説明

モジュールアセンブリにおける接着剤の選択的硬化

【課題】バッテリモジュール等の多くの要素を有するアセンブリのためのモジュール化されたコンポーネントを組み立てる際の接着剤使用に付随するコストを低減すること。
【解決手段】(a)UV硬化型の高濡れ性接着剤を、複数の要素が装着された第一のモジュール固定具内に分注(分配)する。第一モジュール固定具は、各接着ウェル(凹部)が、該要素のうちの一つ以上の第一の部分を収容する複数の接着ウェルを形成し、該モジュール固定具は、該接着ウェルのうちの一つ以上と連通する一つ以上の開口を含む。(b)シールゾーンにおいて、UV硬化を、分注された接着剤の第一の部分に選択的に適用する。該シールゾーンは、前記開口を囲む一つ以上の領域を含み、該シールゾーン内の分注された接着剤は、該モジュール固定具内に分注され続ける間に相当量の接着剤が開口から出てくるのを抑えるよう十分に硬化する。その後、UV硬化を接着剤の第二部分に適用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、数個から数十個の要素を有するアセンブリのためのモジュール構造に関する。より具体的には、アセンブリ構造のための、最も具体的には、バッテリモジュールアセンブリ構造のための、選択的に硬化可能な低粘度/低表面張力接着剤の使用のためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一体化モノリシック構造に一緒に固定された複数の要素を有するモジュールアセンブリを製造することは一般的である。複数の要素を固定するための一つの方法では、それらの要素を一つ以上の固定具に結合する接着剤が用いられる。それらの固定具は、典型的には、該要素に、該アセンブリの内部に、または、他の用途のためにアクセスできるようにするために利用することができる、多数の開口を含む。製造中に、それらの開口から接着剤が漏出するのを防止するために、従来の解決策では、接着剤がその開口部から出るのを防ぐために、十分な粘度/表面張力を有する接着剤が使用されている。
【0003】
多くの用途において、このような接着剤は、許容可能な解決策を提供する。他の用途においては、このような接着剤は問題がある。一つの問題は、その粘度/表面張力は、適切な量の接着剤を小さなマージン接着領域に注入し、接着面を十分に濡らして、十分な接着強度を与えるために、かなり大きな水圧ヘッド(hydrostatic head)を必要とするということである。この水圧ヘッドは、該要素と固定具の接着の確実性に寄与しないという意味で「無駄になる」大量の接着剤を意味する。
【0004】
この接着剤が高価であるだけではなく、無駄な接着剤が最終コストを増大させるということは事実である。電気自動車のようないくつかの用途において、さらなる欠点は、余分な接着剤が「余計な」質量を最終アセンブリに加えると共に、余計に費用がかかるということである。該アセンブリにおける要素の数が増えるにつれて、および該要素の充填密度が増加するにつれて、費用および質量に関するコストは、全てのモジュールにおける全ての要素にわたる個々の余剰の乗法的集積のため、極めて深刻になる。要素/モジュール当たりの接着剤の量を低減する場合の何らかの節減は、費用および質量の両方を低減するため、これらの事例において非常に有効である。
【0005】
接着剤は、モジュールアセンブリにおける接着剤の使用および適合性にさらに影響を及ぼす、関連する硬化プロファイルを有する。接着剤には、二つの広義の種類、すなわち、一液型接着剤および二液型接着剤がある。二液型接着剤は、主剤と硬化剤とを含む接着剤である。対照的に、一液型接着剤は、主剤および硬化剤の両方の機能を含むが、該硬化剤の活性化および放出は、硬化のためのいくつかの外部性(例えば、環境中の温度、紫外線放射、水蒸気等)に依存する。エポキシは、樹脂および硬化剤を有する二液型接着剤の実例であり、該硬化剤は、接着剤の重合(すなわち、硬化)を加速させ、硬化の詳細は、温度と、樹脂および硬化剤の選択とに影響を受ける可能性がある。一液型であろうと二液型であろうと、それぞれの接着剤は、一つ以上の硬化剤に応じて、堅固で強力な接着を生じる硬化様式を有する。硬化時間、特に、さらなる処理のための十分な機械的完全性に達する最小硬化時間は、接着剤の使用に関する追加的なコストである。該硬化時間は、使用する接着剤の総量に関連する場合があり、接着剤の使用が少ないことにより、硬化時間コストを改善できる可能性がある。
【0006】
さらに、各バッテリモジュールが、自動車内等の苛酷な環境内で機械的に頑丈であり続けるためには、各バッテリとモジュール固定具との間の(物理的および電気的な)構造的接続は、堅固かつ頑丈であるべきである。多くの一般のセルは、そのような接続を容易に可能にする機械的特徴を含んでいない。そのようなセルの場合は、堅固かつ頑丈な機械的接続を形成すると共に、電気的接続性要件を維持することは困難である場合が多い。接着剤は、滑らかなセル表面とモジュールシステムの固定具との間に、高いせん断強度を確立すると共に、セル間で所望の電気的遮蔽を維持することができる。しかし、上述したように、接着剤は、この文脈において使用する場合、高価になる可能性があり、また、複数のモジュールバッテリパックの各バッテリモジュールに、好ましくない量の質量を付加することにつながる可能性がある。一つのモジュールにおける要素の数が増すにつれて、さらに、それらのモジュールの数が増加するにつれて、考慮すべき追加的コストが存在する。この追加的コストは、多くの場合に、接着剤に必要な長い硬化時間に直接関係し、その長い硬化時間は、プロセスコストを増加させる。
【0007】
上述したように、密に詰められたバッテリモジュールにおいて、塗布される接着剤の量は、接着剤が所要の接着面に対して濡らしを実行するのに必要な水圧ヘッドに、部分的に依存する。いくつかの方法では、1〜2mLの接着剤(約7000cpsの粘度)を塗布して、18650個のバッテリセルの各々を、固定具に設けられた、それ自体の浅いプラスチックの座ぐり穴に接着する。この接着剤の量は、全ての接着領域のカバーを実現するのに必要であると考えられる。しかし、各接着領域を単独で充填するのに実際に必要な接着剤の量は、約0.050〜0.100mLである。その結果として、バッテリセルをモジュール固定具に単独で接着するために何が必要かを考える際、大量の接着剤が無駄になる。
【0008】
接着領域の外側にある、従来の解決策で使用されている標準的な接着剤は、一旦、接着面を十分に濡らすと、ほとんど役に立つことはなく、また、この「余分な」接着剤は、完成品では実質的に役割がない。モジュール化されたアセンブリにおける接着面を濡らすための水圧ヘッドへの依存を低減することは、「無駄な」接着剤をなくすことにより、著しいコスト節減を生じさせる可能性を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】(特になし)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
