説明

モータ駆動装置、モータ駆動装置の組立方法、モータ駆動装置の組立治具

【課題】駆動力を伝達するためのプーリが、モータ等の外郭に隠れるようにしてケースの底面に固定される場合であっても、簡易な構成で、作業性を悪化させることなくプーリにベルトを懸架することができるモータ駆動装置、モータ駆動装置の組立方法、モータ駆動装置の組立治具を提供すること。
【解決手段】駆動側プーリ10aまたは従動側プーリ10bより径方向に大きく形成されたモータ9がキャップ状ケース21の開口21g側に配設され、キャップ状ケース21の内底面210には、プーリベルト10cが懸架された状態で駆動側プーリ10aおよび従動側プーリ10bがキャップ状ケース21に挿着されることで、駆動側プーリ10aおよび従動側プーリ10bが仮保持される仮保持部212が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動装置、モータ駆動装置の組立方法、モータ駆動装置の組立治具に関し、さらに詳しくは、モータの駆動力を伝達するためのプーリおよびプーリベルトを備えたモータ駆動装置、モータ駆動装置の組立方法、およびモータ駆動装置の組立治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(図3等)には、モータの駆動力を、モータの回転軸と一体に回転する駆動側プーリからベルトを介して従動側プーリに伝達する駆動力伝達機構が記載されている。
【0003】
このような特許文献1の構成においては、駆動側プーリおよび従動側プーリがケースから露出した状態で配設されるため、駆動力を伝達するための各種ギヤ等をケースに固定した後、従動側プーリおよび駆動側プーリにベルトを懸架する作業を容易に行うことができる。
【0004】
しかし、このような伝達機構が搭載される機器の設計上、ベルトを懸架する作業が困難となる場合がある。例えば、駆動側プーリおよび従動側プーリを有底筒状のケース(キャップ状ケース)の底面に固定する場合には、モータや、駆動力を伝達するための各種ギヤ等によって、駆動側プーリや従動側プーリが隠れてしまうことがある。つまり、駆動側プーリや従動側プーリを視認することができない状態で、プーリベルトを懸架しなければならず、作業性が著しく悪化するという問題がある。これに対し、プーリベルトの懸架作業のための開口をケースの底面に設け、プーリベルトを懸架した後にこの開口を蓋等で封止するという構成とすれば、上記のように作業性は悪化しない。しかし、ケースの密閉性を確保するため、蓋とケースの間に介在させるOリング等のシール部材が別途必要となるため、製造コストが増加してしまうという問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開2001−326474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記問題に鑑みて、本発明が解決しようとする課題は、駆動力を伝達するためのプーリが、モータ等の大径部材の外郭に隠れるようにしてケースの底面に固定される場合であっても、簡易な構成で、作業性を悪化させることなくプーリにベルトを懸架することができるモータ駆動装置、モータ駆動装置の組立方法、モータ駆動装置の組立治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係るモータ駆動装置は、有底のキャップ状ケースの内底面側に、モータによって駆動される駆動側プーリと、該駆動側プーリの回転により駆動される従動側プーリと、前記駆動側プーリおよび前記従動側プーリとの間に懸架され、前記駆動側プーリの駆動力を前記従動側プーリに伝達するプーリベルトとが配設されたモータ駆動装置において、前記駆動側プーリまたは前記従動側プーリを回転自在に支持し、前記駆動側プーリまたは前記従動側プーリより径方向に大きく形成された大径部材が前記キャップ状ケースの開口側に配設され、前記大径部材より前記キャップ状ケースの内底面側には、前記プーリベルトが懸架された状態で前記駆動側プーリおよび従動側プーリが前記キャップ状ケースに挿着されることで、前記駆動側プーリおよび前記従動側プーリが仮保持される仮保持部が形成されていることを要旨とするものである。
