説明

モニタ装置、航法装置、及び映像信号の変換方法

【課題】画像生成装置による信号の調整を行うことなく、当該画像生成装置が指定した色を実際に表示するモニタ装置を提供する。
【解決手段】モニタ装置12は、LCD22と、変換回路21と、を備える。LCD22は、入力されるRGB値に対応する色で画像の表示を行う。変換回路21は、外部に配置されたECDIS制御部11から所定の色に対応する第1RGB値が入力され、LCD22に当該所定の色を表示させるように、第1RGB値を第2RGB値に変換する。また、変換回路21は、ECDIS制御部11が有する、色(xyL表色系におけるパラメータ)と第1RGB値との対応関係を示す第1関係式と、LCD22が有する、色(xyL表色系におけるパラメータ)と第2RGB値と対応の関係を示す第2関係式と、に基づいて第1RGB値を第2RGB値に変換する変換テーブルを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、入力される映像信号に基づいて画像を表示するモニタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1及び特許文献2に示すように、入力される映像信号の種類に応じてガンマ値を設定可能なモニタ装置が知られている。ガンマ値とは、入力される信号と実際に表示される輝度との比を決定するための値であり、映像を表示する装置に応じて異なる値が設定されている。
【0003】
特許文献1及び特許文献2が開示するモニタ装置は、PCが生成した映像だけでなく、カメラで撮影した映像や、テレビ放送を録画した映像等を表示可能に構成されている。そして、このモニタ装置は、受信した映像信号の種類に応じて、ガンマ値を所定倍するように構成されているため、自然な色階調でこれらの映像を表示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−324657号公報
【特許文献2】特開平6−208339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1及び特許文献2のモニタ装置が有するガンマカーブ(入力される信号と表示される輝度との対応関係を示す曲線)が歪んでいたりすると、ガンマ値を所定倍するだけでは、映像信号が指定する所定の色をモニタ装置に正確に表示させることはできない。この所定の色をモニタ装置に表示させるためには、モニタ装置が有するガンマカーブの歪みを考慮する必要がある。
【0006】
ガンマカーブは、カラーセンサ等を用いて、入力信号と、当該入力信号によってモニタ装置が表示する輝度と、を測定することで求められる。そして、その結果に基づいてPC等の画像生成装置からの出力を調整することで、ガンマカーブを考慮して映像を表示することができる。なお、このガンマカーブは同種のモニタ装置においても個体差があるため、モニタ装置毎に行う必要がある。
【0007】
しかし、この方法では、PC等の画像装置から複数のモニタ装置に出力するときに、モニタ装置毎に異なる映像信号を出力させる必要があった。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、画像生成装置による信号の調整を行うことなく、当該画像生成装置が指定した色を実際に表示するモニタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成のモニタ装置が提供される。即ち、このモニタ装置は、画像表示部と、変換部と、を備える。前記画像表示部は、入力される数値に対応する色で画像の表示を行う。前記変換部は、外部に配置された画像生成装置から所定の色を特定する第1数値が入力され、前記画像表示部に当該所定の色を表示させるように、第1数値を第2数値に変換する。また、前記変換部は、前記画像生成装置が有する、少なくとも所定の色と第1数値との対応関係を示す第1関係と、前記画像表示部が有する、少なくとも所定の色と第2数値との対応関係を示す第2関係と、に基づいて決定される、前記第1数値を前記第2数値に変換する変換テーブルを有する。
【0011】
これにより、画像生成装置側で数値を調整することなく、モニタ装置の個体差を考慮して、画像生成装置が指定する所定の色を画像表示部に表示させることができる。そのため、画像生成装置に複数のモニタ装置を接続して同一の画像を表示させる場合において、画像生成装置は、単一の映像信号を各モニタ装置に出力するだけで、モニタ装置の個体差を考慮して、各モニタ装置で同一の色の画像を表示させることができる。
