説明

モノリス触媒の触媒活性を改善する方法

本発明は、構造化されたモノリスの形で存在し、かつコバルト、ニッケル及び銅から成るグループから選択される1つ以上の元素を有する触媒の触媒特性を改善するための方法に関し、該方法は、前記触媒をアルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属のグループから選択される1つ以上の塩基性化合物と接触させることにより行われる。更に本発明は、コバルト、ニッケル及び銅から成るグループから選択される1つ以上の元素を有する触媒の存在で、少なくとも1つの不飽和炭素−炭素結合、炭素−窒素結合又は炭素−酸素結合を有する化合物を水素化する方法に関し、その際に、前記触媒は構造化された形で存在し、該方法は、前記触媒をアルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属のグループから選択される1つ以上の塩基性化合物と接触させることを特徴とする。更に、本発明は銅及び/又はコバルト及び/又はニッケルを有し、構造化されたモノリスの形で存在する触媒の触媒特性を改善するための、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属のグループから選択される1つ以上の塩基性化合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造化されたモノリスの形で存在し、かつコバルト、ニッケル及び銅から成るグループから選択される1つ以上の元素を有する触媒の触媒特性を改善する方法に関し、該方法は、前記触媒をアルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属のグループから選択される1つ以上の塩基化合物と接触させることにより行われる。更に本発明は、コバルト、ニッケル及び銅から成るグループから選択される1つ以上の元素を有する、構造化されたモノリスの形で存在する触媒の存在で、少なくとも1つの不飽和炭素−炭素−結合、炭素−窒素−結合、又は炭素−酸素−結合を有する化合物を水素化する方法に関し、前記触媒をアルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属のグループから選択される1つ以上の塩基化合物と接触することを特徴とする。更に、本発明は、銅及び/又はコバルト及び/又はニッケルを有し、構造化されたモノリスの形で存在する触媒の触媒特性を改善するための、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属のグループから選択される1つ以上の塩基化合物の使用に関する。
【0002】
ニトリルの水素化によるアミンの製造は、通常は元素Cu、Ni及びCoを有する触媒の存在で行われる。水素化の際に、頻繁な副反応として第二級アミンの形成が生じる。
【0003】
この副反応の発生は、水素化をアンモニアの存在で実施する場合に減少させることができる(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第6版、第2巻、385頁参照)。しかし、第二級アミンの形成を効率的に減少させるためには大量のアンモニアが必要である。アンモニアの取り扱いは、更に工業的に高価である。それというのも、高圧で貯蔵、取り扱い及び反応を行わなくてはならないからである。
【0004】
US 2449036には、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物のような強塩基の存在で水素化を実施する場合には、活性化されたニッケル触媒又はコバルトスポンジ触媒の使用により第二級アミンの形成が、アンモニアの不在でも効果的に抑えられていることが開示されている。
【0005】
WO92/21650には、ラネー触媒での水素化における、アルカリ金属−アルコレート及びアルカリ金属−カーボネートのような更なる塩基の使用が記載されている。EP-A1-913388には、水及び、触媒量のLiOHで処理された担持ラネー−コバルト−触媒の存在で運転した場合には、ニトリル水素化において第一級アミンの良好な選択率及び収率が達成されることが教示されている。
【0006】
例えば、スケルタル触媒又はアルカリ性促進剤、例えばリチウムの場合には、例えばアルミニウムのような金属が触媒から溶解するのを最小化するために、WO 2007/104663には、混合酸化物触媒、特にアルカリ金属原子が結晶格子内に組み込まれているLiCoO2が記載されている。
【0007】
前記の方法の場合には、触媒は通常、非担持触媒として使用される。すなわち、触媒は殆ど完全に触媒活性材料から成る。前記の従来技術では、水素化の実施は一般に、懸濁液中で行われる。これは反応終了後に、触媒を濾過により反応混合物から除去しなくてはならないことを意味する。
【0008】
WO2007/028411には、ラネータイプの担持触媒の製造に関する概要が挙げられている。この場合に、この触媒は幾つかの欠点を有している。特に、その僅かな機械耐性、比較的に僅かな活性及び費用のかかる製造である。WO 2007/028411の開示によれば、改善された特性を有する担持ラネー触媒は、担体材料をニッケル/アルミニウム合金、コバルト/アルミニウム合金又は銅/アルミニウム合金で被覆することにより達成される。このように製造された触媒は、アルミニウムの全体又は一部を塩基で溶解することにより活性される。
【0009】
ニトリル水素化に適切であるべき担持触媒を製造するためのもう1つの手法は、WO 2006/079850に記載されている。この触媒は、構造化されたモノリス上に金属を塗布することにより得られ、その際に、塗布は、金属がアミン錯体として存在する溶液でモノリスを含浸することにより行われる。開示内容によれば、このように製造された触媒は、一連の化学反応、特にニトリルの水素化にも適切であることが挙げられている。ニトリルの水素化に関しては、WO 2006/079850は実施可能な開示ではない。それというのも、この反応タイプに関する詳細、取り扱い指示又は試験が引用されていないからである。
【0010】
本発明により、構造化されたモノリスの形で存在する触媒の触媒特性は改善されるべきである。特に、高い収率と選択率で目的生成物を得るために、不所望な副反応の形成、特にニトリルからの第二級アミンの形成は減少させるべきであった。更に、触媒の運転時間は改善されるのがよく、かつ運転時間の増大に伴う選択率と活性の損失は減らすべきであった。もう1つの目的は消費された触媒の触媒特性を再び製造することにある。
【0011】
従って、コバルト、ニッケル及び銅から成るグループから選択される1つ以上の元素を有し、構造化されたモノリスの形で存在する触媒の触媒特性を改善する方法が見出され、前記方法は触媒を、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属のグループから選択される1つ以上の塩基化合物で接触させることを特徴とする。
【0012】
本発明による方法で使用される触媒は、コバルト、ニッケル及び銅から成るグループから選択される1つ以上の元素を有する。有利には、触媒はコバルト又はニッケルを有し、かつ有利な実施態様では触媒はコバルトを有する。
【0013】
特に有利な実施態様では、本発明による触媒は、更にアルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属のグループから選択される1つ以上の元素を有する。
【0014】
本発明の範囲内では、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属の1つ以上の元素の存在で、触媒特性ならびに機械特性の更なる改善がもたらされることが見出された。アルカリ金属のグループの有利な元素は、Li、Na、K、Rb及びCsであり、特に有利には、Li、Na、K及びCs、とりわけLi、Na及びKである。アルカリ土類金属のグループの有利な元素は、Be、Mg、Ca、Sr及びバリウム、特に有利にはMg及びCaである。
【0015】
希土類金属の有利な元素は、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuであり、特に有利にはSc、Y、La及びCeである。
【0016】
触媒がNiを有する場合には、特に有利な実施態様では、該触媒は、アルカリ金属としてNaを有する。更に有利な組合せは、NiとLi、NiとKならびにNiとCsである。
【0017】
触媒がCoを有する場合には、特に有利な実施態様では、該触媒はアルカリ金属としてLiを有する。更に有利な組合せは、CoとNa、CoとKならびにCoとCsである。
【0018】
触媒は、場合により1つ以上のドーピング元素を有する。ドーピング元素は、有利には元素の周期系の第3〜第8亜族の元素ならびに第3、4及び5主族から選択される。有利なドーピング元素は、Fe、Ni、Cr、Mo、Mn、P、Ti、Nb、V、Cu、Ag、Pd、Pt、Rh、Ir、Ru及びAuである。
【0019】
触媒中での、Cu、Co及びNi−原子:アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属の元素の原子のモル比は、有利には0.1:1〜10000:1、有利には0.5:1〜1000:1であり、とりわけ有利には0.5:1〜500:1である。
【0020】
特に有利な実施態様では、触媒中での、Cu、Co及びNi−原子:アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属の元素の原子のモル比は、300未満:1、有利には100未満:1、特に有利には50未満:1、とりわけ有利には25未満:1であるのが有利である。
【0021】
Co、Cu及びNi−原子:ドーピング元素のモル比は、有利には10:1〜100000:1、有利には20:1〜10000:1及び特に有利には50:1〜1000:1である。
【0022】
以下に、"触媒活性成分"という用語は、元素Cu、Co、Ni、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属の元素ならびに前記のドーピング元素、すなわち元素の周期系の3〜8亜族ならびに3、4及び5主族に使用される。
【0023】
活性材料の成分の原子のモル比は、互いに元素分析の公知の方法で、例えば、原子吸光分析法(AAS)、原子発光スペクトルメトリー(AES)、X線蛍光分析(RFA)又はICP-OES(誘導結合プラズマ発光分析法)により測定できる。しかし、活性材料の成分の原子のモル比は、互いに計算により決定することもできる。例えば、活性材料の成分を含有する使用化合物の重さを決定し、かつ活性材料の成分の原子の割合を、使用化合物の公知の化学量論に基づいて決定し、その結果、使用化合物の重さと化学量論式からの原子比を計算することができる。当然ながら、使用化合物の化学量論式は、実験により、例えば、前記の方法の1つ以上により決定することができる。