必要なことは、モジュール化されたコンポーネントを組み立てる際の接着剤の使用に付随するコスト(費用、質量および/または硬化時間)を減らす方法および装置である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
特に、例えば、電気自動車に使用されるバッテリモジュール等の多くの要素を有するアセンブリのためのモジュール化されたコンポーネントを組み立てる際の接着剤の使用に付随するコスト(費用、質量および/または硬化時間)を減らすための方法およびシステムが開示されている。該方法およびシステムは、そのようなモジュール化されたコンポーネントを組み立てるための(本出願においては、低粘性および/または低表面張力の接着剤とし広義に定義される)高濡れ性接着剤の使用を可能にする。(a)高濡れ性接着剤を、複数の要素が装着された第一のモジュール固定具内に分注する(又は分配する)(dispense)ことであって、第一のモジュール固定具は、各接着ウェル(bonding well)が、該要素のうちの一つ以上の第一の部分を収容する複数の接着ウェルを形成し、該モジュール固定具は、該接着ウェルのうちの一つ以上と連通する一つ以上の開口を含み、該接着剤は、硬化様式の適用時に、選択的に硬化可能である、分注することと、(b)シールゾーンにおいて、該硬化様式を、分注された該接着剤の第一の部分に選択的に適用することであって、該シールゾーンは、該開口を囲む一つ以上の領域を含み、該シールゾーン内の分注された接着剤は、該モジュール固定具内に分注され続けている間に、相当量の該接着剤が該開口から出てくるのを抑えるように十分に硬化し、該硬化様式は、該シールゾーンの外側の該接着剤の第二の部分には適用されない、選択的に適用することと、(c)該硬化様式を、分注された該接着剤の第二の部分に適用することとを含む第一の方法。
【0012】
高濡れ性接着剤は、本出願の目的のために、約100〜約1000センチポアズの粘度からなる群から選択された特定の接着剤および接着基面の材料、該接着ウェルの接着基面が、空気中で約10度未満の、該接着剤との接触角度を生じる表面張力、およびこれらの組み合わせを考慮する場合に、一つ以上の濡れ性パラメータを有する一液型および二液型の接着剤を含む。
【0013】
別の接着方法は、(a)硬化様式に対して透過性であるモジュール固定具に複数の要素を装着することと、(b)該硬化様式に対して不透明なマスクを用いて、該モジュール固定具の第一の部分の選択された領域をマスキングして、該モジュール固定具のマスクされていない第一の部分と、該モジュール固定具のマスクされた第一の部分とを形成することと、(c)その後、高濡れ性接着剤を、装着された該モジュール固定具内に分注することであって、該接着剤が、該硬化様式の適用時に選択的に硬化可能であり、第一のモジュール固定具は、各接着ウェルが、複数の要素のうちの一つ以上の第一の部分を収容する複数の接着ウェルを形成し、該モジュール固定具は、該接着ウェルのうちの一つ以上と連通する一つ以上の開口を含み、該接着剤は、硬化様式の適用時に選択的に硬化可能である、分注することと、(d)分注ステップ(c)の間に、マスクされた第一の部分における分注された該接着剤の第二の部分に該硬化様式を適用することなく、第一の部分における分注された該接着剤の第一の部分への該硬化様式の適用時に、マスクされていない第一の部分における分注された該接着剤の第一の部分を硬化させることと、(e)その後、該マスクを除去することと、(f)該モジュール固定具への該硬化様式の適用時に、分注された該接着剤の第二の部分を含む、該モジュール固定具内の未硬化の分注された接着剤を硬化させることとを含む。
【0014】
システムは、複数の要素を支持し、各接着ウェルが該要素のうちの一つ以上の第一の部分を収容する複数の接着ウェルを画成し、該接着ウェルのうちの一つ以上と連通する一つ以上の開口を含むモジュール固定具であって、該接着ウェルが公称深さを有するモジュール固定具と、高濡れ性接着剤を各接着ウェル内に分注し、著しい過充填を伴うことなく、該接着ウェルを実質的に充填する各要素を公称深さまで囲むための、該モジュール固定具に結合された分注システムであって、該接着剤は、硬化様式の適用時に、選択的に硬化可能である分注システムと、該接着剤の分注中に、該接着剤が該開口から出てくる場合に、該接着剤を該硬化様式に選択的にさらすための硬化構造とを含む。
【0015】
本発明の好適な実施形態を実施する、約数十、数百、数千またはそれ以上の大量の要素(例えば、セル)から構成される、例えば、バッテリパック等のアセンブリは、好ましくは、費用、質量および加工時間に関して低コストである機械的統合の方法を有する。適切な高濡れ性接着剤の使用は、バッテリモジュール固定具に対する堅固で頑丈な電気的に絶縁する機械的結合を可能にする。バッテリパック内でのセルの高充填密度は、バッテリモジュール全体にわたって一様に接着剤を分注するのに利用できる空間を限定するが、高濡れ性接着剤は、特に、該モジュール固定具が、分注する接着剤を装着済みの接着ウェル内に注ぐように、斜面、ウィッキング路および案内面等に適応されている場合に、均一な分布により適している。各セルの両端部で電気的相互接続を可能にするという該モジュール固定具における特徴は、分注中の接着剤の潜在的な漏れ経路をもたらす可能性がある。硬化様式は、該モジュール固定具を密封するために、および該接着剤を該接着ウェルに充填し続けるように、および該接着ウェルに装着されている該要素の周辺の接着面を濡らすために、該開口から出てくる接着剤に適用される。高濡れ性接着剤は、接着すべき要素の周辺の接着ウェルを効果的に充填して、該接着ウェルを、過剰充填を伴うことなく実質的に充填できるようにする(すなわち、該接着ウェルは、余剰なく、全ての接着面を濡らすように、十分に充填される(大きな影響を与える非構造的用途)。該接着ウェル間のポート、傾斜した案内面および該固定具の他の特徴は、高濡れ性接着剤の均一な分布を促進する。該接着面を正しく濡らした後には、該接着ウェル内の全ての接着剤に硬化様式が適用される。
【0016】
好適な実施形態のうちのいくつかにおいて、該硬化様式は、光を当てること(例えば、紫外線放射)を含み、これは、該接着剤が分注される箇所である(および硬化および接着が行われる箇所である)接着ウェルを画成する該モジュール固定具の少なくとも選定された構造部が透過性であり、そのため、目視で検査できることを意味する。色または他の何らかの視覚的合図等の該接着剤に関連する硬化インジケータの利用は、該接着ウェルにおける硬化プロセスの品質および/または状態の迅速な評価を可能にするため、いくつかの特定の実施形態において、有利に用いられる。
