説明

モータ式EGRバルブ

【課題】モータ式EGRバルブにつき低開度域を特定して弁体の開閉分解能を高めること。
【解決手段】EGRバルブ1は、弁座4と、弁座4に当接可能な弁体5と、弁体5から延びる弁軸6と、ロータ23を含むモータ7と、ロータ23と弁軸6との間に設けられ、雄ねじ24aと雄ねじ24aに螺合される雌ねじ28aとを含むねじ機構8とを備える。モータ7のロータ23を回転させて雄ねじ24aと雌ねじ28aとの螺合関係により弁軸6を軸方向へ移動させることで、弁体5を移動させて弁体5の弁座4に対する開度が変えられる。雄ねじ24aのねじ山と雌ねじ28aのねじ山との間を、弁体5の低開度域にて離間させると共に、弁体5の低開度域における弁軸6の軸方向への移動変化率を、弁体5の中開度域及び高開度域での弁軸6の軸方向への移動変化率よりも小さくなるように、ロータ本体28の下端面とスプリング受9の上面を形状的に工夫する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンの排気ガス再循環装置(EGR装置)に使用され、モータにより駆動されるモータ式EGRバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンにおいて、排気ガス再循環装置(EGR装置)が使用されている。このEGR装置は、エンジンから排出される排気ガスの一部をEGRガスとして吸気系へ再循環させ、外気と混合させて燃焼室へ吸入させることにより、燃焼室での可燃混合気の燃焼温度を下げ、排気中の窒素酸化物(NOx)の生成量を少なくすることができる。
【0003】
ここで、EGR装置におけるEGRガスの流量を調節するために、例えば、モータ式EGRバルブが使用されている。下記の特許文献1には、モータ式EGRバルブの一例が記載されている。このEGRバルブは、弁座に当接可能に設けられた弁体と、その弁体から延びる弁軸と、ロータを含むモータと、ロータ及び弁軸の一方に設けられた雌ねじとその他方に設けられて雌ねじに螺合される雄ねじとを備え、ロータを回転させて雄ねじと雌ねじとの関係により弁軸をその軸線方向へ移動させることにより、弁体を弁座に対して開閉させるようになっている。このEGR弁は、弁軸を弁体が弁座へ向けて閉じる方向へ付勢する弁バネと、弁体が弁座に対して全閉となるときに雄ねじのねじ山と雌ねじのねじ山との間に設けられる遊びとを更に備える。これにより、弁体の全閉時に弁座に対する弁体の密着性を確保するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−34228号公報
【特許文献2】特開2008−202516号公報
【特許文献3】特開平10−160034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載のモータ式EGRバルブでは、雄ねじと雌ねじとの関係により弁軸をその軸線方向へ移動させるだけの構成であることから、弁軸を一定の変化率でしか移動させることができず、弁体を弁座に対して一定の変化率でしか開閉させることができなかった。このため、ある特定の開度域において、弁体の開閉分解能を高めて、EGRガス流量をより精密に調節することができなかった。例えば、EGR装置を備えたエンジンでは、燃費向上のために、EGRガスの低流量域でより精密に流量を調節することが好ましい。しかし、特許文献1に記載のモータ式EGRバルブでは、低開度域を特定して弁体の開閉分解能を高めることができなかった。
【0006】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、低開度域を特定して弁体の開閉分解能を高めることを可能としたモータ式EGRバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、弁座と、弁座に当接可能に設けられた弁体と、弁体から延びる弁軸と、ロータを含むモータと、ロータと弁軸との間に設けられ、雄ねじと雄ねじに螺合される雌ねじとを含むねじ機構とを備え、モータのロータを回転させて雄ねじと雌ねじとの螺合関係により弁軸をその軸方向へ移動させることにより、弁体を移動させて弁体の弁座に対する開度を変えるモータ式EGRバルブにおいて、雄ねじのねじ山と雌ねじのねじ山との少なくとも一部の間を、弁体の低開度域にて離間させるねじ山離間機構と、弁体の低開度域における弁軸の軸方向への移動変化率を、弁体の中開度域及び高開度域における弁軸の軸方向への移動変化率よりも小さくするための移動変化率可変機構とを備えたことを趣旨とする。
【0008】
上記発明の構成によれば、モータのロータを回転させてねじ機構の雄ねじと雌ねじとの螺合関係により弁軸をその軸方向へ移動させることにより、弁体が移動して弁体の弁座に対する開度が変えられる。ここで、弁体の低開度域では、ねじ山離間機構により、雄ねじのねじ山と雌ねじのねじ山との少なくとも一部の間が離間させられる。このとき、弁軸の軸方向への移動変化率が、移動変化率可変機構により、弁体の中開度域及び高開度域における弁軸の軸方向への移動変化率よりも小さくなる。従って、弁体の低開度域では、それ以外の中開度域及び高開度域に比べて、弁体が弁座に対して小さい変化率で開閉する。
【0009】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、ねじ山離間機構は、弁軸の軸方向に当接して作用する構成を有することを趣旨とする。
【0010】
上記発明の構成によれば、請求項1記載の発明の作用に加え、ねじ山離間機構が、弁軸の軸方向に当接して作用する構成を有するので、雄ねじのねじ山と雌ねじのねじ山との離間が安定的に保持される。
【0011】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、ねじ山離間機構は、弁軸とロータとの間に設けられることを趣旨とする。
【0012】
上記発明の構成によれば、請求項1又は2記載の発明の作用に加え、ねじ山離間機構が、弁軸とロータとの間に設けられるので、弁軸やロータの周囲に設けられる場合と比べ、スペースを必要としない。
【0013】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の発明において、ねじ山離間機構は、弁体の低開度域に対応して雌ねじの端部に設けられたねじ山であり、雌ねじの端部に設けられたねじ山は、他の部分のねじ山と比べて送りねじリードが小さいことを趣旨とする。
