説明

モナチンおよびカルシウムを含む組成物

カルシウム含有モナチン組成物は、カルシウム不存在下でモナチンを含有する相当する組成物と比較して、増強された甘味を呈する。カルシウムと組み合わせたモナチンからの甘味のため、カルシウム不存在下で必要とされる特別のレベルの甘味を達成するのに少ないモナチンしか要さない。カルシウム含有モナチン組成物は食品および飲料を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、モナチンおよびカルシウムを含む組成物の名称で2009年3月12日に出願され、出典明示してその全体が包含されるとみなされる、米国仮出願第61/209,926号の利益を主張する。
【0002】
この開示は、高甘味度甘味料を含有する組成物に関する。特に、この開示は、モナチンおよびカルシウムを含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
モナチン(2-ヒドロキシ-2-(インドル-3-イルメチル)-4-アミノグルタル酸)は、元々は、南アフリカのトランスバール地域で見いだされる植物スクレロキトン・イリシフォリウス (Sclerochiton ilicifolius)から単離された、天然に産出する高甘味度または高強度甘味料である。モナチンは下記の化学構造式:
【0004】
【化1】

を有する。
【0005】
様々な命名規則のため、モナチンは以下の:2-ヒドロキシ-2-(インドル-3-イルメチル)-4-アミノグルタル酸;4-アミノ-2-ヒドロキシ-2-(1H-インドル-3-イルメチル)-ペンタン二酸;4-ヒドロキシ-4-(3-インドリルメチル)グルタミン酸;および3-(1-アミノ-1,3-ジカルボキシ-3-ヒドロキシ-ブト-4-イル)インドールを含む多数の代替的な名称でも知られている。
【0006】
モナチンは2つのキラル中心を有し、4つの可能な立体異性配置;R,R 配置(「R,R 立体異性体」すなわち「R,R モナチン」);S,S 配置(「S,S 立体異性体」すなわち「S,S モナチン」);R,S 配置(「R,S 立体異性体」すなわち「R,S モナチン」);およびS,R 配置(「S,R 立体異性体」すなわち「S,R モナチン」)を生じる。
【0007】
WO 2003/091396 A2に言及すると、それは、とりわけ、モナチンのin vivo およびin vitro 産生のための、ポリペプチド、経路、および微生物を開示する。WO 2003/091396 A2 (例えば、図1〜3および11〜13を参照せよ。)および米国特許出願公開第2005/282260は、ポリペプチド(タンパク質)すなわち酵素での生物学的転換を含むマルチステップ経路によるトリプトファンからのモナチンの産生を記載する。記載されているひとつの経路は、生物学的に、例えば、酵素で、トリプトファンをインドール-3-ピルビン酸塩(「I-3-P」)(反応(1))に転換し、インドール-3-ピルビン酸塩を2-ヒドロキシ2-(インドル-3-イルメチル)-4-ケトグルタル酸(モナチン前駆体、「MP」)(反応(2))に転換し、ついで、MPをモナチン(反応(3))に転換することを要件とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
モナチンおよびカルシウムを含有する組成物であって、その知覚甘味が、同一量のモナチンを有し、かつ、カルシウムを欠如する組成物と比較して増強されている組成物、および、モナチンおよびカルシウムを含有する組成物であって、その知覚甘味が、同一量のモナチンを有し、かつ、カルシウムを欠如する組成物と比較して増強されている組成物を作製する方法が提供される。その組成物は、制限なく、外来カルシウムを有する組成物(すなわち、カルシウムが本質的に固有カルシウムを有さない組成物に添加されている。)、さらなるカルシウムが固有カルシウムを含有する組成物に添加されている、カルシウム強化食料および飲料組成物、カルシウムが食料または飲料に固有である食料および飲料組成物ならびに卓上甘味料組成物を含む。固有カルシウムを有する組成物の非制限的な例は、制限なく、アイスクリーム、チョコレートミルク、プリン、クリームチーズ、およびヨーグルトのような酪農組成物を含む。カルシウム強化食料および飲料組成物は、制限なく、外来カルシウムがさらに組成物に添加されている、固有カルシウムを有する前記組成物のいずれも、カルシウム強化飲料、カルシウム強化食料、カルシウム強化ドリンクパウダーミックス、カルシウム強化栄養バー、カルシウム添加アイスキャンディー、朝食用シリアル、無糖および還元糖キャンディーおよびチュウイー、無糖および還元糖ジャム、ゼリー、カルシウムおよび低メトキシペクチンでゲル化したフルーツ製品およびフルーツ調製物、ならびに食事代替飲料を含む。カルシウム強化食料および飲料組成物は、本質的に外来カルシウムのみを有する組成物も含む。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一つの具体例において、非酪農食品はモナチンまたはその塩、およびカルシウムを含み、その食品は、モナチンを含む、カルシウムなしの同等食品の甘味よりも強い甘味を有する。
【0010】
もう一つの具体例において、非酪農食品はモナチンまたはその塩およびカルシウムを含み、その食品は、モナチンを含み、カルシウムの不存在下で、同等食品の甘味よりも約10%強い甘味を有する。
【0011】
もう一つの具体例において、食品はモナチンまたはその塩形態および外来カルシウムを含み、その食品は、外来カルシウムを含有しない同等食品の知覚甘味よりも強い知覚甘味を有する。
【0012】
もう一つの具体例において、食品に使用する甘味付け組成物は、モナチンまたはその塩およびカルシウムを含み、その食品が、相当量のモナチンを含有する、カルシウムなしの甘味付け組成物を有する同等食品の知覚甘味よりも強い知覚甘味を有するようにする。
【0013】
もう一つの具体例において、非酪農食品に甘味付けする方法は、モナチンまたはその塩をその食品に添加し、ついで、カルシウムをその食品に添加することを含む。その食品は、モナチンを含有する、カルシウムなしの同等食品の知覚甘味よりも強い知覚甘味を有する。
【0014】
もう一つの具体例において、食品に甘味付けする方法は、モナチンまたはその塩をその食品に添加し、ついで、カルシウム塩をその食品に添加することを含み、そのカルシウム塩はその食品に十分溶解する。その食品は、モナチンが添加され、カルシウムは添加されない同等食品よりも強い知覚甘味を有する。
【0015】
もう一つの具体例において、食品は、固有カルシウムおよびモナチンまたはその塩を含み、そのモナチンは、その食品が少なくとも約10%スクロース等価値(SEV)を有するのに十分な量である。
【0016】
いくつかの局面において、そのカルシウムはカルシウム塩であり、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、塩化カルシウム、およびそれらの組合わせを含むことができる。いくつかの局面において、その食品中のカルシウムの量は、その食品の少なくとも約25ppmである。他の局面において、その食品中のカルシウムの量は、その食品の少なくとも約200ppmである。
【0017】
いくつかの局面において、その食品および甘味付け組成物中のモナチンはR,R モナチンである。いくつかの局面において、その食品中のモナチンの量は、その食品の約5と約50ppmとの間である。
【0018】
本開示は、モナチンおよびカルシウムを含有する組成物に関し、それは、モナチンを含有するカルシウムなしの同等組成物と比較して増強された甘味を呈する。本発明の1以上の非制限的な具体例の詳細を、下記説明に記載する。本発明の他の具体例は、本開示を検討した後当業者にとって明らである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
上述のように、モナチンは2つのキラル中心を有し、4つの可能性のある立体異性配置を生じる。ここで用いるとき、特記がなければ、用語「モナチン」は、単一の異性体形態を含み、モナチン(または、それらの塩のいずれか)の4つのモナチンの立体異性体のいずれかの組合せを含む組成物をいうために用いられる。
【0020】
特記なければ、用語「モナチン」はいずれのその塩も含む。ここで用いるとき、特記なければ、用語「モナチン」はモナチンが作製された方法から独立し、かくして、例えば、生合成経路、純粋な合成手段により、全体もしくは一部が合成され、または天然起源から単離されたモナチンを包含する。モナチンに対する様々な命名規則により、モナチンは:2-ヒドロキシ-2-(インドル-3-イルメチル)-4-アミノグルタル酸;4-アミノ-2-ヒドロキシ-2-(1H-インドル-3-イルメチル)-ペンタン二酸;4-ヒドロキシ-4-(3-インドリルメチル)グルタミン酸;および、3-(1-アミノ-1,3-ジカルボキシ-3-ヒドロキシ-ブト-4-イル)インドールを含む多数の代替的な名称でも知られている。
【0021】
ここで用いるとき、「スクロース等価値」、すなわちSEVは、甘味の指標である。SEVは、試験サンプルの甘味の度合いと同じ甘味の度合いであると知覚される甘味の度合いを与える、スクロース溶液の濃度(% w/v)である。この開示の目的のため、モナチンを含有する水性または酪農溶液のSEVは、同じ媒体で調製された一連のスクロース含有溶液に対するモナチン含有溶液の比較により決定される(実施例1を参照せよ)。非水性または本質的に固体の食品に関し、SEVは、モナチンを含有する食品の甘味の度合いと同じ甘味の度合いであると知覚される甘味の度合いを与える、モナチンなしの同等食品におけるスクロースの濃度(% w/w)である。
【0022】
モナチン含有組成物は、ここでは、スクロースの「X」倍甘いと記載される。モナチンの種々の立体異性体もスクロースの「X」倍甘いと記載される。これらの値は組成物のSEVから決定される。
【0023】
ここで用いるとき、用語「約」は、いかなる測定においても生じる実験誤差の範囲を包含する。
【0024】
ここで用いるとき、カルシウム含有モナチン組成物の増強された甘味」は、モナチンを含有しカルシウムを含有しない相当する組成物の知覚甘味と比較して、その組成物の強い知覚甘味をいう。通常、カルシウムは甘くないと受け入れられている。実際、カルシウムは、しばしば、いくらかの苦みを有すると考えられている。しかしながら、ここで記載し示されるように、モナチンをカルシウムと組み合わせて、組成物に使用すると、その組成物の知覚甘味がカルシウムの存在下で増強され、それは以下にさらに詳細に説明する。ここで用いるとき、「増強」は、カルシウム含有モナチン組成物の知覚甘味が、カルシウムの不存在下でモナチンを有する同等組成物の知覚甘味よりも強いことを意味する。
【0025】
ここで用いるとき、組成物または食品の「知覚甘味」は、食品または溶液を味見する人によって知覚される甘味である。ここで記載するように、開示された実施例の知覚甘味は味覚パネルによって決定された。食品または溶液は、それが味蕾中の味細胞の表面上の甘味に対する受容体と相互作用し刺激すれば、甘いと知覚される。刺激された味細胞は、脳に食品または溶液が甘いと認識するように信号を送る神経伝達物質の放出によって応答する。
【0026】
ここで用いるとき、「固有カルシウム」は、食品または物質中に元来存在するカルシウムをいう。固有カルシウムを含有する食品および物質の非制限的な例は、ミルク、アイスクリーム、およびヨーグルトなどの酪農製品を含む。
【0027】
ここで用いるとき、「外来カルシウム」は、食品または物質に添加されるカルシウムをいう。外来カルシウムは、カルシウムを含まない食品または物質ならびに固有カルシウムを含有する食品または物質に添加することができる。外来カルシウムを画乳する製品も、ここでは、カルシウム強化されているという。
【0028】
「同等食品」を用いて、ここでは、モナチン含有食品と、実質的に同一だがモナチンなしの食品とを比較する。実質的に同一の食品とは、それが比較される食品と実質的に同一の属性、特性および/または組成物を有することを意味する。当業者は、従来の甘味料の高甘味度甘味料(すなわち、モナチン)への置換えは、その食料の物理的および官能的特性を修復するために充填剤を含ませることが必要になるであろうと認識する。いくらかの場合、「同等食品」または「同等組成物」を用いて、ここでは、カルシウム含有モナチン組成物または食品と、実質的に同一だがカルシウムなしのモナチン組成物または食品とを比較する。
【0029】
ここで用いるとき、「食品」、「食料品」、および「食料組成物」は飲料を含む。
【0030】
モナチン優れた甘味品質を有し、特別の組成物に依存して、モナチンはスクロースの数百倍甘く、いくらかの場合、スクロースの数千倍甘い。上述するように、モナチンは4つの立体異性配置を有する。モナチンのS,S 立体異性体は、重量あたりスクロースよりも約50〜200倍甘い。モナチンのR,R 立体異性体は、重量あたりスクロースよりも約200〜2400倍甘い。
【0031】
食料および飲料システムへのモナチン使用の調査において、発明者らは、予期せぬことに、モナチンを特定の食料および/または飲料システムに用いたとき、予測よりも高い甘味を観察した。より高い知覚甘味は固有カルシウムを含有する食料および飲料で観察されたことが確認された。例えば、モナチンをミルク含有飲料に添加したとき、その飲料は予測よりも高いレベルの甘味を有することが観察された。言い換えれば、その飲料に添加されたモナチン量に基づけば、その飲料の知覚甘味は予測よりも増強され、すなわち強かった。
【0032】