【0017】
本発明の実施形態は、該接着剤が該開口から出ようとする際に、該接着剤を選択的に硬化させることにより(例えば、UV硬化)、限られた量の高濡れ性接着剤の使用を促進する設計および方法を含む。上述したように、高濡れ性により、その塗布領域は、不都合なく、限定されたままにすることができる。高濡れ性接着剤は、該接着ウェルが充填されるまでの時間、および全ての接着面の濡らしが行われるまでの時間が(従来のシステムおよび絶対的な語と比較した相対的な期間において)比較的短いことを意味する。加工時間の節減に加えて、使用する接着剤の総量も大幅に低減されて、組み立てられたアセンブリから質量および費用を除外する。
【0018】
いくつかの実施形態においては、接着剤の塗布後、および濡らしの間に、該接着ウェルに装着される該要素は、該固定具の接着ウェルの外側の該要素の部分に適用される硬化様式が透過性である固定具の使用により、適切に位置決め/位置合わせすることができる。複数の固定具を有するアセンブリの場合、この位置決め/位置合わせ固定具は、最終的なアセンブリの他の固定具のうちの一つとすることができる。(複数の固定具アセンブリの場合、および好適な実施形態は、重力に強く反応する高濡れ性接着剤を用いるため、加工される(例えば、装着される、充填される、およびある程度の硬化)何らかの具体的な固定具は、多くの場合、底部固定具として説明されている。該固定具は、作業中に、異なる方向に位置合わせできる場合でも、処理中には、この方向性を有する。これは、他の方向性および配置が除外されるということを言っているのではなく、例えば、「底部」固定具が、選択的硬化が遠心システムの周辺で行われている状態で、該高濡れ性接着面が該システムの回転の中心近くから分注され、および外側の接着ウェルへ流入し、該開口から潜在的に漏出する状態で、他のどの固定具よりも大きな角速度を有する固定具となる該遠心システムに接着剤を分注するために、いくつかの適用を見出すことができる。)
【0019】
UV放射を位置決め/位置合わせアセンブリの上部側に向けて、該底部固定具の接着領域内の接着剤を硬化させることにより、硬化様式(例えば、UV放射)が該接着剤に適用される。該接着剤のいくつかの部分の該硬化様式への曝露を制限する内部構造によって影になるいくつかの領域を有する実施形態においては、該接着剤は、多段階の硬化プロセスを含んでもよい。一つの硬化様式(例えば、UV放射)に応じて、数秒で該接着剤を硬化させるように設計された第一の段階と、別の硬化様式(例えば、室温で数日)に応じて、長い期間にわたって該接着剤を硬化させる第二の段階。これは、機械的要件の二つのセットのための2段階硬化プロセス、すなわち、残りの製造工程を完了するための一つのプロセスと、現場での耐久性のためのもう一つのプロセスとをもたらす。接着結合部は、製造ライン上で続行するために、UV放射によって十分に強化されるが、現場での耐久性に完全に必要な強度は、数日から数週間では発現させることはできない。該モジュール固定具自体がUV透過性である場合には、硬化作用全体を数秒以内に行うことができる。
【0020】
段階分けを分注中および/または硬化中にする場合、一つの段階または多段階の硬化または密封方策に対する一液型および二液型の接着剤の入れ替えを含む本発明の実施形態の多くの異なる実施がある。例えば、一実施形態は、従来の方法で硬化する間の密封様式の適用時に「ゲル化」または「皮膜化」する二液型高濡れ性接着剤の使用を含む。このゲル化は、バリアを形成して該開口を密封するため、漏れを防ぎかつ該接着剤が該接着ウェルを充填し該接着面を濡らすことが可能になる。他の適用においては、第一段階の接着剤が、特に、硬化/密封様式との相互作用により、密封特性を強めるように策定されると共に、第二段階の接着剤が、特に、該固定具を該要素に接着するように策定されるように、分注中の接着特性を変化させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】システムのブロック図である。
【図2】モジュール固定具におけるバッテリセルの詳細図である。
【図3】第一の好適なプロセスのフローチャートである。
【図4】第二の好適なプロセスのフローチャートである。
【図5】バッテリセルとモジュール固定具との間の典型的な接着領域の側面の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態は、高濡れ性接着剤の使用を可能にすることにより、モジュール化されたコンポーネントを組み立てる際の接着剤の使用に付随するコスト(費用、質量および/または硬化時間)を減らすための方法およびシステムを提供する。以下の説明は、当業者が本発明を実行および利用することを可能にし、および特許出願およびその要件の関連で記載されている。以下の文章において、「バッテリ」、「セル」、「バッテリセル」および「バッテリセルパック」という用語は、同じ意味で用いることができ、また限定するものではないが、リチウムイオン(例えば、リン酸鉄リチウム、酸化コバルトリチウム、他の金属酸化物リチウム等)、リチウムイオンポリマー、ニッケル金属水素化物、ニッケルカドミウム、ニッケル水素、ニッケル亜鉛、銀亜鉛または他のバッテリタイプ/構造を含む様々な異なる再充電可能電池の化学的性質および構造のいずれかを指すことができる。さらに、「高濡れ性」という用語は、特定の接着剤および接着基面の材料を考慮する場合に、約0(より好ましくは、100)〜約1000センチポアズの粘度、空気中で約10度未満の該接着剤との接触角度を生じる該接着基面に対する表面張力、およびこれらの組み合わせからなる群から選択された特性を有する接着剤を指す。好適な実施形態に対する様々な変更、および本願明細書に記載されている包括的原理および特徴は、当業者には容易に分かるであろう。従って、本発明は、示されている実施形態に限定しようとするものではなく、本願明細書に記載されている原理および特徴と一致する最も幅広い範囲を許可すべきである。
【0023】
接着剤は、紫外線(UV)放射等のいくつかの硬化様式に対応して選択的に硬化するように策定されてきた。選択的硬化は、硬化のタイミングおよび位置の制御を可能にする。時間または温度等の二次的硬化様式の利用を可能にする策定も存在する。このことは、適切な設計のモジュール固定具と共に、低粘性および/または低表面張力を有するように策定された高濡れ性接着剤と組み合わせて、低コスト、低質量を実現でき、かつ従来のシステムよりも短い接着仕上げ時間を要する、バッテリモジュール等のモジュール化されたコンポーネントを組み立てるためのこのような接着剤の使用を可能にする方法および装置を提供する。
