説明

モータ速度測定装置およびモータ速度監視装置

【課題】モータ回転軸にセンサ等を物理的に追加することなく、交流モータの回転速度を監視することができるモータ速度測定装置およびモータ速度監視装置を提供する。
【解決手段】交流モータへ供給される、パルス変調による擬似交流電圧の波形を整形することにより、擬似交流電圧のプラス/マイナスの切り替わりと同じ周期でオン/オフが切り替わる整形信号を生成し、前記整形信号に基づいて交流モータの回転速度を導出する。導出された回転速度により異常の発生を判断し、異常と判断した場合は交流モータの回転を停止もしくは減速するための制御信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流モータにおける、モータ回転速度測定装置およびモータ回転速度監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工業機械に使用される交流モータは、三相交流による電力を期待して設計されており、入力周波数に比例した回転数を得られるという性質がある。そのため、交流モータを加減速し、もしくは速度制御を行うため、インバータ等の周波数変更装置により、任意のモータ速度をスムーズに制御する方法が多くの装置で採用されている。
【0003】
一方、工業機械においては、故障などによりモータが予期しない速度で回転する異常動作を監視し、速やかにモータを停止することができる装置あるいは機能が重要とされている。
【0004】
モータについては、人為的ミス、もしくは制御装置の故障などにより、想定を超えた速度で運転されることを防止するための装置として、モータシャフトにエンコーダやセンサ等の速度検出器を設け、想定する回転数と、実際の回転数の差異を物理的に取得するという方法が一般的である。下記特許文献1では、電動機に備えられた回転速度センサから、停止状態を含む電動機の回転状態を、異常検出手段に出力する技術が公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−288390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、速度検出器を備えるモータであれば、その検出結果をモータ制御部にフィードバックすることにより、故障により異常な回転が発生した際も、これを検知することができるが、速度検出器を備えていないモータに対してこれを付加しようとした場合、従来は改造によって物理的に取り付けなければならない。しかし、環境によっては、場所等の制約により速度検出器を設置できない場合があり、また、設置できた場合であっても、装置が大型化するといったデメリットが存在する。
【0007】
一方で、モータに供給される電力の波形からモータの回転速度を推定する技術は、インバータのセンサレスベクトル制御等の技術で採用されているが、電流検出器による方法では小型化する目的にあわないことや、システムの簡素化のために使われているPWM変調による電圧制御によりノイズを高速信号として誤検出してしまうため、速度の検出には向いていなかった。
【0008】
本発明は、モータ回転軸にセンサ等を物理的に追加することなく、交流モータの回転速度を測定および監視することができるモータ速度測定装置およびモータ速度監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るモータ速度測定装置およびモータ速度監視装置では、以下の手段または処理によってモータ回転数の導出、およびモータの停止または減速を行う。
【0010】
本発明に係るモータ速度測定装置は、交流モータの電源線に並列に接続されて用いられるモータ速度測定装置であって、前記電源線を通じて前記交流モータへ供給される交流電圧から、前記交流モータの回転速度を導出する速度導出手段を有し、前記速度導出手段は、前記交流電圧の波形からゼロクロス位置間の所要時間を測定することにより、前記交流モータの回転速度を導出することを特徴とする。
【0011】
このような構成を取ることにより、モータの回転軸に速度検出器を設置しなくとも、交流モータへ供給される交流電圧を取得するだけで、モータの回転速度を得ることができる。
【0012】
また、前記交流電圧は、パルス変調による擬似交流電圧であってもよい。
【0013】
交流モータの制御には、パルス変調による擬似交流電圧を用いることが多く、前記パルス変調を用いた電圧制御を行うモータであっても、本発明を適用することができる。