【0012】
前記のモニタ装置において、前記第2関係は、前記画像表示部に入力された第2数値に対して当該画像表示部が表示する色を測定した測定値に基づいて決定されることが好ましい。
【0013】
これにより、モニタ装置の実態に即した第2関係を決定することができるので、画像生成装置が指定する所定の色をより正確に画像表示部に表示させることができる。
【0014】
前記のモニタ装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記第2関係は、温度に応じて定められている。それぞれの前記第2関係は、前記画像表示部に入力された第2数値に対して当該温度で測定された測定値に基づいて決定される。
【0015】
これにより、温度変化によって画像表示部が出力する色が変化することを考慮して、第2関係を決定することができる。従って、画像生成装置が指定する所定の色をより正確に画像表示部に表示させることができる。
【0016】
前記のモニタ装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このモニタ装置は、色を測定するカラーセンサを備える。前記第2関係は、前記画像表示部に入力された第2数値に対して当該画像表示部が表示する色を、前記カラーセンサによって測定した測定値に基づいて決定される。
【0017】
これにより、製品の出荷後においても画像表示部の測定を行うことができるので、使用環境等に応じたモニタ装置の特性を考慮して第2関係を決定することができる。従って、画像生成装置が指定する所定の色を、使用環境等の変化に関係なく正確に画像表示部に表示させることができる。
【0018】
前記のモニタ装置において、前記第2関係は、前記画像表示部が表示する色を前記カラーセンサが測定した測定値に基づいて、所定のタイミングで順次更新されることが好ましい。
【0019】
これにより、経年変化に応じたモニタ装置の特性を考慮して第2関係を決定することができるので、画像生成装置が指定する所定の色を、長期間にわたって正確に画像表示部に表示させることができる。
【0020】
前記のモニタ装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このモニタ装置は、前記画像生成装置から出力される前記第1関係を受信する受信部を備える。前記受信部で受信した前記第1関係に基づいて前記変換テーブルが更新される。
【0021】
これにより、モニタ装置に接続される画像生成装置の切替えや、画像表示部に表示させる色の再調整等に容易に対応することができる。
【0022】
前記のモニタ装置においては、前記第1関係及び前記第2関係が、それぞれ関係式として表されることが好ましい。
【0023】
これにより、第1関係及び第2関係をテーブルとして記憶する構成に比べて、記憶するデータ量を低減させることができる。
【0024】
前記のモニタ装置においては、第1数値及び第2数値としてRGB値が用いられることが好ましい。
【0025】
これにより、モニタ装置に一般的に用いられるRGB値に対しても本発明を適用させることができる。
【0026】
前記のモニタ装置においては、外部に配置される前記画像生成装置に入力される所定の色は、xyL表色系におけるパラメータで特定されることが好ましい。
【0027】
これにより、xyL表色系で特定された色にも本発明を適用させることができる。
【0028】
前記のモニタ装置においては、前記変換部は、前記画像生成装置に設定されたxyL表色系におけるパラメータで特定される色が前記画像表示部に表示されるように、前記第1数値を前記第2数値に変換することが好ましい。
【0029】
これにより、xyL表色系で特定された色を画像表示部に表示させることができる。
【0030】
本発明の第2の観点によれば、以下の航法装置が提供される。即ち、この航法装置は、前記のモニタ装置と、画像生成装置と、を備える。前記画像生成装置は、入力された航海データに基づいて、前記モニタ装置に映像情報を出力する。
【0031】
即ち、ECDIS等の航法装置においては、表示するマークの色を所定の規格に精度良く対応させる必要がある。また、舶用機器のネットワークにおいては、画像生成装置が生成した画像が複数のモニタ装置に出力されることがある。従って、航法装置に本発明を適用することで、本発明の効果を特に有効に発揮することができる。
【0032】
