説明

モータおよび記録ディスク駆動装置

【課題】モータが中心軸方向に大きくなることを防止することである。
【解決手段】モータ1は、軸受機構3と、前記軸受機構3の径方向外側に設けられたステータ22を有する静止部2と、前記軸受機構3により前記静止部2の上方にて支持され、前記静止部3に対して回転可能に支持される回転部4とを備え、前記回転部4が、前記ステータ22を覆う有蓋略円筒状のロータヨーク41を備え、前記軸受機構3が、プレス加工にて成型された有底略円筒状のブッシュ32と、前記ブッシュ32の内側面に固定されるとともに、上部が前記ブッシュ32から突出するスリーブ33と、前記スリーブ33に挿入されるシャフト31とを備え、前記ブッシュ32の上端の位置が、中心軸J1に平行な方向において、前記ステータ22の上端よりも低い、または、前記上端と同じである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式のモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電動式のモータには、すべり軸受を介して回転部が静止部に対して支持されるものがある。
【0003】
特開2008−283759号公報に開示されるモータは、含油すべり軸受であるスリーブと、ハウジングと、シャフトとを備える。スリーブはハウジングの円筒部に圧入にて固定される。シャフトはスリーブの内側に位置する。モータの駆動時には、スリーブの内側面がシャフトの外側面を受けることにより、シャフトを含む回転体が回転自在に支持される。なお、ハウジングの外周面には、ステータが保持される。ステータの上面には、予圧マグネットが配置される。
【特許文献1】特開2008−283759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、薄型のモータでは、スリーブを保持するブッシュとブッシュの上方に位置する有蓋円筒状のロータヨークとの間に、予圧マグネット等を設ける設計を行うと、モータが中心軸方向に大きくなってしまう。また、スリーブがシャフトを適切に支持するために、スリーブおよびシャフトの軸受面の長さを十分に確保する必要がある。モータの製造コストも低減する必要がある。
【0005】
本発明の主たる目的の1つは、ブッシュとロータヨークの蓋部との間にモータの他の部品が設けられる場合において、モータが中心軸方向に大きくなることを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的なモータは、軸受機構と、前記軸受機構の径方向外側に設けられたステータを有する静止部と、前記軸受機構により前記静止部の上方にて支持され、前記静止部に対して回転可能に支持される回転部とを備え、前記回転部が、前記ステータを覆う有蓋略円筒状のロータヨークを備え、前記軸受機構が、プレス加工にて成型された有底略円筒状のブッシュと、前記ブッシュの内側面に固定されるとともに、上部が前記ブッシュから突出するスリーブと、前記スリーブに挿入されるシャフトと、を備え、前記ブッシュの上端の位置が、中心軸に平行な方向において、前記ステータの上端よりも低い、または、前記上端と同じである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ブッシュとロータヨークの蓋部との間にモータの他の部品が設けられる場合において、モータが中心軸方向に大きくなることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る記録ディスク駆動装置の断面図である。
【図2】図2は、モータの断面図である。
【図3】図3は、モータの断面図である。
【図4】図4は、抜止部材の平面図である。
【図5】図5は、抜止部材の断面図である。
【図6】図6は、抜止部材の断面図である。
【図7】図7は、モータの断面図である。
【図8】図8は、モータの平面図である。
【図9】図9は、モータの断面図である。
【図10】図10は、モータの組み立ての流れを示す図である。
【図11】図11は、抜止部材の元部材の平面図である。
【図12】図12は、抜止部材およびディスク載置部の断面図である。
【図13】図13は、抜止部材および予圧マグネットの断面図である。
【図14】図14は、回転部の断面図である。
【図15】図15は、回転部、静止部および軸受機構の断面図である。
【図16】図16は、第2の実施形態に係るモータの回転部の断面図である。
【図17】図17は、第3の実施形態に係るモータの断面図である。
【図18】図18は、第4の実施形態に係るモータの抜止部材を示す平面図である。
【図19】図19は、モータの断面図である。
【図20】図20は、回転部、静止部および軸受機構の断面図である。
【図21】図21は、ブッシュの他の例を示す図である。
【図22】図22は、第5の実施形態に係るモータの抜止部材を示す平面図である。
【図23】図23は、抜止部材の他の例を示す図である。
【図24】図24は、ステータの他の例を示すモータの断面図である。
【図25】図25は、回転部の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書では、中心軸J1方向における上側を単に「上側」と呼び、下側を単に「下側」と呼ぶ。なお、「上側」「下側」は、実際の機器に組み込まれたときの位置関係や方向を示すものではない。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の例示的な第1の実施形態に係る記録ディスク駆動装置の断面図である。記録ディスク駆動装置10は、モータ1と、アクセス部11と、これらを内部に収容する箱状のハウジング12と、を備える。モータ1は、高さが数mmから十数mmのスリム型である。モータ1では、後述のチャッキング装置5が記録ディスク9の中央孔91に嵌り合い、チャッキング装置5により記録ディスク9が固定される。アクセス部11は、ヘッド111と、ヘッド移動機構112とを備える。ヘッド111は、記録ディスク9に対する情報の読み出しおよび/または書き込みを行う光ピックアップ機構である。記録ディスク9として、例えば、ブルーレイディスクが利用される。他の種類の光ディスクが利用されてもよい。
【0011】
ヘッド移動機構112は、ヘッド111をモータ1および記録ディスク9に対して移動する。ヘッド111は、光出射部と、受光部とを有する。光出射部は、記録ディスク9の下面に向けてレーザ光を出射する。受光部は、記録ディスク9からの反射光を受光する。ハウジング12は、記録ディスク駆動装置10内への記録ディスク9の取り付けおよび取り出し時に開閉する蓋部121を上部に有する。記録ディスク駆動装置10では、モータ1により記録ディスク9が回転され、ヘッド移動機構112がヘッド111を所要の位置へと移動させて、記録ディスク9に対する情報の読み出しおよび/または書き込みが行われる。
【0012】