【0008】
本発明に係るモータ駆動装置によれば、モータや、駆動側プーリおよび従動側プーリ等の各構成部材が収納されるキャップ状ケースの内底面に、駆動側プーリおよび従動側プーリにプーリベルトが懸架された状態でこれらを仮保持することができる仮保持部が形成されている。そのため、キャップ状ケースの開口側に駆動側プーリまたは従動側プーリよりも径方向に大きく形成された大径部材が配設される構成であっても、組立治具等に予め各構成部材を組み付けておいてキャップ状ケースを被着すれば、プーリベルトが懸架された状態で駆動側プーリおよび従動側プーリをキャップ状ケースにおける内底面側に仮保持させることができる。したがって、駆動側プーリまたは従動側プーリを視認することができない状態でプーリベルトの懸架作業を行う必要がない。ゆえに、駆動側プーリおよび従動側プーリが大径部材の外郭に隠れるようにキャップ状ケースの内底面側に配設される場合であっても、モータ駆動装置の組立作業を効率よく行うことができる。
【0009】
この場合、前記仮保持部は、前記駆動側プーリまたは前記従動側プーリとが、前記キャップ状ケースの開口側から挿入される挿入方向の移動によって仮保持可能に形成されていればよい。
【0010】
このように構成すれば、各構成部材が仮組みされた組立治具に対してキャップ状ケースを挿入する動作だけで、駆動側プーリと従動側プーリとを仮保持させることができるため、組立作業の効率がさらに向上する。
【0011】
本発明に係るモータ駆動装置の組立方法は、モータの出力軸に固定された駆動側プーリと、該駆動側プーリの回転により回転駆動される従動側プーリとを組立治具に予め配置し、かつ前記駆動側プーリおよび前記従動側プーリ間にプーリベルトを懸架して仮組みしておき、有底のキャップ状ケース内に、前記組立治具に仮組みされる各構成部材を挿嵌させ、前記駆動側プーリおよび前記従動側プーリ間にプーリベルトを懸架した状態で、前記駆動側プーリおよび前記従動側プーリを前記キャップ状ケース内に固定するようにしたことを要旨とするものである。
【0012】
本発明に係るモータ駆動装置の組立方法によれば、キャップ状ケースに駆動側プーリおよび従動側プーリを固定する前に、予め組立治具上で駆動側プーリおよび従動側プーリにプーリベルトを懸架した状態で仮組みすることができるため、モータ駆動装置の組立作業の効率が向上する。
【0013】
また、本発明に係るモータ駆動装置の組立方法は、モータの出力軸に固定された駆動側プーリと、該駆動側プーリの回転により回転駆動される従動側プーリとを組立治具に予め配置し、かつ前記駆動側プーリおよび従動プーリ間にプーリベルトを懸架して仮組みしておき、前記プーリベルトが懸架された状態で前記駆動側プーリおよび前記従動側プーリを仮保持する仮保持部が内底面に設けられたキャップ状ケースを、前記組立治具に仮組みされる各構成部材上に被着することにより前記駆動側プーリおよび前記従動側プーリを前記仮保持部に仮保持させ、しかる後、前記組立治具を前記各構成部材より取り外すようにしたことを要旨とするものである。
【0014】
本発明に係るモータ駆動装置の組立方法によれば、キャップ状ケースに駆動側プーリおよび従動側プーリを仮保持させる前に、予め組立治具上で駆動側プーリおよび従動側プーリにプーリベルトを懸架した状態で仮組みすることができるため、モータ駆動装置の組立作業の効率が向上する。
【0015】
この場合、前記組立治具を前記各構成部材より取り外した後、前記駆動側プーリおよび前記従動側プーリを前記内底面に固定するように構成すればよい。
【0016】
このようにすれば、キャップ状ケースに駆動側プーリおよび従動側プーリが仮保持された状態で組立治具が取り外されるので、駆動側プーリおよび従動側プーリの固定を目視しながら確実に行うことができる。
【0017】
また、本発明に係るモータ駆動装置の組立治具は、モータの出力軸に固定された駆動側プーリと、該駆動側プーリの回転により回転駆動される従動側プーリとの間にプーリベルトが懸架された状態でキャップ状ケース内に挿入するに際してこれらの各構成部材を予め仮組みしておくものであって、前記駆動側プーリが固定された状態で前記モータを支持する第一の支持部と、前記従動側プーリを支持する第二の支持部を備えていることを要旨とするものである。