【0014】
上記発明の構成によれば、請求項1乃至3の何れかの発明の作用と異なり、ねじ機構の雄ねじと雌ねじとの螺合関係により、雄ねじの端部が雌ねじの端部に達することにより、送りねじのリードが小さいねじ山に雄ねじの端部に設けられたねじ山が当たることになる。これにより、雌ねじの他の部分のねじ山と、雄ねじの他の部分のねじ山との間が離間させられる。
【0015】
上記目的を達成するために、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の発明において、移動変化率可変機構は、ロータの回転に伴い雄ねじのねじ山と雌ねじのねじ山との少なくとも一部の間の離間距離を連続的に変化させる構成を有することを趣旨とする。
【0016】
上記発明の構成によれば、請求項1乃至4の何れかに記載の発明の作用に加え、移動変化率可変機構により、ロータの回転に伴い雄ねじのねじ山と雌ねじのねじ山との少なくとも一部の間の離間距離を連続的に変化させるので、変化の特性の設定が可能である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、弁体の低開度域を特定して弁体の開閉分解能を高めることができる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、弁体の低開度域における開度特性を安定させることができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、ねじ山離間機構について省スペース化を図ることができ、モータ式EGRバルブのコンパクト化に寄与できる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の何れかに記載の発明の効果に加え、ロータに設けられる雌ねじの設定のみにより、弁体の低開度域を特定して弁体の開閉分解能を高めることができる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至4の何れかに記載の発明の効果に加え、ねじ山の間の離間距離を連続的に変化させる構成の特性を任意に設定することにより、弁体の低開度域における開度分解能の特性を任意に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態に係り、モータ式EGRバルブを示す正断面図。
【図2】同実施形態に係り、ロータ本体の下端部を示す斜視図。
【図3】同実施形態に係り、スプリング受の概略を示す斜視図。
【図4】同実施形態に係り、スプリング受の概略を示す平面図。
【図5】同実施形態に係り、スプリング受の概略を示す正面図。
【図6】同実施形態に係り、(a)〜(d)は、展開したロータ本体の下端部と、スプリング受のストッパとの関係を示す概念図。
【図7】同実施形態に係り、図6(a)〜(d)の状態に対応したロータ本体の雌ねじのねじ山と、出力軸の雄ねじのねじ山との関係の一部を示す拡大断面図。
【図8】同実施形態の比較例に係り、(a)〜(d)は、展開したロータ本体の下端部と、スプリング受のストッパとの関係を示す概念図。
【図9】同実施形態の比較例に係り、図8(a)〜(d)の状態に対応したロータ本体の雌ねじのねじ山と、出力軸の雄ねじのねじ山との関係の一部を示す拡大断面図。
【図10】同実施形態に係り、ステップモータのステップ数(ロータ回転角)に対するバルブ開度(ストローク量)との関係を、本実施形態と比較例とを対比して示すグラフ。
【図11】第2実施形態に係り、EGRバルブを示す正断面図。
【図12】同実施形態に係り、スプリング受の概略を示す正面図。
【図13】同実施形態に係り、スプリング受の概略を示す底面図。
【図14】同実施形態に係り、(a)〜(d)は、展開したロータ本体の上端部と、スプリング受のストッパとの関係を示す概念図。
【図15】同実施形態に係り、図14(a)〜(d)の状態に対応したロータ本体の雌ねじのねじ山と、出力軸の雄ねじのねじ山との関係の一部を示す拡大断面図。
【図16】同実施形態の比較例に係り、展開したロータ本体の上端部と、スプリング受のストッパとの関係を示す概念図。
【図17】同実施形態の比較例に係り、図16(a)〜(d)の状態に対応したロータ本体の雌ねじのねじ山と、出力軸の雄ねじのねじ山との関係の一部を示す拡大断面図。
【図18】第3実施形態に係り、EGRバルブを示す正断面図。
【図19】同実施形態に係り、ロータ本体の下端部を示す斜視図。
【図20】同実施形態に係り、スプリング受の概略を示す斜視図。
【図21】同実施形態に係り、スプリング受の概略を示す平面図。
【図22】同実施形態に係り、スプリング受の概略を示す正面図。
【図23】同実施形態に係り、(a)〜(d)は、展開したロータ本体の下端部と、スプリング受の上面との関係を示す概念図。
【図24】同実施形態に係り、図23(a)〜(d)の状態に対応したロータ本体の雌ねじのねじ山と、出力軸の雄ねじのねじ山との関係の一部を示す拡大断面図。
【図25】同実施形態の比較例に係り、展開したロータ本体の下端部と、スプリング受のストッパとの関係の一部を示す概念図。
【図26】同実施形態の比較例に係り、図25(a)〜(d)の状態に対応したロータ本体の雌ねじのねじ山と、出力軸の雄ねじのねじ山との関係の一部を示す拡大断面図。
【図27】第4実施形態に係り、EGRバルブを示す正断面図。
【図28】同実施形態に係り、マグネットロータを示す断面図。
【図29】同実施形態に係り、(a)〜(d)は、ロータ本体の雌ねじと、出力軸の雄ねじとの関係を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1実施形態>
以下、本発明のモータ式EGRバルブを具体化した第1実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
図1に、この実施形態におけるモータ式EGRバルブ(以下、単に「EGRバルブ」と言う。)1を正断面図により示す。このEGRバルブ1は、エンジンから排出される排気ガスの一部(EGRガス)を吸気系へ戻すEGR通路に設けられ、EGRガス流量を調節するために使用される。EGRバルブ1は、ハウジング2と、ハウジング2に形成された流路3と、流路3の途中に設けられた弁座4と、弁座4に当接可能に設けられた弁体5と、弁体5と一体的に設けられ、弁体5から延びる弁軸6と、弁体5と共に弁軸6をその軸方向へ移動(ストローク運動)させるためのステップモータ7とを備える。