【0024】
図1は、第一のモジュール固定具要素110と、第二のモジュール固定具要素115と、追加的な構造的支持が設けられていない場合に要素110と要素115とを相互に接続する任意の支持要素120とを含む接着モジュール固定具によって支持されている複数の被接着要素105を含むシステム100のブロック図である。システム100は、従来のシステムと比較して低コスト(例えば、より少ない費用、質量および/または製造時間)である。本発明は、多数の異なる種類の要素105を接着するのに適応させることができるが、本発明は、要素105のような多数(例えば、数百から数千)のバッテリセルで構成されているバッテリセルモジュールの形成に関して説明する。実施および該要素の種類により、一つ以上のモジュール固定具110が、要素105を位置決め、接着および固定するのに用いられる。この実施例の場合、二つのモジュール支持構造が描写されているが、より少ないまたはより多いモジュール支持構造を用いることができることは理解されよう。また、以下の説明においては、高濡れ性接着剤を使用する。未硬化の分注された接着剤を移動させるために、重力が有効に利用され、そのため、本発明の実施形態を説明する際には、下方および上方の基準を有する理由がある。そのような基準は、中間製品または最終製品の方向性に必ずしも関連がある必要はないが、分注中、濡らし中の方向性、および該接着剤の少なくともある程度の硬化には関連がある。
【0025】
本願明細書には、少なくとも二つの一般的な実施方法が記載されており、例えば、図3および図4に関する以下の議論(説明)を参照されたい。図3は、二液型接着方法の概略を説明し、図4は、一液型接着剤の概略を説明する。これらの説明のうちのいくつかは、一つの方法において、他方に対して適用可能である。
【0026】
本願明細書に記載されている使用のための接着剤は、選択的に硬化可能な低粘度および/または低表面張力の接着剤である。本発明の目的の場合、低粘度とは、約0〜2000センチポアズ、好ましくは、約50〜1000センチポアズ、および最も好ましくは、約100〜500センチポアズの接着剤を意味する。本発明の目的の場合、低表面張力は、空気中での接着基面の材料に対する該接着剤の接触角度を測定した場合に、該接触角度が、約30度未満、好ましくは、約10度未満、および最も好ましくは、約5度未満の接着剤を意味する。
【0027】
また、該接着剤は、硬化様式の適用時に、選択的に硬化可能である。好適な実施形態で利用される硬化様式は、UV硬化を含むが、本願明細書に記載されているシステムおよび方法のある程度の調整を伴って、他の硬化様式を用いることもできる。これらの代替的な硬化様式は、例えば、電子ビーム、過酸化物、陽イオン、アミン、水酸基、熱放射およびこれらの組み合わせの適用および/またはこれらへの曝露(又は露出)を含むことができる。本発明との関連では、文脈と矛盾しない限り、選択的硬化は、当該用語は一般的に理解されているように、接着剤が硬化できないような選択的「ゲル化」を含むが、該接着剤は、開口を密封し、および接着剤の漏出および流れを抑えるように、十分に硬化/ゲル化することができる。
【0028】
適切な二液型接着剤は、経時的に硬化するような、エポキシアミン接着剤系等の硬化剤を有する樹脂を有する接着剤、または、他の二次的硬化様式(例えば、熱エネルギ)を有する接着剤を含む。他の適当な接着剤は、単一の一次的硬化様式への曝露/適用に対応して硬化する一液型接着剤であろう。
【0029】
本出願で用いられている他の用語は、(関連する接着剤に対する該硬化様式への曝露/硬化様式の適用を妨げないかまたは著しく損なわない、該モジュール固定具の特性を指す)硬化様式透過性を有するモジュール固定具を表す。ある場合には、該構造全体にわたって、または、該構造の他の選択的領域または部分に対する、該硬化様式の経過および分布を可能にする、または促進するために、任意の流路または「栓」が該モジュール固定具に設けられている。本出願は、大きな領域の接着剤に硬化様式をさらす、および/または適用するために、該硬化様式の浸漬型ソースへの参照として「硬化エンクロージャ」という用語も用いる。例えば、UVオーブンは、UV硬化様式の場合の硬化エンクロージャの実施例である。
【0030】
図2は、バッテリセル210(縮尺通りではない)を支持するモジュール固定具205の一部200の詳細図である。モジュール固定具205は、セル210を収容する接着ウェル215(接着用凹部215)を画成し、ウェル215の壁部とセル210との間の空間には、好ましくは、著しい過充填を伴うことなく、公称充填深さ217(nominal fill depth 217)まで、高濡れ性接着剤が充填される。本出願の目的の場合、過充填は、構造上の目的を超える量の接着剤の分注に関連している。製造環境において、分注された接着剤の総量は、通常の変動の影響を受けやすい。本発明の目的は、過剰充填の排除/低減を可能にすることにより、接着剤の総量を低減することである。本発明の実施形態は、該接着ウェルのどのような過充填も低減することに対する解決策を与えるが、いくつかの実施においては、ある程度の過剰充填は容認可能であるか、または望ましいであろう。構造的な意味での余計な接着剤の限界効用は、過剰充填が始まった時点で、弱まり始める。これは、接着ウェルが過剰充填されているか否かに関しての判断を始めるための好適な基準である。
【0031】
固定具205の壁部とセル210との間の相対的寸法は、図2において誇張されており、そのスペース(間隔)は、実際にはかなり小さい。本願明細書に記載されている選択的硬化と組み合わせた本発明に用いられる高濡れ性接着剤のおかげで、このようにして接着剤の量を限定することが可能である。図2の詳細は、密に詰められたバッテリセルからなるマトリクス全体を構成するために、横方向に繰り返される。
【0032】
セル210を囲む、接着ウェル215内に分注された接着剤は、ソース(原因源)、例えば、UVソース220(UV光源)(ソース220は、例えば、下方UVランプと上方UVランプとによって図示されているように、一つ以上の位置に実装することができる)からの硬化様式の曝露/適用によって、選択的に硬化される。また、ソース220は、それぞれの位置の単一のUVランプとして実装することもできるか、または、いくつかの構造、例えば、一つの小さなソースが、各接着ウェル215の位置に対応している、小さなソースからなるマトリクス等を含むことができる。構造205には、分注された接着剤を全ての接着ウェル215内に流すのを補助して、構造205およびセル210の全ての接着面を濡らすために、斜面225および溝230が設けられている。
【0033】
