説明

モータ制御装置、光学走査装置、画像形成装置およびプリント基板

【課題】コストを削減しつつ、回転方向の検出時間の短縮も可能なモータ制御装置を提供する。
【解決手段】CPU1は、回転多面鏡によって偏向された光束の検知タイミングと、磁気検知素子5の検知信号の出力タイミングとの時間差が所定範囲内であれば、モータが正回転していると判定し、時間差が所定範囲内でなければモータが逆回転していると判定する。これにより、3相の誘起電圧を検出する検出回路が不要となるため、コストを削減できるようになる。さらに、3相のそれぞれについて誘起電圧を検出する必要はなくなり、単に、時間差を検出するだけで十分なため、回転方向の検出時間の短縮が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置、それを搭載した光学走査装置、画像形成装置およびプリント基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、レーザ光を回転多面鏡によって偏向しながら像担持体上を走査することで、像担持体上に潜像を形成する。この回転多面鏡は常に一方向に回転するモータによって駆動される。モータの回転方向を検出するには、従来、3つのホール素子が必要であった。ホール素子の数を1個に減らすことができれば、製造コストを削減できるが、逆回転の検知に時間がかかってしまう。
【0003】
そこで、特許文献1では、3相のいずれか2つの相に微弱な電流を流したときに残りの1つの相に誘起される電圧の極性を検出し、3相の検出結果のうち2相の検出結果が予想された結果と一致すれば、残り1相の検出結果を無視してロータを回転させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3993502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の発明では3相の誘起電圧を検出する検出回路にコストがかかるだけでなく、検出するための時間もかかるといった課題があった。そこで、本発明は、コストを削減しつつ、回転方向の検出時間の短縮も可能なモータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の観点によれば、
光源から出力された光束を偏向する回転多面鏡を駆動するモータと、
前記回転多面鏡によって偏向された光束を検知し、第1の検知信号を出力する光検知素子と、
前記モータに対して設けられ、当該モータが回転することで第2の検知信号を出力する磁気検知素子と、
前記第1の検知信号の出力タイミングと前記第2の検知信号の出力タイミングとの時間差が所定範囲内であれば前記モータが正回転していると判定し、当該時間差が当該所定範囲内でなければ前記モータが逆回転していると判定する回転方向判定回路と
を備えたことを特徴とするモータ制御装置が提供される。
【0007】
本発明の第2の観点によれば、
モータを駆動するモータ駆動回路と、当該モータの回転方向を検知する磁気検知素子とを同一の半導体集積回路パッケージに封入したことを特徴とするモータ制御装置が提供される。
【0008】
本発明の第3の観点によれば、
プリント基板であって、
モータと、
前記モータの回転方向を検知する磁気検知素子が封入された半導体集積回路パッケージと
を備え、
前記モータの回転軸の中心から、前記磁気検知素子までの距離が所定距離に維持されるよう、前記プリント基板に対して前記半導体集積回路パッケージが斜めに搭載されていることを特徴とするプリント基板が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の観点によれば、回転多面鏡によって偏向された光束の検知タイミングと、磁気検知素子の検知信号の出力タイミングとの時間差が所定範囲内であれば、モータが正回転していると判定し、時間差が所定範囲内でなければモータが逆回転していると判定する回転方向判定部が設けられる。これにより、3相の誘起電圧を検出する検出回路が不要となるため、コストを削減できるようになる。特許文献1では、3相のそれぞれについて誘起電圧を検出しなければならないため処理時間が長くなりやすい。本願発明であれば、3相のそれぞれについて誘起電圧を検出する必要はなくなり、単に、時間差を検出するだけで十分なため、回転方向の検出時間の短縮が可能となる。
【0010】