本発明の第3の観点によれば、画像生成装置から出力された第1数値に基づいて、キャリブレーションを加味した第2数値をモニタ装置の画像表示部に出力する映像信号の変換方法において、以下の映像信号の変換方法が提供される。即ち、この映像信号の変換方法は、受信工程と、変換工程と、出力工程と、を含む。前記受信工程は、前記画像生成装置から出力された所定の色を特定する第1数値を受信する。前記変換工程は、前記画像生成装置が有する、所定の色と第1数値との対応関係と、前記画像表示部が有する、所定の色と第2数値との対応関係とから決定される変換テーブルに基づいて、第1数値を第2数値に変換する。前記出力工程は、前記変換工程で求めた第2数値を前記モニタ装置の前記画像表示部に出力する。
【0033】
これにより、画像生成装置側で数値を調整することなく、モニタ装置の個体差を考慮して、画像生成装置が指定する所定の色を画像表示部に表示させることができる。そのため、画像生成装置に複数のモニタ装置を接続して同一の画像を表示させる場合において、画像生成装置は、単一の映像信号を各モニタ装置に出力するだけで、モニタ装置の個体差を考慮して、各モニタ装置で同一の色の画像を表示させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係るECDIS及びこのECDISに接続される舶用機器を示すブロック図。
【図2】輝度を調整するときの構成を示す説明図。
【図3】映像信号の流れを示す説明図。
【図4】LCD装置の色度を補正するときの構成を示す説明図。
【図5】LCDの色度を補正するときの処理を示すフローチャート。
【図6】第2関係式を求めるときの処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。初めに、図1を参照して、ECDIS(航法装置)1の概要について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るECDIS1及びこのECDIS1に接続される舶用機器を示すブロック図である。
【0036】
ECDIS(Electronic Chart Display and Information System、電子海図情報表示システム)1は、接続されるGPS受信機から自船の位置情報を取得するとともに、予め用意された電子海図情報に基づいて、自船周囲の海図を自動的に表示するシステムである。
【0037】
またECDIS1は、海図情報に加えて、各種の追加情報を表示し、航路計画及び航行監視において操船者を支援することができるように構成される。
【0038】
ECDIS1は、ECDIS制御部(画像生成装置)11と、モニタ装置12と、ECDIS操作部13と、を備えている。
【0039】
ECDIS制御部11は、AIS受信機31、レーダ装置32、及びGPS受信機33から航海情報を受信している。具体的には、AIS受信機31からは、他船に搭載されるAIS(Automatic Identification System、船舶自動識別装置)が出力するAIS情報(当該他船の識別情報及び位置等)を受信している。また、レーダ装置32からは、物標データ(付近を航行中の他船の位置等)を受信している。そして、GPS受信機33からは、自船の位置情報等を受信している。ECDIS制御部11は、これらの航海情報に適宜の信号処理を行って映像信号を生成し、この映像信号をモニタ装置12に送信している。
【0040】
モニタ装置12は、受信した映像情報を表示可能に構成されている。また、ECDIS1の設定等は、モニタ装置12の表示に従ってECDIS操作部13を操作することで行うことができる。
【0041】
次に、このモニタ装置12の輝度(cd/m2)及び色度を補正するための処理について説明する。モニタ装置12は、入力される信号に応じた輝度や色度を表示するが、入力される信号と、当該信号に対してモニタ装置12が実際に表示する輝度及び色度は、モニタ装置12毎に異なっている。このモニタ装置12の個体差を補正するために、ECDIS1の出荷前に下記のような処理を行っている。なお、輝度には、「単位面積あたりの明るさ(cd/m2)」としての意味と、「xyL表色系(Yxy表色系)等で用いられる色を特定するパラメータの1つ」としての意味があるが、本明細書では、単に「輝度」と記した場合は前者を意味するものとする。
【0042】
初めに、モニタ装置12の輝度を補正する方法について図2を参照して説明する。図2は、輝度を調整するときの構成を示す説明図である。
【0043】
