説明

モータ制御装置

【課題】モータ制御用のプログラムがオンボード形式で適切に書き込まれた記憶素子を実装したモータ制御装置を提供する。
【解決手段】本発明のモータ制御装置1によれば、モータ2を駆動するための制御用プログラム15が書き込まれるメモリ13が配置された回路基板10と、回路基板10に形成され、メモリ13に制御用プログラム15を書き込むために電気信号を出力するコンタクトプローブ34が接触するランド18と、コンタクトプローブ34から出力された電気信号をランド18からメモリ13に伝送する導通パターン19とを備え、ランド18は、スルーホール18aを有し、スルーホール18aにコンタクトプローブ34を嵌合させることによってコンタクトプローブ34と接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置に係り、特に、基板上に配置された記憶素子にモータ制御用のプログラムを書き込むために、書き込み信号を出力する書き込み手段を基板の所定部位に接触させて構築されるモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータを制御する制御装置として、半導体チップ(IC)を搭載した回路基板を有するものは、既に知られており、このような装置では、一般に、基板上に配置された記憶素子(例えば、ICに内蔵されたメモリ)にモータ制御用のプログラムが書き込まれる。記憶素子へのプログラムの書き込みは、基板に実装される前段階の記憶素子をアダプターに装着して行うケース(オフボード)と、記憶素子が基板に実装された状態で行うケース(オンボード)とがあり、作業時間や手間の面から考えると、後者のケースを採用することが望ましい。
【0003】
ところで、電子回路基板の良否を検査する手法として、検査用プローブを電子回路基板の端子パッドに接触させる電気検査が開発されている(例えば、特許文献1参照)。かかる手法をプログラムの書き込みに応用すれば、基板上の所定部位に書き込み用プローブを接触させるだけで基板上の記憶素子にプログラムを書き込めるようになるようで、オンボード形式の書き込みをより容易に実行することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−191300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、基板上の所定部位に書き込み用プローブを単に接触させるだけでは、振動などの影響により書き込み用プローブがずれて、上記の所定部位と書き込み用プローブとの接触状態が解除されてしまう虞があり、かかる場合には、記憶素子へのプログラムの書き込みが適切に行われなくなってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、モータ制御用のプログラムがオンボード形式で適切に書き込まれた記憶素子を実装したモータ制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明のモータ制御装置によれば、モータを制御するためのプログラムが書き込まれる記憶素子が配置された基板と、該基板に形成され、前記記憶素子に前記プログラムを書き込むための書き込み信号を出力する書き込み手段と接触する接触部と、該接触部と前記記憶素子とを連結し、前記接触部に接触した状態の前記書き込み手段から出力された前記書き込み信号を、前記接触部から前記記憶素子に伝送する信号伝送部と、を備え、前記接触部は、前記書き込み手段と係合可能な係合部を有し、前記記憶素子に前記プログラムが書き込まれる間、前記係合部に前記書き込み手段を係合させることによって前記書き込み手段との接触状態を維持することにより解決される。
【0008】
すなわち、本発明のモータ制御装置に実装される記憶素子には、モータ制御用のプログラムがオンボード形式で適切に書き込まれるようになる。具体的に説明すると、記憶素子にプログラムを書き込む上で、基板の接触部は、書き込み信号を出力する書き込み手段と接触した状態(導通状態)となっている必要があり、記憶素子へのプログラムの書き込みが行われる期間中、当該導通状態を維持しなければならない。これに対し、本発明では、接触部に係合部を設け、係合部に書き込み手段を係合させることにより上記の導通状態を安定して保持することが可能となる。この結果、記憶素子にプログラムをオンボード形式で適切に書き込むことが可能になる。
【0009】
また、上記のモータ制御装置において、前記係合部は、前記書き込み手段が嵌合する嵌合穴であり、前記接触部は、前記記憶素子に前記プログラムが書き込まれる間、前記嵌合穴に前記書き込み手段を嵌合させることによって前記書き込み手段との接触状態を維持することとしてもよい。かかる構成のように嵌合穴に書き込み手段を嵌合させることにより、上記の導通状態をより安定して保持し、かつ、プログラム書き込み中の書き込み手段の位置ずれを防止することが可能となる。
