説明

モータ

【課題】簡易な構成にてトルクリップルの低減を図ることが可能なモータを提供する。
【解決手段】マグネットを有する各磁極が周方向に等ピッチに設けられたロータに対して、センサマグネット17は、N極着磁部17cがなす角度θs1をS極着磁部17dがなす角度θs2よりも大きい角度に設定される。モータは、センサマグネット17の回転動作により生成される回転検出信号に基づいて、ロータの磁極の切り替わりタイミングに対してずれた回転磁界を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転検出センサを用いてステータに対する通電制御を行うモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブラシレスモータ等においては、例えば特許文献1に記載されているように、周方向に多極着磁されロータと一体回転するセンサマグネットと、該センサマグネットと対向配置される磁気センサ(例えば、ホール素子)とが備えられてロータの回転位置が検出され、ステータの巻線に対する通電制御が行われている。
【0003】
また、同ブラシレスモータにおいては、ロータの回転時の振動やそれに伴う騒音に繋がるトルクリップル(トルク脈動)の改善が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3945696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したトルクリップルは、該トルクリップルに含まれる各次成分を分散させることで低減されることが知られているが、そのようなトルクリップルを低減する構成を設けることでモータの構成が複雑化されてしまうという問題が生じる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、簡易な構成にてトルクリップルの低減を図ることが可能なモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、巻装された巻線に通電されることで回転磁界を発生させるステータと、前記ステータに対向して配置され前記回転磁界に基づいて回転動作するロータと、前記ロータと一体回転可能に設けられた被検出部材を有し、前記被検出部材の回転動作により生成される回転検出信号を出力する回転検出手段とを備え、前記回転検出信号に基づいて前記ステータに対して前記回転磁界の発生のための通電制御が行われるモータであって、前記ロータは、マグネットを有する磁極がロータコアの周方向に等ピッチで設けられるものに対し、前記回転検出手段の被検出部材は、前記回転検出信号の生成のための複数の被検出部が周方向に不等ピッチで設けられ、前記ロータとともに回転する前記被検出部材の各被検出部に応じた前記回転検出信号に基づいて、前記ロータの前記磁極の切り替わりタイミングに対してずれた回転磁界を前記ステータに発生させるようにしたことをその要旨とする。
【0008】
この発明では、マグネットを有する磁極が周方向に等ピッチで設けられるロータに対して、回転検出手段の被検出部材は、複数の被検出部が周方向に不等ピッチで設けられ、その被検出部材の回転動作により生成される回転検出信号に基づいてステータに回転磁界を発生させる。つまり、被検出部材の被検出部を不等ピッチとする構成によりロータの磁極の切り替わりタイミングに対してずれた回転検出信号が出力されることで、ステータの巻線への通電タイミングがロータの磁極の切り替わりタイミングに対してずれ、ステータとロータとの間に発生する磁気吸引力に不規則な部分が含まれる回転磁界が発生するようになる。結果、制御側で通電タイミングをずらすような演算が不要となって処理能力の高い制御手段を用いない簡易な構成であっても、トルクリップルに含まれる各次成分を分散でき、トルクリップルの低減を図ることが可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のモータにおいて、前記ステータの巻線は、複数相で構成され、前記回転検出手段は、前記巻線の各相に応じた回転検出信号を生成すべく複数の検出部が設けられ、前記各相の検出部のうち少なくとも一つは、各相に対応して配置される基準となる位置からずらして配置されたことをその要旨とする。
【0010】
この発明では、ステータの巻線は複数相で構成され、回転検出手段にはその巻線の各相に応じた回転検出信号を生成すべく複数の検出部が設けられる。そして、各相の検出部のうち少なくとも一つは、各相に対応して配置される基準となる位置からずらして配置される。つまり、ステータの巻線への通電タイミングをずらした相で全体的にロータの磁極の切り替わりタイミングに対してずれ、ステータとロータとの間に発生する磁気吸引力に一層不規則な部分が含まれる回転磁界を発生させることができる。これにより、一層のトルクリップルの低減を図ることが可能となる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のモータにおいて、前記被検出部材の被検出部は、周方向のなす角度が異なる第1被検出部及び第2被検出部を周方向に交互に配置して構成されたことをその要旨とする。