【0018】
このように構成すれば、簡単に駆動側プーリと従動側プーリにプーリベルトを懸架することができるため、モータ駆動装置の組立作業の効率が向上する。
【0019】
この場合、前記各構成部材を前記キャップ状ケース内における正規の位置に仮保持させるため前記キャップ状ケースとの位置決め部が設けられていればよい。
【0020】
モータ駆動装置の各構成部材がキャップ状ケース内における正規の位置に配置されるようにキャップ状ケース内を直接目視し、その方向が正しいかどうかを確認しながらキャップ状ケースの被着作業を行うことは困難である。このような構成によれば、位置決め部によって、各構成部材とキャップ状ケースとの位置決めを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るモータ駆動装置、モータ駆動装置の組立方法、モータ駆動装置の組立治具によれば、プーリベルトが懸架された状態で駆動側プーリおよび従動側プーリをキャップ状ケースにおける内底面側に仮保持させることができる。したがって、駆動側プーリまたは従動側プーリを視認することができない状態でプーリベルトの懸架作業を行う必要がない。ゆえに、駆動側プーリおよび従動側プーリが大径部材の外郭に隠れるようにキャップ状ケースの内底面側に配設される場合であっても、モータ駆動装置の組立作業を効率よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係るモータ駆動装置1の構成を説明するための図である。ここで、図1(a)は、モータ駆動装置1の平面図であり、図1(b)は、モータ駆動装置1の一部を断面で示す縦断面図である。なお、以下の説明における上下方向とは、図1(b)における上下方向をいうものとする。
【0024】
まず、モータ駆動装置1の全体構成について説明する。モータ駆動装置1は、モータ9と、このモータ9の回転動力を伝達する伝達機構10と、この伝達機構10を介して伝達されたモータ9の回転駆動に基づいて軸線L(中心軸線)周りに回転する送りねじ6と、送りねじ6の回転に基づいて直線駆動される可動体7とを備える。そして、これらの部材は、ケース2に収容されており、このケース2は、キャップ状ケース21および本体ケース22からなる。
【0025】
駆動源であるモータ9には、DCモータ、ステッピングモータ等の各種モータを適用することができる。また、モータ9には、モータ9を取り付けるためのモータ取付板90が固定されている。なお、モータ9は、その出力軸9aが下向きに配設されている。このような構成としているのは、モータ9と送りねじ6とを軸方向に重ねることにより、モータ9と送りねじ6モータ駆動装置1の長手方向(上下方向)の大きさをコンパクトにするため(出力軸9aが上向きになるように配設した場合、モータ9の長さ分モータ駆動装置1の大きさが長くなってしまうため)である。
【0026】
伝達機構10は、モータ9の出力軸9aに固定された駆動側プーリ10aと、送りねじ6の基端部に設けられた従動側プーリ10bと、駆動側プーリ10aおよび従動側プーリ10bに懸架されたプーリベルト10cとを備える。プーリベルト10cとしては、タイミングベルトが用いられている。このように構成される伝達機構10は、キャップ状ケース21の内底面210側に配設される。キャップ状ケース21の構成、ならびにキャップ状ケース21内におけるモータ9や伝達機構10等の取付構造の詳細については後述する。
【0027】
可動体7は、送りねじ6に係合されて送りねじ6上を直線移動するキャリッジ5と、キャリッジ5から上方に延びた連結軸4と、連結軸4の先端部に連結された円板状の出力部材3とを備える。
【0028】