【0024】
本発明による触媒は、構造化されたモノリスの形で存在する。"構造化されたモノリス"という用語は、多数の透過する(又は互いに結合した)チャネルを有する成形品に成形され、そのチャネルにより、出発物質及び生成物が流れ/対流により輸送される成形品を意味すると解釈される。
【0025】
従って本発明の範囲内では、"構造化されたモノリス"という用語は、互いにラジアルに連結していない平行のチャネルを有する"通常の"成形品だけを意味するのではなく、フォーム、スポンジの形の成形品又は成形品の中に三次元の連結を有するようなものを意味すると解釈される。"モノリス"という用語には、クロスフローチャネルを有する成形品も含まれる。"セルデンシティー"又は"平方インチ当たりのセル数;cells per square inch(cspi)"とも称される平方インチ当たりの構造化されたモノリス内のチャネルの数は、有利には5〜2000cpsi、特に有利には25〜1000cpsi、更に有利には250〜900cpsi及び極めて有利には400〜900cpsiである。
【0026】
本発明の触媒は、触媒活性成分又は触媒活性成分の化合物を、触媒骨格材料と混合し、かつこれらを構造化されたモノリスに成形することにより、構造化されたモノリスの形にすることができる。製造は、例えば、EP-A2-1147813に記載されている製造法と同様に、触媒活性成分と触媒骨格材料、及び場合により更なる添加剤、例えば、結合剤及び脱泡助剤を混合し、かつこれらを相応の成形押出しダイを用いてハニカムに押し出し成形することにより行うことができる。
【0027】
本発明による触媒は、有利には触媒活性成分もしくは触媒活性成分の化合物を、触媒骨格材料上に塗布することにより製造され、その際に、触媒骨格材料は、既に構造化されたモノリスの形で存在する。本発明の範囲内では、構造化されたモノリスの形で存在する触媒骨格材料は、モノリス触媒担体とも称される。モノリス触媒担体を製造する方法は公知であり、かつNiijhuis 等の出版で、Catalysis Reviews 43(4) (2001)、345〜380頁 に詳細に記載されており、その内容を本明細書に取り入れることとする。
【0028】
触媒担体材料として含有される構造化モノリスは、通常は、セラミック、金属又は炭素である。有利な触媒骨格材料は、セラミック材料、例えば、酸化アルミニウム、特にガンマ−又はδ−酸化アルミニウム、α−酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、珪藻土、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、二酸化セリウム、酸化マグネシウムならびにそれらの混合物である。
【0029】
特に有利な触媒骨格材料は、セラミック材料、例えば、カオリナイト及びムライトであり、これらは約2:3の比のSiO2とAl2O3の酸化物の混合物であり、ならびに酸化ベリリウム、炭化ケイ素、窒化ホウ素又は炭化ホウ素である。
【0030】
特に有利な実施態様では、触媒骨格材料はコージライトである。コージライト材料及びそれをベースとする変異形は、ケイ酸マグネシウムアルミニウムであり、これは石けん石又はタルクを、クレー、カオリン、シャモット、コランダム及びムライトを添加しながら浸す際に直接に生じる。純粋なセラミックコージライトの簡素化した近似値及び組成物は、MgO約14%、Al2O335%及びSiO251%である(情報源:www.keramikverbund.de)。
【0031】
構造化されたモノリスもしくはモノリス触媒担体は、それぞれ任意の大きさを有することができる。
【0032】
モノリス触媒の大きさは、1cm〜10mの間、有利には10cm〜5mの間、とりわけ有利には20cm〜100cmの間であるのが有利である。構造化されたモノリスは、個々のモノリスからモジュラーを構成することもでき、その際に、小さなモノリスベース構造体は、まとまって(例えば、結合して)大きなユニットになる。
【0033】
モノリス触媒担体は、例えば、Corning社からCorning Celcor(登録商標)の商標名で、かつNGK Insulators Ltd社からHoney Ceram(登録商標)の商品名で市販されている。
【0034】
有利な実施態様では、触媒活性成分はモノリス触媒担体に塗布される。
【0035】
モノリス触媒担体上への触媒活性成分の塗布は、例えば、含浸又は被覆により行うことができる。
【0036】
モノリス担体の含浸(また"浸潤")は、慣用の方法により、例えば、触媒活性成分の可溶性化合物を、1つ以上の含浸工程で塗布することにより行うことができる。
【0037】
触媒活性成分の可溶性化合物として、通常は、例えば、触媒活性成分の可溶性金属塩、例えば、水酸化物、スルフェート、カーボネート、オキサレート、ニトレート、アセテート又は塩化物が該当する。含浸は、相応の元素の他の適切な可溶性化合物を用いて行うこともできる。
【0038】
元素Cu、Co及び/又はNiは、有利には、それらの可溶性カーボネート、塩化物又はニトレートの形で使用される。しかし、Cu、Ni又はCoの可溶性アミン錯体を使用することもでき、これらは例えば、WO 2006/079850に記載されている。
【0039】
アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属の元素は、有利には、それらの可溶性水酸化物、有利には、LiOH、KOH、NaOH、CsOH、Ca(OH)2又はMg(OH)2の形で使用される。
【0040】
含浸は、通常は、触媒活性元素の可溶性化合物が溶解した液体の中で行われる。液体として、有利には、水、ニトリル、アミン、エーテル、例えば、テトラヒドロフラン又はジオキサン、アミド、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド又はN,N−ジメチルアセトアミドが使用される。水が液体として特に有利に使用される。
【0041】
ニトリルを液体として使用する場合には、本発明による触媒と後で水素化されるニトリルを使用するのが有利である。アミンとして、次に続く水素化において生成物として生じるアミンを液体として使用するのが有利である。
【0042】
液体中の、触媒活性成分の可溶性化合物の濃度は、それぞれ使用される液体の量に対して、通常0.1〜50質量%、有利には1〜30質量%、特に有利には5〜25質量%である。特に、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属の可溶性成分の濃度は、それぞれ使用される液体の量に対して、0.1〜25質量%、有利には0.5〜20質量%、特に有利には1〜15質量%、最も有利には5〜10質量%である。
【0043】
Cu、Ni及びCoの可溶性化合物の濃度は、それぞれ使用される液体の量に対して、1〜50質量%、有利には5〜25質量%、とりわけ有利には10〜20質量%である。
【0044】
含浸は、有利にはモノリス触媒担体を、溶解した触媒活性成分を含有する液体に含浸することにより行われる(含浸溶液)。
【0045】
特に有利な実施態様では、浸漬の際に、含浸溶液は、含浸溶液がモノリスのチャネル中を実質的に完全に貫通できるようにモノリス触媒担体のチャネルを通って吸引される。含浸溶液の吸引は、例えば、モノリス触媒担体の一方の末端で減圧を発生させ、かつモノリス触媒担体をもう一方の末端で含浸溶液中に浸すことにより行うことができ、その際に、含浸溶液が吸引される。
【0046】
含浸は、いわゆる"インシピエント・ウェットネス法(incipient wetness method)"により行うこともでき、その際に、その吸引能力に相応して、モノリス触媒担体は含浸溶液で飽和するまで最大限に湿潤される。しかし含浸は、上澄み液中で行うこともできる。続いて、含浸されたモノリス触媒担体は、通常は含浸溶液から除去される。含浸溶液の除去は、例えば、デカントオフ、ドリップオフ、濾過又は濾別により行われる。含浸溶液は、有利には、モノリス触媒担体の一方の末端で高圧を発生させ、かつチャネルから過剰の含浸溶液を押し出すことにより除去される。高圧は、例えば、チャネル内に圧縮空気を吹き込むことにより生じさせることができる。含浸溶液の除去に続いて、含浸されたモノリス触媒担体は、通常は乾燥又はか焼される。
【0047】
乾燥は、通常は、80〜200℃、有利には100〜150℃の温度で行われる。か焼は、一般に300〜800℃、有利には400〜600℃、特に有利には450〜550℃で実施される。
【0048】
有利な実施態様では、含浸は1つ以上の工程で行われる。多段階の含浸法では、個々の含浸工程の間で乾燥させ、かつ場合によりか焼することが合理的である。多段階の含浸は、有利には、モノリス触媒担体を大量に金属塩と接触させる場合に使用するのが有利である。
【0049】
極めて特に有利な実施態様では、1工程又は多工程の含浸もしくは最後の含浸工程での浸潤では、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属のグループから選択される1つ以上の元素が、含浸によりモノリス触媒担体上に塗布される。
【0050】
従って、モノリス触媒上のアルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属の元素の割合を出来るだけ高くするために、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属の元素を塗布した後に、触媒を洗わないか又はこれらの元素の割合を減少させる類似した方法で処理するのが有利である。アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属の元素で含浸したモノリス触媒担体を、前記のような含浸に続いて直接に乾燥及びか焼するのが有利である。
【0051】
モノリス触媒担体上に複数の成分を塗布するために、含浸は、例えば触媒活性成分の1つ以上の可溶性成分を同時に一緒に、又は任意の順番で触媒活性成分の個々の可溶性化合物を連続して行うことができる。
【0052】
とりわけ有利な実施態様では、触媒活性成分の塗布は被覆により行われる、
塗布の際に、通常モノリス触媒担体を、触媒活性成分の1つ以上の不溶性又は難溶性化合物を有する懸濁液と接触させる。本発明の範囲内では、触媒活性成分を有するゲルも難溶性もしくは不溶性化合物に含まれる。しかし、懸濁液は、更に触媒活性成分の1つ以上の可溶性化合物を含んでいることができる。
【0053】
