説明

モジュール内蔵型カードおよびその製造方法

【課題】比較的高温の環境下にて積み重ねられても互いに密着するのを防止したモジュール内蔵型カードおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のモジュール内蔵型カード10は、モジュール11と、これを被覆する接着層12と、接着層12を介してモジュール12を挟む第一基材13および第二基材14と、を備え、第一基材13および第二基材14は、第三基材21を介して、一対の第四基材22を重ね合わせた後、これらを挟み込んで加熱、加圧することによって、第四基材22の一方の面22aに、鏡面板の一方の面の表面粗さを転写するとともに、第三基材21と一対の第四基材22を一体化したものであり、第四基材22の一方の面22aは、第一基材13および第二基材14の最表面、並びに、接着層12と接する面をなしていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップなどの電子部品を備えたモジュールを内蔵するモジュール内蔵型カードおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ICチップ、ダイオードなどの電子部品を備えたモジュールを内蔵するカード(モジュール内蔵型カード)は、一般に表面に光沢性を有している。
このようなモジュール内蔵型カード(以下、単に「カード」ということもある。)の用途としては、例えば、カード供給装置を備えた機器内に、適宜の枚数のカードを積み重ねた状態で蓄えておき、必要に応じて、カード供給装置によって利用者にカードを供給するというものが挙げられる。このような機器のなかでも、特に屋外などに設置されて高温に曝されるもの、例えば、屋外の券売機などでは、機器内部の温度が50〜60℃に達することがある。すると、その機器内に蓄えられたカードの表面を形成する基材が密着して、カード同士がぴったりと貼り付いてしまうことがあった。このようにカード同士が密着する不具合が生じると、カード供給装置によって、カードを1枚ずつ繰り出すことができなくなるという問題があった。
【0003】
カード同士が密着する不具合を防止する対策としては、カードの基材の表面に凹凸を形成するシボ加工を施して、基材の表面を粗くする方法が挙げられる。基材の表面にシボ加工を施すには、例えば、接着剤を介して一対の基材によりモジュールを挟み込むとともに、これらを基材の表面側から、所定の表面粗さの表面を有する鏡面板で挟み込み、高温、高圧でラミネート加工を施すことによって、鏡面板の表面の凹凸を基材の表面に転写する方法が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2660654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、シボ加工により基材表面へ凹凸を形成する方法は、カードの表面基材がポリ塩化ビニル(PVC)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PET−G)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)などの熱可塑性樹脂である場合に限られており、耐久性(耐熱性、硬さ、剛性など)の高いポリエチレンテレフタレート(PET)を表面基材として用いたカード(例えば、交通系カード)の場合、上記の鏡面板を用いたシボ加工を施すことができないという問題があった。
また、カードに内蔵されるモジュールを、低融点、低粘度または液状の接着剤を用いて、表面基材と貼り合せる際、高温、高圧で加工すると、接着剤がカードの端面からはみ出してしまうため、上述のようなシボ加工を施すことができないという問題があった。したがって、接着剤がはみ出さない程度の低温にて、カードを加工する方法が望まれていた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、比較的高温の環境下にて積み重ねられても互いに密着するのを防止したモジュール内蔵型カードおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のモジュール内蔵型カードの製造方法は、モジュールと、該モジュールを被覆する接着層と、該接着層を介して前記モジュールを挟む第一基材および第二基材と、を備えたモジュール内蔵型カードの製造方法であって、結晶性の樹脂からなる第三基材を介して、一対の非結晶性の熱可塑性樹脂からなる第四基材を重ね合わせた後、一対の鏡面板により、これらを前記第四基材の表面側から挟み込んで加熱、加圧することによって、前記一対の第四基材の表面に、前記鏡面板の前記第四基材と接する面の表面粗さを転写するとともに、前記第三基材を介して、前記一対の第四基材を重ね合わせて、前記第三基材と前記一対の第四基材を一体化した表面基材を形成する工程Aと、前記第一基材および前記第二基材として前記表面基材を用い、前記第一基材および/または前記第二基材の一方の面に、前記接着層をなす接着剤を塗布する工程Bと、前記接着剤を塗布した前記第一基材および/または前記第二基材の一方の面に、前記モジュールを配置する工程Cと、前記第一基材および前記第二基材によって前記モジュールおよび前記接着剤を挟んだ後、これらを加熱、加圧することにより、前記第一基材、前記第二基材、前記モジュールおよび前記接着剤を一体化する工程Dと、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明のモジュール内蔵型カードは、モジュールと、該モジュールを被覆する接着層と、該接着層を介して前記モジュールを挟む第一基材および第二基材と、を備えたモジュール内蔵型カードであって、前記第一基材および前記第二基材は、結晶性の樹脂からなる第三基材を介して、一対の非結晶性の熱可塑性樹脂からなる第四基材を重ね合わせた後、一対の鏡面板により、これらを前記第四基材の表面側から挟み込んで加熱、加圧することによって、前記一対の第四基材の表面に、前記鏡面板の前記第四基材と接する面の表面粗さを転写するとともに、前記第三基材を介して、前記一対の第四基材を重ね合わせて、前記第三基材と前記一対の第四基材を一体化したものであり、前記第四基材のシボ加工が施された面は、前記第一基材および前記第二基材の最表面、並びに、前記第一基材および前記第二基材の前記接着層と接する面をなしていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のモジュール内蔵型カードによれば、工程Aにおいて、結晶性の樹脂からなる第三基材を介して、非結晶性の熱可塑性樹脂からなる第四基材を重ね合わせて、第三基材と第四基材を一体化し、第四基材の表面にシボ加工を施すので、より高温、高圧の加工条件にて表面基材を形成することができるから、第四基材の鏡面板と接する面には、鏡面板の第四基材と接する面に形成された微小な凹凸を適正に転写し、その形状を維持することができる。すなわち、第四基材の鏡面板と接する面に、鏡面板の第四基材と接する面に形成された微小な凹凸の形状に応じて、よりはっきり、かつ、深くシボ加工を施すことができる。したがって、この表面基材を用いて製造されたモジュール内蔵型カードは、比較的高温の環境下にて積み重ねられても互いに密着するのを防止でき、また、積み重ねられたカード同士が静電気により密着するのを防止できる。
また、第四基材の鏡面板と接する面と反対側の面は、第一基材および第二基材における接着層と接する面をなし、第四基材の鏡面板と接する面と反対側の面の凹部内に、接着層を形成する接着剤が充填されるので、第一基材および第二基材と、接着層との接触面積が大きくなるから、ひいては、第一基材および第二基材と、接着層との接着力を向上させることができる。
【0010】
本発明のモジュール内蔵型カードの製造方法によれば、接着層を介してモジュールを挟む第一基材および第二基材が、結晶性の樹脂からなる第三基材と、この第三基材を介して重ね合わせられた一対の非結晶性の熱可塑性樹脂からなる第四基材とから構成され、シボ加工が施された第四基材の表面はモジュール内蔵型カードの表裏面をなしているから、比較的高温の環境下にて積み重ねられても互いに密着するのを防止でき、また、積み重ねられたカード同士が静電気により密着するのを防止できる。したがって、このモジュール内蔵型カードは、カード供給装置を備えた機器内に、適宜の枚数が積み重ねられた状態で蓄えられても、カード供給装置によって1枚ずつ確実に繰り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のモジュール内蔵型カードの一実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明のモジュール内蔵型カードの製造方法の一実施形態を示す概略断面図である。
【図3】本発明のモジュール内蔵型カードの製造方法の一実施形態を示す概略断面図である。
【図4】本発明のモジュール内蔵型カードの製造方法の一実施形態を示す概略断面図である。
【図5】本発明のモジュール内蔵型カードの製造方法の一実施形態を示す概略断面図である。
【図6】本発明のモジュール内蔵型カードの製造方法の一実施形態を示す概略断面図である。
【図7】本発明のモジュール内蔵型カードの製造方法の一実施形態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のモジュール内蔵型カードおよびその製造方法の実施の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0013】
