説明

モノリス触媒とその使用方法

本発明は、低いBET表面積を有すると共に触媒的に不活性な材料からなるモノリスとこのモノリス上に施された触媒層とを含み、且つ酸化物支持体材料上に、元素周期律表のVIII族の貴金属からなる群から選ばれる少なくとも一種の貴金属と、任意にスズ及び/又はレニウムと、任意に他の金属とを含む触媒であって、前記触媒層の厚さが5〜500マイクロメータであることを特徴とする触媒に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノリス触媒並びに脱水素化、芳香族化、改質及び燃焼等の石油化学的変換のためのその触媒の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いろいろな石油化学反応(例えば、脱水素化や芳香族化、改質、燃焼)で、担持貴金属触媒が使用されている。このような触媒の使用は、貴金属コストが高いため非常に高価となる。また、従来の触媒では貴金属の分布が悪く拡散経路が長かったため、貴金属量の削減が求められていた。
【0003】
US4788371には、気相での脱水素化可能な炭化水素の水蒸気脱水素化とその中間体の酸化的な再加熱の方法が述べられており、ここでは水素の選択的酸化と水蒸気脱水素化に同一の触媒が用いられている。ここでは、水素は共供給物として導入されている。用いる触媒は、酸化アルミニウム等の無機酸化物支持体上に担持された、VIII族の貴金属と、アルカリ金属と、B、Ga、In、Ge、Sn及びPbからなる群から選択されるさらなる金属とを有している。この方法は、固定床または移動床中で一段階以上で実施可能である。
【0004】
WO94/29021には、実質的にマグネシウムとアルミニウムの複合酸化物Mg(Al)OとVIII族の貴金属、好ましくは白金と、IVA族の金属、好ましくはスズと、および可能ならアルカリ金属、好ましくはセシウムからなる支持体を含む触媒が記載されている。この触媒は炭化水素の脱水素化に用いられ、この反応は酸素の存在下で実施可能である。
【0005】
US5733518には、ゲルマニウム、スズ、鉛、ヒ素、アンチモンまたはビスマスのリン酸塩、好ましくは燐酸スズの含む触媒上で、n−ブタンなどの炭化水素の存在下で水素を酸素で選択的に酸化する方法が述べられている。水素の燃焼により、少なくとも一つの反応ゾーン中で吸熱性脱水素化の必要な反応熱が生成する。
【0006】
EP−A0838534には、水蒸気を用いずに、酸素存在下でアルカンを、特にイソブタンを水素化する触媒が述べられている。用いる触媒は、酸化スズ/酸化ジルコニウムを含み、スズ含量が少なくとも10%である支持体上に担持された白金族金属からなる。脱水素化用の供給流中の酸素含量は、水素と酸素の燃焼反応で生成する熱量が脱水素化に必要な熱量に一致するように計算される。
【0007】
WO96/33151には、Cr、Mo、Ga、ZnまたはVIII族の金属を含む脱水素化触媒上で酸素の不存在下でC2〜C5−アルカンを脱水素化し、同時に得られる水素を還元性金属酸化物、例えばBi、In、Sb、Zn、Tl、PbまたはTeの酸化物上で酸化する方法が述べられている。還元した酸化物を酸素源により再酸化するために、定期的にこの脱水素化を中断する必要がある。US5430209には、これに対応する、脱水素化工程と酸化工程が交互に進行し、関係する触媒が相互に物理的に分離されている方法が記載されている。水素の選択的酸化に用いられる触媒は、BiとSbとTeの酸化物や、これらの複合酸化物である。
【0008】
最後に、WO96/33150には、第一段階目にC2〜C5アルカンを脱水素化触媒上で脱水素化し、その脱水素化段階からの排出ガスに酸素を混合し、第二段階で酸化触媒、好ましくはBi23の上を通過して、選択的に発生水素を水に酸化し、第三段階で、第二段階からの排出ガスをもう一度脱水素化触媒上を通過させる方法が述べられている。
【0009】
芳香族炭化水素が、開鎖型炭化水素の触媒的脱水素化的芳香族化により得られることが知られている(例えば、Catalysis VI、p. 535−542、ed. by P. H. Emmet、Reinhold Publishing Co.、New York、1958を参照)。
【0010】
US3449461には、パラジウムまたは白金などの貴金属を含む硫黄触媒を用いる、開鎖型のC6〜C20パラフィンのo−キシレン等の芳香族炭化水素への脱水素化的芳香族化が記載されている。
【0011】
US−A2004/0044261には、遷移VIII族の貴金属を担持する分子篩からなる触媒上で、C8−イソアルケンまたはアルケンを変換して選択的にp−キシレンを製造する方法が述べられている。
【0012】
DE−A19727021には、両性セラミック支持体上に少なくとも一種の白金族元素を担持する触媒上で、工業グレードのC4留分を二量化して得られるオレフィン性不飽和C8炭化水素混合物を脱水素化して、ブテンからC8芳香族化合物を製造する方法が記載されている。主な反応生成物はエチルベンゼンである。o−キシレンも形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】US4788371
【特許文献2】WO94/29021
【特許文献3】US5733518
【特許文献4】EP−A0838534
【特許文献5】WO96/33151
【特許文献6】US5430209
【特許文献7】WO96/33150
【特許文献8】US3449461
【特許文献9】US−A2004/0044261
【特許文献10】DE−A19727021
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Catalysis VI、p. 535−542、ed. by P. H. Emmet、Reinhold Publishing Co.、New York、1958
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、高い変換、空時収量及び選択性を保証する、炭化水素の脱水素化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本目的は、低いBET表面積を有すると共に触媒的に不活性な材料からなるモノリスとこのモノリス上に形成された触媒層を含み、且つ酸化物支持体材料上に、元素周期律表の第VIII族の貴金属からなる群から選ばれる少なくとも一種の貴金属と、任意にスズ及び/又はレニウムと、任意に更なる金属とを含む触媒であって、触媒層の厚みが5〜500マイクロメータであるものにより達成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、貴金属の要求量が極めて低く且つ性能が大きく改善された固定床触媒を提供する。同時に、触媒の浸入深さが5〜500μmに制限されており、好ましくは5〜250μmに、より好ましくは25〜250μmに、特に50〜250μmに制限されている。触媒の浸入深さは、モノリスに施される触媒層の厚みにより規定される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
モノリス上の触媒層は、少なくとも、触媒支持体としてのセラミック酸化物と、元素周期律表の遷移VIII族の元素からから選ばれる少なくとも一種の貴金属、特にパラジウム、白金またはロジウムと、必要ならレニウム及び/又はスズを含む。この触媒支持体は、第二、第三及び第四主族からの元素と第三及び第四の遷移族(IVB族)の元素とランタニドとの一種以上のセラミック酸化物であり、特にMgO、CaO、Al23、SiO2、ZrO2、TiO2、La23、Ce23である。ある特に好ましい実施様態においては、この触媒支持体が、SiO2とZrO2を含み、特にSiO2とZrO2の複合酸化物を含む。
【0019】
遷移VIII族の貴金属に加えて、さらなる元素を使うこともできる。特にレニウム及び/又はスズが、遷移VIII族の元素に加えられる添加物である。他の構成成分は、第三主族または遷移族(IIIAまたはIIIB)の化合物またはアルカリ土類、アルカリ土類、または希土類などの塩基性化合物と、400℃を超える温度で相当する酸化物に変換可能なこれらの化合物であり、これらは添加またはドープされる。上記元素または化合物の複数個を、同時にドープすることもできる。好適な例は、カリウムとランタンの化合物である。また、この触媒は、硫黄、テルル、ヒ素、アンチモンまたはセレン化合物と混合可能であり、多くの場合、これにより、おそらく部分的な「被毒」により選択性が向上する(調整剤)。
【0020】
この触媒層は、元素周期律表のVIII族の少なくとも一種の貴金属(Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)を含む。好ましい貴金属は白金である。触媒層は、必要に応じてスズ及び/又はレニウムを含んでいてもよい。好ましくはスズを含む。
【0021】
ある好ましい実施様態においては、この触媒層が白金とスズを含む。
【0022】
また、この触媒層を他の金属でドープしてもよい。ある好ましい実施様態においては、この触媒層は、ランタニド(Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)を含む元素周期律表の第三遷移族(IIIB族)の一種以上の以上金属を含み、セリウムとランタンが好ましく、特にランタンが好ましい。
【0023】
他の好ましい実施様態においては、この触媒層が、白金とスズとランタンとを含む。
【0024】
また、この触媒層は、元素周期律の主族IとIIの金属から選ばれる金属を含んでいてもよい。ある好ましい実施様態においては、この触媒層がカリウム及び/又はセシウムを含む。ある特定の実施様態においては、この触媒層は、白金とスズとランタンに加えて、カリウムとセシウムからなる群から選ばれるアルカリ金属とを含む。
【0025】
酸化物支持体材料と元素周期律表のVIII族の少なくとも一種の貴金属とスズ及び/又はレニウムと、適当なら他の金属を含むこの触媒層は、触媒的に活性な物質をウォッシュコート(washcoating)することでモノリス上に形成される。このために、まず酸化物支持体材料からなる触媒支持体の層をウォッシュコートすることによりモノリス上に形成し、後の加工段階でこの層にこれらの金属を含む一種以上の異なる溶液を含浸させることもできる。
【0026】
本発明の触媒は、特にアルカンのアルケンへの脱水素化、例えばプロパンのプロペンへの、あるいはn−ブタンのブテン(1−および2−ブテン)への脱水素化や、脱水素化的芳香族化、水素の酸素での触媒燃焼に使用される。
【0027】
モノリス
適当なモノリス構造物は、金属製またはセラミック製である。これらは、小さな(0.5〜4mm)平行流路をもつ単一のブロックであることが好ましい。コーニング社またはNGK社またはデンソー社のモノリス部材の使用が好ましい。
【0028】
モノリス構造物用の最も一般的な材料は、コージェライト(マグネシアとシリカとアルミナの2:5:2比率のセラミック材料)である。市販モノリス構造物用の他の材料は、金属とムライト(比率が2:3のシリカとアルミナの複合酸化物)と炭化ケイ素である。これらの材料は、コージェライトと同様に、小さなブルナウエル・エメット・テラー(BET)比表面積をもつ(例えば、コージェライトでは、通常0.7m2/g)。本発明において低いBET表面積とは、BET表面積が<10m2/gであることである。
【0029】
本発明では、コージェライト製モノリス部材の使用が好ましい。
【0030】
入手可能なセラミックモノリスエレメントのセル密度は、25〜1600cpsi(cells per square inch、セルサイズの5〜0.6mmに相当)である。高セル密度の使用により、幾何学的な表面積が増加し、このため触媒をより効果的に使用することができる。高セル密度の欠点は、やや製造が難しいこと、ウォッシュコートが難しいこと、また反応器全体での圧力損失が大きいことである。しかしながら、モノリス流路が直線状であるため、高セル密度モノリスの圧力損失は充填床反応器と較べると非常に低い(通常、10倍低い)。
【0031】
本発明で用いるモノリスのセル密度は、好ましくは100〜1200cpsiであり、最も好ましくは300〜600cpsiである。
【0032】