モニタ装置12の輝度を補正するときには、図2に示すように、PC41と輝度計42とが用いられる。PC41は、256個の設定値とそれらに対応する輝度を示す情報(理想輝度情報)を有している。
【0044】
また、モニタ装置12は、256個の設定値とそれらに対応するDuty比を示す情報を有している。また、モニタ装置12は、図略のPWM制御部を備えており、PWM制御部は、PC41から入力される設定値に応じたDuty比のパルスを出力する。モニタ装置12のバックライトは、このDuty比に応じた輝度で発光する。
【0045】
輝度計42は、モニタ装置12の輝度を計測して、当該輝度情報をPC41に出力している。PC41は、この輝度が設定値に応じた所定の範囲になるように、モニタ装置12に対して適宜の信号を送信してDuty比を変化させて輝度を上下させる。そして、PC41が計測した輝度が所定の範囲に入ったときのDuty比をPWM制御部に記憶させる。
【0046】
そして、このDuty比を修正する処理を所定数の設定値に対して行う。これにより、モニタ装置12は、設定値と修正後のDuty比との対応関係を持つことができる。なお、修正を行っていない設定値に関しては、修正を行った設定値に対応するDuty比を線補間することで求めることができる。
【0047】
次に、モニタ装置12の色度を補正する方法について説明する。初めに、図3を参照して、ECDIS制御部11が出力した信号に基づいてLCD(Liquid Crystal Display、画像表示部)22が画像を表示するときの動作を説明する。図3は、映像信号の流れを示す説明図である。
【0048】
ECDIS1には、所定のマークをどのような表示色で表現するかが規格によって定められている。この規格で定められた色は、xyL表色系で表されている。そして、ECDIS制御部11は、xyL表色系で表された色と、この色に対応する第1RGB値と、の対応関係(第1関係、第1関係式)を記憶しており、規格で定められた色を出力するときは、この第1関係式に基づいて対応する第1RGB値(第1数値)を出力する。
【0049】
また、図3に示すようにモニタ装置は、RGB値の変換を行う変換回路(変換部)21と、入力されたRGB値に対応する色で画像の表示を行うLCD22と、受信工程を実現するための受信部23と、を備えている。ECDIS制御部11が出力した第1RGB値は、受信部23を介して変換回路21に入力される。なお、ここで第1RGB値が直接的にLCD22に入力されず、変換回路21を経由するのは、モニタ装置12の出力特性の個体差にかかわらず同一の色を表示させるためである。
【0050】
変換回路21では、モニタ装置12の個体差を考慮してRGB値の変換が行われる。この変換は、第1関係式と、入力される第2RGB値と表示される画像の表示色との対応関係を示す第2関係式(第2関係)と、に基づいて求まる変換テーブルを用いて行われる(変換工程)。そして、この変換テーブルに基づいて、LCD22が規格で定められた色を表示するように第1RGB値が第2RGB値(第2数値)に変換されて、当該LCD22へ出力される(出力工程)。このようにしてLCD22は、規格で定められた色を表示することができる。なお、本実施形態の構成は、規格で定められた色をLCD22に表示するためだけでなく、ECDIS1のメーカ等が所定の色をLCD22に表示させたい場合等に適用できることは当然である。
【0051】
次に、図4から図6までを参照して、ECDIS1の出荷前にLCD22の色度を補正する具体的な処理について説明する。図4は、LCD22の色度を補正するときの構成を示す説明図である。図5は、LCD22の色度を補正するときの処理を示すフローチャートである。図6は、第2関係式を求めるときの処理を示すフローチャートである。
【0052】
LCD22の色度を補正するときは、初めに第1関係式を求める(図5のS101)。この第1関係式は、規格で定められた色と、それに対応する第1RGB値等の既知のデータから公知の方法によって求めることができる。この第1関係式に基づいて、xyL表色系で表された色から、この色を表示させるためにECDIS制御部11が出力すべき第1RGB値を求めることができる。
【0053】
次に、入力される第2RGB値と、LCD22に表示される画像の表示色と、の対応関係を示す第2関係式を求める。第2関係式を求めるときには、図4に示すような、PC41とカラーセンサ43とを用いて、LCD22に表示される色の計測を行う。
【0054】