【0010】
また、上記のモータ制御装置において、前記嵌合穴は、前記基板を貫通した円穴であり、前記書き込み手段は、先端に向かうにつれて径が小さくなる形状を有するプローブであり、該プローブの先端部は、前記円穴の径よりも大径となった大径領域を有しており、前記円穴に嵌合することとしてもよい。かかる構成であれば、プローブの先端部を円穴に挿入していくと、プローブの先端部が完全に円穴を通過することはなく、その中途部位で円穴に嵌合するようになるので、プローブを基板の接触部に確実に接触させることが可能になる。
なお、プローブの先端部が円錐形状であり、嵌合穴が円穴となっているので、少々の寸法誤差や位置ずれが生じたとしても(例えば、プローブの中心が円穴の中心に対して少々ずれた場合であったとしても)、その誤差やずれを許容し、プローブと接触部とを適切に接触させることが可能になる。
【0011】
また、上記のモータ制御装置において、前記プローブの先端部は、円錐形状であり、前記円穴の直上位置に位置し、先端が下方を向いた状態の前記プローブを下降させることにより、前記円穴に前記プローブの先端部が嵌合することとしてもよい。かかる構成において、特に、前記接触部は、前記基板に列状に並べて複数形成されており、複数の前記接触部と同数の前記プローブを列状に並べて固定する固定治具を、複数の前記接触部の各々に備えられた前記円穴の直上位置に前記プローブが存するように配置しながら、前記固定治具を下降させることにより、複数の前記接触部の各々に備えられた前記円穴すべてに同時に、前記プローブの先端部が嵌合すると、より一層好適である。すなわち、記憶素子へのプログラムの書き込みを複数のプローブを用いて実施する場合、上記の構成であれば、すべてのプローブを同時に接触部に接触させることが容易になる。
具体的に説明すると、上記の構成であれば、複数の接触部の各々に備えられた円穴の直上位置にプローブが存している状態で、複数のプローブが固定された固定治具を下降させれば、すべての円穴に同時にプローブの先端部を嵌合させることになる。このような構成であれば、すべてのプローブを同時に接触部に接触させることが容易になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のモータ制御装置によれば、記憶素子へのプログラムの書き込み中、基板の接触部の状態を、書き込み信号を出力する書き込み手段との接触した状態(導通状態)で安定させておくことが可能となるので、記憶素子にプログラムをオンボード形式で適切に書き込むことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のモータ制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る基板の模式平面図である。
【図3】プログラミング装置の構成を示すブロック図である。
【図4】プログラミング工程の様子を示す図である(その1)。
【図5】プログラミング工程の様子を示す図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態(以下、本実施形態)について、図1乃至図5を参照しながら説明する。図1は、本発明のモータ制御装置の構成を示すブロック図である。図2は、本発明の実施形態に係る基板の模式平面図である。図3は、プログラミング装置の構成を示すブロック図である。図4及び5は、プログラミング工程の様子を示す図である。
なお、本実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。つまり、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0015】
本実施形態に係るモータ制御装置1は、モータ2の起動・停止や速度制御など、モータ2の作動状態を制御するためのものであり、図1に示すように、基板としての回路基板10を備えている。回路基板10には、半導体チップ(マイコン)11が実装されており、この半導体チップ11には、中央演算処理装置であるCPU12と、記憶素子であるメモリ13と、インターフェース14とが内蔵されている。
【0016】
上記のメモリ13には、モータ2を駆動するためのプログラム(以下、制御用プログラム15)が書き込まれており、この制御用プログラム15がCPU12によって実行されると、回路基板10側から駆動信号が出力され、この駆動信号に基づいて、バッテリ16の電力がモータ2に供給されるようになる。なお、モータ2の種類については特に限定されるものではなく、ブラシ付きモータであってもよく、あるいは、ブラシレスモータであってもよい。