本実施形態において、モータ9、伝達機構10、送りねじ6、キャリッジ5等は、ケース2の内部に収容されており、出力部材3および連結軸4の先端側(連結軸の出力部材3側)のみがケース2の外部に配置されている。送りねじ6は、一端がキャップ状ケース21の内底面210に設けられた従動側プーリ10bに、他端が本体ケース22の上面22aに設けられた円形凹部23aに回転自在に保持されている。また、送りねじ6と平行に回転阻止軸80が配置されており、この回転阻止軸80の両端は、キャップ状ケース21の内底面210および本体ケース22の上面22aに対して両端が固定されている。
【0029】
板状の部材であるキャリッジ5の中央には、ねじ孔5aが形成されており、このねじ孔に送りねじ6が螺合されている。また、キャリッジ5には、ねじ孔5aを中心にして周方向へ等間隔に配設された3本の連結軸4の下端部が固定されている。なお、連結軸4の上端部には、出力部材3が固定されている。また、キャリッジ5には、回転阻止軸80が挿通されたガイド孔5bが形成されており、かかるガイド孔5bおよび回転阻止軸80によって、送りねじ6が回転した際、可動体7(キャリッジ5)の共回りを阻止するための共回り阻止機構8が構成されている。したがって、送りねじ6が回転すると、可動体7は、回転阻止軸80によって軸線L方向に案内されながら、送りねじ6上を軸線L方向に移動する。
【0030】
モータ駆動装置1は、この送りねじ6の回転量を検出する検出手段を備える。送りねじ6の基端部に連結された従動側プーリ10bには、周方向に90度ずつ等間隔に四つのマグネット111が固定されている。一方、キャップ状ケース21に固定された基板113には、ホール素子および信号処理ICを備えたホールICからなる回転検出センサ112が実装されている。このマグネット111および回転検出センサ112によって、送りねじ6の回転量(回転数)、および回転方向を検出する回転検出装置11(回転検出手段)が構成されている。
【0031】
キャリッジ5の上面には、マグネット121が搭載される一方、ケース2内に固定された基板123には、ホール素子等を備えた磁気センサ122が実装されており、マグネット121および磁気センサ122からなる位置検出装置12によってキャリッジ5が最も下端側(後退端)に到達したか否かを検出することができる。
【0032】
ケース2を構成する本体ケース22は、底面23を有する有底の円筒体22aであって、円筒体22aの下端にはフランジ22cが形成されている。フランジ部22cには、周方向へ等間隔に三つの取付穴22dが形成されている。
【0033】
底面23の中央部分は、上方に向けて凹む有底の円形凹部23aが形成されており、この円形凹部23aが、送りねじ6の上端部に形成されている細径部6aを回転可能に支持する軸受となっている。底面23において、円形凹部23aの周りには、三本の連結軸4が貫通する三つの貫通孔23dが周方向に等間隔に形成されている。貫通孔23dを通じて連結軸4は進退移動するため、底面23は、摺動性に優れた樹脂材料により形成されている。
【0034】
キャップ状ケース21は、本体ケース22によりもやや大きな有底の円筒体であり、内底面210には、下方に凹む凹部211が形成されている。一方開口21g側には、本体ケース22のフランジ22cと重なるフランジ21cが形成されている。フランジ21cには、本体ケース22のフランジ22cに周方向へ方間隔に形成された孔211cと重なる三個所に孔21aを備えたボス部21bが形成されており、かかる孔21aにタッピングねじ24を螺合させることにより、キャップ状ケース21と本体ケース22とが連結されている。また、本体ケース22のフランジ部22cに形成された取付穴22dと重なる位置には、取付穴21dが三個所に形成されている。この取付穴22dおよび取付穴21dを用いて、モータ駆動装置1は、搭載対象機器19に固定されることとなる。
【0035】
このようなキャップ状ケース21には、モータ9、伝達機構10等が配設されている。以下、キャップ状ケース21の具体的な構成について説明する。
【0036】
図2は、キャップ状ケース21の内底面210の開口側から見た斜視図である。キャップ状ケース21の内底面210には、駆動側プーリ10aおよび従動側プーリ10bを仮保持するための仮保持部212が設けられている。本実施形態では、仮保持部212は、以下説明する環状突起212aおよび位置決め突起212bとから構成されている。