カルシウムが増強された甘味をもたらすことは予期されなかった。なぜならば、カルシウムは一般に甘くなく、いくらかの場合、苦みを有することが知られているからである。しかも、アスパルテームやスクロースなどの他の甘味料について行われた調査において、カルシウムイオンの添加は、それらの甘味料の甘味強度に影響がなかったことが示された(Schiffman, Susan, S., Effect of temperature, pH, and ions on sweet taste, Physiology & Behavior 68 (2000), pp. 469-481 を参照せよ)。それで、モナチンおよびカルシウムを含有する組成物が、モナチンを含有しカルシウムを含有しない相当する組成物を超えて増強された甘味を有することは予期されなかった。
【0033】
下記のように、実際に、カルシウムがモナチンの知覚甘味を増強するかどうかを決定する実験が行われた。これらの実験は、ミルク中に存在する様々な成分(例えば、ラクトース、乳脂肪、ミルクプロテイン、およびカルシウム)および条件(例えば、pH)を解析して、それらの成分や条件がモナチン含有組成物の知覚甘味に与える影響を評価した。その結果は、カルシウムがモナチン含有組成物の知覚甘味を増強することを実証した。
【0034】
ここに、モナチンおよびカルシウムを含有する組成物が提供され、その組成物の知覚甘味は、同量のモナチンを有し、かつ、カルシウムを欠如する組成物と比較して増強されている。ここに、モナチンおよびカルシウムを含有する組成物の作製方法も提供され、その組成物の知覚甘味は、同量のモナチンを有し、かつ、カルシウムを欠如する組成物と比較して増強されている。それらの組成物は、制限なく、カルシウム強化食料および飲料組成物、カルシウムが食料または飲料に固有である食料および飲料組成物ならびに卓上甘味料組成物を含む。固有カルシウムを有する組成物の非制限的な例は、制限なく、アイスクリーム、フレーバーミルク、プリン、ソフトチーズ、およびヨーグルトのような酪農組成物を含む。カルシウム強化食料および飲料組成物は、制限なく、外来カルシウムがさらに添加されている、固有カルシウムを有する前出のいずれの組成物、カルシウム強化飲料、カルシウム強化食料、カルシウム強化ドリンクパウダーミックス、カルシウム強化栄養バー、カルシウム添加されたアイスキャンディー、カルシウム強化朝食用シリアル、無糖キャンディーおよびチュウイー、糖無添加ジャム、ゼリー、フルーツ製品、ならびにカルシウムおよび低メトキシペクチンでゲル化したフルーツ調製物、ならびにカルシウム強化食事代替飲料を含む。
【0035】
所定の甘味を有し、モナチンおよびカルシウムを含む組成物が提供される。いくつかの具体例において、モナチン量は、そのような組成物において、所定の甘味を達成するのに必要な量より多くなく、カルシウムの不存在下で必要とされる量より少なくない。カルシウムの存在下でのモナチンの増強された甘いは一つ以上の利点を有し得る。例えば、組成物はより少ないモナチンを使用して、所望の甘味を達成することができ、かくして、経済的な利点を提供し、または、甘味付けされた組成物をさらなるカルシウムで補足して、より強い甘味および/または栄養的な利点がある(カルシウム強化)組成物を提供することができる。
【0036】
ここで提供される組成物は、固有および/または外来カルシウムを用いて、モナチンの知覚甘味を増加させ得る。用語「カルシウム」は、一以上のカルシウム(II)カチオン、カルシウム塩錯体、またはそれらの混合物をいう。いくつかの具体例において、カルシウムはカルシウム塩の形態であり得る。カルシウム塩の例は、限定されないが、酢酸カルシウム、アスパラギン酸カルシウム、グルタミン酸カルシウム、アルギン酸カルシウム、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、水酸化カルシウム、乳酸カルシウム、マレイン酸カルシウム、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、酸化カルシウム、プロピオン酸カルシウム、ソルビン酸カルシウム、および硫酸カルシウムを含む。さまざまなカルシウム塩を用途に応じて使うことができると認識される。いくつかの具体例において、カルシウムは、塩化カルシウム、乳酸カルシウムまたはグルコン酸カルシウムであり得る。いくつかの具体例において、カルシウムは、市場で入手可能な可溶カルシウム塩の形態、例えば、Gluconal CALRであり得る。いくつかの具体例において、カルシウム源の混合物が当該組成物中に存在する。
【0037】
以下の実施例のセクションに示されるように、カルシウム塩のタイプはモナチン含有組成物の甘味増強の程度に影響するであろう。例えば、以下の実施例に示されるように、モナチン含有組成物の知覚甘味は、他のカルシウム塩と比較して、塩化カルシウムによって最も増強される。したがって、いくつかの具体例において、特定の所定の甘味を達成するのに必要なモナチンの量は、用いるカルシウム塩のタイプによって変化するであろう。いくつかの具体例において、カルシウム塩または、水への十分な溶解性を有し、少なくとも大部分のカルシウムが当該組成物に溶解可能な塩を選択することが好ましいであろう。いくつかの具体例において、そのカルシウム塩は、好ましくは、そのアニオン(共役塩基)が、当該組成物に対して異臭を生じかねない強烈な味を有しない塩である。
【0038】
いくつかの具体例において、カルシウム含有モナチン組成物は固有カルシウムを含有することができる。例えば、固有カルシウムを有する組成物は、限定されないが、哺乳類に由来する酪農組成物を含む。いくつかの具体例において、固有カルシウムを有する組成物を外来カルシウムで増強することが望ましい。いくつかの具体例において、組成物は外来カルシウムのみを含有する。
【0039】
いくつかの具体例において、ここに記載した組成物中のカルシウムの量は、少なくとも25ppm(例えば、少なくとも50ppm、少なくとも100ppm、および少なくとも150ppm)であろう。他の具体例において、カルシウムの量は、少なくとも200ppm(例えば、少なくとも400ppm、少なくとも500ppm、少なくとも600ppm、少なくとも700ppm、少なくとも750ppm、少なくとも800ppm、少なくとも900ppm、少なくとも1000ppm、少なくとも1200ppm、および少なくとも1600ppmカルシウム)であろう。いくつかの具体例において、当該組成物に添加するカルシウムの量は、ある部分、食品のタイプおよびその食品がいずれかの固有カルシウムを有するかどうかに依存するであろう。その上、用いられるカルシウムの量は、ある部分、当該組成物に添加するモナチンの量に依存するであろう。ここで用いるとき、組成物中のカルシウムの量は、その組成物中のカルシウムカチオンの量に依存する。
【0040】
いくつかの具体例において、カルシウム塩を当該組成物に完全に溶解させる。他の具体例において、カルシウム塩の一部を当該組成物に溶解させる。いくつかの具体例において、当該組成物中の溶解カルシウム濃度は、少なくとも約25ppmである。いくつかの具体例において、溶解カルシウム濃度は、少なくとも約200ppmである。
【0041】
ここで用いるとき、「カルシウム塩」は、溶解形態、錯塩形態、および会合形態で、カルシウムを含む。例えば、カルシウム塩が飲料に添加されれば、カルシウムカチオンおよび対応するアニオンは当該溶液中で解離し、それで、カルシウムはもはや塩形態ではないと認識される。
【0042】
いくつかの具体例において、当該組成物中のカルシウムの量は、カルシウムの形態に依存する。上述のように、いくつかのカルシウム塩は、他のカルシウム塩と比較して、より強い甘味増強を生じる。例えば、塩化カルシウムの使用は、より少ない量のカルシウムの使用を可能とする。下記の実施例に示されるように、塩化カルシウムをモナチン含有組成物に用いる場合、25ppm程度の少ないカルシウムがモナチン含有組成物の知覚甘味の増加を生じる。いくつかの具体例において、少ないカルシウムをモナチンと組み合わせて用いること(すなわち、最少量のカルシウムでモナチンの甘味を増強すること)は有益であろう。例えば、当該組成物中の低用量のカルシウム塩の使用は、カルシウム塩からの当該組成物に対するいかなる異臭の可能性も低減する。
【0043】
いくつかの具体例において、ここに記載する組成物中のある量のモナチンは、約5ppmのR,R モナチンであり得る。いくつかの具体例において、当該組成物中のある量のモナチンは、約5ppmと約50ppmとの間のR,R モナチンである。いくつかの具体例において、ある量のモナチンは、約10ppmと約40ppmとの間のR,R モナチンである。上述のように、当該モナチン含有組成物は、モナチンのさまざまな立体異性体のいかなる混合物をも含むであろう。それで、当該組成物中のモナチンの量は、立体異性体混合物に依存するであろう。例えば、S,S モナチンおよびR,R モナチンの混合物を含むモナチン含有食品について、相当する甘味を有し、かつ、本質的にR,R モナチンのみを含むモナチン含有食品と比較して、少ないR,R モナチンを用いることができる。
【0044】
ここで用いるモナチンの量は、モナチン一カリウム塩の濃度で表現される。例えば、上述するように、用いる一カリウム塩モナチンの量は、いくつかの具体例において、ここに記載する組成物について、約10ppmから約40ppmまでの範囲であろう。当業者は、モナチンの量がモナチン酸形態で表現されていたら、モナチンの量の範囲は、カチオンの不存在のため、若干低いであろうと認識される。例えば、約10ppmと約40ppmとの間の範囲にあるモナチン一カリウム塩について、モナチンフリー酸濃度は約9ppmから約35ppmまでの範囲であろう。
【0045】
カルシウム含有モナチン組成物は、カルシウムのモナチンに対するモル比またはカルシウムのモナチンに対する重量比のいずれかで表現することができる。いくつかの具体例において、カルシウムのモナチンに対する重量比は約0.5と約80との間である。いくつかの具体例において、カルシウムのモナチンに対する重量比は約2.5と約60との間である。重量比は、ある部分、当該組成物が固有カルシウムを含有するかどうかに依存し、その場合、カルシウムのモナチンに対する比は、いくつかの具体例において、より高いであろう。外来カルシウムのみを含油する組成物について、いくつかの具体例において、カルシウムのモナチンに対する重量比は約2.5と約20との間である。
【0046】
いくつかの具体例において、カルシウムのモナチンに対するモル比は約5と約700との間である。いくつかの具体例において、モル比は約20と500との間である。上述のように、その比は、ある部分、当該組成物中のカルシウムが外来か固有かに依存する。外来カルシウムのみを含有する組成物について、いくつかの具体例において、カルシウムのモナチンに対するモル比は約20と200との間である。
【0047】
いくつかの具体例において、1以上のさらなる甘味料をモナチンおよびカルシウムと組み合わせて用いて、所定の甘味を達成し、および/またはバルク(bulk)を与えることができる。いくつかの具体例において、1以上のさらなる甘味料と組み合わせたモナチンおよびカルシウムの使用は、組成物中にカルシウムが存在しないときに必要とされるよりも少ないモナチンの使用をもたらす。
【0048】
ここに記載するカルシウム含有モナチン組成物は、生の、調製または加工されたいずれの製品をも含み得、それらは、人もしくはペットを含む動物の消費、または野生消費が意図されている。いくつかの具体例において、組成物は、飲食による消費に供することができ、任意で、ミネラル、炭化水素(糖を含む)、タンパク質、カフェイン、および/または脂肪の形態で、栄養または刺激物を含有することができる。
【0049】
カルシウム含有モナチン組成物も食料添加物であり、その役割は、少なくともある部分、モナチンおよびカルシウム、特に、モナチン−甘味付け量のカルシウムをカルシウム食料品または食料組成物に添加することにある。
【0050】
モナチンおよびカルシウム含有組成物は、味蕾に対してモナチンおよびカルシウムを提示するいずれの方法も含むことができる。例えば、モナチンをカルシウムと組み合わせ、均質混合物として、または非均質混合物として、味蕾に提示し得る。いくつかの具体例において、モナチンおよびカルシウムは、液体または固体の組成物における1以上の分離したレイヤー、層、または粒子中にあり得、そのようなレイヤー、層または粒子は、組成物中で互いに隣り合っているか、または、互いに分離しているが、モナチンおよびカルシウムの双方が依然として口内に同時に存在することを許容する。いくつかの具体例において、カルシウムは、とりわけ、モナチンを含有するコアの全体または一部を覆うコーティングに局在するであろう。いくつかの具体例において、モナチンは、とりわけ、カルシウムを含有するコアの全体または部一部を覆うコーティングに局在し得る。いくつかの具体例において、カルシウムおよびモナチンは、分離した領域または分離した形態で組成物全体にまたはその内部に分散指せることができる。モナチンおよびカルシウム塩を含有する固体組成物について、その組成物の増強された甘味は、カルシウムの存在により、飲み込む前に口内で溶けるカルシウム塩の速度および程度に依存するであろう。
【0051】
モナチンおよびカルシウムは単一組成物であってよく、または、モナチンおよびカルシウムは分離した組成物であってよく、それらは同時にまたは異なる時点で添加することができる。モナチンおよびカルシウム含有組成物は、食品に添加する前、いずれの形態、すなわち、液体、乾燥ブレンドなどであってよい。モナチンおよびカルシウム含有組成物は、いずれの時点、例えば、加工中、他の原料が添加されるのと同時に、または中間点のいずれかで、食品に添加することができる。モナチンおよびカルシウム含有組成物は、食料プロセッサーによってまたは消費者によって加工された後、添加することもできる。下記するようい、いくつかの具体例において、モナチンおよびカルシウム含有組成物は、糖に置き換えることができるレディ−トゥ−ユース (ready-to-use) の甘味料として予めパックされたまたは調製された甘味料組成物であってよい。