セラミックモノリスエレメントは、タルクと粘土とアルミナ源成分とシリカの混合物を作り、この混合物を混合して成型可能な組成物とし、この混合物を成型し、この成型物を乾燥させ、これを1200〜1500℃の温度に加熱して低い熱膨張率をもつ主にコージェライトを含むセラミックとして製造することができる。一般的に言うと、好適なレオロジー特性と組成をもつペーストにより、押し出しでモノリス支持体を作ることができる。このペーストは、通常適当な大きさのセラミック粉と無機添加物及び/又は有機添加物、溶媒(水)、pH調整用のペプタイザー(酸)、永久バインダー(コロイド溶液またはゾル)の混合物からなる。これらの添加物は、ペースト粘度調整用の可塑剤または界面活性剤であってよく、あるいは後で燃焼により除かれる一時的なバインダーであってもよい。場合によっては、モノリスの機械的強度を上げるためにガラス繊維または炭素繊維が添加される。永久バインダーは、モノリスの構造安定性を向上させる。
【0033】
コージェライトモノリスは、タルクとカオリンとか焼カオリンとアルミナとからなり、全体として、SiO2が45〜55重量%、Al23が32〜40重量%、MgOが12〜15重量%からなる化学組成を与える混合物から生産される。タルクは、主に含水珪酸マグネシウム、Mg3Si410(OH)2からなる材料である。タルクの入手源と純度によっては、透閃石(CaMg3(SiO34)や蛇紋石(3MgO・2SiO2・2H2O)、直閃石(Mg7(OH)2(Si4112)、マグネサイト(MgCO3)、マイカ、緑泥石などの他の鉱物を含んでいることがある。
【0034】
SiCやB4C、Si34、BN、AlN、Al23、ZrO2、ムライト、Alチタネート、ZrB2、サイアロン、ペロブスカイト、炭素、TiO2などの他の材料からなるモノリスの製造に、押し出しを用いることもできる。
【0035】
押し出しにおいては、ダイの品質と成型可能な混合物を作るのに用いられる材料の種類と性質に加えて、加える添加物やpH、水分率、押出に用いる力もまた、モノリス生成物の性能に重要である。押し出しで使用される添加物としては、例えば、セルロース、CaCl2、エチレン、グリコール、ジエチレングリコール、アルコール、ワックス、パラフィン、酸、耐熱性無機繊維があげられる。水に加えて、ケトンやアルコール、エーテルなどの他の溶媒を用いてもよい。添加物の添加で、モノリスの性能が改善され、例えば熱ショックへの抵抗性を増加させる微小クラックが生成したり、細孔率や吸収性が改善されて、高い機械的強度または低い熱膨張量が得られる。
【0036】
ウォッシュコート法
本発明によれば、この裸のモノリス構造の上に、一種以上のセラミック酸化物を含む触媒支持体層が、あるいは前もってセラミック酸化物支持体材料上に担持された触媒活性金属と任意の他の(促進剤)成分を含む触媒層が塗布される。これは、ウォッシュコート法により行われる。
【0037】
セラミックモノリスのマクロポーラス構造により、ウォッシュコート層の固着が容易となる。ウォッシュコートの実施方法は、二つの方法に分けられる。マクロポーラス支持体に、高表面積のウォッシュコート材料を(部分的に)充填する方法と、ウォッシュコート剤をセラミック支持体上の細孔の内部に層状に付着させる方法である。細孔充填は、コート層のほとんどが、モノリス流路の外側表面に付着するだけでなく支持体細孔内部にも付着するため、モノリスとウォッシュコート剤間の相互作用が最も強くなる。この種の塗装は、付着させる材料の溶液(またはゾル)を用いて、あるいは非常に小さなコロイド粒子を含む溶液を用いて行われる。細孔充填による塗装の欠点は、ある段階で細孔が完全に満たされてウォッシュコート剤がそれ以上浸入しなくなるため付着可能な塗布剤の量が制限されることである。
【0038】
モノリス壁面上に触媒支持体または触媒層が塗布されることが好ましい。モノリス壁面上への塗布の長所は、大きな塗布量が可能であることと、厚い壁面への拡散が反応に影響を与えないことである。この種の塗布は、モノリス壁面内のマクロポアと同サイズの粒子の、例えばコージェライト(通常5μm)の懸濁液を塗布して行われる。スラリー塗布法の操作原理は次の通りである。モノリスを懸濁粒子含有液中に入れる。粒子が細孔内に入れず付着粒子の層を形成するため、壁面の細孔が液体を吸収し、モノリス壁面に粒子が付着する。
【0039】
ウォッシュコート溶液またはスラリーを調整し、この中に乾燥モノリスを短期間浸漬する。好ましくは、前乾燥し脱気したモノリスを、このゾルまたはスラリーに漬ける。このモノリスを液体から分離し、大部分の液体を振り落とし、残りを加圧空気で穏やかに吹き飛ばす。多くの場合、これは「エアナイフ」で、即ち加圧空気を噴出する細いスリットにより行われ、このようにして一列のすべての流路が同時に処理される。次いで、このモノリスを水平におき、重力でウォッシュコート剤の分布が不均一とならないようにその軸の周りに連続的に回転させながら乾燥させる。最後に、高温焼成工程で塗膜をモノリスに固定する。得られるウォッシュコートの量は、ほとんどの方法で通常5〜10重量%である。より大きな塗布量が必要ならこの塗布法を繰り返す。これは焼成後に行ってもよいし、モノリスを乾燥後にもう一度浸漬してもよい。
【0040】
触媒支持体層を得るために、適当なゾルでモノリスをウォッシュコートしてもよい。このゾルを加水分解で作ってもよい。ゾル形成の一方法は、適当なアルコキシドの加水分解である。金属アルコキシドの加水分解は、通常酸または塩基の存在下で加速される。ゾルの熟成の間に、重縮合プロセスが進行し、架橋とポリマー状化合物の生成が起こる。
【0041】
本発明のある実施様態においては、Alゾルを用いて、このモノリス構造物をアルミナで塗布する。上述のアルコキシドの加水分解に加えて、他のAl前駆体から、例えば擬ベーマイトAlO(OH)・xH2Oから、あるいはAlCl3の加水分解によりAlゾルを作ることもできる。
【0042】
得られるアルミナの品質を向上させるため、添加物を、例えば尿素またはヘキサメチレンテトラミンなどの有機アミンをこのゾルに加えることもできる。また、これらの添加物がゾルの安定性に影響を与えてもよい。
【0043】
必要なら、熱処理時の焼結に対して塗布したアルミナを安定化させるために、活性アルミナの不活性なα−相への変化を阻害するカチオン、例えばLa、Mg、Zr、あるはSiをゾルに加えてもよい。
【0044】
本発明の他の実施様態においては、このモノリス構造物上に、Siゾルを用いてシリカを塗布する。Siゾルは、テトラアルコキシケイ酸塩(TAOS)やテトラメトキシケイ酸塩(TMOS)、テトラエトキシケイ酸塩(TEOS)、テトラプロポキシケイ酸塩(TPOS)の加水分解で製造できる。TAOSは通常水と非混和であるため、均一なゾルを得るために、共溶媒としてアルコールが加えることが多い。
【0045】
同様に、他の酸化物も塗布可能である。複数のゾルをウォッシュコートに用いる場合、混合酸化物層がモノリス表面に形成されることがある。
【0046】
市販のコロイダルシリカ溶液、例えばルドックスASを用いて容易にシリカを塗布できる。シリカ塗膜の構造安定性を増加させるために、水ガラスを添加することができる。このシリカコロイド溶液を、ゼオライトや、他の材料、例えばチタニアやジルコニアまたは樹脂触媒の塗布用の永久バインダーとして使用することもできる。このウォッシュコートは、上述のアルミナ溶液の塗布法と同様に行うことができる。
【0047】
前酸化後に、あるいは前酸化することなく、金属製モノリスを塗布することができる。前者の場合は、得られるウォッシュコート層の接着がよくなる。
【0048】
上記の触媒支持体層または触媒層を製造するのに、ゾルに代えてスラリーを用いることもできる。これにより、一回で塗布される酸化物の量を増やすことができる。また、モノリス触媒を製造するのに、適当な触媒粉末を、ウォッシュコートに用いることができる。固体粒子の大きさを塗布に好適な一定のサイズとするために、一定時間のボールミル処理が必要となることがある。
【0049】
本発明のある好ましい実施様態においては、酸化物支持体材料の粒度を、摩砕により平均サイズで1〜40μmにまで、好ましくは5〜20μmにまで減少させる。この平均粒度は、90%の粒子を含むものと定義される。
【0050】
活性成分、通常遷移VIII族の金属は、通常適当な金属塩前駆体の形で含浸により塗布される。活性成分を、含浸に代えて他の方法で、例えば支持体上に金属塩前駆体を噴霧して塗布することもできる。好適な金属塩前駆体は、例えば相当する金属の硝酸塩や酢酸塩、塩化物である。使用金属の水酸化物または錯アニオンを使用することもできる。H2PtCl6またはPt(NO32の白金の使用が好ましい。これらの金属塩前駆体に好適な溶媒としては、水と有機溶媒の両方があげられる。特に有用な溶媒は、水と、メタノールやエタノールなどの低級アルコールである。
【0051】
アルカリ金属とアルカリ土類金属を塗布するには、焼成で相当する酸化物に変換可能な化合物の水溶液を使用することが好ましい。好適な化合物は、例えばアルカリ金属とアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩または塩基性炭酸塩である。触媒支持体が主または遷移III族の金属でドープされている場合、焼成で相当する酸化物に変換可能な水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩、ギ酸塩またはシュウ酸塩が、例えばLa(OH)3、La3(CO32、La(NO33、酢酸ランタン、ギ酸ランタンまたはシュウ酸ランタンがしばしば用いられる。
【0052】
本発明のある好ましい実施様態においては、ウォッシュコート後の活性成分の後含浸とモノリス状ハニカムの焼成を次のように行う。
【0053】
原料、即ち支持体材料と−必要なら−安定なウォッシュコート剤のためのバインダーを、適当な装置や容器等の中で混合し、水に懸濁させて攪拌するか混練する。得られるスラリーを希釈して目的の総固形分量とし、酸と塩基を用いてpH調整する。次いで、このスラリーを連続ミルを通過させて、その粒度を平均径で1〜40μmに、好ましくは5〜20μmにまで低下させる。この粒度分布は、レーザ回折によりオフラインで制御される。得られるスラリーを塗布に使用する。
【0054】
空気ダクト法では、塗布は、例えばハンドノズルを用いて手動で行われる。特定のウォッシュコート量(g/in3またはg/L)を得るために、塗布に適した総固形分量を適当な方法で決めることができる。
【0055】
部材をスラリー中に、縦方向に完全にではなく、好ましくは80〜90%まで浸漬し、(取り出した後で)向きを変えてスラリーがセル内を流れるようにする。エアーガンでスラリーを流路中に広げ過剰量のスラリーを吹き飛ばして、最終的なウォッシュコート量を決定する。目的の総ウォッシュコート量とするために、この塗布工程を繰り返してもよい。各塗布工程の後でこれらの試作品を100〜200℃で、好ましくは120〜140℃で乾燥し、400〜750℃で、好ましくは550〜650℃で焼成して、次の工程に引き渡す。
【0056】
層の厚みは、ウォッシュコート剤成分の密度とその粒度分布と計算される、目的の総塗布ウォッシュコート剤により定まる。懸濁液の流動特性によっては、ウォッシュコート剤の総量を複数の塗布工程で塗布する必要がでてくる。
【0057】
活性成分の含浸のために、代表的な試作品で吸水率を測定する。活性成分を適正な濃度で水中に溶解し、部材をこの溶液中に一定時間、通常数秒間浸漬し、過剰な量の水をエアノズルで吹き飛ばす。処方に必要な分だけ、これらの含浸工程を繰り返す。上述のように、各含浸工程の後で試作品を乾燥して焼成する。
【0058】
他の実施様態においては、活性成分が前もって支持体材料中に含浸され、及び/又は摩砕前または摩砕後に、活性成分がスラリーに添加される。総固形分量やpHの調整は、上述のように行われる。目的の総ウォッシュコート量を得るために、この塗布工程を繰り返してもよい。各塗布工程の後で、試作品を100〜200℃で、好ましくは120〜140℃で乾燥し、400〜750℃で、好ましくは550〜650℃で焼成した後、次の工程の渡すことができる。
【0059】
浸入深さ(dWC)は、ウォッシュコート量(WCL)とウォッシュコート剤密度(ρwc)とモノリスの幾何的表面積(GSA)とから決めることができる。
【0060】
【数1】