触媒活性成分の不溶性又は難溶性化合物、又はそのゲルがモノリス触媒担体と一緒に懸濁された液体として、水、ニトリル、アミン、エーテル、例えば、テトラヒドロフラン又はジオキサン、アミド、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド又はN,N−ジメチルアセトアミドを使用するのが有利である。水を液体として使用するのが特に有利である。ニトリルを液体として使用する場合には、後で本発明による触媒で水素化すべきニトリルを使用するのが有利である。アミンとして、次に続く水素化で生成物として生じるようなアミンを液体として使用するのが有利である。
【0054】
触媒活性成分の不溶性又は難溶性化合物は、有利には触媒活性成分の酸素含有化合物、例えば、それらの酸化物、混合酸化物又は水酸化物もしくはこれらの混合物である。
【0055】
元素Cu及び/又はNi及び/又はCoは、有利にはそれらの不溶性酸化物もしくは水酸化物又は混合酸化物の形で使用される。CuOのような酸化銅、CoOのような酸化コバルト、NiOのような酸化ニッケル、一般式M1z(M2xOy)の混合酸化物が特に有利に使用され、その際に、M1はアルカリ金属、アルカリ土類金属又は希土類金属の元素であり、かつM2はコバルト、ニッケル又は銅である。この場合に、z=y−xである。それらの混合物を使用することもできる。それぞれ熱力学的に安定な変性が有利である。
【0056】
特に有利な実施態様では、難溶性又は不溶性酸化物又は酸化物の混合物、混合酸化物又は、酸化物もしくは混合酸化物の混合物が使用され、これらは、Cu及び/又はCo及び/又はNiであるか、ならびにアルカリ金属、アルカリ土類金属又は希土類金属の1つ以上の元素及び場合により1つ以上のドーピング元素を含有する。
【0057】
特に有利な混合酸化物、例えば、特許明細書PCT/EP2007/052013に開示されているような酸化物の混合物が挙げられ、これは水素で還元する前に、a)コバルトとb) アルカリ金属のグループ、アルカリ土類金属のグループ又は希土類金属のグループの1つ以上の元素、又は亜鉛又はこれらから成る混合物を含有し、その際に、元素a)とb)は、少なくとも一部がその混合酸化物の形で、例えばLiCoO2の形で存在する;又はEP-A-0636409に開示されている酸化物の混合物のような酸化物の混合物が挙げられ、これは、水素で予備還元する前に、CoOとして計算してCoを55〜98質量%、H3PO4として計算してリンを0.2〜15質量%、MnO2として計算してMnを0.2〜15質量%、及びM2O(M=アルカリ)として計算して、アルカリ金属を0.2〜5.0質量%含有する;又はEP-A-0742045に開示されている酸化物の混合物が挙げられ、これは水素で還元する前に、CoOとして計算してCoを55〜98質量%、H3PO4として計算してリンを0.2〜15質量%、MnO2として計算してMnを0.2〜15質量%、及びM2O(M=アルカリ)として計算して、アルカリ金属を0.05〜5.0質量%含有する;又はEP-A-696572に開示されている酸化物の混合物が挙げられ、これは水素で還元する前に、ZrO2を20〜85質量%、CuOとして計算して、銅の酸素含有化合物を1〜30質量%、NiOとして計算して、ニッケルの酸素含有化合物を30〜70質量%、MoO3として計算してモリブデンの酸素含有化合物を0.1〜5質量%、及びそれぞれAl2O3もしくはMnO2として計算して、アルミニウム及び/又はマンガンの酸素含有化合物を0〜10質量%含有し、例えば、loc. Cit.、8頁に開示されている触媒は、ZrO231.5質量%、NiO50質量%、CuO17質量%及びMoO31.5質量%を含有する組成物を有する;又はEP-A-963975に開示されている酸化物の混合物が挙げられ、これは水素で還元する前に、ZrO2を22〜40質量%、CuOとして計算して、銅の酸素含有化合物を1〜30質量%、NiOとして計算して、ニッケルの酸素含有化合物を15〜50質量%(ここで、Ni:Cuのモル比は、1超である)、CoOとして計算してコバルトの酸素含有化合物を15〜50質量%、及びそれぞれAl2O3もしくはMnO2として計算して、アルミニウム及び/又はマンガンの酸素含有化合物を0〜10質量%有するが、モリブデンの酸素含有化合物は含まない。例えば、loc. Cit.、17頁に開示されている触媒Aは、ZrO2として計算してZrを33質量%、NiOとして計算してNiを28質量%、CuOとして計算してCuを11質量%及びCoOとして計算してCoを28質量%を含有する組成物を有する;又はDE-A-2445303に開示されている銅含有酸化物の混合物、例えば、その実施例1に開示されている銅含有沈降触媒が挙げられ、これは、硝酸銅と硝酸アルミニウムの溶液を炭酸水素ナトリウムで処理し、かつ引き続き、沈殿物を洗浄、乾燥及び熱処理することにより製造され、かつCuO約53質量%、及びAl2O3約47質量%の組成物を有する;又はWO 2004085356、WO 2006005505及びWO 2006005506に開示されている酸化物の混合物が挙げられ、これは、それぞれか焼後の酸化材料の全重量に対して、酸化銅(50≦x≦80質量%の範囲内、有利には55≦x≦75質量%の範囲内の割合)、酸化アルミニウム(15≦y≦35質量%の範囲内、有利には20≦y≦30質量%の範囲内の割合)及び酸化ランタン(1≦z≦30質量%の範囲内、有利には2〜25質量%の範囲内の割合)を有し、その際に、80≦x+y+z≦100であり、特に95≦x+y+z≦100が当てはまり、金属銅粉末、銅フレーク又はセメント粉末又はこれらの混合物は、酸化材料の全質量に対して、1〜40質量%の範囲内の割合で、及びグラファイトを酸化材料の全質量に対して、0.5〜5質量%の割合で有し、その際に、酸化材料、金属銅粉末、銅フレーク又はセメント粉末、又はこれらの混合物及びグラファイトの割合から成る合計は、この材料から製造される成形品の少なくとも95質量%になる。
【0058】
極めて有利な実施態様では、触媒活性成分の不溶性又は難溶性化合物は、LiCoO2である。
【0059】
LiCoO2を製造する方法は、例えば、Antolini(E. Antolini, Solid State Ionics, 159-171(2004))及びFenton等(W. M. Fenton, P. A. Huppert, Sheet Metal Industries, 25(1948), 2255-2259)に記載されている。従って、例えばLiCoO2は、相応のリチウム及びコバルト化合物、例えば、ニトレート、カーボネート、水酸化物、酸化物、アセテート、シトレート又はオキサレートの熱処理により製造できる。
【0060】
更に、LiCoO2は、アルカリ溶液の添加により、水溶性リチウム塩とコバルト塩を沈殿させ、引き続きか焼することにより得ることができる。
【0061】
更にLiCoO2は、ゾルゲル法により得ることもできる。LiCoO2は、Song et al(S. W. Song, K. S. Han, M. Yoshimura, Y. Sata, A. Tatsuhiro, Mat. Res. Soc. Symp. Proc, 606, 205-210(2000))により記載されているように、コバルト金属をLiOH水溶液で水熱処理することにより得ることができる。
【0062】
特に有利な実施態様では、触媒活性成分の不溶性又は難溶性化合物の懸濁液は、上記の液体に溶解する触媒活性成分の化合物に沈降剤を添加することにより沈殿させることで、"沈殿"により得ることもできる。触媒活性成分の可溶性化合物として、通常は、触媒活性成分の可溶性金属塩、例えば、水酸化物、スルフェート、カーボネート、オキサレート、ニトレート、アセテート又は塩化物が該当する。沈殿は、相応する元素の他の適切な可溶性化合物を用いて行うこともできる。
【0063】
元素Cu及び/又はCo及び/又はNiは、有利には可溶性カーボネート、塩化物又はニトレートの形で使用するのが有利である。
【0064】
アルカリ金属、アルカリ土類金属又は希土類金属の元素は、有利には、その可溶性水酸化物の形、例えば、LiOH、KOH、NaOH、CsOH、Ca(OH)2又はMg(OH)2の形で使用される。
【0065】
一般に、可溶性化合物の沈殿は、沈降剤の添加により難溶性もしくは不溶性塩基塩として沈殿する。沈降剤として、有利には、苛性ソーダ、特に鉱物塩基、例えば、金属塩基が使用される。沈降剤の例は、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム又は水酸化カリウムである。
【0066】
沈降剤として、アンモニウム塩、例えば、ハロゲン化アンモニウム、炭酸アンモニウム、水酸化アンモニウム又はアンモニウムカルボキシレートが使用される。
【0067】
沈殿は、例えば、20〜100℃、特に30〜90℃、とりわけ50〜70℃の温度で実施できる。沈殿の際に得られる沈殿物は、一般に化学的に不均一であり、かつ通常は、使用される金属の酸化物、オキシドハイドレート、水酸化物、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩の混合物を含有する。
【0068】
特に有利な実施態様では、懸濁液は触媒活性成分を粒子の形で、例えば、粉末として液体に添加することにより製造される。この実施態様は、懸濁液の製造が良好に再現可能である点で有利である。特に、粒子の形の触媒活性成分として、前記のものが有利に挙げられ、特に有利な難溶性又は不溶性酸化物又は酸化物の混合物、混合酸化物又は酸化物もしくは混合酸化物の混合物が使用され、これは、Cu及び/又はCo及び/又はNiと、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属のうち1つ以上の元素、及び場合により1つ以上のドーピング元素を有する。
【0069】
粒子の形の触媒活性成分は、有利には噴霧乾燥により得られ、例えば、沈殿により得られた懸濁液を噴霧乾燥することにより得られる。懸濁液中に存在する触媒活性成分の不溶性又は難溶性の化合物の粒子は、有利には0.001〜1000μm、特に有利には1〜500μm、とりわけ有利には10〜100μm、最も有利には20〜80μmの平均粒径を有する。このサイズのオーダーの粒子は、均一な被覆を可能にし、かつ高い活性と機械的安定性を有する触媒を生じる。
【0070】
懸濁液中の触媒活性成分の不溶性又は難溶性化合物の沈降を阻害するために、懸濁液は一般に強力に分散され、分散は、強力な撹拌により又は超音波により行われる。分散は、懸濁液を連続的にポンピングすることにより有利に行うこともできる。
【0071】
懸濁液中の触媒活性成分の不溶性又は難溶性化合物の濃度は、それぞれ使用される液体の量に対して、通常は0.1〜50質量%、有利には1〜30質量%、特に有利には5〜25質量%である。
【0072】
