説明

モニタリングシステム、ネットワーク装置及び通信制御方法

【課題】広帯域の帯域制限を考慮して、優先制御と再送制御を互いに矛盾なく実現可能なモニタリングシステムを提供する。
【解決手段】 複数の通信端末が接続されるローカルネットワークと管理センタが接続される広域ネットワークとを相互接続するネットワーク相互接続装置を用いたモニタリングシステムにおいて、広域ネットワークへのパケット送出順序を、複数のデータ種別、各種別の初送データと再送データ、及び複数の再送データの間の優先順位を組み合わせて一つのテーブルで一元的に規定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モニタリングシステム、ネットワーク装置及び通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ボイラーや火力タービンといった設備監視や保守、エネルギー消費のモニタリングを、設備が設置された現場から離れた場所にある管理センタから遠隔で行いたいという需要が高まっている。このようなモニタリングシステムの末端に設備されるセンサや監視カメラのデータは、全てセンタへ集約し、一元管理するのが理想である。しかし、センサやカメラの台数が増加するにつれて、ネットワークで伝送可能なトラフィック容量の関係から、常時全てのデータをセンタへ集約することが困難な場合がでてきた。
このような現状に対応するため、例えば特許文献1においては、カメラからの画像データの転送・表示の優先度を制御する技術を開示している。
【0003】
更に、上記現場と管理センタ間を接続するネットワークには、今後携帯電話等、無線の公衆ネットワークの利用が進むものと予想されている。例えば、
1)モニタ対象となる設備が車や鉄道等、移動するものの場合、
2)電気メーターの自動検針等、通信端末が広範囲に多数設置される場合、及び
3)通信端末が段階的に増設されたり、頻繁に設置場所が変更になる等、ネットワーク構成の変化が激しい場合
等のように、有線による接続が困難だったり、効率が悪く配線コストが高くなる場合にも、無線は柔軟性が高く接続が容易であることがその理由である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−171471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記現場と管理センタ間を接続するネットワークに、無線が使用される場合、帯域変動が有線の場合よりも大きいため、優先送信されたパケットであっても、伝送途中で失われる可能性がある。こうしたパケットロスに対応するには、優先制御だけでなく、送ったパケットが届かなかった際にもう一度同じパケットを送る、再送の仕組みが必要となる。
【0006】
図10に示すように、再送機能を実装するため、ネットワーク相互接続装置111と管理センタ113間の通信に、再送機能付きの通信プロトコル121(例えばTCP等)を用いる場合を考える。この構成では、優先制御機能122でパケット送出順を決定した後、通信プロトコル121間で再送制御情報123をやりとりし、再送制御を行う。図8に示すように、たまたま優先度が低いパケット81を送信中に広域ネットワーク状況が急激に悪化した場合(82)、通信プロトコルが優先度の低いパケットを何度も再送(83)し、結果として優先度が高いパケット84を送出できず、急いで送るべき優先度高のパケットの伝送遅延が大きくなってしまう可能性がある。つまり、優先制御と再送制御が連携していないため、互いに矛盾した制御を行い、期待した性能が得られなくなるリスクがある。
【0007】
また、種々のセンサやカメラで計測されたデータを管理センタに送信するシステムでは、最新データを先に送ったほうがよいか、過去のデータから順に送ったほうがよいかはセンサデータの内容、特性に依存する。従って、センサデータの種別に応じて柔軟に優先設定が可能なシステムが求められる。
【0008】