PC41は、モニタ装置12に対して適宜の映像信号を送信することができる。また、カラーセンサ43は、映像信号に基づいてLCD22が表示した色をxyL表色系で取得することができる。また、この計測システムには、図略の温度計が設置されており、上記の測定が行われるときの周囲の温度を検出することができる。この温度計は、モニタ装置12が備える構成にしたり、モニタ装置12の外部に設置され、温度計の検出値が当該モニタ装置12に入力される構成にしたりすることができる。
【0055】
そして、LCD22が表示する色の計測を行うときには、初めに温度計によって周囲の温度を取得する(図5のS102)。そして、LCD22が表示する色の計測値を取得する(S103)。以下、この計測について図6のフローチャートを参照して詳細に説明する。
【0056】
初めに、モニタ装置12の輝度を所定の値に設定する(S201)。なお、モニタ装置12の輝度によってLCD22の表示する色が変化し得るため、表示色の計測中にはモニタ装置12の輝度の設定を変えないことが好ましい。
【0057】
次に、PC41は、LCD22に(R,G,B)=(8,0,0)の設定値を入力して画像を表示させる(S202)。このとき、LCD22が有する表示領域のうち、この設定値(赤色)をどの部分に出力するかは、カラーセンサ43が適切に表示色を計測できれば任意である。例えば、表示画面の全領域を赤色で塗り潰すように表示したり、表示画面の中央に赤色の5cm×5cmの正方形を表示させたりすることが考えられる。
【0058】
また、今回の測定では、LCD22に入力される第2RGB値とそれにして表示される色との関係を取得することが目的であるため、変換回路21は動作させない。つまり、PC41がモニタ装置12に入力するRGB値が、そのままLCD22に入力される。
【0059】
そして、表示色が安定するまでの所定時間(例えば200ms)が経過した後に、LCD22が表示した色をカラーセンサ43によって計測する(S203)。この計測値は、カラーセンサ43からPC41へ出力され、PC41は、この計測値を記憶する(S203)。
【0060】
そして、Rが255未満の場合は、Rの設定値を8ずつ増加させながら(S205)、表示色の計測を繰り返し行う。なお、R=248の場合は、Rの設定値は255が上限のため、αに7が足される(S205)。そして、R=255になると(S204)、Rの計測が完了する。その後、G,Bについても同様に計測を行う(S206)。
【0061】
なお、設定値の増減値は8に限られず、要求される精度及び規格等に応じて適宜の値を用いることができる。
【0062】
このようにして、LCD22に入力される第2RGB値に対応してLCD22が表示する色を取得することができるので、この計測値に基づいて、以下のような第2関係式を求めることができる(図5のS104)。
【数1】

【0063】
この式は、第2RGB値として(Dr,Dg,Db)が設定されたときに、LCD22に表示される各RGB値の輝度(Lr,Lg,Lb)を示している。ここで、(γr,γg,γb)は、ガンマ値であり、(ar,ag,ab)は、係数である。なお、このガンマ値及び係数の具体的な値は、上記の測定値を用いて代入等することで求めることができる。
【0064】
また、この係数は、温度変化に従って変化する性質を有している。そのため、本実施形態では、異なる温度で上記の計測を行い、各温度における前記係数を求めることで、各温度に応じた第2関係式を求める(S105)。そして、取得した周囲の温度に応じてどの第2関係式を用いるかを予め設定しておく。これにより、全ての温度に対応して第2関係式を決定することができる。
【0065】
なお、求めた複数の係数の値に基づいて当該係数の温度依存性を求め、取得した周囲の温度を代入することで係数の値を決定できる構成にしても良い。
【0066】
次に、上記で求めた関係式に基づいて適切な色が表示されるか否かの精度確認を行う。初めに、この精度確認を行うときの温度を温度センサから取得する(S106)。そして、第1関係式と、取得した温度に基づいた第2関係式と、に基づいて、変換テーブルを求める(S107)。
【0067】
変換テーブルとは、ECDIS制御部11が指定する色(xyL表色系におけるパラメータ)と、LCD22が表示する色(xyL表色系におけるパラメータ)と、が同一になるようにRGB値を変換するためのものである。この変換テーブルは、ECDIS制御部11が指定する色とLCD22が表示する色とが一致するときの、各RGB値を対応させることで求めることができる。変換回路21は、このようにして求められた変換テーブルを記憶するように構成されている。なお、この変換テーブルは、ECDIS1の動作中にECDIS制御部11から適宜の信号を受信することで、更新させることができる。