【0037】
キャップ状ケース21の内底面210の略中央には、凹部211が形成されている。この凹部211内には、所定の大きさの環状突起212aが形成されている。詳細は後述するが、この環状突起212aには、ボールベアリング14を介して、従動側プーリ10bが回転自在に嵌め込まれる。また、キャップ状ケース21の内底面210には、二つの位置決め突起212bが形成されている。この位置決め突起212bには、モータ9に固定されたモータ取付板90が係合される。このことよって、駆動側プーリ10aが間接的にキャップ状ケース21に仮保持される。
【0038】
また、各位置決め突起212bの近傍には、雌ねじ部212cが形成されている。さらに、凹部211に隣接して、上記基板113が嵌め込まれる基板保持部212dが形成されている。
【0039】
このような形状のキャップ状ケース21へのモータ9、伝達機構10等の組付方法(組立方法)について以下説明する。
【0040】
本実施形態では、キャップ状ケース21の内底面210にモータ9、伝達機構10等を取り付けるに際して、組立治具15を使用する。図3は、この組立治具15の外観斜視図であり、図4は、この組立治具15にモータ9および伝達機構10等を仮組みした状態を示した外観斜視図である。組立治具15は、ベース150上に、第一の支持部151、第二の支持部152、および位置決め部153を備える。
【0041】
第一の支持部151は、モータ9を支持するための支持部であり、ベース150上に垂直に立設された四本のガイド軸151a〜151d、およびモータ受台151eとからなる。図4に示すように、モータ9は、駆動側プーリ10aが固定された出力軸9aを上に向け、外周面がガイド軸151a〜151dにガイドされた状態で、モータ受台151eに載置される。
【0042】
第二の支持部152は、従動側プーリ10bを支持するための支持部である。図4に示すように、従動側プーリ10bは、予めボールベアリング14が固定された状態で、第二の支持部152の先端に載置される。そして、この従動側プーリ10bと、モータ9の出力軸91に固定された駆動側プーリ10aとの間にプーリベルト10cが懸架される。
【0043】
また、ベース150上には、基板支持軸154が設けられている。この基板支持軸154の先端には、溝154aが形成されている。一方、四本のガイド軸151a〜151dのうちの一つガイド軸151dの先端部には、溝1510dが形成されている。この溝1510dは、その長手方向が基板支持軸154の溝154aと同一直線上に位置するように形成されている。図4に示すように、この溝154aおよび溝1510dには、上述した基板113が載置される。
【0044】
このようにしてモータ9等の各構成部材が組立治具15に仮組みされた状態で、組立治具15にキャップ状ケース21を被着する。このとき、キャップ状ケースのフランジ部21cに形成された三つの取付穴21dを、組立治具15上に設けられた三つの位置決め部153に係合させて被着する。
【0045】
このようにしてキャップ状ケース21を被着すると、キャップ状ケース21の仮保持部212に上記各構成部材が仮保持される。具体的には、モータ9およびモータ9に固定された駆動側プーリ10aは、モータ取付板90に形成された二つの仮保持孔91がキャップ状ケース21の内底面210に設けられた位置決め突起212bに係合されることにより仮保持される。また、従動側プーリ10bは、ボールベアリング14を介して、キャップ状ケース21の凹部211内に形成された環状突起212aに仮保持される。なお、組立治具15に仮組みされた基板113は、キャップ状ケース21の基板保持部212dに圧入され、保持される。
【0046】
