説明

モータ及びロータの製造方法

【課題】複数の磁石を周方向に配置させるロータを有するものであって、該ロータのコギングトルクを低減させることのできるモータ及びロータの製造方法を提供する。
【解決手段】第1〜第4凹部CH1〜CH4の両端部に位置決め部材25を設けた。第1及び第3永久磁石MG1,MG3を、正回転方向の側の位置決め部材25を基準に片寄せして底面に固着した。また、第2及び第4永久磁石MG2,MG4を、それぞれ逆回転方向の側の位置決め部材25を基準に片寄せして底面に貼付け固着した。これによって、永久磁石の正回転方向と逆回転方向への片寄せ数が同数となり、各永久磁石MG1〜MG4の貼付固定の際の偏りが完全に打ち消される。その結果、ロータのコギングトルクが低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータを備えたモータ及びロータの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブラシレスモータにおいて、コンシクエントポール型のロータを備えたブラシレスモータが種々提案されている(例えば、特許文献1)。このコンシクエントポール型のロータを備えたブラシレスモータでは、ロータの永久磁石を半減させることができることからコストダウンを図ることができる。
【0003】
コンシクエントポール型のロータは、磁石極部と疑似磁極部とが交互に現れることから、磁気バランスが悪いとコギングトルク悪化の要因となっていた。そこで、コンシクエントポール型のロータは、磁気バランスを良くするために、永久磁石をロータコアの表面に固定するにあたり、精度よく固定する必要があった。
【0004】
ところで、各永久磁石を固定する際、全ての永久磁石を時計回り方向(正転方向)側又は反時計回り方向(逆転方向)側のいずれか一方に片寄せして固定していた。例えば、各疑似磁極部について、疑似磁極部の正転方向の側面に冶具を当て、その冶具に永久磁石を当接させて各永久磁石をロータコアの表面に固定することで、全ての永久磁石が同じ正転方向側に精度よく片寄せ固定されるようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−327139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような片寄せ固定は、全ての永久磁石が同じ方向に片寄せ固定されることから、コンシクエントポール型のロータの場合、疑似磁極で発生したコギングトルクを永久磁石極で発生したコギングトルクで相殺すべく配置された永久磁石の位置が永久磁石極の変動により位相がずれて相殺できなくなる。また、各磁石の位相が同一方向に合致するため、互いの磁石極のコギングトルクが加算されて、大きくなるという問題があった。なお、これらの問題はコンシクエントポール型のロータに限らず、極性の異なる永久磁石をロータの周方向において交互に配置したフルマグネット型のロータにおいても同様のことが考えられる。
【0007】
本発明は上記問題点を解消するためになされたものであって、その目的は、複数の磁石を周方向に配置させるロータを有するものであって、該ロータのコギングトルクを低減させることができるモータ及びロータの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、ロータを構成する略円環状のロータコアに軸線方向に長い複数の永久磁石を周方向に予め定められた間隔で配置し、前記永久磁石にて形成される磁石磁極と、前記永久磁石間に形成される疑似磁極又は前記永久磁石と異なる極性の異極磁石にて形成される異磁極とを、周方向に交互に配置したモータであって、前記ロータコアに、前記永久磁石を配置するための同永久磁石よりも大きい設置部を形成し、前記複数の永久磁石を2つの組に区分し、一方の組の複数の永久磁石は前記設置部に対して正回転方向から前記疑似磁極又は前記異磁極側に片寄せ固定し、他方の組の複数の永久磁石は前記設置部に対して逆回転方向から疑似磁極又は前記異磁極側に片寄せ固定した。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、ロータのコギングトルクを低減させることができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のモータにおいて、前記設置部には、周方向に前記永久磁石を係止する係止部を設け、前記一方の組の複数の永久磁石は前記係止部に対して正回転方向から当接して片寄せ固定し、前記他方の組の複数の永久磁石は前記係止部に対して逆回転方向から当接して片寄せ固定した。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、ロータのコギングトルクを低減させることができる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のモータにおいて、前記ロータの極数は、4P(Pは整数)であって、前記永久磁石の数は2P個であり、前記2P個の永久磁石を、それぞれ永久磁石がP個となる2つ組に区分し、一方の組の永久磁石を前記係止部に対して正回転方向から前記疑似磁極又は前記異磁極側に片寄せ固定し、他方の組の永久磁石を前記係止部に対して逆回転方向から前記疑似磁極又は前記異磁極側に片寄せ固定した。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、疑似磁極又は前記異磁極の正回転方向側に片寄せした永久磁石の数(P個)と疑似磁極又は前記異磁極の逆回転方向側に片寄せした永久磁石の数(P個)が同数となり、磁気バランスが整い、ロータのコギングトルクを低減させることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載のモータにおいて、前記ロータの極数は、4P+2(Pは整数)であって、前記永久磁石の数は(2P+1)個であり、前記(2P+1)個の永久磁石を、永久磁石がP個となる組と永久磁石が(P+1)個となる組とに区分し、一方の組の永久磁石を前記係止部に対して正回転方向から前記疑似磁極又は前記異磁極側に片寄せ固定し、他方の組の永久磁石を前記係止部に対して逆回転方向から前記疑似磁極又は前記異磁極側に片寄せ固定した。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、疑似磁極又は前記異磁極の正回転方向側に片寄せした永久磁石の数と疑似磁極又は前記異磁極の逆回転方向側に片寄せした永久磁石の数との差が1つであるため、磁気バランスのズレが少なく、ロータのコギングトルクを低減させることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか1つに記載のモータにおいて、前記係止部は、前記各設置部の周方向の両端部にそれぞれ設けた。