図2はモータ1の縦断面図である。記録ディスク9を二点鎖線にて示している。モータ1は、固定組立体である静止部2と、軸受機構3と、回転組立体である回転部4と、チャッキング装置5と、を備える。回転部4は、静止部2および軸受機構3の上方に位置し、軸受機構3により、静止部2に対して中心軸J1を中心として回転可能に支持される。チャッキング装置5は、回転部4の上部に設けられる。
【0013】
静止部2は、略板状のベース部21と、ステータ22と、環状のステータ保持部材23と、回路基板24と、を備える。ベース部21は金属にて形成される。ベース部21の中央に設けられた円筒状の軸受ホルダ211には、軸受機構3が取り付けられる。ステータ22は、軸受機構3の径方向外側に設けられ、ステータコア221と、ステータコア221上に形成された複数のコイル222と、を備える。ステータコア221は、積層鋼板にて形成される。回路基板24は、ベース部21上に配置される。ステータ保持部材23は、軸受機構3の周囲に設けられるとともに、ステータ22の上端よりも下方に位置する。静止部2では、ステータコア221がステータ保持部材23の外周に設けられることにより、ステータ22が軸受機構3に間接的に固定される。
【0014】
図3は、軸受機構3近傍を拡大して示す図である。軸受機構3は、シャフト31と、有底略円筒状のブッシュ32と、スリーブ33と、潤滑油34と、を備える。ブッシュ32は、磁性材料をプレス加工することにより成型される。これにより、ブッシュ32は安価に製造可能である。ブッシュ32の下部は、軸受ホルダ211の内側に固定される。潤滑油34は、ブッシュ32の内側に保持される。
【0015】
ブッシュ32の円筒部321の外側面には、ステータ保持部材23が取り付けられる。円筒部321の上部は、中心軸J1を中心とする径方向外方に突出するフランジ部を備える。以下、上部を「フランジ部321a」と呼ぶ。フランジ部321aは、絞り加工にて成型されることにより、十分な強度を確保できる。ブッシュ32では、フランジ部321aの位置、すなわち、ブッシュ32の上端の位置が、中心軸J1に平行な方向において、コイル222の上端222aの位置よりも低い。ブッシュ32の底部322の内底面には、円板状のスラストプレート35が設けられる。スラストプレート35はスリーブ33の下端に当接し、スリーブ33に押さえられて固定される。
【0016】
スリーブ33は、含油性の多孔質焼結金属体により形成され、ブッシュ32の内側面321bに圧入にて固定される。スリーブ33の上部331は、ブッシュ32から突出する。スリーブ33の内側面332の中央部は、中心軸J1を中心とする径方向(以下、単に「径方向」という)における外方に向かって窪む。スリーブ33の外側面333の下部333bは、径方向内方に向かって窪み、外側面333とブッシュ32の内側面321bとの間に、隙間が設けられる。このように、スリーブ33は、いわゆる、中逃げ構造を有している。スリーブ33において、窪んでいる内側面332の中央部に対応する、外側面333の外周部の一部分がブッシュ32に押圧され、かつ、外側面333の上部333aおよび下部333bはブッシュ32に押圧されていない。このことにより、スリーブ33は、内径の精度が確保されつつ、ブッシュ32に固定される。
【0017】
モータ1では、スリーブ33に挿入されたシャフト31の下端が、スラストプレート35を介してブッシュ32の底部322に当接することにより、シャフト31がスラスト方向に安定して支持される。さらに、シャフト31は、スリーブ33により、潤滑油34を介してラジアル方向に支持される。
【0018】
図2に示すように、回転部4は、有蓋略円筒状のロータヨーク41と、ロータマグネット42と、環状の予圧マグネット43と、環状ラバー44と、環状の抜止部材6と、を備える。ロータヨーク41は、磁性材料にて形成され、ステータ22を覆う。ロータヨーク41は、蓋部と、円筒部412と、円筒状のシャフト固定部413と、を備え、蓋部はディスク載置部411になっている。ディスク載置部411は、中心軸J1に略垂直であり、チャッキング装置5の周囲に広がる。ディスク載置部411には、周方向に複数の貫通孔414が設けられる(図8参照)。環状ラバー44は、ディスク載置部411の上面の外周に設けられる。記録ディスク9は、環状ラバー44を介して間接的にディスク載置部411上に載置される。
【0019】
円筒部412は、ディスク載置部411の外周から下方に伸びる。円筒部412の内側面には、ロータマグネット42が取り付けられる。ロータマグネット42は、ステータ22と中心軸J1に垂直な方向に対向する。モータ1の駆動時には、ロータマグネット42とステータ22との間にて、磁気的作用が生じる。シャフト固定部413は、ディスク載置部411の中央に設けられる。シャフト固定部413には、シャフト31の上部が挿入される。
【0020】
予圧マグネット43は、ブッシュ32のフランジ部321aと中心軸J1方向に対向しつつ、ディスク載置部411の下面上に設けられる。予圧マグネット43は、中心軸J1を中心とする周方向(以下、単に「周方向」という)において、多極着磁されている。これにより、単極着磁よりも磁気ループが小さくなり、他部材への磁気的影響が低減される。
【0021】
回転部4では、予圧マグネット43が、フランジ部321aと中心軸J1に平行な方向において重なるとともにフランジ部321aに近接して配置されることから、予圧マグネット43と軸受機構3との間にて十分な磁気的作用が生じる。予圧マグネット43が、ステータ22よりも径方向内側に位置する。このことから、予圧マグネット43とステータ22との間において、磁気的な干渉が防止される。さらに、モータ1では、予圧マグネット43がステータ22の上部に設けられる場合に比べて、予圧マグネット43によるステータ22の電気特性への影響が低減される。抜止部材6は、ディスク載置部411に設けられる。モータ1は、抜止部材6が存在しない場合にシャフト31をスリーブ33から容易に引き抜くことが可能な構造を有する。抜止部材6が設けられることにより、回転部4の静止部2からの分離が防止される。抜止部材6は、金属の板部材をプレス加工することにより容易に成型される。
【0022】
図4は、抜止部材6の平面図である。図5および図6はそれぞれ、図4中の矢印AおよびBの位置にて抜止部材6を切断した断面図である。図6では、奥側に見える形状も示している。図4ないし図6に示すように、抜止部材6は、中心軸J1に垂直な円弧状の3つの当接部611と、3つの上突出部621と、3つの下突出部63と、図4および図5に示す3つの脱落防止部64と、を備える。
【0023】
上突出部621は、当接部611よりも上方に突出する。下突出部63および脱落防止部64は、当接部611よりも下方に突出する。図4ないし図6では、上突出部621は、中心軸J1に平行に伸びた状態にて示されている。しかし、図7に示すように、抜止部材6がディスク載置部411に固定された状態では、上突出部621がディスク載置部411に向かって外側へ折り曲げられている。
【0024】
図4に示すように、3つの当接部611は周方向に等間隔に並ぶ。上突出部621および下突出部63は、周方向において等間隔に当接部611の間に設けられる。脱落防止部64は、周方向において下突出部63の間に位置する。図4ないし図6に示すように、上突出部621は、周方向において下突出部63と同位置に位置する。図5に示すように、上突出部621には、上方に向かいつつ径方向内方へと向かう傾斜部621aが設けられる。