【0014】
本発明に係るモータ速度監視装置は、交流モータの電源線に並列に接続されて用いられるモータ速度監視装置であって、前記電源線を通じて前記交流モータへ供給される交流電圧から、前記交流モータの回転速度を導出する速度導出手段と、前記速度導出手段により導出された回転速度が異常であるか否かを判断し、異常と判断した場合に前記交流モータの回転を停止もしくは減速するための制御信号を出力するモータ制御手段とを有し、前記交流電圧はパルス変調による擬似交流電圧であり、前記速度導出手段は、前記擬似交流電圧の波形を整形することにより前記擬似交流電圧のプラス/マイナスの切り替わりと同じ周期でオン/オフが切り替わる整形信号を生成する波形整形手段を有し、前記波形整形手段から出力される整形信号に基づいて前記交流モータの回転速度を導出することを特徴としている。
【0015】
このような構成を取ることにより、モータの回転軸に速度検出器を設置しなくとも、交流モータへ供給される交流電圧を取得するだけで、モータの回転速度を検出し、速度に異常を検知した場合、停止または減速のための指示を外部に出力することができる。
【0016】
本発明における波形整形手段は、前記擬似交流電圧の波形からプラス成分の信号のみを抽出する第一の抽出手段と、前記擬似交流電圧の波形からマイナス成分の信号のみを抽出する第二の抽出手段と、前記第一の抽出手段の出力信号と前記第二の抽出手段の出力信号とから、前記整形信号を生成し出力する整形信号生成手段とを有することができる。
【0017】
また、前記第一の抽出手段は、前記擬似交流電圧とプラスの閾値電圧とを比較する第一のコンパレータから構成され、前記第二の抽出手段は、前記擬似交流電圧とマイナスの閾値電圧とを比較する第二のコンパレータから構成され、前記整形信号生成手段は、前記第一のコンパレータの出力信号と前記第二のコンパレータの出力信号が入力されるフリップフロップから構成することができる。
【0018】
このように、本発明における波形整形手段は、少なくとも三つの半導体素子のみで、モータの回転速度を導出するための交流電圧波形の整形を行うことができるため、装置全体を小型化することができるという利点や、電流検出器が不要なため、モータの消費電流の容量毎にセンサを選定する必要がなく、既設の機械を変更せずに速度を検出したい場合にも電気回路のみの変更で対応できるという利点を有している。また、擬似交流電圧の波形を閾値電圧と比較することにより、電源ノイズに影響されることなく、確実に波形を整形できるという利点も有している。
【0019】
また、本発明におけるモータ速度監視装置には、前記第一の抽出手段の出力信号と前記第二の抽出手段の出力信号と前記整形信号の三つの信号の論理の組み合わせが、取り得る組み合わせか否かを判定し、取り得る組み合わせでない場合に前記波形整形手段が故障していると判断する故障診断手段を有することも好ましい。
【0020】
これにより、第一の抽出手段が出力した信号と、第二の抽出手段が出力した信号と、整形信号の三つの信号が論理的に整合しない、つまり装置に故障が発生した場合、これを検知することが可能となる。故障が検出された場合は、利用者に通知を行ってもよいし、無監視状態となったことを理由にモータを停止してもよい。
【0021】
同様に、本発明におけるモータ速度監視装置には、前記第一の抽出手段および前記第二の抽出手段へ所定の波形のテスト信号を入力し、前記整形信号生成手段から出力される整形信号の論理が、前記テスト信号の波形に対応するものであるか否かを判定し、前記テスト信号の波形に対応するものでない場合に前記波形整形手段が故障していると判断する第二の故障診断手段を有していることも好ましい。
【0022】
テスト信号を入力し、出力された結果と対比することにより、所定の動作が正しく行われているかを確認することができる。論理整合チェックによる故障検出では、正しい論理状態のまま回路が停止してしまった場合、故障の検出ができなくなるが、これと比較して確実に故障検出を行うことができるという利点がある。
【0023】
本発明におけるモータ制御手段から出力される制御信号は、前記交流モータへの交流電圧の供給を遮断する遮断器、または、前記交流モータへ交流電圧を供給するコントローラに対して出力される信号であってもよい。
【0024】
モータを直ちに停止させる場合、たとえば遮断器が制御信号を受信し、モータに対する電力供給を停止させてもよい。モータを減速させる場合、モータコントローラ、たとえばインバータ装置の制御回路が制御信号を受信し、速度が許容範囲に到達するまでモータを減速させてもよい。