請求項5に記載の発明によれば、いずれの方向にも永久磁石を振り分け固定することができる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか1つに記載のモータにおいて、前記係止部は、前記永久磁石が片寄せされる側の前記設置部の周方向の端部にそれぞれ設けた。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、係止部がその分少なくすることができる。
請求項7に記載の発明は、円筒状のロータコアに軸線方向に長い複数の永久磁石を周方向に予め定められた間隔で配置し、前記永久磁石にて形成される磁石磁極と、前記永久磁石間に形成される疑似磁極又は前記永久磁石と異なる極性の異極磁石にて形成される異磁極とを、周方向に交互に配置したロータの製造方法であって、前記ロータコアに、前記永久磁石を配置するための同永久磁石よりも大きい設置部を形成し、前記複数の永久磁石を2つの組に区分し、一方の組の複数の永久磁石は、前記設置部の正回転方向側の端部と前記疑似磁極又は前記異磁極に介在させた冶具に向けて片寄せして前記設置部に固定し、他方の組の複数の永久磁石は、前記設置部の逆回転方向側の端部と前記疑似磁極又は前記異磁極との間に介在させた冶具に向けて片寄せして前記設置部に固定した。
【0017】
請求項7に記載の発明によれば、治具を使って、簡単に2つの組の永久磁石を疑似磁極又は異磁極の正回転方向側と疑似磁極又は異磁極の逆回転方向側に振り分けて片寄せ固定できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ロータのコギングトルクを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態のリア側から見たブラシレスモータの構成図。
【図2】第1実施形態のロータをリア側から見た正面図。
【図3】ロータの斜視図。
【図4】ロータコアの斜視図。
【図5】ロータコアのリア側から見た正面図。
【図6】(a)ロータの各疑似磁極に対する各永久磁石の振り分け固定を説明するための一部展開図、(b)同じく各永久磁石の振り分け固定を説明するための一部展開図。
【図7】第2実施形態のリア側から見たブラシレスモータの構成図。
【図8】第2実施形態のロータの一部切り欠き正面図。
【図9】(a)ロータの各疑似磁極に対する各永久磁石の振り分け固定を説明するための一部展開図、(b)同じく各永久磁石の振り分け固定を説明するための一部展開図。
【図10】各永久磁石をロータコアに振り分け片寄せ固定する方法の別例を示す図。
【図11】同じく、各永久磁石をロータコアに振り分け片寄せ固定する方法の別例を示す図。
【図12】IPMロータの別例を示し、(a)ロータの各疑似磁極に対する各永久磁石の振り分け固定を説明するための一部展開図、(b)同じく各永久磁石の振り分け固定を説明するための一部展開図。
【図13】別例のフルマグネット型ロータの正面図。
【図14】(a)別例のフルマグネット型ロータの磁石振り分け固定を説明するための一部展開図、(b)別例のフルマグネット型ロータの磁石振り分け固定を説明するための一部展開図。
【図15】(a)別例のフルマグネット型ロータの磁石振り分け固定を説明するための一部展開図、(b)別例のフルマグネット型ロータの磁石振り分け固定を説明するための一部展開図。
【図16】IPMロータの別例を示し、(a)ロータの磁石の振り分け固定を説明するための一部展開図、(b)ロータの磁石の振り分け固定を説明するための一部展開図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、本発明をブラシレスモータに具体化した第1実施形態を図1〜図6に従って説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態のブラシレスモータMは、円筒状のステータ1の内側にロータ2が配置されている。ステータ1は、モータハウジングケース(図示しない)の内側面に固定されステータコア11を設けている。ステータコア11は、図1に示すように、円筒部12と該円筒部12から径方向内側に延びて周方向に複数設けられたティース13とを有する。本実施形態では、ティース13は、60個形成されている。従って、ティース13間に形成されるスロットSは60個形成されている。
【0022】
各スロットSには、軸線方向の一側(リア側)から他側(フロント側)に向かって、セグメントSGが挿入される。そして、各セグメントSG同士を所定の規則で接続することによって、3相Y結線よりなる第1系統の3相巻線と第2の3相巻線が巻回されたステータ1が形成される。
【0023】
そして、巻回した第1及び第2系統の3相巻線を通電制御してステータ1に回転磁界を形成し、同ステータ1の内側に配置した回転軸3に固着されたロータ2を、正回転(図1において時計回り方向)及び逆回転(図1において反時計回り方向に回転)させるようになっている。
【0024】
ステータ1の内側に配設されたロータ2は、図1に示すように、コンシクエントポール型構造のロータである。ロータ2は、回転軸3に貫挿固着されている。回転軸3は、ケースハウジングに設けられた図示しない一対の軸受けにより回転可能に支持されている。
【0025】
コンシクエントポール型構造のロータ2は、図2、図3に示すように、鋼板よりなるロータコア片21aが複数積層されて形成されたロータコア21を有し、同ロータコア21の中心部に回転軸3を貫挿固着する貫挿穴22が軸線方向に貫通形成されている。ロータコア21は、円柱状をなし、周方向に設置部としての5個の凹部(以下、図1、図2において時計回り方向(正回転方向)の順に第1〜第5凹部CH1〜CH5)が等角度の間隔に軸線方向に凹設されている。
【0026】
軸線方向に凹設された第1〜第5凹部CH1〜CH5の周方向の幅、即ち、底面の幅方向の幅D1(図5参照)は、同じ幅となるように形成されている。第1〜第5凹部CH1〜CH5の底面は平面であって、その底面の幅方向の中心が回転軸3の中心軸から径方向に延びる線に対して直交する平面である。