【0025】
ハウジング2に形成された流路3の両端は、EGRガスが導入される入口3aと、EGRガスが導出される出口3bとなっている。弁座4は、流路3の途中に設けられ、流路3に連通する弁孔4aを有する。
【0026】
弁軸6は、ステップモータ7と弁体5との間に設けられ、ハウジング2を図面上下方向(垂直方向)方向に貫通して配置される。弁体5は、弁軸6の下端に固定され、円錐形状をなし、その円錐面が弁座4に対して当接又は離間するようになっている。弁軸6の上端には、スプリング受9が一体に設けられる。弁軸6は、ハウジング2に対しスラスト軸受10,11を介して図面上下方向へ移動可能に設けられる。この実施形態のEGRバルブ1は、弁軸6が下方へ移動するに連れて弁体5の弁座4に対する開度が全開へ向けて大きくなり、弁軸6が上方へ移動するに連れて弁体5の弁座4に対する開度が全閉へ向けて小さくなる外開式に構成される。
【0027】
ステップモータ7は、コイル21を含むステータ22と、ステータ22の内側に設けられたマグネットロータ23と、マグネットロー23の内側に設けられた出力軸24とを含む。これらの部材21〜24等が樹脂製のケーシング25によりモールドされて覆われる。ケーシング25には、横へ突出したコネクタ26が一体に形成される。コネクタ26には、コイル21から延びる端子27が設けられる。
【0028】
出力軸24は、外周に雄ねじ24aを有する。出力軸24の下端部は、弁軸6のスプリング受9に連結される。マグネットロータ23は、ロータ本体28と、ロータ本体28の外周に一体的に設けられた円環状のプラスチックマグネット29とを含む。ロータ本体28の上端部外周には、ケーシング25との間にラジアル軸受30が設けられる。プラスチックマグネット29の下端部内周には、スラスト軸受10との間にラジアル軸受31が設けられる。これら上下のラジアル軸受30,31によりマグネットロータ23がステータ22の内側にて回転可能に支持される。ロータ本体28の中心には、出力軸24の雄ねじ24aに螺合される雌ねじ28aが形成される。これら雄ねじ24a及び雌ねじ28aにより本発明のねじ機構8が構成される。マグネットロータ23と、下側のラジアル軸受31との間には、圧縮スプリング32が設けられる。弁軸6のスプリング受9と、下側のラジアル軸受31との間には、弁軸6をマグネットロータ23の方向へ付勢する圧縮スプリング33が設けられる。
【0029】
上記構成によれば、ステップモータ7のマグネットロータ23を回転させて、出力軸24の雄ねじ24aとロータ本体28の雌ねじ28aとの螺合関係により、弁軸6をその軸方向へ、すなわち図1における上下方向へストローク運動させる。これにより、弁体5を移動させて弁体5の弁座4に対する開度を変えるようになっている。
【0030】
図1に示すように、弁体5が弁座4に当接した全閉状態では、スプリング受9がロータ本体28の下端部に係合して回り止めされている。これにより、全閉時を基準として、弁軸6及び出力軸24の回転位置とロータ本体28の回転位置との相互関係を常に一定状態に保つようになっている。
【0031】
この実施形態のEGRバルブ1は、弁体4の低開度域と中開度域及び高開度域との間で開度の分解能を可変とする構成を備える。図2に、ロータ本体28の下端部を斜視図により示す。図2に示すように、ロータ本体28の下端は、雌ねじ28aを含む中心孔28bを中心に底面視で円環状をなす。ロータ本体28の円環状をなす下端には、その周方向に、下方へ突出する凸部41と、なだらかな傾斜面42と、平坦面43とが順次並んで形成される。凸部41の周方向両端は、第1の係止面41aと第2の係止面41bとなっている。第1の係止面41aの高さh1は、第2の係止面41bの高さh2よりも大きくなっている。傾斜面42は、第1の係止面41aから平坦面43へかけて徐々に高くなるように形成される。平坦面43は、傾斜面42の一端から、凸部41の第2の係止面41bにかけて同じ高さで形成される。
【0032】
図3に、スプリング受9の概略を斜視図により示す。図3に示すように、スプリング受9の上面には、半径方向に延びる一つの舌片状のストッパ51が上方へ突出して形成される。図4に、スプリング受9の概略を平面図により示す。図5に、スプリング受9の概略を正面図により示す。この実施形態で、スプリング受9は、回転しないことから、ストッパ51は、定位置に配置される。従って、マグネットロータ23の回転によりロータ本体28が回転することにより、ロータ本体28の下端に形成された傾斜面42及び凸部41(図4に2点鎖線で示す。)が、矢印で示すように、ストッパ51へ向けて移動する。この移動に伴い、ロータ本体28の傾斜面42がストッパ51の上端に当接しながら移動し、やがて凸部41の第1の係止面41aが、ストッパ51の側面に当接して係止される。
【0033】
図6に、展開したロータ本体28の下端部と、スプリング受9のストッパ51との関係を概念図により示す。図6(a)は、ロータ本体28の凸部41の第1の係止面41aがストッパ51の側面に突き当たって係止される「ストッパ突き当たり」の状態を示す。図6(b)は、ロータ本体28の傾斜面42がストッパ51の上端に当接しながら相対的に移動する弁体5の「低開度時」を示す。図6(c)は、ロータ本体28の平坦面43がストッパ51の上端と対向しながら離れ、相対的に移動する弁体5の「中開度時」を示す。図6(d)は、ロータ本体28の平坦面43がストッパ51の上端と対向しながら更に離れ、相対的に移動する弁体5の「高開度時」を示す。
【0034】
図7に、図6(a)〜(d)の状態に対応したロータ本体28の雌ねじ28aのねじ山28cと、出力軸24の雄ねじ24aのねじ山24bとの関係の一部を拡大断面図により示す。図7(c),(d)は、図6(c),(d)、すなわち「中開度時」と「高開度時」に対応する。図6(c),(d)及び図7(c),(d)に示すように、弁体5の「中開度時」及び「高開度時」には、ストッパ51がロータ本体28から離れ、その代わりに、雄ねじ24aのねじ山24bと、雌ねじ28aのねじ山28cとが当接する。すなわち、弁体5の「中開度時」及び「高開度時」には、ロータ本体28の回転がねじ山24b,28cを介して雌ねじ28aから雄ねじ24aへ伝えられ、弁軸6を介して弁体5へ伝達され、弁体5の開度が変えられる。すなわち、雄ねじ24aと雌ねじ28aの螺合関係、つまり、ねじ機構8の送りねじ機能により、弁軸6及び弁体5が軸方向へストローク運動することになる。