【0068】
そして、規格に基づいた所定の色をLCD22に表示させて、カラーセンサ43に測定させる。そして、カラーセンサ43から取得した色が所定範囲内であるか否かを判定し(S108)、所定範囲内であればLCD22の表示色の補正が完了する。
【0069】
一方、カラーセンサ43から取得した色が所定範囲から外れている場合は、適宜の工程からLCD22の色度の補正をやり直す。そして、カラーセンサ43から取得した色が所定範囲内になったときにLCD22の表示色の補正が完了する。
【0070】
次に、LCDの輝度及び色度の補正を、ECDISの出荷前以外でも行うことができる構成について説明する。例えば、輝度計42及びカラーセンサ43(又は両機能を有する1つのセンサ)を内部に有するモニタ装置を用いることで、LCDの輝度及び色度の補正を、ECDISの出荷前だけでなく、出荷後においても随時行うことができる。
【0071】
この構成では、ECDISの動作中に、ECDIS制御部が指定した設定値と、センサによって取得されたLCDの輝度と、を比較することで輝度のズレ量を検出することができる。そして、この輝度のズレ量を加味して、モニタ装置が有する、256個の設定値とそれらに対応するDuty比を示す情報を更新することで、モニタ装置の輝度を補正することができる。
【0072】
また、この構成では、ECDIS制御部が指定した色と、センサによって計測された色と、を比較することで、色度のズレ量を検出することができる。そして、この色度のズレ量を加味して第2関係式を更新することで、LCDの色度を補正することができる。
【0073】
この構成では、LCDの輝度及び色度の補正を随時行うことができるため、この補正を所定のタイミングで(例えば1週間毎に)行うことにより、LCDの設定値等を当該LCDの経年変化に追従させることができる。
【0074】
また、ECDISの出荷後においてもLCDの輝度及び色度を補正可能な構成として、センサの位置が変更可能であり、センサがモニタ装置の正面に位置する補正モードと、センサがモニタ装置の正面に位置しない動作モードと、を切替え可能な構成を挙げることもできる。
【0075】
以上に説明したように、本実施形態のこのモニタ装置12は、LCD22と、変換回路21と、を備える。LCD22は、入力されるRGB値に対応する色で画像の表示を行う。変換回路21は、外部に配置されたECDIS制御部11からxyL表色系におけるパラメータで特定された所定の色に対応する第1RGB値が入力され、LCD22に当該所定の色を表示させるように、第1RGB値を第2RGB値に変換する。また、変換回路21は、ECDIS制御部11が有する、色(xyL表色系におけるパラメータ)と第1RGB値との対応関係を示す第1関係式と、LCD22が有する、色(xyL表色系におけるパラメータ)と第2RGB値と対応の関係を示す第2関係式と、に基づいて、第1RGB値を第2RGB値に変換する変換テーブルを有する。
【0076】
また、本実施形態では、ECDIS制御部11から出力された第1RGB値に基づいて、キャリブレーションを加味した第2RGB値をモニタ装置12のLCD22に出力する映像信号の変換方法において、受信工程と、変換工程と、出力工程と、を含む映像信号の変換方法が提供される。受信工程は、ECDIS制御部11から出力された所定の色を特定する第1RGB値を受信する。変換工程は、ECDIS制御部11が有する、所定の色と第1RGB値との対応関係と、LCD22が有する、所定の色と第2RGB値との対応関係とから決定される変換テーブルに基づいて、第1RGB値を第2RGB値に変換する。出力工程は、変換工程で求めた第2RGB値をモニタ装置12のLCD22に出力する。
【0077】
これにより、ECDIS制御部11側でRGB値を調整することなく、モニタ装置12の個体差を考慮して、ECDIS制御部11が指定する所定の色をLCD22に表示させることができる。また、舶用機器のネットワークにおいては、ECDIS制御部11に複数のモニタ装置12を接続して同一の画像を表示させることが多く、この場合、ECDIS制御部11は、単一の映像信号を各モニタ装置に出力するだけで、各モニタ装置の個体差を考慮して、各モニタ装置で同一の色の画像を表示させることができる。
【0078】
また、本実施形態のモニタ装置12において、第2関係式は、LCD22に入力された第2RGB値に対して当該LCD22が表示する色を測定した測定値に基づいて決定される。