以上の点に鑑み、本発明の目的は、期待する優先転送の性能を確保し、ネットワークの急峻な帯域変動にも対応し、互いに矛盾しない優先制御及び再送制御を実現可能なモニタリングシステム、ネットワーク装置及び通信制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数の通信端末が接続されるローカルネットワークと管理センタ(受信ノード、管理装置)が接続される広域ネットワークを接続するネットワーク相互接続装置(ネットワーク装置)を用いたモニタリングシステムである。上記の目的を達成するため、ネットワーク相互接続装置は、図2に示すように、広域ネットワークにパケットを送出する際の再送制御を通信プロトコルの外側で行う(24)。機能ブロック24では、優先制御と再送制御を独立に行うのではなく、再送データも1回目に送るデータ(以下、初送データ)と同様に候補の一つに組み入れた上で優先度を考慮し、送出順序を決める。また、広域ネットワークの帯域変動状況に応じて、何番目のパケットまで送出するかを決める。その結果、図9に示すように、優先度が低いパケット915を送信中に広域ネットワーク状況が急激に悪化した場合(92)には、優先度が低いパケットの再送を一旦中止し、優先度が高いパケットを送出する(97)。
【0010】
本発明の第1の解決手段によると、
通信端末からのデータを収集する受信ノードと、
前記通信端末からの該データを入力し、前記受信ノードに送信するネットワーク装置と
を備え、
前記ネットワーク装置は、
前記受信ノードにデータが届いたことを示す確認通知の有無に従い、データを再送するための再送処理部と、
データ種別毎に、前記通信端末からのデータのうち前記受信ノードに送信していない初送データと、前記受信ノードに送信済みであり再送に用いるための再送データを、該データ種別内の優先順位に対応して記憶するデータ記憶領域と、
データ種別と前記優先順位との組み合わせに応じて送信順位が予め記憶された送信順記憶領域と、
前記送信順記憶領域のデータ種別と優先順位の組み合わせを送信順位が示す順に参照し、該当するデータ種別に応じた前記データ記憶領域から、該当する優先順位のデータを読み出して送信する制御部と
を有するモニタリングシステムが提供される。
【0011】
本発明の第2の解決手段によると、
通信端末からのデータを入力し、通信端末からのデータを収集する受信ノードに送信するネットワーク装置であって、
前記受信ノードにデータが届いたことを示す確認通知の有無に従い、データを再送するための再送処理部と、
データ種別毎に、前記通信端末からのデータのうち前記受信ノードに送信していない初送データと、前記受信ノードに送信済みであり再送に用いるための再送データを、該データ種別内の優先順位に対応して記憶するデータ記憶領域と、
データ種別と前記優先順位との組み合わせに応じて送信順位が予め記憶された送信順記憶領域と、
前記送信順記憶領域のデータ種別と優先順位の組み合わせを送信順位が示す順に参照し、該当するデータ種別に応じた前記データ記憶領域から、該当する優先順位のデータを読み出して送信する制御部と
を備えた前記ネットワーク装置が提供される。
【0012】
本発明の第3の解決手段によると、
通信端末からのデータを収集する受信ノードと、前記通信端末からの該データを入力し、前記受信ノードに送信するネットワーク装置とを備え、前記ネットワーク装置が前記受信ノードにデータが届いたことを示す確認通知の有無に従いデータを再送するための再送処理部を有するシステムにおける通信制御方法であって、
データ種別毎に、前記通信端末からのデータのうち前記受信ノードに送信していない初送データと、前記受信ノードに送信済みであり再送に用いるための再送データをデータ記憶領域に記憶するステップと、
データ種別毎に、データ記憶領域に記憶された初送データ及び再送データに該データ種別内の優先順位を付与するステップと、
データ種別と前記優先順位との組み合わせに応じて送信順位が予め記憶された送信順記憶領域を該送信順位が示す順に参照し、該当するデータ種別に応じた前記データ記憶領域から、該当する優先順位のデータを読み出して送信するステップと