なお、本実施形態では、キャップ状ケース21の開口21gを下にしても、各構成部材がキャップ状ケース21から重力によって脱落しないような状態(仮保持状態)になっている。したがって、各構成部材の仮保持状態が維持できるように、位置決め突起212bは、モータ取付板90の仮保持孔91に所定の強度で圧入される寸法に形成されている。また、環状突起212aは、従動側プーリ10bに固定されたボールベアリング14が所定の強度で圧入される寸法に形成されている。ただし、上記のように必ずしも各構成部材がキャップ状ケース21から重力によって脱落しないような状態になっている必要はない。少なくとも本発明にいう「仮保持」とは、プーリベルト10cが、駆動側プーリ10aおよび従動側プーリ10bに懸架された状態を保持することができる状態をいい、駆動側プーリ10aおよび従動側プーリ10bがキャップ状ケース21から重力によって脱落しないような状態になっている必要はない。
【0047】
各構成部材は、キャップ状ケース21の仮保持部212に仮保持された後、組立治具15は取り外され、本固定される。具体的には、図4に示すように、モータ取付板90に形成された二つの本固定孔92に対し、図5に示すように、ボルト99が挿通され、上述した雌ねじ部212cに螺合させて、モータ取付板90がキャップ状ケース21に本固定されることにより、モータ9およびモータ9に固定された駆動側プーリ10aが本固定される。一方、従動側プーリ10bは、駆動側プーリ10aとの間にプーリベルト10cが懸架された状態で、図1(b)に示すように、送りねじ6(の基端側)と、キャップ状ケース21の内底面210の間に挟んだ状態で、本体ケース22とキャップ状ケース21とがねじ固定されることによりキャップ状ケース21の内底面210に本固定される。このようにして、各構成部材は、キャップ状ケース21に本固定される。
【0048】
すなわち、連結軸4や、回転阻止軸80等が所定の位置に配設され、本体ケース22がキャップ状ケース21に被着され、その後、連結軸4の先端に出力部材3が固定されることにより、従動側プーリ10bは、キャップ状ケース21の内底面210に本固定される。
【0049】
このような本実施形態に係る組立方法は、一例であって適宜変更可能である。すなわち、上記組立方法においては、駆動側プーリ10aおよび従動側プーリ10b(各構成部材)が一端キャップ状ケース21に仮保持された後に、連結軸4等により本固定されるものであることを説明したが、必ずしも一旦キャップ状ケース21に仮保持される構成でなくともよい。具体的には、キャップ状ケース21を被着することにより、駆動側プーリ10aおよび従動側プーリ10bがキャップ状ケース21に固定される構成であってもよい。
【0050】
このような構成のモータ駆動装置1、モータ駆動装置1の組立方法、および組立治具15によれば、次のような効果が奏される。
【0051】
図5に示すように、本実施形態に係るモータ駆動装置1は、キャップ状ケース21の開口21g側に駆動側プーリ10aよりも径方向に大きいモータ9(本発明における大径部材に相当する。)が配設される構成である。そのため、直接キャップ状ケース21にモータ9および伝達機構10を組み付けようとすれば、モータ9によって駆動側プーリ10aが全く視認できないため、プーリベルト10cの懸架作業が難しく、著しく作業効率が低下する。しかし、本実施形態では、各構成部材が収納されるキャップ状ケース21の内底面210に、駆動側プーリ10aおよび従動側プーリ10bにプーリベルト10cが懸架された状態で、これらを仮保持することができる仮保持部212(環状突起212a、位置決め突起212b)が形成されている。そのため、組立治具15に予め各構成部材を組み付けておいてキャップ状ケース21を被着すれば、プーリベルト10cが懸架された状態で駆動側プーリ10aおよび従動側プーリ10bをキャップ状ケース21における内底面201側に仮保持させることができる。したがって、簡単に駆動側プーリ10aおよび従動側プーリ10bに対するプーリベルト10cの懸架作業を行うことができる。つまり、モータ9によって駆動側プーリ10aが隠れた状態であってもモータ駆動装置1の組立作業を効率よく行うことができる。
【0052】
また、仮保持部212である環状突起212aおよび位置決め突起212bは、単なる凸部であり、キャップ状ケース21と一体成形することも可能な形状であるため、モータ駆動装置1の製造コストが増加することもない。
【0053】