【0079】
これにより、モニタ装置12の実態に即した第2関係式を決定することができるので、ECDIS制御部11が指定する所定の色をより正確にLCD22に表示させることができる。
【0080】
また、本実施形態のモニタ装置12において、第2関係式は、温度に応じて定められている。それぞれの第2関係式は、LCD22に入力された第2RGB値に対して当該温度で測定された測定値に基づいて決定される。
【0081】
これにより、LCD22が出力する色が温度に応じて変化することを考慮して、第2関係式を決定することができる。従って、ECDIS制御部11が指定する所定の色をより正確にLCD22に表示させることができる。
【0082】
また、本実施形態のモニタ装置12は、色を測定するカラーセンサを備える構成に変更することもできる。この場合、第2関係式は、LCDに入力されたRGB値に対して当該LCDが表示する色を、カラーセンサによって測定した測定値に基づいて決定される。
【0083】
これにより、製品の出荷後においてもLCDの測定を行うことができるので、使用環境等に応じたモニタ装置の特性を考慮して第2関係式を決定することができる。従って、ECDIS制御部が指定する所定の色を、使用環境等の変化に関係なく正確にLCDに表示させることができる。
【0084】
また、カラーセンサを備えるモニタ装置において、第2関係式は、LCDが表示する色をカラーセンサが測定した測定値に基づいて、所定のタイミングで順次更新させることもできる。
【0085】
これにより、経年変化に応じたモニタ装置の特性を考慮して第2関係式を決定することができるので、ECDIS制御部が指定する所定の色を、長期間にわたって正確にLCDに表示させることができる。
【0086】
また、本実施形態のモニタ装置12は、ECDIS制御部11から出力される第1関係式を受信する受信部23を備える。受信部23で受信した第1関係式に基づいて変換テーブルが更新される。
【0087】
これにより、規格の変更等によってLCD22が表示すべき色が変わった場合や、モニタ装置12に接続されるECDIS制御部11が切り替わった場合や、LCD22に表示させる色を再調整する場合に容易に対応することができる。
【0088】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0089】
上記実施形態では、色を特定するためにxyL表色系(Yxy表色系)を用いたが、これに代えて、XYZ表色系等の適宜の表色系を用いることができる。
【0090】
上記実施形態では、第1数値及び第2数値としてそれぞれRGB値を用いたが、第1数値及び第2数値はRGB値に限定されず、sRGB値等を用いることができる。
【0091】
上記実施形態では、第1関係及び第2関係としてそれぞれ関係式を用いたが、第1関係及び第2関係は関係式に限定されず、所定の色とRGB値とを対応付けたテーブル等を用いることができる。
【0092】
LCD22の表示色を補正するときに、周囲の温度だけでなく、バックライトの温度を考慮しても良い。バックライトの温度は輝度と対応しているため、以下の方法を行うことでバックライトの温度を考慮した補正を行うことができる。即ち、ECDIS1の出荷前においてモニタ装置12の輝度を変化させ、当該輝度毎に表示色の測定を行うことにより、バックライトの温度に応じた表示色の変化を取得することができる。そして、ECDIS1を動作させるときは、モニタ装置12に設定される輝度に応じて、取得した変化量を考慮して第2関係式等に反映させる。
【0093】
上記実施形態では、LCDの表示色を補正する方法を開示したが、航法装置としてのプロッタ等にも本発明を適用することができる。また、航法装置以外にも、色を特定するための数値(例えば、RGB値)を変換する変換部を備えたあらゆる表示装置に本発明を適用することができる。
【0094】
上記実施形態では、画像表示部としてLCDを用いたが、例えばプラズマディスプレイ等の適宜の部品を用いることもできる。
【符号の説明】
【0095】
1 ECDIS(航法装置)
11 ECDIS制御部(画像生成装置)
12 モニタ装置
21 変換回路(変換部)
22 LCD(画像表示部)
23 受信部
42 輝度計
43 カラーセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される数値に対応する色で画像の表示を行う画像表示部と、