を含む通信制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、期待する優先転送の性能を確保し、ネットワークの急峻な帯域変動にも対応し、互いに矛盾しない優先制御及び再送制御を実現可能なモニタリングシステム、ネットワーク装置及び通信制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施例に係る通信システムの全体構成図である。
【図2】本発明によるシステム構成例を示す図である。
【図3】実施例1に係る、ネットワーク相互接続装置の優先・再送制御機能の詳細ブロック図である。
【図4】実施例1に係る、送出順参照テーブルの一例を示す図である。
【図5】実施例1に係る、最新データ保持テーブルの一例を示す図である。
【図6】実施例1に係る、過去データ保持テーブルの一例を示す図である。
【図7】実施例1に係る、送出順参照テーブルの別の一例を示す図である。
【図8】再送機能付きの通信プロトコルを用いて優先制御と再送制御を独立に行った場合の通信フローを説明する図である。
【図9】本発明による通信フローを説明する図である。
【図10】再送機能付きの通信プロトコルを用いて優先制御と再送制御を独立に行った場合のシステム構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に従い説明する。
図1に、本実施例に係る、各種のモニタリングを実現可能な通信システムの全体構成図を示す。
同図において、符号10、14はそれぞれWAN(Wide Area Network)と称される広域ネットワーク(第1ネットワーク)と、LAN(Local Area Network)と称されるローカルネットワーク(第2ネットワーク)を示す。符号11はそれらを相互接続するネットワーク相互接続装置(ネットワーク装置)である。ローカルネットワーク14には、温度センサなどの各種のセンサや監視カメラなどの複数の通信端末12が接続されている。広域ネットワーク10には管理センタ13が接続されている。
無線端末12は、センサや監視カメラなどのセンサ部と通信機能部を有する。無線端末12は、センサ部で得られたセンサデータを、通信機能部によりネットワーク相互接続装置11に送信する。
【0016】
図2に、本実施例のシステム構成例を示す。
本システムは、ネットワーク相互接続装置11と、管理センタ13を備える。ネットワーク相互接続装置11は、ローカルネットワーク通信機能部25と、優先・再送制御機能部24と、広域ネットワーク通信機能部21とを有する。管理センタ13は、広域ネットワーク通信機能部26と、優先・再送制御機能部27と、画面表示機能部28とを有する。
【0017】
図3に、本実施例のモニタリングシステムにおける、ネットワーク相互接続装置の優先・再送制御機能部24の機能の詳細及びテーブル構成を示す。
データ種別毎の最新データ保持テーブル(第2データ記憶領域)32、データ種別毎の過去データ保持テーブル(データ記憶領域)33、送出順参照テーブル(送出順記憶領域)37は、適宜のメモリ上に記憶される。その他の各機能は、優先・再送制御機能部24により実行される。
【0018】
同図において、図1の通信端末12からのセンサデータは、図2記載のローカルネットワーク通信機能部25を介して、優先・再送制御機能部24に入力される。受信データ識別・振り分けブロック31では、センサデータのパケットヘッダでデータ種別を識別し、対応する種別の最新データ保持テーブル32と、過去データ保持テーブル33に登録する。演算処理ブロック34では、最新データ保持テーブルに登録されたセンサデータの統計処理や、アラーム有無の閾値判定処理等を行い、別の種別のデータ(平均値、アラームステータス)等を生成する。生成されたデータは、対応する(前述とは別の)種別の最新データ保持テーブル32と、過去データ保持テーブル33に登録される。例えば、統計処理の内容、閾値判定処理の内容に応じたデータの種別に対する最新データ保持テーブル32と、過去データ保持テーブル33を有する。アラームステータス等一部のデータは、フィルタ選択機能36で、複数の送出順参照テーブル37のうち、どれを使用するか選択する際にも参照される。一方、図1の管理センタ13からは、広域ネットワーク通信状況の情報と再送制御情報(Ack/Nack)が優先・再送制御機能部24に入力される。