本発明の第2の観点によれば、モータ駆動回路と磁気検知素子とを同一の半導体集積回路パッケージに封入することで、モータの駆動に関連した回路群の小型化を達成できる。
【0011】
本発明の第3の観点によれば、回路配置に関連した制約によって、半導体集積回路パッケージをプリント基板に対して平行に搭載できない場合であっても、モータの回転軸の中心から磁気検知素子までの距離が所定距離に維持されるよう、プリント基板に対して半導体集積回路パッケージが斜めに搭載される。これにより、モータ駆動回路と磁気検知素子とを封入した同一の半導体集積回路パッケージをプリント基板に搭載できるため、モータの駆動に関連した回路群の小型化を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】光学走査装置の概略を示す平面図
【図2】偏向走査装置の概略を示す断面図
【図3】実施例1ないし3における3相のブラシレスモータおよびその制御回路群を示す図
【図4】実施例1ないし3における半導体集積回路パッケージを示す図
【図5】実施例1、2におけるプリント基板に対するモータ制御装置のレイアウト図
【図6】実施例1における正回転と逆回転との違いを説明するタイミングチャート
【図7】実施例1におけるモータ制御処理を示すフローチャート
【図8】実施例2におけるモータ制御処理を示すフローチャート
【図9】実施例3におけるプリント基板に対するモータ制御装置のレイアウト図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明の実施例を、図面を参照しつつ説明する。尚、以下の実施例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施例で説明されている特徴の組み合わせのすべてが発明の構成に必須のものとは限らない。
【0014】
[実施例1]
図1は、電子写真方式の画像形成装置に用いられる一般的な光学走査装置100を示している。光学走査装置100は、像担持体に対して光を照射して潜像を形成する装置である。半導体レーザユニット31はレーザ光束Lを発生する。レーザ光束Lは、シリンドリカルレンズ32を通過して回転多面鏡33の反射面によって偏向される。回転多面鏡33は偏向走査装置34に駆動される。偏向走査装置34は、3相のブラシレスモータで構成される。偏向走査装置34は、光束を偏向しながら像担持体上を光束で走査することからスキャナモータと呼ばれることもある。このように、偏向走査装置34は、光源から出力された光束を偏向する回転多面鏡を駆動するモータの一例である。回転多面鏡33によって偏向されたレーザ光束Lは、Fθレンズ35を通過し、折り返しミラー36によって偏向される。Fθレンズ35は第1のレンズ351と第2のレンズ352を備えている。第1のレンズ351は球面レンズまたはトーリックレンズである。第2のレンズ352はトーリックレンズである。偏向されたレーザ光束Lは、感光体ドラム37の表面を走査する。感光体ドラム37の表面には、画像が形成される有効画像領域と、その外側の領域であって画像が形成されない非画像領域とが存在する。この非画像領域に向かう光路上には、レーザ光束Lの一部を反射する信号検知ミラー38が配置されている。信号検知ミラー38の反射方向の光路上には結像レンズ39と信号検知センサ310が設けられている。信号検知センサ310は、レーザ光速Lが入射するたびに、水平同期信号(BD信号)を出力する。このように信号検知センサ310は、回転多面鏡33によって偏向された光束を検知し、第1の検知信号を出力する第1検知素子(光検知素子)の一例である。光学箱311は、これらの光学部材を収容する箱である。
【0015】
図2は偏向走査装置34の概略断面を示す図である。偏向走査装置34には、高速回転する回転多面鏡33を支える軸受部として動圧軸受を採用すると、安定した滑らかな回転が得られる。スリーブ130は、軸99を軸受孔内に回転自在に支持する。スラストカバー103は、スリーブ130の下端に固定されて軸受孔を封鎖する。スラスト板104は、スラストカバー103に支持されている。スリーブ130の軸受孔の内側面と軸99の外側面の間や、スラスト板104と軸99の端面の間には、オイルが充填されている。軸99の端面はスラスト板104とともにピボットスラスト軸受を構成している。動圧発生溝1051、1052は、ヘリングボーン状の動圧発生溝である。軸99が正方向に回転すると、軸99の回転を利用して動圧発生溝1051、1052にオイルが集められ、精度よくシャフトを支持する。軸99の上部にはフランジ部材110が固定されている。反射面1111を有する回転多面鏡33は、フランジ部材110上に載置され、押えバネによってフランジ部材110へ押圧されてフランジ部材110およびロータ112と一体的に結合されている。なお、回転多面鏡33の中心穴1112の内径は、軸99の外径より0.05mm程度大であり、ロータ112に対する回転多面鏡33の組付けは、回転多面鏡の中心穴1112に軸99を遊嵌させて行われる。
