説明

モータ

【課題】成形不良及び作動時の異音や振動の発生を確実に防止することができるモータを提供する。
【解決手段】内周面に磁石を固着した筒状のヨークと、このヨークの開口端に固定されるカバー15と、このカバー15内に収納されるブラシホルダ30と、このブラシホルダ30に出没自在に保持されたブラシ35とを備えたモータにおいて、カバー15の内周面16cの相対向する位置にブラシホルダ30の周縁部31cを当接させる一対の当接部16d,16dを形成し、この各当接部16dの中央に凹部16eを形成すると共に、該凹部16eの中央にリブ16fを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、シートをスライドさせる駆動源としてのシートモータに用いて好適なモータに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のモータとして、図8〜図10に示すものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このモータ1は、図8〜図10に示すように、内周面に磁石を固着した金属製で筒状のヨーク2と、このヨーク2の開口端側のフランジ部2aにネジ3でフランジ部5aが締結固定され、給電用カプラ4を有した合成樹脂製のケース5と、このケース5内の一対の螺子取付座5b,5bに各リードステー6及び各板バネ7を介してネジ9で締結固定された一対のブラシ8,8とを備えている。この各リードステー6の一端6a側は給電用端子となっている。このことにより、合成樹脂製のケース5内に一対のブラシ8,8が配設されている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−51993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来のモータ1では、モータ1の回転時にブラシ8.8の作動音や振動等が合成樹脂製のケース5に伝わって、ケース5が振動や共振して異音を発生していた。また、合成樹脂製のケース5は成形時にひけやそり等を発生するおそれもあった。
【0006】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、成形不良及び作動時の異音の発生や振動の発生を確実に防止することができるモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、内周面に磁石を固着した筒状で金属製のヨークと、このヨークの開口端に固定される合成樹脂製のケースと、このケース内に収納されるブラシホルダと、このブラシホルダに出没自在に保持されたブラシとを備えたモータにおいて、前記ケースの内面に前記ブラシホルダの周縁部を当接させる当接部を突設し、この当接部に凹部を形成したことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1記載のモータであって、前記ケースの内面の相対向する位置に前記ブラシホルダの周縁部を当接させる一対の当接部を形成し、この各当接部の中央に前記凹部を形成すると共に、該凹部の中央にリブを形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、合成樹脂製のケースの内面にブラシホルダの周縁部を当接させる当接部を突設し、この当接部に凹部を形成したことにより、ブラシホルダとの共振点を異ならせたり、剛性を向上することで、モータの作動時の共振音等の異音の発生を防止することができる。さらに、この当接部は肉盗みとしての機能を有するため、ケースの成形時にひけや反りの発生を防止することができる。
【0010】
請求項2の発明によれば、ケースの内面の相対向する位置にブラシホルダの周縁部を当接させる一対の当接部を形成し、この各当接部の中央に前記凹部を形成すると共に、該凹部の中央にリブを形成したことにより、このリブにより凹部の剛性を保つことにより、各当接部の剛性をさらに向上させることができ、モータの作動時の共振音等の異音の発生を防止することができると共に、ケースの成形時にひけや反りの発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は本発明の一実施形態のモータを示す断面図、図2は同モータの分解斜視図、図3は同モータの要部の拡大分解斜視図、図4は同モータをカバー側から見た分解斜視図、図5は同モータの分解側面図、図6は同モータに用いられるカバーの背面図、図7は図6中X−X線に沿う断面図である。
【0013】