【0052】
ここで、カルシウムで増強することができる食料および飲料組成物が提供される。非制限的な例は、カルシウム強化ソフトドリンク(インスタントおよびレディ−トゥ−ドリンク (ready-to-drink))、強化水およびニアウォーター飲料、フローズンポップ、朝食用シリアル、栄養およびスナックバー、ならびに無糖または還元糖キャンディーならびに菓子類(例えば、カルシウム強化チュウイー)を含む。
【0053】
さらに、ここで、フルーツ組成物、例えば、カルシウムおよびモナチンを含有するジャム、ゼリー、ならびにフルーツ調製物およびフィリングスが提供される。いくつかの具体例において、そのようなフルーツ製品は、ペクチンのカルシウム塩(例えば、低メトキシペクチンのカルシウム塩)でゲル化することができる。
【0054】
いくつかの具体例において、ここに記載するように、組成物を用いて、液体、特に、水性飲料を含む飲料組成物を作り得る。そのような飲料は、限定されないが、ケフィア、液体(飲用可能)ヨーグルトおよびフレーバーミルクを含む液体酪農製品;オレンジジュース、例えば、米国特許第7,033,630に記載された酒石酸塩沈殿物フリーカルシウム強化グレープジュースを含むグレープジュース、およびトマトジュースを含むカルシウム強化ジュースを含むシトラス製品;100%未満のジュースを含有するジュース(例えば、1〜50%フルーツジュース);インスタントソフトドリンクおよびフレーバーおよび/または強化水飲料(例えば、カルシウム強化モナチン含有スポーツドリンクおよびエネルギードリンク);炭酸飲料;アルコール飲料および食事代替飲料を含む。
【0055】
飲料として提供される場合、本発明の方法で作成された組成物は、そのまま飲める組成物(すなわち、希釈する必要がない、または「レディ−トゥ−ドリンク」である)であるか、または、コンク、シロップその他、希釈し、もしくは液体と混合するかもしくは固体と混ぜて飲用可能な飲料を作る調製物の組成物であり得る。濃縮組成物はより高いレベルのモナチンおよびカルシウムを有して、レディ−トゥ−ドリンク飲料の希釈形態において適量のモナチンおよびカルシウムを達成すると認識される。また、「飲料」組成物は、例えば、水、ミルク、またはアルコール飲料と混合して、飲用可能な飲料を作製し得る乾燥飲料ミックスであり得る。飲料をカルシウムで強化して増強された甘味の飲料を達成し得る。いくつかの具体例において、飲料は強化されて、少なくとも200ppmのカルシウムを含有する。
【0056】
飲料組成物は、希釈が意図されたシロップ組成物として提供さえ得、そのシロップ組成物はモナチンを含む。いくつかの具体例において、そのシロップを希釈して、摂取される飲料の約15重量%から約25重量%の範囲の最終量にする。例えば、飲料組成物は、約1部シロップ:3部希釈液から約1部シロップ:5.5部希釈液の範囲のドリンクに希釈するのに適した濃縮物であるシロップであり得る。いくつかの具体例において、飲料組成物は、乾燥飲料ミックス(例えば、フレーバーミルクパウダー、ホットチョコレート、コーヒー飲料、インスタントカプチーノ、およびティー)であり得る。いくつかの具体例において、飲料組成物は、レディ−トゥ−ドリンク組成物であり得る。
【0057】
ここで、モナチンおよびカルシウムで作られた飲料組成物が提供される。ひとつの具体例において、インスタントティー飲料でのサンプルを作製し、所定のモナチンの量を有する第1サンプル(すなわち、対照)およびカルシウムと組み合わせて同量のモナチンを有する第2サンプルが含まれる。第2サンプルは、モナチンのみを含有する対照と比較して30%甘味増強を有していた。第3サンプルは、第1および第2サンプルよりも33%多いモナチンを含有するが、カルシウムを含有しなかった。第3サンプルは、第2サンプルとほぼ同等の甘味を有しており、カルシウムおよび少ないモナチンを用いて所定の甘味を達成することができることが実証された。以下に示すもう一つの例において、カルシウムをモナチンと組み合わせて用いたときに甘味増強を示すベリー風味飲料でサンプルを作製した。カルシウムおよびモナチンを有するそのベリー風味飲料は、モナチンのみを有する同じ飲料と比較して甘味が9%増加した。
【0058】
いくつかの具体例において、組成物は1以上の酪農製品、例えば、固有カルシウムを含有する組成物を含むであろう。カルシウムの量は、単独で固有カルシウムによって、または、固有および外来カルシウムの組合せによって、提供し得る。そのような酪農組成物は、いずれの酪農源からも全体または一部誘導し得る。酪農組成物の例は、限定されないが、ミルク(例えば、全乳、脱脂乳、無糖練乳、練乳、全粉乳、および脱脂粉乳を含む)、ヨーグルト(フローズンヨーグルトを含む)、ケフィア、プリン、クリームチーズ、アイスクリーム、シャーベット、酪農デザート、酪農飲料、フレーバーミルク(例えば、チョコレートミルク)、ラクトース減量ミルク、ラクトースフリーミルク、酪農および非酪農スムージー、ならびに食事代替飲料を含む。
【0059】
ここで、アイスクリーム組成物、ヨーグルト組成物およびフレーバーミルク組成物が提供される。これらの例において、固有カルシウムを含有する組成物にモナチンを添加し、スクロースで特定の甘味に甘味付けした同様の組成物と比較した。異なるレベルのモナチン入りのサンプルを、次いで、試験して、どのモナチンレベルがスクロース含有サンプルと同等の甘味を生じるかを決定した。
【0060】
いくつかの具体例において、例えば、アイスクリームまたはフレーバーミルクのような食料組成物について、より高い甘味レベルを有することが望まれるであろう。いくつかの具体例において、その食料組成物は少なくとも約9%のSEVを有する。いくつかの具体例において、SEVは約10%と約16%との間である。固有カルシウムを含有する食料組成物について、固有カルシウムを含有しない相当食料組成物と比較して、より高い所望の甘味レベルを達成するのに少ないモナチンが必要とされる。
【0061】
いくつかの具体例において、モナチンおよびカルシウムを含有する甘味料組成物が提供される。いくつかの具体例において、甘味料組成物は卓上甘味料であり、それはレディ−トゥ−ユース甘味料および小分け包装 (packet formulations)を含む。いくつかの具体例において、所定体積のカルシウム−モナチン甘味料組成物は同一体積のグラニュー糖(スクロース)と同じ甘味を有する。これらの組成物は、グラニュー糖の代わりに使用するように調製され、それゆえ、糖の代わりに「スプーン−フォオ−スプーン (spoon-for-spoon)」または「カップ−フォオ−カップ (cup-for-cup)」で使用し得るレディ−トゥ−ユース甘味料である。いくつかの具体例において、レディ−トゥ−ユース甘味料は、マルトデキストリン、モナチンおよびカルシウムを含む。マルトデキストリンは、充填剤および/または希釈剤として作用する。いくつかの具体例において、甘味料組成物は一回分小分け包装(通常、約1グラムから4グラム)であり、それはティースプーン約2杯分のグラニュー糖(スクロース)すなわち約8ラムのグラニュー糖を含有するものの所定の甘味を与える。いくつかの具体例において、一回分小分けのモナチンおよびカルシウム組成物(例えば、1グラム)は約0.9から約9.0グラムのグラニュー糖(スクロース)の範囲の甘味を与える。いくつかの具体例において、小分け包装は、ブドウ糖、マルトデキストリン、モナチンおよびカルシウムを含む。ブドウ糖は、マルトデキストリンと同様に、充填剤および/または希釈剤である。これらの甘味料組成物はカルシウムと組み合わせてモナチンを含有するので、モナチンを含有するカルシウムなしの組成物の同一の知覚甘味を達成するために、少ないモナチンを用いる。
【0062】
ここで開示する卓上甘味料組成物は、飲料を含む食品に添加して、カルシウム含有モナチン組成物を作ることができる。ここに開示するのは、カルシウム含有モナチン組成物について、いくつかの具体例において用いることができる、カルシウムおよびモナチンの範囲および特定の量である。ここに記載される甘味料組成物は、甘味料組成物が食料または飲料に添加されることを意図しているので、より高い濃度のモナチンおよびカルシウムを有すると認識されている。以下の実施例に開示するように、例えば、小分け包装(約1グラム)は3150ppmすなわち0.315重量%R,R モナチンおよび(カルシウムカチオンの形態で)3.15重量%カルシウムを含む。もう一つの具体例において、レディ−トゥ−ユース包装(糖の直接量代替物として使用される)は、400ppmのR,R モナチンおよび0.4重量%カルシウム(カルシウムカチオンの形態で)を含む。
【0063】
いったん甘味料組成物が食料または飲料に添加されれば、食料または飲料中のモナチンおよびカルシウムの量はより低いと認識される。上述のように、ここに開示されるモナチンはいずれの立体異性体混合物をも含むことができる。かくして、卓上甘味料組成物中のモナチンの量は、用いる立体異性体に依存して変わる。例えば、S,S モナチンをR,R モナチンと組み合わせて用いるならば、前段に開示される例と比較して、卓上甘味料において、より少ないR,R モナチンを用いることができる。
【0064】
いくつかの具体例において、モナチンおよびカルシウムを含む均質な卓上甘味料組成物が提供される。「均質な」卓上甘味料組成物は、その組成物を通して実質的に同濃度のモナチンおよびカルシウムを含有する。
【0065】
いくつかの具体例において、食料または飲料組成物は還元糖組成物であってよい。その場合、その組成物中の糖の部分は、実質的に全ての糖が置き換えられている他の組成物と比較すると、モナチンおよびカルシウムで置き換えることができる。還元糖組成物において、上記の値と比較してより低い量のモナチンを用いることができる。なぜならば、いくらかの糖が依然としてその組成物に用いられているからである。例えば、レギュラーアイスクリーム組成物よりも25パーセント少ない糖として提供されるアイスクリーム組成物は、下記の実施例10のアイスクリームと比較して低減された量のモナチンを含有することができる。
【0066】
ここに開示されるモナチンは、化学合成、生合成経路、またはそれらの組合せを用いて製造することできる。いくつかの具体例において、組成物は、生合成経路で生成された立体異性体富化モナチン混合物を含むことができる。「立体異性体富化モナチン混合物」とは、混合物が1以上のモナチン立体異性体を含有し、その混合物中の少なくとも60%のモナチン立体異性体がR,R; S,S; S,R;またはR,Sのような特定の立体異性体であることを意味する。他の具体例において、混合物は、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%よりも多い特定のモナチン立体異性体を含有する。いくつかの具体例において、モナチンは立体異性体富化R,R モナチンであり、それは、モナチンが少なくとも60% R,R モナチンを含むことを意味する。いくつかの具体例において、モナチンはR,R モナチンであり、それは、モナチンが本質的に全てR,R モナチンの形態であることを意味する。
【0067】
ここで開示されるモナチンは、塩形態で入手可能であり、それは、限定されないが、カリウム塩形態、ナトリウム塩形態、およびそれらの組合わせを含むことができる。さらに、モナチンはカルシウム塩形態であってよく、食料組成物にカルシウム塩形態のモナチンを用いる場合は増強された甘味のモナチン含有組成物を生じる。以下に示すように、カルシウム含有モナチン組成物中の低レベルのカルシウムはさらに増強され甘味を生じる。かくして、カルシウム塩を用いて、モナチンを組成物に運搬し、そして、甘味を増強することができる。所望する甘味レベルに依存して、いくつかの具体例において、さらなるカルシウムをカルシウム含有モナチン組成物に添加することができる。
【0068】
ある要因が、モナチンおよびカルシウムを組み合わせて有する特定の組成物に対するモナチンの知覚甘味の変化で測定して、モナチンの甘味増強の度合に影響することが、さらに決定された。いくつかの具体例において、さらなる化合物または物理的条件(例えば、pHにおける変化)がカルシウムによるモナチンの甘味増強に寄与し得る。あるいは、さらなる化合物または条件は、カルシウムにより引き起こされる甘味増強に対するアンタゴニストであり、さらなる化合物または特定の条件の不存在下での知覚甘味と比較して、その組合せの知覚甘味を低減し得る。
【0069】
以下に開示する非制限的実施例は、R,R モナチンに特異的であるが、カルシウム含有モナチン組成物は、いずれの立体異性体形態のモナチンおよびそれらの混合物も含むことができると認識される。
【実施例】
【0070】
実施例1
実施例1において実験を行い、酪農ベースシステムのどの成分がモナチンの知覚甘味強度を促進する要因であるかまたは寄与するかを決定した。
【0071】
(i)サンプル
実施例1、ならびに、ここに記載する他の実施例(実施例2〜12を参照せよ。)中の以下の実験について例示的な形態のモナチンとして、2R,4R-モナチン一カリウム塩を用いる。この実施例ならびに実施例2、3、4(表4のみ)、実施例5、および実施例8〜10において、化学合成を用いてサンプル中のモナチンを製造した。
【0072】
(ii)溶液組成物
モナチン組成物を20ppmおよび40ppm以下で、溶液の各々にモナチンを添加して調製した。スクロース参照組成物も調製した。
ミルク (0% 脂肪)
ミルク (0% 脂肪)、乳酸でpH4.6に調整した。
ミルク (2% 脂肪)
ミルク (3.6% 脂肪)

