説明

モノ不飽和脂肪酸の製造方法

【課題】 リノール酸などの多不飽和脂肪酸含量が少なく、飽和脂肪酸含量、トランス酸含量も少ない、高品質なモノ不飽和脂肪酸を製造するための水添用触媒、並びに高品質なモノ不飽和脂肪酸の製造方法の提供。
【解決手段】 銅と、下記群Aから選ばれる少なくとも1種の元素とを含有する、多不飽和脂肪酸のモノ不飽和脂肪酸への水添用触媒、並びにこの水添用触媒を用いて、多不飽和脂肪酸を含有する原料脂肪酸を水素化する、モノ不飽和脂肪酸の製造方法。
群A:モリブデン、ジルコニウム、バナジウム、ガリウム、及び周期律表3族の元素

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滑剤、可塑剤、油剤、乳化剤、洗浄剤等の原料として、広く利用されている高品質なモノ不飽和脂肪酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モノ不飽和脂肪酸、例えばオレイン酸は、一般的に牛脂等の油脂を加水分解して得られる脂肪酸を液体酸と固体酸に分別後、得られた液体酸を蒸留し、全留出物を取得することにより製造されている。しかしながら、この方法により製造されたオレイン酸は、リノール酸などの多不飽和脂肪酸を含有し、それがオレイン酸の純度を低下させるばかりでなく、色相、匂い、酸化安定性など品質低下の原因となっており、従来より改善が望まれていた。
【0003】
オレイン酸中のリノール酸などの多不飽和脂肪酸を除去する方法としては、クロマトグラフィー分離法、尿素付加法等の精製による方法と、触媒を用いて多不飽和脂肪酸を選択的に水素化する方法がある。
【0004】
しかし、クロマトグラフィー分離法、尿素付加法等の精製による方法は、製造コスト、処理能力等の点で工業的製造法として満足できる方法ではない。
【0005】
一方、触媒を使用した水素化によるオレイン酸の製造法としては、原料として油脂、脂肪酸またはそのエステルを用いて、触媒としてニッケル、パラジウム、ロジウム、銅等の固体触媒を用いる方法が検討されている。銅触媒は他の固体触媒と比較すると、安価であり、飽和脂肪酸の生成が極めて少ないという長所を有している。
【0006】
しかしながら、銅は水素化原料である脂肪酸に溶出しやすく、銅石鹸を形成しやすい。また、形成された銅石鹸が水素化されて生成する金属銅は凝集しやすく、触媒活性を低下させる。この課題を克服するために、銅含有触媒の使用方法として、脂肪族アルコール、脂肪酸エステル等の不活性な液体中で、予め還元活性化する方法が開示されている(特許文献1)。しかしこの方法では、反応原料以外の液体を使用することで、還元活性化のための反応槽などの設備、並びに、還元活性化後の触媒の分離設備が必要となり、コスト、労力、生産能力等に問題があった。
【特許文献1】特開平8−99036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、リノール酸などの多不飽和脂肪酸含量が少なく、飽和脂肪酸含量、トランス酸含量も少ない、高品質なモノ不飽和脂肪酸を製造するための水添用触媒、並びに高品質なモノ不飽和脂肪酸の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、銅と、下記群Aから選ばれる少なくとも1種の元素とを含有する、多不飽和脂肪酸のモノ不飽和脂肪酸への水添用触媒、並びにこの水添用触媒を用いて、多不飽和脂肪酸を含有する原料脂肪酸を水素化する、モノ不飽和脂肪酸の製造方法を提供する。
群A:モリブデン、ジルコニウム、バナジウム、ガリウム、及び周期律表3族の元素