さらに、組立治具15には、上記各構成部材をキャップ状ケース21内における正規の位置に仮保持させるため、キャップ状ケース21の取付穴21dに係合する位置決め部153が設けられている。これにより、モータ駆動装置1の各構成部材がキャップ状ケース21内における正規の位置に配置されるようにキャップ状ケース21内を直接目視し、その方向が正しいかどうかを確認しながらキャップ状ケース21の被着作業を行うといった必要はなく、各構成部材とキャップ状ケース21との位置決めを容易に行うことができる。
【0054】
また、本実施形態では、仮保持部212を構成する環状突起212aおよび位置決め突起212bに対して上記各構成部材を挿着(圧入)させる方向は、キャップ状ケース21が組立治具15に被着される方向と同一である。したがって、キャップ状ケース21が組立治具15に被着されることによって自動的に各構成部材が仮保持部212に仮保持されるため、作業性に優れる。
【0055】
以下、図1を用いてモータ駆動装置1の動作について簡単に説明する。まず、モータ9に図示されない外部の駆動装置から所定の駆動信号が送られることで、モータ9が回転する。モータ9の回転は、伝達機構10を介して送りねじ6に伝達される。そして、共回り阻止機構8によって送りねじ6が回転した際、キャリッジ5の共回りが阻止されるため、送りねじ6の回転に基づいてキャリッジ5が送りねじ6の軸線L方向に直線移動する。キャリッジ5は、連結軸4を介して出力部材3と一体に固定されているので、キャリッジ5と出力部材3は一体になって可動体7として動作する。よって、キャリッジ5の直線移動に基づき、ケース2の外部において出力部材3が直線移動する。
【0056】
その間、モータ駆動装置1では、回転検出装置11および位置検出装置12からの出力に基づいて、送りねじ6の回転数およびキャリッジ5の位置が検出され、かかる検出結果に基づいて、出力部材3の位置を検出することができる。よって、モータ9の回転方向、回転速度、回転量を適宜制御することにより、出力部材3をストローク内の所望の位置に所望のタイミングで移動させることができる。また、送りねじ6の下死点および上死点付近では、キャリッジ5を低速で駆動し、その中間領域では、キャリッジ5を高速で駆動する等の制御を行うこともできる。
【0057】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0058】
例えば、モータ駆動装置1は、駆動側プーリ10aが大径部材であるモータ9によって隠れてしまう構成であったが、プーリベルト10cが懸架される駆動側プーリ10aまたは従動側プーリ10bの少なくともいずれか一方が大径部材によって隠れる構成であればよい。また、駆動側プーリ10aまたは従動側プーリ10bを覆うように配設される大径部材としては、モータ9に限られるものではない。例えば、モータ9の駆動源を伝達するためのギヤによって駆動側プーリ10aまたは従動側プーリ10bが隠れてしまう構成等が挙げられる。このように、キャップ状ケース21の開口21g側に配設される大径部材によって、駆動側プーリ10aおよび従動側プーリ10bに対するプーリベルト10cの懸架作業が阻害されてしまうような構成であれば、本発明の技術的思想は有効である。
【0059】
また、上記実施形態で説明した組立治具15の構成は適宜変更可能である。すなわち、モータ9(駆動側プーリ10a)、や従動側プーリ10bを所定の位置関係で仮組みすることができ、これらを仮組みした状態で容易にプーリベルト10cを懸架することができる構成であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態に係るモータ駆動装置の構成を説明するための図であり、図1(a)はモータ駆動装置の平面図、図1(b)はモータ駆動装置の縦断面図である。
【図2】キャップ状ケースの内底面の形状を説明するための外観斜視図である。
【図3】図1に示したモータ駆動装置を組み立てるために用いられる組立治具の外観斜視図である。
【図4】図3に示した組立治具にモータおよび伝達機構等を仮組みした状態を示した外観斜視図である。
【図5】キャップ状ケース内部の状態を説明するための概略図である。
【符号の説明】
【0061】
1 モータ駆動装置