水、乳酸でpH4.6に調整した
水、c. 120 mg カルシウム/100ml を含有する(Gluconal CALR 可溶塩として添加されたCa2+)
水、4.5% ラクトースを含有する
水、c. 120mg カルシウム/100mLプラス4.5% ラクトースを含有する
水、3% ミルクプロテイン単離物(Davisco BiPro)を含有する
【0073】
(iii)官能性手順
パネリスト(8〜10人)には、上で列記した媒体の各々で調製したある範囲(2〜12%; w/v)のスクロース参照溶液、ならびに、同様にして調製した20ppmおよび40ppmの2種類のモナチン試験溶液が提示された。パネリストは、試験サンプルを味見し、次いで、その試験サンプルの知覚甘味と合致する参照サンプルを決めるように指示された。試験サンプルの甘味が2つの参照の甘味の間にあると判断されれば、パネリストは小数点で甘味を評価することが求められた。パネリストは、各サンプルを2回評価した。各試験サンプルにつき全結果の平均をとった。
【0074】
【表1】

【0075】
(iv)pHの影響
データは、モナチンは、特にミルクに対して、酸性pHにて、中性pHと比較して、より高い相対甘味を呈することを示した。例えば、表1の結果は、20ppmのモナチンレベルにて、pH調整0%脂肪ミルク(pH4.6)がpH6.4での0%脂肪ミルクに対して13%甘味増強であったことを示す。同様に、40ppmのモナチンレベルにて、pH4.6でのミルクはpH6.4でのミルクに対して16%甘味増強であった。
【0076】
(v)脂肪の影響
ミルクで調製されたモナチン溶液は、知覚甘味レベルへの脂肪の可能性のある影響についてのいくつかの示唆を与える。この研究は、脂肪がモナチンの甘味に対して影響がないか、または、モナチンおよびスクロースの甘味に対する脂肪の影響が同一であるかのいずれかであることを実証した。要するに、ミルクから調製されたモナチン溶液の相対甘味値は、本質的に乳脂肪の存在によって影響されなかった。
【0077】
(vi)ラクトースの影響
ラクトースはモナチン含有溶液甘味に対して著しくネガティブな影響を発揮するようである。なぜならば、ラクトースが添加されたモナチンを有する溶液は、モナチンのみを有する溶液よりも甘くないからである。例えば、表1の結果は、20ppmのモナチンレベルにて、4.5%ラクトースを有する水溶液は、モナチンのみを含有する水溶液と比較して、甘味が22%低下されたことを示す。40ppmのモナチンレベルにて、ラクトース含有サンプルは、甘味が18%低下された。
【0078】
(vii)カルシウムの影響
水/カルシウム溶液中のモナチンは、水のみの中のモナチンと比較して、実質的により甘い組成物を生じた。この水/カルシウム溶液は、水のみの中のモナチンに対し、20ppmにて25%甘味増強、40ppmにて17%甘味増強を示した。モナチン含有組成物に対するカルシウムの甘味増強効果は、モナチンの相対甘味に対するラクトースの可能性のある甘味抑制影響を相殺するのに十分大きい。モナチン/ラクトース/カルシウムのブレンドは、同一の溶媒中で評価したとき、本質的に、モナチンのみを含有する組成物と甘さが同じである。実際、表1の結果は、20ppmおよび40ppmのモナチンレベルにて、モナチン/ラクトース/カルシウム溶液が、モナチンのみを含有する溶液よりも、わずかながら高いSEV値を有していたことを示す。
【0079】
(viii)ミルクプロテインの影響
ミルクプロテインの水への添加は溶液の甘味に影響しなかった。
実施例2:酪農システムにおける濃度−応答特性
本実施例は、2つの酪農ベースシステムについて酸性および中性pH条件におけるモナチンの濃度−応答特性を実証する。
【0080】
(i)官能性手順
モナチン、アスパルテームおよびスクラロースサンプルをミルク(2%脂肪)中で調製し、プレーン無脂肪ヨーグルトで希釈した。スクロース参照溶液は同媒体の溶液中で調製した。
【0081】
パネリスト(8〜10人)には、ある範囲(2〜12%; w/v)のスクロース参照溶液および単一の試験サンプルが提示された。パネリストは、試験サンプルを味見し、次いで、その試験サンプルの知覚甘味と合致する参照サンプルを決めるように指示された。試験サンプルの甘味が2つの参照の甘味の間にあると判断されれば、パネリストは小数点で甘味を評価することが求められた。パネリストは、各サンプルを2回評価した。各試験サンプルにつき全結果の平均をとった。
【0082】
(ii)溶液組成物
甘味料試験サンプルおよびスクロース参照は、以下の媒体中の溶液として調製した。
(1)pH6.8のミルク (2% 脂肪)
(2)希釈プレーン(甘味付けも味付けもない)ヨーグルトを水でシアーして(sheared)(80部ヨーグルトおよび20部水)、最終pHが4.6の発酵乳をベースとする酸性溶液を得た。
【0083】
【表2】