広域ネットワークの通信状況の情報は、ネットワーク品質判定機能(ネットワーク品質判定機能部)35で判定され、その判定結果を基に、フィルタ選択機能(選択機能部)36では、フィルタ機能(制御部)310で選択した送出順参照テーブル37を何行目まで読みだすかを決める。なお、パケット送信量を決め、それに応じて送出順参照テーブル37を順次読みし、決められたパケット送信量になったところで読み出しをやめても良い。また、Ack受信機能37はAckが受信されたセンサデータについて種別毎の過去データ保持テーブル33を更新し(38)、優先順決定機能39がその種別の過去データの中での優先順を決める(39)。フィルタ機能310では、先に選択した送出順参照テーブル37に従い、種別毎最新データ保持テーブル32、種別毎過去データ保持テーブル33の中から、指定されたデータ種別と優先順位のデータを選択し、広域ネットワーク10へと送出する。また、送出したデータにつき前述の過去データ保持テーブル33の登録情報を更新する(311)。
【0019】
なお、Ack受信機能37及び種別毎過去データ保持テーブルAck更新38を実行するブロックを再送処理部(又は確認信号処理部)と称する場合もある。再送処理部は、例えば、管理センタ13にデータが届いたことを示すAck(確認通知)の有無に従い、ネットワーク相互接続装置11がデータを再送するための処理を行う。
【0020】
図5に、最新データ保持テーブル32の構成例を示す。センサデータの値51と共に、受信された時刻情報52を記録する。最新データ保持テーブルに登録されているデータはいつも一つだけで、優先順位は常に1位となる。なお、最新データは過去データ保持テーブル33にも記憶されるため、例えば記憶場所を示すアドレス、ポインタ等を最新データ保持テーブル32に記憶してもよい。
【0021】
図6に、過去データ保持テーブル33の構成例を示す。最新データ保持テーブル32と同様に、過去データ保持テーブル33でも、センサデータの値61と共に、受信された時刻情報62を記録する。次に、フィルタ機能310で一度でも選ばれ、送出されたデータについて送出フラグ63を1にセットする。前述のテーブル更新38の際、Ack受信機能37でAckを受信したデータについてAck受信フラグ64を1にセットする。前述の優先順決定39の際、送出フラグ63及びAck受信フラグ64が両方とも1のデータについては、データが無事センタに到着し、再送する必要がなくなったと判断し、優先順位付けの対象から外す(66)。Ack受信フラグが0のデータの中から、どれを一番早く出すべきかを判断し、優先順位を付ける(39)。
【0022】
優先順位を決める基準の一例として、図6では、送信フラグの0/1に関わらず、Ack受信フラグが0のデータの中で、時刻情報が古いものほど優先順を高く設定している。他の基準の例として、テーブルに登録してから一定時間以上経過したデータを消去したり、優先順位付け対象から外すことも可能である。また送信フラグが0(まだ一度も送っていない)のデータを、1(一度は送ったことがある)のデータよりも優先することも可能である。データは受信してから一定時間内は再送制御の対象にならないので、優先順位を付ける対象から外す。優先順位を決める基準は、データ種別毎に異なっていてもよい。
【0023】
例えば、データ種別A(第1データ種別)では、再送データの優先順位が、初送データの優先順位よりも早い順位であり、データ種別B(第2データ種別)では、再送データの優先順位が、初送データの優先順位よりも遅い順位であってもよい。このように、センサデータの種別に応じて、その内容・特性に沿った柔軟な優先設定が可能である。
また、通信状態がよい状況が続き、再送すべきデータがない(全ての送信データについてAckが受信されている)場合には、例えば優先順位の項は全て「−」表示(対象外)になるものとする。
【0024】