【0027】
第1〜第5凹部CH1〜CH5を形成することで、それぞれ各凹部CH1〜CH5の間には、5個の疑似磁極(以下、第1〜第5疑似磁極FP1〜FP5)が形成される。
ここでは、第1凹部CH1と第2凹部CH2の間には、第1疑似磁極FP1が形成され、第2凹部CH2と第3凹部CH3の間には、第2疑似磁極FP2が形成されている。また、第3凹部CH3と第4凹部CH4の間には、第3疑似磁極FP3が形成され、第4凹部CH4と第5凹部CH5の間に第4疑似磁極FP4が形成されている。さらに、第5凹部CH5と第1凹部CH1の間には、第5疑似磁極FP5が形成されている。
【0028】
ここで、それぞれ各凹部CH1〜CH5の間に形成される各疑似磁極FP1〜FP5の周方向の幅D2は全て同じであって、各凹部CH1〜CH5の周方向の幅D1より小さくなるように形成されている。
【0029】
第1〜第5凹部CH1〜CH5の底面の幅方向の両端部には、それぞれ位置決め部材25が軸線方向に沿って固着されている。各位置決め部材25は、それぞれ断面四角形状の角材であってその側面と底面とでなす一角が、疑似磁極FP1〜FP5の側面と第1〜第5凹部CH1〜CH5の底面とが交差する稜線に当接し、軸線方向に沿って底面に固着されている。
【0030】
各位置決め部材25の周方向の幅D3は同じである。また、各位置決め部材25の幅D3は、この相対向する位置決め部材25間の間隔D4が各疑似磁極FP1〜FP5の周方向の幅D2よりも大きくなる大きさ設定されている。
【0031】
各疑似磁極FP1〜FP5の両側面に位置決め部材25を固着した各凹部CH1〜CH5の底面には、第1〜第5永久磁石MG1〜MG5が貼付け固着される。
ここでは、第1凹部CH1には、第1永久磁石MG1が固着され、第2凹部CH2には、第2永久磁石MG2が固着される。また、第3凹部CH3には、第3永久磁石MG3が固着され、第4凹部CH4には、第4永久磁石MG4が固着される。さらに、第5凹部CH5には、第5永久磁石MG5が固着される。
【0032】
各永久磁石MG1〜MG5は、その底面が凹部CH1〜CH5の底面に合わせて平面に形成されている。その各永久磁石MG1〜MG5の幅方向の両側面は、各永久磁石MG1〜MG5の底面に対して直交するとともに、各永久磁石MG1〜MG5のそれぞれの両側面は互いに平行となるように形成されている。各永久磁石MG1〜MG5のそれぞれの両側面間の間隔は、各疑似磁極FP1〜FP5の周方向の幅D2と同じとなっている。
【0033】
第1〜第5各永久磁石MG1〜MG5は、本実施形態ではフェライト磁石よりなり、磁極が径方向において外側(磁石磁極)がS極、内側がN極となるように対応する各凹部CH1〜CH5にそれぞれ貼付け固着される。従って、各永久磁石MG1〜MG5間に形成された疑似磁極FP1〜FP5は、磁極がN極として機能する。その結果、ロータ2は、N極とS極が周方向に交互に配置され、極対数が5個に設定されている。即ち、ロータ2は、10磁極のコンシクエントポール型となる。
【0034】
ここで、各凹部CH1〜CH5に対応する各永久磁石MG1〜MG5の貼付け固着方法を、図2、図6に従って説明する。
第1凹部CH1に固着される第1永久磁石MG1は、図6において第1凹部CH1の右側端部に固着した位置決め部材25に当接しながら第1凹部CH1の底面に貼付け固着される。これによって、第1永久磁石MG1は、第1凹部CH1の右側の位置決め部材25を基準、即ち、図2において第1凹部CH1の時計回り方向(正回転方向)側の位置決め部材25を基準に固着される。
【0035】
次に、第2凹部CH2に固着される第2永久磁石MG2は、図6において第2凹部CH2の左側端部に固着した位置決め部材25に当接しながら第2凹部CH2の底面に貼付け固着される。これによって、第2永久磁石MG2は、第2凹部CH2の左側の位置決め部材25を基準、即ち、図2において第2凹部CH2の反時計回り方向(逆回転方向)側の位置決め部材25を基準に固着される。
【0036】
次に、第3凹部CH3に固着される第3永久磁石MG3は、図6において第3凹部CH3の右側端部に固着した位置決め部材25に当接しながら第3凹部CH3の底面に貼付け固着される。これによって、第3永久磁石MG3は、第3凹部CH3の右側の位置決め部材25を基準に、即ち、図2において第3凹部CH3の時計回り方向(正回転方向)側の位置決め部材25を基準に固着される。
【0037】
次に、第4凹部CH4に固着される第4永久磁石MG4は、図6において第4凹部CH4の左側端部に固着した位置決め部材25に当接しながら第4凹部CH4の底面に貼付け固着される。これによって、第4永久磁石MG4は、第4凹部CH4の左側の位置決め部材25を基準に、即ち、図6において第4凹部CH4の反時計回り方向(逆回転方向)側の位置決め部材25を基準に固着される。
【0038】
次に、第5凹部CH5に固着される第5永久磁石MG5は、図6において第5凹部CH5の右側端部に固着した位置決め部材25に当接しながら第5凹部CH5の底面に貼付け固着される。これによって、第5永久磁石MG5は、第5凹部CH5の右側の位置決め部材25を基準に、即ち、図6において第5凹部CH5の時計回り方向(正回転方向)側の側面を基準に固着される。
【0039】
つまり、第1、第3、第5永久磁石MG1,MG3及,MG5は、それぞれ第1、第3、第5凹部CH1,CH3,CH5の右側の位置決め部材25を基準に片寄せして底面に貼付け固着した。これに対して、第2、第4永久磁石MG2,MG4は、それぞれ第2、第4凹部CH2,CH4の左側の位置決め部材25を基準に片寄せして底面に貼付け固着した。
【0040】
言い換えれば、第1〜第5永久磁石MG1〜MG5について、第1永久磁石MG1、第3永久磁石MG3及び第5永久磁石MG5の組と、第2永久磁石MG2及び第4永久磁石MG4の組とで片寄せ方向を異なる方向に振り分けている。
【0041】
次に、上記のように構成したブラシレスモータMの作用を以下に記載する。
今、第1〜第5凹部CH1〜CH5を凹設することによって形成された第1〜第5凹部CH1〜CH5に両端部(正回転方向の端部及び逆回転方向の端部)に位置決め部材25を設けた。
【0042】
そして、第1永久磁石MG1、第3永久磁石MG3及び第5永久磁石MG5を、それぞれ対応する第1凹部CH1、第3凹部CH3、第5凹部CH5の右側(正回転方向の側)の位置決め部材25を基準に片寄せして底面に貼付け固着した。
【0043】