【0016】
偏向走査装置34の主要部であるロータ112は、永久磁石1121とこれを支持するヨーク1122を有する。スリーブ130にはプリント回路基板114が固定されている。プリント回路基板114にはステータ113のステータコア1132が支持される。ステータコア1132に巻回されたステータコイル1131は、ロータ112の永久磁石1121に対向している。これらによって回転多面鏡33を回転駆動する偏向走査装置34が構成されている。
【0017】
図3は3相のブラシレスモータの構成を示す図である。CPU1はワンチップマイクロコンピュータであり、偏向走査装置34の速度が予め設定された目標速度に一致するように速度情報から制御量を演算し、制御量に応じた制御信号である加速信号や減速信号をプリドライバ2へ送信する。プリドライバ2はCPU1から送信された加速信号や減速信号を積分器3に出力する。積分器3は、加速信号や減速信号を積分して積分結果をプリドライバ2に返す。この積分結果は、モータのトルク指令に相当する。磁気検知素子5は、ホール素子などであり、モータの永久磁石の位置から3相コイル7へ電流を流すタイミング信号を生成する。このように、磁気検知素子5は、モータに対して設けられ、当該モータが回転することで第2の検知信号を出力する第2検知素子(磁気検知素子)の一例である。各相ごとに設けられたスイッチ4は、タイミング信号に応じてオンオフする。スイッチ4は、たとえば、FETなどのスイッチ素子である。ここで、駆動制御IC101は、3相ブラシレスモータの駆動制御回路である。駆動制御IC101には、プリドライバ2、スイッチ4、積分器3および磁気検知素子5が封入されている。
【0018】
図4は、駆動制御IC101のパッケージレイアウトを示す図である。駆動制御回路半導体チップ102は、プリドライバ2、スイッチ4、積分器3および磁気検知素子5を備えている。つまり、駆動制御回路半導体チップ102は、磁気検知素子とモータ駆動回路とを備えた半導体チップである。スイッチ4は、FET回路ブロック41、42で構成されている。出力ピン列121と、入力ピン列122はボンディングワイヤで駆動制御回路半導体チップ102と接続されている。このように、モータを駆動するモータ駆動回路であるFET回路ブロック41、42と、磁気検知素子5とが、同一の半導体集積回路パッケージ(半導体集積ユニット)に封入される。
【0019】
図4が示すように、出力ピン列121は半導体チップの一方の側に配置された出力ピン群であり、入力ピン列122は半導体チップの他方の側に配置された入力ピン群である。図4の中央には、縦線と横線が引かれている。縦線は、半導体集積回路パッケージの4つの辺のうち出力ピン列121が配置された辺と、入力ピン列122が配置された辺に対して平行な線であって、駆動制御回路半導体チップ102の中心を通る線である。横線は、半導体集積回路パッケージの4つの辺のうち出力ピン列121も入力ピン列122も配置されていない残りの2つの辺と平行な線であって、駆動制御回路半導体チップ102の中心を通る線である。つまり、縦線と横線とは直交している。とりわけ、縦線によって駆動制御回路半導体チップ102を分割して得られる2つの領域のうち一方の領域(図4の左側の領域)に、磁気検知素子5と、モータ駆動回路のうち主体となる回路群(FET回路ブロック41、42)とが配置されている。また、磁気検知素子5は横線上に配置されている。このようなレイアウトを採用することで、磁気検知素子5の位置決めがしやすくなるとともに、半導体チップの小型化を図りやすくなる。
【0020】