図4に、送出順参照テーブル37の構成例を示す。本テーブルでは、複数のデータ種別と、各種別の最新データと過去データ(再送データと過去に送りそびれた初送データ)を示す選択情報(送信種別)と、優先順位の組み合わせから、広域ネットワーク10に送出する順番を規定する。フィルタ機能310は、このテーブル37を上から順に読み、記載のデータ種別41に対応する過去データ保持テーブル33または最新データ保持テーブル32の、指定された優先順位42のデータを選択して広域ネットワーク10に送出する。フィルタ選択機能36は、ネットワーク品質判定機能35が判定した広域ネットワーク10の通信状況を表す値を基に、広域ネットワーク10への送出を許可するパケット数を変化させる。通信状況が悪い時は送出パケット数を減らし、パケットの送出遅延を抑制する。通信状況が良い時は送出パケット数を増やし、スループットを上げる。このような方法により、ネットワークの急峻な帯域変動に対応し、互いに矛盾しない優先制御及び再送制御を実現可能なモニタリングシステムを提供する。
【0025】
図4の例では、データ種別A(高優先)がデータ種別(低優先)よりも送信順が早くなるよう設定されているので、高優先の初送データを低優先の再送データより先に送信できる。
図4の送出順参照テーブルの参照方法を、図9のフロー図と対応づけて以下に説明する。図9における「優先度高データ」が、図4では「データ種別A」、図9における「優先度低データ」が、図4では「データ種別B」にそれぞれ対応するものとする。また、説明をわかりやすくするため、図9の右端に表示された「広域ネットワーク状態」のグラフが左側の「悪い(混雑)」に属する時、フィルタ選択機能36は送出パケット数を1つのみ許可し、右側の「良い(空き)」に属する時は、送出パケット数を2つまで許可するものとする。また、時刻tにはデータ種別A、B共に、再送すべきデータがないものとする。図9のフロー図において、各時刻で以下のように動作する。
【0026】
時刻tでは、「広域ネットワーク状態」は「良い」(91)ため、フィルタ選択機能36は、送出パケット数を2つまで許可する。時刻tにおいては再送すべきデータがないため、図4の送出順参照テーブルにおいて、送出順1、2は該当データなしでスキップされる。次に、送出順3のデータ種別Aの最新データが送出される(94)。次に、送出順4、5も該当データなしでスキップされる。次に、送出順6のデータ種別Bの最新データが送出される(95)。送出パケット数が2になったところで、フィルタ機能310は送出順参照テーブルを読み出すのを止める。また、フィルタ機能310は、過去データ保持テーブル33において、時刻tに送出した各データに対応する「送信」フラグ情報を「1」に更新する。
【0027】
時刻t+1では、「広域ネットワーク状態」は「悪い」(92)ため、フィルタ選択機能36は、送出パケット数を1つのみ許可する。図9では時刻tでデータ種別AのデータにはAckが返ってきた(96)ため、図4の送出順1、2は該当データなしでスキップされる。次に、送出順3のデータ種別Aの最新データが送出される(97)。送出パケット数が1になったところで、フィルタ機能310は送出順参照テーブルを読み出すのを止める。また、フィルタ機能310は、過去データ保持テーブル33において、時刻t+1に送出したデータに対応する「送信」フラグ情報を「1」に更新する。ここでは、時刻tでデータ種別BのデータにはNackが帰ってきたため、再送データが存在するが、送信順参照テーブル37の送信順に従い、上述のようにデータ種別Aの最新データが送信される。
【0028】
時刻t+2では、「広域ネットワーク状態」は「悪い」(92)ため、フィルタ選択機能36は、送出パケット数を1つのみ許可する。図9では時刻t+1でデータ種別Aのデータ(t+1)にNackが返ってきた(98)ため、データ種別Aの過去データ保持テーブル33に再送データがあり、図4の送出順1のデータ種別Aの再送データ(t+1)が送出される(99)。送出パケット数が1になったところで、フィルタ機能310は送出順参照テーブルを読み出すのを止める。また、フィルタ機能310は、過去データ保持テーブル33において、時刻t+2に送出したデータに対応する「送信」フラグ情報を「1」に更新する。
【0029】