【0025】
図7に示すように、回転部4では、抜止部材6の当接部611がディスク載置部411の下面に当接する。上突出部621は、ディスク載置部411の貫通孔414に挿入されて折り曲げられることにより、ディスク載置部411の上面に当接する。正確には、上突出部621は、貫通孔414の上側のエッジ414aに当接する。
【0026】
3つの当接部611および3つの上突出部621が、ディスク載置部411を挟み込んでいる。このことにより、ディスク載置部411に対する中心軸J1に平行な方向における抜止部材6の位置が固定される。以下、3つの当接部611をまとめて「下固定部61」と呼び、3つの上突出部621をまとめて「上固定部62」と呼ぶ。下固定部61は、ステータ22のコイル222よりも径方向内側に位置することから、モータ1を中心軸J1方向に大きくすることなく、コイル222の巻き線スペースが確保される。
【0027】
下突出部63は、ディスク載置部411の下面から下方に突出し、ステータ22とブッシュ32との間に位置する。下突出部63では、先端部631が、径方向内方に向かって伸び、フランジ部321aの下方に近接して位置する。また、先端部631は、ステータコア221の径方向内側における上端221aよりも下方に位置する。モータ1では、回転部4に静止部2から離れる方向の力が加わった場合に、先端部631がフランジ部321aに当接することにより、回転部4の静止部2からの分離が防止される。以下、先端部631を「抜止部631」と呼ぶ。
【0028】
脱落防止部64では、先端641が予圧マグネット43の下面の下方へと屈曲する。本実施形態では、予圧マグネット43および脱落防止部64は、中心軸J1に平行な方向および径方向において50μm程度離間する。なお、予圧マグネット43および脱落防止部64は、互いに当接してもよい。
【0029】
モータ1では、外部から与えられる力により、予圧マグネット43がディスク載置部411から仮に離れても、予圧マグネット43が脱落防止部64の先端641に当接するので、予圧マグネット43の下方への移動が制限される。このように、抜止部材6の一部を利用する簡素な構造にて、予圧マグネット43の脱落が容易に防止される。モータ1では、別途、予圧マグネット43の脱落を防止する部品を設ける必要がないため、製造コストが低減される。
【0030】
抜止部材6では、下突出部63および脱落防止部64が予圧マグネット43の外周に近接して設けられており、簡素な構造にて外部から与えられる力による予圧マグネット43の径方向外方への移動が制限される。本実施形態では、予圧マグネット43と下突出部63とが、径方向において僅かに離間した状態になっている。しかし、これに限られず、予圧マグネット43と下突出部63とは、互いに当接してもよい。
【0031】
図8はモータ1の平面図である。図8では、チャッキング装置5の細部の図示を省略し、ディスク載置部411の貫通孔414および抜止部材6の上突出部621を、破線にて示している。チャッキング装置5は、センタケース51と、3つの爪部材52と、3つのコイルバネ53と、3つの調芯爪54と、を備える。センタケース51は、中心軸J1を中心とする中空かつ厚い円板状である。3つの爪部材52は、周方向に配列されるとともに、センタケース51から径方向外方へ突出する。周方向において、爪部材52の間には、ディスク載置部411の貫通孔414が位置する。コイルバネ53は、センタケース51内に収容されて、爪部材52を径方向外方へと付勢する。モータ1では、コイルバネに代えて、ゴム等の他の弾性部材が利用されてもよい。3つの調芯爪54のそれぞれは、隣接する2つの爪部材52の間に配置される。
【0032】
図9に示すように、爪部材52は、爪部本体521と、羽根部522とを備える。爪部本体521は、下方に向かうとともに径方向内側に傾斜する下面521aを有する。羽根部522は、爪部本体521の周方向の両側に設けられる。羽根部522の下面522aは、径方向において湾曲する略円筒面状となっている。
【0033】
記録ディスク9がディスク載置部411上に固定される際には、記録ディスク9が爪部本体521に当接することにより、爪部本体521が図9中にて時計回りに僅かに回動するとともに、径方向内方へと移動する。このとき、羽根部522の下面522aがディスク載置部411の上面と摺接する。記録ディスク9は、図8の調芯爪54により中心軸J1に中心を合わせつつ、ディスク載置部411上に載置される。このとき、図2に示すように、爪部本体521の先端が記録ディスク9の上側に移動するとともに、爪部材52が、コイルバネ53に押されて径方向外方へと戻される。爪部材52は、記録ディスク9の中央孔91の上側のエッジに当接する。このように、チャッキング装置5では、爪部本体521の先端が上下方向および径方向に移動する。記録ディスク9は、爪部材52により径方向外方および下方へと向かう力を受けて、ディスク載置部411上に固定される。
【0034】
次に、モータ1の組み立ての流れ、特に、回転部4の組み立ての流れについて、図10を参照しつつ説明する。図11に示すように、金属の板部材がプレスにて打ち抜かれることにより、抜止部材6の元部材69が成型される。抜止部材6では、元部材69の環状の本体部が下固定部61に対応する。本体部から径方向外方に突出する部位が、上突出部621に対応する。さらに、当該外方に突出する部位の径方向内側に位置する部位が、下突出部63に対応する。当該外方に突出する部位の周方向の両側にて、径方向内方に突出する部位が、脱落防止部64に対応する。
【0035】
以下、元部材69の各部位には、抜止部材6の対応する部位と同符号を付しつつ、同様の名称にて説明する。
【0036】
まず、上突出部621が中央部にて僅かに折り曲げられることにより、図5における傾斜部621aが形成される。また、下突出部63の先端が上方へと折り曲げられ、下突出部63の先端に、図5および図6の抜止部631が形成される。脱落防止部64の先端も、上方へと折り曲げられる。
【0037】
次に、下突出部63と下固定部61との間の符号65を付す位置にて、下突出部63が下固定部61から下方へと折り曲げられる。以下、符号65を付す位置の部位を「折曲部65」と呼ぶ。このとき、下突出部63と径方向に並ぶ上突出部621が上方を向く。また、脱落防止部64と下固定部61との間の符号66を付す位置にて、脱落防止部64が下固定部61から下方へと折り曲げられる。以上の流れにより、抜止部材6が成型される(ステップS1)。
【0038】
一方、抜止部材6の成型に並行して、図2のロータヨーク41がプレスにて成型される(ステップS2)。このとき、図12に示すように、ロータヨーク41のディスク載置部411では、プレスによる半抜き加工にて上方に向かって窪む凹部が形成される。また、凹部の底部が、下方から上方に向かって打ち抜かれることにより貫通孔414が形成される。なお、貫通孔414が形成された後に、凹部が形成されてもよい。貫通孔414では、下側のエッジ414bを中心軸J1を含む面で切断した断面が、滑らかに凸となる、すなわち、略円弧状となっている。以下、エッジ414bを「下側エッジ414b」という。