図5(A)は、4つの反射面を有した回転多面鏡33を含むモータユニットの正面図である。図5(B)はその側面図である。プリント回路基板114は、片面に銅箔パターンが形成され、半導体集積回路パッケージとモータとを搭載したプリント基板である。コネクタ213は、CPU1を搭載した不図示のコントロール基板から延びるケーブル接続するコネクタである。つまり、コネクタ213を介して、加速信号や減速信号がCPU1から入力され、モータの回転速度を示す速度情報がCPU1へ出力される。駆動制御IC101は、偏向走査装置34のロータ112の外周の内側に備えられた永久磁石1121とプリント回路基板114との間に挟まれるように配置されている。
【0021】
図6は、本実施例における正回転と逆回転との違いを説明するタイミングチャートである。図中Hは、ハイレベルを示し、Lは、ローレベルを示す。BD信号の立下りエッジが画像の書き出し基準タイミングとして利用される。ホール信号は、磁気検知素子5が出力するアナログ差動信号である。図6は、このアナログ差動信号を2値化した波形を示している。図6において、<正回転時>は、モータが正常な回転をしているときのタイミングチャートである。<逆回転時>は、モータが正常でない回転をしているときのタイミングチャートである。<正回転時>では、BD信号が立ち下がってから100μ秒(以後、秒の単位をsと記す)±5μs後にホール信号が立ち上がる。一方、<逆回転時>では、BD信号が立ち下がってから、300μs前後にホール信号が立ち上がる。CPU1は、この違いを検知して、モータが正回転しているか逆回転しているかを判定する。逆回転時には、回転数が特定できないので、タイミングチャート上では、破線で示している。偏向走査装置34は、オイル軸受けを備えている。そのため、モータが逆回転をしばらく継続すると、ヘリングボーン型の動圧発生溝1051、1052からオイルが吐き出される。吐き出されたオイルは、軸受の外部に漏れてしまう。よって、モータの回転方向を短時間で検出することで、オイルの漏れを低減することが望まれる。
【0022】
図7は、実施例1のモータ制御を示すフローチャートである。上述したようにモータの逆回転は望ましくない結果をもたらすことがある。そこで、CPU1は、モータの逆回転を検知すると、モータを一旦停止させ、再度起動させる。CPU1は、偏向走査装置34の回転開始タイミングになったところで加速信号をローレベルにする。本実施例では、加速信号と減速信号は、ローアクティブである。
【0023】
S101で、CPU1は、駆動制御IC101を制御して、モータのU相からV相に流れるようにスイッチ4を切り替えることで、50msにわたって励磁をホールドする。S102で、CPU1は加速信号を出力することで、駆動制御IC101はモータの加速を開始する。S103で、CPU1は、駆動制御IC101を通じて磁気検知素子5が出力するホール信号の検知を開始する。S104で、CPU1は、半導体レーザユニット31を強制的に点灯させる。S105で、CPU1は、駆動制御IC101を通じて信号検知センサ310が出力するBD信号の検知を開始する。
【0024】
S106で、CPU1は、BD信号の周期を計測し、周期が所定範囲(例:480μs±5μs)に収まっているか判定する。このように、CPU1は、第1の検知信号の周期を監視し、第1の検知信号の周期が所定範囲内に収まったかどうかを判定する周期判定部として機能する。BD信号の周期が所定範囲に収まっていない場合、S107に進む。
【0025】
S107で、CPU1は、BD信号の検知を開始したときから所定時間(例:3秒)が経過したかどうかを判断する。CPU1は、計時のためのカウンタやタイマーを内蔵しているものとする。BD信号の検知を開始したときから所定時間が経過していれば、何らかの異常が発生している可能性がある。そこで、S110に進み、CPU1は、エラー処理を行う。
【0026】
一方で、BD信号の周期が所定範囲に収まっている場合、S109に進む。このように、CPU1は、第1の検知信号の周期が所定範囲内に収まったと判定すると、モータの回転方向の判定を開始する。S109で、CPU1は、BD信号の立下りからホール信号の立ち上がりまでの時間差が所定範囲(例:100μs±5μs)に収まっているか判定する。時間差が所定範囲でなかった場合、逆回転している可能性が高いため、S111に進む。このように、CPU1は、第1の検知信号の出力タイミングと第2の検知信号の出力タイミングとの時間差が所定範囲内でなければモータが逆回転していると判定する回転方向判定部として機能する。
【0027】