【0025】
制御信号を遮断器やモータのコントローラに出力することで、遮断器の開放による確実なモータの停止も可能であるし、利用者に警報を与えたうえで減速し、運転を継続するといった動作も可能である。これには、コントローラの故障を監視するだけではなく、利用者の異常操作をも監視できるという利点がある。もちろん、減速するための制御信号をコントローラに対して出力しても回転速度が落ちなかった場合には、故障と判断し、停止のための制御信号を遮断器に対して出力するなど、両者を併用してもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、モータ回転軸にセンサ等を物理的に追加することなく、交流モータの回転速度を監視することができるモータ速度測定装置およびモータ速度監視装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】PWM変調された入力波形と、前記波形から、時間軸方向の変調成分を除いた波形を示す図である。
【図2】第1〜第3実施形態に係る、速度検出部の構成を示す図である。
【図3】パルス幅検出部201を示す回路図である。
【図4】パルス幅検出部201にて処理される信号の波形を示す図である。
【図5a】第1実施形態に係る、モータ速度監視装置の全体構成を示す図である。
【図5b】第1実施形態に係る、モータ速度監視装置の変形例を示す図である。
【図6】第2実施形態に係る、モータ速度監視装置の全体構成を示す図である。
【図7】第3実施形態に係る、モータ速度監視装置の全体構成を示す図である。
【図8】第1実施形態に係る、異常検出部502の動作フローチャートである。
【図9】第4実施形態に係る、論理表である。
【図10】第5実施形態に係る、パルス幅検出部201に追加する回路図である。
【図11】第5実施形態に係る、診断パルスを表した図である。
【図12】第4,第5実施形態に係る、速度検出部601,701の構成を示す図である。
【図13】第4実施形態に係る、信号整合性確認部204の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明においては、モータへ入力される電圧波形から、交流周波数を測定し、モータの速度を導出するという手法を取る。しかし、産業用モータで使用する電力は、200Vや400Vなど、電子制御回路の動作と比較すると圧倒的に高い電圧の回路であり、さらにインバータによるPWM回路から発生する疑似正弦波においては、波形歪率が高いため、電子回路を誤動作させずに変調前の正弦波を完全復元するには高度なノイズ除去技術が必要である。以下に、上記の要件を満たし、正確に周波数を得るための発明の実施形態について述べる。
【0029】
(第1の実施形態)
まず、本実施形態における速度導出手段の概要について、図5aを参照しながら説明する。速度導出手段となる速度検出部501は、モータ505と並列に設置されており、モータに入力される三相電源を取得する。電源は三相であるが、位相が異なるのみで周波数はどれも同じであるため、少なくとも任意の一相を取得すればよい。
【0030】
モータ505(と同時に速度検出部501)に入力される交流電圧の波形は、図1(a)の通り、パルス波のデューティ比を変化させて変調させ、PWMにて正弦波を再現した信号である。このように、パルス変調(PWMやPAM)により擬似的に交流電圧の波形を表した信号を「擬似交流電圧」と呼ぶ。以下、このような擬似交流電圧の波形から入力周波数を取得(復元)するための構成を説明する。
【0031】
図2は、図5aで示した構成のうち、速度検出部501の構成を示した図である。速度検出部501は、パルス幅検出部201、パルス幅測定部202、および回転速度決定部203にて構成されている。パルス幅検出部201は、本発明の波形整形手段であり、擬似交流電圧の波形を整形することにより、擬似交流電圧のプラス/マイナスの切り替わりと同じ周期でオン/オフが切り替わる整形信号を生成する役割を持っている。図1(a)で示された波形が、パルス幅検出部201を通過することにより、図1(b)で示された波形を持つ整形信号が得られる。パルス幅測定部202では、図1(b)に示した波形の一周期の幅を測定し、その逆数をモータへの入力周波数として変換する。回転速度決定部203では、取得したモータへの入力周波数から、モータの回転速度を決定する。
【0032】