【0017】
回路基板10は、プリント基板からなり、図2に示すように、回路基板10のベースをなす矩形状の母材17と、回路基板10の表面に配置された上記の半導体チップ11と、回路基板10に形成されたランド18と、回路基板10の裏面側で半導体チップ11とランド18とを電気的に連結させる導通パターン19とを有している。
【0018】
ランド18は、本発明の接触部に相当し、本実施形態では、回路基板10の長手方向に沿って列状に並べて複数(図2に示す例では5個)形成されている。各ランド18は、回路基板10(厳密には、母材17)の表面側から裏面側に亘って形成されており(例えば、図4参照)、その端面は母材17の表面や裏面よりも僅かに外側に位置して露出している。そして、各ランド18には、回路基板10(具体的には、母材17)を貫通した円穴としてのスルーホール18aが備えられている。このスルーホール18aの内面には導通層(不図示)が形成されており、この導通層を通じて、ランド18と導通パターン19とが電気的に接続されている。
なお、スルーホール18aの形成方法については、公知の方法が利用可能であり、例えばドリルを用いた加工方法であってもよく、レーザー光を用いた加工方法であってもよい。
【0019】
導通パターン19は、本発明の信号伝送部に相当し、ランド18と半導体チップ11とを電気的に連結させるものである。具体的に説明すると、導通パターン19の一端部は、ランド18に繋がっており、導通パターン19の他端部は、半導体チップ11のリード11aに接触している。
【0020】
以上までに説明してきた構成を有する回路基板10に対して、図3に図示されたプログラミング装置3を用いて、半導体チップ11に制御用プログラム15を書き込む工程(以下、プログラミング工程)が実施される。そして、本実施形態では、半導体チップ11に制御用プログラム15を書き込むための書き込み信号を出力する書き込み手段をランド18に接触することによってプログラミング工程が実行される。
【0021】
プログラミング装置3は、半導体チップ11が母材17上に配置された状態(すなわち、オンボード形式)でプログラミング工程を行うものであり、図3に示すように、書き込み機器31と、書き込み手段としてのコンタクトプローブ34を複数備えたプローブユニット33とによって構成されている。書き込み機器31は、半導体チップ11に制御用プログラム15を書き込むための書き込み信号として電気信号を生成して出力するものであり、例えば公知のICチップライタが該当する。ここで、制御用プログラム15のマスターデータは、書き込み機器31に直接ローディングすることとしてもよく、あるいは、書き込み機器31を制御する電子計算機(PC)を設けて電子計算機からリモート操作で書き込み機器31にマスターデータをローディングすることとしてもよい。
【0022】
プローブユニット33は、回路基板10のランド18にコンタクトプローブ34を接触させるものであり、複数のコンタクトプローブ34と、コンタクトプローブ34を固定する固定治具35とを有する。本実施形態において、各コンタクトプローブ34の先端部は、円錐形状となっている(図4及び5参照)。すなわち、各コンタクトプローブ34は、先端に向かうにつれて径が小さくなる形状を有するプローブに該当する。
【0023】
また、各コンタクトプローブ34にはケーブル32の一端が繋がっており、ケーブル32の他端は、上記の書き込み機器31に繋がっている。そして、制御用プログラム15を書き込むために書き込み機器31から出力された電気信号が、ケーブル32を通じて各コンタクトプローブ34に伝送される。このとき、各コンタクトプローブ34がランド18に接触した状態(すなわち、導通状態)にあると、各コンタクトプローブ34から上記の電気信号が出力され、当該信号が、ランド18から導通パターン19を通じて半導体チップ11に伝送されるようになる。この結果、半導体チップ11に制御用プログラム15が書き込まれるようになる。
【0024】
ところで、本実施形態では、コンタクトプローブ34をランド18に接触させる際に、ランド18に形成されたスルーホール18aにコンタクトプローブ34の先端部を嵌合させることとしている。つまり、本実施形態に係るスルーホール18aは、コンタクトプローブ34を嵌合させるために形成された嵌合穴に相当し、ランド18は、スルーホール18aにコンタクトプローブ34を嵌合させることによってコンタクトプローブ34と接触する。
【0025】