【0084】
表2に示すように、知覚甘味は、モナチン濃度の関数で、ミルクおよびヨーグルトの双方で増加した。ヨーグルトサンプルは、ミルクサンプルと比較して、より強い甘味を有していた。ヨーグルトサンプルは無脂肪であり、それで、両方のpHにて見られたより高い甘味レベルは、脂肪の存在によるものではなそうであり、実施例1での分析に合致する。ミルクは、ヨーグルトサンプルよりも多いラクトースを含有した(2%脂肪ミルク中4.8g/100gに対して、希釈され実質的に脂肪フリーのヨーグルトについては3.7g/100g)。実施例1で記載したように、ラクトースは、モナチンの甘味を妨害するようである。さらに、ミルクと比較して高いヨーグルトの相対甘味は、ある部分、より酸性条件によるものと確信されている。
【0085】
実施例1の表1は、20ppmのモナチン(5.1に等しいSEV)および40ppmのモナチン(7.7に等しいSEV)でのモナチン含有水溶液のSEVを示す。表2に示すように、20ppmのモナチンを含有するミルクは5.5のSEVを有し、40ppmのモナチンを含有するミルクは8.4のSEVを有していた。表2にまた示されるように、酸性条件でのヨーグルトは、20ppm(6.6に等しいSEV)および40ppm(10.5に等しいSEV)のモナチンレベルにてSEVにより大きな増加を示した。モナチン含有ミルク溶液およびヨーグルト溶液は、ミルクおよびヨーグルト中のカルシウムの存在により、モナチン含有水溶液よりも高いSEV値を有していた。
【0086】
実施例3:カルシウム塩の評価
本実施例は4つの組成物の甘味を評価した。各組成物はモナチンと組み合わせて異なるカルシウム塩を含有していた。それら4つの組成物はモナチンのみを含有する対照サンプルと比較した。
【0087】
(i)一般手順
試験および参照溶液は、同一媒体中で調製した。適当な濃度のモナチン/塩組合せのSEVを測定し、いかなる塩の不存在下で測定されたモナチンのSEVと比較した。各々の塩につき、1200ppmのカルシウムを用いた。
【0088】
モナチン含有試験サンプルおよびスクロース参照は同一媒体中で調製した。スクロースに対するモナチンの甘味が酸性pHでより甘いという前記観察に基づき、この研究は2つのpH条件下、特に、pH7〜7.5の水およびpH3.0のクエン酸/クエン酸塩バッファー中で行った。
【0089】
2R,4R-モナチン一カリウム塩を以下の実験のためのモナチンの例示形態として用いた。すべてのモナチン溶液は、「現状のまま」で調製した。すなわち、40ppmモナチン溶液は40ppmのモナチン一カリウム塩である。
【0090】
甘味マッチング手法を採用した。パネリスト(8〜10人)には、ある範囲(7〜12%; w/v、0.5%きざみ; w/v スクロース)のスクロース参照溶液および単一の試験サンプルが提示された。各試験サンプルはモナチン対照またはモナチンに定まった濃度の指定の塩がたされたもののいずれかであった。パネリストは、試験サンプルを味見し、次いで、その試験サンプルの知覚甘味と合致する参照サンプルを決めるように指示された。試験サンプルの甘味が2つの参照の甘味の間にあると判断されれば、パネリストは小数点で甘味を評価することが求められた。
【0091】
パネリストは、各サンプルを2回評価した。各試験サンプルにつき全結果の平均をとった。以下の実施例4(表4のサンプルのみ)および実施例5に開示された実験にも、この手法がとられた。
【0092】
(ii)結果
生じた結果は表3に提示され、それは、40ppmのモナチンと組み合わせて用いた4つのカルシウム塩についてのスクロース等価値および甘味増強を、40ppmのモナチンのみのサンプルと比較して、示す。5つのサンプルを、pH7(水媒体)およびpH3(クエン酸/クエン酸塩バッファー)にて試験した。カルシウム塩を有するサンプルの各々において、カルシウムの濃度は1200ppmであった。塩中のカルシウムの重量パーセントは各々のカルシウム塩につき異なる。それで、各サンプル中のカルシウム塩の重量パーセントを計算して、1200ppmのカルシウムカチオンをもたらすのにどれくらい塩が必要かを決定した。例えば、塩化カルシウムは111.0g/mоlのモル質量を有する。カルシウムは塩化カルシウムのおよそ36%のモル質量である(すなわち、111g/mоl合計のうち40g/mоl)。サンプル中1200ppmのカルシウム(0.12%)を有するために、塩化カルシウムの重量パーセントは0.33%(すなわち、0.12重量%割る36重量%)である。かくして、100グラムの水またはクエン酸塩バッファーあたり0.33グラムの塩化カルシウムを添加する。他のカルシウム塩の重量パーセントは、同様に、カルシウム塩中のカルシウムのモル重量パーセントに基づき計算する。
【0093】
【表3】