図3は、パルス幅検出部201の回路構成を示した図である。パルス幅検出部201は、第一の抽出手段であるコンパレータ101、および第二の抽出手段であるコンパレータ102と、整形信号生成手段であるRS型フリップフロップ103にて構成されている。モータに入力される電源104は、降圧されたのちにコンパレータ101、およびコンパレータ102に入力される。コンパレータ101には、0Vより
大きく、かつ、パルス波の最大電圧より低い基準電圧(閾値電圧)Vref1が、コンパレータ102には、0Vより小さく、かつ、パルス波の最大電圧より高い基準電圧(閾値電圧)Vref2が印加されている。この回路の動作を、図4(a)から図4(d)を用いて説明する。
【0033】
パルス幅検出部201に入力される電源104は、図4(a)に示した波形を有している。コンパレータ101については、入力104が基準電圧Vref1よりも高い場合に、出力論理が正となる。ここで、正の側へパルスが振れた場合(図4(a)フェーズ1)、入力104は基準電圧Vref1より高くなるため、図4(a)の波形をコンパレータ101に入力した場合の出力波形は図4(b)のようになる。
【0034】
一方、コンパレータ102については、コンパレータ101と極性が逆に接続されており、基準電圧Vref2が入力104よりも高い場合に、出力論理が真となる。つまり、正の側へパルスが振れた場合(図4(a)フェーズ1)においては、常に基準電圧Vref2のほうが入力104より低くなるため、出力論理は偽となる。
【0035】
負の側へパルスが振れた場合(図4(a)フェーズ2)、コンパレータ101については、常に入力104のほうが基準電圧Vref1より低くなるため、出力論理は偽となる。一方、コンパレータ102については、基準電圧Vref2が入力104より高くなり、出力論理が真となるため、図4(a)の波形をコンパレータ102に入力した場合の出力波形は図4(b)のようになる。これにより、コンパレータ101,102において、入力波形のプラス成分およびマイナス成分のみを確実に抽出できるようになる。
【0036】
RS型フリップフロップ103は、S入力およびR入力、Q出力を有している。RS型フリップフロップは、S入力の論理をQ出力に保持し、R入力が真になると、保持された論理をリセットするという特徴を持っている。このフリップフロップ103のS入力に、前述したコンパレータ101の出力(図4(b))を与え、R入力に、コンパレータ102の出力(図4(c))を与えると、そのQ出力106の波形は図4(d)のようになる。これが、パルス幅検出部201の目的である、モータへの入力波形より、パルス幅変調成分を除去した整形信号となる。
【0037】
次に、パルス幅測定部202は、取得された整形信号波形(図4(d))の一周期の幅を測定し、その逆数をモータへの入力周波数として決定する。パルス幅の測定については、例えばゼロクロス回路を用いて、印加されていた電圧が0となるタイミングの周期を測定する。測定した結果、例えば一波形周期が5ミリ秒であった場合、モータへの入力周波数はその逆数である200Hzとなる。
【0038】
入力周波数を決定したら、回転速度決定部203は、測定した周波数を元にモータの同期速度と、回転速度を導出する。同期電動機の場合、モータの回転速度は、入力周波数から算出される同期速度と一致するため、その計算式は数式1のようになる。
【0039】
【数1】

【0040】
例えば、8極の同期電動機に対する入力周波数が200Hzであった場合、上記式により、回転数は(2×200÷8)×60=3000回転/毎分と決定することができる。誘導電動機の場合、入力周波数と、同期速度が一致しないため、上記にて算出した同期速度に、すべりに相当する分を減じたものをモータの回転数とする。例えば、上記の例にお
いて、すべりが0.1であった場合、回転数は3000−(3000×0.1)=2700回転/毎分とすることができる。以上の処理を行うことにより、速度検出部501は、モータの回転数を導出することができる。
【0041】
次に、図5aに示した異常検出部502の動作を、図8を参照しながら説明する。図8のフローチャートは、異常検出部502の動作を表したものである。まず、動作を開始すると、速度検出部501より、モータの回転速度を導出するステップS801が実行される。
【0042】