【0039】
次に、図13に示すように、下突出部63および脱落防止部64が、保持具8の孔に挿入される。そして、脱落防止部64の先端641に、予圧マグネット43が載置される(ステップS3)。
【0040】
抜止部材6および予圧マグネット43は、相対位置をおよそ一定に保ちつつ、図12に示すように、上突出部621がディスク載置部411の貫通孔414に挿入される(ステップS4)。抜止部材6では、上突出部621を平面視したときの径方向の幅、すなわち、傾斜部621aよりも先端の部位(以下、「先端部621b」という)の内側面と傾斜部621aよりも下側の下部621cの外側面との間の径方向の幅が、貫通孔414の径方向の幅よりも小さい。これにより、上突出部621が貫通孔414に容易に挿入される。
【0041】
挿入の途中において、貫通孔414では、上突出部621の先端部621bは、貫通孔414のおよそ中央に位置する。また、少なくともいずれかの上突出部621の傾斜部621aが、貫通孔414の下側エッジ414bの径方向外側の部位に摺接するとともに、下部621cが貫通孔414の内側面の径方向外側の部位に摺接する。
【0042】
下固定部61がディスク載置部411の下面に当接することにより、抜止部材6上へのロータヨーク41の載置が完了する。予圧マグネット43は、磁気的作用によりディスク載置部411の下面に当接する。
【0043】
上突出部621は、図14中に矢印89にて示すように、ディスク載置部411の上面に向かって外側へと折り曲げられ、上突出部621の一部がディスク載置部411の上面、正確には、貫通孔414の上側のエッジに当接する。これにより、複数の上突出部621である上固定部62および下固定部61により、ディスク載置部411が挟み込まれる。こうして、ディスク載置部411に対する中心軸J1に平行な方向における抜止部材6の位置が固定される。また、各上突出部621の下部621cの外側面が、貫通孔414の径方向外側の部位に当接することにより、ディスク載置部411に対する抜止部材6の径方向の位置が固定される(ステップS5)。
【0044】
抜止部材6では、図11に示す上突出部621の周方向の幅が、折曲部65の周方向の幅よりも小さく設定されている。このことにより、上突出部621をディスク載置部411の上面に向かって折り曲げる際に要する力が、折曲部65を塑性変形させる力よりも小さくなる。これにより、抜止部材6の固定時に、図14における抜止部631の向きの変わることが防止される。
【0045】
ロータヨーク41では、図2のディスク載置部411の外周および円筒部412のそれぞれに、環状ラバー44およびロータマグネット42が取り付けられ、回転部4が組み立てられる。なお、抜止部材6のロータヨーク41への取り付けの前に、環状ラバー44およびロータマグネット42が取り付けられてもよい。さらに、図2に示すように、ディスク載置部411上にチャッキング装置5が取り付けられる(ステップS6)。
【0046】
一方、静止部2および軸受機構3が別途組み立てられ、軸受機構3が静止部2に取り付けられる。図15に示すように、抜止部材6の抜止部631とブッシュ32のフランジ部321aとが上下方向に対向するように、回転部4が軸受機構3の上方に配置される。
【0047】
回転部4は軸受機構3に向かって下降し、抜止部631がフランジ部321aに当接する。抜止部631は弾性変形し、回転部4がさらに下降すると、復元力により抜止部631が元の形状に戻るとともに、抜止部631がフランジ部321aの下方に近接して位置する。
【0048】
以上のようにして、軸受機構3を介して回転部4と静止部2とが組み立てられる(ステップS7)。
【0049】
以上に説明したように、モータ1では、下固定部61をディスク載置部411の下面に当接させつつ、上固定部62をかしめにより貫通孔414の上側のエッジに当接させる。このことにより、簡単な構造にて抜止部材6を、ディスク載置部411に容易かつ強固に固定できる。その結果、モータ1の製造の自動化が容易に実現される。抜止部材6が、かしめにより強固に固定されるため、ロータヨーク41に対する抜止部材6のがたつきが防止される。抜止部材6が環状であることにより、抜止部材6のディスク載置部411への固定作業において、抜止部材6の取り扱いが容易となる。
【0050】
さらに、上固定部62および下固定部61が、共に径方向外方に向かうため、抜止部材6をディスク載置部411により強固に固定することができる。
【0051】
回転部4では、周方向において、上突出部621がチャッキング装置5の爪部材52の間に設けられることから、記録ディスク9の取り付け時において、ディスク載置部411の上面と摺接する爪部材52が上突出部621に干渉することが防止される。このように、モータ1では、爪部材52と抜止部材6との間の干渉を考慮する必要がなく、モータ1の設計が容易となるとともに、チャッキング装置5が中心軸J1方向に厚くなることが防止される。ステータ22は、ステータ保持部材23を介してブッシュ32に固定されることから、ステータコア221をブッシュ32に直接固定する場合に比べて、ステータコア221の形状が簡素化される。
【0052】
モータ1では、フランジ部321aの位置が、コイル222の上端222aよりも下方に位置する。このため、モータ1を中心軸J1方向に大きくすることなく、ブッシュ32とディスク載置部411との間に予圧マグネット43を設けることができる。予圧マグネット43が、フランジ部321aに磁気的に作用するので、別途、軸受機構3に磁性部材を設ける必要がない。その結果、部品数が低減される。回転部4では、接着剤を用いることなく、ロータヨーク41に予圧マグネット43を設けている。このことにより、モータ1の製造の自動化が容易となる。軸受機構3では、スリーブ33の上部331がブッシュ32から突出することにより、スリーブ33の内側面332である軸受面の上端と下端との間の距離が確保される。
【0053】
この第1の実施形態では、周方向において下突出部63の間に、脱落防止部64が設けられる。このため、下突出部63に脱落防止部を設ける場合に比べて、脱落防止部64が容易かつ精度よく成型される。既述のように、上突出部621に傾斜部621aが設けられるとともに、ディスク載置部411の貫通孔414の径方向の幅が上突出部621の径方向の幅よりも大きい。これにより、抜止部材6のディスク載置部411への固定時に、中心軸J1に平行な方向において、上突出部621と貫通孔414とが僅かにずれてしまっても、上突出部621が貫通孔414に容易に挿入される。
【0054】
さらに、貫通孔414では、下側エッジ414bの断面が滑らかに凸となっている、すなわち、下側エッジ414bが、貫通孔414の内側に向かって滑らかに湾曲する。これにより、抜止部材6の上突出部621が貫通孔414に挿入される際に、貫通孔414に対する上突出部621の許容されるずれ量を大きくすることができ、上突出部621を容易に貫通孔414に挿入することができる。その結果、モータ1の製造の自動化がより容易に実現される。