【0094】
表3の結果は、概略、すべてのカルシウム塩サンプルが、モナチンのみのサンプルと比較して、増加した甘味を有したことを実証する。両方のpHレベルにて、塩化カルシウムサンプルはより高いスクロース等価値(SEV)、かくして、より高い甘味増強パーセントを示した。
【0095】
理論に拘泥するつもりはないが、カルシウム-モナチン含有組成物において、カルシウムがモナチンの甘味を増強する能力は、カルシウム塩が可溶で、かくして、組成物の溶け込むことができることに依存すると確信される。表3のカルシウム塩の各々の溶解性に基づき、すべての塩は、この実施例において用いられる濃度にて可溶である。
【0096】
乳酸カルシウム入りのサンプルおよびグルコン酸カルシウム入りのサンプルは、pH3およびpH7の両方にて、著しい甘味増強を示すが、塩化カルシウム入りのサンプルと比較して、低い甘味増強パーセンテージを有していた。上述のように、これらの塩の双方は、この実施例において用いられる濃度にて可溶である。かくして、カルシウム塩の他の特性は、溶解性に加えて、特定のカルシウム塩について、甘味増強に影響するであろう。理論に拘泥するつもりはないが、アニオン(共役塩基)は、モナチン含有組成物の甘味のカルシウム増強に影響すると確信される。乳酸塩イオンおよびグルコン酸塩イオンは、塩化物イオンと比較して、より強力な塩基であり、乳酸塩およびグルコン酸塩は、塩化物よりも、カルシウムに対してより強いアフィニティ(すなわち、より強い会合定数)を有し、乳酸カルシウムおよびグルコン酸カルシウムの塩由来のカルシウムカチオンは、モナチンと相互作用するには「利用可能性」が低いのであろう。かくして、カルシウムとその対応アニオンとの間の解離のレベルは、その特定のカルシウム塩についてモナチン含有組成物の甘味増強に影響するであろう。
【0097】
実施例4:甘味へのカルシウム濃度の効果
表3に示すように、塩化カルシウムは、他のカルシウム塩と比較して、高い甘味増強を示す。本実施例において、サンプルは、40ppmのモナチンおよび、200、400、800、1200および1600ppmにてカルシウム(塩化カルシウム由来)を有するように調製され、40ppmのモナチンを有し、カルシウムがない対照サンプルと比較される。サンプルは、pH3およびpH7にて作製された。結果を表4に示す。
【0098】
【表4】