続いて、導出した速度をもとに、回転速度が許容範囲内にあるかを確認するステップS802が実行される。ここで、回転速度が許容範囲を逸脱していたら、処理は、本発明のモータ制御手段である、モータ制御部503に対して制御信号を出力するステップS805へ遷移する。回転速度が許容範囲内であった場合、前回の処理で記憶した回転速度を参照し、回転速度の増分を計算するステップS803へ遷移する(処理が初回であった場合、前回の処理で記憶した回転速度は0とする)。続いて、回転速度の増分(モータの加速度)が、許容範囲にあるかを確認するステップS804へ遷移する。ここで、加速度が許容範囲を逸脱していたら、処理は、モータ制御部503に対して制御信号を出力するステップS805へ遷移する。加速度が許容範囲内であった場合、導出した回転速度を一時記憶するステップS806へ遷移したのち、処理はS801へ戻る。
【0043】
したがって、この処理を繰り返して実行することにより、現在のモータの速度および加速度の監視が可能となり、速度あるいは加速度のどちらかが許容範囲から逸脱した場合、モータ制御部503に対して制御信号の出力をすることができる。
【0044】
ステップS805が実行された場合、異常検出部502は、モータ制御部503に対して制御信号を発行する。第1の実施形態においては、モータ制御部503は、モータコントローラであるインバータ装置506と、モータ505との回路上に設置された電磁接触器504(遮断器)に接続されている。そして、モータ制御部503は、制御信号を受信すると、電磁接触器504を開放する。これにより、モータ505の電源が遮断されるため、モータ505の回転は停止する。
【0045】
本実施形態によれば、交流モータへ入力される電圧波形を取得し、波形を整形したうえでモータの回転速度を導出することにより、速度検出器を用いることなくモータの回転速度を得ることができる。また、速度の導出に半導体素子を用いることで、従来の問題点であった、装置が大型化するといった欠点を解消している。
【0046】
また、電磁接触器504を用いて電源を遮断することにより、確実にモータを停止することができるという利点があるほか、回転速度または加速度を監視することにより、インバータ装置の故障だけでなく、許容速度を超える指示を出す、あるいは許容範囲を超える急加速操作をするといった利用者の操作ミスをも検知することが可能である。なお、電磁接触器504を使用するかわりに、図5bで示したように、インバータ装置内に遮断回路507を設置し、制御信号を遮断してもよい。
【0047】
(第2の実施形態)
第2の実施形態における構成を、図6を参照しながら説明する。速度検出部601、異常検出部602、モータ制御部603は、第1の実施形態と同様に、モータ605と並列に設置されており、その動作は、第1の実施形態と同様である。
【0048】
第2の実施形態においては、モータ制御部603は、電源600とインバータ装置606を結ぶ回路上に設置された電磁接触器604と接続されている。モータ制御部603は
、制御信号を受信すると、電磁接触器604を開放する。これにより、インバータ装置606の電源が遮断されるため、第1の実施形態と同様に、モータ605の回転は停止する。
【0049】
第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、速度検出器を用いることなくモータの回転速度または加速度を監視することができるが、電磁接触器504を用いてインバータ装置606へ入力される電源を遮断することにより、モータだけでなく、インバータ装置をも同時に停止することができる。一台のインバータ装置で、複数のモータを駆動している場合、インバータ装置の故障は他のモータへ影響を及ぼすことが考えられるため、この方法が有効である。
【0050】
(第3の実施形態)
第3の実施形態における構成を、図7を参照しながら説明する。速度検出部701、異常検出部702、モータ制御部703は、第1の実施形態と同様にモータ705と並列に設置されているが、インバータ装置706の外部に配置されていてもよいし、内部に配置されていてもよい。その動作は、第1の実施形態と同様である。
【0051】
第3の実施形態においては、モータ制御部703は、インバータ装置706が有している制御回路704と接続されている。モータ制御部603は、制御信号を受信すると、制御回路704に対して異常が発生したことを示す信号を出力する。これにより、インバータ装置706は、モータ705を緊急停止、あるいは、異常信号を検出しなくなるまで回転数を下げる。一時的に回転数を下げる対応は、インバータ装置の故障ではなく、利用者の異常操作を想定した場合に有効である。この場合、利用者に対して警報を発してもよい。