【0061】
ウォッシュコート剤密度(ρwc)は、最終のモノリス触媒の密度(ρcatalyst)と基材の密度(ρsubstrate)、及びウォッシュコート量とモノリス触媒の比重(SW:触媒の体積当りの総重量)とから決めることができる。
【0062】
【数2】

【0063】
モノリス触媒と基材の密度は、水銀密度測定により、あるいはヘリウム密度測定により決めることができる。
【0064】
モノリス上に層状に形成された脱水素化的芳香族化及び脱水素化用触媒
脱水素化的芳香族化と脱水素化に好適な触媒層を形成するには、いわゆる両性セラミック酸化物を、特にジルコニウム酸化物、チタン酸化物またはこれらの混合物を使用することができる。また、焼成でこれらの酸化物に変換可能な対応する化合物も好適である。これらは、既知の方法で、例えばゾルゲル法、塩の沈澱、相当する酸の脱水、乾燥混合、スラリー化または噴霧乾燥により製造できる。
【0065】
好適なセラミック支持体酸化物は、酸化ジルコニウムと酸化チタンのすべで誘導体である。しかしながら、X線回折で検出可能な単斜晶系ZrO2の比率が90%を超えるなら、ZrO2を基とする触媒を製造することが有利である。単斜晶系ZrO2は、特徴的に、エックス線回折図中で2θが約28.2〜31.5の範囲に二本の強いシグナルを有している。
【0066】
塩基性化合物でのドーピングは、製造中に、例えば共沈により、または次いで、例えばセラミック酸化物にアルカリ金属又はアルカリ土類金属化合物または第三遷移族の元素の化合物または希土類金属化合物を含浸させて行うことができる。
【0067】
アルカリ金属またはアルカリ土類金属、主または遷移III族の金属、希土類金属または亜鉛の含量は、一般的には多くて20重量%であり、好ましくは0.1〜15重量%、より好ましくは0.1〜10重量%である。用いるアルカリ金属とアルカリ土類金属の供給源は、一般的には焼成で相当する酸化物に変換可能な化合物である。好適な例は、アルカリ金属とアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、硝酸塩または混合ヒドロキシ炭酸塩である。
【0068】
このセラミック支持体をさらに主または遷移III族の金属でドープする場合、この場合の出発原料も、焼成で相当する酸化物に変換可能な化合物である必要がある。例えばランタンを用いる場合には、有機アニオンをもつランタン化合物が、例えば酢酸ランタン、ギ酸ランタンまたはシュウ酸ランタンが好適である。
【0069】
これらの貴金属構成成分は、異なる方法で塗布される。例えば、このセラミック触媒支持体材料またはモノリス上の触媒支持体層に、対応する貴金属化合物、またはレニウムまたはスズ化合物の溶液を含浸させてもよいし、この溶液を噴霧してもよい。これらの溶液を製造するのに好適な金属塩は、例えば、これらの貴金属化合物の硝酸塩、ハロゲン化物、ギ酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩である。錯アニオン、またはH2PtCl6などのこれら錯アニオンの酸を使用することもできる。本発明の触媒の製造に特に好適な化合物は、PdCl2やPd(OAc)2、Pd(NO32、Pt(NO32であることがわかっている。
【0070】
一種以上の成分からなる貴金属ゾルで、その活性成分が前もって完全にあるいは部分的に還元状態で存在するものを使用することもできる。
【0071】
貴金属ゾルを用いる場合、前もって従来の方法で、例えばポリビニルピロリドンなどの安定剤の存在下で金属塩または複数の金属塩の混合物を還元し、次いでそれをセラミック触媒支持体材料または触媒支持体層に含浸又は吹きつけて、これらを作ることができる。この製造方法は、ドイツ特許出願19500366.7に開示されている。
【0072】
遷移VIII族の元素と必要ならレニウムまたはスズの触媒中の含量は、例えば0.005〜5重量%であり、好ましくは0.01〜2重量%、より好ましくは0.05〜1.5重量%である。さらにレニウムまたはスズを用いる場合は、その貴金属構成成分に対する比率が、例えば0.1:1〜20:1、好ましくは1:1〜10:1である。
【0073】
用いる調整添加物(触媒の部分的被毒の一般的な概念による)は、必要なら、硫黄化合物、テルル化合物、ヒ素化合物またはセレン化合物である。触媒の運転中に一酸化炭素を添加することも可能である。硫化アンモニウム(NH42Sの形で容易に塗布できる硫黄の使用が、特に有利である。貴金属成分の調整化合物に対するモル比は、1:0〜1:10であり、好ましくは1:1〜1:0.05である。
【0074】
触媒材料のBET表面積は、一般的には多くて500m2/gであり、通常2〜300m2/g、より好ましくは5〜300m2/gである。細孔体積は、一般的には0.1〜1ml/gであり、好ましくは0.15〜0.6ml/g、より好ましくは0.2〜0.4ml/gである。Hg浸透法により求められたメソポアの平均細孔径は、一般的には8〜60nmであり、好ましくは10〜40nmである。幅が20nmを超える細孔の比率は一般的には0〜90%で変動する。マクロポア(即ち細孔の幅が20nmを超えるもの)の比率が10%を超える支持体の使用が有利であるとわかっている。
【0075】
本発明の触媒が使用可能な脱水素化的芳香族化の一例は、3,4−または2,3−ジメチルヘキセンのo−キシレンへの脱水素化的芳香族化である。
【0076】
本発明のある実施様態においては、モノリス上に触媒層を形成する触媒材料が、二頂性の細孔半径分布を示し、
a)10〜99.9重量%の二酸化ジルコニウムと
b)0〜60重量%の酸化アルミニウム、酸化ケイ素及び/又は酸化チタンと
c)0.1〜30重量%の主族IまたはIIの少なくとも一種の元素、セリウムとランタンを含む遷移III族の元素、元素周期律表の遷移VIII族の貴金属、および必要ならスズを含む。
【0077】
ただし、重量%の合計は100である。この触媒材料は、アルカンからアルケンへの脱水素化と、例えば3,4−または2,3−ジメチルヘキセンからo−キシレンへの脱水素化的芳香族化に特に好適である。
【0078】
このモノリス上に触媒層を形成する触媒材料は、好ましくは
a)10〜99.9重量%の、より好ましくは20〜98重量%、特に好ましくは30〜95重量%の二酸化ジルコニウムで、そのうち50〜100重量%が、好ましは60〜99重量%、特に好ましくは70〜98重量%が単斜晶型及び/又は正方晶型であるものと、
b)0.1〜60重量%の、好ましくは0.1〜50重量%、特に好ましくは1〜40重量%、特に5〜30重量%の酸化アルミニウム、二酸化ケイ素及び/又はルチルまたはアナターゼ型の二酸化チタンと
c)0.1〜10重量%の、好ましくは0.1〜8重量%、特に好ましくは0.1〜5重量%の
元素周期律表の主族IまたはIIと遷移族IIIとVIIIとから、また遷移族のセリウム、ランタン及び/又はスズとからから選ばれる少なくとも一種の元素を含む。(なお、重量%の合計は100)である。
【0079】
ある特に好ましい実施様態においては、成分b)が、0.1〜30重量%の、好ましくは0.5〜25重量%、特に好ましくは1〜20重量%の二酸化ケイ素からなる。
【0080】
この触媒材料は、好ましくは上述の組成からなる。
【0081】
このモノリス上に触媒層を形成する触媒材料は、70〜100%の、好ましくは75〜98%、特に好ましくは80〜95%の20nmより大きな、好ましくは40〜5000nmの細孔をもつ。
【0082】
このモノリス上に触媒層を形成する触媒材料を製造するのに、焼成で酸化物に変換可能な、(支持体を形成する)ジルコニウムやチタン、ランタン、セリウム、ケイ素、アルミニウムの酸化物の前駆体を使用してもよい。これらは既知の方法で製造可能であり、例えばゾルゲル法、塩の沈澱、相当する酸の脱水、乾燥混合、スラリー化または噴霧乾燥で製造できる。例えば、ZrO2・xAl23・xSiO2複合酸化物は、まずジルコニウム含有前駆体の沈殿により、一般式ZrO2・xH2Oの高含水の酸化ジルコニウムを製造して製造できる。好適なジルコニウム前駆体は、例えばZr(NO34、ZrOCl2またはZrCl4である。この沈澱は、NaOHやNa2CO3、NH3などの塩基の添加で行われ、例えばEP−A849224に記載されている。
【0083】
ZrO2・xSiO2複合酸化物を製造するのに、上のようにして得られたZr前駆体をSi含有前駆体と混合することもできる。好適なSiO2前駆体は、例えば、ルドックス(登録商標)などのSiO2の含水ゾルである。二つの成分は、例えば単純な機械的な混合で、あるいは噴霧塔中での噴霧乾燥で混合できる。
【0084】
複合酸化物を使うと、細孔構造を思うように変化させることができる。いろいろな前駆体の粒度が細孔構造に影響を与える。したがって、例えば強熱減量が小さく明確な粒度分布をもつAl23を使用して、ミクロ構造物中にマクロポアを形成することができる。この目的のために有用であることがわかっている酸化アルミニウムは、ピュラロックス(強熱減量が約3%であるAl23)である。
【0085】
ZrO2・xSiO2・xAl23複合酸化物を製造するのに、上述のように得られたSiO2・xZrO2混合粉末をAl含有前駆体と混合することもできる。これは、例えば混練機中での単純な機械的混合で実施できる。しかしながら、ZrOa・xSiO2・xAl23複合酸化物を、個々の前駆体の乾燥混合により単一工程で製造することもできる。
【0086】
上記触媒用の特定の細孔半径分布をもつ支持体を望むように製造するもう一つの方法は
製造中に焼成で部分的あるいは完全に除去可能ないろいろなポリマーを添加して、明確な細孔半径範囲の細孔を形成することである。ポリマーと酸化物前駆体との混合は、例えば単純な機械的な混合で、あるいは噴霧塔での噴霧乾燥で行われる。
【0087】
二頂性の細孔半径分布を持つ支持体を製造するのには、PVP(ポリビニルピロリドン)の使用が特に好ましいことがわかっている。製造工程中に元素Zr、Ti、La、Ce、AlまたはSiの一種以上の酸化物前駆体にPVPを添加すると、焼成後に200〜5000nmの範囲のマクロポアが生成する。PVPを用いるもう一つの利点は、支持体の成形が容易となることである。したがって、PVPとギ酸を添加すると、他の酸化物前駆体が存在しなくても新たに沈殿した含水ZrO2・xH2Oであらかじめ120℃で乾燥したものから機械的性質の優れた押出成型物を製造することができる。
【0088】
これらの触媒の複合酸化物支持体は、通常焼成後に、純粋なZrO2支持体より大きなBET表面積をもつ。複合酸化物支持体のBET表面積は、一般的には40〜300m2/gであり、好ましくは50〜200m2/g、特に好ましくは60〜150m2/gである。用いる本発明の触媒の細孔体積は通常0.1〜0.8ml/gであり、好ましくは0.2〜0.6ml/gである。本発明の触媒の、Hg多孔度測定で求まる平均細孔径は5〜30nmであり、好ましくは8〜25nmである。また、10〜80%の細孔体積が>40nmの細孔でできていることが好ましい。