S111で、CPU1は、駆動制御IC101に停止信号を出力することで、駆動制御IC101がモータを一旦停止させる。S112で、CPU1は、所定時間にわたって待機する。これは、モータの回転数が落ちるのを待つためである。次に、S101に戻り、CPU1は、駆動制御IC101に、再度、励磁をホールドさせる。以下の動作は、すでに説明したとおりである。
【0028】
一方、S109で、時間差が所定範囲であった場合、CPU1は、モータが正回転していると判定し、S113に進む。このように、CPU1は、第1の検知信号の出力タイミングと第2の検知信号の出力タイミングとの時間差が所定範囲内であればモータが正回転していると判定する回転方向判定回路として機能する。S113で、CPU1は、駆動制御IC101を通じてBD信号の周期をモニタし、BD周期が所定範囲に収まるように加速信号や減速信号を出力する。駆動制御IC101は、加速信号や減速信号にしたがって、モータの回転数を制御する。
【0029】
本実施例によれば、磁気検知素子5を1個だけ使用してモータを制御できるため、3個のホール素子を使用する従来技術と比較して、コストダウンを達成できる。また、本実施例では、3相の誘起電圧を検出する検出回路を使用することなく、CPU1がBD信号のタイミングとホール信号のタイミングとの時間差から回転方向を検出できる。ここで、BD信号を検知する素子やホール信号を出力する磁気検知素子は、通常、光学走査装置や画像形成装置にとって必須とされる素子である。つまり、素子を追加せずに、CPU1の演算処理だけで、回転方向を検知できるため、コストダウンを図りやすい。また、3相の誘起電圧を検出する検出回路では、3相から2相を選択して通電し、残りの1層に誘起される電圧を検出するため、3回の検出処理を実行しなければならない。よって、検出時間が長くなりやすい。一方で、本実施例では、CPU1がBD信号のタイミングとホール信号のタイミングとの時間差から回転方向を検出できるため、処理時間を短縮しやすい。さらに、本実施例では、駆動制御IC101内に、プリドライバ2、積分器3、スイッチ4および磁気検知素子5をワンパッケージ化しているため、小形化とコストダウンを達成できる。
【0030】
[実施例2]
実施例2では、モータの加速途中でホール信号の周期を検知し、その周期が定格回転の半分の速度に対応した周期なったところで回転方向を検知することを特徴とする。なお、実施例1と共通する事項については、同一の記号を付して説明の簡潔化を図ることにする。
【0031】
図8は、実施例2のモータ制御を示すフローチャートである。S101ないしS103を実行すると、S210に進む。
【0032】
S201で、CPU1は、ホール信号周期が所定周期(例:960μs)になったかを判定する。モータを回転速度が上昇するにつれて、ホール信号の周期は徐々に短くなってゆく。つまり、モータの回転速度(回転数)とホール信号の周期は反比例している。ホール信号周期が所定周期以下になると、S202に進む。このように、CPU1は、第2の検知信号の周期を監視し、第2の検知信号の周期が所定値以下になったかどうかを判定する周期判定回路として機能する。また、CPU1は、第2の検知信号の周期が所定値以下になったと周期判定回路が判定すると、モータの回転方向の判定を開始する。S202で、CPU1は、半導体レーザユニット31を強制的に点灯させる。S203で、CPU1は、駆動制御IC101を通じて信号検知センサ310が出力するBD信号の検知を開始する。
【0033】
S204で、CPU1は、BD信号の立下りからホール信号の立ち上がりまでの時間差が所定値(例:120μs)以下になっているか判定する。時間差が所定値以下になっていなかった場合、モータが逆回転している可能性が高いため、S111に進む。一方で、時間差が所定値以下になっていた場合、S113に進む。
【0034】
S201で、CPU1が、ホール信号周期が所定周期(例:960μs)になっていないと判定すると、S205に進む。S205で、CPU1は、ホール信号の検知を開始したタイミングから所定時間が経過したかどうかを判定する。所定時間が経過していなければ、S201に戻る。一方で、所定時間が経過していれば、何からのエラーが発生しているため、S110に進む。
【0035】
このように実施例2によれば、CPU1は、モータが所定回転数(例:目標回転数の半分)に達したところで、モータの回転方向を検知する。そのため、モータの回転数が目標回転数に到達してから回転方向を検知する発明と比較して、実施例2では、モータの回転方向をより早く検知できるようになる。つまり、実施例2では、逆回転の時間をさらに短縮できる。