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、多不飽和脂肪酸含量が低減され、飽和脂肪酸含量、トランス酸含量も少ない高品質なモノ不飽和脂肪酸を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[水添用触媒及びその製造法]
本発明において使用される水添用触媒は、銅と、上記群Aから選ばれる少なくとも1種の元素とを含有する。
【0011】
群Aの元素としては、モリブデン、ジルコニウム、バナジウム、ガリウムや、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド元素、アクチノイド元素等の周期律表3族の元素が挙げられ、その中で、モリブデン、ジルコニウム、イットリウム、ランタンが好ましく、モリブデン、ジルコニウム、イットリウムが更に好ましい。
【0012】
本発明の水添用触媒中の銅と群Aの元素との重量比は、銅/(群Aの元素)=100/0.1〜100/80の範囲が好ましく、100/1〜100/50の範囲が更に好ましい。
【0013】
本発明の水添用触媒は、下記(1)〜(3)の方法等により製造することができる。
【0014】
(1)含浸担持法
含浸担持法は、銅の酸化物、水酸化物、炭酸塩又はそれらの混合物に、群Aから選ばれる少なくとも1種の元素の金属塩を含浸担持させて水添用触媒を得る方法である。
【0015】
具体的には、例えば、銅を含む金属塩水溶液と、沈殿剤を混合することにより沈殿物を得て、引き続き、ろ過、水洗、乾燥、焼成、又はそれらの工程を組み合わせて得られる銅の酸化物、水酸化物、炭酸塩又はそれらの混合物に、群Aから選ばれる少なくとも1種の元素の金属塩を含浸担持させて水添用触媒を得る。ここで用いられる沈殿剤としては、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、尿素等のアルカリ水溶液が挙げられる。
【0016】
含浸担持する方法は、群Aから選ばれる少なくとも1種の元素の金属塩の水溶液を、銅の酸化物、水酸化物、炭酸塩又はそれらの混合物に、接触、混合させた後、水分を乾燥により除去する方法が挙げられる。乾燥して得られた含浸担持触媒は、更に焼成してもよい。
【0017】
(2)共沈殿法
共沈殿法は、銅の金属塩と、群Aから選ばれる少なくとも1種の元素の金属塩を含む混合水溶液から沈殿剤により沈殿物を形成させて水添用触媒を得る方法である。
【0018】
具体的には、銅の金属塩と、群Aから選ばれる少なくとも1種の元素の金属塩を含む混合水溶液と、沈殿剤を混合することにより沈殿物を得て、引き続き、ろ過、水洗、乾燥、焼成、又はそれらの工程を組み合わせて水添用触媒を得る。
【0019】
ここで用いられる沈殿剤としては、上記(1)の方法と同様のものが挙げられる。
【0020】
(3)アルコキシド加水分解による共沈殿法
アルコキシド加水分解による共沈殿法は、銅と、群Aから選ばれる少なくとも1種の金属とのアルコキシドの溶液から沈殿物を形成させて水添用触媒を得る方法である。
【0021】
具体的には、銅と、群Aから選ばれる少なくとも1種の金属とのアルコキシドの溶液を、水、あるいは酸又は塩基性水溶液を混合することで沈殿物を得て、引き続き、ろ過、水洗、乾燥、焼成、又はそれらの工程を組み合わせて水添用触媒を得る。
【0022】
上記(1)〜(3)の製造方法の中では、(1)の含浸担持法と(2)の共沈殿法が好ましく、(1)の含浸担持法が更に好ましい。
【0023】
上記方法で使用される金属塩は水溶性のものであれば、全て使用可能である。例えば、銅、イットリウム、ランタン、セリウムの金属塩としては、硝酸塩、硫酸塩、アンモニウム錯塩、酢酸塩、シュウ酸塩、及び塩化物が、モリブデン及びバナジウムの金属塩としては、アンモニウム塩、塩化物が、ジルコニウムの金属塩としては、硝酸塩、オキシ硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物が、スカンジウムの金属塩としては、硝酸塩、酢酸塩、塩化物が、またガリウムの金属塩としては、硝酸塩、塩化物が用いられる。