【0089】
複合酸化物支持体の焼成は、活性成分の塗布後に行うことが好ましく、400〜750℃で、好ましくは500〜700℃、特に好ましくは550〜650℃で行われる。この焼成温度は、通常少なくとも脱水素化の反応温度と同程度に高い。
【0090】
この触媒材料は二頂性の細孔半径分布をとる。これらの細孔は、主に最大20nmの範囲であり、また40〜5000nmの範囲である。細孔体積からは、これらの細孔が細孔の少なくとも70%を占める。20nm未満の細孔の比率は通常20〜60%であり、40〜5000nmの範囲の細孔は通常、同様に20〜60%である。
【0091】
複合酸化物の塩基性化合物でのドープは、例えば共沈により、または次いで、例えば複合酸化物の、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物または遷移III族の化合物または希土類金属化合物での含浸により行うことができる。特に好適なドーパントはKとCsとLaである。
【0092】
脱水素化活性成分の、即ち遷移VIII族の貴金属の塗布は、通常、焼成で相当する金属酸化物に変換可能な適当な金属塩前駆体の含浸で行われる。含浸に代えて、他の方法で、例えば支持体上への金属塩前駆体の噴霧で、脱水素化活性成分を塗布することもできる。好適な金属塩前駆体は、例えば適当な金属の硝酸塩や酢酸塩、塩化物であり、あるいは用いる金属の錯アニオンである。白金をH2PtCl6またはPt(NO32として使用することが好ましい。これらの金属塩前駆体に使用できる溶媒は水と有機溶媒である。特に好適な溶媒は、メタノールやエタノールなどの低級アルコールである。
【0093】
貴金属を脱水素化活性成分として使用する際の他の好適な前駆体は、既知の方法の一つで、例えばPVPなどの安定剤の存在下での金属塩の還元剤での還元で製造可能な相当する貴金属ゾルである。例えばドイツ特許出願DE−A19500366で、この製造方法が包括的に取り扱われている。
【0094】
アルカリ金属前駆体とアルカリ土類金属前駆体としては、通常、焼成で相当する酸化物に変換可能な化合物が用いられる。好適な前駆体の例としては、アルカリ金属とアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩または混合ヒドロキシ炭酸塩があげられる。
【0095】
この複合酸化物支持体を、さらにあるいは完全に主III族または遷移III族の金属でドープする場合、出発原料も焼成で相当する酸化物に変換可能な化合物である必要がある。ランタンを使用する場合、好適な出発化合物は、例えば、酸化炭酸ランタンやLa(OH)3、La2(CO33、La(NO33であり、あるいは酢酸ランタンやギ酸ランタンまたはシュウ酸ランタンなどの有機アニオン含有ランタン化合物である。
【0096】
モノリス上に層状に形成される脱水素化触媒
さらに好適な脱水素化触媒材料は、一般に、セラミック支持体材料として、二酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ランタン、酸化セリウム、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる金属酸化物を含む。好ましい支持体は、二酸化ジルコニウム及び/又は二酸化ケイ素である。
特に好ましいのは、二酸化ジルコニウムと二酸化ケイ素の混合物である。
【0097】
脱水素化触媒材料の活性な組成物は、一般的には一種以上の遷移VIII族の貴金属を含み、好ましくは白金及び/又はパラジウムを、特に好ましくは白金を含む。また、この脱水素化触媒は、さらに一種以上の主族I及び/又はIIの元素、好ましくはカリウム及び/又はセシウムを含む。この脱水素化触媒は、さらに一種以上のランタニドとアクチニドを含む遷移III族の元素を含み、好ましくはランタン及び/又はセリウムを含む。最後に、この脱水素化触媒はさらにスズを含むことができ、スズを含むことが好ましい。
【0098】
ある好ましい実施様態においては、この脱水素化触媒が、少なくとも一種の遷移VIII族の元素と、少なくとも一種の主族I及び/又はIIの元素と、少なくとも一種の、ランタニドとアクチニドを含む遷移III族の元素と、スズを含む。
【0099】
モノリス上にウォッシュコート層として形成された脱水素化触媒支持体材料を製造するのに、焼成で酸化物に変換可能なジルコニウム、ケイ素、アルミニウム、チタン、マグネシウム、ランタンまたはセリウムの酸化物前駆体を使用することができる。これらは、既知の方法で、例えばゾルゲル法、塩の沈澱、相当する酸の脱水、乾燥混合、スラリー化または噴霧乾燥で製造可能である。ZrO2・SiO2複合酸化物を製造するには、前述のようにして得られるジルコニウム含有前駆体をケイ素含有前駆体と混合することができる。好ましいSiO2前駆体は、例えばルドックスTMなどのSiO2の含水ゾルやシルレス(登録商標)MSE100などのメトキシ官能化メチルポリシロキサンである。二つの成分を、例えば単純な機械的混合で混合できるし、噴霧乾燥装置内で噴霧乾燥で混合することもできる。
【0100】
本発明によりモノリス上にウォッシュコート層として形成される脱水素化触媒用のセラミック触媒支持体材料は、通常焼成後に大きなBET表面積をもつ。このBET表面積は、通常40m2/gより大きく、好ましくは50m2/gより、特に好ましくは70m2/gより大きい。本発明で用いる脱水素化触媒の細孔体積は、通常0.2〜0.6ml/gであり、好ましくは0.25〜0.5ml/gである。本発明で用いる脱水素化触媒の、Hg多孔度測定で得られる平均細孔径は、3〜30nmであり、好ましくは4〜25nmである。
【0101】
また、本発明の脱水素化触媒材料は、二頂性の細孔半径分布をもつ。細孔のサイズは、最大で20nmの範囲であり、40〜5000nmの範囲である。これらの細孔は、合わせて脱水素化触媒の総細孔体積の少なくとも70%を占める。20nmより小さな細孔の比率は、通常20〜60%の範囲であり、40〜5000nmの範囲の細孔の比率は、通常、同様に20〜60%である。
【0102】
この脱水素化活性成分、即ち遷移VIII族の貴金属は、通常適当な金属塩前駆体での含浸で塗布される。含浸に代えて、この脱水素化活性成分を、他の方法で、例えば金属塩前駆体の支持体上への噴霧により塗布することもできる。好適な金属塩前駆体は、例えば相当する金属の硝酸塩、酢酸塩、塩化物である。用いる金属の錯アニオンも可能である。白金をH2PtCl6またはPt(NO32として使用することが好ましい。金属塩前駆体用に好適な溶媒には、水と有機溶媒の両方が含まれる。特に有用な溶媒は、水と、メタノールやエタノールなどの低級アルコールである。
【0103】
アルカリ金属とアルカリ土類金属を塗布するには、焼成で相当する酸化物に変換可能な化合物の水溶液を使用することが好ましい。好適な化合物は、例えばアルカリ金属とアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩または塩基性炭酸塩である。触媒支持体が主III族または遷移III族の金属でドープされている場合、焼成で相当する酸化物に変換可能な水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩、ギ酸塩またはシュウ酸塩、例えばLa(OH)3、La3(CO32、La(NO33、酢酸ランタン、ギ酸ランタンまたはシュウ酸ランタンがしばしば使用される。
【0104】
貴金属を脱水素化活性成分として使用する場合、好適な前駆体は、さらに既知の方法で、例えばPVPなどの安定剤の存在下で還元剤を用いて金属塩を還元して製造可能な相当する貴金属ゾルを含む。この製造方法は、ドイツ特許出願DE19500366に包括的に取り扱われている。
【0105】
本発明で用いる脱水素化触媒中に脱水素化活性成分として存在する貴金属の量は、0〜5重量%であり、好ましくは0.05〜1重量%、特に好ましくは0.05〜0.5重量%である。
【0106】
この活性組成物の他の成分を、支持体の製造時に、例えば共沈で、または次いで、例えば支持体を適当な前駆化合物で含浸させて塗布することができる。用いる前駆化合物は、通常焼成で相当する酸化物に変換可能な化合物である。好適な前駆体は、例えば相当する金属の水酸化物、炭酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、塩化物または混合水酸化炭酸塩である。
【0107】
好ましい実施様態においては、この活性な組成物がさらに以下の成分を含む:
−0〜20重量%の量の、好ましくは0.1〜15重量%、特に好ましくは0.1〜10重量%の量の少なくとも一種の主族IまたはIIの元素、好ましくはセシウム及び/又はカリウム;
−0〜20重量%の量の、好ましくは0.1〜15重量%、特に好ましくは0.2〜10重量%の量の少なくとも一種のランタニドとアクチニドを含む遷移III族の元素、好ましくはランタン及び/又はセリウム;
−0〜10重量%の量のスズ。
【0108】
この脱水素化触媒はハロゲンを含まないことが好ましい。
【0109】
関係する金属塩溶液で含浸された触媒支持体の焼成は、通常400〜750℃で、好ましくは500〜700℃、特に好ましくは550〜650℃で、0.5〜6時間行われ。
【0110】
水素燃焼触媒
水素の燃焼を触媒する好ましい触媒は、周期律表の遷移族VIIIの貴金属及び/又はI族の金属及び/又はスズを含む。白金を含み、必要ならスズと組み合わせた触媒が特に好ましい。これらの触媒の支持体材料として、二酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ランタン、酸化セリウム、ゼオライト、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる金属酸化物が使用できる。好ましい金属酸化物支持体は、二酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムまたはこれらの混合物である。
【0111】
上述のように脱水素化用の熱を供給するために水素を選択的に燃焼させるのに、この水素触媒を用いてもよい。本方法の他の実施様態においては、炭化水素含有流から選択的に酸素を除くための浄化触媒として、この水素燃焼触媒を用いることもできる。
【0112】
触媒的脱水素化
脱水素化は、酸化的脱水素化または非酸化的脱水素化として行われる。非酸化的脱水素化は、自熱的に行っても非自熱的に行ってもよい。脱水素化は、等温的に行っても断熱的に行ってもよい。
【0113】
非酸化的触媒的アルカン脱水素化は、好ましくは自熱的に行われる。このために、少なくとも一つの反応ゾーン中で脱水素化用反応ガス混合物に酸素が添加混合され、反応ガス混合物中に存在する水素及び/又は炭化水素が少なくとも部分的に燃焼し、少なくとも一つの反応ゾーン中で求められる脱水素化熱の一部を反応ガス混合物中で直接発生させる。