該モジュール固定具の、特に、該接着ウェルの開口および底部の周辺の領域は、シールゾーンを画成する。追加的な接着剤の漏出に抗するバリアを形成するための、選択的に硬化可能な接着剤が該シールゾーンに入る際の曝露は、高濡れ性接着剤の使用を可能にする本発明の特徴のうちの一つである。いくつかの実施においては、該シールゾーンは、特有の三次元領域を形成するように空間的に作られる。例えば、該硬化様式が、紫外線放射の適用を含む場合、所望の効果のために、UV光の一つ以上のビームを焦点合わせし、分散させるか、または別の方法で作ることができる。該硬化様式を該シールゾーン内に生じさせるためにUV LEDを用いる場合において、いくつかの実施は、固定具の開口近傍の該シールゾーンの部分に対して、円錐ビームを有利に生成する。このようにして該シールゾーンの部分を整形すると、該モジュールの後の処理に対して、他の効果を提供することができる。
【0034】
高濡れ性接着剤である、分注された接着剤は、例えば、電気的相互接続に用いることのできる、セル210の下の、接着ウェル215内の接続ポート235等のモジュール固定具205の壁部内の領域から「漏れ」始めることになる。該接着剤が、現れ始めると、該接着剤は、ほとんど瞬時に硬化し、それによって、接着剤のさらなる損失に抗して該開口を密封して、分注された接着剤が、接着ウェル215を充填できるようにすると共に、セル210と電気的/機械的に接触する能力も維持する。
【0035】
いくつかの実施形態は、固定具部分200の選択された領域からの硬化様式の曝露/適用を阻止する一つ以上のマスク240を含む。他の実施形態は、該モジュール固定具の選択された領域全体にわたる該硬化様式の分布/再分布を案内および/または促進する硬化様式溝245または栓を含む。接着剤溝230、マスク240および光路245のうちの一つ以上は、本発明の実施形態を実施する際に用いられる必須のまたは好ましい任意の要素である。
【0036】
図3は、第一の好適なプロセス300のフローチャートである。プロセス300は、好ましくは、2段階硬化、すなわち、UV硬化と経時硬化を有する二液型接着剤を用いる。プロセス300は、UV不透過性モジュール固定具を用いる。一般に、プロセス300は、該バッテリセルを第一のモジュール固定具に装着することを含む(ステップ305)。このことは、上述した接着ウェル内に位置する50個以上の直立したバッテリセルを保持するトレイと同様である。
【0037】
UVソースが点けられる(ステップ310)。一つの好適な実施形態は、二つのUVソース、すなわち、UV不透過性モジュール支持構造の「下に」ある下方のUVソースと、UV不透過性モジュール支持構造の「上に」ある上方UVソースとを備える。ステップ310は、下方のUVソース、この場合、UVランプを点ける。
【0038】
プロセス300のステップ315は、高濡れ性接着剤を塗布する。該接着剤は、その特性のため、容易に該接着ウェル内に流入し始めて接着ウェルにおける接着面を濡らし始める。プロセス300は、該バッテリセルの上部にUV透過固定具を取り付ける任意のステップ320を含む。第一のモジュール固定具は、該バッテリセルの一方の端部を支持、保持および接着する。該バッテリセルは、該接着ウェルの垂直軸と垂直方向に十分に位置合わせしなくてもよい。加えて、該接着剤が十分に硬化するまで、一つ以上のバッテリセルが正しく位置合わせされない可能性がある程度ある。本発明の従来のシステムに勝る効果のうちの一つは、硬化時間が比較的短く、このことは、接着剤塗布後のアセンブリ処理を、従来のシステムを用いた場合よりも早く続行することを可能にする。このような処理は、該セルの好適な位置決め/位置合わせを妨げようとする可能性がある。ステップ320の固定具は、使用した場合、接着剤塗布および/または接着剤塗布後の処理中に、該セルの第二の端部を位置決めして保持するとともに、該接着剤が適切に硬化するように設計される。ある場合には、該第二の固定具は、該アセンブリの許容差を改善する。この固定具は、一次的構造とすることができるか、または、恒久的構造、例えば、該バッテリセルの第二の端部に恒久的に付着される反対側のモジュール固定具とすることができる。
【0039】
ステップ325において、塗布された接着剤は、該接着領域を濡らし、該塗布された接着剤のある程度の部分は、該構造の底部、例えば、該接着ウェルに連通する様々な開口、コネクタビア並びにその他の構成およびポートから出てくる。出てくる接着剤は、すぐに硬化様式にさらされ(例えば、下方のUVランプからのUV放射と光学的に連通され)、実施の詳細により、数秒〜数分足らずで硬化する。硬化した接着剤は、該開口を密封し、該接着剤のさらなる漏出を阻止し、このこともまた、該接着剤が、該接着ウェルを充填して、所望の全ての接着面を濡らすことを可能にする。該モジュール固定具は、UV不透過性であるため、該下方のUVランプは、該接着ウェル内の接着剤とは、概して光学的に連通していない。該モジュール固定具は、ランプおよび/または溝および他の構造の利用によって、塗布された接着剤の大部分を、該バッテリセルとモジュール固定具との間の接着面に案内するように設計されている。
【0040】
ステップ330は、下方のUVソースをオフにして、上方のUVソースをオンにする。該上方のUVソースは、分注された接着剤の上部に硬化様式を適用して、同様に硬化させる。UV不透過性モジュール固定具は、下方のUVソースからの硬化様式を妨げて、該接着ウェル内の接着剤を硬化させ、それにより、該接着剤が、所望の接着面を流れて濡らすことを可能にする。該上方のUVランプは、UV不透過性モジュール固定具の「上部」側からの接着ウェル内の接着剤を硬化させる。該上方のランプからの硬化様式は、取り付けられているべきUV透過性固定具を介して適用される。
【0041】
ステップ335は、上方のUVソースによって曝露された接着剤を、数秒から数分足らずで硬化させる。その後、該モジュールのさらなる機械的処理を始めることができる。影になった接着剤(例えば、該硬化様式にさらされなかった接着剤)は、その後数日間から数週間にわたって硬化することになる。上述したように、UV放射は、一次的な硬化様式であった。好ましくは、プロセス300で用いられる二液型接着剤は、二次的硬化様式、すなわち、(例えば、接着剤に使用される硬化剤に反応する)時間、または熱放射の適用を含む。(曝露された後のモジュールは、後者の場合に、加熱して、該影になった接着剤の硬化を終了させることができる。いくつかの実施においては、このことは、該接着剤を配置して経時的に硬化させるのに十分である。)
【0042】
