチを複数有し、
前記複数のメンブレンスイッチうち、一のメンブレンスイッチに含まれる第2の電極の少なくとも一部が、他のメンブレンスイッチに含まれる第2の電極の位置より高い位置にあることを特徴とする
メンブレンスイッチユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−258447(P2011−258447A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132957(P2010−132957)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】