【0114】
ある好ましい実施様態においては、本発明の触媒が、プロパンのプロペンへの脱水素化またはブタンのブテンへの脱水素化に使用される。
【0115】
酸化的方法と比較した場合の非酸化的方法の一つの特徴は、少なくとも中間的に水素が形成されることであり、これは、脱水素化生成物ガス中に水素が存在することとなって現れる。酸化的脱水素化においては、脱水素化生成物ガス中に遊離の水素は観測されない。
好適な反応器の形状は、固定床円管状反応器または管束型反応器である。これらの反応器中では、触媒(脱水素化触媒と適当なら特別な酸化触媒)が、反応管または反応管の束内に固定床として設けられる。通常、反応管の内径は約10〜15cmである。典型的な脱水素化管束型反応器は、約300〜1000本の反応管をもつ。反応管の内温は、通常300〜1200℃の範囲であり、好ましくは500〜1000℃の範囲である。フィリップスペトロリアム社のプロパンまたはブタンの脱水素化の場合、作業圧力は、低水蒸気希釈を用いる場合で、通常0.5〜8bar、多くの場合1〜2barであり、高水蒸気希釈を用いる場合(水蒸気活性化改質法(STAR法)またはリンデ法に相当)で3〜8barである。典型的な1時間当たりのガス空間速度(GHSV)は、用いる炭化水素として500〜2000h-1である。触媒の形状は、例えば球状であっても円柱状(中空または固体)であってもよい。複数の固定床円管状反応器または管束型反応器を共に運転し、そのうちの少なくとも一つを再生状態とすることもできる。
【0116】
非酸化的触媒的、自熱的脱水素化は、スナムプロゲッティ/ヤルジンテス−FBD法により、流動床中の不均一触媒下で行うこともできる。好ましくは、二つの流動床を平行して運転し、そのうちの一つを通常再生状態で使用する。作業圧力は通常1〜2barであり、脱水素化温度は通常550〜600℃である。脱水素化触媒を反応温度まで予熱して脱水素化に必要な熱を反応系に導入することもできる。酸素を含む共供給流と混合することで、この予備加熱機を除くことができ、水素及び/又は炭化水素の酸素存在下での燃焼で、必要な熱を反応器系内での直接発生させることができる。適当なら、水素を含む共供給流をさらに混合してもよい。
【0117】
この非酸化的な触媒的自熱脱水素化はトレイ反応器中で行うことが好ましい。この反応器は、一層以上の連続する触媒床をもつ。触媒床の数は1〜20であってよく、好ましくは1〜6、好ましくは1〜4、特に1〜3である。これらの触媒床中を反応ガスが放射線状にまたは軸方向に流れることが好ましい。一般にこのようなトレイ反応器は固定触媒床を用いて運転される。最も単純な場合には、これらの固定触媒床が、シャフト炉反応器中で軸方向に設置されるか、同心円状の円筒形格子の環状の隙間に設けられる。シャフト炉反応器は一つのトレイに相当する。単一のシャフト炉反応器中での脱水素化の性能は、一つの実施様態に相当する。他の好ましい実施様態においては、脱水素化が3つの触媒床をもつトレイ反応器中で行われる。
【0118】
一般に、反応ガス混合物に添加される酸素系ガスの量は、アルカン(例えばプロパン及び/又はn−ブタン)の脱水素化に必要な熱の量が、反応ガス混合物中に存在する水素と反応ガス混合物中に存在するいずれか炭化水素及び/又はコークスの形で存在する炭素の燃焼により生成するように選択される。一般に、供給される酸素の総量は、アルカンの総量に対して、0.001〜0.5mol/molであり、好ましくは0.005〜0.25mol/mol、より好ましくは0.01〜0.25mol/molである。酸素は純酸素の形で用いても、不活性ガスを含む酸素系ガスの形で用いてもよい。後処理(以下参照)での大きなアルカンとアルケンの損失を防ぐためには、用いる酸素系ガスの酸素含量が高いことが好ましく、少なくとも50体積%であり、好ましくは少なくとも80体積%、より好ましくは少なくとも90体積%であることが好ましいであろう。特に好ましい酸素系ガスは、O2含量が約99体積%の工業グレードの酸素である。また、この酸素系ガスとして空気を供給する方法も可能である。
【0119】
熱を発生させるために燃焼する水素は、触媒的アルカン脱水素化で生成する水素と水素系ガスとして反応ガス混合物に加えられるいずれかの水素である。存在する水素の量は、好ましくは酸素を供給直後の、反応ガス混合物中のH2/O2モル比が1〜10mol/molとなる、好ましくは2〜6mol/molとなる量である。多段反応器中では、このことが、いずれの酸素系ガスと水素系ガスの中間供給にも当てはまる。
【0120】
この水素は触媒的に燃焼させられる。用いる脱水素化触媒は、通常炭化水素と水素の酸素燃焼をも触媒するため、原理的にはそれ以外に特別な酸化触媒は必要としない。ある実施様態においては、炭化水素の存在下で酸素による水素の燃焼を選択的に触媒する一種以上の酸化触媒の存在下で操作が行われる。これらの炭化水素からCOとCO2と水を与える酸素での燃焼は、ほんのわずかしか進行しない。この脱水素化触媒と酸化触媒は異なる反応ゾーンに存在していることが好ましい。
【0121】
反応を一段以上の段階で行う場合は、この酸化触媒が、単一の反応ゾーンにあっても、二つ以上の、あるいはすべての反応ゾーンに存在していてもよい。
【0122】
反応器内の酸素分圧が他の点より高いところで、特に酸素系ガスの供給点の近くに、水素の酸化を選択的に触媒する触媒を設けることが好ましい。この酸素系ガス及び/又は水素系ガスを、反応器内の一箇所以上の点に供給してもよい。
【0123】
本発明の方法のある実施様態においては、トレイ反応器の各トレイの上流に、酸素系ガスと水素系ガスが中間供給される。本発明の他の実施様態においては、酸素系ガスと水素系ガスが、第一トレイ以外の各トレイの上流に供給される。ある実施様態においては、特別な酸化触媒の層が各供給点の下流に存在し、その後に脱水素化触媒の層が続いている。他の実施様態においては、特別な酸化触媒が存在しない。脱水素化温度は通常400〜1100℃である。トレイ反応器中の最後の触媒床の圧力は通常0.2〜5bar絶対であり、好ましくは1〜3bar絶対である。GHSV(1時間当りのガス空間速度)は、通常500〜2000h-1であり、高負荷運転では、最大100000h-1、好ましくは4000〜16000h-1である。
【0124】
接触脱水素化的芳香族化
脱水素化的芳香族化は、通常300〜800℃の温度で、好ましくは400〜700℃、より好ましくは450〜650℃の温度で、100mbar〜100barの圧力、好ましくは1〜30bar、より好ましくは1〜10barの圧力で、LHSV(1時間当りの液体空間速度)が0.01〜100h-1で、好ましくは0.1〜20h-1で行われる。炭化水素混合物に加えて、CO2、N2、希ガスまたは水蒸気などの希釈剤が存在していてもよい。同様に、必要なら水素を加えることもでき、その場合は、水素の炭化水素(ガス)に対する体積比が0.1〜100であり、好ましくは0.1〜20である。加える水素、あるいは脱水素化で発生し適当なら循環される水素を、反応時間が伸びるにつれて触媒表面に集積する炭素を除くのに使用してもよい。
【0125】
反応中のコークス付着を防ぐためには、ガスの連続添加に加えて、水素または空気を触媒上に通過させて触媒を再生する可能性がある。この再生自体は300〜900℃の、好ましくは400〜800℃の範囲の温度で、なんらかの酸化剤を使用し、好ましくは空気または空気−窒素混合物を使用して、及び/又は還元雰囲気下で、好ましくは水素での還元雰囲気下で行われる。この再生は、常圧と減圧と加圧のいずれで行ってもよい。好適な圧力は、例えば500mbar〜100barである。
【0126】
以下、本発明を実施例を基に説明する。
【実施例】
【0127】
実施例1〜12
本発明の脱水素化/芳香族化触媒のA法による製造
A法は、モノリス性ハニカムのウォッシュコートと焼成後に活性成分を後含浸させるものである。
【0128】
ウォッシュコート剤スラリーの製造
BASF社のジルコニア噴霧乾燥粉末D9−89をウォッシュコート剤スラリーの製造に用いる。この粉末17000gを15000の水に分散し、1200gのシルレス(登録商標)MSE100と混合する。得られる理論総固形分量が52%であるスラリーのpHは3.2〜3.8である。このスラリーを、90%の粒子が最終平均粒度として5μm±1.5μmとなるまで、約1時間連続ミル中で破砕する。このプロセス中、粒度分布は、レーザ回折法でオフラインで何度もコントロールする。最終スラリーのpHも3.2〜3.8である。得られるスラリーを塗布に用いる。
【0129】
ウォッシュコート方法
次いで、この懸濁液を適当に希釈し、総固形分量で約50%±1%となるようにセラミック基板上に塗布する。塗布は空気ダクト法を用いて行う。特定のウォッシュコート量(g/in3またはg/L)とするためには、適当な方法で塗布時の正しい総固形分量を決める必要がある。
【0130】
コーニング社の400cpsiのコージェライトモノリス部材を使用する。試料の作成のため、この部材を80〜90%までスラリーに浸漬する。取り出した後、この部材をひっくり返して、このスラリーをセル内に流れさせる。エアーガンを用いてスラリーを流路内に広げ、過剰量のスラリーを吹き飛ばして、このウォッシュコート量とする。この塗布プロセスを、最終的に上記の合計ウォッシュコート量が4.5g/in3となるまで繰り返す。各々の塗布プロセスの後で、気流の向きを何度も変えながら、試料を約120〜140℃で15分間乾燥させ、560℃で3時間焼成して、次の工程に送る。
【0131】
活性成分の含浸
二段工程で、吸水により材料前駆体の溶液から活性成分を塗布する。まず、代表的な試料の吸水率を測定し、その濃度を吸水率から計算する。
【0132】
214.9gのMEA2Pt(OH)6の17.22%MEA溶液と82gのKOHを8000gの水に溶解し、pHが約12の淡黄色の溶液を得る。塗布後の部材を、この溶液中に15秒間浸漬する。溶液から取り出した後、この部材に空気を上記の空気ノズルから穏やかに吹き付け、気流の方向を変えながら120〜140℃でさらに15分間乾燥させる。焼成は、560℃の炉または連続焼成機中で約3時間行う。
【0133】
第二の含浸溶液を製造するため、その湿式含浸でも同一の吸水率であると考え、CsNO3とSnCl2−2H2OとLa(NO33を6750gの水に溶解する。部材を浸漬し、15秒後にその溶液から取り出し、穏やかな気流で溶液を吹き飛ばす。気流の方向を変えながら、この部材を120〜140℃でさらに15分間乾燥する。焼成は、560℃の炉または連続焼成機中で約3時間行う。
【0134】
下の表1は、得られる触媒の性質の概要を示す。浸入深さ(dWC)は、ウォッシュコート量(WCL)とウォッシュコート剤密度(ρwc)とモノリスの幾何的表面積(GSA)から決められる。
【0135】
【数3】