【0035】
また、図7(b)は、図6(b)、すなわち「低開度時」に対応する。図6(b)及び図7(b)に示すように、弁体5の「低開度時」には、雄ねじ24aのねじ山24bと雌ねじ28aのねじ山28cとが離間しており、その代わりに、スプリング受9のストッパ51の上端がロータ本体28の傾斜面42に当接する。すなわち、弁体5の「低開度時」には、ロータ本体28の回転がその傾斜面42によりストッパ51及びスプリング受9へ伝えられ、弁軸6を介して弁体5へ伝達され、弁体5の開度が変えられる。このとき、傾斜面42のストッパ51と当たる位置が徐々に変わることにより、ストッパ51及びスプリング受9を介して弁軸6が軸方向へ移動し、弁体5の開度が変わる。すなわち、ストッパ9と傾斜面42との当接関係による送り機能により、弁軸6及び弁体5が軸方向へストローク運動することになる。
【0036】
また、図7(a)は、図6(a)、すなわち「ストッパ突き当たり」に対応する。図6(a)及び図7(a)に示すように、「ストッパ突き当たり」のときには、雄ねじ24aのねじ山24bと雌ねじ28aのねじ山28cとが離間しており、その代わりに、スプリング受9のストッパ51の側面がロータ本体28の凸部41の第1の係止面41aに当接する。すなわち、「ストッパ突き当たり」のときには、ロータ本体28の凸部41がストッパ51に突き当たり、ロータ本体28の回転が止められ、弁軸6を介して弁体5が全閉状態となる。
【0037】
図8及び図9に、従来の構成を比較例として示す。図8に、展開したロータ本体81の下端部と、スプリング受82のストッパ83との関係を概念図により示す。図8(a)は、ロータ本体81の凸部84がストッパ83に突き当たって係止される「ストッパ突き当たり」の状態を示す。図8(b)は、ロータ本体81の平坦面85がストッパ83の上端と対向しながら離れ、相対的に移動する弁体5の「低開度時」を示す。図8(c)は、ロータ本体81の平坦面85がストッパ83と対向しながら更に離れ、相対的に移動する弁体5の「中開度時」を示す。図8(d)は、ロータ本体81の平坦面85がストッパ83と対向しながら更に離れ、相対的に移動する弁体5の「高開度時」を示す。
【0038】
図9に、図8(a)〜(d)の状態に対応したロータ本体81の雌ねじ81aのねじ山81bと、出力軸86の雄ねじ86aのねじ山86bとの関係の一部を拡大断面図により示す。図9(a)〜(d)は、図8(a)〜(d)、すなわち「ストッパ突き当たり」、「低開度時」、「中開度時」及び「高開度時」に対応する。図8(b)〜(d)及び図9(b)〜(d)に示すように、弁体の「低開度時」、「中開度時」及び「高開度時」には、ストッパ83がロータ本体81から離れ、その代わりに、雄ねじ86aのねじ山86bと、雌ねじ81aのねじ山81bとが当接する。すなわち、弁体の「低開度時」〜「高開度時」の間で、ロータ本体81の回転がねじ山81b,86bを介して雌ねじ81aから雄ねじ86aへ伝えられ、弁軸を介して弁体へ伝達され、弁体の開度が変えられる。すなわち、雄ねじ86aと雌ねじ81aの螺合関係、つまり、ねじ機構の送りねじ機能により、弁軸及び弁体が軸方向へストローク運動することになる。
【0039】
図10に、ステップモータ7のステップ数(ロータ回転角)に対するバルブ開度(ストローク量)との関係を、本実施形態と比較例とを対比してグラフにより示す。図10に示すように、比較例では、(a)「ストッパ突き当たり」から(d)「高開度時(高開度域)」までの間で、バルブ開度が一定の変化率で変化することが分かる。これに対し、図10に示すように、本実施形態では、(b)「低開度時(低開度域)」におけるバルブ開度の変化率が、(c)「中開度時(中開度域)」及び(d)「高開度時(高開度域)」におけるバルブ開度の変化率よりも小さいことが分かる。このバルブ開度の変化率の違いは、弁軸6及び弁体5の軸方向への移動変化率の違いによる。すなわち、本実施形態では、特定の開度、すなわち「低開度時(低開度域)」におけるバルブ開度の分解能が、その他の「中開度時(中開度域)」及び「高開度時(高開度域)」に比べて高くなるように設定される。
【0040】
上記構成において、スプリング受9のストッパ51と、ロータ本体28の下端の傾斜面42とにより、出力軸24の雄ねじ24aのねじ山24bと、ロータ本体28の雌ねじ28aのねじ山28cとの間を、弁体5の「低開度域」において離間させるねじ山離間機構が構成される。また、上記構成において、ねじ山離間機構、すなわちスプリング受9のストッパ51及びロータ本体28の傾斜面42は、弁軸6とマグネットロータ23(ロータ本体28)との間に設けられ、弁軸6の軸方向に当接して作用するように構成される。更に、上記の構成において、ロータ本体28の傾斜面42により、弁体5の「低開度域」における弁軸6の軸方向への移動変化率を、弁体6の「中開度域」及び「高開度域」における弁軸6の軸方向への移動変化率よりも小さくするための移動変化率可変機構が構成される。この移動変化率可変機構、すなわちロータ本体28の傾斜面42は、マグネットロータ23の回転に伴い、雄ねじ24aのねじ山24bと雌ねじ28aのねじ山28cとの間の離間距離を連続的に変化させるように構成される。
【0041】
以上説明したこの実施形態のEGRバルブ1によれば、ステップモータ7のマグネットロータ23を回転させてねじ機構8を構成する雄ねじ24aと雌ねじ28aとの螺合関係により弁軸6をその軸方向へ移動(ストローク運動)させることにより、弁体5が移動して弁体5の弁座4に対する開度が変えられる。ここで、弁体5の「低開度域」では、ねじ山離間機構(ストッパ51及び傾斜面42)により、雄ねじ24aのねじ山24bと雌ねじ28aのねじ山28cとの間が離間させられる。このとき、弁軸6の軸方向への移動変化率が、移動変化率可変機構(傾斜面42)により、弁体5の「中開度域」及び「高開度域」における弁軸6の軸方向への移動変化率よりも小さくなる。従って、弁体5の「低開度域」では、それ以外の中開度域」及び「高開度域」に比べて、弁体5が弁座4に対して小さい変化率で開閉することになる。このため、弁体5の「低開度域」を特定して弁体5