時刻t+3では、「広域ネットワーク状態」は「良い」(93)ため、フィルタ選択機能36は、送出パケット数2つまで許可する。図9では時刻t+2でデータ種別Aの再送データ(t+1)にNackが返ってきた(910)ため、図4の送出順1のデータ種別Aの再送データ(t+1)が送出される(911)。次に、送出順2のデータ種別Aの過去データ(t+2)が送出される(912)。例えば、本来ならば時刻t+2に送るはずだったデータが、時刻t+2では再送データ(t+1)しか送れなかったため、時刻t+3で初めて送るケースである。送出パケット数が2になったところで、フィルタ機能310は送出順参照テーブル37を読み出すのを止める。また、フィルタ機能310は、過去データ保持テーブル33において、時刻t+3に送出した各データに対応する「送信」フラグ情報を「1」に更新する。
【0030】
図7に、本発明における送出順参照テーブル37の別の構成例を示す。最新データと、初送データと再送データを含む過去データとのどちらを優先して送信するかを、データ種別毎に独立に定義可能である。本構成例においては、例えば、
データ種別の優先度:データ種別A>データ種別B>データ種別C
最新と過去の優先度:データ種別A(第3データ種別)については過去>最新、データ種別B、C(第4データ種別)については最新>過去
と設定されている。例えば、アラームステータス等、伝送途中で失われては困る情報については、図7におけるデータ種別Aのように、過去データを最新データよりも優先とし、データ種別間での優先度も高く設定する。例えば、監視カメラの画像データ等、ある程度以上古くなると意味が薄れる情報については、図7におけるデータ種別BやCのように、最新データを過去データよりも優先とする。これら条件を組み合わせて一つのテーブルで一元的に規定することにより、互いに矛盾しない優先制御及び再送制御を実現可能である。
【0031】
2.構成例1
本モニタリングシステムは、例えば、
通信端末からのデータを収集する管理装置と、
前記通信端末からの該データを入力し、前記管理装置に送信するネットワーク装置と
を備え
前記管理装置にデータが届いたことを示す確認通知の有無に従い、前記ネットワーク装置がデータを再送する機能を有し、
前記ネットワーク装置は、
入力されるデータの種別を示すデータ種別毎に、第1送信種別のデータが記憶される第1記憶領域と、第2送信種別のデータが記憶される第2記憶領域とを有するデータ記憶領域と、
データ種別と送信種別との組み合わせに対応して、送信順位が予め記憶された送信順記憶領域と、
前記送信順記憶領域のデータ種別と送信種別の組み合わせを送信順位が示す順に参照し、該当するデータ種別と送信種別に応じた前記第1記憶領域又は第2記憶領域からデータを読み出して送信する制御部と
を有し、
前記第1送信種別は、前記通信端末からのデータのうち前記管理装置に送信していない初送データを示し、前記第2送信種別は、前記管理装置に送信済みであり再送に用いるための再送データを示す、又は、
前記第1送信種別は、前記通信端末からのデータのうちの最新データを示し、前記第2送信種別は、前記通信端末からのデータのうちの過去データを示すモニタリングシステムでもよい。
また、上記モニタリングシステムのほか、上記モニタリングシステムにおけるネットワーク装置、モニタリングシステムにおける通信制御方法を構成することもできる。
【0032】
3.構成例2
モニタリングシステムは、例えば、複数の通信端末が接続されるローカルネットワークと管理センタが接続される広域ネットワークとを相互接続するネットワーク相互接続装置を用いたモニタリングシステムであって、
前記モニタリングシステムは、優先度の異なる複数種別のモニタリングデータを伝送し、前記管理センタにデータが届いたことを前記ネットワーク相互接続装置に通知する仕組みをもち、
前記ネットワーク相互接続装置は、
データ種別毎の第1のテーブルを用いて、データの再送継続要否を管理し、
前記データ種別毎の第1のテーブルで管理しているデータの中での優先順位を決定し、
第2のテーブルを用いて、広域ネットワークへのパケット送出順序を管理し、
前記第2のテーブルによって指定されたデータ種別に対応する第1のテーブルで管理するデータの中の、指定された優先順位のデータを選択して広域ネットワークに送出し、