「モジュール内蔵型カード」
図1は、本発明のモジュール内蔵型カードの一実施形態を示す概略断面図である。
この実施形態のモジュール内蔵型カード10は、モジュール11と、このモジュール11を被覆する接着層12と、この接着層12を介してモジュール11を挟む第一基材13および第二基材14とから概略構成されている。
また、モジュール11は、ベース基材15と、ベース基材15の一方の面15aに設けられ互いに接続されたアンテナ16およびICチップ17と、ベース基材15の一方の面15aに設けられた表示素子18とから概略構成されている。
【0014】
第一基材13および第二基材14は、第三基材21と、この第三基材21を介して重ね合わせられた一対の第四基材22,22とからなる表面基材23から構成され、第四基材22,22の第三基材21と接している面とは反対側の面(以下、「一方の面」という。)22aの全面にシボ加工が施されて、この一方の面22aが微小な凹凸が形成された凹凸面をなしている。
また、第四基材22の一方の面22aは、第一基材13および第二基材14の最表面、すなわち、モジュール内蔵型カード10の表裏面をなしている。
また、第四基材22の一方の面22aは、第一基材13および第二基材14における接着層12と接する面をなしている。これにより、第四基材22の一方の面22aの凹部内に、接着層12を形成する接着剤が充填されている。
【0015】
なお、第一基材13を構成する第三基材21の表示素子18と対向する領域には、第三基材21を厚み方向に貫通する窓部21aが設けられている。
また、第一基材13のうち表示素子18の表示部18aと対向する領域、すなわち、第四基材22,22において、表示素子18と対向する領域22b,22bには、その一方の面22a,22aにシボ加工が施されていない。これにより、第一基材13を介して、表示素子18の表示部18aを明瞭に視認することができる。
また、第一基材13を構成する第四基材22,22のうち、モジュール内蔵型カード10の最表面側に配された第四基材22の表面には、磁気ストライプ24が設けられている。そして、この第四基材22において、この磁気ストライプ24と対向する領域22cには、その一方の面22aにシボ加工が施されていない。これにより、領域22cの平滑性が保たれるため、磁気ストライプ24の読取りを良好に行うことができる。
【0016】
第四基材22の一方の面22aの表面粗さは、JIS B0601−2001に準拠して測定された最大高さ(Rz)で表した場合、2μm以上、20μm以下であることが好ましく、より好ましくは4μm以上、10μm以下である。
最大高さ(Rz)が2μm未満では、比較的高温の環境下にて、積み重ねられたモジュール内蔵型カード10が互いに密着するのを防止できなくなることがあり、また、積み重ねられたモジュール内蔵型カード10同士が静電気により密着するのを防止できなくなることがある。一方、最大高さ(Rz)が20μmを超えると、第四基材22の強度が低下し、モジュール内蔵型カード10を撓ませた場合に第四基材22が破断するおそれがある。
【0017】
モジュール11をなすベース基材15としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PET−G)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル樹脂からなる基材;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン樹脂からなる基材;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレンなどのポリフッ化エチレン系樹脂からなる基材;ナイロン6、ナイロン6,6などのポリアミド樹脂からなる基材;ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロンなどのビニル重合体からなる基材;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系樹脂からなる基材;ポリスチレンからなる基材;ポリカーボネート(PC)からなる基材;ポリアリレートからなる基材;ポリイミドからなる基材;ガラスエポキシ樹脂からなる基材(ガラスエポキシ樹脂基材);上質紙、薄葉紙、グラシン紙、硫酸紙などの紙からなる基材などが用いられる。
【0018】
モジュール11をなすアンテナ16は、ベース基材15の一方の面15aに、ポリマー型導電インクを用いて所定のパターンにスクリーン印刷、インクジェット印刷などの印刷法により形成されてなるものか、もしくは、導電性箔をエッチングしてなるもの、金属メッキしてなるものである。