特に、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属の不溶性又は難溶性化合物の濃度は、使用される液体の量に対して、0.1〜20質量%、有利には0.5〜10質量%、特に有利には1〜5質量%である。
【0073】
Cu、Ni及びCoの不溶性又は難溶性化合物の濃度は、それぞれ使用される液体に対して、1〜50質量%、有利には5〜25質量%、特に有利には10〜20質量%である。
【0074】
モノリス触媒担体の被覆は、モノリス触媒担体と、懸濁液中に存在する触媒活性成分の不溶性又は難溶性化合物を接触させることにより行われる。
【0075】
接触の前に、モノリス触媒担体を乾燥させるのが有利である。乾燥は、通常は100〜200℃の温度で1〜48時間の間行われる。
【0076】
モノリス触媒担体の被覆は、モノリス触媒担体を接触させる前に懸濁液を製造し、かつモノリス触媒担体と既に製造された懸濁系を接触させることにより行われる。
【0077】
モノリス触媒担体は、モノリス触媒担体を懸濁液に浸すか、又は懸濁液をモノリス触媒担体上に連続的にポンピングすることにより、懸濁液と接触させるのが有利である。
【0078】
特に有利な実施態様では、モノリス触媒担体を懸濁液中に浸漬させる。
【0079】
とりわけ有利な実施態様では、浸漬の際に、懸濁液がモノリスのチャネル中を実質的に完全に貫通できるように、懸濁液はモノリス触媒担体のチャネルを通って吸引される。懸濁液の吸引は、例えば、モノリス触媒担体の一方の末端で減圧を発生させ、かつモノリス触媒担体をもう一方の末端で懸濁液中に浸すことにより行うことができ、その際に、懸濁液が吸引される。
【0080】
しかし、モノリス触媒担体の被覆は、モノリス触媒担体を液体中に既に懸濁させ、かつ懸濁液を液体中で"沈殿"により"in situ"で製造することにより行うことができる。この方法では、触媒活性成分の不溶性又は難溶性化合物は、モノリス触媒担体上に直接に沈殿される。
【0081】
モノリスは、触媒担体の完全でかつ均一な被覆が保証されるまで例えば浸漬により懸濁液と接触させるのが有利である。
【0082】
懸濁液は、モノリス触媒担体の接触の間に分散されるのが有利であり、それにより粒子は殆ど完全にモノリスのチャネル中に浸すことができ、かつ均一な被覆が達成される。
【0083】
接触後に、通常は過剰の懸濁液は除去される。懸濁液の除去は、例えば、デカントオフ、ドリップオフ、濾過又は濾別により行われる。懸濁液は、有利には、モノリス触媒担体の一方の末端で過圧を発生させ、かつチャネルから過剰の懸濁液を押し出すことにより除去される。過圧は、例えば、チャネル内に圧縮空気を吹き込むことにより生じる。
【0084】
引き続き、被覆された触媒担体は、通常乾燥及びか焼される。乾燥は、通常は、80〜200℃、有利には100〜150℃の温度で行われる。か焼は、一般に300〜800℃、有利には400〜600℃、特に有利には450〜550℃の温度で実施される。
【0085】
モノリス触媒担体と懸濁液の接触は、1回以上繰り返すことができる。
【0086】
特に有利な実施態様では、本発明による触媒の製造は、含浸と被覆から成る組合せにより行われる。元素Cu及び/又はCo及び/又はNiを第一の工程又は複数の工程で、被覆によりモノリス触媒担体上に塗布し、かつその後にアルカリ金属、アルカリ土類金属又は希土類金属の元素もしくはドーピング元素は、1つ以上の工程において含浸により塗布されるのがとりわけ有利である。
【0087】
これらの特に有利な触媒の製法は、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は希土類金属の元素の高い割合の塗布を可能にする。
【0088】
特に有利な実施態様では、触媒活性成分で浸漬する前もしくはモノリス触媒担体を触媒活性成分で被覆する前及び/又は間に、結合剤がモノリス触媒担体に塗布される。モノリス触媒担体上への結合剤の塗布により、固有面積を大きくすることができ、それにより多くの活性材料が塗布され、よって触媒の触媒活性が高まる。
【0089】
結合剤として、有利には、酸化アルミニウム、特にγ−又はδ−酸化アルミニウム、α−酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、珪藻土、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、二酸化セリウム、酸化マグネシウムならびにそれらの混合物が使用される。特に有利な結合剤は、酸化アルミニウム、特にγ−又はδ−酸化アルミニウム、α−酸化アルミニウム、二酸化ケイ素又は酸化マグネシウムならびにそれらの混合物である。
【0090】
結合剤の塗布は、有利には、モノリス触媒担体の被覆により行うのが有利である。被覆の際に、通常はモノリス触媒担体を結合剤を含有する懸濁液(結合剤を含有する液体)と接触させる。
【0091】
懸濁液中の結合剤の濃度は、使用される液体に対して有利には0.5〜25質量%、特に有利には1〜15質量%、とりわけ有利には1〜5質量%である。
【0092】
液体として、通常は上記の液体が使用される。
【0093】
有利な実施態様では、懸濁液は、粒子の形の結合剤を、例えば粉末として液体に添加することにより製造される。
【0094】
懸濁液中に存在する結合剤の粒子は、有利には0.001〜1000μm、特に有利には1〜500μm、とりわけ有利には10〜100μm、極めて有利には20〜80μmの平均粒径を有する。
【0095】
懸濁液中の触媒活性成分の不溶性又は難溶性化合物の沈降を阻害するために、懸濁液は通常は強力に分散され、その際に分散は、強力な撹拌により又は超音波により行われる。分散は、懸濁液を連続的にポンピングすることにより行うこともできる。
【0096】
モノリス触媒担体の被覆は、モノリス触媒担体と、懸濁液中に存在する結合剤を接触することにより行われる。
【0097】
結合剤でのモノリス触媒担体の被覆は、モノリス触媒担体を接触させる前に懸濁液を製造し、かつモノリス触媒担体と既に製造された懸濁液を接触させることにより行われる。
【0098】
モノリス触媒担体は、モノリス触媒担体を懸濁液に含浸するか、又は懸濁液をモノリス触媒担体上に連続的にポンピングすることにより、懸濁液と接触させるのが有利である。
【0099】
特に有利な実施態様では、モノリス触媒担体を懸濁液中に浸透させる。
【0100】
とりわけ有利な実施態様では、浸透の際に、懸濁液がモノリスのチャネル中を実質的に完全に貫通できるように、懸濁液はモノリス触媒担体のチャネルを通って吸引される。懸濁液の吸引は、例えば、モノリス触媒担体の一方の末端で減圧を発生させ、かつモノリス触媒担体をもう一方の末端で懸濁液中に浸すことにより行うことができ、その際に、懸濁液が吸引される。
【0101】
接触後に、過剰の懸濁液は除去される。懸濁液の除去は、例えば、デカントオフ、ドリップオフ、濾過又は濾別により行われる。懸濁液は、有利には、モノリス触媒担体の一方の末端で過圧を発生させ、かつチャネルから過剰の懸濁液を押し出すことにより除去される。過圧は、例えば、チャネル内に圧縮空気を吹き込むことにより生じる。引き続き、被覆されたモノリス触媒担体は、通常は乾燥又はか焼される。乾燥は、通常は、80〜200℃、有利には100〜150℃の温度で行われる。か焼は、一般に300〜800℃、有利には400〜600℃、特に有利には450〜550℃の温度で実施される。
【0102】
モノリス触媒担体と、結合剤を含有する懸濁液との接触は、1回以上繰り返すことができる。
【0103】
触媒活性成分の塗布を含浸により行う場合には、モノリス触媒担体は有利には含浸の前に結合剤で被覆される。触媒活性成分を被覆により塗布する場合には、モノリス触媒担体の結合剤での被覆は、触媒活性成分を被覆する前に行うことができる。
【0104】
有利な1実施態様では、結合剤でのモノリス触媒担体の被覆は、触媒活性成分の不溶性もしくは難溶性成分の他に、更に結合剤を粒子の形で含有する懸濁液を使用することにより、触媒活性成分での被覆と同時に行われる。
【0105】
とりわけ有利な実施態様では、モノリス触媒担体及び/又は結合剤は、結合剤を塗布する前及び/又は間に、酸と接触される。モノリス触媒担体及び/又は結合剤を酸で処理することにより、モノリスの比表面積は更に高まり、かつモノリス触媒担体と結合剤の間の粘着は改善される。それにより、本発明による触媒の機械的耐性も触媒活性も増大する。酸として、ギ酸又は酢酸のような有機酸が有利に使用される。酸は、結合剤と液体から成る懸濁液に直接に添加される。液体中の酸の濃度は、それぞれ使用される液体の量に対して、有利には0.1〜5質量%、有利には0.5〜3質量%、特に有利には1〜2質量%である。
【0106】
含浸又は被覆により得られるモノリス触媒は、か焼の後に一般に、それらの酸素含有化合物の混合物の形で、すなわち、特に酸化物、混合酸化物及び/又は水酸化物として触媒活性成分を有する。このように製造された触媒は、そのままの形で貯蔵できる。
【0107】
これらを水素化触媒として使用する前に、含浸又は被覆により得られた上記のような本発明の触媒は、通常は、か焼又はコンディショニングの後に水素での処理により予備還元される。しかし、これらは、予備還元せずに方法で使用することもできる。その際に、これらは反応器中に存在する水素による水素化の条件下に還元され、その際に、触媒は通常、in situでその触媒活性型になる。
【0108】
予備還元するために、触媒は、一般にまず150〜200℃で12〜20時間の間、窒素−水素雰囲気に曝され、かつ引き続き水素雰囲気中で、200〜400℃で約24時間処理される。この予備還元では、触媒中に存在する酸素含有金属化合物の割合を相応する金属まで減少させ、その結果、これは種々の酸素含有化合物と一緒に触媒の活性型で存在するようになる。特に有利な実施態様では、触媒の予備還元は、引き続き本発明による水素化法が行われる同じ反応器中で行われる。
【0109】
このように形成された触媒は、予備還元の後に、窒素のような不活性ガス下に処理又は貯蔵されるか、又は不活性な液体、例えば、アルコール、水の存在下に、又は触媒に使用されるそれぞれの反応の生成物の存在下に処理及び貯蔵できる。触媒は、予備還元の後に、酸素含有ガス流、例えば空気又は空気と窒素の混合物で不動態化することができる。すなわち保護酸化物層が用意される。
【0110】
不活性物質下での触媒の貯蔵又は触媒の不動態化は、触媒の簡単で、煩わしくない取り扱いと貯蔵を可能にする。場合により、実際の反応を始める前に、触媒を不活性液体から離しておくか、又は不動態化層を例えば水素もしくは水素を有するガスでの処理により除去する必要がある。
【0111】
水素化が開始する前に、触媒を不活性液体又は不動態化層から離しておくことができる。これは、例えば、水素又は水素を含有するガスでの処理により行われる。
【0112】