【0052】
第3の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、速度検出器を用いることなくモータの回転速度または加速度を監視することができるが、電源の遮断ではなく、インバータ装置706に対して制御信号を出力することで、電源を遮断しての強制停止ではなく、モータの速度調整が可能となる。例えば、利用者の操作ミスにより速度超過が発生した場合、警報を発したうえで既定の速度以下となるように減速を行う、もしくは、速度が超過している間は加速操作を受け付けなくする、といった効果が期待できる。
【0053】
(第4の実施形態)
図12を参照しながら、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態においては、パルス幅検出部201に対し、信号整合性確認部204(故障診断手段)を追加することにより、自己診断機能を実現する。具体的には、図3におけるフリップフロップ103において、第一の抽出手段からの出力信号が入力されるS入力,第二の抽出手段からの出力信号が入力されるR入力,および整形信号であるQ出力の状態を取得して、論理的にあり得ない組み合わせが取得された場合、速度検出部501,601,701は、自己に異常が発生したと判断する。
【0054】
図9は、S入力,R入力,Q出力の論理状態と、異常判定の結果を示した図である。以下に、正常または異常と判断するケースごとに説明する。
【0055】
S入力が偽、R入力が偽であった場合、Q出力は、フリップフロップの特性上不定であるため、Q出力の内容にかかわらず正常と判断する(ケース901,902)。
【0056】
S入力が偽、R入力が真であった場合、Q出力は必ず偽となるため、Q出力が偽であった場合は正常(ケース903)、真であった場合はフリップフロップの故障と判断する(ケース904)。
【0057】
S入力が真、R入力が偽であった場合、Q出力は必ず真となるため、Q出力が真であった場合は正常(ケース905)、偽であった場合はフリップフロップの故障と判断する(ケース906)。
【0058】
コンパレータ101および102からの出力は、同時に真となることがないため、S入力が真、R入力が真であった場合はコンパレータの故障と判断する(ケース907,908)。
【0059】
図13は、図9に対応した論理回路を用いた、信号整合性確認部204の回路構成例である。診断結果305には、異常と判断した場合に真が、正常な場合は偽が出力される。異常と判定された場合、パルス幅検出部201は、測定結果をパルス幅測定部202へ入力せず、装置をロックアウトすることにより監視動作を停止させる。また、同時に利用者に対して、監視装置に異常が発生した旨の通知を行ってもよい。
【0060】
本実施例に係る論理チェックについては、連続して行ってもよいし、一定の間隔で行ってもよい。なお、各入出力の状態を取得するためには、絶縁を行うためフォトカプラ等を使用することが望ましい。
【0061】
第4の実施形態においては、論理チェックを実施することで、コンパレータ101,102およびフリップフロップ103の意図しない動作を防止することができる。これにより、いずれかの素子が劣化して故障した場合、これをいち早く検出することができ、利用者に対して通知することができる。もし、パルス幅検出部201の故障が検出された場合は、例えば監視機能を停止し、あるいはモータ自体を停止もしくは減速してもよい。これにより、速度監視が正しく機能していない状態でモータが運転されることを防止できるという利点がある。
【0062】
(第5の実施形態)
図12を参照しながら、第5の実施形態について説明する。第5の実施形態においては、パルス幅検出部201の入力に対してテスト信号入力部205a、出力に対してテスト信号検出部205bを追加することにより、動的テスト機能を実現する。本実施形態では、テスト信号入力部205aおよび205bが、本発明の第二の故障診断手段に対応する。図10は、図3で示したパルス幅検出部201の入力部分に、テスト信号入力部205aを追加した回路図である。
【0063】
テスト信号入力部205aは、テスト入力信号線1(107a)、テスト入力信号線2(107b)、フォトカプラ108および109にて構成される。以下、モータ駆動監視中に動的テストを実施した場合の動作を、図10と図11を参照しながら説明する。
【0064】