以上のように、本実施形態では、スルーホール18aにコンタクトプローブ34を嵌合させてランド18とコンタクトプローブ34との導通を取るので、半導体チップ11への制御用プログラム15の書き込みが行われる期間中、コンタクトプローブ34とランド18との導通状態(接触状態)を安定的に保持しておくことが可能となる。この結果、半導体チップ11に制御用プログラム15をオンボード形式で適切に書き込むことが可能になる。
【0026】
より詳しく説明すると、発明が解決しようとする課題の項で説明したように、回路基板10においてコンタクトプローブ34を接触させる部位がプレート状(穴が空いていない形状)で、当該部位にコンタクトプローブ34を単に接触させる(当接させる)だけでは、振動などの影響によりコンタクトプローブ34がずれて上記の部位とコンタクトプローブ34との接触状態が解除されてしまう虞があり、かかる場合には、半導体チップ11へのプログラムの書き込みが適切に行われなくなってしまう。
これに対して、本実施形態では、上述したように、スルーホール18aにコンタクトプローブ34を嵌合させることにより、半導体チップ11への制御用プログラム15の書き込み中、コンタクトプローブ34とランド18との接触状態(導通状態)が安定的に保持される。さらに、コンタクトプローブ34がスルーホール18aに嵌合することにより、コンタクトプローブ34の位置が固定され、プログラム書き込み中のコンタクトプローブ34の位置ずれが防止されることになる。以上の結果、制御用プログラム15がオンボード形式で半導体チップ11に適切に書き込まれるようになる。
【0027】
なお、本実施形態では、嵌合穴としてのスルーホール18aが円穴となっており、コンタクトプローブ34の先端部が円錐形状となっているため、より容易にスルーホール18aにコンタクトプローブ34を嵌合させることが出来る。この結果、少々の寸法誤差や位置ずれが生じたとしても(例えば、コンタクトプローブ34の先端部をスルーホール18aに挿入させ始める際に、スルーホール18aの中心とコンタクトプローブ34の先端とが少々ずれていたとしても)、その誤差やずれを許容し、コンタクトプローブ34とランド18とを適切に接触させることが可能になる。
【0028】
また、本実施形態において、コンタクトプローブ34の先端部は、図5に示すように、スルーホール18aの径よりも大径となった大径領域34aを有している。つまり、コンタクトプローブ34は、先端側からスルーホール18aに挿入した際にスルーホール18aを通り抜けることはなく、上記の大径領域34aがランド18に係止された時点でコンタクトプローブ34の先端部がスルーホール18aに嵌合するようになる。この結果、本実施形態では、コンタクトプローブ34をランド18に確実に接触させることが可能になる。
【0029】
さらに、本実施形態に係る回路基板10には、前述したように、複数のランド18が列状に並んだ状態で形成されている。各ランド18には、同径のスルーホール18aが形成されており、これらのスルーホール18aは、回路基板10の長手方向に沿って一定ピッチで並んでいる(図2参照)。
一方、プログラミング装置3のプローブユニット33には、回路基板10に形成されたランド18と同数のコンタクトプローブ34が備えられており、これらのコンタクトプローブ34は、先端が鉛直方向で下方を向いた状態で固定治具35に固定される。固定治具35は、ランド18と同数のコンタクトプローブ34を列状に並べて固定するものである。ここで、固定治具35に固定されたコンタクトプローブ34は、スルーホール18aの形成ピッチと略同じ間隔で並んでいる。また、固定治具35に固定されたコンタクトプローブ34の各々の先端位置は、鉛直方向において揃えられている。
【0030】
そして、本実施形態では、プローブユニット33に不図示の昇降機構が設けられており、かかる昇降機構により固定治具35が鉛直方向に昇降するようになる。この固定治具35の昇降動作により、各コンタクトプローブ34が固定治具35と一体的に鉛直方向に沿って昇降するようになる。このような構成により、本実施形態では、複数のランド18の各々に備えられたスルーホール18aすべてに同時に、コンタクトプローブ34の先端部を嵌合させることが可能になる。
【0031】
すなわち、ランド18と同数のコンタクトプローブ34が固定された固定治具35を、各ランド18のスルーホール18aの直上位置にコンタクトプローブ34が存するように配置しながら、固定治具35を下降させると、先端が鉛直方向下方を向いた状態の各コンタクトプローブ34が固定治具35と一体的に下降するようになる。この結果、複数のランド18の各々に備えられたスルーホール18aすべてに同時に、コンタクトプローブ34の先端部が嵌合するようになる。
【0032】
以上のように、本実施形態では、各スルーホール18aの直上位置にコンタクトプローブ34が存している状態で、複数のコンタクトプローブ34が固定された固定治具35を移動(下降)させることにより、すべてのスルーホール18aに同時にコンタクトプローブ34の先端部を嵌合させることが容易になる。