図1,図2,図4,図5に示すように、モータ10は、両端側が開口した金属製で円筒状のヨーク11と、このヨーク11の一端11a側の開口部11bに加締め固定される合成樹脂製のキャップ13と、ヨーク11の他端11c側の開口部11dに加締め固定される合成樹脂製で箱形のカバー(ケース)15と、これらヨーク11の他端(開口端)11cとカバー15との間に挾持固定される合成樹脂製のブラシホルダ30とを備えており、例えば、車両のシートをスライドさせるシートスライド機構の駆動源として用いられるものである。
【0014】
図1,図4に示すように、円筒状のヨーク11の内周面11eには、一対のマグネット(磁石)12,12が接着剤等を介して固着されている。また、キャップ13の中央には円形の貫通孔13aを形成してあり、その周りの円筒部13bの内側には軸受14を配設してある。さらに、カバー15の中央には円形の貫通孔15aを形成してあり、その周りの円筒部15bの内側には軸受19を嵌合してある。そして、この一対の軸受14,19には、両側出力軸タイプのアーマチュア軸20の両端20a,20bを回転自在に支持してある。また、このアーマチュア軸20の両端20a,20bの各端面の中央には角穴20cをそれぞれ形成してある。この各角穴20cには図示しないシートスライド機構の棒状のケーブル等が連結されるようになっている。
【0015】
また、図1,図4に示すように、アーマチュア軸20の一対のマグネット12,12に対向する位置には、アーマチュア21が取り付けられている。このアーマチュア21は、アーマチュア軸20に固定され、所定のスロット数のコイル巻回部22aを持つアーマチュアコア22と、このアーマチュアコア22のコイル巻回部22aに巻き回されたアーマチュアコイル23とで構成されている。さらに、アーマチュア軸20のヨーク11の他端11c側の開口部11dに対向する位置には、コンミュテータ24が固定されている。このコンミュテータ24は、アーマチュアコア22のコイル巻回部22aと同数のコンミュテータ片24aを備えている。この各コンミュテータ片24aとアーマチュアコイル23の一端23aとはコンミュテータ片24aに形成された爪24bによりヒュージングの方法で、電気的にそれぞれ接続されている。尚、図1に示すように、アーマチュア軸20の一端20aの軸受14とアーマチュアコア22のコイル巻回部22aとの間にはワッシャ25とカラースリーブ26を介在してある。また、アーマチュア軸20の他端20bの軸受19とストップリング27との間にはワッシャ28と円環状の弾性体29を介在してある。
【0016】
図1〜図5に示すように、ヨーク11の他端11cに加締めにより固定されるカバー15内には合成樹脂製で略円板状のブラシホルダ30が収納されるようになっている。このカバー15は、図1〜図7に示すように、ブラシホルダ30を収納する円筒部16と、この円筒部16の上部に一体突出形成され、給電用の相手カプラ40が嵌合される四角筒状のカプラ受け部17と、これら円筒部16とカプラ受け部17の底部を成す底壁部18とで箱形に形成されている。そして、カバー15の円筒部16の底壁部18の中央に円形の貫通孔15aを形成してある。また、カバー15の円筒部16の両外側には上下各一対の段差部16a,16bを形成してある。この上下各一対の段差部16a,16bには、ヨーク11の他端11cの両側に形成された上下各一対の加締め片部11g,11hが加締められて係止されるようになっている。これにより、カバー15はブラシホルダ30を収納・挾持してヨーク11の他端11cに固定されるようになっている。
【0017】
さらに、図2,図3,図6,図7に示すように、カバー15の円筒部16の内周面(内面)16cの相対向する位置にはブラシホルダ30の両側の周縁部31c,31cを当接させる一対の当接部16d,16dを一体突出形成してある。この各当接部16dの中央には凹部16eを形成してある。この凹部16eは、取り付けや位置決めのための穴部15cの背後から各当接部16dまで延びている。この凹部16eによって、穴部15cの背後から各当接部16dまでの間を厚肉にすることがなく、カバー15の成形時にひけ及び反り等の発生を防止することができるようになっている。これによって、図7に示すように、各当接部16dの背後は、凹部16eの内側と外側の二重の壁となる。そして、該凹部16eの中央にはリブ(梁部)16fを一体形成してある。
【0018】