前記第2のテーブルでは、複数のデータ種別、各種別の初送データと再送データ、及び複数の再送データを組み合わせて一元的に規定し、
広域ネットワークの通信状況に応じて、送出データ量を調整する。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、例えばセンサや監視カメラを利用したモニタリングシステム、特に携帯電話等の通信帯域変動が激しい広域ネットワークを用いて、通信帯域変動を考慮した優先制御と再送制御を行うモニタリング技術として有用である。
【符号の説明】
【0034】
10…広域ネットワーク
11…ネットワーク相互接続装置
12…通信端末
13…管理センタ
14…ローカルネットワーク
21…広域ネットワーク通信機能(再送機能付)
22…優先制御機能
23…再送制御情報(Ack/Nack)
24…優先・再送制御機能
25…ローカルネットワーク通信機能
31…受信データ識別・振り分け機能
32…種別毎最新データ保持テーブル登録機能
33…種別毎過去データ保持テーブル登録機能
34…演算処理機能
35…ネットワーク品質判定機能
36…フィルタ選択機能
37…Ack受信機能
38…種別毎過去データ保持テーブルAck更新機能
39…種別毎過去データ保持テーブル優先順決定機能
310…フィルタ機能
311…送信フラグ更新機能
51、61…センサデータ
52、62…時刻情報
63…送出フラグ
64…Ack受信フラグ
42、65、66、72…優先順位
41、71…データ種別
81、95…優先度低データ82、92…広域ネットワーク状態が悪い期間83…優先度低データの再送期間
91、93…広域ネットワーク状態が良い期間
94…優先度高データ
96…Ack
97…優先度低データの再送中止と優先度高データ送出タイミング
98、910…Nack
99、911、912…優先度高データの再送期間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信端末からのデータを収集する受信ノードと、
前記通信端末からの該データを入力し、前記受信ノードに送信するネットワーク装置と
を備え、
前記ネットワーク装置は、
前記受信ノードにデータが届いたことを示す確認通知の有無に従い、データを再送するための再送処理部と、
データ種別毎に、前記通信端末からのデータのうち前記受信ノードに送信していない初送データと、前記受信ノードに送信済みであり再送に用いるための再送データを、該データ種別内の優先順位に対応して記憶するデータ記憶領域と、
データ種別と前記優先順位との組み合わせに応じて送信順位が予め記憶された送信順記憶領域と、
前記送信順記憶領域のデータ種別と優先順位の組み合わせを送信順位が示す順に参照し、該当するデータ種別に応じた前記データ記憶領域から、該当する優先順位のデータを読み出して送信する制御部と
を有するモニタリングシステム。
【請求項2】
前記ネットワーク装置は、センサ又はカメラを含む前記通信端末から、該センサで検出されたデータ又は該カメラで撮影されたデータを受信し、該データ又はそれらの統計データを前記受信ノードへ送信する請求項1に記載のモニタリングシステム。
【請求項3】
データを再送する前記ネットワーク装置と前記受信ノード間のネットワークの少なくとも一部が、無線通信ネットワークである請求項1に記載のモニタリングシステム。
【請求項4】
前記ネットワーク装置は、
前記ネットワーク装置と前記受信ノード間のネットワークの通信状態を監視し、該通信状態を表す指標を求めるネットワーク品質判定機能部と、
所定時間内のデータ送信量を該指標に応じて定める選択機能部と
をさらに有し、
前記制御部は、所定時間内に送信したデータ量が、前記選択機能部により定められたデータ送信量になるまで、前記送信順記憶領域を送信順位に従い参照してデータを送信する請求項1に記載のモニタリングシステム。
【請求項5】
前記優先順位により、初送データと再送データのどちらを優先して送信するかを、データ種別毎に独立に定義可能であること特徴とする請求項1に記載のモニタリングシステム。
【請求項6】
第1データ種別では、再送データの優先順位が、初送データの優先順位よりも早い順位であり、