【0024】
乾燥及び焼成は、20℃〜700℃で行うことが好ましく、20℃〜400℃で行うのが更に好ましい。圧力は、特に限定されないが、製造時間の観点から、低い温度、たとえば90℃以下で乾燥する場合、減圧下で行うことが好ましい。
【0025】
本発明の水添用触媒は担体に担持されていてもよい。担体としては、具体的には、チタニア、ジルコニア、珪藻土、シリカ、シリカアルミナ、アルミナ、ニオビア、活性炭等が挙げられる。
【0026】
含浸担持法の場合は、担体の存在下、銅の金属塩水溶液と、沈殿剤を混合することにより沈殿物を得て、引き続き、ろ過、水洗、乾燥、焼成、又はそれらの工程を組み合わせて得られる銅/担体の酸化物、水酸化物、炭酸塩又はそれらの混合物に、群Aから選ばれる少なくとも1種の元素の金属塩を含浸担持させて、担体に担持された水添用触媒が製造される。
【0027】
共沈殿法の場合は、担体の存在下、銅の金属塩と、群Aから選ばれる少なくとも1種の元素の金属塩を含む混合水溶液と、沈殿剤を混合することにより沈殿物を得て、引き続き、ろ過、水洗、乾燥、焼成、又はそれらの工程を組み合わせて、担体に担持された水添用触媒が製造される。
【0028】
[水添用触媒の還元活性化法]
多不飽和脂肪酸の水素化に際し、触媒の還元活性化を行う場合は、不活性な液体中で行っても差し支えないが、水素化反応によりモノ不飽和脂肪酸を製造するための原料脂肪酸中で行っても何ら問題はなく、この場合、触媒の還元活性化と水素化を連続的に行うことができるので好ましい。
【0029】
水素化反応によりモノ不飽和脂肪酸を製造するための原料脂肪酸を、触媒の還元活性化用脂肪酸として使用する場合は、原料脂肪酸と触媒の混合物中にガスを流通させる方法が簡便であり好ましい。
【0030】
ここで用いるガス(以下、流通ガスと呼ぶ)は、還元に用いる水素ガスを使用しても良く、あるいは水素ガスと不活性ガスの混合ガスを用いても良い。流通ガスの流量は、特に限定されないが、銅1モルに対し1時間あたり5モル(以下、5mol/mol/hと表す)以上を流通させることが好ましく、10mol/mol/h以上がより好ましく、20mol/mol/h以上がさらに好ましい。流量の上限は特に限定されないが、経済性、脂肪酸の揮発あるいは飛沫同伴を考慮し、600mol/mol/h以下が好ましく、300mol/mol/h以下がさらに好ましい。不活性ガスとしては、アルゴン、窒素等が好ましく、窒素ガスがより好ましい。水素ガスと不活性ガスの混合ガスを使用する場合、水素ガスと不活性ガスの比は、水素ガス/不活性ガスの比が0.01mol/mol以上であることが好ましく、0.1mol/mol以上がより好ましい。
【0031】
ガスの流通を開始する温度は、20〜190℃の範囲が好ましく、50〜180℃の範囲がより好ましい。ガス流通を開始してからは、温度を一定に保ちながら還元活性化を行うことができるが、昇温を継続させながら還元活性化を行うことも可能である。この場合、昇温速度は、100℃/h以下が好ましく、70℃/h以下がより好ましい。還元活性化を十分に行うために、ガス流通時の最高温度は、120℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましい。一方、触媒の熱的劣化を抑制するため、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましい。還元活性化時間は特に限定されないが、20分以上が好ましく、40分以上がさらに好ましい。上限は特に限定されないが、10時間以下が好ましい。還元活性化工程における圧力は特に限定されないが、常圧〜5MPa・Gが好ましく、さらに好ましくは常圧〜3MPa・Gである。