【0019】
ポリマー型導電インクとしては、例えば、銀粉末、金粉末、白金粉末、アルミニウム粉末、パラジウム粉末、ロジウム粉末、カーボン粉末(カーボンブラック、カーボンナノチューブなど)などの導電微粒子が樹脂組成物に配合されたものが挙げられる。
【0020】
樹脂組成物として熱硬化型樹脂を用いれば、ポリマー型導電インクは、200℃以下、例えば100〜150℃程度でアンテナ16をなす塗膜を形成することができる熱硬化型となる。アンテナ16をなす塗膜の電気の流れる経路は、塗膜をなす導電微粒子が互いに接触することにより形成され、この塗膜の抵抗値は10-5Ω・cmオーダーである。
また、本発明におけるポリマー型導電インクとしては、熱硬化型の他にも、光硬化型、浸透乾燥型、溶剤揮発型といった公知のものが用いられる。
【0021】
光硬化型のポリマー型導電インクは、光硬化性樹脂を樹脂組成物に含むものであり、硬化時間が短いので、製造効率を向上させることができる。光硬化型のポリマー型導電インクとしては、例えば、熱可塑性樹脂のみ、あるいは熱可塑性樹脂と架橋性樹脂(特にポリエステルとイソシアネートによる架橋系樹脂など)とのブレンド樹脂組成物に、導電微粒子が60質量%以上配合され、ポリエステル樹脂が10質量%以上配合されたもの、すなわち、溶剤揮発型かあるいは架橋/熱可塑併用型(ただし熱可塑型が50質量%以上である)のものや、熱可塑性樹脂のみ、あるいは熱可塑性樹脂と架橋性樹脂(特にポリエステルとイソシアネートによる架橋系樹脂など)とのブレンド樹脂組成物に、ポリエステル樹脂が10質量%以上配合されたもの、すなわち、架橋型かあるいは架橋/熱可塑併用型のものなどが好適に用いられる。
【0022】
また、アンテナ16をなす導電性箔としては、銅箔、銀箔、金箔、白金箔、アルミニウム箔などが挙げられる。
さらに、アンテナ16をなす金属メッキとしては、銅メッキ、銀メッキ、金メッキ、白金メッキなどが挙げられる。
【0023】
ICチップ17としては、特に限定されず、アンテナ16を介して非接触状態にて情報の書き込みおよび読み出しが可能なものであれば、非接触型ICタグや非接触型ICラベル、あるいは非接触型ICカードなどのRFIDメディアに適用可能なものであればいかなるものでも用いられる。
【0024】
接着層12を形成する接着剤としては、使用前は液状であり、加熱、紫外線照射、電子線照射などの外的条件を加えることにより硬化する接着剤が用いられる。このような接着剤としては、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などが挙げられる。また、外的条件を加えなくても主剤と硬化剤の反応によって硬化する2液硬化型接着剤も用いられる。あるいは、ホットメルト接着剤も用いることができる。
熱硬化型樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アクリル系反応樹脂などが挙げられる。
【0025】
紫外線硬化性樹脂としては、紫外線硬化性アクリル樹脂、紫外線硬化性ウレタンアクリレート樹脂、紫外線硬化性ポリエステルアクリレート樹脂、紫外線硬化性ポリウレタン樹脂、紫外線硬化性エポキシアクリレート樹脂、紫外線硬化性イミドアクリレート樹脂などが挙げられる。
電子線硬化性樹脂としては、電子線硬化性アクリル樹脂、電子線硬化性ウレタンアクリレート樹脂、電子線硬化性ポリエステルアクリレート樹脂、電子線硬化性ポリウレタン樹脂、電子線硬化性エポキシアクリレート樹脂、カチオン硬化型樹脂などが挙げられる。
2液硬化型接着剤としては、ポリエステル樹脂とポリイソシアネートプレポリマーの混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの混合物、ウレタンとポリイソシアネートとの混合物などが挙げられる。
【0026】
このような接着剤の具体例としては、主剤(商品名:アロンマイティAP−317A、東亞合成社製)と硬化剤(商品名:アロンマイティAP−317B、東亞合成社製)からなる2液混合型エポキシ系接着剤、主剤(商品名:MLT2900、イーテック社製)と硬化剤(商品名:G3021−B174、イーテック社製)からなる2液混合型ウレタン系接着剤などが挙げられる。
【0027】
接着層12に含まれる着色剤としては、公知の無機顔料、有機顔料、染料などが用いられる。この着色剤により、接着層12は任意の色に着色される。
【0028】
第一基材13および第二基材14の中間層(芯材)をなす第三基材21は、加熱により結晶化して固化する結晶性の樹脂からなる基材である。結晶性の樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリプロピレン(PP)などが用いられる。