【0136】
ウォッシュコート剤密度(ρwc)は、最終のモノリス触媒の密度(ρcatalyst)とコージェライト基材の密度(ρsubstrate)とウォッシュコート量とモノリス触媒の比重(SW:体積あたりの触媒の総重量)から決められる。
【0137】
【数4】

【0138】
モノリス触媒とコージェライト基材の密度は、水銀密度測定またはヘリウム密度測定により決められる。
【0139】
【表1】

【0140】
実施例13
B法による本発明の脱水素化/芳香族化触媒の製造
B法は、活性成分が前もって支持体材料に含浸されており、モノリス基材への塗布の前に研磨して懸濁液となっているという点で、上述のA法と少し異なる。
【0141】
ウォッシュコート剤スラリーの製造と活性成分の含浸
6220gのジルコニアD9−89に、131.4gの実施例1〜12で用いたPt塩溶液と1730gの水で希釈した23gのKOHを含浸させる。次いでこの含浸ジルコニアに、45gのSnCl2・2H2Oと35gのCsNO3と237gのLa(NO33を、13gのHCl(37%)を含む3270gの水に溶解した溶液を含浸させる。得られる懸濁液を、pH3.6で連続ミル中で約1時間、90%の粒子の最終平均粒度が10.5μm±1.5μmとなるまで磨砕する。このプロセス中、粒度分布は、レーザ回折法でオフラインで何度もコントロールする。最終的なスラリーのpHは3.6〜4である。得られるスラリーを塗布に用いる。
【0142】
溶液の塗布方法
塗布は、三段の剥離プロセスと、各塗布プロセス後の約130℃での乾燥と590℃での焼成で行う。
【0143】
下の表2は、得られる実施例の触媒の性質の概要を示す。浸入深さは、実施例1〜12に記載のように測定した。
【0144】
【表2】

【0145】
比較例1
脱水素化/芳香族化用の押出成型物触媒の製造
この触媒を、DE19937107の実施例4に記載のようにして、押出成型物として製造した。この触媒のPt負荷量は4.0g/lであった。
【0146】
試験室規模でのプロパンの脱水素化
【0147】
実施例14〜19と比較例2〜5
一般的な手法
反応器は、絶縁材料で覆われた1.4841スチール製の内部チューブと1.4541スチール製の外部圧力ケースとからなる。この反応器は、断熱法向けのものである。この圧力ケースは、内部チューブからの熱損失を補うための、加熱ベルトによる補助加熱を有している。この内部チューブの内径は20mmである。この内部チューブに触媒を充填する。断熱領域の上部で、上側1/3(触媒の上流)に、銅ジャケットの予備加熱機が設けられている。
【0148】
物質流量自動調整器(ブルックス社製)を経由して、この反応器中にガス状でプロパンと窒素と水素と空気を供給した。空気は、別途に触媒床の上流にある8cmのランスから供給した。水は、貯蔵容器からHPLCポンプによりスチールチューブ蒸発器に送られ、できる水蒸気は、熱と共に反応器に移した。
【0149】
出口ガスは、圧力調整器とフィルターを経由して10℃に冷やされた水分離器に導いた。分離器の下流で、出口ガスを、下流の圧力調整器を経由して、約1.3bar(絶対)でオンラインガスクロマトグラフ(HP5890、ジレント社製)に送り、変換率と選択性の分析と測定に供した。
【0150】
プロパンの脱水素化を行うために、反応器の断熱領域の中心に触媒を設けた。本発明の触媒は、いずれの場合も、長さが101.6mmで直径が15mmの丸いハニカムコアであった。比較用触媒の場合は、20mlの1.5mm押出成形物を入れた。触媒床の上流と下流には、不活性材料(2〜3mmのステアタイト球)を入れた。
【0151】
最初の活性化のために、450℃、3bar(絶対)で45分間水素を流して(121(STP)/h)、触媒を還元した。脱水素化の間は、予備加熱機温度を450℃に、反応圧力を1.5bar(絶対)に設定した。脱水素化は自熱的に行った。即ち脱水素化に必要な熱を供給するため水素を同時に燃焼させた。脱水素化サイクルの長さは12時間であった。
【0152】
各脱水素化サイクルの間に、コークスの燃焼と水素での還元で触媒を再生させた。コークスは、まず予備加熱機温度が450℃で、3bar(絶対)で、酸素含量が1体積%の希薄空気(窒素/空気混合物、流量:15l(STP)/h)を用いて燃焼させた。その後、空気の含量を徐々に100%にまで上げ(流量:80l(STP)/h)、温度を550℃まであげた。水素還元は、450℃、3bar(絶対)で、12l(STP)/hの水素を用いて行った。
【0153】
下の表3は、ある負荷(1時間当りのガス空間速度、GHSV)が2000l(STP)(プロパン)/l(触媒)/hでの自熱的なプロパンの脱水素化の結果を示す。供給混合ガスの組成は、41.0体積%のプロパン、41.0体積%の水、5.1体積%の水素、10.3体積%の窒素、2.6体積%の酸素であった。この数値は、フレッシュな触媒を用いた3回の脱水素化サイクルの平均値である。これより、本発明の触媒(実施例8、12、13の触媒)が、先行技術の押出成型物触媒よりかなりの大きなPtベースのプロペン空時収率をもつことがわかる。これは、A法(実施例1〜12)で生産した触媒でも、B法(例13)の触媒でも同じである。
【0154】
【表3】