【0036】
[実施例3]
以下、実施例3を図9に示す外観図に基づいて詳細に説明する。なお、実施例1や2と共通する事項については、同一の記号を付して説明の簡潔化を図る。
【0037】
図5(A)と図9とを比較するとわかるように、実施例3では、偏向走査装置34の配置の都合により、プリント回路基板114の一部が欠けている。たとえば、回転多面鏡33により偏向された光束が通過するレンズなどの光学部品を配置するためのスペースとして、このような切り欠き部が必要となることがある。プリント回路基板114の形状がこのような基板形状になると、プリント回路基板114の長手方向に対して駆動制御IC101を斜めに配置しなければならない。これは、駆動制御IC101の銅箔パターンの制約に起因している。なお、斜めとは、プリント回路基板114の主要な辺と駆動制御IC101の辺とが平行でもなければ、直交してもいないことをいう。よって、斜めとは、プリント回路基板114の平面と、駆動制御IC101の平面とが傾いていることを意味しているわけではない。図9においては、プリント基板の長手方向に対して駆動制御IC101の短手方向が約5°の角度だけ斜めに、駆動制御IC101がプリント回路基板114上に配置されている。ここで、回転多面鏡33の回転軸の中心から、駆動制御IC101の中心までの距離が一定の所定距離に維持されるよう、駆動制御IC101を回転多面鏡33の周方向に移動させる。つまり、モータの回転軸の中心から磁気検知素子5の中心までの距離が一定距離Dに維持される。これにより、図3に示した磁気検知素子5とモータとの位置関係が維持されるため、上述した実施例1や実施例2の処理をそのまま適用できるようになる。
【0038】
このように、プリント回路基板114に対して駆動制御IC101を斜めに配置しなければならない場合には、回転多面鏡33の回転軸の中心から、駆動制御IC101の中心までの距離が所定距離に維持されるよう、駆動制御IC101を回転多面鏡33の周方向に移動させる。つまり、モータの回転軸の中心から磁気検知素子5の中心までの距離が一定距離Dに維持される。これにより、上述した実施例1や実施例2の処理をそのまま適用できるようになる。また、駆動制御IC101を斜めに配置することで、プリント回路基板114上に空きスペースを確保できるようになる。よって、この空きスペースに光学部品を配置することで、光走査装置を全体として小型化できる。
【0039】
[その他の実施例]
実施例1ないし3では、画像形成装置に搭載される光学走査装置に本発明を適用した事例を紹介した。しかし、本発明は、プリンタだけでなく、画像形成機能を有する任意の機器、例えば複写機やファクシミリ装置、複合機等にも適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出力された光を偏向する回転多面鏡を駆動するモータと、
前記回転多面鏡によって偏向された光を検知し、第1の検知信号を出力する第1検知素子と、
前記モータが回転することで第2の検知信号を出力する第2検知素子と、
前記第1の検知信号の出力タイミングと前記第2の検知信号の出力タイミングとの時間差が所定範囲内であれば前記モータが正回転していると判定し、当該時間差が当該所定範囲内でなければ前記モータが逆回転していると判定する回転方向判定部と
を備えたことを特徴とするモータ制御装置。
【請求項2】
前記第1の検知信号の周期を監視し、当該第1の検知信号の周期が所定範囲内に収まったかどうかを判定する周期判定部をさらに備え、
前記回転方向判定部は、前記第1の検知信号の周期が前記所定範囲内に収まったと前記周期判定部が判定すると、前記モータの回転方向の判定を開始することを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記第2の検知信号の周期を監視し、当該第2の検知信号の周期が所定値以下になったかどうかを判定する周期判定部をさらに備え、
前記回転方向判定部は、前記第2の検知信号の周期が前記所定値以下になったと前記周期判定部が判定すると、前記モータの回転方向の判定を開始することを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記モータを駆動するモータ駆動回路をさらに備え、