【0033】
次に、本実施形態に係るプログラミング工程の手順について説明する。本実施形態に係るプログラミング工程は、前述したようにオンボード形式で行われる。すなわち、半導体チップ11が母材17の所定位置に配置された状態でプログラミング工程が開始される。なお、プログラミング工程の開始時点において、回路基板10には、スルーホール18aが備えられたランド18が複数形成されている。かかる状態の回路基板10が不図示の載置台に、半導体チップ11が取り付けられている回路基板10の表面が上方を向くように載置される。
【0034】
一方、プログラミング装置3では、書き込み機器31に制御用プログラム15(すなわち、書き込み対象となるプログラム)のマスターデータがローディングされ、書き込み機器31とプローブユニット33(具体的には、各コンタクトプローブ34の末端)との間にケーブル32が敷設される。
【0035】
そして、回路基板10が載置台に載置されるようになると、回路基板10において複数形成されたランド18の各々に備えられたスルーホール18aの直上位置に、コンタクトプローブ34が位置している状態(図4に示す状態)となる。換言すると、回路基板10が載置台に載置された時点において、ランド18と同数のコンタクトプローブ34を固定している固定治具35が、各スルーホール18aの直上位置にコンタクトプローブ34が存するように配置されるようになる。
【0036】
その後、上記の状態にある固定治具35を下降させることにより、先端が鉛直方向において下方を向いている各コンタクトプローブ34が一斉に下降する。この下降動作により、各コンタクトプローブ34が、その直下に位置したスルーホール18aに挿入され、やがて、各コンタクトプローブ34の先端部に設けられた大径領域34aがランド18に係止されるようになる。つまり、各コンタクトプローブ34の先端部が、スルーホール18aに嵌合するようになり、すべてのコンタクトプローブ34がランド18と接触する(図5参照)。
【0037】
そして、コンタクトプローブ34とランド18とが接触している状態で、書き込み機器31が、書き込み信号としての電気信号を生成して出力し、当該電気信号がケーブル32を通じて各コンタクトプローブ34に伝送される。なお、電気信号の電圧レベルや出力タイミングについては、書き込み機器31側で制御される。
【0038】
各コンタクトプローブ34は、書き込み機器31側から電気信号が入力されると、ランド18と接触している部位から電気信号(書き込み信号)を出力するようになる。コンタクトプローブ34から出力された電気信号は、導通パターン19により、ランド18から半導体チップ11のリード11aに伝送される。そして、制御用プログラム15を書き込むのに必要な電気信号がすべて半導体チップ11に伝送された時点で、プログラミング工程が完了する。
【0039】
そして、プログラミング工程が完了すると、固定治具35を上昇させることにより各コンタクトプローブ34を上昇させ、これによって、各コンタクトプローブ34とランド18との接触状態(導通状態)が解除されるようになる。各コンタクトプローブ34がスルーホール18aから完全に引き抜かれた状態になると、不図示の搬送装置により回路基板10が所定の回収先へ搬送され、その後、モータ制御装置1の構成部品として利用されるようになる。
以上までに説明してきた一連の処理は、回路基板10毎に繰り返され、また、制御用プログラム15の修正や変更等の場合にも同様の手順にて行われる。
【0040】
<<その他の実施形態について>>
上記の実施形態では、コンタクトプローブ34の形状が円錐形状であり、コンタクトプローブ34を嵌合させる嵌合穴としてのスルーホール18aが円穴であるとした。また、上記の実施形態では、嵌合穴として回路基板10を貫通した貫通穴が形成されていることとした。ただし、これに限定されるものではなく、コンタクトプローブ34をスルーホール18a等の穴に嵌合させることが可能であればよく、コンタクトプローブ34や嵌合穴の形状については、上記の形状以外の形状であってもよく、また、嵌合穴については貫通穴でなくともよい。
【0041】