【0032】
[モノ不飽和脂肪酸の製造方法]
本発明のモノ不飽和脂肪酸の製造方法は、本発明に係わる水添用触媒を用いて、多不飽和脂肪酸を含有する原料脂肪酸を水素化して、モノ不飽和脂肪酸を製造する方法であり、特にリノール酸等の多不飽和脂肪酸を含有する原料脂肪酸を水素化して、高品質のオレイン酸を製造する場合に好適に用いられる。
【0033】
オレイン酸の製造に用いられる原料脂肪酸は、原料油脂を脂肪酸とグリセリンに加水分解することにより得ることができる。原料油脂としては、牛脂、羊脂、豚脂、鶏脂、パーム油、パーム油を分別して得られるパームステアリンもしくはパームオレイン、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックひまわり油、落花生油、大豆油、ヤシ油、綿実油、なたね油、パーム核油等の動植物油が挙げられるが、低融点のオレイン酸を得るためには、例えば、牛脂、羊油、鶏脂、ハイオレイックひまわり油、パーム核油等の動植物油が好ましい。
【0034】
原料油脂の加水分解の方法としては、公知の方法で行うことが出来、具体的には高圧連続分解法、中圧法、酵素法等の一般的に工業化に利用されている方法で行うことができる。このようにして得られた脂肪酸は必要に応じ、公知の方法及び条件により蒸留してもよい。例えば、炭素数18の脂肪酸以外の脂肪酸を多量に含む油脂を加水分解した場合には、この段階で蒸留を行い、炭素数18の脂肪酸を主成分とする脂肪酸を得て、それを液体酸と固体酸に分別する工程に供することにより、より効率的に目的のオレイン酸製造用原料脂肪酸を製造することができる。
【0035】
液体酸と固体酸に分別する方法としては、溶剤分別法、活性剤分別法等の一般的に工業的に利用されている方法で行うことができる。このようにして得られた液体酸は、必要に応じ、公知の方法及び条件により蒸留してもよい。
【0036】
次にこのようにして得られた原料脂肪酸を、本発明に係わる水添用触媒を用いて、水素化する。触媒量が多すぎたり、温度また水素圧力が高すぎると飽和脂肪酸の生成が増加し、温度が低すぎると水素化活性が低下し、反応に長い時間を要するので好ましくない。かかる観点より、触媒の使用量は、原料脂肪酸に対し、0.1〜5重量%が好ましく、0.2〜4重量%がより好ましい。
【0037】
水素化反応温度は、120℃〜280℃が好ましく、150〜230℃がより好ましい。水素圧力は常圧〜3MPa・Gが好ましく、常圧〜1MPa・Gがより好ましい。水素化反応は、水素ガスの流通下または、水素ガス雰囲気密閉条件とも利用することが可能である。反応の終了は、残存する多不飽和脂肪酸量並びに飽和脂肪酸量から、適宜判断することができる。
【実施例】
【0038】
以下の例において、%は特記しない限り重量%である。また、Cm:nは、炭素数mで二重結合数nの脂肪酸を意味する。脂肪酸組成はジアゾメタンにより、メチル化後、ガスクロマトグラフィー分析を行うことにより求めた。
【0039】
以下の例で原料脂肪酸として使用した液体酸1〜3は、牛脂を常法により高圧加水分解した牛脂脂肪酸を、常法により活性剤法で分別することにより得た。その脂肪酸組成は表1に示した通りであった。
【0040】
【表1】

【0041】
実施例1
9%の炭酸ナトリウム水溶液に、15%の硝酸銅水溶液を室温で滴下してスラリーを得た。滴下終了後のpHは7.0であった。このスラリーより沈殿物をろ別し、十分水洗した後、120℃で14時間乾燥し、粉体を得た。この粉体10.43gを水中に懸濁させ、そこへモリブデン酸アンモニウム0.55gの水溶液を加えて室温で攪拌後、エバポレーターにより、70℃にて水を留去した。得られた固体を120℃で14時間乾燥後、300℃で2時間焼成して、触媒(重量比は、銅/モリブデン=100/5.0)を得た。この触媒を0.57%(対液体酸)用いて、表1に示した組成の液体酸1中で、水素0.01MPa・G密閉条件下、室温から170℃まで昇温した。170℃到達後、水素流通を開始し、水素/銅=25mol/mol/hの水素流通下、常圧、30℃/hの昇温速度で1時間、触媒を還元活性化した。その後200℃、0.40MPa・G密閉条件下で、4時間水素化を行った。得られたオレイン酸に富む脂肪酸の組成を表2に示した。