前記第2検知素子と前記モータ駆動回路とを同一の半導体集積ユニットに設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記半導体集積ユニットと前記モータとを搭載したプリント基板をさらに備え、
前記モータの回転軸の中心から前記半導体集積ユニットに設けられた前記第2検知素子までの距離が所定距離に維持されるよう、前記プリント基板に対して前記半導体集積ユニットが斜めに搭載されていることを特徴とする請求項4に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
前記半導体集積ユニットは、
前記第2検知素子と前記モータ駆動回路とを備えた半導体チップと、
当該半導体チップの一方の側に配置された出力ピン群と、
当該半導体チップの他方の側に配置された入力ピン群と
を備え、
前記半導体集積ユニットの4つの辺のうち前記出力ピン群が配置された辺と、前記入力ピン群が配置された辺に対して平行な線であって、前記半導体チップの中心を通る線で当該半導体チップを分割して得られる2つの領域のうち一方の領域に、前記第2検知素子と、前記モータ駆動回路の一部を配置したことを特徴とする請求項4または5に記載のモータ制御装置。
【請求項7】
光源と、
前記光源から出力された光を偏向する回転多面鏡と、
前記回転多面鏡を駆動するモータと、
前記回転多面鏡によって偏向された光を検知し、第1の検知信号を出力する第1検知素子と、
前記モータが回転することで第2の検知信号を出力する第2検知素子と、
前記第1の検知信号の出力タイミングと前記第2の検知信号の出力タイミングとの時間差が所定範囲内であれば前記モータが正回転していると判定し、当該時間差が当該所定範囲内でなければ前記モータが逆回転していることを特徴とすると判定する回転方向判定部と
を備えた、光学走査装置。
【請求項8】
像担持体と、
前記像担持体に対して光を照射して潜像を形成する光学走査装置と
を備え、
前記光学走査装置は、
光源と、
前記光源から出力された光を偏向する回転多面鏡と、
前記回転多面鏡を駆動するモータと、
前記回転多面鏡によって偏向された光を検知し、第1の検知信号を出力する第1検知素子と、
前記モータが回転することで第2の検知信号を出力する第2検知素子と、
前記第1の検知信号の出力タイミングと前記第2の検知信号の出力タイミングとの時間差が所定範囲内であれば前記モータが正回転していると判定し、当該時間差が当該所定範囲内でなければ前記モータが逆回転していると判定する回転方向判定部と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
モータを駆動するモータ駆動回路と、当該モータの回転方向を検知する検知素子とを同一の半導体集積ユニットに封入したことを特徴とするモータ制御装置。
【請求項10】
プリント基板であって、
モータと、
前記モータの回転方向を検知する検知素子と、
前記検知素子からの信号に応じて前記モータの駆動を制御するための半導体集積ユニットとを備え、
前記モータの回転軸の中心から、前記検知素子までの距離が所定距離に維持されるよう、前記プリント基板に対して前記半導体集積ユニットが斜めに搭載されていることを特徴とするプリント基板。
【請求項11】
前記半導体集積ユニットに前記検知素子が設けられたことを特徴とする請求項10に記載のプリント基板。
【請求項12】
モータを駆動するための駆動回路が搭載されたプリント基板であって、
前記モータの回転方向を検知する検知素子と、
前記検知素子からの信号に応じて前記モータの駆動を制御するための半導体集積ユニットと、を備え、
前記モータの回転軸の中心から、前記検知素子までの距離が所定距離に維持されるよう、前記プリント基板に対して前記半導体集積ユニットが斜めに搭載されていることを特徴とするプリント基板。
【請求項13】
前記半導体集積ユニットに前記検知素子が設けられたことを特徴とする請求項12に記載のプリント基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−101307(P2013−101307A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−171496(P2012−171496)
【出願日】平成24年8月1日(2012.8.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】