また、第2永久磁石MG2及び第4永久磁石MG4を、それぞれ対応する第2凹部CH2、第4凹部CH4の左側(逆回転方向の側)の位置決め部材25を基準に片寄せして底面に貼付け固着した。
【0044】
つまり、第1〜第5永久磁石MG1〜MG5について、第1永久磁石MG1、第3永久磁石MG3及び第5永久磁石MG5の組を正回転方向側に片寄せし、第2永久磁石MG2及び第4永久磁石MG4の組を逆回転方向側に片寄せして貼り付け固着した。
【0045】
これによって、各永久磁石MG1〜MG5の片寄せ固定が、正回転方向又は逆回転方向のいずれか一方ではなく、正回転方向と逆回転方向の両方向に振り分けられる。
つまり、各永久磁石MG1〜MG5の片寄せ固定が、正回転方向又は逆回転方向のいずれか一方だけの場合、疑似磁極での磁気バランスが悪くなり、コギングトルクが悪化する。
【0046】
これに対して、本実施形態を正回転方向と逆回転方向の両方向に振り分けたことから、正回転方向に片寄せした永久磁石の数と逆回転方向に片寄せした永久磁石の数との差が1つである。そのため、各永久磁石MG1〜MG5の貼付固定の際の偏りが打ち消される永久磁石が多く、疑似磁極での磁気バランスのアンバランスが低減され、疑似磁極と永久磁石間のコギングトルクの相殺作用も向上し、その結果、ロータのコギングトルクが低減される。
【0047】
次に、上記実施の形態の効果を以下に記載する。
(1)本実施形態によれば、第1〜第5永久磁石MG1〜MG5の片寄せ固定を、正回転方向又は逆回転方向のいずれか一方ではなく、正回転方向と逆回転方向の両方向に振り分けた。しかも、正回転方向に片寄せした永久磁石の数と逆回転方向に片寄せした永久磁石の数との差が1つであるため、磁気バランスのズレが少ない。
【0048】
従って、各永久磁石MG1〜MG5の貼付固定の際の偏りが打ち消される永久磁石がある。つまり、互いに逆の方向に振り分けられた磁石同士は、磁気の偏りを打ち消し合う。その結果、ロータのコギングトルクを低減させることができる。
【0049】
(2)本実施形態によれば、第1〜第5凹部CH1〜CH5を凹設し、その底面の両端部に位置決め部材25を設けた。そして、第1〜第5永久磁石MG1〜MG5を振り分ける片寄せ固定を、その位置決め部材25に当接することによって行った。
【0050】
従って、第1〜第5永久磁石MG1〜MG5の振り分け片寄せ作業は、簡単且つ精度よく行いことができる。
また、第1〜第5凹部CH1〜CH5の底面の両端部に位置決め部材25を設けたので、いずれの方向にも永久磁石を振り分け固定することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図7〜図9に従って説明する。
【0051】
図7に示すように、本実施形態のブラシレスモータMは、ステータ1が12スロットル集中巻きのステータで構成され、ロータ2が8極のコンシクエントポール型のロータで構成されている。
【0052】
ステータ1はステータコア11を有し、そのステータコア11に設けたティース13は、12個形成されている。従って、ティース13間に形成されるスロットSは12個形成されている。ティース13には、巻線Cが集中巻にて巻回されている。そして、集中巻にて巻回した3相巻線を通電制御してステータ1に回転磁界を形成し、同ステータ1の内側に配置された回転軸3に固着されたロータ2を、正回転及び逆回転(図7において時計回り方法及び反時計回り方向に回転)させるようになっている。
【0053】
ステータ1の内側に配設されたロータ2は、図7に示すように、コンシクエントポール型構造のロータである。ロータ2は、第1実施形態と同様に、鋼板よりなるロータコア片が複数積層されて形成されたロータコア21を有している。ロータコア21は、円柱状をなし、周方向に設置部としての4個の凹部(以下、図7において、正回転方向の順に第1〜第4凹部CH1〜CH4)が等角度の間隔に軸線方向に凹設されている。
【0054】
軸線方向に凹設された第1〜第4凹部CH1〜CH4の周方向の幅、即ち、底面の幅方向の幅D1(図8参照)は、同じ幅となるように形成されている。第1〜第4凹部CH1〜CH4の底面は平面であって、その底面の幅方向の中心が回転軸3の中心軸から径方向に延びる線に対して直交する平面である。
【0055】
第1〜第4凹部CH1〜CH4を形成することで、それぞれ各凹部CH1〜CH4の間には、4個の疑似磁極(以下、第1〜第4疑似磁極FP1〜FP4)が形成される。
ここでは、第1凹部CH1と第2凹部CH2の間には、第1疑似磁極FP1が形成され、第2凹部CH2と第3凹部CH3の間には、第2疑似磁極FP2が形成されている。また、第3凹部CH3と第4凹部CH4の間には、第3疑似磁極FP3が形成され、第4凹部CH4と第1凹部CH1の間に第4疑似磁極FP4が形成されている。
【0056】
ここで、それぞれ各凹部CH1〜CH5の間に形成される各疑似磁極FP1〜FP4の周方向の幅D2は全て同じであって、各凹部CH1〜CH4の周方向の幅D1より小さくなるように形成されている。
【0057】
第1〜第4凹部CH1〜CH4の底面の幅方向の両端部には、それぞれ位置決め部材25が軸線方向に沿って固着されている。各位置決め部材25は、それぞれ断面四角形状の角材であってその側面と底面といでなす一角が、疑似磁極FP1〜FP4の側面と第1〜第4凹部CH1〜CH4の底面とが交差する稜線に当接し、軸線方向に沿って底面に固着されている。
【0058】
各位置決め部材25の周方向の幅D3は、同じである。また、各位置決め部材25の幅D3は、この相対向する位置決め部材25間の間隔D4が各疑似磁極FP1〜FP4の周方向の幅D2よりも大きくなる大きさ設定されている。
【0059】
両端部に位置決め部材25を固着した各凹部CH1〜CH4の底面には、第1〜第4永久磁石MG1〜MG4が貼付け固着される。ここでは、第1凹部CH1には、第1永久磁石MG1が固着され、第2凹部CH2には、第2永久磁石MG2が固着される。また、第3凹部CH3には、第3永久磁石MG3が固着され、第4凹部CH4には、第4永久磁石MG4が固着される。
【0060】
各永久磁石MG1〜MG4は、その底面が各凹部CH1〜CH5の底面に合わせて平面に形成されている。その各永久磁石MG1〜MG4の幅方向の両側面は、各永久磁石MG1〜MG5の底面に対して直交するとともに、各永久磁石MG1〜MG4のそれぞれの両側面は互いに平行となるように形成されている。各永久磁石MG1〜MG4のそれぞれの両側面間の間隔は、各疑似磁極FP1〜FP4の周方向の幅D2と同じとなっている。