【0055】
静止部2では、ステータ保持部材23がステータ22の上端、すなわち、コイル222の上端222aよりも中心軸J1に平行な方向において下方に位置する。このため、ステータ保持部材23に向かって伸びる下突出部63の長さが十分に確保される。これにより、回転部4および静止部2の組み立て時に、下突出部63を十分に撓ませつつ、抜止部631をフランジ部321aの下方に挿入することができる。抜止部材6では、ステータ22とブッシュ32との間にて、ステータ22の上端よりも下方に抜止部631が位置することにより、モータ1を大きくすることなく、抜止を行うことができる。
【0056】
モータ1では、抜止部材6のディスク載置部411への固定が、接着剤を用いることなく行われるため、モータ1の組立工数が低減される。また、抜止部材6を溶接にて固定する手法に比べて、溶接時に、粒状の溶融金属、いわゆる、溶接ボールの飛散が防止される。外観検査により、溶接ボールの有無を確認する作業も不要となる。
【0057】
モータ1では、軸受機構内にて抜止が行われる構造のモータに比べて、抜止部材を取り付けるために必要なシャフトやブッシュの加工が不要となり、製造コストが低減される。スリーブの軸方向長さが短くなることも防止される。
【0058】
(第2の実施形態)
図16は、第2の実施形態に係るモータの抜止部材をロータヨークに固定する作業を示す図である。第2の実施形態に係るモータは、樹脂にて形成された抜止部材6aを有する。抜止部材6aでは、図4ないし図6に示す抜止部材6の上突出部621に代えて棒状の3つの上突出部622を備える。図16では、上突出部622を二点鎖線にて示している。他の形状は抜止部材6と同様である。モータの他の構造は、図2のモータ1と同様である。以下、同様の構成には同符号を付して説明する。
【0059】
モータが組み立てられる際には、まず、所定の金型に形成されたキャビティ内に樹脂が流し込まれることにより、抜止部材6aが成型される(図10:ステップS1)。抜止部材6aの成型に並行して、ロータヨーク41がプレスにて成型される(ステップS2)。このとき、ロータヨーク41には、円形の貫通孔が、下からの打ち抜きにて形成される。次に、図13と同様に、抜止部材6aが保持具8に保持された状態にて、抜止部材6aの内側に予圧マグネット43が載置される(ステップS3)。
【0060】
図16に示すように、抜止部材6aの上突出部622が、ディスク載置部411の貫通孔414に挿入されるとともに(ステップS4)、下固定部61がディスク載置部411の下面に当接する。上突出部622は加熱され、ディスク載置部411の上面上へと押し潰される。上突出部622の溶融した部位は、ディスク載置部411の上面に当接することとなり、ディスク載置部411に対する中心軸J1に平行な方向における抜止部材6aの位置が固定される。また、複数の上突出部622と、貫通孔414の内側面の径方向内側または外側の部位とが、径方向に当接することにより、ディスク載置部411に対する抜止部材6aの径方向の位置が固定される(ステップS5)。
【0061】
その後、ディスク載置部411上に図8に示すチャッキング装置5が取り付けられる(ステップS6)。回転部4では、周方向において、チャッキング装置5の爪部材52の間に、ディスク載置部411の貫通孔414が位置する。
【0062】
一方、静止部2および軸受機構3が別途組み立てられ、軸受機構3が静止部2に取り付けられる。図15と同様に、抜止部材6aの抜止部631とブッシュ32のフランジ部321aとが上下方向に対向しつつ、回転部4が軸受機構3に向かって移動する。抜止部631がフランジ部321aに当接すると、抜止部631が弾性変形する。回転部4は下方へとさらに移動し、抜止部631は元の形状に戻るとともにフランジ部321aの下方に近接して位置する。
【0063】
以上のようにして、軸受機構3を介して回転部4と静止部2とが組み立てられる(ステップS7)。
【0064】
第2の実施形態においても、下固定部61をディスク載置部411の下面に当接させ、上固定部62を、いわゆる、樹脂溶着かしめによりディスク載置部411の上面に当接させる。このことにより、簡単な構造にて抜止部材6aが、ディスク載置部411に容易かつ強固に固定される。その結果、モータの製造の自動化が容易に実現される。
【0065】
(第3の実施形態)
図17は、第3の実施形態に係るモータを示す図である。モータ1aの搭載される記録ディスク駆動装置では、記録ディスク9が、記録ディスク駆動装置のハウジングに設けられた可動式のトレーに載置された状態にて、ハウジング内への挿入され、ハウジングから取り出される。
【0066】
ディスク載置部411の上部の中央には、樹脂の射出成型によりディスク保持部5aが設けられる。ディスク保持部5aは、上部の外周部から下方に向かって伸びる複数の爪55を有する。また、周方向において、複数の爪55の間には、ディスク保持部5aの下部に切欠部56が設けられる。ディスク保持部5aには、さらに、クランプマグネット57およびクランプヨーク58が設けられる。回転部4では、切欠部56と中心軸J1に平行な方向に重なる位置に、抜止部材6の上突出部621が設けられる。モータ1aの他の構造は、図2のモータ1と同様である。
【0067】
記録ディスク9が記録ディスク駆動装置に挿入されると、記録ディスク9の中央孔91がモータ1aのディスク保持部5aの上方に配置される。それとともに、モータ1aが上昇して、ディスク保持部5aが記録ディスク9の中央孔91に嵌り合う。また、クランプマグネット57により、ディスク載置部411とクランパ13との間に、記録ディスク9がクランプされる。このとき、記録ディスク9の中央孔91と爪55とが接し、爪55は、径方向内方に弾性変形する。ディスク保持部5aでは、爪55の弾性変形を利用することにより、記録ディスク9の中心を、中心軸J1上に正確に位置決めできる。
【0068】
モータ1aにおいても、下固定部61をディスク載置部411の下面に当接させつつ、上固定部62をかしめによりディスク載置部411の上面に当接させる。このことにより、簡単な構造にて抜止部材6を、ディスク載置部411に容易かつ強固に固定できる。なお、抜止部材6の構造は、第2の実施形態と同様であってもよい。
【0069】
(第4の実施形態)
図18は、第4の実施形態に係るモータの抜止部材6およびフランジ部321aの平面図である。フランジ部321aは、径方向における幅が小さい部位711を有する。以下、部位711を「幅狭部711」という。また、フランジ部321aの径方向における幅が幅狭部711よりも大きい部位を「幅広部712」という。幅狭部711が設けられることにより、フランジ部321aを平面視したときの形状は、中心軸J1に関して非対称である。
【0070】