しかし、上記のような触媒前駆体は、予備還元しない方法で使用することもでき、その際に、これらは反応器中に存在する水素により水素化の条件下に還元され、その際に、通常は触媒はその活性型でin situで形成される。
【0113】
上記触媒の触媒特性は、触媒と、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属のグループから選択される1つ以上の塩基性化合物を接触することにより改善できる。
【0114】
従って、本発明は、触媒の活性を改善するための、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属のグループから選択される塩基性化合物、特に、銅及び/又はコバルト及び/又はニッケルを有する水素化触媒の使用にも関し、その際に前記触媒は構造化されたモノリスの形で存在する。
【0115】
触媒特性の改善は、例えば、触媒の選択率及び/又は活性を増大することにある。しかし、触媒特性における改善は、上記触媒の寿命期間が増大し、かつ著しい損失が無く触媒の触媒活性及び/又は選択率が長期にわたり保持されることを意味する。更に、触媒特性の改善は、例えば、長期間にわたり減少してしまった触媒特性が再び作られることを意味する(触媒の再生)。
【0116】
特に有利な実施態様では、上記触媒と溶液としての塩基性化合物との接触は、反応で触媒を使用する前、後又は間に行われる。"反応"とは、上記触媒における1つ以上の出発物質の転化であると解釈される。
【0117】
触媒が反応で使用される前の、触媒と、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属のグループから選択される塩基性化合物の接触は、例えば、その製造の際に上記のような触媒と、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属のグループから選択される塩基性化合物の接触により行われる。この接触は、例えば、有利にはNi、Co及び/又はCuで被覆されたモノリス触媒担体を、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属の1つ以上の可溶性化合物で含浸することにより行われる。
【0118】
特に有利な実施態様では、反応の間に触媒を初めに及び/又は付加的に、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属のグループから選択される元素の1つ以上の可溶性化合物と接触させる。
【0119】
反応の間の触媒の接触は、塩基性化合物の溶液を出発物質流と一緒に反応器に導入する、及び/又はこれを出発物質と一緒に供給することにより特に有利に行われる。特に有利には、水中又は他の適切な溶剤、例えば、C1〜C4−アルカノールのようなアルカノール、例えば、メタノール又はエタノール、又は環式エーテルのようなエーテル、例えば、THF又はジオキサン中の塩基性化合物を反応混合物に供給する。特に有利には、アルカリ金属、アルカリ土類金属水酸化物の溶液、又は水中のアルカリ土類金属の水酸化物の溶液、特に有利には、水中のLiOH、NaOH、KOH及び/又はCsOHの溶液を挙げることができる。有利には、水中又は他の適切な溶剤中の塩基性化合物の濃度は、0.01〜20質量%、有利には0.1〜10質量%、特に有利には0.2〜5質量%である。
【0120】
供給される塩基性化合物の溶液の量は、通常、供給される塩基性化合物の量:反応混合物中の転化されるべき出発物質の量の比が、100〜10000:1000000の範囲内、有利には150〜5000:1000000、特に有利には200〜1000:1000000の範囲内であるように選択される。供給は、全体の反応時間にわたり行われるか、又は全体の反応時間の一部の間だけ行うことができる。塩基性化合物の溶液の供給は、反応の全体の時間にわたり有利に行われる。
【0121】
触媒特性の改善は、反応後に、触媒と、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属のグループから選択される塩基性化合物の溶液を接触させることにより達成してもよい。接触は、例えば、反応後に、触媒を塩基性化合物で含浸するか、又は、触媒上に塩基性化合物の溶液を通すことにより行うこともできる。反応後の触媒の接触は、触媒特性の少なくとも部分的な再生をもたらすことができる。
【0122】
上記のように、塩基性化合物の接触は、例えば、製造の際もしくは間に、例えば、塩基性化合物の存在で触媒を被覆することにより行うことができる。この被覆は、モノリス触媒担体を、塩基性化合物で含浸させる及び/又は被覆されたモノリス触媒担体を塩基性化合物で含浸することにより行われる。
【0123】
か焼の後に接触を行う場合には、Cu、Ni及びCoの化合物は、通常は、その酸化化合物の形で、例えば、酸化物、混合酸化物及び/又は水酸化物として存在する。
【0124】
有利な実施態様では、触媒が還元され、かつ還元した形で存在した後に、触媒と塩基性化合物の接触が行われる。特に有利には、触媒と塩基性化合物の接触は水素の存在で行われる。とりわけ有利には、接触は水素の存在で水素化反応の間に行われる。
【0125】
本発明による方法により、触媒が使用ないし使用されるべき反応が、少なくとも1つの不飽和炭素−炭素−結合、炭素−窒素−結合又は炭素−酸素−結合を有する化合物を水素化する方法である場合に、上記の触媒の触媒特性は改善される。
【0126】
適切な化合物は、通常は、1つ以上のカルボン酸アミド基、ニトリル基、イミン基、エナミン基、アジン基又はオキシム基を有する化合物であり、これは水素化されてアミンになる。
【0127】
更に、本発明の方法では、少なくとも1つ以上のカルボン酸エステル基、カルボン酸基、アルデヒド基又はケト基を有する化合物を水素化して、アルコールにすることができる。
【0128】
適切な化合物は、不飽和又は飽和炭素環又は複素環に転化させることができる芳香族化合物である。
【0129】
本発明による方法で使用できる特に適切な化合物は、有機ニトリル化合物、イミン及び有機オキシムである。これらを水素化して第一級アミンにすることができる。とりわけ有利な実施態様では、ニトリルが本発明による方法で使用される。この場合に、これは例えば、1〜30個の炭素原子を有する脂肪族モノ−及びジニトリル、6〜20個の炭素原子を有する脂環式モノニトリル及びジニトリルの水素化、更に、α−及びβ−アミノニトリル又はアルコキシニトリルの水素化であることができる。
【0130】
適切なニトリルは、例えば、エチルアミンを製造するためのアセトニトリル、プロピルアミンを製造するためのプロピオニトリル、ブチルアミンを製造するためのブチロニトリル、ラウリルアミンを製造するためのラウロニトリル、ステアリルアミンを製造するためのステアリルニトリル、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)を製造するためのジメチルアミノプロピオニトリル(DMAPA)及びベンジルアミンを製造するためのベンゾニトリルである。適切なジニトリルは、ヘキサメチレンジアミン(HMD)又はHMDと6−アミノカプロニトリル(ACN)を製造するためのアジポジニトリル(ADN)、2−メチルグルタロジアミンを製造するための2−メチルグルタロジニトリル、1,4−ブタンジアミンを製造するためのスクシノニトリル及びオクタメチレンジアミンを製造するためのコルク酸ジニトリルである。更なる環式ニトリル、例えば、イソホロンジアミンを製造するためのイソホロンニトリルイミン(イソホロンニトリル)及びメタ−キシリレンジアミンを製造するためのイソフタロジニトリルが適切である。同様に、α−アミノニトリル及びβ−アミノニトリル、例えば、1,3−ジアミノプロパンを製造するためのアミノプロピオニトリル又は、ω−アミノニトリル、例えばヘキサメチレンジアミンを製造するためのアミノカプロニトリルが適切である。更に適切な化合物は、いわゆる"ストレッカーニトリル"であり、これは例えばジエチレントリアミンを製造するためのイミノジアセトニトリルである。更に適切なニトリルは、β−アミノニトリル、例えば、アクリロニトリルへのアルキルアミン、アルキルジアミン又はアルカノールアミンの付加生成物である。例えば、エチレンジアミンとアクリロニトリルの付加生成物を、相応のジアミンに転化することができる。例えば、3−[2−アミノエチル]アミノプロピオニトリルを転化して、3−(3−アミノエチル)アミノプロピルアミン及び3,3’−(エチレンジイミノ)ビスプロピオニトリル又は3−[2−(アミノプロピルアミノ)エチルアミノ]プロピオニトリルを転化してN,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミンにすることができる。
【0131】
特に有利には、本発明による方法において、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)の製造にN,N−ジメチルアミノプロピオニトリル(DMAPN)が使用され、ヘキサメチレンジアミン(HMD)又は6−アミノカプロニトリル(6-ACN)とHMDの製造にアジポニトリル(ADN)が使用され、及びイソホロンジアミンの製造にイソホロンニトリルイミンが使用される。
【0132】
還元剤として、水素又は水素を有するガスを使用できる。水素は、一般に工業レベルの純度で使用される。また水素は、水素を有するガスの形で、すなわち、他の不活性ガス、例えば、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン又は二酸化炭素との混合物の形で使用することもできる。水素を有するガスとして、例えば、改質器のオフガス、精油所ガスなどを使用でき、これらのガスが、使用される水素化触媒に接触毒を有さない場合及び有さない限りは、例えば、COを含有する。
【0133】
しかし有利には、純粋な水素又は実質的に純粋な水素を方法で使用するのが有利である。例えば、99質量%超の水素含有量を有する、有利には99.9質量%超の水素含有量、特に有利には99.99質量%超の水素含有量を有する、とりわけ有利には99.999質量%超の水素含有量を有する水素を方法で使用するのが有利である。
【0134】
水素:出発物質として使用される化合物のモル比は、通常は1:1〜25:1、有利には2:1〜10:1である。水素は循環ガスとして反応に戻すことができる。ニトリルの還元によりアミンを製造する方法では、アンモニアの添加下に水素化が行われる。この場合に、アンモニアはニトリル基に対して、通常0.5:1〜100:1の比で、有利には2:1〜20:1の比で使用される。しかし、有利な実施態様は、アンモニアを添加しない方法である。
【0135】