【0099】
塩化カルシウムの濃度−応答研究は、増強効果が最大となるのに必要なカルシウムの濃度が、実質的に、ミルクで生じるよりも実質的に低いことを立証した。塩化カルシウム由来の200ppm程度の低いカルシウムは甘味増強効果が観察されるのに十分であった。
【0100】
表4の結果は、低濃度のカルシウムであっても、モナチン含有溶液の増強された甘味があることを示す。例えば、200ppmのカルシウムにて、甘味増強レベルは、pH3およびpH7にて、それぞれ、10%および19%であった。さらなる実験が実施され、カルシウムが200ppm未満のカルシウムレベルにて、モナチン含有溶液の知覚甘味を増強または増加するかどうかを決定し、その結果を以下の表5に示す。
【0101】
表5のサンプルは、20ppmのモナチンを12.5ppmと200ppmとの間の範囲の量のカルシウムと組み合わせて、水に添加することによって調製した。20ppmのモナチンを有し、かつ、カルシウムを有さない対照サンプルも用いた。モナチンはR,R、形態であり、米国特許出願公開第2005/282260に開示されるように、生合成経路で調製した。3人組のパネルで甘味を評価したが、甘味等価性(SEV)でサンプルを定量化する代わりに、パネリストは、サンプルに0と9との間の数字を割り当てた(表5の下の説明を参照せよ)。
【0102】
【表5】

【0103】
12.5ppmのカルシウムにて、3人のパネリストのうち2人が、甘味にスケール上の1を割り当てた。25ppm以上のカルシウムレベルにて、3人のパネリストの間に甘味スケール格付けに統一見解があった。
【0104】
表5の結果は、たった25ppmのカルシウムにて、パネリストのすべてが、カルシウムの結果で甘味にわずかな差があることに気が付いたことを実証する。甘味の差は、カルシウムの濃度が増加するにつれ、より明らかになった。表5の結果は、甘味の差が試験した濃度範囲内(すなわち、200ppmまで)で、プラトーがなかったことも実証する。これは、特にpH3にて、200ppmと比較して、400ppmにてより大きな甘味増強を示すという表4に示される結果と一致する。表5の結果は、モナチンと組み合わせてより少量のカルシウムを用いることができ、依然として増強された甘味が観察される点で、好都合である。
【0105】
実施例5:他の塩の増強効果の評価
他のミネラルイオン、特に、カリウムおよびマグネシウム(すなわち、K+およびMg2+)の影響も評価し、その結果を表6に示す。これらのイオンは、牛乳中の形態および濃度で試験した。
【0106】
【表6】

【0107】
カリウムおよびマグネシウムについて、見かけの甘味増強のレベルは小さいと報告されたが、その増強は、カルシウムがモナチンと一緒に用いられたときよりも少なかった。しかも、試験された濃度の1450ppmにて、塩化カリウム(KCl)入りのサンプルは明確な塩味を呈し、かくして、評価手順を複雑にした。
【0108】
実施例6:インスタントティー飲料
この実施例において、モナチンをンスタントティー飲料に添加した。モナチンは生合成経路で調製した2R,4R モナチン一カリウム塩であり、それは実施例7でも用いた。インスタントティー飲料の配合を直下の表に示す。
【0109】
【表7】

【0110】
3セットのサンプルを調製した。それらを表8に示す。サンプルの一つのセット(サンプル2)において、カルシウムは塩化カルシウムの形態で添加した。9人の訓練されたパネリストは、3つのサンプルの各々について、各サンプルを3回繰り返して試験した。したがって、SEVデータは27測定に基づく。本実施例において用いたモナチンは、実施例4における上記表5および実施例7における下記表7に示されたサンプルに用いたものと同一ロットに由来する。
【0111】
【表8】

【0112】
表8の結果は、カルシウム(400ppm)のサンプル2のインスタントティー飲料への添加が、モナチンを含有する、カルシウムなしのサンプル1と比較して、30%甘味増強を生じたことを実証する。サンプル2および3の結果は、サンプル2は、サンプル3と比較して、モナチンの25%減量があったが、実施例2の甘味は、サンプル2においてカルシウムの添加があり、サンプル3の甘味とほぼ同等であったことを示す。
【0113】
実施例7:ベリー風味飲料
この実施例において、40ppmのモナチンを以下の配合を有するベリー風味飲料に添加した。
【0114】
【表9】

【0115】
2セットのサンプルをモナチンで調製した。−ひとつ目のセットはなにもカルシウムがないもの、二つめのセットは400ppmのカルシウムを有するものであった。6人の訓練されたパネリストが各サンプルを3回繰り返して試験した(合計18測定)。
【0116】
【表10】

【0117】
モナチンおよびカルシウムの組合せを含有するサンプルは、モナチンのみを含有するものよりも高い甘味レベルを呈示した。ベリー風味飲料についてのカルシウム−モナチンサンプルの甘味の増加は上記実施例6のインスタントティーサンプルと比較して顕著ではないが、それでも、9%甘味増強が観察された。
【0118】
実施例8:ストロベリーヨーグルト
約8%スクロースで甘味付けしたストロベリーヨーグルトをヨーグルト製造の当業者にありふれた常法によって調製して、甘味ターゲットとして提供した。一連の五つ(5)のヨーグルトサンプルを表1に列記した成分を用いてR,R-モナチン一カリウム塩で甘味付けした。五つのサンプルの各々は、特定量のR,R モナチン(すなわち、約15ppm、約20ppm、約25ppm、約30ppmおよび約35ppm)を有していた。モナチン−甘味付けヨーグルトの五つのサンプルの各々を、8%スクロースを含有するターゲットサンプルと比較した。ターゲットスクロースサンプルの甘味にもっとも近く一致するモナチン−甘味付けヨーグルトを選んだ。
【0119】
【表11】

【0120】
8%スクロースにまで甘味付けしたヨーグルトの甘味にもっとも近く一致するモナチン濃度は、約25ppmR,R-モナチン一カリウム塩であった。(言い換えれば、25ppmR,R モナチン入りのモナチン甘味付けヨーグルトは約85のSEVを有していた。)かくして、25ppmR,R-モナチンを有する配合は下記表11に示された配合である。この実施例において、モナチンはスクロースの約3200倍甘かった。
【0121】
実施例9:チョコレートミルク
42DE高フラクトースコーンシロップ(HFCS)で約10%スクロースにまで甘味付けしたチョコレートミルク組成物を、フレーバーミルク製造の当業者にとってありふれた常法によって調製して、甘味ターゲットとした。ついで、5つのミルクサンプルのセットを表12に列記した成分を用いてR,R-モナチン一カリウム塩で甘味付した。5つのサンプル中のモナチンの量は、約25ppm、約30ppm、約35ppm、約40ppmおよび約45ppmであった。モナチン甘味付けミルクの5つのサンプルの各々を、10%スクロースを含有するターゲットミルクサンプルと比較した。ターゲットスクロースサンプルの甘味にもっとも近く一致するモナチン甘味付けミルクを選んだ。
【0122】
【表12】

【0123】
10%スクロースにまで甘味付けしたミルクの甘味にもっとも近く一致するモナチン濃度は約35ppm R,R-モナチン一カリウム塩であり、この配合を表12に示す。モナチンは、この実施例において、スクロースの約2800倍であった。
【0124】
実施例10:バニラアイスクリーム
約13%スクロースで甘味付けしたバニラアイスクリームを、アイスクリーム製造の当業者にとってありふれた常法によって調製して、甘味ターゲットとした。7つのアイスクリームサンプルのセットを表13に列記した成分を用いてR,R-モナチン一カリウム塩で甘味付した。7つのサンプル中のモナチンの量は、約35ppm、約40ppm、約45ppm、約50ppm、約55ppm、約60ppmおよび約70ppmであった。モナチン甘味付けアイスクリームの7つのサンプルの各々を、13%スクロースを含有するターゲットアイスクリームサンプルと比較した。ターゲットスクロースサンプルの甘味にもっとも近く一致するモナチン甘味付けアイスクリームを選んだ。
【0125】
【表13】