の開閉分解能を高めることができる。
【0042】
この実施形態では、ねじ山離間機構(ストッパ51及び傾斜面42)が、弁軸6の軸方向に当接して作用する構成を有するので、雄ねじ24aのねじ山24bと雌ねじ28aのねじ山28cとの離間が安定的に保持される。このため、弁体5の「低開度域」における開度特性を安定させることができる。
【0043】
この実施形態では、ねじ山離間機構(ストッパ51及び傾斜面42)が、弁軸6とマグネットロータ23(ロータ本体28)との間に設けられるので、弁軸6やマグネットロータ23の周囲に設けられる場合と比べ、スペースを必要としない。このため、ねじ山離間機構につき、省スペース化を図ることができ、EGRバルブ1のコンパクト化に寄与できる。
【0044】
この実施形態では、移動変化率可変機構(傾斜面42)により、マグネットロータ23(ロータ本体28)の回転に伴い、雄ねじ24aのねじ山24bと雌ねじ28aのねじ山28cとの間の離間距離を連続的に変化させるので、変化の特性の設定が可能である。この実施形態では、その変化の特性を、ロータ本体28の傾斜面42のプロフィールにより設定される。このため、傾斜面42の変化の特性、すなわちプロフィールを任意に設定することにより、弁体5の「低開度域」における開度分解能の特性を任意に設定することができる。
【0045】
<第2実施形態>
次に、本発明のモータ式EGRバルブを具体化した第2実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0046】
なお、以下の説明において、第1実施形態と同等の構成については、同一の符号を付して説明を省略し、異なった点を中心に説明する。
【0047】
図11に、この実施形態におけるEGRバルブ15を正断面図により示す。この実施形態では、主として弁体5、マグネットロータ23、スプリング受9、スラスト軸受10及び圧縮スプリング32,33の配置の点で、第1実施形態と構成が異なる。すなわち、ステップモータ7を構成するマグネットロータ23が、第1実施形態のそれに対して上下逆向きに配置される。これに対応して、一方のスラスト軸受11が、ケーシング25の上端部に配置される。このスラスト軸受10に対し、支軸35が支持され、その支軸35の下端にスプリング受9が、第1実施形態とは逆の下向きに配置される。そして、この実施形態では、マグネットロータ23を構成するロータ本体28の上端がスプリング受9の下面に当接可能となっている。
【0048】
この実施形態で、弁軸6は、ハウジング2に対しスラスト軸受11を介して図面上下方向へ移動可能に設けられる。弁軸6の上端は、ステップモータ7の出力軸24の下端に連結される。同様に、支軸35及びスプリング受9は、ケーシング25にスラスト軸受10を介して図面上下方向へ移動可能に設けられる。この実施形態のEGRバルブ15は、弁軸6が上方へ移動するに連れて弁体5の弁座4に対する開度が全開へ向けて大きくなり、弁軸6が下方へ移動するに連れて弁体5の弁座4に対する開度が全閉へ向けて小さくなる内開式に構成される。
【0049】
図12に、スプリング受9の概略を正面図により示す。図13に、スプリング受9の概略を底面図により示す。この実施形態で、スプリング受9は、回転しないことから、ストッパ51は、定位置に配置される。従って、マグネットロータ23の回転によりロータ本体28が回転することにより、ロータ本体28の下端に形成された傾斜面42及び凸部41(図13に2点鎖線で示す。)が、矢印で示すように、ストッパ51へ向けて移動する。この移動に伴い、ロータ本体28の傾斜面42がストッパ51の下端に当接しながら移動し、やがて凸部41の第1の係止面41aが、ストッパ51の側面に当接して係止される。
【0050】
図14に、展開したロータ本体28の上端部と、スプリング受9のストッパ51との関係を概念図により示す。図14(a)は、ロータ本体28の凸部41の第1の係止面41aがストッパ51の側面に突き当たって係止される「ストッパ突き当たり」の状態を示す。図14(b)は、ロータ本体28の傾斜面42がストッパ51の下端に当接しながら相対的に移動する弁体5の「低開度時」を示す。図14(c)は、ロータ本体28の平坦面43がストッパ51の下端と対向しながら離れ、相対的に移動する弁体5の「中開度時」を示す。図14(d)は、ロータ本体28の平坦面43がストッパ51の下端と対向しながら更に離れ、相対的に移動する弁体5の「高開度時」を示す。
【0051】
図15に、図14(a)〜(d)の状態に対応したロータ本体28の雌ねじ28aのねじ山28cと、出力軸24の雄ねじ24aのねじ山24bとの関係の一部を拡大断面図により示す。図15(c),(d)は、図14(c),(d)、すなわち「中開度時」と「高開度時」に対応する。図14(c),(d)及び図15(c),(d)に示すように、弁体5の「中開度時」及び「高開度時」には、ストッパ51がロータ本体28から離れ、その代わりに、雄ねじ24aのねじ山24bと、雌ねじ28aのねじ山28cが当接する。すなわち、弁体5の「中開度時」及び「高開度時」には、ロータ本体28の回転がねじ山24b,28cを介して雌ねじ28aから雄ねじ24aへ伝えられ、スプリング受9及び支軸35へ伝達される。これにより、弁軸6及び弁体5の軸方向への移動が許容され、弁体5の開度が変えられる。すなわち、雄ねじ24aと雌ねじ28aの螺合関係、つまり、ねじ機構8の送りねじ機能により、弁軸6及び弁体5が軸方向へストローク運動することになる。
【0052】
また、図15(b)は、図14(b)、すなわち「低開度時」に対応する。図14(b)及び図15(b)に示すように、弁体5の「低開度時」には、雄ねじ24aのねじ山24bと雌ねじ28aのねじ山28cとが離間しており、その代わりに、スプリング受9のストッパ51の下端がロータ本体28の傾斜面42に当接する。すなわち、弁体5の「低開度時」には、ロータ本体28の回転がその傾斜面42によりストッパ51及びスプリング受9へ伝えられ、スプリング受9を介して支軸35へ伝達される。これにより、弁軸6及び弁体5が軸方向への移動が許容され、弁体5の開度が変わる。このとき、傾斜面42においてストッパ51が当たる位置が徐々に変わることにより、ストッパ51、スプリング受9及び支軸35を介して弁軸6が軸方向への移動が許容され、弁軸6が同方向へ移動して弁体5の開度が変わる。すなわち、ストッパ51と傾斜面42との当接関係による送り機能により、弁軸6及び弁体5が軸方向へストローク運動することになる。