外部に配置された画像生成装置から所定の色を特定する第1数値が入力され、前記画像表示部に当該所定の色を表示させるように、第1数値を第2数値に変換する変換部と、
を備え、
前記変換部は、
前記画像生成装置が有する、少なくとも所定の色と第1数値との対応関係を示す第1関係と、前記画像表示部が有する、少なくとも所定の色と第2数値との対応関係を示す第2関係と、に基づいて決定される、前記第1数値を前記第2数値に変換する変換テーブルを有することを特徴とするモニタ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモニタ装置であって、
前記第2関係は、前記画像表示部に入力された第2数値に対して当該画像表示部が表示する色を測定した測定値に基づいて決定されることを特徴とするモニタ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のモニタ装置であって、
前記第2関係は、温度に応じて定められており、
それぞれの前記第2関係は、前記画像表示部に入力された第2数値に対して当該温度で測定された測定値に基づいて決定されることを特徴とするモニタ装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のモニタ装置であって、
色を測定するカラーセンサを備え、
前記第2関係は、前記画像表示部に入力された第2数値に対して当該画像表示部が表示する色を、前記カラーセンサによって測定した測定値に基づいて決定されることを特徴とするモニタ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のモニタ装置であって、
前記第2関係は、前記画像表示部が表示する色を前記カラーセンサが測定した測定値に基づいて、所定のタイミングで順次更新されることを特徴とするモニタ装置。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載のモニタ装置であって、
前記画像生成装置から出力される前記第1関係を受信する受信部を備え、
前記受信部で受信した前記第1関係に基づいて前記変換テーブルが更新されることを特徴とするモニタ装置。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載のモニタ装置であって、
前記第1関係及び前記第2関係が、それぞれ関係式として表されることを特徴とするモニタ装置。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載のモニタ装置であって、
第1数値及び第2数値としてRGB値が用いられることを特徴とするモニタ装置。
【請求項9】
請求項1から8までの何れか一項に記載のモニタ装置であって、
外部に配置される前記画像生成装置に入力される所定の色は、xyL表色系におけるパラメータで特定されることを特徴とするモニタ装置。
【請求項10】
請求項9に記載のモニタ装置であって、
前記変換部は、前記画像生成装置に設定されたxyL表色系におけるパラメータで特定される色が前記画像表示部に表示されるように、前記第1数値を前記第2数値に変換することを特徴とするモニタ装置。
【請求項11】
請求項1から10までの何れか一項に記載のモニタ装置と、
入力された航海データに基づいて、前記モニタ装置に映像情報を出力する画像生成装置と、
を備えることを特徴とする航法装置。
【請求項12】
画像生成装置から出力された第1数値に基づいて、キャリブレーションを加味した第2数値をモニタ装置の画像表示部に出力する映像信号の変換方法において、
前記画像生成装置から出力された所定の色を特定する第1数値を受信する受信工程と、
前記画像生成装置が有する、所定の色と第1数値との対応関係と、前記画像表示部が有する、所定の色と第2数値との対応関係とから決定される変換テーブルに基づいて、第1数値を第2数値に変換する変換工程と、
前記変換工程で求めた第2数値をモニタ装置の画像表示部に出力する出力工程と、
を有することを特徴とする映像信号の変換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−259291(P2011−259291A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133019(P2010−133019)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】