【0061】
第1〜第4各永久磁石MG1〜MG4は、本実施形態ではフェライト磁石よりなり、磁極が径方向において外側(磁石磁極)がS極、内側がN極となるように対応する各凹部CH1〜CH4にそれぞれ貼付け固着される。従って、各永久磁石MG1〜MG4間に形成された疑似磁極FP1〜FP4は、磁極がN極として機能する。その結果、ロータ2は、N極とS極が周方向に交互に配置され、極対数が4個に設定されている。即ち、ロータ2は、8磁極のコンシクエントポール型となる。
【0062】
ここで、各凹部CH1〜CH4に対応する各永久磁石MG1〜MG4の貼付け固着方法を、図7、図9に従って説明する。
第1凹部CH1に固着される第1永久磁石MG1は、図9において第1凹部CH1の右側端部に固着した位置決め部材25に当接しながら第1凹部CH1の底面に貼付け固着する。これによって、第1永久磁石MG1は、第1凹部CH1の右側の位置決め部材25を基準、即ち、図7において第1凹部CH1の時計回り方向(正回転方向)側の位置決め部材25を基準に固着される。
【0063】
次に、第2凹部CH2に固着される第2永久磁石MG2は、図9において第2凹部CH2の左側端部に固着した位置決め部材25に当接しながら第2凹部CH2の底面に貼付け固着する。これによって、第2永久磁石MG2は、第2凹部CH2の左側の位置決め部材25を基準、即ち、図7において第2凹部CH2の反時計回り方向(逆回転方向)側の位置決め部材25を基準に固着される。
【0064】
次に、第3凹部CH3に固着される第3永久磁石MG3は、図9において第3凹部CH3の右側端部に固着した位置決め部材25に当接しながら第3凹部CH3の底面に貼付け固着する。これによって、第3永久磁石MG3は、第3凹部CH3の右側の位置決め部材25を基準に、即ち、図9において第3凹部CH3の時計回り方向(正回転方向)側の位置決め部材25を基準に固着される。
【0065】
次に、第4凹部CH4に固着される第4永久磁石MG4は、図9において第4凹部CH4の左側端部に固着した位置決め部材25に当接しながら第4凹部CH4の底面に貼付け固着する。これによって、第4永久磁石MG4は、第4凹部CH4の左側の位置決め部材25を基準に、即ち、図9において第4凹部CH4の反時計回り方向(逆回転方向)側の位置決め部材25を基準に固着される。
【0066】
つまり、第1、第3永久磁石MG1,MG3は、それぞれ第1、第3凹部CH1,CH3の右側の位置決め部材25を基準に片寄せして底面に貼付け固着した。これに対して、第2、第4永久磁石MG2,MG4は、それぞれ第2、第4凹部CH2,CH4の左側の位置決め部材25を基準に片寄せして底面に貼付け固着した。
【0067】
言い換えれば、第1〜第4永久磁石MG1〜MG4について、第1、第3永久磁石MG1,MG3の組と、第2、第4永久磁石MG2,MG4の組とで片寄せ方向を異なる方向に振り分けている。
【0068】
次に、上記のように構成したブラシレスモータMの作用を以下に記載する。
今、第1〜第4凹部CH1〜CH4を凹設することによって形成された第1〜第4凹部CH1〜CH4の両端部(正回転方向の端部及び逆回転方向の端部)に位置決め部材25を設けた。
【0069】
そして、第1永久磁石MG1、第3永久磁石MG3を、それぞれ第1凹部CH1、第3凹部CH3の右側(正回転方向の側)の位置決め部材25を基準に片寄せして底面に貼付け固着した。
【0070】
また、第2永久磁石MG2、第4永久磁石MG4を、それぞれ第2凹部CH2、第4凹部CH4の左側(逆回転方向の側)の位置決め部材25を基準に片寄せして底面に貼付け固着した。
【0071】
つまり、第1〜第4永久磁石MG1〜MG4について、第1永久磁石MG1及び第3永久磁石MG3の組を正回転方向側に片寄せし、第2永久磁石MG2及び第4永久磁石MG4の組を逆回転方向側に片寄せして貼り付け固着した。
【0072】
これによって、各永久磁石MG1〜MG4の片寄せ固定が、正回転方向又は逆回転方向のいずれか一方ではなく、均等に正回転方向と逆回転方向の両方向に振り分けられる。
つまり、各永久磁石MG1〜MG4の片寄せ固定が、正回転方向又は逆回転方向のいずれか一方だけの場合、疑似磁極での磁気バランスが悪くなり、コギングトルクが悪化する。
【0073】
これに対して、本実施形態を正回転方向と逆回転方向の両方向に均等に振り分けたことから、各永久磁石MG1〜MG4の貼付固定の際の偏りが完全に打ち消されるため、疑似磁極での磁気バランスのアンバランスが低減され、疑似磁極と永久磁石間のコギングトルクの相殺作用も向上し、その結果、ロータのコギングトルクが低減される。
【0074】
次に、上記実施の形態の効果を以下に記載する。
(1)本実施形態によれば、第1〜第4永久磁石MG1〜MG4の片寄せ固定を、正回転方向又は逆回転方向のいずれか一方ではなく、正回転方向と逆回転方向の両方向に振り分けた。しかも、正回転方向に片寄せした永久磁石の数(2個)と逆回転方向に片寄せした永久磁石の数(2個)が同数となる。
【0075】
従って、各永久磁石MG1〜MG4の貼付固定の際の偏りが打ち消される。その結果、ロータのコギングトルクを低減させることができる。
(2)本実施形態によれば、第1〜第4凹部CH1〜CH4を凹設し、その底面の両端部に位置決め部材25を設けた。そして、第1〜第4永久磁石MG1〜MG4を振り分ける片寄せ固定を、その位置決め部材25に当接することによって行った。
【0076】
従って、第1〜第4永久磁石MG1〜MG4を振り分け片寄せ作業は、簡単且つ精度よく行いことができる。
また、第1〜第4凹部CH1〜CH4の底面の両端部に位置決め部材25を設けたので、いずれの方向にも永久磁石MG1〜MG4を振り分け固定することができる。
【0077】
上記各実施形態は、以下のように変更してもよい。
○上記各実施形態では、位置決め部材25を、第1〜第5凹部CH1〜CH5の底面の両端部に設けたが、永久磁石が片寄せされる側の第1〜第5凹部CH1〜CH5の底面の端部にそれぞれ設けて実施してもよい。これによって、位置決め部材25を減らすことができる。
【0078】
また、両端部の位置決め部材25を省略して実施してもよい。この場合、各永久磁石について、その永久磁石の片寄せする側の側面と底面で形成される一角を疑似磁極FP1〜FP5の側面と第1〜第5凹部CH1〜CH5の底面とが交差する稜線に当接させて固着する。
【0079】