また、上記の実施形態では、嵌合穴としてのスルーホール18aにコンタクトプローブ34を嵌合させてランド18とコンタクトプローブ34との導通を取ることとした。しかし、コンタクトプローブ34とランド18との導通状態(接触状態)を安定的に保持する上で、コンタクトプローブ34を嵌合穴に嵌合させる態様には限定されない。つまり、制御用プログラム15が半導体チップ11に書き込まれる間、コンタクトプローブ34のように書き込み信号を出力する書き込み手段と、ランド18のように書き込み手段と接触する接触部との接触状態を維持するためには、接触部に、書き込み手段と係合する係合部が設けられており、半導体チップ11への制御用プログラム15の書き込みが行われる期間中、上記の係合部に書き込み手段を係合させることによって書き込み手段と接触部との接触状態を維持すればよい。なお、嵌合穴以外の係合部としては、例えば、凹部や窪み、溝等が挙げられ、この他にも書き込み手段が係合可能なものであれば制限なく利用することが可能である。ただし、書き込み手段の位置を固定してプログラム書き込み中の書き込み手段の位置ずれを防止することが可能となる点においては、上記の実施形態、すなわち、接触部の嵌合穴に書き込み手段を嵌合させる形態が望ましい。
【0042】
また、上記の実施形態では、コンタクトプローブ34が複数設けられ、当該複数のコンタクトプローブ34が共通の固定治具35に固定されていることとしたが、これに限定されるものではない。例えば、コンタクトプローブ34別に固定治具が設けられている構成であってもよい。
【0043】
また、上記の実施形態では、回路基板10に複数のスルーホール18aが列状に並んで形成されており、スルーホール18a間のピッチが略一定であることとしたが、これに限定されるものではない。各スルーホール18aの形成位置については自由に設定することが可能である。同様に、スルーホール18a間のピッチについては一定でなくともよい。
【符号の説明】
【0044】
1 モータ制御装置、2 モータ、3 プログラミング装置、
10 回路基板、11 半導体チップ、11a リード、
12 CPU、13 メモリ、14 インターフェース、
15 制御用プログラム、16 バッテリ、17 母材、
18 ランド、18a スルーホール、19 導通パターン、
31 書き込み機器、32 ケーブル、
33 プローブユニット、
34 コンタクトプローブ、34a 大径領域、
35 固定治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを制御するためのプログラムが書き込まれる記憶素子が配置された基板と、
該基板に形成され、前記記憶素子に前記プログラムを書き込むための書き込み信号を出力する書き込み手段と接触する接触部と、
該接触部と前記記憶素子とを連結し、前記接触部に接触した状態の前記書き込み手段から出力された前記書き込み信号を、前記接触部から前記記憶素子に伝送する信号伝送部と、を備え、
前記接触部は、前記書き込み手段と係合可能な係合部を有し、前記記憶素子に前記プログラムが書き込まれる間、前記係合部に前記書き込み手段を係合させることによって前記書き込み手段との接触状態を維持することを特徴とするモータ制御装置。
【請求項2】
前記係合部は、前記書き込み手段が嵌合する嵌合穴であり、
前記接触部は、前記記憶素子に前記プログラムが書き込まれる間、前記嵌合穴に前記書き込み手段を嵌合させることによって前記書き込み手段との接触状態を維持することを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記嵌合穴は、前記基板を貫通した円穴であり、
前記書き込み手段は、先端に向かうにつれて径が小さくなる形状を有するプローブであり、
該プローブの先端部は、前記円穴の径よりも大径となった大径領域を有しており、前記円穴に嵌合することを特徴とする請求項2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記プローブの先端部は、円錐形状であり、
前記円穴の直上位置に位置し、先端が下方を向いた状態の前記プローブを下降させることにより、前記円穴に前記プローブの先端部が嵌合することを特徴とする請求項3に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記接触部は、前記基板に列状に並べて複数形成されており、
複数の前記接触部と同数の前記プローブを列状に並べて固定する固定治具を、複数の前記接触部の各々に備えられた前記円穴の直上位置に前記プローブが存するように配置しながら、前記固定治具を下降させることにより、複数の前記接触部の各々に備えられた前記円穴すべてに同時に、前記プローブの先端部が嵌合することを特徴とする請求項4に記載のモータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−106439(P2013−106439A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248908(P2011−248908)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】