第三基材21の厚みは、50μm以上、250μm以下であることが好ましく、より好ましくは50μm以上、125μm以下である。
【0029】
第一基材13および第二基材14の表面層をなす第四基材22は、少なくとも表示素子18の表示部と対向する領域、および/または磁気ストライプ24と対向する領域が光透過性であり、分子の規則性を乱すことにより加熱しても結晶化しないようにした非結晶性の熱可塑性樹脂からなる基材である。非結晶性の熱可塑性樹脂としては、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PET−G)、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などが用いられる。
第四基材22の厚みは、30μm以上、100μm以下であることが好ましく、より好ましくは30μm以上、50μm以下である。
【0030】
このモジュール内蔵型カード10によれば、接着層12を介してモジュール11を挟む第一基材13および第二基材14が、結晶性の樹脂からなる第三基材21と、この第三基材21を介して重ね合わせられた一対の非結晶性の熱可塑性樹脂からなる第四基材22,22とから構成され、シボ加工が施された第四基材の一方の面22aはモジュール内蔵型カード10の表裏面をなしているから、比較的高温の環境下にて積み重ねられても互いに密着するのを防止でき、また、積み重ねられたカード同士が静電気により密着するのを防止できる。したがって、このモジュール内蔵型カード10は、カード供給装置を備えた機器内に、適宜の枚数が積み重ねられた状態で蓄えられても、カード供給装置によって1枚ずつ確実に繰り出すことができる。さらに、第一基材13および第二基材14の表面に施されたシボ加工により、モジュール内蔵型カード10の外観や質感を差別化することができるとともに、艶消し効果によってカードに付着した指紋や手垢を見え難くすることができる。
【0031】
また、第四基材22の一方の面22aは、第一基材13および第二基材14における接着層12と接する面をなし、第四基材22の一方の面22aの凹部内に、接着層12を形成する接着剤が充填されているので、第一基材13および第二基材14と、接着層12との接触面積が大きくなるから、ひいては、第一基材13および第二基材14と、接着層12との接着力を向上させることができる。
【0032】
なお、この実施形態では、第四基材22の一方の面22aの全面にシボ加工が施されたモジュール内蔵型カード10を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、例えば、モジュール11に表示素子31が設けられた場合、第四基材22における表示素子31と重なる部分にはシボ加工が施されない。また、例えば、第一基材13を構成する第三基材21に磁気ストライプ32が設けられた場合、第四基材22における磁気ストライプ32と重なる部分にはシボ加工が施されない。
【0033】
また、積み重ねられたカード同士が完全に密着してさえいなければ、カード同士を容易に剥離することができるから、カードの用途(カードが使用される機器の仕様など)によっては、第四基材のうちモジュール内蔵型カードの表裏面をなす方に、その外縁部にのみシボ加工を施しただけでもよい。
【0034】
また、この実施形態では、第一基材13に磁気ストライプ24が設けられたモジュール内蔵型カード10を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、第二基材に磁気ストライプが設けられていてもよい。
また、この実施形態では、モジュール11が、ベース基材15と、アンテナ16およびICチップ17と、表示素子18とから構成される場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、モジュールは、ベース基材、アンテナ、ICチップ、表示素子、電池および指紋認証素子から選択される少なくとも1つからなるものであればよい。
【0035】
「モジュール内蔵型カードの製造方法」
次に、図1〜図6を参照して、この実施形態のモジュール内蔵型カードの製造方法を説明する。
まず、図2、3に示すように、第三基材21を介して、一対の第四基材22,22を重ね合わせた後、一対の鏡面板41,41により、第三基材21および第四基材22,22を重ね合わせたものを、第四基材22,22の一方の面22a,22a側から、第四基材22,22の厚み方向(図中の矢印方向)に挟み込んで加熱、加圧することによって、第四基材22,22の一方の面22a,22aに、鏡面板41,41の第四基材22,22と接する面(以下、「一方の面」という。)41a,41aの表面粗さ、すなわち、鏡面板41,41の一方の面41a,41aに形成された微小な凹凸を転写するとともに、第三基材21を介して、第四基材22,22を重ね合わせて、第三基材21と第四基材22,22を一体化し、第四基材22,22の一方の面22a,22aにシボ加工が施された表面基材23を形成する(工程A)。