バッテリセルは、収縮包装カバーを含む場合がある。このような収縮包装がないバッテリセルを該固定具に装着することは、いくつかの実施においては、効果を有する。例えば、該収縮包装がないバッテリセルは、ある種のセルのUV反射性のニッケルめっき鋼ケースを露出させる。それらのセルの鋼ケースは、必要に応じて、または要望通りに、密に詰められたセル全体にわたる接着領域への硬化様式の透過および再分布を容易にするのに用いることができる。加えて、機械的構造における該接着ウェル内の勾配は、接着領域全体への光学的アクセスを可能にするように増加させてもよい。該接着領域が該接着剤によって濡れると、固定されたモジュールをUVオーブン内に置いて、該アセンブリ全体にわたる全ての接着領域内の曝露された接着剤を硬化させることができる。このUV硬化は、後の製造作業を続行するための第一段階の機械的強度を与える。その後、数日間または数週間にわたって、最初のUV曝露の間に影になった接着剤は、室温で時間が経つにつれて硬化する。
【0043】
プロセス300は、一次UV硬化をモジュール固定具の底部要素内のポートを介して適用することができることを除いて、該バッテリモジュールの第二の側でも用いることができる。UVを放射する「栓」または「口(蛇口)」(spigot)は、該ポートを通って伸びることが可能であり、および該モジュールを、さらなる処理で傾けたり反転させたりできるように、該接着剤の大部分が「皮膜硬化」している間に、いくつかの部分を完全に硬化させることができる。
【0044】
図4は、第二の好適なプロセス400のフローチャートである。プロセス400は、多くの点で、本願明細書に記載されているプロセス300と似ており、好ましくは、UV透過性モジュール固定具および一液型UV硬化接着剤を用いる。二液型接着剤は、二液混合型接着剤と接触する器具の廃棄または洗浄を必要とするため、一液型接着剤は、二液型接着剤と比較して、製造に有利である。
【0045】
プロセス400において、セルが該UV透過性モジュール固定具に装着されて(ステップ405)、該構造が閉じられる。接着剤が、該構造の底部から出てくる可能性がある箇所を除く、該モジュールの底部の全領域が、UV不透過性プレートまたはバリアによってマスクされる(ステップ410)。UVソース(例えば、マスクされていない全ての領域を曝露する単一のランプ、または、LEDマトリクスの多数のUV LED、各開口に対する一つのLED)が点けられて、該接着面を濡らして、該接着ウェルに連通する様々な開口から出始める接着剤が塗布される(ステップ420)。濡らし中に、該アセンブリの底部は、該UVソースからのUV光に曝露されて、該底部の開口から出ようとする接着剤が硬化される。濡らし後、該マスクが除去され(ステップ430)、該アセンブリ全体がUV光に曝露されて、該構造を貫通し、接着剤を全体にわたって硬化する(ステップ435)。この時点で、必要であれば、または望ましい場合には、該アセンブリは、追加的な作業のために開かれる。それらが一旦、完了すれば、該アセンブリは、再び閉じられて、上記のプロセスが、該エンクロージャの他方の側のために繰り返される。このとき、該アセンブリは、両側でUV硬化される。
【0046】
図5は、バッテリセル510とモジュール固定具壁部515との間の典型的な接着領域の硬化したモジュール固定具の一部分500の側面の詳細図である。部分500は、本発明によって濡れたおよび硬化した該接着面の規模の良好な典型である。該接着剤は、斜線で図示されており、好適な実施が、該底部からの該接着剤の漏出を制限し、過剰充填を伴うことなく、該接着ウェルを充填することを示している。製造環境においては、正確な量の接着剤を分注することは難しい可能性があり、該接着ウェルは、完全に充填されないこともあるか、あるいは、過剰充填されることがある。充填不足は、接着の強度を低下させるため好ましくなく、また、過剰充填は余計なコストがかかるため、好ましくない。目的は、実際には、多すぎる又は少なすぎる接着剤を使用する可能性があるという理解の下で、図5に示す要素によって概して示されている一定量の接着剤を実現することである。
【0047】
開示した実施形態の変更例は、接着剤の2段階分布の利用を含む。第一段階においては、高度に濡らすと同時に、即座に「皮膜化」するように策定された接着剤が分注され、その後、第二段階において、構造用接着剤が分注される。第一段階の接着剤の主な目的は、上記開口の周辺にバリアを形成して、該固定具を密封し、第二段階の接着剤が漏出することを妨げることである。
【0048】
上記システムを、電気自動車(EV)システムで使用されるマルチセルバッテリパックの好適な実施形態において説明してきた。本願明細書における説明においては、本発明の実施形態の完全な理解を与えるために、数々の具体的な詳細、例えば、コンポーネントおよび/または方法の実施例が記載されている。しかし、当業者は、本発明の実施形態を、一つ以上の具体的な詳細を要することなく、または、他の装置、システム、アセンブリ、方法、コンポーネント、材料、部材等を用いて実施できることを認識するであろう。他の例では、本発明の実施形態の態様を分かりにくくするのを避けるために、周知の構造、材料または作業は具体的には示されておらず、または詳細に説明されていない。
【0049】
この明細書全体にわたる「一つの実施形態」、「実施形態」または「特定の実施形態」という表現は、該実施形態に関連して説明されている具体的な形状構成、構造または特徴が、必ずしも全ての実施形態である必要はないが、本発明の少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本願明細書の様々な箇所における「一実施形態において」、「実施形態において」または「特定の実施形態において」という言い回しのそれぞれの出現は、必ずしも同じ実施形態を指す必要はない。さらに、本発明のどの具体的な実施形態の形状構成、構造または特徴も、何らかの適当な方法で、一つ以上の他の実施形態と組み合わせることができる。本願明細書に記載され且つ示されている本発明の実施形態の他の変形例および変更例は、本願明細書における教示を考慮すれば可能であり、また、本発明の趣旨および範囲の一部として見なすべきである。
【0050】
また、図面に描かれている要素のうちの一つ以上は、別々のまたは統合された方法で実施することもできるか、あるいは、特定の用途により有用なように、いくつかの場合においては、除去または作動不能とすることさえも可能である。
【0051】
加えて、図中のどの矢印も、単に例示的と見なすべきであり、具体的に記述のなき限り、非限定的と見なすべきである。さらに、「または」という用語は、本願明細書で用いる場合、他に指定のない限り、一般に、「および/または」を意味するように意図されている。また、コンポーネントまたはステップの組み合わせも、記述されているように考慮されるであろうし、この場合、分けるかまたは組み合わせる能力を与えることは不明確であるように、専門用語は予見される。