幅狭部711の径方向外側のエッジの半径は、中心軸J1から抜止部631の先端までの距離よりも小さい。ブッシュ32の他の形状は、第1の実施形態に係るモータ1のブッシュ32と同様である。モータの他の構造も、モータ1と同様である。以下の説明では、3つの抜止部631を区別するときは、図18の右下のものから反時計回りに「第1ないし第3抜止部631a〜631c」という。
【0071】
周方向において幅狭部711が存在する範囲に対応する中心軸J1を中心とする角度θ(以下、単に「幅狭部711の角度θ」という。)は、第1抜止部631aの第3抜止部631c側の端部651から、第2抜止部631bの第3抜止部631c側の端部652へと向かう中心軸J1を中心とする反時計回りの角度θよりも大きい。なお、正確には、第1抜止部631aの第3抜止部631c側の端部651は、第1抜止部631aの幅広部712と重なる部位の第3抜止部631c側の端部651を指す。第2抜止部631bの第3抜止部631c側の端部652においても同様である。
【0072】
さらに、幅狭部711の角度θは、第1抜止部631aの第3抜止部631c側の端部651から、第3抜止部631cの第1抜止部631c側の端部653へと向かう中心軸J1を中心とする反時計回りの角度θよりも小さい。幅狭部711の角度θが上記範囲であることにより、モータ1の回転時において、常に、第1ないし第3抜止部631a〜631cのいずれか1つの全体が、幅狭部711の外側に存在する。また、残りの2つのそれぞれの少なくとも一部が、中心軸J1に平行な方向において幅広部712の下方に位置する。
【0073】
モータ1では、図19に示す回転部4が上方へと移動した際に、2つの抜止部631が、フランジ部321aの幅広部712と当接する。他の1つの抜止部631は、幅狭部711の外側に位置し、フランジ部321aと接しない。図18に示すように、3つの抜止部631は、周方向に等間隔に設けられることから、幅広部712と2つの抜止部631とが当接する当接位置は、中心軸J1を中心として180度に満たない範囲内に存在する。このように、当接位置の存在する範囲、すなわち、抜止部材6により回転部4の上方への移動を制限する範囲が180度未満であることにより、抜止部材6の幅狭部711近傍の部位が上方に向かうように、回転部4全体が僅かに傾斜する。
【0074】
その結果、図19に示すシャフト31は、スリーブ33の内側面332に強く接触する。シャフト31とスリーブ33との間には、摩擦力が発生する。これにより、モータ1では、抜止部材6をブッシュ32から分離するために必要な力である抜去力を増大することができる。
【0075】
一方、モータ1の組立時において、図20に示すように、シャフト31をスリーブ33に挿入する際には、中心軸J1が正確に上下方向を向くように治具により回転部4が固定された状態にて回転部4が下方へと押し下げられる。このとき、3つの抜止部631のうち1つの抜止部631は、幅狭部711を非接触にて通過する。
【0076】
ところで、図19に示すように、ブッシュ32のフランジ部321aでは、幅狭部711の径方向の幅が幅広部712よりも小さいことから、予圧マグネット43と幅狭部711との間の周方向における単位長さ当たりの磁気的吸引力は、予圧マグネット43と幅広部712との間の磁気的吸引力よりも小さい。モータ1の回転時には、フランジ部321aと予圧マグネット43との間に、幅広部712側に向けてシャフト31を傾斜させる力である、いわゆる、側圧が生じる。特に、モータ1の低速回転時には、側圧により、シャフト31が静止部2に対して一定の方向に傾いた状態が維持される。これにより、低速回転時における、モータ1の回転の振れが防止される。
【0077】
以上、第4の実施形態について説明したが、予圧マグネットが回転部に設けられる構造のモータでは、予圧マグネットが回転することから、例えば、予圧マグネットの半分のみに着磁させたり、予圧マグネットの形状を周方向に変化させても、一定の方向にシャフト31を傾斜させることができない。一方、モータ1では、フランジ部321aの径方向の幅が、周方向において変化する、換言すれば、フランジ部321aの径方向の幅が、周方向において一定でないことにより、シャフト31を一定の方向に傾斜させる側圧を容易に生じさせることができる。
【0078】
また、抜止部631とフランジ部321aとの当接位置を180度未満の範囲に偏在させることにより、回転部4に上方に向かう力が加わった場合に、シャフト31を傾斜させる、いわゆる、転倒モーメントが生じる。その結果、抜去力を増大することができ、挿抜比を向上することができる。モータ1では、挿抜比を向上することにより、シャフト31をスリーブ33に挿入する際に必要な力を小さくすることができる。以下、当該力を「挿入力」という。
【0079】
挿入力を小さくすることにより、シャフト31のスリーブ33への挿入時に、シャフト31によるスラストプレート35への衝撃が小さくなり、スラストプレート35の損傷が防止される。ブッシュ32の底部322への衝撃も小さくなり、底部322の変形に伴うシャフト31の回転の振れが防止される。さらに、挿入時における回転部4の各部材への衝撃も低減される。また、モータ1の各部材の組立精度への影響も低減される。その結果、モータ1の生産性が向上する。
【0080】
第4の実施形態では、抜止部材6に4以上の抜止部631が設けられてもよい。この場合においても、少なくとも2つの抜止部631が幅狭部711の外側に位置するように、幅狭部711の周方向における範囲が設定される。これにより、シャフト31をスリーブ33に挿入する際に、少なくとも2つの抜止部631がフランジ部321aと非接触にて通過する。なお、幅狭部711の外側に位置する抜止部631が1つのみであっても側圧を得ることができる。
【0081】
また、幅広部712は、中心軸J1を中心とする180度未満の範囲に存在する抜止部631のみと重なるように設計される。回転部4に上方に向かう力が加わった場合、幅広部712が複数の抜止部631の一部のみと当接する。回転部4は僅かに傾斜し、シャフト31とスリーブ33との間に摩擦力が発生する。これにより、抜去力を増大することができ、挿抜比を向上することができる。
【0082】
図21は、ブッシュ32の他の例を示す平面図である。図21では、予圧マグネット43を二点鎖線にて示している。平面視において、フランジ部321aの径方向外側のエッジである外側エッジ72は、第1外側エッジ721と、第2外側エッジ722と、を備える。第1外側エッジ721は、中心軸J1を中心とする円弧状である。第2外側エッジ722は、第1外側エッジ721の両端を結ぶ直線状である。フランジ部321aはプレス加工により低コストにて容易に製造される。
【0083】
フランジ部321aでは、径方向内側のエッジである内側エッジ73と第2外側エッジ722との間の径方向における幅が、第2外側エッジ722の中央に向かうに従って小さくなる。このため、フランジ部321aと予圧マグネット43との間の周方向における単位長さ当たりの磁気的吸引力は、第2外側エッジ722の中央近傍において最も小さくなる。モータ1の回転時には、フランジ部321aの第2外側エッジ722とは反対側にシャフト31が傾くように側圧が生じる。特に、モータ1の低速回転時には、シャフト31が一定の方向に傾いた状態が維持される。これにより、図19に示すモータ1と同様に、低速回転時における、モータ1の回転の振れが防止される。