図1〜図5に示すように、ブラシホルダ30は、一対のブラシ35,35を保持する略円板状のホルダ本体31と、このホルダ本体31の上部に一体突出形成され、一対のターミナル(給電用端子)36,36をカプラ受け部17内に配置する側面L字状の端子保持部32とを備えている。このブラシホルダ30のホルダ本体31の中央には円形の貫通孔31aを形成してある。このホルダ本体31の貫通孔31aの相対向する位置の左右両側には、箱状の一対のブラシ収納部31b,31bを形成してある。この各ブラシ収納部31b内にはブラシ35を出没自在に収納していて、該ブラシ35は図示しない捩りコイルバネ(付勢手段)によりコンミュテータ24のコンミュテータ片24aに接触するように押圧付勢されている。また、ブラシホルダ30のホルダ本体31の一対のブラシ収納部31b,31bの外側には舌片状で一対の周縁部31c,31cをそれぞれ一体突出形成してある。この一対の周縁部31c,31cはカバー15の円筒部16の内周面16cに形成された一対の当接部16d,16dに当接するようになっている。
【0019】
さらに、図1〜図5に示すように、ブラシホルダ30のホルダ本体31の下部には一対の突出片31d,31dを一体突出形成してある。この一対の突出片31d,31dはヨーク11の他端11c下側とカバー15の円筒部16の端部16gに挾持されるようになっていると共に、該一対の突出片31d,31dはカバー15の円筒部16の端部16gの突部16hに挾持されて位置決めされるようになっている。これにより、ホルダ本体31はヨーク11の他端11cとカバー15の円筒部16の端部16gとの間に挾持されて固定されるようになっている。さらに、ブラシホルダ30のホルダ本体31の上部にはサーキットブレーカ38を収納する筒部31eを一体突出形成してあると共に、その上部には平面台形状の突出片31fを一体突出形成してある。この突出片31fはヨーク11の他端11cの上側に形成された凹部11iに嵌合するようになっている。
【0020】
また、ブラシホルダ30の端子保持部32は、カプラ載置部32aと該カプラ載置部32aの後端より上方に垂直に突出した起立部32bとで側面L字形に形成してある。この端子保持部32のカプラ載置部32a上の両側には相手カプラ40をスライドさせる一対の突出部32c,32cを一体突出形成してある。また、端子保持部32の起立部32bには給電用の一対のターミナル36,36の各先端部36aが背後から貫通して延びるように配設してある。この端子保持部32の起立部32bに支持された各ターミナル36の中途部36bと基部36c及び基端部36dは、それぞれ折り曲げ形成されて該端子保持部32の起立部32bの背面(端面)32dとカプラ載置部32aの裏面及びホルダ本体31配設されている。そして、ターミナル36の中途部36bは、端子保持部32の起立部32bに直角方向に起立して配設され、その一部が端子保持部32の背面(端面)32dより露出している。このターミナル36,36のブラシホルダ30は、ターミナル36,36に嵌合したホルダ本体31に設けた突起31gを熱加締めすることで、ブラシホルダ30に固定されるようになっている。また、ターミナル36をブラシホルダ30に固定する際、インサート成形することでも可能である。そして、図1に示すように、各ターミナル36の端子保持部32の起立部32bの背面32dより外側に露出した中途部36bは、カバー15のカプラ受け部17の底壁部18の凸部18aに当接するようになっている。
【0021】
また、図4に示すように、各ターミナル36の基端部36dは、各ブラシ収納部31bまで延びており、図示しないピグテールワイヤを介して各ブラシ35に接続されている。これにより、各ターミナル36を介して各ブラシ35に電流が供給されるようになっていて、この電流がアーマチュア21等に流れてアーマチュア軸20が回転するようになっている。尚、一方のターミナル36はサーキットブレーカ38を介してブラシ35に接続してある。
【0022】
さらに、図1〜図5に示すように、端子保持部32の起立部32bの上部の中央には係止爪(係止部)33を一体突出形成してある。この係止爪33はカバー15のカプラ受け部17の矩形状の切欠孔(係合部)17aに係止されている。
【0023】
尚、図1,図2,図4に示すように、ヨーク11の一端11aには所定間隔毎に加締め片部11fを突出形成してある。この各加締め片部11fをキャップ13の各凹部13cに加締めることにより、ヨーク11の一端11aにキャップ13が固定されるようになっている。
【0024】