【0126】
13%スクロースにまで甘味付けしたアイスクリームの甘味にもっとも近く一致するモナチン濃度は約45ppm R,R-モナチン一カリウム塩であり、その特定の配合を表13に示す。それで、モナチンは、この実施例において、スクロースの約2800倍であった。
【0127】
実施例11:モナチンおよびカルシウムを含む小分け包装
本実施例は、モナチンを有する小分け甘味料(サンプル11A)ならびにモナチンおよびカルシウムを組み合わせて有する小分け甘味料(サンプル11B)についての配合を開示する。サンプル11Aおよび11Bについての配合を以下の表14に示す。各小分けの重さは約1グラムである。
【0128】
【表14】

【0129】
サンプル11Aおよび11Bを、約2杯のティースプーンの糖(約8グラム)の甘味を生じるように調製した。表14に示すように、サンプル11Bへの塩化カルシウムの添加は、4.0mgのR,R モナチンから3.15mgのR,R モナチンへと減少をもたらした。言い換えると、サンプル11Bにおいて、サンプル11Aと比較して、約21%少ないモナチンを用い、塩化カルシウムの添加により、同等の甘味が達成される。サンプル11Aは4000ppmのR,R モナチンを含有し、サンプル11Bは3150ppmのR,R モナチンを含有する。サンプル11Bは8.76重量%塩化カルシウムおよび3.15重量%カルシウムカチオンを含有する。
【0130】
実施例12:モナチンおよびカルシウムを含むレディ−トゥ−ユース包装
本実施例はモナチンを有するレディ−トゥ−ユース甘味料(サンプル12A)ならびにモナチンおよびカルシウムを組み合わせて有するレディ−トゥ−ユース甘味料(サンプル12B)についての配合を以下の表15に開示する。各サンプルは約1グラムである。
【0131】
【表15】

【0132】
表15におけるレディ−トゥ−ユース甘味料を、グラニュー糖の代わりに用いる「スプーン・フォオ・スプーン」包装として調製する。レディ−トゥ−ユース甘味料は、同等量の糖と同一の甘味を有するように配合されているので、レディ−トゥ−ユース甘味料は、グラニュー糖と同等の置き換えとして、飲料または食料のストレートに添加することができる。
【0133】
表15に示すように、サンプル12Bにおいて、モナチンと組み合わせた塩化カルシウムの使用は、サンプル12Aと比較して、同等の甘味を達成するのにモナチンの20%低減をもたらした。サンプル12Aは500ppmのR,R モナチンを含有し、サンプル12Bは400ppmのR,R モナチンを含有する。サンプル12Bは1.11重量%塩化カルシウムおよび0.4重量%カルシウムカチオンを含有する。
【0134】
多数の具体例が記載されてきた。それでも、本開示の本質および範疇を逸脱せずに、様々な変形をなすことができると理解されるであろう。本発明がその詳細な説明と合わせて記載されてきたが、前記の説明は本発明を例示するもので、本発明の範疇を制限する意図はないと理解されるべきである。したがって、他の具体例は、添付する特許請求の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モナチンまたはその塩;および
カルシウムを含み、モナチンを含むカルシウムなしの同等食品の甘味よりも強い甘味を有する非酪農食品。
【請求項2】
カルシウムがカルシウム塩である、請求項1の非酪農食品。
【請求項3】
カルシウム塩が乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、塩化カルシウム、およびそれらの組合わせよりなる群から選択される、請求項2の非酪農食品。
【請求項4】
食品が還元糖食品であって、かつ、食品中のモナチンの量が食品の約5と約50ppmとの間である、請求項1の非酪農食品。
【請求項5】
食品中のモナチンの量が食品の約20と約50ppmとの間である、請求項1の非酪農食品。
【請求項6】
モナチンが立体異性体富化R,R モナチンまたはその塩である、請求項1の非酪農食品。
【請求項7】
食品中のカルシウムの量が食品の少なくとも約25ppmである、請求項1の非酪農食品。
【請求項8】
食品中のカルシウムの量が食品の少なくとも約200ppmである、請求項1の非酪農食品。
【請求項9】
食品が飲料である、請求項1の非酪農食品。
【請求項10】
食品が、さらに、1以上のさらなる甘味料を含む、請求項1の非酪農食品。
【請求項11】
モナチンまたはその塩;および
カルシウム塩を含み、
カルシウムの不存在で同等モナチンを含有する食品の知覚甘味よりも少なくとも約10パーセント強い知覚甘味を有する非酪農食品。
【請求項12】
食品の知覚甘味が、同等食品の知覚甘味よりも少なくとも約20パーセント強い、請求項11の非酪農食品。
【請求項13】
カルシウム塩が、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、塩化カルシウム、およびそれらの組合わせよりなる群から選択される、請求項11の非酪農食品。
【請求項14】
少なくとも約25ppmのカルシウムカチオンが食品に溶解するように、カルシウム塩が十分に溶解する、請求項11の非酪農食品。
【請求項15】
少なくとも約200ppmのカルシウムカチオンが食品に溶解するように、カルシウム塩が十分に溶解する、請求項11の非酪農食品。
【請求項16】
モナチンまたはその塩形態および外来カルシウムを含み、外来カルシウムを含有しない同等食品の知覚甘味よりも強い知覚甘味を有する食品。
【請求項17】
外来カルシウムがカルシウム塩として食品に添加された、請求項16の食品。
【請求項18】
カルシウム塩が、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、塩化カルシウム、およびそれらの組合わせよりなる群から選択される、請求項17の食品。
【請求項19】
食品が飲料である、請求項16の食品。
【請求項20】
食品が、さらに固有カルシウムを含む、請求項16の食品。
【請求項21】
食品が、アイスクリーム、ヨーグルト、フローズンヨーグルト、プリン、クリームチーズ、酪農デザート、フレーバーミルク、シャーベット、スムージー、ソフトドリンク、食事代替飲料、強化水、ニアウォーター飲料、フローズンポップシクル、朝食用シリアル、栄養バー、スナックバー、無糖キャンディー、カルシウム強化チュウイー、ジャム、ゼリー、および粉末ドリンクミックスよりなる群から選択される、請求項16の食品。
【請求項22】
外来カルシウムが食品に十分溶解する、請求項16の食品。
【請求項23】
食品に使用する甘味付け組成物であって、モナチンまたはその塩およびカルシウムを含み、相当量のモナチンを含有するカルシウムなし甘味付け組成物を有する同等食品の知覚甘味より強い知覚甘味を有する食品。
【請求項24】
約1グラムの重さの甘味付け組成物のサンプルがティースプーン約2杯分のグラニュー糖に相当する甘味を与える、請求項23の甘味付け組成物。
【請求項25】
甘味付け組成物を含有する食品の知覚甘味が同等食品の知覚甘味よりも少なくとも10パーセント強い、請求項23の甘味付け組成物。
【請求項26】
食品の知覚甘味が、同等食品の知覚甘味より少なくとも20パーセント強い、請求項25の甘味付け組成物。
【請求項27】
カルシウムがカルシウム塩である、請求項23の甘味付け組成物。
【請求項28】
カルシウム塩が、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、塩化カルシウム、およびそれらの組合わせよりなる群から選択される、請求項27の甘味付け組成物。
【請求項29】
ある量の甘味付け組成物が、等量のグラニュー糖に相当する甘味を与える、請求項23の甘味付け組成物。
【請求項30】
甘味付け組成物が約0.3から約0.5mgのR,R モナチンを含む、請求項29の甘味付け組成物。
【請求項31】
約1グラムの重さの甘味付け組成物のサンプルが約2.5から約5mgのR,R モナチンを含む、請求項23の甘味付け組成物。
【請求項32】
モナチンまたはその塩およびカルシウムを含み、かつ、知覚甘味を有する甘味付け組成物であって、カルシウムを有さない相当する甘味付け組成物よりも少なくとも約20%少ないモナチンを有する、甘味付け組成物。
【請求項33】
非酪農食品を甘味付けする方法であって、
モナチンまたはその塩を食品に添加し;次いで、
カルシウムを食品に添加することを含み、ここに、その食品は、モナチンを含有するカルシウムなしの同等食品の知覚甘味よりも強い知覚甘味を有することを特徴とする、方法。
【請求項34】
非酪農食品が飲料である、請求項23の方法。
【請求項35】
食品が還元糖製品であり、約5から約50ppmのモナチンを食品に添加する、請求項23の方法。
【請求項36】
約20から約50ppmのモナチンを食品に添加する、請求項23の方法。
【請求項37】
少なくとも約25ppmのカルシウムを食品に添加する、請求項23の方法。
【請求項38】
少なくとも約200ppmのカルシウムを食品に添加する、請求項23の方法。

【公表番号】特表2012−520079(P2012−520079A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−554181(P2011−554181)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/026912
【国際公開番号】WO2010/105014
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(500159680)カーギル・インコーポレイテッド (30)
【Fターム(参考)】