○上記実施形態では、位置決め部材25の軸線方向の長さを、ロータコア21の軸線方向の長さと一致させたが、永久磁石MG1〜MG5が片寄せする際に、ガタ付かない程度に短くして実施してもよい。
【0080】
○上記第1実施形態では、10磁極のコンシクエントポール型のロータ2に具体化したがこれに限定されるものではない。例えば、磁極数が4P+2(Pは整数)極であって、永久磁石の数は(2P+1)個からなり、永久磁石が(P+1)個の組とP個の組に振り分けられるコンシクエントポール型のロータであるならばどんなロータであってもよい。
【0081】
○上記第2実施形態では、8磁極のコンシクエントポール型のロータ2に具体化したがこれに限定されるものではない。例えば、磁極数が4P(Pは整数)極であって、永久磁石の数は2P個からなり、永久磁石がP個となる2つの組に区分し、その2つの組を振り分けるようにしたコンシクエントポール型のロータであるならばどんなロータであってもよい。
【0082】
○上記第1実施形態では、位置決め部材25を使って振り分け片寄せ固定を行った。これを、図10に示すように、治具Jを使って、各永久磁石MG1〜MG5を振り分け片寄せ固定してもよい。
【0083】
即ち、各永久磁石MG1〜MG5について、それぞれ片寄せする側の第1〜第5凹部CH1〜CH5の底面端部に治具Jをそれぞれ配置する。そして、その配置された治具Jに対して各永久磁石MG1〜MG5を、片寄せする側からに治具Jに当接して位置決め固定する。この場合、位置決め部材25が不要となり部品数を削減できる。
【0084】
特に、図11に示すような、第1〜第5凹部CH1〜CH5の底面が円弧状に湾曲し、それに対応して内側面が円弧状に湾曲した永久磁石MG1〜MG5のロータ2の場合には、位置決め部材25を高精度に設けにくい。従って、このような永久磁石MG1〜MG5を精度よく位置決めし難い場合には、治具Jを使うことによって、高精度に振り分け片寄せ固定することができる。
【0085】
勿論、第2実施形態の8磁極のコンシクエントポール型のロータ2にも治具Jを使って振り分け片寄せ固定するようにしてもよい。
○上記各実施形態では、ブラシレスに具体化したが、正逆回転するブラシ付きモータに具体化してもよい。
【0086】
○第1〜第4実施形態では、SPM(Surface Permanent Magnet Motor)型ブラシレスモータに具体化したが、IPM(Interior Permanent magnet Motor)型ブラシレスモータに応用してもよい。
【0087】
例えば、10極のコンシクエントポール型のロータを有したIPM(Interior Permanent magnet Motor)型ブラシレスモータにおいて、図12に示すように、第1〜第5疑似
磁極FP1〜FP5の間に形成された第1〜第5磁石磁極MP1〜MP5にそれぞれ第1〜第5貫通穴H1〜H5を軸線方向に貫通形成する。
【0088】
第1〜第5貫通穴H1〜H5は、断面長方形をなし、第1〜第5永久磁石MG1〜MG5を貫挿するのに十分な大きさに形成されている。そして、第1〜第5貫通穴H1〜H5にそれぞれの第1〜第5永久磁石MG1〜MG5が貫挿され片寄せ固定される。
【0089】
このとき、第1実施形態と同様に、振り分け片寄せ固定が第1〜第5貫通穴H1〜H5内で行われる。
つまり、第1永久磁石MG1、第3永久磁石MG3及び第5永久磁石MG5を、それぞれ対応する第1疑似磁極FP1、第3疑似磁極FP3、第5疑似磁極FP5側に位置する第1、第3、第5貫通穴H1,H3,H5の側面(正回転方向の側面)を基準に片寄せして同貫通穴H1,H3,H5に貼付け固着する。
【0090】
また、第2永久磁石MG2及び第4永久磁石MG4を、それぞれ対応する第1疑似磁極FP1、第3疑似磁極FP3側に位置する第2、第4貫通穴H2,H4の側面(逆回転方向の側面)に貼付け固着する。
【0091】
従って、IPM(Interior Permanent magnet Motor)型のブラシレスモータにおいて
も上記実施形態と同様な効果を奏する。
・上記各実施形態並びに上記各別例では、ロータ2を所謂コンシクエントポール型のロータとして構成したが、極性の異なる永久磁石をロータ2の周方向において交互に配置した所謂フルマグネット型のロータに適用してもよい。
【0092】
以下にフルマグネット型のロータに関する一例を挙げる。なお、ステータに関しては概ね上記各実施形態並びに上記各別例とほぼ同じであるため、その説明及び図の全部を割愛する。また、ロータに関しても上記各実施形態並びに上記各別例と同一部材に関しては同一の符号を付して説明の一部又は全部を割愛する。
【0093】
(第1例)
図13に示すように、ロータ2は、フルマグネット型構造のロータである。即ち、ロータ2は、ロータコア21を有し、同ロータコア21の中心部に回転軸3を貫挿固着する貫挿穴22が軸線方向に貫通形成されている。ロータコア21は、円柱状をなし、周方向に10個の平面部(以下、図13において時計回り方向(正回転方向)の順に第1〜第10平面部CH1a〜CH10a)が等角度の間隔に形成されている。
【0094】
また、第1平面部CH1a、第3平面部CH3a、第5平面部CH5a、第7平面部CH7a及び第9平面部CH9aにはS極永久磁石31a〜31eが貼付け固着される。S極永久磁石31a〜31eは、ロータ2の径方向外側における磁極(磁石磁極)がS極、径方向内側の各平面部CH1a,CH3a,CH5a,CH7a,CH9a側がN極となるように貼付け固着される。
【0095】
また、第2平面部CH2a、第4平面部CH4a、第6平面部CH6a、第8平面部CH8a及び第10平面部CH10aにはN極永久磁石32a〜32eが貼付け固着される。N極永久磁石32a〜32eは、ロータ2の径方向外側における磁極(異磁極)がN極、径方向内側の各平面部CH2a,CH4a,CH6a,CH8a,CH10a側がS極となるように貼付け固着される。なお、第2平面部CH2a、第4平面部CH4a、第6平面部CH6a、第8平面部CH8a及び第10平面部CH10aは、N極永久磁石32a〜32eとロータ2における周方向幅が同一幅となるように形成される。
【0096】
図13に示すように第1平面部CH1a、第3平面部CH3a、第5平面部CH5a、第7平面部CH7a及び第9平面部CH9aの周方向両端部には、それぞれ位置決め部材33が軸線方向に沿って固着されている。各位置決め部材33は、第1平面部CH1a、第3平面部CH3a、第5平面部CH5a、第7平面部CH7a及び第9平面部CH9a上における各位置決め部材33間の幅が同一幅となるように固着される。