【0036】
なお、表面基材23が第一基材13である場合、この工程Aにおいて、第四基材22,22において、表示素子18と対向する領域22b,22bには、その一方の面22a,22にシボ加工を施さない。
また、表面基材23が第一基材13であり、第一基材13を構成する第四基材22,22のうち、モジュール内蔵型カード10の最表面側に配された第四基材22の表面に、磁気ストライプ24が設けられている場合、この工程Aにおいて、第四基材22における磁気ストライプ24と対向する領域22cには、その一方の面22aにシボ加工を施さない。
【0037】
この工程Aにおいて、鏡面板41,41により、第三基材21および第四基材22,22を挟み込んだ際、鏡面板41,41に対する加熱と加圧は同時に行われるが、鏡面板41,41を加熱する温度は80℃以上、180℃以下であることが好ましく、より好ましくは125℃以上、155℃以下である。
また、鏡面板41,41に印加する圧力は、0.5kg/cm以上、20kg/cm以下であることが好ましく、より好ましくは10kg/cm以上、20kg/cm以下である。
また、この鏡面板41,41に対する加熱と加圧を行う時間は、1分以上、60分以下であることが好ましく、より好ましくは2分以上、20分以下である。
【0038】
また、工程Aにおける鏡面板41,41に対する加熱と加圧は、大気雰囲気下で行ってもよいが、第三基材21と第四基材22,22の界面に気泡ができるのを防止するために、真空下で行うことが好ましい。
【0039】
次いで、図4に示すように、第一基材13として表面基材23を用い、第一基材13の一方の面13a、すなわち、磁気ストライプ24が設けられている面とは反対側の面に、上記の接着層12をなす接着剤42を塗布する(工程B)。
【0040】
この工程Bでは、図4に示すように、表示素子18の表示部18aの形状に応じて、第三基材21の窓部21a、および、第四基材22の領域22b(シボ加工が施されていない領域)を覆わないように、接着剤42を塗布する。
【0041】
次いで、図5に示すように、接着剤42を介して、接着剤42を塗布した第一基材13の一方の面13a上の所定の位置に、上記のモジュール11を配置する(工程C)。
すなわち、第三基材21の窓部21a、および、第四基材22の領域22b,22bに、表示素子18の表示部18aが対向するように、第一基材13の一方の面13aに、モジュール11を配置する。
【0042】
なお、この工程Bでは、接着剤42の塗布量が十分でない場合には、さらに、第一基材13の一方の面13aに配置したモジュール11を覆うように、接着剤を塗布してよい。
【0043】
次いで、図6に示すように、第二基材14として表面基材23を用い、接着剤42を介して第一基材13上に配置されたモジュール11に、第二基材14を重ねて、第一基材13および第二基材14によってモジュール11および接着剤42を挟んだ後、一対の鏡面板(図示略)により、第一基材13、第二基材14、モジュール11および接着剤42を重ね合わせたものを、第一基材13および第二基材14の表面側から、第一基材13および第二基材14の厚み方向(図中の矢印方向)に挟み込んで、第一基材13、第二基材14、モジュール11および接着剤42からなる積層体を加熱、加圧することによって、この積層体を一体化する(工程D)。
【0044】
この工程Dでは、上記の積層体を、その厚み方向に加圧し、加熱することにより、接着剤がモジュール11全体を覆うように流動し、第一基材13および第二基材14と、モジュール11との間の隙間が、接着剤42によって埋まる。
【0045】
この工程Dにおいて、鏡面板により、第一基材13、第二基材14、モジュール11および接着剤42を挟み込んだ際、鏡面板に対する加熱と加圧は同時に行われるが、鏡面板を加熱する温度は20℃以上、140℃以下であることが好ましく、より好ましくは20℃以上、80℃以下である。
また、鏡面板に印加する圧力は、0.5kg/cm以上、10kg/cm以下であることが好ましく、より好ましくは0.5kg/cm以上、5kg/cm以下である。
また、この鏡面板に対する加熱と加圧を行う時間は、1分以上、60分以下であることが好ましく、より好ましくは1分以上、5分以下である。
【0046】
次いで、図7に示すように、裁断装置の切断刃51,51により、上記の一体化された積層体を、その厚み方向に(図7の一点鎖線に沿って)、所定の形状(大きさ)に裁断し、図1に示すモジュール内蔵型カード10を得る。