反応は、物質中で又は液体中で実施できる。水素化は、有利には液体の存在で行われる。適切な液体は、例えば、C1〜C4−アルコール、例えば、メタノール又はエタノール、C4〜C12−ジアルキルエーテル、例えば、ジエチルエーテル又はt−ブチルメチルエーテル、又は環状C4−〜C12−エーテル、例えば、テトラヒドロフラン又はジオキサンである。適切な液体は、前記の液体の混合物であることもできる。液体は、水素化の生成物であることもできる。反応は水の存在で行うこともできる。しかし、水の含有量は、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属の化合物の漏出及び/又は流出を大幅に減少させるために、使用される液体の量に対して、10質量%以下、有利には5質量%未満、特に有利には3質量%未満であることができる。
【0136】
水素化は、通常1〜150バール、特に5〜120バール、有利には8〜85バール及び特に有利には10〜65バールの圧力で実施される。有利には、水素化は、65バール未満の圧力で低圧法として行われる。温度は、通常25〜300℃の範囲内、特に50〜200℃の範囲内、有利には70〜150℃の範囲内、とりわけ有利には80〜130℃の範囲内である。
【0137】
本発明による水素化法は、連続的、不連続的又は半連続的に実施できる。半連続的又は連続的に水素化するのが有利である。
【0138】
従って、適切な反応器は、撹拌タンク反応器でも管型反応器であってもよい。通常の反応器は、例えば、高圧撹拌タンク反応器、オートクレーブ、固定床反応器、流動床反応器、移動床、循環型流動床、連続的撹拌タンク、バブル反応器、循環反応器、例えばジェットループ型反応器などであり、所望の反応条件(例えば、温度、圧力及び滞留時間)に適切な反応器が、それぞれ使用される。
【0139】
反応器は、単一の反応器(シングルリアクター)として、単一の反応器の連続として及び/又は2つ以上の平行反応器の形で使用することができる。
【0140】
反応器は、AB法(交互の法)で運転することができる。本発明による方法は、バッチ反応、半連続的反応又は連続的反応として実施することができる。特殊な反応器の構造及び反応の実施は、実施すべき水素化方法、水素化すべき出発材料の集合状態、必要な反応時間及び使用される触媒の特性に応じて変化させてもよい。
【0141】
極めて有利な実施態様では、水素化するための本発明による方法は、高圧撹拌タンク反応器、バブルカラム、循環反応器、例えば、ジェットループ型反応器中で、又は触媒が固く配置された方法で、すなわち触媒固定床の形で配置されている固定床反応器中で連続的に行われる。この場合に、水素化を液相法で、又はトリックル法で実施することができ、液相法が有利である。液相における運転が工業的に簡単であることが証明された。
【0142】
有利な実施態様では、本発明による触媒の利点が特に良好に効果を発揮する。それというのも、本発明による触媒は高い機械的安定性、ひいては長い寿命期間を有するからであり、これにより該触媒を連続的な方法に適切なものにする。
【0143】
特に有利な実施態様では、ニトリルの水素化は、撹拌オートクレーブ、バブルカラム、循環反応器、例えば、ジェットループ型反応器又は固定床反応器中で、固く配置した方法で配置された触媒を用いて液相中で連続的に実施される。
【0144】
連続的な方法の場合の触媒負荷は、通常は、触媒1リットル及び1時間あたり、出発物質0.01〜10kg、有利には0.2〜7kg、特に有利には0.5〜5kgである。
【0145】
特に有利な実施態様では、連続的な水素化の間の触媒の接触は、上記のような液相中で、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属のグループから選択される1つ以上の元素の塩基性化合物の溶液を、水素化すべき出発物質に一緒に添加することにより行われる。
【0146】
既に記載したように反応は高圧下に行われるので、塩基性化合物の溶液の計量供給は、反応器中で高い運転圧で行う必要がある。高圧条件下に物質を計量付加するために適切な工業装置は、当業者に公知である。特に、ポンプ、例えば高圧ポンプもしくは物質を高圧条件下に計量供給するためのピストンポンプを使用できる。
【0147】
液相中での不連続的な水素化では、通常は出発物質と触媒の懸濁液を反応器中に予め装入する。高い転化率と高い選択率を保証するために、例えば、オートクレーブ中のタービン撹拌機により出発物質と触媒の懸濁液を水素とよく混ぜなくてはならない。懸濁された触媒材料は、通常の技術を用いて導入し、かつ再び除去できる(沈殿、遠心、ケーキ濾過、クロスフロー濾過)。触媒は1回以上使用できる。触媒濃度は、それぞれの場合に、出発物質と触媒から成る懸濁液の全質量に対して、有利には0.1〜50質量%、有利には0.5〜40質量%、特に有利には1〜30質量%、特に5〜20質量%である。場合により出発物質の希釈は、適切な不活性溶剤で行うことができる。本発明による方法における滞留時間は、不連続な方法で行う場合には、一般に15分〜72時間、有利には60分間〜24時間、特に有利には2時間〜10時間である。
【0148】
特に有利な実施態様では、不連続な水素化の間の触媒の接触は、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属のグループから選択される1つ以上の元素の塩基性化合物の溶液を、水素化すべき出発物質と一緒に計量供給して行われる。この場合に、塩基性化合物の溶液は、通常は塩基性化合物が全反応時間にわたり触媒と接触されるように出発物質と一緒に予め装入される。
【0149】
しかし、接触は反応の前に塩基性化合物が出発物質と別々に、又は出発物質と一緒に供給されるように行ってもよい。この場合に、塩基性化合物は、反応媒体中に、これらが少なくとも部分的に溶解するように固体の形で添加することができる。
【0150】
同様に、気相中の水素化は固定床反応器又は流動床反応器中で実施できる。水素化反応を実施するための慣用の反応器は、例えば、Ullmann’s Encyclopaediaに記載されている[Ullmann’s Encyclopedia Electronic Release 2000, Kapitel: Hydrogenation and Dehydrogenation, 2〜3頁]。
【0151】
気相中での水素化の際に触媒の接触は有利には反応前に、触媒にアルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属のグループから選択される1つ以上の元素の塩基性化合物を含浸により塗布することにより行われる。
【0152】
本発明による触媒の活性及び/又は選択率は、寿命期間が増大するにつれて増大する。従って、本発明による触媒を液体で処理する本発明の触媒の再生方法が見出された。液体での触媒の処理は、触媒の活性部位を遮断する可能性のある接着化合物を除去するように行われるべきである。液体での触媒の処理は、液体中で触媒を撹拌するか、又は液体中で触媒を洗浄することにより行われ、その際に行われた処理の後に、前記液体は濾過又はデカントオフにより、除去された脱離した不純物と一緒に触媒から除去することができる。
【0153】
適切な液体は、通常は、水素化の生成物、水又は有機溶剤、有利にはエーテル、アルコール又はアミドである。
【0154】
もう1つの実施態様では、液体での触媒の処理は、水素又は水素を有するガスの存在で行うことができる。
【0155】
これらの再生は、高温で、通常は20〜250℃で実施できる。消費された触媒を乾燥させ、かつ接着有機化合物を空気で酸化し、CO2のような揮発性化合物にすることもできる。水素化において触媒を更に使用する前に、酸化を行った後に通常は上記のように触媒を活性化する必要がある。
【0156】
再生の際に、触媒を触媒活性成分の可溶性化合物と接触させることができる。接触は、触媒を触媒活性成分の水溶性化合物で含浸するか又は湿潤するように行うことができる。特に、触媒活性成分の化合物は、ドーピング元素の化合物であるか、又はアルカリ金属、アルカリ土類金属又は希土類金属の金属の化合物である。
【0157】
再生後に触媒を、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は希土類金属のグループから選択される1つ以上の元素の塩基性化合物と接触させるのが特に有利であり、この接触は、前記のような触媒を、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属のグループから選択される1つ以上の元素で含浸するか、又は後続の反応の間に塩基性化合物を計量供給するように、有利に行われる。
【0158】
構造化されたモノリスの形で存在する触媒の触媒特性が改善されるのが本発明では有利である。不所望な副生成物の形成、特にニトリルからの第二級アミンの形成は少ないので、高い収率と選択率で目的生成物が得られる。更に、触媒の寿命期間は改善され、運転時間が増すに連れて選択率と活性の損失は減少する。本発明による方法は、更に消費された触媒の触媒特性を再び生成(再生)するために使用することができる。
【0159】
本発明を以下の実施例を用いて詳説する。
定義:
触媒の負荷は、供給物中の出発物質の量と、触媒の体積から成る生成物と時間の割合から成る。触媒負荷=出発物質の量/(触媒の体積・反応時間)である。触媒の体積は、触媒(モノリス)と同じ外形を有する中実円柱により占められる体積に相応する。反応器は、通常はモノリス触媒で完全に充填される。触媒負荷の単位は、[kg出発物質/(l・h)]により示される。
【0160】
示される選択率は、ガスクロマトグラフィー分析により決定され、面積パーセントから計算される。出発物質の転化率U(E)は、以下の式:
【数1】

から計算される。
【0161】
生成物の収率A(P)は、生成物符号の面積パーセントから計算される。
A(P)=F(P)%;式中、出発物質(F%(E))、生成物(F%(P))、副生成物(F%(N))又は極めて一般的に物質i(F%(i))の面積パーセントF%(i)は、物質iの符号の下側の面積F(i)と、全面積F全体、すなわち符号iの下側の面積の合計の割合×100から計算される:
【数2】

【0162】
出発物質S(E)の選択率は、生成物−収率A(P)と出発物質−転化率U(E)の割合として計算される:
【数3】

【0163】
実施例で挙げられる金属含有量は、既成の触媒前駆体の元素分析により得られ、かつ
被覆した既成のモノリス(=触媒前駆体)の全質量に対する金属(質量パーセント)として解釈される。
【0164】
ここで挙げられる実施例は、Corning社製のコージライトモノリス(Celcor(登録商標))を用いて実施されるが、匹敵するモノリスを用いて得ることもできる(例えば、NGK Insulator社のHoneyCeram(登録商標))。
【0165】
例1:
モノリス触媒担体を、EP-BA-636409による酸化物の混合物で被覆した。そこに示された規定によれば、酸化物の混合物は、コバルト55〜98質量%、リン0.2〜15質量%、マンガン0.2〜15質量%、及びアルカリ金属0.2〜5質量%(酸化物として計算)を有する。使用した酸化物の混合物の正確な組成物は、それぞれの例で挙げられている。
【0166】
例1a:
モノリス触媒担体として、構造化された成形品の形(円形、20×50mm)及び400cpsiのCorning社製のコージライトモノリス(Celcor(登録商標))を使用した。
【0167】
モノリス触媒担体を120℃で10時間乾燥させた。
【0168】
初めの装填では、γ−酸化アルミニウム(Sasol社製のPural SB)9gをギ酸3gでエッチングした。その後に、前記混合物に、Co3O492質量%、更にMn3O45質量%及び20〜50μmの粒子サイズフラクションのリン酸ナトリウム3質量%を含有する酸化物の混合物300g(噴霧乾燥により得られた)を加えた。この混合物に、脱イオン水300gを加え、かつ得られた懸濁液を高速分散機(IKA社製のUltra-Turrax)により均質化した。
【0169】
乾燥したモノリスを懸濁液に浸漬し、圧縮空気を吹込み、かつ約140℃でホットエア送風機にて乾燥させた。これらの工程を全部で6回浸漬させるために繰り返した。引き続き、モノリスを500℃で3時間か焼した。得られた触媒前駆体は、26.1質量%の平均コバルト含有量を有していた(金属コバルトとして表示)。触媒中のCo−原子:Na−原子のモル比は、125:1であった。
【0170】
例1b:
モノリス触媒担体として、Corning社製の構造化された成形品の形(円形、18×50mm)及び900cpsiのコージライト−モノリス(Celcor(登録商標))を使用した。
【0171】
モノリス触媒担体を120℃で10時間乾燥させた。
【0172】
初めの装填では、γ−酸化アルミニウム(Sasol社製のPural SB)7gをギ酸2gでエッチングした。その後に、前記混合物に、Co3O492質量%、更にMn3O45質量%及び20〜50μmの粒子サイズフラクションのリン酸ナトリウム3質量%を含有する酸化物の混合物(噴霧乾燥により得られた)225gを加えた。この混合物に、脱イオン水約400gを加え、かつ得られた懸濁液を高速分散機(IKA社製のUltra-Turrax)により均質化した。乾燥したモノリスを懸濁液に浸漬し、圧縮空気を吹込み、かつ約140℃(±10℃)でホットエア送風機にて乾燥させた。これらの工程を全部で6回浸漬させるために繰り返した。引き続き、モノリスを500℃で3時間か焼した。得られた触媒前駆体は、14.5質量%の平均コバルト含有量を有していた(金属コバルトとして表示)。触媒中のCo−原子:Na−原子のモル比は、125:1であった。
【0173】
例2:
モノリス触媒担体として、構造化された成形品の形(円形、18×50mm)及び900cpsiのCorning社製のコージライトモノリス(Celcor(登録商標))を使用した。
【0174】
モノリス触媒担体を120℃で10時間乾燥させた。
【0175】
初めの装填では、γ−酸化アルミニウム(Sasol社製のPural SB)9gをギ酸3gでエッチングした。その後に、前記混合物に、LiCo3O2(Alfa Aesar:97%)310gを加え、脱イオン水約200gを充填し、かつ得られた懸濁液を高速分散機(IKA社製のUltra-Turrax)により均質化した。
【0176】
乾燥したモノリスを懸濁液に浸漬し、圧縮空気を吹込み、かつ約140℃(±10℃)でホットエア送風機にて乾燥させた。これらの工程を全部で6回浸漬させるために繰り返した。引き続き、モノリスを500℃で3時間か焼した。触媒前駆体は、30.5質量%の平均コバルト含有量(金属コバルトとして表示)と、3.7質量%のリチウム(金属リチウムとして表示)を有していた。触媒中のCo−原子:Li−原子のモル比は、1:1であった。
【0177】
例3:
コバルトヘキサアンミン溶液は、炭酸アンモニウム634gをアンモニア溶液1709ml(33%NH3)に溶かすことにより製造された。引き続き、コバルト(II)−カーボネートハイドレート528gを少しずつ添加した。この溶液を濾過し、不溶性成分を分離した。得られた溶液は、レドックス電位−248mVを有し、コバルト含有量は4質量%であった。
【0178】
モノリス触媒担体として、Corning社製の構造化された成形品の形(円形、9.5×20mm)及び400cpsiのコージライト−モノリス(Celcor(登録商標))を使用した。
【0179】
モノリス触媒担体を120℃で10時間乾燥させた。
【0180】
初めの装填では、γ−酸化アルミニウム(Sasol社製のPural SB)7.9gをギ酸2.4gでエッチングした。γ−酸化アルミニウム(D10-10、BASF SE)256gをエッチングしたγ−酸化アルミニウムと混合し、かつコバルトヘキサアンミン溶液に加えた。
【0181】
乾燥したモノリスを、このように製造された懸濁液に浸漬し、圧縮空気を吹込み、かつ約140℃(±10℃)でホットエア送風機にて乾燥させた。これらの工程を全部で4回浸漬させるために繰り返した。引き続き、モノリスを乾燥棚中で105℃で2時間乾燥させ、かつ280℃で4時間か焼した。触媒前駆体は、1.0質量%の平均コバルト含有量を有していた(金属コバルトとして表示)。
【0182】
例4:
モノリス触媒担体として、構造化された成形品の形(円形、9.5×20mm)及び400cpsiのCorning社製のコージライトモノリス(Celcor(登録商標))を使用した。
【0183】
モノリス触媒担体を120℃で10時間乾燥させた。
【0184】
初めの装填では、酢酸(100%)0.6gで酸化アルミニウム2.1gをエッチングした。その後に、前記混合物に、NiO71質量%、更にAl2O320.4質量%、ZrO28.5質量%及び20〜50μmの粒子フラクションのNa2O0.04質量%を含有する酸化物の混合物65.5g(噴霧乾燥により得られた)を加えた。この混合物に、脱イオン水約160gを加え、かつ得られた懸濁液を高速分散機(IKA社製のUltra-Turrax)により均質化した。
【0185】
乾燥したモノリスを懸濁液に浸漬し、圧縮空気を吹込み、かつ約140℃(±10℃)でホットエア送風機にて乾燥させた。これらの工程を全部で5回浸漬させるために繰り返した。引き続き、モノリスを120℃で10時間乾燥させ、かつ350℃で2時間か焼した。得られた触媒−前駆体は、8.6質量%の平均ニッケル含有量(ニッケルとして表示)を有していた。触媒中のCo−原子:Na−原子のモル比は、730:1であった。
【0186】
例5:
例1aにより製造された触媒前駆体を300℃で10時間、水素90%と窒素10%から成る混合物で還元し、かつ引き続き室温にて空気で不動態化させた。不動態化させたモノリス−押出物を、引き続きホルダー内の11個の穴に挿入し、穴にモノリス−押出物が完全に充填されるようにした。
【0187】
不動態化された触媒を活性化するために、磁気により連結したディスク撹拌機(撹拌速度1000回転/分)、電気ヒーター、内部サーモメター及び反復差圧式メータリングによる水素供給部が備えられた160mlパール−オートクレーブ(hte社)中にモノリスを有するホルダーを挿入した。不動態化された触媒の活性化は、ニトリル水素化の前に、THF中でモノリス触媒を撹拌しながら150℃/100barで12時間にわたり水素で行った。
【0188】
活性化されたコバルトモノリス触媒(コバルト13質量%)を有するホルダーを、オートクレーブから取り外し、かつTHFで濯いだ。例5aの場合には、更に処理せずにホルダーを反応器に挿入した。二者択一的に、アルカリ金属水酸化物LiOH、NaOH、KOH又はCsOHの0.85mol水溶液中でホルダーを室温で30分間貯蔵し(例5b〜5e)、その際に、モノリス触媒は、溶液で完全に湿潤していた(含浸)。
【0189】
3−ジメチルアミノプロピオニトリル(DMAPN)のセミバッチ−水素化を実施して、3−ジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)にするために、オートクレーブ中に、3−ジメチルアミノプロピオニトリル(DMAPN)18.0g、THF 18.0g及び3−ジメチルアミノプロピルアミン25.1gを充填した。充填したオートクレーブ内に、活性化し、場合により塩基含浸した触媒を有するホルダーを挿入した。水素化は、不活性ガス(窒素)下に100℃及び100barで1.5時間実施した。この時間の後に、反応混合物の組成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。予め装入した3−ジメチルアミノプロピルアミンの量は、転化率と選択率を計算する際に引いた(表1)。
【0190】
【表1】

【0191】
例6:
例1a、1b又は例2により製造された触媒を積み重ねた形で有するバブルカラム中で水素化を液相法で実施した。水素化溶出液は相分離容器中で気相と液相に分かれた。液相を取り出し、かつGC分析により定量的に分析した。液相の99.2〜99.99%を新たなDMAPN及び新たな水素と一緒にバブルカラムに戻した。
【0192】
例6a:
例1aにより製造された触媒(11個のモノリス20.4×50mm、1個のモノリス20.4×18.5mm)を120℃及び60barで18時間、THF中水素で還元した。THFを取り出し、かつ装置(バブルカラム+触媒)を室温で60分間、2質量%濃度のLiOH水溶液800mlで濯いだ。引き続き、水溶液を取り出し、かつこれを10分間テトラヒドロフラン800mlで2回濯いだ。次に、DMAPAをTHFで充填した反応器に連続的に送った。
【0193】
3−ジメチルアミノプリピオニトリル(DMAPN)の3−ジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)への水素化は、アンモニアの不在で、120℃、30〜50barの圧力範囲で、及び0.26kg/L・h DMAPN〜0.4kg/L・h DMAPNのWHSVで液相法で運転した。DMAPN−転化率は完全であり、DMAPNの収率は、99.0〜99.7%であった。ビス−DMAPAのフラクションは、相応して1%未満であった。
【0194】
例6b:
例1bにより製造された触媒前駆体を例6aのように還元し、水酸化リチウム溶液で処理し、かつ次にテトラヒドロフランで濯いだ。DMAPNの水素化は、例6aで記載した装置中で行った。これはアンモニアの不在で、120℃で、30〜50barの圧力範囲で、及び0.26kg/L・h DMAPNのWHSVで液相法で300時間運転した。DMAPNの転化率は完全であり、DMAPAの収率は、>99.8%であった。
【0195】
例6c:
例2によりコージライト、γ−酸化アルミニウム及びLiCoO2から出発して製造された不動態化触媒前駆体を、130℃及び50barでバブルカラム中、水素で18時間活性化した。次に、モノリスの洗浄又はその他の後処理をせずに、120℃及び50barで、アンモニアの不在でDMAPNを液相中で反応器に連続的にポンピングした。WHSVは0.26kg/L・hDMAPNであった。この条件を75時間の間保持した。この時間で、転化率は完全であり、収率は99.9%であった。この値は、30バールの圧力まで下がった後でも次の50時間一定であった。次の200時間では、その他の一定条件下では、WHSVは徐々にDMAPN0.26kg/l・hからDMAPN1.04kg/l・hに増大した。ただ1つの変化は、転化率が99.7%に下がったことであった;選択率は99.9%であった。次の115時間の間、温度はDMAPN1.1kg/l・hのWHSVで130℃まで増大した。次に転化率は99.8%で、選択率は同じであった。
【0196】
例7:
コルク酸ジニトリルを水素化してオクタメチレンジアミンにするために、LiCoO2で被覆した例2と同様に製造したモノリス触媒を使用した。モノリス触媒担体として、構造化された成形品の形(円形、18×50mm)及び400cpsiのCorning社製のコージライトを使用した。モノリス−押出物のコバルト含有量は、24〜29質量%、リチウム含有量は2〜4質量%であった。
【0197】
触媒前駆体を、300℃で10時間の間、水素90%と窒素10%から成る混合物で還元し、かつ引き続き室温で空気で不動態化した。引き続き、不動態化したモノリス−押出物をホルダーに用意された11個の穴に挿入し、穴がモノリス−押出物で完全に充填されるようにした。
【0198】
不動態化された触媒を活性化するために、磁気により連結したディスク撹拌機(撹拌速度1000回転/分)、電気ヒーター、内部サーモメター及び反復差圧式メータリングによる水素供給部が備えられた160mlパール−オートクレーブ(hte社)中にモノリスを有するホルダーを挿入した。不動態化された触媒の活性化は、THF中でモノリス触媒を撹拌しながら、ニトリル水素化の前に、150℃/100barで12時間にわたり水素を用いて行った。
【0199】
オートクレーブ中に、11個のモノリス触媒担体を挿入し、コルク酸ジニトリル43gとメタノール43gを充填した。100℃及び65バールで3時間水素化した。水素化の流出液のガスクロマトグラフィー分析により、95.9%のオクタメチレンジアミンの選択率と99.4%のコルク酸ニトリルの転化率が示された。
【0200】
例8:
例3により製造された触媒前駆体を、水素90%と窒素10%から成る混合物を用いて300℃で10時間還元し、かつ次に室温で空気で不動態化した。引き続き、不動態化したモノリス−押出物をホルダーに用意された11個の穴に挿入し、穴がモノリス−押出物で完全に充填されるようにした。
【0201】
不動態化された触媒を活性化するために、磁気により連結したディスク撹拌機(撹拌速度1000回転/分)、電気ヒーター、内部サーモメター及び反復差圧式メータリングによる水素供給部が備えられた160mlパール−オートクレーブ(hte社)中にモノリスを有するホルダーを挿入した。不動態化された触媒の活性化は、THF中でモノリス触媒を撹拌しながら、ニトリル水素化の前に、150℃/100barで12時間にわたり水素を用いて行った。
【0202】
活性化されたコバルト−モノリス触媒(コバルト1質量%)を有するホルダーを、オートクレーブから取り外し、かつTHFで濯いだ。引き続き、ホルダーを更に処理せずに(例8a)反応器に挿入するか、又はアルカリ金属水酸化物LiOHの0.065モル又は0.85モルの水溶液(例8b又は例8c)中で、室温で30分間貯蔵し、その際に、モノリス触媒は前記溶液で完全に湿潤されていた(含浸)。
【0203】
3−ジメチルアミノプロピオニトリル(DMAPN)のセミバッチ−水素化を実施して、3−ジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)にするために、オートクレーブ中に、3−ジメチルアミノプロピオニトリル(DMAPN)18.0g、THF 18.0g及び3−ジメチルアミノプロピルアミン25.1gを充填した。充填したオートクレーブ内に、活性化し、場合により塩基含浸した触媒を有するホルダーを挿入した。水素化は、不活性ガス(窒素)下に100℃及び100barで6時間実施した。この時間の後に、反応混合物の組成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。予め装入した3−ジメチルアミノプロピルアミンの量は、転化率と選択率を計算する際に引いた(表2)。
【0204】
【表2】

【0205】
例9:
例5と同様に、例4により製造されたNiOで被覆したモノリス触媒を、その他の反応条件は変えずに、DMAPNからDMAPAへの反応に使用した。例5とは異なり、反応を6時間の間実施した。
【0206】
活性化したニッケルモノリス触媒(ニッケル8.6質量%)を有するホルダーをオートクレーブから取り外し、かつTHFで濯いだ。引き続き、ホルダーを更に処理せずに反応器に挿入する(例9a)か、又はアルカリ金属水酸化物LiOHの0.85モル水溶液(例9b)中に、室温で30分間貯蔵し、その際に、モノリス触媒は前記溶液で完全に湿潤されていた(含浸)。結果は表3に示されている。
【0207】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コバルト、ニッケル及び銅から成るグループから選択される1つ以上の元素を有する、構造化されたモノリスの形で存在する触媒の触媒特性を改善するための方法において、前記触媒を、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属のグループから選択される1つ以上の塩基性化合物と接触させることを特徴とする、コバルト、ニッケル及び銅から成るグループから選択される1つ以上の元素を有する、構造化されたモノリスの形で存在する触媒の触媒特性を改善するための方法。
【請求項2】
塩基性化合物をコバルト、ニッケル及び銅から成るグループから選択される1つ以上の元素が酸素含有化合物の形で存在している触媒と接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
塩基性化合物をコバルト、ニッケル及び銅から成るグループから選択される1つ以上の元素が還元された形で存在している触媒と接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
触媒を反応において使用する前、後又は間に、溶液としての塩基性化合物を触媒と接触させる、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
触媒を水素化において使用する前、後又は間に、溶液としての塩基性化合物を触媒と接触させる、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
銅及び/又はコバルト及び/又はニッケルを有する、構造化されたモノリスの形で存在する触媒の触媒特性を改善するための、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属のグループから選択される塩基性化合物の使用。
【請求項7】
コバルト、ニッケル及び銅から成るグループから選択される1つ以上の元素を有する、構造化されたモノリスの形で存在する触媒の存在で、少なくとも1つの不飽和炭素−炭素結合、炭素−窒素結合又は炭素−酸素結合を有する化合物を水素化する方法において、前記方法は、該触媒をアルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属のグループから選択される1つ以上の塩基性化合物と接触させることを特徴とする、コバルト、ニッケル及び銅から成るグループから選択される1つ以上の元素を有する、構造化されたモノリスの形で存在する触媒の存在で、少なくとも1つの不飽和炭素−炭素結合、炭素−窒素結合又は炭素−酸素結合を有する化合物を水素化する方法。
【請求項8】
少なくとも1つのニトリル基を有する化合物から第一級アミンを製造するための、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ヘキサメチレンジアミン、アミノカプロニトリル、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン又はイソホロンジアミンを製造するための、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ニトリルの水素化は、アンモニアの不在で行われる、請求項8又は9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
水素化の前に、触媒をアルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属のグループから選択される1つ以上の塩基性化合物と接触させる、請求項7から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
水素化の間に、触媒をアルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属のグループから選択される1つ以上の塩基性化合物と接触させる、請求項7から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
反応混合物の塩基度は、溶液としての塩基性化合物の添加により増大する、請求項7から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
添加される塩基性化合物の量:出発物質流中の水素化すべき出発物質の量の比は、100〜10000:1000000である、請求項7から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
水素化は連続的に行われ、かつ構造化されたモノリスは固定床として配置される、請求項7から14までのいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−517332(P2012−517332A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548655(P2011−548655)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051143
【国際公開番号】WO2010/089266
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】