以上実施形態のモータ10によれば、カバー15の円筒部16及びカプラ受け部17内にブラシホルダ30のホルダ本体31及び端子保持部32を収納し、カバー15の円筒部16の両外側の上下各一対の段差部16a,16bにヨーク11の他端11cの両側に形成された上下各一対の加締め片部11g,11hを加締めて係止すると、ブラシホルダ30のホルダ本体31の下部の一対の突出片31d,31dがヨーク11の他端11cの下側とカバー15の円筒部16の端部16gとの間に挾持されると共に、ホルダ本体31の上部の突出片31fがヨーク11の他端11cの上側に形成された凹部11iに嵌合する。これにより、ブラシホルダ30のホルダ本体31はヨーク11の他端11cとカバー15の円筒部16の端部16gとの間に挾持されて固定される。この際、ブラシホルダ30のホルダ本体31の両側の一対の周縁部31c,31cがカバー15の円筒部16の内周面16cの一対の当接部16d,16dに当接すると共に、ターミナル36の端子保持部32の起立部32bの背面32dから外側に露出した中途部36bがカバー15のカプラ受け部17の底壁部18の凸部18aに当接する。
【0025】
このように、ブラシホルダ30のホルダ本体31をヨーク11の他端11cとカバー15の円筒部16の端部16gとの間に挾持固定したことにより、ブラシホルダ30をヨーク11に簡単に組み付けて固定することができる。
【0026】
また、カバー15の内周面16cにブラシホルダ30のホルダ本体31の周縁部31cを当接させる当接部16dを一体突出形成し、この当接部16dの中央に凹部16eを形成したことにより、ブラシホルダ30との共振点を異ならせたり、剛性を向上させることで、モータ10の作動時の共振音等の異音の発生を防止することができる。さらに、この当接部16dは肉盗みとしての機能を有するため、カバー15の成形時にひけや反りの発生を防止することができる。
【0027】
さらに、カバー15の内周面16cの相対向する位置にブラシホルダ30のホルダ本体31の一対の周縁部31c,31cを当接させる一対の当接部16d,16dを一体突出形成し、この各当接部16dの中央に凹部16eをそれぞれ形成すると共に、該凹部16eの中央に梁部としてのリブ16fを一体形成したことにより、このリブ16fにより凹部16eの剛性を保つことにより、各当接部16dの剛性をさらに向上させることができ、モータ10の作動時の共振音等の異音の発生を防止することができると共に、カバー15の成形時にひけや反りの発生を確実に防止することができる。
【0028】
尚、前記実施形態によれば、モータを車両のシートをスライドさせる駆動源としてのシートモータに適用した場合について説明したが、シートモータ以外の他のモータに前記実施形態を適用しても良いことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態のモータを示す断面図である。
【図2】上記モータの分解斜視図である。
【図3】上記モータの要部の拡大分解斜視図である。
【図4】上記モータをカバー側から見た分解斜視図である。
【図5】上記モータの分解側面図である。
【図6】上記モータに用いられるカバーの背面図である。
【図7】図6中X−X線に沿う断面図である。
【図8】従来のモータの側面図である。
【図9】上記従来のモータのブラシホルダの正面図である。
【図10】上記従来のブラシホルダの分解斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
10 モータ
11 ヨーク
11c 他端(開口端)
11e 内周面
12 磁石
15 カバー(ケース)
16c 内周面(内面)
16d,16d 一対の当接部
16e 凹部
16f リブ
30 ブラシホルダ
31c 周縁部
35 ブラシ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に磁石を固着した筒状で金属製のヨークと、このヨークの開口端に固定される合成樹脂製のケースと、このケース内に収納されるブラシホルダと、このブラシホルダに出没自在に保持されたブラシとを備えたモータにおいて、
前記ケースの内面に前記ブラシホルダの周縁部を当接させる当接部を突設し、この当接部に凹部を形成したことを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1記載のモータであって、
前記ケースの内面の相対向する位置に前記ブラシホルダの周縁部を当接させる一対の当接部を形成し、この各当接部の中央に前記凹部を形成すると共に、該凹部の中央にリブを形成したことを特徴とするモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−259516(P2007−259516A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−77036(P2006−77036)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】