【0042】
実施例2
9%の炭酸ナトリウム水溶液に、15%の硝酸銅水溶液を室温で滴下してスラリーを得た。滴下終了後のpHは7.0であった。このスラリーより沈殿物をろ別し、十分水洗した後、120℃で14時間乾燥し、粉体を得た。この粉体10.43gを水中に懸濁させ、そこへオキシ硝酸ジルコニウム0.87gの水溶液を加えて室温で攪拌後、エバポレーターにより、70℃にて水を留去した。得られた固体を120℃で14時間乾燥後、500℃で2時間焼成して、触媒(重量比は、銅/ジルコニウム=100/5.0)を得た。この触媒を使用し、表1に示した組成の液体酸2を用いる以外は実施例1と同様の還元活性化処理の後、同様の条件下、水素化反応を行った。得られたオレイン酸に富む脂肪酸の組成を表2に示した。
【0043】
実施例3
9%の炭酸ナトリウム水溶液に、硝酸銅42.82g、及びオキシ硝酸ジルコニウム1.65gの混合水溶液を室温で滴下してスラリーを得た。滴下終了後のpHは7.2であった。このスラリーより沈殿物をろ別し、十分水洗した後、120℃で14時間乾燥し、500℃で2時間焼成して、触媒(重量比は、銅/ジルコニウム=100/5.0)を得た。この触媒を使用し、表1に示した組成の液体酸2を用いる以外は実施例1と同様の還元活性化処理の後、同様の条件下、水素化反応を行った。得られたオレイン酸に富む脂肪酸の組成を表2に示した。
【0044】
実施例4
9%の炭酸ナトリウム水溶液に、15%の硝酸銅水溶液を室温で滴下してスラリーを得た。滴下終了後のpHは7.0であった。このスラリーより沈殿物をろ別し、十分水洗した後、120℃で14時間乾燥し、粉体を得た。この粉体10.43gを水中に懸濁させ、そこへ硝酸イットリウム1.27gの水溶液を加えて室温で攪拌後、エバポレーターにより、70℃にて水を留去した。得られた固体を120℃で14時間乾燥後、500℃で2時間焼成して、触媒(重量比は、銅/イットリウム=100/5.0)を得た。この触媒を使用し、表1に示した組成の液体酸2を用いる以外は実施例1と同様の還元活性化処理の後、同様の条件下、水素化反応を行った。得られたオレイン酸に富む脂肪酸の組成を表2に示した。
【0045】
実施例5
9%の炭酸ナトリウム水溶液に、15%の硝酸銅水溶液を室温で滴下してスラリーを得た。滴下終了後のpHは7.0であった。このスラリーより沈殿物をろ別し、十分水洗した後、120℃で14時間乾燥し、粉体を得た。この粉体10.43gを水中に懸濁させ、そこへモリブデン酸アンモニウム0.11gの水溶液を加えて室温で攪拌後、エバポレーターにより、70℃にて水を留去した。得られた固体を120℃で14時間乾燥後、500℃で2時間焼成して、触媒(重量比は、銅/モリブデン=100/1.0)を得た。この触媒を使用し、表1に示した組成の液体酸2を用いる以外は実施例1と同様の還元活性化処理の後、同様の条件下、水素化反応を行った。得られたオレイン酸に富む脂肪酸の組成を表2に示した。
【0046】
実施例6