【0084】
(第5の実施形態)
図22は、第5の実施形態に係るモータの抜止部材6bを示す図である。図22では、ブッシュ32のフランジ部321aを二点鎖線にて示している。抜止部材6bでは、図18の抜止部材6の第1ないし第3抜止部631a〜631cのうち、第3抜止部631cが省かれ、平面視した際の抜止部材6bの形状は、中心軸J1に関して非対称である。抜止部材6bでは、中心軸J1を中心とする180度未満の範囲内に抜止部631が存在する。抜止部材6bの他の形状は、抜止部材6と同様である。第5の実施形態に係るモータの他の構造は、第1の実施形態と同様である。
【0085】
図2の回転部4に上方に向かう力が加わった場合、抜止部材6bでは、抜止部631が設けられない部位、すなわち、図22における左下の部位が中心軸J1方向における上方に向かうように回転部4全体が僅かに傾く。図3に示すシャフト31は、スリーブ33の内側面332に接触し、摩擦力が発生する。これにより、抜去力を増大することができ、挿抜比を向上することができる。その結果、挿入力を小さくする設計が可能となる。
【0086】
第5の実施形態では、抜止部631の数が2以外の他の数であってもよい。少なくとも1つの抜止部631が、フランジ部321aの下方にて中心軸J1を中心とする180度未満の範囲に存在することにより、回転部4を傾斜させることができる。第5の実施形態では、回転部4に上方に向かう力が加わった場合に、常に、全ての抜止部631がフランジ部321aと当接することから、抜去力を一定とすることができる。抜止部材6bでは、抜止部631が設けられない部位の径方向における幅を大きくすることにより、抜止部材6bの重さの偏りが防止されてもよい。
【0087】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0088】
例えば、上記第1の実施形態では、図23に示すように、抜止部材6の抜止部631が径方向外方を向く形状とされてもよい。ステータコア221には、径方向内側に僅かに突出する突起部221bが設けられ、抜止部631が突起部221bの下方に近接して位置することにより、抜止が行われる。このように、モータ1では、抜止部631が、静止部2の一部、または、軸受機構3の静止部2に固定された部位の一部の下方に近接して位置することにより、回転部4の静止部2に対する抜け止めが行われる。
【0089】
さらに、突起部221bの先端部と中心軸J1との間の距離を周方向において変化させることにより、回転部4に上方に向かう力が加わった場合における抜止部631と突起部221bとの間の当接位置を180度未満の範囲としてもよい。これにより、回転部4が傾斜し、シャフト31とスリーブ33との間に生じる摩擦力により、抜去力を増大することができる。また、抜止部631を180度未満の範囲に設けることにより、回転部4を傾斜させてもよい。第2および第3の実施形態においても、同様である。
【0090】
上記第1の実施形態では、図12に示す上突出部621の傾斜部621aは、上方に向かいつつ、径方向外方へと傾斜してもよい。この場合、抜止部材6がディスク載置部411の貫通孔414に挿入される際に、傾斜部621aが下側エッジ414bの径方向内側の部位に摺接しつつ、上方に移動する。そして、上突出部621の下部621cと、複数の貫通孔414の径方向内側の部位とが、当接することにより、抜止部材6の径方向の位置が固定される。
【0091】
上記実施形態では、図24に示すように、ステータ保持部材23を省略するとともに、ステータコア221の内側の端部の一部を径方向内方に突出させて、ステータコア221が、ブッシュ32の外周に直接的に固定されてもよい。
【0092】
上記第1の実施形態では、上突出部621が、貫通孔414の上側のエッジにのみ当接する。しかし、上突出部621の下部621cのディスク載置部411に対向する面が、ディスク載置部411の上面に当接してもよい。また、ディスク載置部411の上面にモータ1の他の部品が固定される場合には、上突出部621は、当該部品に上から当接することにより、間接的にディスク載置部411の上面に当接してもよい。同様に、第2の実施形態において、上突出部622の周囲にモータ1の他の部品が取り付けられる場合には、上突出部622を加熱により当該他の部品上へと押し潰して、ディスク載置部411の上面に間接的に当接させてもよい。
【0093】
下固定部61も、ディスク載置部411の下面に間接的に当接してもよい。例えば、下固定部61が、上固定部62および下突出部63よりも径方向内側に位置する場合には、下固定部61が予圧マグネット43の下面に当接してもよい。
【0094】
上突出部621,622および下突出部63の数は、それぞれ3以外であってもよい。上記第1の実施形態では、下突出部63は、好ましくは、予圧マグネット43の径方向への移動を防止するために、周方向におよそ等間隔に3以上設けられる。上記第2の実施形態では、環状の下突出部63が設けられてもよい。
【0095】
また、上突出部621,622と下突出部63とが、異なる数であってもよい。この場合、第1の実施形態では、上突出部621のいずれかが、下突出部63のいずれかと周方向において、同位置に位置するのみであってもよい。
【0096】
上記第1ないし第3および第5の実施形態では、予圧マグネット43が、フランジ部321aの上面上に設けられてもよい。すなわち、フランジ部321aをヨークとして利用しつつ、予圧マグネット43とディスク載置部411との間にて磁気的作用が生じてもよい。換言すれば、モータ1では、ディスク載置部411およびブッシュ32の少なくとも一方が、磁性材料にて形成され、他方の当該一方に対向する位置に、予圧マグネット43が設けられる。これにより、予圧マグネット43に対向する位置に、別途、磁性部材を設ける必要がない。
【0097】
予圧マグネット43は、図2に示す位置よりも中心軸J1から離れた位置に設けられてもよい。この場合、予圧マグネット43は、静止部2との間、例えば、ステータコア221との間にて磁気的作用を生じる。ロータヨーク41では、ディスク載置部411上の環状ラバー44が省かれ、記録ディスク9がディスク載置部411の上面上に直接的に載置されてよい。図25に示すように、回転部4では、予圧マグネット43が省かれる場合、フランジ部321aとディスク載置部411との間に、下固定部61が位置してもよい。これにより、モータ1を中心軸J1方向に大きくすることなく、抜止部材6をディスク載置部411に固定できる。
【0098】
上記実施形態では、スラストプレート35が設けられることにより、ブッシュ32の底部322の内底面とシャフト31の先端との間に樹脂層が形成されるが、底部322の内底面およびシャフト31の先端の少なくとも一方が樹脂にてコーティングされることにより、樹脂層が形成されてもよい。
【0099】