【0097】
ここで、各平面部CH1〜CH10に対応する各磁石31a〜31e,32a〜32eの貼付け固着方法を、図13及び図14に従って説明する。
まず、第2平面部CH2a、第4平面部CH4a、第6平面部CH6a、第8平面部CH8a及び第10平面部CH10aに、N極永久磁石32a〜32eが固着される。
【0098】
次に、第1平面部CH1aに固着されるS極永久磁石31aは、図14において第1平面部CH1aの右側端部に固着した位置決め部材33に当接しながら第1平面部CH1aに貼付け固着される。これによって、S極永久磁石31aは、第1平面部CH1aの右側の位置決め部材33を基準、即ち、図13において第1平面部CH1aの時計回り方向(正回転方向)側の位置決め部材33を基準に固着される。
【0099】
次に、第3平面部CH3aに固着されるS極永久磁石31bは、図14において第3平面部CH3aの左側端部に固着した位置決め部材33に当接しながら第3平面部CH3aに貼付け固着される。これによって、S極永久磁石31bは、第3平面部CH3aの左側の位置決め部材33を基準、即ち、図13において第3平面部CH3aの反時計回り方向(逆回転方向)側の位置決め部材33を基準に固着される。
【0100】
次に、第5平面部CH5aに固着されるS極永久磁石31cは、図14において第5平面部CH5aの右側端部に固着した位置決め部材33に当接しながら第5平面部CH5aに貼付け固着される。これによって、S極永久磁石31cは、第5平面部CH5aの右側の位置決め部材33を基準、即ち、図13において第3平面部CH5aの時計回り方向(正回転方向)側の位置決め部材33を基準に固着される。
【0101】
次に、第7平面部CH7aに固着されるS極永久磁石31dは、図14において第7平面部CH7aの左側端部に固着した位置決め部材33に当接しながら第7平面部CH7aに貼付け固着される。これによって、S極永久磁石31dは、第7平面部CH7aの左側の位置決め部材33を基準、即ち、図13において第7平面部CH7aの反時計回り方向(逆回転方向)側の位置決め部材33を基準に固着される。
【0102】
次に、第9平面部CH9aに固着されるS極永久磁石31eは、図14において第9平面部CH9aの右側端部に固着した位置決め部材33に当接しながら第9平面部CH9aに貼付け固着される。これによって、S極永久磁石31eは、第9平面部CH9aの右側の位置決め部材33を基準、即ち、図13において第9平面部CH9aの時計回り方向(正回転方向)側の位置決め部材33を基準に固着される。
【0103】
つまり、S極永久磁石31a,31c,31eは、それぞれ第1、第3、第5平面部CH1a,CH3a,CH5aの右側の位置決め部材33を基準に片寄せして貼付け固着した。これに対して、残りのS極永久磁石31b,31dは、それぞれ第2、第4平面部CH2a,CH4aの左側の位置決め部材25を基準に片寄せして貼付け固着した。
【0104】
言い換えれば、各S極永久磁石31a〜31eについて、S極永久磁石31a、S極永久磁石31c及びS極永久磁石31eの組と、S極永久磁石31b及びS極永久磁石31dの組とで片寄せ方向を異なる方向に振り分けている。
【0105】
上記構成によって、各S極永久磁石31a〜31eの片寄せ固定が、正回転方向又は逆回転方向のいずれか一方ではなく、正回転方向と逆回転方向の両方向に振り分けられる。
つまり、各S極永久磁石31a〜31eの片寄せ固定が、正回転方向又は逆回転方向のいずれか一方だけの場合、N極永久磁石32a〜32e(異磁極)での磁気バランスが悪くなり、コギングトルクが悪化する。これに対して、本構成では正回転方向と逆回転方向の両方向に振り分けたことから、正回転方向に片寄せしたS永久極磁石の数と逆回転方向に片寄せしたS極永久磁石の数との差が1つである。そのため、各S極永久磁石31a〜31eの貼付固定の際の偏りが打ち消される永久磁石が多く、N極永久磁石(異磁極)での磁気バランスのアンバランスが低減され、第2磁極としてのN極永久磁石と第1磁極としてのS極永久磁石間のコギングトルクの相殺作用も向上し、その結果、ロータのコギングトルクが低減される。
【0106】
なお、上記別例では異なる極数がそれぞれ5個で計10極のロータとして説明したが、例えば、磁極数が4P+2(Pは整数)極であって、一方の磁極を形成する永久磁石の数は(2P+1)個からなり、永久磁石が(P+1)個の組とP個の組に振り分けられるフルマグネット型のロータであるならばどんなロータであってもよい。また、磁極数が4P(Pは整数)極であって、一方の磁極を形成する永久磁石の数は2P個からなり、永久磁石がP個となる2つの組に区分し、その2つの組を振り分けるようにしたフルマグネット型のロータであるならばどんなロータであってもよい。
【0107】
(第2例)
上記第1例では位置決め部材33を使ってS極永久磁石31a〜31eの振り分け片寄せ固定を行った。これを、図15に示すように、治具Jaを使って、各S永久磁石31a〜31eを振り分け片寄せ固定してもよい。即ち、各S極永久磁石31a〜31eについて、それぞれ片寄せする側の第1平面部CH1a、第3平面部CH3a、第5平面部CH5a、第7平面部CH7a及び第9平面部CH9aの端部に治具Jaをそれぞれ配置する。そして、その配置された治具Jaに対して各S極永久磁石31a〜31eを、片寄せする側からに治具Jaに当接して位置決め固定する。この場合、位置決め部材33が不要となり部品数を削減できる。
【0108】
(第3例)
上記第1及び第2例では、SPM(Surface Permanent Magnet Motor)型ブラシレスモータに具体化したが、IPM(Interior Permanent magnet Motor)型ブラシレスモー
タに応用してもよい。
【0109】
例えば、10極のフルマグネット型のロータにおいて、図16に示すように、ロータコア21の周方向等角度間隔に第1〜第10貫通穴H1a〜H10aを軸線方向に貫通形成する。
【0110】