【0155】
下の表4は、1000〜6000lプロパン(STP)/Icatalyst/hといろいろな負荷(GHSV)での、また供給組成が42.6体積%のプロパン、42.6体積%の水、4.2体積%の水素、8.5体積%の窒素と2.1体積%の酸素での自熱的プロパン脱水素化の結果を示す。これらの数値は、35サイクルにわたって合成した触媒の3回のサイクルの平均値である。これより、本発明の触媒(例10)が、長時間の運転といろいろな負荷の後でも先行技術の押出成型物触媒よりかなり大きなPtベースのプロペン空時収率をもつことがわかる。
【0156】
【表4】

【0157】
パイロットスケールでのプロパンの脱水素化
プロパンの脱水素化試験は、触媒の種類の異なる約90cm長の三つの触媒床をもつ断熱型ステンレス製反応器(スチール1.4841、内径36mm、長さ4m)中で行った。触媒床の温度は、触媒床の中央を通過する二個の14点熱素子(内径6mm)で、一つは上から、もう一つは底から測定した。反応は、プロパンと水素と水蒸気と純粋なO2の混合物からなる。O2と水蒸気は、混合物として3つの異なる供給点から各触媒の前に供給された。供給点の触媒床からの距離は変動するが、通常55〜150mmである。また、他成分の供給量を一定に保ちながら、O2の流量を脱水素化サイクルの進行と共にゆっくりと増加させた。反応器に入る前に、水素とプロパンの混合物を、520℃、525℃、530℃、580℃の別々の予備加熱機を通過させて加熱した。
【0158】
押出成型物の形の触媒で試験をする場合、比較例1の3mmの押出成型物触媒を用いた。モノリス触媒で試験をする場合は、実施例11の触媒を用いた。合計で6個のモノリス(34mm径×15cm長)を充填して、触媒床を形成した。各モノリスの中心に、軸方向に熱素子の入る6mm穴を設けた。流れのバイパスを避けるため、モノリスの上下の周囲はガラス繊維でシールした。いずれの場合も、二つの触媒床の間にはステアタイトの層を充填した。
【0159】
交互に脱水素化と再生サイクルを繰り返しながら(約10時間ごと)、活性の試験を連続的に実施した。各脱水素化サイクルの後で反応器をN2でフラッシュした。再生プロセスは、4.5barで希薄空気混合物で240分間で処理し、次いで純空気で8時間処理した。再生サイクルの終わりには、合計で6回の加圧減圧サイクル(0.5と4barで交互に、各10分間)を実施し、表面に残留している微量のコークスを除いた。反応器をN2でフラッシュした後、希薄H2で30分間で開始し、純H2で30分間500℃で処理して触媒を還元した。次いで、次の脱水素化サイクルのために、反応供給流を反応器に導入した。
【0160】
各サイクルでの変換率と選択性は、そのサイクルの平均値である。空間速度は、プロパン供給量/触媒体積で定義される。なお、この触媒体積は、ボイド体積も含む触媒の占める床の体積で定義される。
【0161】
実施例20
全重量が1448g(2.30l)の合計で18個の実施例のモノリスを、3つの床に均等に分配した。各床は6個のモノリスからなり、そのPt含量は2.0g−Pt/L−反応器体積であった。6360g/hのプロパン(GHSVc3=1400lc3/Ucat/h)と75g/hのH2を、それぞれの供給点から、O2とH2O(水蒸気)と混合して反応器中に導入した。水蒸気は、各々の供給点から1000g/hの速度で供給し、O2速度は、以下の表5に記載の順序でサイクル中変化させた。
【0162】
【表5】

【0163】
サイクル中の平均のプロパン変換率とプロピレン選択性は、それぞれ35%と95%であり、空間時刻収率は420kgpropylene/kgPt/hであった。
【0164】
実施例21
すべての条件は実施例20と同じであるが、プロパンの供給速度は8600g/hで、O2供給速度は、以下の表6に記載のとおりである。
【0165】
【表6】

【0166】
サイクル中の平均プロパン変換率とプロピレン選択性はそれぞれ28%と95%であり、空間時刻収率は446kg(プロペン)/kg(Pt)/hであった。
【0167】
比較例6
合計で3.27kg(2.49l)の3mm押出成型物を3つの床に均等に分配した。各床は、1090g(830ml)の触媒からなる。Pt負荷量は4.0g−Pt/L−反応器体積であった。6360g/hのプロパン(GHSVC3=1300Lc3/Lcat/h)と75g/hのH2を、それぞれの供給点から、供給されるO2とH2Oと混合しながら反応器に供給した。水蒸気は、各供給点から1000g/hの速度で供給し、O2の速度は、以下の表7に記載の順序でサイクル中変化させた。
【0168】
【表7】

【0169】
サイクル中の平均のプロパン変換率とプロピレン選択性はそれぞれ35%と95%であり、空間時刻収率は210kg(プロピレン)/kg(Pt)/hであった。
【0170】
比較例7
すべての条件は比較例7と同じであるが、プロパンの供給速度は8600g/hで、O2供給速度は以下の表8に記載のとおりである。
【0171】
【表8】

【0172】
サイクル中の平均プロパン変換率とプロピレン選択性はそれぞれ29%と96%であり、空間時刻収率は242kg(プロピレン)/kg(Pt)/hであった。
【0173】
試験室スケールでのn−ブタンの脱水素化
【0174】
実施例22と比較例8
n−ブタンの脱水素化は、電気加熱した円管状反応器(1.4841スチール、内径18mm)で実施した。n−ブタンと窒素と水素と空気を、物質流量自動調整器によりガス状で反応器に供給した。空気は、別途に触媒床の10cm上流にあるランスから添加した。水は、貯蔵容器からHPLCポンプでスチールチューブ蒸発器に送り、できた水蒸気を反応器に導いた。
【0175】
出口ガスを圧力調整器を経由して10℃に冷却した水分離器に導いた。分離器の下流で、この出口ガスをオンラインガスクロマトグラフ(バリアンからのμGC)に通し、変換率と選択性の分析と測定を行った。
【0176】
n−ブタンの脱水素化を行うために、反応器の等温領域の中央に触媒を設けた。本発明の触媒の場合、長さが101.6mmで直径が15mmの丸いハニカムコアを設置した。比較用触媒の場合は、20mlの1.5mmの押出成型物を設置した。触媒床の上流と下流には、不活性材料(2−3mmステアタイト球)を設けた。
【0177】
最初の活性化のために、10l(STP)/hの水素で、500℃、2.5bar(絶対)で30分間、触媒を還元した。脱水素化の間、反応器の炉温度は570℃に設定した。反応圧力は1.5bar(絶対)であった。脱水素化サイクルの長さは12時間であった。脱水素化は、500l(STP)(n−ブタン)/l(触媒)/hの負荷(1時間当りのガス空間速度、GHSV)で、以下の供給混合ガス組成:41.4体積%のn−ブタン、16.6体積%の水、18.6体積%の水素、18.7体積%の窒素、4.7体積%の酸素で行った。
【0178】
サイクルの間に、コークスの燃焼と2.5bar(絶対)の水素での還元により触媒を再生させた。コークスは、まず酸素含量が4体積%の希薄空気(窒素/空気混合物、気流5l(STP)/h)を用いて、炉温度を400℃として燃焼した。その後、空気含量を徐々に100%にまで増やし(気流33l(STP)/h)、温度を500℃まで上げた。30分間の還元中、温度は500℃であり、水素流量は10l(STP)/hであった。
【0179】
下の表9は、少なくとも20サイクルで形成した触媒の三サイクルの平均値を示す。ブタンの脱水素化の場合も、実施例8の本発明の触媒は類似の変換率と類似の選択性をもち、先行技術の押出成型物触媒よりかなりの大きな白金ベースの空時収率を有することがわかる。
【0180】
【表9】

【0181】
実施例23
パイロットスケールでのn−ブタンの脱水素化
反応器は、絶縁材料で覆われた1.4841スチールのスチール製内部チューブと1.4541スチール製の外部圧力ケースとからなる。この反応器は、断熱法向けに設計されたものである。この圧力ケースは、内部チューブからの熱損失を補うための、加熱ベルトによる補助加熱を有している。この内部チューブの内径は52.5mmで、長さは2.25mである。この内部チューブに触媒を充填する。断熱式の反応器の上流に、加熱用枠で加熱されたスチール製予備加熱機がある。
【0182】
n−ブタンと窒素と水素と酸素と空気を、ガス状で物質流量自動調整器を通して反応器に供給した。脱水素化のための酸素は、別途に触媒床の25cm上流にあるランスから添加した。同様に、水は液体状で物質流量自動調整器を経由してスチール製チューブ蒸発器に送り、できた水蒸気を加熱状態で反応器に導いた。
【0183】
出口ガスは、圧力調整器とフィルターを経由して10℃に冷却された水分離器に導いた。分離器の下流で、出口ガスをオンラインガスクロマトグラフ(HP5890、アジレント社製)に通過させ、変換率と選択性の分析と測定を行った。
【0184】
n−ブタンの脱水素化を行うために、反応器の断熱領域にある、相互に不活性のステアタイト床(リング、高さ×外径×内径=5×3×2mm)で分離された3つの触媒床に触媒を入れた。投入した触媒の総体積は1lであった。これを同体積の3つの触媒床に分配した。本発明の触媒の場合、直径が5cmで適当な長さのハニカムコアを投入した。比較用触媒の場合は、3.0mmの押出成型物を用いた。
【0185】
まず活性化のために、500℃、2.5bar(絶対)で45分間、200l(STP)/hの流量の水素で触媒を還元した。脱水素化中は、予備加熱機の温度を450℃に設定し、反応圧力は2.25bar(絶対)であった。脱水素化は自熱的に、即ち必要な脱水素化熱を供給するため水素を同時に燃焼させながら行った。この脱水素化サイクルの長さは12時間であった。
【0186】
脱水素化は、650l(STP)(n−ブタン)/I(触媒)/h(1.7kg/hのn−ブタン)の負荷(1時間当りのガス空間速度、GHSV)で、以下の供給混合ガス組成:35体積%のn−ブタン、41体積%の水、16体積%の水素、2.7体積%の窒素、5.3体積%の酸素で行った。酸素は、触媒床の上流で分割して、即ち、流れ方向で第一の床の40%上流、第二の床の35%上流、第三の床の25%上流から供給した。脱水素化の間、予備加熱機温度は470℃に設定した。脱水素化サイクルの長さが12時間の場合には、反応圧力は1.5bar(絶対)であった。
【0187】
脱水素化サイクルの間に、コークスの燃焼と続く水素での還元で触媒を再生させた。コークスはまず、予備加熱機温度が450℃、4.8bar(絶対)で、酸素含量が1体積%の希薄空気(窒素/空気混合物、気流250l(STP)/h)で燃焼させた。その後、空気含量を徐々に100%にまで増やし(気流1500l(STP)/h)、温度を500℃まで上げた。水素還元は500℃、2.5bar(絶対)で、200l(STP)/hの水素を用いて行った。
【0188】
下の表10は、得られた触媒の三サイクルの平均値である。パイロットスケールでのブタンの脱水素化でも、本発明の触媒(PDR7927)は、類似の変換率と類似の選択性をもち、先行技術の押出成型物触媒よりかなりの大きな白金ベースの空時収率を有することがわかる。
【0189】
【表10】