【0053】
また、図15(a)は、図14(a)、すなわち「ストッパ突き当たり」に対応する。図14(a)及び図15(a)に示すように、「ストッパ突き当たり」のときには、雄ねじ24aのねじ山24bと雌ねじ28aのねじ山28cとが離間しており、その代わりに、スプリング受9のストッパ51の側面がロータ本体28の凸部41の第1の係止面41aに当接する。すなわち、「ストッパ突き当たり」のときには、ロータ本体28の凸部41がストッパ51に突き当たり、ロータ本体28の回転が止められ、弁軸6を介して弁体5が全閉状態となる。
【0054】
図16及び図17に、従来の構成を比較例として示す。図16に、展開したロータ本体81の上端部と、スプリング受82のストッパ83との関係を概念図により示す。図16(a)は、ロータ本体81の凸部84がストッパ83に突き当たって係止される「ストッパ突き当たり」の状態を示す。図16(b)は、ロータ本体81の平坦面85がストッパ83と対向しながら離れ、相対的に移動する弁体5の「低開度時」を示す。図16(c)は、ロータ本体81の平坦面85がストッパ83と対向しながら更に離れ、相対的に移動する弁体5の「中開度時」を示す。図16(d)は、ロータ本体81の平坦面85がストッパ83と対向しながら更に離れ、相対的に移動する弁体5の「高開度時」を示す。
【0055】
図17に、図16(a)〜(d)の状態に対応したロータ本体81の雌ねじ81aのねじ山81bと、出力軸86の雄ねじ86aのねじ山86bとの関係の一部を拡大断面図により示す。図17(a)〜(d)は、図16(a)〜(d)、すなわち「ストッパ突き当たり」、「低開度時」、「中開度時」及び「高開度時」に対応する。図16(b)〜(d)及び図17(b)〜(d)に示すように、弁体の「低開度時」、「中開度時」及び「高開度時」には、ストッパ83がロータ本体81の平坦面85から離れ、その代わりに、雄ねじ86aのねじ山86bと、雌ねじ81aのねじ山81bとが当接する。すなわち、弁体の「低開度時」〜「高開度時」の間で、ロータ本体81の回転がねじ山81b,86bを介して雌ねじ81aから雄ねじ86aへ伝えられ、弁軸及び弁体の軸方向への移
動が許容され、弁体の開度が変えられる。すなわち、雄ねじ86aと雌ねじ81aの螺合関係、つまり、ねじ機構の送りねじ機能により、弁軸及び弁体が軸方向へストローク運動することになる。
【0056】
この実施形態において、ステップモータ7のステップ数(ロータ回転角)に対するバルブ開度(ストローク量)との関係、すなわち、EGRバルブ15の開閉特性は、図10のグラフに示すそれと同じである。
【0057】
従って、この実施形態のEGRバルブ15によれば、第1実施形態と比較して外開式と内開式の違いはあるものの、第1実施形態のEGRバルブ1と同等の作用効果を得ることができる。
【0058】
<第3実施形態>
次に、本発明のモータ式EGRバルブを具体化した第3実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0059】
図18に、この実施形態におけるEGRバルブ1を正断面図により示す。この実施形態では、第1実施形態のEGRバルブ1と基本構成が同じであり、ねじ山離間機構及び移動変化率可変機構の構成の点で第1実施形態と異なる。すなわち、ロータ本体28及びスプリング受9の構成の点で第1実施形態と異なる。
【0060】
図19に、ロータ本体28の下端部を斜視図により示す。図19に示すように、ロータ本体28の下端外周寄り位置には、下方へ突出する凸部46が形成される。図20に、スプリング受9の概略を斜視図により示す。図20に示すように、スプリング受9の上面は、雄ねじ24aを含む出力軸24を中心に平面視で円環状をなす。スプリング受9の円環状をなす上面には、その周方向に、下方へ落ち込んだ凹部56と、なだらかな傾斜面57と、平坦面58とが順次並んで形成される。凹部56の周方向一端は、垂直面をなしてストッパ59となっている。傾斜面57は、ストッパ59から平坦面58へかけて徐々に高くなるように形成される。平坦面58は、傾斜面57の一端からストッパ59にかけて同じ高さで形成される。
【0061】
図21に、スプリング受9の概略を平面図により示す。図22に、スプリング受9の概略を正面図により示す。この実施形態で、スプリング受9は、回転しないことから、ストッパ59は、定位置に配置される。従って、マグネットロータ23の回転によりロータ本体28が回転することにより、ロータ本体28の下端に形成された凸部46(図21に2点鎖線で示す。)が、矢印で示すように、スプリング受9のストッパ59へ向けて移動する。この移動に伴い、ロータ本体28の凸部46の下端がスプリング受9の傾斜面57に当接しながら移動し、やがてストッパ59に当接して係止される。
【0062】
図23に、展開したロータ本体28の下端部と、スプリング受9の上面との関係を概念図により示す。図23(a)は、ロータ本体28の凸部46がスプリング受9のストッパ59に突き当たって係止される「ストッパ突き当たり」の状態を示す。図23(b)は、ロータ本体28の凸部46がスプリング受9の傾斜面57に当接しながら相対的に移動する弁体5の「低開度時」を示す。図23(c)は、ロータ本体28の凸部46がスプリング受9の平坦面58と対向しながら離れ、相対的に移動する弁体5の「中開度時」を示す。図23(d)は、ロータ本体28の凸部46がスプリング受9の平坦面58に対向しながら更に離れ、相対的に移動する弁体5の「高開度時」を示す。
【0063】