【0052】
「一つの(“a”)」、「一つの(“an”)」および「該(“the”)」という用語は、本願明細書における記述で、および以下の請求の範囲全体にわたって用いる場合、他に明確な指示のない限り、複数への言及を含む。また、「内に(“in”)」という意味は、本願明細書における記述で、および以下の請求の範囲全体にわたって用いる場合、他に明確な指示のない限り、「内に(“in”)」と「〜で(“on”)」という意味を含む。
【0053】
要約に記載されていることを含む、本発明の図示されている実施形態の上記の説明は、本発明を、網羅的であることを意図するものではなく、また本願明細書に開示されている明確な形態に限定しようとするものでもない。本発明の具体的な実施形態および本発明のための実施例は、単に例示目的で本願明細書に記載されているが、当業者は認識および正しく理解するであろうが、様々な等価の変更が、本発明の趣旨および範囲内で可能である。示したように、本発明の図示されている実施形態の上記の説明を考慮して、それらの変更を本発明に対して行うことができ、該変更は、本発明の趣旨および範囲に含まれるべきである。
【0054】
従って、本発明を、その具体的な実施形態を参照して説明してきたが、変更、様々な変更および置換の許容範囲は上記開示に含まれ、また、ある場合には、本発明の実施形態のいくつかの特徴は、記載されている本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、他の特徴の対応する利用を伴うことなく採用されるであろうことは正しく認識されるであろう。そのため、多くの変更を、本発明の本質的な範囲および趣旨に具体的な状況または要素を適応させるようにして行うことができる。本発明は、以下の請求の範囲で用いられている特定の用語に限定されないこと、および/または、本発明を実施するために意図されている最良の態様として開示されている具体的な実施形態に限定されないことが意図されているが、本発明は、添付の特許請求の範囲の範囲内にある、いずれかのおよび全ての実施形態および等価物を含むであろうことが意図されている。従って、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲のみによって判断されるべきである。
【符号の説明】
【0055】
105 被接着要素
110 第一のモジュール固定具要素
115 第二のモジュール固定具要素
120 支持要素
200 UVソース(UV光源)
205 モジュール固定具
210 セル
215 接着ウェル(接着用凹部)
217 公称充填深さ
220 UVソース(UV光源)
225 斜面
230 溝
235 接続ポート
240 マスク
245 光路、硬化様式溝
500 モジュール固定具の一部分
510 バッテリセル
515 モジュール固定具壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 高濡れ性接着剤を、複数の要素が装着された第一のモジュール固定具内に分注するステップであって、
前記第一のモジュール固定具は、各接着ウェルが、前記要素のうちの一つ以上の第一の部分を収容する複数の接着ウェルを形成し、前記モジュール固定具は、前記接着ウェルのうちの一つ以上と連通する一つ以上の開口を含み、前記接着剤は、硬化様式の適用時に、選択的に硬化可能である、分注ステップと、
(b) シールゾーンにおいて、前記硬化様式を、前記分注された接着剤の第一の部分に選択的に適用するステップであって、
前記シールゾーンは、前記開口を囲む一つ以上の領域を含み、前記シールゾーン内の前記分注された接着剤は、前記モジュール固定具内に分注され続けている間に、相当量の前記接着剤が前記開口から出てくるのを抑えるように十分に硬化し、前記硬化様式は、前記シールゾーンの外側の前記接着剤の第二の部分には適用されない、適用ステップと、
(c) 前記硬化様式を、前記分注された接着剤の前記第二の部分に適用するステップと、を含む、接着方法。
【請求項2】
前記接着剤は、約0〜約2000センチポアズ、好ましくは、約50〜約1000センチポアズ、および最も好ましくは、約50〜約500センチポアズの粘度、空気中で約30度未満、好ましくは、空気中で約10度未満、および最も好ましくは、空気中で約5度未満の前記接着剤との接触角度を生じる、前記接着ウェルの接着基面に対する表面張力、並びに、これらの組み合わせからなる群から選択された一つ以上の濡れ性パラメータを含む、請求項1に記載の接着方法。
【請求項3】
前記一つ以上の要素の前記部分を収容する前記複数の接着ウェルは、公称深さを有し、前記接着剤は、前記接着ウェルの実質的な過剰充填を伴うことなく、前記複数の接着ウェルを前記公称深さ近くまで満たす、請求項1に記載の接着方法。
【請求項4】
前記モジュール固定具は、第一のバッテリ固定具クラムシェルと、第二のバッテリ固定具クラムシェルとを含み、
前記複数の要素は、複数のバッテリセルを含み、
前記接着ウェルは、前記クラムシェル内の座ぐり穴から形成され、前記バッテリセルの端部を含む前記バッテリの前記部分は前記座ぐり穴内に収容され、
前記バッテリセルのうちの一つの端部が装着された各座ぐり穴は、前記クラムシェルの外部からの前記バッテリセルの前記端部への電気的導通を可能にするところの、前記座ぐり穴と連通する接触ポート開口を画成する前記クラムシェルの壁部の部分を有する、
請求項1に記載の接着方法。
【請求項5】
第一の接着シーケンスと、前記第一の接着シーケンスの後の第二の接着シーケンスとを含み、
前記分注ステップ(a)は、
a1)前記接着剤を前記第一のクラムシェル内に分注するステップ、及び、
a2)前記接着剤を前記第二のクラムシェル内に分注するステップ、を含み、
前記第一の部分への接着剤の適用ステップ(b)は、
b1)前記硬化様式を、前記第一のクラムシェル内のシールゾーン内の前記分注された接着剤の第一の部分に選択的に適用するステップ、及び、
b2)前記硬化様式を、前記第二のクラムシェル内のシールゾーン内の前記分注された接着剤の第一の部分に選択的に適用するステップ、を含み、
前記第一の接着シーケンスは、ステップa1)及びステップb1)を含み、
前記第二の接着シーケンスは、ステップa2)及びステップb2)を含む、
請求項4に記載の接着方法。
【請求項6】
ステップb1)における前記シールゾーンは、前記第一の固定具内の前記接着ウェルを含み、且つ前記第二の固定具内の接着ウェルを除外しており、
ステップb2)における前記シールゾーンは、前記第二の固定具内の前記接着ウェルを含み、且つ前記第一の固定具内のシールゾーンを含んでもよい、
請求項5に記載の接着方法。
【請求項7】
前記分注された接着剤は、分注時に複数の濡れ特性を含み、