【0190】
実施例24と25
脱水素化的芳香族化は、電気加熱した円管状反応器(1.4841スチール、内径21mm)中で行った。20mlの比較例1の押出成型物触媒、または12mlの実施例1の触媒を反応器に入れ、水素で400℃で1時間活性化させた。反応器の投入したのは、水素と水と約95重量%のo−キシレン前駆体、主に3,4−及び2,3−ジメチル−2−ヘキセン(短縮して「DMH」と呼ぶ)を含むC8画分である。物質流量自動調整器を経由して、水素をガス状で反応器中に投入した。水とC8画分は、貯蔵容器からHPLCポンプでスチール製チューブ蒸発器に輸送し、できる混合ガスを加熱状態で反応器に導いた。脱水素化的芳香族化は、炉温度が400℃、1bar(絶対)、14g/hの有機成分、H2O/DMH比が16/1mol/mol、H2/DMH比が3/1mol/molで行った。下の表11は、運転時間4時間での芳香族化の平均結果を示す。o−キシレンへの芳香族化でも、本発明の触媒(PDR6936)は、類似の変換率をもち、先行技術の押出成型物触媒よりかなりの大きな白金ベースの空時収率を有することがわかる。
【0191】
【表11】

【0192】
実施例25
炭化水素の存在下で水素を酸素で選択的に燃焼させる触媒の製造

α−Al23支持体上のPt/Snの初期湿潤含浸法
2〜4mmのアクセンス社のα−酸化アルミニウム球(アルミナスフェラライト512)を支持体材料として使用した。含浸方法は次のとおりである。
i 含浸させるアルミナ材料の初期の湿潤度を決めるために、
a) 10gの上記アルミナ支持体材料をプラスチックバイアルに入れた。
b)支持体の総重量の10%の量の脱イオン水(DI水)を添加した。
c)水と支持体を共に混合した。初期の湿潤度に達したとき、支持体材料が凝集した。
d)この10gのアルミナ試料に、合計で4gの水を添加した。この支持体に対して加えた水の重量%は、40重量%であった。
ii 望ましいPtレベルを得るのに必要な硝酸Pt溶液の量を決めた。50gのアルミナ支持体材料に対して、濃度が13.46%硝酸Ptである硝酸Pt溶液0.52gを希釈して20mlの溶液として、添加した。
iii この液体を乾燥粉末中に注いだ。これら二成分を、混合物が均一となるまで混合した。
iv この混合物を75℃で16時間乾燥した。
v SnCl2・2H2Oの所望必要量を計算し、DI水に溶解した。50gのアルミナ支持体材料に対して、0.046gの塩化スズ固体を20mlの水に溶解して添加した。
vi この混合物を75℃で16時間乾燥した。
vii 焼成を540℃で2時間行った。
【0193】
モノリス基材上にPt/Snフリットを塗布するためのウォッシュコート手法
このウォッシュコート手法は次のとおりである。
i フリットの摩砕または粒度の低減
a)アルミナ支持体に担持されたPt/SnとDI水とを用いて35%固体含量のスラリーを調整した。
b)このスラリーをミニセラミックボールミルに入れた。
c)このボールミルをUSストーンウェアローラー上に乗せ、
速度コントローラを約107rpmに設定した。
d)90%の粒子が10μmより小さくなるまで約9時間摩砕を行った。
ii このスラリーを保管容器に入れた。
iii ブランク基材であるコーニング社の400cpsi/6.5milブロック一個より、複数のコアを切り出した。このコアの直径は16mmで、長さは100mmであった。総体積は324mlであった。
iv 上記スラリーを均一となるまで混合した。次いで、このジャーの内容物を、コアより径が少し大きな円筒中に移した。このコアをスラリーに浸漬し、約5秒間に取り出した。過剰のスラリーをコアから振り除き、空気で吹き飛ばしてその流路中の滞留物を除いた。
v この混合物を75〜90℃で16時間乾燥した。
vi 乾燥後のウォッシュコート剤の量が0.16〜0.17g/mlとなるまで工程ivとvを繰り返した。
vii 540℃で2時間焼成した
viii コアの温度が150℃より高い時に、コアの質量を測定した。熱コアを秤量し、正確なウォッシュコート量を決定した。コアが冷却すると水を吸うため、ウォッシュコート量が不正確となる。
【0194】
得られた触媒の特徴を下の表12に示す。浸入深さは、実施例1〜12に記載のようにして測定した。
【0195】
【表12】

【0196】
比較例9
水素での選択的O2燃焼用のバルク触媒の製造
この触媒を、WO2005097715の実施例Aにより製造した。
【0197】
実施例26と比較例10
試験室スケールでの水素を用いる触媒的燃焼での酸素除去
選択的な触媒的O2燃焼を、電気加熱した円管状の反応器(1.4841スチール、内径18mm)で実施した。n−ブタンと1,3−ブタジエンと窒素と水素と空気とを、物質流量自動調整器(ブロンクホースト社)を経由してガス状で反応器に投入した。水は、貯蔵容器からHPLCポンプでスチールチューブ蒸発器に送り、得られる水蒸気を反応器に導いた。
【0198】
出口ガスを圧力調整器を経由して10℃に冷却した水分離器に導いた。分離器の下流で、この出口ガスをオンラインガスクロマトグラフ(μGC、バリアン社)に通過させ、変換率と選択性の分析と測定を行った。
【0199】
2除去を行うため、この触媒を反応器の等温領域の中央に置いた。本発明の触媒の場合、長さが101.6mmで直径が15mmの丸いハニカムコアを入れた。比較用触媒の場合は、20mlの1.5mm押出成型物を入れた。触媒床の上流と下流には、不活性材料(2〜3mmのステアタイト球)を設けた。
【0200】
2燃焼の間、反応器の炉温度を300℃に設定した。反応圧力は1.5bar(絶対)であった。このO2燃焼は、20l(STP)c4/hのC4供給流で、以下の供給混合ガス組成:.6体積%のn−ブタン、9.8%の1,3−ブタジエン、23.5体積%の水、6.2体積%の水素、47.0体積%の窒素、1.9体積%の酸素で行った。
【0201】
下の表13に、運転2日間後の触媒的酸素除去の結果を示す。この水素での選択的O2燃焼において、本発明の触媒が、かなり高いPtベースの酸素負荷(WHSV、1時間当りの重量空間速度)で、先行技術のバルク触媒と同等のO2変換率をもつことがわかった。
【0202】
【表13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
低いBET表面積を有すると共に触媒的に不活性な材料からなるモノリスとこのモノリスに施された触媒層を含み、且つ酸化物支持体材料上に、元素周期律表のVIII族の貴金属からなる群から選ばれる少なくとも一種の貴金属と、任意にスズ及び/又はレニウムと、任意に他の金属とを含む触媒であって、
前記触媒層の厚さが5〜500マイクロメータであることを特徴とする触媒。
【請求項2】
前記触媒層が白金を含む請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記触媒層がスズを含む請求項1または2に記載の触媒。
【請求項4】
前記触媒層が、ランタニドを含む元素周期律表の第三遷移族の金属を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項5】
前記触媒層がランタンを含む請求項4に記載の触媒。
【請求項6】
前記触媒層がアルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項7】
前記触媒層が、カリウムとセシウムから選ばれるアルカリ金属を含む請求項6に記載の触媒。
【請求項8】
前記酸化物支持体材料が、第二、第三及び第四主族の金属の酸化物並びに第三及び第四遷移族の金属の酸化物から選ばれる請求項1〜7のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項9】
前記酸化物支持体材料が、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ケイ素、チタン及びジルコニウムの酸化物から選ばれる請求項8に記載の触媒。
【請求項10】
前記酸化物支持体材料が二酸化ケイ素と二酸化ジルコニウムを含む請求項9に記載の触媒。
【請求項11】
コージェライトのモノリスを含む請求項1〜10のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項12】
アルカンをアルケンへと脱水素化するための請求項1〜11の何れか一項に記載の触媒の使用方法。
【請求項13】
プロパンをプロペンへと、又はn−ブタンをブテンへと脱水素化するための請求項12に記載の触媒の使用方法。
【請求項14】
脱水素化的芳香族化のための請求項1〜11の何れか一項に記載の触媒の使用方法。
【請求項15】
酸素での水素の触媒燃焼のための請求項1〜11の何れか1項に記載の触媒の使用方法。

【公表番号】特表2012−527339(P2012−527339A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511252(P2012−511252)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056769
【国際公開番号】WO2010/133565
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】