9%の炭酸ナトリウム水溶液に、15%の硝酸銅水溶液を室温で滴下してスラリーを得た。滴下終了後のpHは7.0であった。このスラリーより沈殿物をろ別し、十分水洗した後、120℃で14時間乾燥し、粉体を得た。この粉体10.43gを水中に懸濁させ、そこへモリブデン酸アンモニウム1.65gの水溶液を加えて室温で攪拌後、エバポレーターにより、70℃にて水を留去した。得られた固体を120℃で14時間乾燥後、300℃で2時間焼成して、触媒(重量比は、銅/モリブデン=100/15)を得た。この触媒を使用し、実施例1と同様の還元活性化処理の後、同様の条件下、水素化反応を行った。得られたオレイン酸に富む脂肪酸の組成を表2に示した。
【0047】
実施例7
9%の炭酸ナトリウム水溶液に、15%の硝酸銅水溶液を室温で滴下してスラリーを得た。滴下終了後のpHは7.0であった。このスラリーより沈殿物をろ別し、十分水洗した後、120℃で14時間乾燥し、粉体を得た。この粉体10.43gを水中に懸濁させ、そこへモリブデン酸アンモニウム0.55gの水溶液を加えて室温で攪拌後、エバポレーターにより、70℃にて水を留去した。得られた固体を120℃で14時間乾燥して、触媒(重量比は、銅/モリブデン=100/5.0)を得た。この触媒0.79%(対液体酸)を使用し、実施例1と同様の還元活性化処理の後、同様の条件下、水素化反応を行った。得られたオレイン酸に富む脂肪酸の組成を表2に示した。
【0048】
比較例1
9%の炭酸ナトリウム水溶液に、15%の硝酸銅水溶液を室温で滴下してスラリーを得た。滴下終了後のpHは7.0であった。このスラリーより沈殿物をろ別し、十分水洗した後、120℃で14時間乾燥し、次いで500℃で2時間焼成して、触媒を得た。この触媒を使用し、実施例1と同様の還元活性化処理の後、同様の条件下、水素化反応を行った。得られたオレイン酸に富む脂肪酸の組成を表2に示した。
【0049】
比較例2
パラジウム/シリカアルミナ触媒(エヌ・イー・ケムキャット(株)製、パラジウム含量5%)を0.40%(対液体酸)用いて、表1に示した組成の液体酸3中で、50℃、0.10MPa・G密閉条件下で、4時間水素化を行った。得られたオレイン酸に富む脂肪酸の組成を表2に示した。リノール酸の反応率は高いが、オレイン酸中のトランス体(エライジン酸)が非常に多いことがわかる。
【0050】
【表2】

【0051】
注)
*1:対原料脂肪酸%
*2:全脂肪酸中の、C18:1トランス体(エライジン酸)の重量%を表す。
*3:C18:2の反応率[%]=(原料脂肪酸中のC18:2の割合[%]−反応4時間後のC18:2の割合[%])/原料脂肪酸中のC18:2の割合[%]ラ100

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅と、下記群Aから選ばれる少なくとも1種の元素とを含有する、多不飽和脂肪酸のモノ不飽和脂肪酸への水添用触媒。
群A:モリブデン、ジルコニウム、バナジウム、ガリウム、及び周期律表3族の元素
【請求項2】
銅と群Aの元素との重量比(銅/群Aの元素)が、100/0.1〜100/80の範囲である、請求項1記載の水添用触媒。
【請求項3】
銅の酸化物、水酸化物、炭酸塩又はそれらの混合物に、群Aから選ばれる少なくとも1種の元素の金属塩を含浸担持させて得られる、請求項1又は2記載の水添用触媒。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載の水添用触媒を用いて、多不飽和脂肪酸を含有する原料脂肪酸を水素化する、モノ不飽和脂肪酸の製造方法。
【請求項5】
多不飽和脂肪酸を含有する原料脂肪酸中で触媒の還元活性化処理を行った後、原料脂肪酸の水素化を行う、請求項4記載のモノ不飽和脂肪酸の製造方法。

【公開番号】特開2007−175563(P2007−175563A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−373981(P2005−373981)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】