図24に、図23(a)〜(d)の状態に対応したロータ本体28の雌ねじ28aのねじ山28cと、出力軸24の雄ねじ24aのねじ山24bとの関係の一部を拡大断面図により示す。図24(c),(d)は、図23(c),(d)、すなわち「中開度時」と「高開度時」に対応する。図23(c),(d)及び図24(c),(d)に示すように、弁体5の「中開度時」及び「高開度時」には、ロータ本体28の凸部46がスプリング受9から離れ、その代わりに、雄ねじ24aのねじ山24bと、雌ねじ28aのねじ山28cが当接する。すなわち、弁体5の「中開度時」及び「高開度時」には、ロータ本体28の回転がねじ山24b,28cを介して雌ねじ28aから雄ねじ24aへ伝えられ、スプリング受9及び弁軸6を介して弁体5へ伝達され、弁体5の開度が変えられる。すなわち、雄ねじ24aと雌ねじ28aの螺合関係、つまり、ねじ機構8の送りねじ機能により、弁軸6及び弁体5が軸方向へストローク運動することになる。
【0064】
また、図24(b)は、図23(b)、すなわち「低開度時」に対応する。図23(b)及び図24(b)に示すように、弁体5の「低開度時」には、雄ねじ24aのねじ山24bと雌ねじ28aのねじ山28cとが離間しており、その代わりに、ロータ本体28の凸部46の下端がスプリング受9の傾斜面57に当接する。すなわち、弁体5の「低開度時」には、ロータ本体28の回転がその凸部46によりスプリング受9の傾斜面57へ伝えられ、スプリング受9を介して弁軸6へ伝達され、これに伴い弁軸6が軸方向へ移動して、弁体5の開度が変えられる。このとき、凸部46が傾斜面57に当たる位置が徐々に変わることにより、傾斜面57を介してスプリング受9及び弁軸6が軸方向へ移動して弁体5の開度が変わる。すなわち、凸部46と傾斜面57との当接関係による送り機能により、弁軸6及び弁体5が軸方向へストローク運動することになる。
【0065】
また、図24(a)は、図23(a)、すなわち「ストッパ突き当たり」に対応する。図23(a)及び図24(a)に示すように、「ストッパ突き当たり」のときには、雄ねじ24aのねじ山24bと雌ねじ28aのねじ山28cとが離間しており、その代わりに、スプリング受9のストッパ59にロータ本体28の凸部46が当接する。すなわち、「ストッパ突き当たり」のときには、ロータ本体28の凸部46がストッパ59に突き当たり、ロータ本体28の回転が止められ、弁軸6を介して弁体5が全閉状態となる。
【0066】
図25及び図26に、従来の構成を比較例として示す。図26に、展開したロータ本体81の下端部と、スプリング受82のストッパ83との関係の一部を概念図により示す。図25(a)は、ロータ本体81の凸部84がストッパ83に突き当たって係止される「ストッパ突き当たり」の状態を示す。図25(b)は、ロータ本体81の凸部84がストッパ83に対向しながら離れ、相対的に移動する弁体5の「低開度時」を示す。図25(c)は、ロータ本体81の凸部84がストッパ83と対向しながら更に離れ、相対的に移動する弁体5の「中開度時」を示す。図24(d)は、ロータ本体81の凸部84がストッパ83と対向しながら更に離れ、相対的に移動する弁体5の「高開度時」を示す。
【0067】
図26に、図25(a)〜(d)の状態に対応したロータ本体81の雌ねじ81aのねじ山81bと、出力軸86の雄ねじ86aのねじ山86bとの関係の一部を拡大断面図により示す。図26(a)〜(d)は、図25(a)〜(d)、すなわち「ストッパ突き当たり」、「低開度時」、「中開度時」及び「高開度時」に対応する。図25(b)〜(d)及び図26(b)〜(d)に示すように、弁体の「低開度時」、「中開度時」及び「高開度時」には、ロータ本体81の凸部84がストッパ83から離れ、その代わりに、雄ねじ86aのねじ山86bと、雌ねじ81aのねじ山81bとが当接する。すなわち、弁体の「低開度時」〜「高開度時」の間で、ロータ本体81の回転がねじ山81b,86bを介して雌ねじ81aから雄ねじ86aへ伝えられ、弁軸を介して弁体へ伝達され、弁体の開度が変えられる。すなわち、雄ねじ86aと雌ねじ81aの螺合関係、つまりねじ機構の送りねじ機能により弁軸及び弁体が軸方向へストローク運動することになる。
【0068】
この実施形態において、ステップモータ7のステップ数(ロータ回転角)に対するバルブ開度(ストローク量)との関係、すなわち、EGRバルブ1の開閉特性は、図10のグラフに示すそれと同じである。
【0069】
従って、この実施形態のEGRバルブ1でも、第1実施形態のEGRバルブ1と同等の作用効果を得ることができる。
【0070】
<第4実施形態>
次に、本発明のモータ式EGRバルブを具体化した第4実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0071】
図27に、この実施形態におけるEGRバルブ1を正断面図により示す。この実施形態のEGRバルブ1では、第3実施形態のEGRバルブ1と基本構成が同じであるが、ねじ山離間機構及び移動変化率可変機構の構成の点で第3実施形態と異なる。すなわち、ロータ本体28及びスプリング受9の構成の点で第3実施形態と異なる。
【0072】
この実施形態で、ロータ本体28の下端部とスプリング受9の上面の構成は、図25に示す第3実施形態の比較例のそれと同じである。これに対し、この実施形態では、ロータ本体28の雌ねじ28aの構成の点で第3実施形態と異なる。図28に、マグネットロータ23を断面図により示す。この実施形態では、ロータ本体28の雌ねじ28aが、二段階の送りねじリードにより構成される。すなわち、図28に示す雌ねじ28aの長手方向において、上三分の一の上段部分28aaと、下三分の二の下段部分28abとで、送りねじリードの大きさが異なる。この実施形態では、上段部分28aaの送りねじリードが、下段部分28abの送りねじリードよりも相対的に小さく設定される。
【0073】
この実施形態で、ねじ山離間機構は、弁体5の「低開度域」に対応して雌ねじ28aの端部である上段部分28aaに設けられたねじ山28cであり、その上段部分28aaに設けられたねじ山28cは、他の部分のねじ山28cと比べて送りねじリードが小さくなっている。また、この実施形態で、移動変化率可変機構は、雌ねじの28aの上段部分28aaにより構成される。
【0074】
図29(a)〜(d)に、ロータ本体28の雌ねじ28aと、出力軸24の雄ねじ24aとの関係を概念図により示す。図29(a)は、出力軸24の雄ねじ24aの上端がロータ本体28の雌ねじ28aの上段部分28aaの上端に突き当たり、ロータ本体28の凸部84(図25参照)がスプリング受9のストッパ83(図25参照)に突き当たって係止される「ストッパ突き当たり」の状態を示す。この状態では、雌ねじ28aのねじ山28cと、雄ねじ24aのねじ山24bとがほとんど離間している。この「ストッパ突き当たり」のときには、出力軸24の雄ねじ24aの先端がロータ本体28の雌ねじ28aの上端に突き当たり、ロータ本体28の回転が止められ、弁軸6を介して弁体5が全閉状態となる。