テスト入力信号線1(107a)に信号を入力した場合、パルス幅検出部201への入力は、モータへ供給される入力波形に関係なく、フォトカプラの効果によりVccにクランプされる。また、テスト入力信号線2(107b)に信号を入力した場合、パルス幅検出部201への入力は、同じく、モータへ供給される入力波形に関係なく、Vssにクランプされる。
【0065】
よって、図11(a)(b)のタイミングチャートの通りに、二本のテスト入力線に対してパルス信号を加えた場合、コンパレータ101,102に入力される波形は、図11(c)のようになる。なお、斜線部分は、実際にモータへ供給されている入力波形に依存する部分である。
【0066】
また、フリップフロップ103の出力は、図11(d)のようになる。このため、例示した通りの波形をテスト信号入力部205aより入力し、フリップフロップ103の出力結果をテスト信号検出部205bにより取得し、例示した通りの波形が取得できない場合、装置が故障していると判断することができる。
【0067】
また、テスト信号検出部205bは、パルス幅測定部202、もしくは回転速度決定部203に接続される形で配置されていてもよい。パルス幅測定部202に接続されている場合、入力されたテスト信号と一致する周波数が測定できれば、装置が正常であることがわかる。同じように、回転速度決定部203に接続されている場合、入力されたテスト信号に対して期待通りの回転速度が導出されれば、装置が正常であることがわかる。
【0068】
第5の実施形態においては、テスト信号により入力波形をクランプすることで、モータ速度監視装置が有するコンパレータ101,102、およびフリップフロップ103の動的な故障診断を行うことができる。第4の実施形態が入出力信号の論理のみをチェックしているのに対して、本実施形態は実際にテスト信号を入力することで装置の動作チェックを行うため、たとえばコンパレータ101,102がともに故障し、図9:ケース901の論理を保ったまま停止してしまった場合、第4の実施形態ではこれを検出することはできないが、本実施形態においては検出が可能である。このように、第5の実施形態では、第4の実施形態に加え、異常を検出する装置自体が故障したケースにも対応することができるという利点がある。
【0069】
以上述べたように、本発明では、PWM変調における複雑な信号変化のうち、モータ回転につながる波形変化がゼロクロスする部分だけであることに注目した。PWM波形のうち、正側のみ出力している期間は、同じモータ磁極に対する波形であり、次の磁極へ乗り移るためには磁極を乗り越える必要があるため、電圧が逆方向に印加されるものである。
【0070】
また、モータがコイルであることから、PWM変調用の基本周波数やスパイク状のノイズなどのモータが応答できない高速変化を排除するローパスフィルタとの組み合わせをすることで、比較的簡単にゼロクロス位置を順番にサンプリングしていくことが可能となる。
【0071】
ゼロクロス位置を検出した後においては、一般的な技術を用いて、ゼロクロス位置間の所要時間を測定することにより、出力したエネルギーがモータ回転に与えている主な周波数を測定することができ、これにより、独立回路による正確な速度検出が可能となる。
【0072】
なお、上記一連の実施形態の説明は、本発明を説明する上での例示にすぎず、本発明を上記の実施形態に限定して解釈すべきではない。例えば、第3の実施形態において、モータ制御部703が、インバータ装置706に異常を示す信号を出力したにもかかわらず、モータ回転数が下がらない場合、電源線上に配置された電磁接触器を開放し、モータ705を停止させるといったように、複数の実施例を組み合わせてもよい。
【0073】
また、異常検出部502,602,702にあっては、速度のみを監視してもよいし、速度と加速度の双方を監視してもよい。また、第4の実施形態に係る故障判断については、例示した論理回路のほか、マイコンによって行ってもよい。
【0074】
また、第4および第5の実施形態については、装置の故障判断がされた場合、監視動作を停止させるとともに、モータ制御部503,603,703に対して制御信号を出力し、モータの運転を停止させてもよい。これにより、監視が動作していない状態でのモータ運転を許容しないという対応も可能である。
【符号の説明】
【0075】
101,102 コンパレータ
103 RS型フリップフロップ
104 入力電源線
106 出力電源線
107a テスト信号線1
107b テスト信号線2
108,109,301 フォトカプラ
201 パルス幅検出部