上記実施形態では、ブッシュ32の上端が、ステータ22の上端と同じ位置に位置する場合であっても、モータ1を中心軸J1方向に大きくすることなく、ブッシュ32とディスク載置部411との間に予圧マグネット43を配置できる。チャッキング装置5では、爪部材52が、上下方向または径方向の一方のみに移動する構造であってもよい。
【0100】
複数の貫通孔414のそれぞれは、周方向において複数の爪部材52のいずれかの間に配置されるのであれば、貫通孔414と爪部材52とは必ずしも周方向に交互に存在する必要はない。爪部材52はディスク載置部411に摺接しない場合であっても、各貫通孔414が、周方向において爪部材52の間に配置されることにより、爪部材52と上突出部621との干渉を容易に防止できる。モータ1は、ロータマグネットがステータの内側に配置されるインナロータ型であってもよい。また、ロータヨークの上側に別途ディスク載置部が設けられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、記録ディスク駆動装置の薄型のモータとして特に適している。しかし、これに限られず、ファン用のモータ等の記録ディスク駆動装置以外のモータとしても利用可能である。
【符号の説明】
【0102】
1 モータ
2 静止部
3 軸受機構
4 回転部
6,6a,6b 抜止部材
9 記録ディスク
10 記録ディスク駆動装置
11 アクセス部
12 ハウジング
22 ステータ
23 ステータ保持部材
31 シャフト
32 ブッシュ
33 スリーブ
34 潤滑油
41 ロータヨーク
43 予圧マグネット
64 脱落防止部
221 ステータコア
222 コイル
222a (コイルの)上端
321a フランジ部
321b (ブッシュの)内側面
331 (スリーブの)上部
332 (スリーブの)内側面
333 (スリーブの)外側面
411 ディスク載置部
611 当接部
631,631a〜631c 抜止部
J1 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受機構と、
前記軸受機構の径方向外側に設けられたステータを有する静止部と、
前記軸受機構により前記静止部の上方にて支持され、前記静止部に対して回転可能に支持される回転部と、
を備え、
前記回転部が、前記ステータを覆う有蓋略円筒状のロータヨークを備え、
前記軸受機構が、
プレス加工にて成型された有底略円筒状のブッシュと、
前記ブッシュの内側面に固定されるとともに、上部が前記ブッシュから突出するスリーブと、
前記スリーブに挿入されるシャフトと、
を備え、
前記ブッシュの上端の位置が、中心軸に平行な方向において、前記ステータの上端よりも低い、または、前記上端と同じである、モータ。
【請求項2】
前記ロータヨークの蓋部が、記録ディスクが載置されるディスク載置部である、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記ロータヨークの蓋部および前記ブッシュの一方が、磁性材料にて形成され、
前記蓋部および前記ブッシュの他方における前記一方に対向する位置に、予圧マグネットが設けられる、請求項1または2に記載のモータ。
【請求項4】
前記ロータヨークの前記蓋部に、前記回転部の前記静止部からの分離を防止する抜止部材が設けられ、
前記抜止部材が、前記ステータと前記ブッシュとの間にて、前記静止部または前記軸受機構の一部の下方に近接して位置する抜止部を備える、請求項3に記載のモータ。
【請求項5】
前記予圧マグネットが、前記蓋部の前記下面に取り付けられ、
前記抜止部材が、前記予圧マグネットの下方へと屈曲する複数の脱落防止部を備える、請求項4に記載のモータ。
【請求項6】
前記ブッシュが、径方向外方に突出するフランジ部を備え、
前記フランジ部は、前記抜止部に近接して位置する、請求項4または5に記載のモータ。
【請求項7】
前記抜止部が、前記ステータのステータコアの径方向内側における上端よりも下方に位置する、請求項4ないし6のいずれかに記載のモータ。
【請求項8】
前記抜止部材が、前記蓋部の前記下面に当接する当接部をさらに備え、
前記当接部が、前記ステータのコイルよりも径方向内側に位置する、請求項4ないし7のいずれかに記載のモータ。
【請求項9】
前記ブッシュが、磁性材料にて成型され、
前記ブッシュの上部に、径方向外方に突出するフランジ部が設けられ、
前記回転部が、前記ロータヨークの蓋部の下面に設けられ、前記中心軸に平行な方向において前記フランジ部と重なる予圧マグネットをさらに備え、
前記フランジ部の径方向の幅が、周方向において変化し、前記回転部の回転中に、前記フランジ部と前記予圧マグネットとの間に、前記静止部に対して前記シャフトを一定の方向に傾斜させる力が生じる、請求項1または2に記載のモータ。
【請求項10】
前記ブッシュの上部に、径方向外方に突出するフランジ部が設けられ、
前記ロータヨークの蓋部に、前記回転部の前記静止部からの分離を防止する抜止部材が設けられ、
前記抜止部材が、前記フランジ部の下方に位置し、前記中心軸を中心とする180度未満の範囲に存在する前記少なくとも1つの抜止部を有する、請求項1ないし3のいずれかに記載のモータ。
【請求項11】
前記ブッシュの上部に、径方向外方に突出するフランジ部が設けられ、
前記フランジ部の径方向の幅が、周方向において変化し、
前記ロータヨークの蓋部に、前記回転部の前記静止部からの分離を防止する抜止部材が設けられ、
前記抜止部材が、前記フランジ部の下方に位置する複数の抜止部を有し、
前記回転部が上方へと移動した際に前記複数の抜止部の一部のみが前記フランジ部と当接することにより、当接位置が前記中心軸を中心とする180度未満の範囲に存在する、請求項1ないし3のいずれかに記載のモータ。
【請求項12】
前記シャフトが、前記ブッシュの内底面に樹脂層を介して当接することにより、スラスト方向に支持される、請求項10または11に記載のモータ。
【請求項13】
前記ブッシュの外側面に環状のステータ保持部材が取り付けられ、
前記ステータが前記ステータ保持部材の外周に設けられる、請求項1ないし12のいずれかに記載のモータ。
【請求項14】
前記スリーブの内側面の中央部が径方向外方に向かって窪み、
前記スリーブの外側面の下部と前記ブッシュの内側面との間に隙間が設けられる、請求項1ないし13のいずれかに記載のモータ。
【請求項15】
記録ディスクを回転させる請求項1ないし14のいずれかに記載のモータと、
前記記録ディスクに対して情報の読み出しおよび/または書き込みを行うアクセス部と、
前記モータおよび前記アクセス部を収容するハウジングと、
を備える、記録ディスク駆動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate


【公開番号】特開2011−67084(P2011−67084A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114620(P2010−114620)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000232302)日本電産株式会社 (697)
【Fターム(参考)】