【0047】
このモジュール内蔵型カードの製造方法によれば、工程Aにおいて、結晶性の樹脂からなる第三基材21を介して、非結晶性の熱可塑性樹脂からなる第四基材22,22を重ね合わせて、第三基材21と第四基材22,22を一体化し、第四基材22,22の一方の面22a,22aにシボ加工を施すので、より高温、高圧の加工条件にて表面基材23を形成することができるから、第四基材22,22の一方の面22a,22aには、鏡面板41,41の一方の面41a,41aに形成された微小な凹凸を適正に転写し、その形状を維持できる。すなわち、第四基材22,22の一方の面22a,22aに、鏡面板41,41の一方の面41a,41aに形成された微小な凹凸の形状に応じて、よりはっきり、かつ、深くシボ加工を施すことができる。したがって、この表面基材23を用いて製造されたモジュール内蔵型カード10は、比較的高温の環境下にて積み重ねられても互いに密着するのを防止でき、また、積み重ねられたカード同士が静電気により密着するのを防止できる。さらに、第一基材13および第二基材14の表面に施されたシボ加工により、モジュール内蔵型カード10の外観や質感を差別化することができるとともに、艶消し効果によってカードに付着した指紋や手垢を見え難くすることができる。
【0048】
また、第四基材22の一方の面22aに形成された凹部内に、接着層12を形成する接着剤が充填されるので、第一基材13および第二基材14と、接着層12との接触面積が大きくなるから、ひいては、第一基材13および第二基材14と、接着層12との接着力を向上させることができる。
【符号の説明】
【0049】
10・・・モジュール内蔵型カード、11・・・モジュール、12・・・接着層、13・・・第一基材、14・・・第二基材、15・・・ベース基材、16・・・アンテナ、17・・・ICチップ、18・・・表示素子、21・・・第三基材、22・・・第四基材、23・・・表面基材、24・・・磁気ストライプ、41・・・鏡面板、42・・・接着剤、51・・・切断刃。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モジュールと、該モジュールを被覆する接着層と、該接着層を介して前記モジュールを挟む第一基材および第二基材と、を備えたモジュール内蔵型カードの製造方法であって、
結晶性の樹脂からなる第三基材を介して、一対の非結晶性の熱可塑性樹脂からなる第四基材を重ね合わせた後、一対の鏡面板により、これらを前記第四基材の表面側から挟み込んで加熱、加圧することによって、前記一対の第四基材の表面に、前記鏡面板の前記第四基材と接する面の表面粗さを転写するとともに、前記第三基材を介して、前記一対の第四基材を重ね合わせて、前記第三基材と前記一対の第四基材を一体化した表面基材を形成する工程Aと、
前記第一基材および前記第二基材として前記表面基材を用い、前記第一基材および/または前記第二基材の一方の面に、前記接着層をなす接着剤を塗布する工程Bと、
前記接着剤を塗布した前記第一基材および/または前記第二基材の一方の面に、前記モジュールを配置する工程Cと、
前記第一基材および前記第二基材によって前記モジュールおよび前記接着剤を挟んだ後、これらを加熱、加圧することにより、前記第一基材、前記第二基材、前記モジュールおよび前記接着剤を一体化する工程Dと、を備えたことを特徴とするモジュール内蔵型カードの製造方法。
【請求項2】
モジュールと、該モジュールを被覆する接着層と、該接着層を介して前記モジュールを挟む第一基材および第二基材と、を備えたモジュール内蔵型カードであって、
前記第一基材および前記第二基材は、結晶性の樹脂からなる第三基材を介して、一対の非結晶性の熱可塑性樹脂からなる第四基材を重ね合わせた後、一対の鏡面板により、これらを前記第四基材の表面側から挟み込んで加熱、加圧することによって、前記一対の第四基材の表面に、前記鏡面板の前記第四基材と接する面の表面粗さを転写するとともに、前記第三基材を介して、前記一対の第四基材を重ね合わせて、前記第三基材と前記一対の第四基材を一体化したものであり、
前記第四基材のシボ加工が施された面は、前記第一基材および前記第二基材の最表面、並びに、前記第一基材および前記第二基材の前記接着層と接する面をなしていることを特徴とするモジュール内蔵型カード。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−13814(P2011−13814A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155753(P2009−155753)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】