202 パルス幅測定部
203 回転速度決定部
302 NOTゲート
303 ANDゲート
304 ORゲート
500,600,700 電源装置
501,601,701 速度検出部
502,602,702 異常検出部
503,603,703 モータ制御部
504 電磁接触器
505,605,705 交流モータ
506,606,706 インバータ装置
507 遮断回路
704 インバータ制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流モータの電源線に並列に接続されて用いられるモータ速度測定装置であって、
前記電源線を通じて前記交流モータへ供給される交流電圧から、前記交流モータの回転速度を導出する速度導出手段と、
を有し、
前記速度導出手段は、前記交流電圧の波形からゼロクロス位置間の所要時間を測定することにより、前記交流モータの回転速度を導出する
ことを特徴とするモータ速度測定装置。
【請求項2】
前記交流電圧は、パルス変調による擬似交流電圧である
ことを特徴とする請求項1に記載のモータ速度測定装置。
【請求項3】
交流モータの電源線に並列に接続されて用いられるモータ速度監視装置であって、
前記電源線を通じて前記交流モータへ供給される交流電圧から、前記交流モータの回転速度を導出する速度導出手段と、
前記速度導出手段により導出された回転速度が異常であるか否かを判断し、異常と判断した場合に前記交流モータの回転を停止もしくは減速するための制御信号を出力するモータ制御手段と、を有し、
前記交流電圧は、パルス変調による擬似交流電圧であり、
前記速度導出手段は、前記擬似交流電圧の波形を整形することにより前記擬似交流電圧のプラス/マイナスの切り替わりと同じ周期でオン/オフが切り替わる整形信号を生成する波形整形手段を有し、前記波形整形手段から出力される整形信号に基づいて前記交流モータの回転速度を導出する
ことを特徴とするモータ速度監視装置。
【請求項4】
前記波形整形手段は、
前記擬似交流電圧の波形からプラス成分の信号のみを抽出する第一の抽出手段と、
前記擬似交流電圧の波形からマイナス成分の信号のみを抽出する第二の抽出手段と、
前記第一の抽出手段の出力信号と前記第二の抽出手段の出力信号とから、前記整形信号を生成し出力する整形信号生成手段と、
を有することを特徴とする、請求項3に記載のモータ速度監視装置。
【請求項5】
前記第一の抽出手段は、前記擬似交流電圧とプラスの閾値電圧とを比較する第一のコンパレータから構成され、
前記第二の抽出手段は、前記擬似交流電圧とマイナスの閾値電圧とを比較する第二のコンパレータから構成され、
前記整形信号生成手段は、前記第一のコンパレータの出力信号と前記第二のコンパレータの出力信号が入力されるフリップフロップから構成されている
ことを特徴とする、請求項4に記載のモータ速度監視装置。
【請求項6】
前記第一の抽出手段の出力信号と前記第二の抽出手段の出力信号と前記整形信号の三つの信号の論理の組み合わせが、取り得る組み合わせか否かを判定し、取り得る組み合わせでない場合に前記波形整形手段が故障していると判断する故障診断手段をさらに有する
ことを特徴とする、請求項4または請求項5に記載のモータ速度監視装置。
【請求項7】
前記第一の抽出手段および前記第二の抽出手段へ所定の波形のテスト信号を入力し、前記整形信号生成手段から出力される整形信号の論理が、前記テスト信号の波形に対応するものであるか否かを判定し、前記テスト信号の波形に対応するものでない場合に前記波形整形手段が故障していると判断する第二の故障診断手段をさらに有する
ことを特徴とする、請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載のモータ速度監視装置。
【請求項8】
前記モータ制御手段から出力される制御信号は、前記交流モータへの交流電圧の供給を遮断する遮断器、または、前記交流モータへ交流電圧を供給するコントローラに対して出力される
ことを特徴とする、請求項3乃至請求項7のいずれか1項に記載のモータ速度監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−196002(P2012−196002A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56391(P2011−56391)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】