また、第2貫通穴H2a、第4貫通穴H4a、第6貫通穴H6a、第8貫通穴H8a、第10貫通穴H10aには、それぞれN極磁石32a〜32eが貫挿されて各貫通穴H2a,H4a,H6a,H8a,H10aの周方向中央位置に位置決め固定される。そして、第1貫通穴H1a、第3貫通穴H3a、第5貫通穴H5a、第7貫通穴H7a、第9貫通穴H9aには、それぞれS極磁石31a〜31eが貫挿されて片寄せ固定される。第1〜第10貫通穴H1〜H10は、断面長方形をなし、S極磁石31a〜31e及びN極磁石32a〜32eを貫挿するのに十分な大きさに形成されている。このとき、上記第1例と同様に、振り分け片寄せ固定が第1貫通穴H1a、第3貫通穴H3a、第5貫通穴H5a、第7貫通穴H7a、第9貫通穴H9a内で行われる。
【0111】
つまり、S極永久磁石31a、S極永久磁石31c及びS極永久磁石31eを、それぞれ対応するN極永久磁石32a、N極永久磁石32c及びN極永久磁石32e側に位置する第1、第3、第5貫通穴H1a,H3a,H5aの側面(正回転方向の側面)を基準に片寄せして同貫通穴H1a,H3a,H5aに貼付け固着する。
【0112】
またS極永久磁石31b及びS極永久磁石31dを、それぞれ対応するN極永久磁石32b及びN極永久磁石32d側に位置する第2、第4貫通穴H2a,H4aの側面(逆回転方向の側面)に貼付け固着する。
【0113】
従って、IPM(Interior Permanent magnet Motor)型のブラシレスモータにおいて
も上記第1例と同様な効果を奏する。
・また、上記各実施形態並びに各別例において特に言及していないが、例えばロータコア21の貫挿穴22の周囲の中心側円筒部23aの径方向外側面から径方向外側に延びて中心側円筒部23aの外側の外側筒部23bを繋ぐスポーク部23cを基準として片寄せ固定する構成を採用してもよい。即ち、スポーク部23cの幅方向の中心を通る中心線を基準に一方側に片寄せ固定する磁石と他方側に片寄せ固定する磁石とに振り分けて固定する。このような構成とすることで、位置決め部材33を省略することが可能となる。
【符号の説明】
【0114】
1…ステータ、2…ロータ、3…回転軸、11…ステータコア、12…円筒部、13…ティース、21…ロータコア、21a…ロータコア片、22…貫挿穴、25…位置決め部材(係止部)、31a〜31e…N極磁石、32a〜32e…異極磁石としてのS極磁石、33…位置決め部材(係止部)、M…ブラシレスモータ(モータ)、D1〜D4…間隔、J,Ja…治具、H1〜H5…第1〜第5貫通穴、CH1〜CH5…第1〜第5凹部、CH1a〜CH10a…第1〜第10平面部、FP1〜FP5…第1〜第5疑似磁極、MG1〜MG5…第1〜第5永久磁石、MP1〜MP5…第1〜第5磁石磁極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータを構成する略円環状のロータコアに軸線方向に長い複数の永久磁石を周方向に予め定められた間隔で配置し、前記永久磁石にて形成される磁石磁極と、前記永久磁石間に形成される疑似磁極又は前記永久磁石と異なる極性の異極磁石にて形成される異磁極とを、周方向に交互に配置したモータであって、
前記ロータコアに、前記永久磁石を配置するための同永久磁石よりも大きい設置部を形成し、
前記複数の永久磁石を2つの組に区分し、一方の組の複数の永久磁石は前記設置部に対して正回転方向から前記疑似磁極又は前記異磁極側に片寄せ固定し、他方の組の複数の永久磁石は前記設置部に対して逆回転方向から疑似磁極又は前記異磁極側に片寄せ固定したことを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のモータにおいて、
前記設置部には、周方向に前記永久磁石を係止する係止部を設け、
前記一方の組の複数の永久磁石は前記係止部に対して正回転方向から当接して片寄せ固定し、前記他方の組の複数の永久磁石は前記係止部に対して逆回転方向から当接して片寄せ固定したことを特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項2に記載のモータにおいて、
前記ロータの極数は、4P(Pは整数)であって、前記永久磁石の数は2P個であり、
前記2P個の永久磁石を、それぞれ永久磁石がP個となる2つ組に区分し、一方の組の永久磁石を前記係止部に対して正回転方向から前記疑似磁極又は異磁極側に片寄せ固定し、他方の組の永久磁石を前記係止部に対して逆回転方向から前記疑似磁極又は異磁極側に片寄せ固定したことを特徴とするモータ。
【請求項4】
請求項2に記載のモータにおいて、
前記ロータの極数は、4P+2(Pは整数)であって、前記永久磁石の数は(2P+1)個であり、
前記(2P+1)個の永久磁石を、永久磁石がP個となる組と永久磁石が(P+1)個となる組とに区分し、一方の組の永久磁石を前記係止部に対して正回転方向から前記疑似磁極又は異磁極側に片寄せ固定し、他方の組の永久磁石を前記係止部に対して逆回転方向から前記疑似磁極又は異磁極側に片寄せ固定したことを特徴とするモータ。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1つに記載のモータにおいて、
前記係止部は、前記各設置部の周方向の両端部にそれぞれ設けたことを特徴とするモータ。
【請求項6】
請求項2〜4のいずれか1つに記載のモータにおいて、
前記係止部は、前記永久磁石が片寄せされる側の前記設置部の周方向の端部にそれぞれ設けたことを特徴とするモータ。
【請求項7】
円筒状のロータコアに軸線方向に長い複数の永久磁石を周方向に予め定められた間隔で配置し、前記永久磁石にて形成される磁石磁極と、前記永久磁石間に形成される疑似磁極又は前記永久磁石と異なる極性の異極磁石にて形成される異磁極とを、周方向に交互に配置したロータの製造方法であって、
前記ロータコアに、前記永久磁石を配置するための同永久磁石よりも大きい設置部を形成し、
前記複数の永久磁石を2つの組に区分し、
一方の組の複数の永久磁石は、前記設置部の正回転方向側の端部と前記疑似磁極又は前記異磁極に介在させた冶具に向けて片寄せして前記設置部に固定し、
他方の組の複数の永久磁石は、前記設置部の逆回転方向側の端部と前記疑似磁極又は前記異磁極との間に介在させた冶具に向けて片寄せして前記設置部に固定したことを特徴とするロータの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−66370(P2013−66370A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−132079(P2012−132079)
【出願日】平成24年6月11日(2012.6.11)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】