【0075】
図29(b)は、雄ねじ24aの上部が雌ねじ28aの上段部分28aaと螺合し、ロータ本体28の凸部84(図25参照)がスプリング受9のストッパ83(図25参照)から離れた弁体5の「低開度時」を示す。この状態では、雌ねじ28aの下段部分28abのねじ山28cと、雄ねじ24aのねじ山24bとが離間している。この弁体5の「低開度時」には、ロータ本体28の回転が雌ねじ28aの上段部分28aaから雄ねじ24aへ伝えられ、出力軸24からスプリング受9及び弁軸6を介して弁体5へ伝達され、弁体5の開度が変えられる。すなわち、雄ねじ24aと雌ねじ28aの上段部分28aaとの螺合関係、つまり、ねじ機構8の送りねじ機能により、弁軸6及び弁体5が軸方向へストローク運動することになる。
【0076】
図29(c),(d)は、雄ねじ24aと雌ねじ28aの下段部分28abとが螺合し、ロータ本体28の凸部84(図25参照)がスプリング受9のストッパ83(図25参照)から離れた弁体5の「中開度時」及び「高開度時」を示す。この弁体5の「中開度時」及び「高開度時」には、ロータ本体28の回転が雌ねじ28aの下段部分28abから雄ねじ24aへ伝えられ、出力軸24からスプリング受9及び弁軸6を介して弁体5へ伝達され、弁体5の開度が変えられる。すなわち、雄ねじ24aと雌ねじ28aの下段部分28abとの螺合関係、つまり、ねじ機構8の送りねじ機能により、弁軸6及び弁体5が軸方向へストローク運動することになる。
【0077】
この実施形態において、ステップモータ7のステップ数(ロータ回転角)に対するバルブ開度(ストローク量)との関係、すなわち、EGRバルブ1の開閉特性は、図10のグラフに示すそれと同じである。
【0078】
従って、この実施形態のEGRバルブ1でも、第1実施形態のEGRバルブ1と同等の作用効果を得ることができる。
【0079】
この実施形態で、ねじ機構8の雄ねじ28aと雌ねじ24aとの螺合関係により、雄ねじ24aの端部が雌ねじ28aの上段部分28aaに達することにより、送りねじのリードが小さいねじ山28cに雄ねじ24aの端部のねじ山24bが当たることになる。これにより、雌ねじ28aの下段部分28abのねじ山28cと、雄ねじ24aのねじ山24bとの間が離間させられる。また、雌ねじ28aの上段部分28aaの送りねじリードの設定により、弁軸6の移動変化率を小さくすることができる。このため、ロータ本体28に設けられる雌ねじ28aの設定のみにより、弁体5の「低開度時(低開度域)」を特定して弁体5の開閉分解能を高めることができる。
【0080】
なお、この発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜に変更して実施することができる。
【0081】
例えば、前記各実施形態では、EGRバルブ1,15にステップモータ7を使用したが、直流モータを使用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
この発明は、エンジンのEGR装置を構成するEGRバルブに適用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 EGRバルブ
4 弁座
5 弁体
6 弁軸
7 ステップモータ
8 ねじ機構
9 スプリング受
15 EGRバルブ
23 マグネットロータ
24 出力軸
24a 雄ねじ
24b ねじ山
28 ロータ本体
28a 雌ねじ
28aa 上段部分
28ab 下段部分
28c ねじ山
42 傾斜面
46 凸部
51 ストッパ
57 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座と、
前記弁座に当接可能に設けられた弁体と、
前記弁体から延びる弁軸と、
ロータを含むモータと、
前記ロータと前記弁軸との間に設けられ、雄ねじと前記雄ねじに螺合される雌ねじとを含むねじ機構と
を備え、前記モータの前記ロータを回転させて前記雄ねじと前記雌ねじとの螺合関係により前記弁軸をその軸方向へ移動させることにより、前記弁体を移動させて前記弁体の前記弁座に対する開度を変えるモータ式EGRバルブにおいて、
前記雄ねじのねじ山と前記雌ねじのねじ山との少なくとも一部の間を、前記弁体の低開度域にて離間させるねじ山離間機構と、
前記弁体の低開度域における前記弁軸の軸方向への移動変化率を、前記弁体の中開度域及び高開度域における前記弁軸の軸方向への移動変化率よりも小さくするための移動変化率可変機構と
を備えたことを特徴とするモータ式EGRバルブ。
【請求項2】
前記ねじ山離間機構は、前記弁軸の前記軸方向に当接して作用する構成を有することを特徴とする請求項1に記載のモータ式EGRバルブ。
【請求項3】
前記ねじ山離間機構は、前記弁軸と前記ロータとの間に設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載のモータ式EGRバルブ。
【請求項4】
前記ねじ山離間機構は、前記弁体の低開度域に対応して前記雌ねじの端部に設けられたねじ山であり、前記雌ねじの端部に設けられたねじ山は、他の部分のねじ山と比べて送りねじリードが小さいことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のモータ式EGRバルブ。
【請求項5】
前記移動変化率可変機構は、前記ロータの回転に伴い前記雄ねじのねじ山と前記雌ねじのねじ山との少なくとも一部の間の離間距離を連続的に変化させる構成を有することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のモータ式EGRバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2012−237240(P2012−237240A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106533(P2011−106533)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】