第2データ種別では、再送データの優先順位が、初送データの優先順位よりも遅い順位である請求項5に記載のモニタリングシステム。
【請求項7】
データ種別は、データの転送優先度に対応し、
前記送信順記憶領域において、高優先のデータ種別と、初送データに対応する優先順位との組み合わせに対応する送信順位は、低優先のデータ種別と、再送データに対応する優先順位との組み合わせに対応する送信順位よりも早い順位である請求項1に記載のモニタリングシステム。
【請求項8】
前記通信端末からのデータのうちの最新データを特定する情報を記憶する第2データ記憶領域
をさらに備え、
前記送信順記憶領域は、データ種別と、最新データを送信するか、初送データ及び再送データを含む過去データを送信するかを示す選択情報と、前記優先順位との組み合わせに応じて送信順位が記憶され、
前記送信順記憶領域の選択情報により、最新データと、初送データと再送データを含む過去データとのどちらを優先して送信するかを、データ種別毎に独立に定義可能であることを特徴とする請求項1に記載のモニタリングシステム。
【請求項9】
前記送信順記憶領域において、
第3データ種別では、過去データを示す選択情報に対応する送信順位が、最新データの識別情報に対応する送信順位よりも早い順位であり、
第4データ種別では、過去データを示す選択情報に対応する送信順位が、最新データの識別情報に対応する送信順位よりも遅い順位である請求項8に記載のモニタリングシステム。
【請求項10】
前記データ記憶領域に、前記通信端末から受信するデータを順次記憶するが、受信後予め定められた第1時間内は優先順位を付ける対象に含めない請求項1に記載のモニタリングシステム。
【請求項11】
前記データ記憶領域に記憶された初送データ及び再送データのうち、記憶後予め定められた第2時間経過したデータを消去する又は該データは優先順位を付ける対象に含めない請求項1に記載のモニタリングシステム。
【請求項12】
通信端末からのデータを入力し、通信端末からのデータを収集する受信ノードに送信するネットワーク装置であって、
前記受信ノードにデータが届いたことを示す確認通知の有無に従い、データを再送するための再送処理部と、
データ種別毎に、前記通信端末からのデータのうち前記受信ノードに送信していない初送データと、前記受信ノードに送信済みであり再送に用いるための再送データを、該データ種別内の優先順位に対応して記憶するデータ記憶領域と、
データ種別と前記優先順位との組み合わせに応じて送信順位が予め記憶された送信順記憶領域と、
前記送信順記憶領域のデータ種別と優先順位の組み合わせを送信順位が示す順に参照し、該当するデータ種別に応じた前記データ記憶領域から、該当する優先順位のデータを読み出して送信する制御部と
を備えた前記ネットワーク装置。
【請求項13】
通信端末からのデータを収集する受信ノードと、前記通信端末からの該データを入力し、前記受信ノードに送信するネットワーク装置とを備え、前記ネットワーク装置が前記受信ノードにデータが届いたことを示す確認通知の有無に従いデータを再送するための再送処理部を有するシステムにおける通信制御方法であって、
データ種別毎に、前記通信端末からのデータのうち前記受信ノードに送信していない初送データと、前記受信ノードに送信済みであり再送に用いるための再送データをデータ記憶領域に記憶するステップと、
データ種別毎に、データ記憶領域に記憶された初送データ及び再送データに該データ種別内の優先順位を付与するステップと、
データ種別と前記優先順位との組み合わせに応じて送信順位が予め記憶された送信順記憶領域を該送信順位が示す順に参照し、該当するデータ種別に応じた前記データ記憶領域から、該当する優先順位のデータを読み出して送信するステップと
を含む通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−204963(P2012−204963A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65959(P2011−65959)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】