21 キャップ状ケース
210 内底面
212 仮保持部
212a 環状突起
212b 位置決め突起
21g 開口
9 モータ
9a 出力軸
10a 駆動側プーリ
10b 従動側プーリ
10c プーリベルト
15 組立治具
151 第一の支持部
152 第二の支持部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底のキャップ状ケースの内底面側に、モータによって駆動される駆動側プーリと、該駆動側プーリの回転により駆動される従動側プーリと、前記駆動側プーリおよび前記従動側プーリとの間に懸架され、前記駆動側プーリの駆動力を前記従動側プーリに伝達するプーリベルトとが配設されたモータ駆動装置において、
前記駆動側プーリまたは前記従動側プーリを回転自在に支持し、前記駆動側プーリまたは前記従動側プーリより径方向に大きく形成された大径部材が前記キャップ状ケースの開口側に配設され、前記大径部材より前記キャップ状ケースの内底面側には、前記プーリベルトが懸架された状態で前記駆動側プーリおよび前記従動側プーリが仮保持される仮保持部が形成されていることを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項2】
前記仮保持部は、前記駆動側プーリまたは前記従動側プーリとが、前記キャップ状ケースの開口側から挿入される挿入方向の移動によって仮保持可能に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
モータの出力軸に固定された駆動側プーリと、該駆動側プーリの回転により回転駆動される従動側プーリとを組立治具に予め配置し、かつ前記駆動側プーリおよび前記従動側プーリ間にプーリベルトを懸架して仮組みしておき、
有底のキャップ状ケース内に、前記組立治具に仮組みされる各構成部材を挿嵌させ、前記駆動側プーリおよび前記従動側プーリ間にプーリベルトを懸架した状態で、前記駆動側プーリおよび前記従動側プーリを前記キャップ状ケース内に固定するようにしたことを特徴とするモータ駆動装置の組立方法。
【請求項4】
モータの出力軸に固定された駆動側プーリと、該駆動側プーリの回転により回転駆動される従動側プーリとを組立治具に予め配置し、かつ前記駆動側プーリおよび前記従動側プーリ間にプーリベルトを懸架して仮組みしておき、
前記駆動側プーリおよび前記従動側プーリを仮保持する仮保持部が内底面に設けられたキャップ状ケースを、前記組立治具に仮組みされる各構成部材上に被着することにより前記プーリベルトが懸架された状態で前記駆動側プーリおよび前記従動側プーリを前記仮保持部に仮保持させ、
しかる後、前記組立治具を前記各構成部材より取り外すようにしたことを特徴とするモータ駆動装置の組立方法。
【請求項5】
請求項4に記載のモータ駆動装置の組立方法において、前記組立治具を前記各構成部材より取り外した後、前記駆動側プーリおよび前記従動側プーリを前記内底面に固定するようにしたことを特徴とするモータ駆動装置の組立方法。
【請求項6】
モータの出力軸に固定された駆動側プーリと、該駆動側プーリの回転により回転駆動される従動側プーリとの間にプーリベルトが懸架された状態でキャップ状ケース内に挿入するに際してこれらの各構成部材を予め仮組みしておくものであって、前記駆動側プーリが固定された状態で前記モータを支持する第一の支持部と、前記従動側プーリを支持する第二の支持部を備えていることを特徴とするモータ駆動装置の組立治具。
【請求項7】
前記各構成部材を前記キャップ状ケース内における正規の位置に仮保持させるため前記キャップ状ケースとの位置決め部が設けられていることを特徴とする請求項6に記載のモータ駆動装置の組立治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−14210(P2010−14210A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175177(P2008−175177)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】