前記接着剤の前記第一の部分は、前記接着剤の前記第二の部分とは異なる濡れ性を有する、請求項1に記載の接着方法。
【請求項8】
前記選択的に硬化可能な接着剤は、紫外線放射への曝露時に硬化可能であり、
前記硬化様式は、前記分注された接着剤の前記特定された部分への、紫外線放射の選択的適用を含む、請求項1に記載の接着方法。
【請求項9】
前記選択的に硬化可能な接着剤は、紫外線、電子ビーム、過酸化物、陽イオン、アミン、水酸基、熱、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される一つ以上の様式への曝露時に硬化可能であり、
前記硬化様式は、前記分注された接着剤の前記特定された部分への、選択された一つ以上の様式の適用を含む、請求項1に記載の接着方法。
【請求項10】
前記モジュール固定具は、前記複数の要素の前記部分と前記固定具との間において、前記複数の接着ウェル内の複数の接着面に対し前記分注する接着剤を案内する接着剤案内構造を含む、請求項1に記載の接着方法。
【請求項11】
前記接着剤案内構造は、斜面、溝、座ぐり穴、傾斜壁部およびこれらの組み合わせからなる群から選択される一つ以上の構造を含む、請求項10に記載の接着方法。
【請求項12】
請求項1に記載の接着方法は、
(d) 様式透過性固定具を、前記第一の部分とは異なる前記複数の要素の第二の部分に適用するステップであって、
前記様式透過性固定具は、前記分注された接着剤による前記複数の要素の濡らし時に、前記複数の要素の前記第二の部分に結合される、ステップ、
を更に含む、請求項1に記載の接着方法。
【請求項13】
請求項12に記載の接着方法は、
(e) 前記モジュール固定具および前記様式透過性固定具を、前記硬化様式を、曝露され分注された全ての接着剤に適用する硬化エンクロージャ内で硬化させるステップ
を更に含む、請求項12に記載の接着方法。
【請求項14】
前記複数の要素の各々の外面の一部は、要素間接着を促進する前記モジュール固定具の本体内に、前記硬化様式を再案内するための硬化様式再案内コンポーネントを含む、請求項1に記載の接着方法。
【請求項15】
請求項1に記載の接着方法は、
前記複数の要素が装着された第二のモジュール固定具であって、各接着ウェルが、前記要素のうちの前記一つ以上の第二の部分を収容する複数の接着ウェルを形成し、当該第二のモジュール固定具が、当該第二のモジュール固定具内の前記接着ウェルのうちの一つ以上と連通する一つ以上の開口を含む、第二のモジュール固定具、を更に備え、
この接着方法は、
(d) 前記ステップ(a)〜(c)の後に、前記接着剤を前記第二のモジュール固定具内に分注するステップと、
(e) 第二のシールゾーン内の前記分注された接着剤の第三の部分に前記硬化様式を適用するステップであって、
前記第二のシールゾーンが、前記第二のモジュール固定具の前記開口を取り囲む一つ以上の領域を含み、
前記第二のシールゾーン内の前記分注された接着剤は、相当量の前記接着剤が前記開口から出てくるのを妨げるように十分に硬化されると共に、前記接着剤は、ステップd)の間に、前記モジュール固定具内に分注され続け、
前記硬化様式は、前記第二のシールゾーンの外側の前記接着剤の第四の部分には適用されないが、前記第一のモジュール固定具の前記シールゾーン内の前記接着剤の部分への前記硬化様式の適用を含んでもよい、ステップと、
(f)前記分注された接着剤の前記第四の部分に前記硬化様式を適用するステップと、
を更に含む、請求項1に記載の接着方法。
【請求項16】
前記接着剤は、前記シールゾーン内に配置されたインジケータを含み、前記インジケータは、前記接着剤の硬化の状態を示す、請求項1に記載の接着方法。
【請求項17】
前記シールゾーンが、前記硬化様式に対して不透過性であるマスクによって画成された状態で、前記モジュール固定具は前記硬化様式に対して透過性である、請求項1に記載の接着方法。
【請求項18】
(a) 硬化様式に対して透過性であるモジュール固定具に複数の要素を装着するステップと、
(b) 前記硬化様式に対して不透明なマスクを用いて、前記モジュール固定具の第一の部分の選択された領域をマスキングして、前記モジュール固定具のマスクされていない第一の部分と、前記モジュール固定具のマスクされた第一の部分とを形成するステップと、
(c) その後、高濡れ性接着剤を前記装着されたモジュール固定具内に分注するステップであって、
前記接着剤は、前記硬化様式の適用時に選択的に硬化可能であり、前記第一のモジュール固定具は、各接着ウェルが、前記複数の要素のうちの一つ以上の第一の部分を収容する複数の接着ウェルを形成し、前記モジュール固定具は、前記接着ウェルのうちの一つ以上と連通する一つ以上の開口を含み、前記接着剤は、硬化様式の適用時に選択的に硬化可能である、ステップと、
(d) 前記分注ステップ(c)の間に、前記マスクされた第一の部分における前記分注された接着剤の第二の部分に前記硬化様式を適用することなく、前記第一の部分における前記分注された接着剤の前記第一の部分への前記硬化様式の適用時に、前記マスクされていない第一の部分における前記分注された接着剤の第一の部分を硬化させるステップと、
(e) その後、前記マスクを除去するステップと、
(f) 前記モジュール固定具への前記硬化様式の適用時に、前記分注された接着剤の前記第二の部分を含む、前記モジュール固定具内の未硬化の分注された接着剤を硬化させるステップと、
を含む、接着方法。
【請求項19】
(A) 複数の要素を支持するモジュール固定具であって、各接着ウェルが前記要素のうちの一つ以上の第一の部分を収容する複数の接着ウェルを画成し、前記接着ウェルのうちの一つ以上と連通する一つ以上の開口を含むモジュール固定具であり、前記接着ウェルが公称深さを有する、モジュール固定具と、
(B) 高濡れ性接着剤を前記各接着ウェル内に分注して、著しい過充填を伴うことなく前記接着ウェルを前記公称深さまでほぼ満たしつつ前記各要素を囲むために、前記モジュール固定具に結合された分注システムであって、前記接着剤は、硬化様式の適用時に選択的に硬化可能である、分注システムと、
(C) 前記接着剤の分注時、前記接着剤が前記開口から出てくるときに、前記接着剤を前記硬化様式に選択的にさらすための硬化構造と、
を備えるシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−178996(P2011−178996A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36589(P2011−36589)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(510192916)テスラ モータース,インク. (6)
【Fターム(参考)】