【0012】
この発明では、被検出部材の被検出部は、周方向のなす角度が異なる第1被検出部及び第2被検出部を周方向に交互に配置して構成される。これにより、第1及び第2被検出部にてステータの巻線への通電タイミングの1周期分(電気角360°)の設定を容易に行うことができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載のモータにおいて、前記ステータの巻線は、複数相で構成され、前記被検出部材の被検出部は、周方向のなす角度が異なる第1被検出部及び第2被検出部の組み合わせが少なくとも二組み設けられたことをその要旨とする。
【0014】
この発明では、ステータの巻線は複数相で構成され、被検出部材の被検出部には周方向のなす角度が異なる第1被検出部及び第2被検出部の組み合わせが少なくとも二組み設けられる。これにより、少なくとも二組の第1及び第2被検出部にてステータの各相の巻線に対して少なくとも2つの異なる通電タイミングの1周期分(電気角360°)の設定を容易に行うことができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載のモータにおいて、前記回転検出手段の被検出部材は、前記第1被検出部としてN極着磁部及び前記第2被検出部としてS極着磁部を有し各着磁部が周方向に交互に配置された環状のセンサマグネットで構成されたことをその要旨とする。
【0016】
この発明では、被検出部材は、第1被検出部をN極、第2被検出部をS極として着磁された各着磁部が周方向に交互に配置された環状のセンサマグネットで構成される。これにより、被検出部材を環状のセンサマグネットとして容易に構成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡易な構成にてトルクリップルの低減を図ることが可能なモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態におけるモータの概略構成図である。
【図2】同実施形態におけるロータ及びセンサマグネットの分解斜視図である。
【図3】センサマグネットの平面図である。
【図4】(a)〜(c)は電気角と各相センサの回転検出信号との関係を示す波形図である。
【図5】別例におけるセンサマグネットの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態のモータMは、インナロータ型のブラシレスモータであり、モータケース1の内部に、ステータ2及びロータ3を収容して構成されている。モータケース1は、有底円筒状のケース本体5と、該ケース本体5の開口部を閉塞する略円板状のカバープレート6とから構成されている。ケース本体5の内周面には、円環状のステータ2が固定され、該ステータ2のティース2aには、ロータ3を回転させる回転磁界を発生させるための巻線磁極10がインシュレータ(図示略)介して巻装されている。巻線磁極10は、U相・V相・W相の三相からなり、それぞれ所定のティース2aに巻装されている。
【0020】
ステータ2の内側には、回転軸11を備えるロータ3が配置されている。略円柱状に形成された回転軸11の基端部は、前記ケース本体5の底部中央に設けられた軸受12によって軸支される一方、該回転軸11の先端側の部位は、前記カバープレート6の径方向の中央部に設けられた軸受13によって軸支されている。また、回転軸11の先端部は、カバープレート6の径方向の中央部を貫通してモータケース1の外部に突出している。
【0021】
図1及び図2に示すように、回転軸11には、その軸方向の中央部よりも基端部寄りの部位に、磁性体よりなる略円柱状のロータコア14がステータ2と径方向に対向するように固定されている。ロータコア14の径方向の中央部には、該ロータコア14を軸方向に貫通する圧入孔14aが形成されている。そして、ロータコア14は、この圧入孔14aに回転軸11が圧入されることにより該回転軸11に対して一体回転可能に固定されている。また、ロータコア14には、軸方向に沿ってマグネット15,16が埋め込まれている。
【0022】
回転軸11の先端部分とロータコア14との間となる位置には、環状に形成され周方向に複数の磁極を有するセンサマグネット17が固定されている。センサマグネット17は、その軸方向の厚さが一定の板状をなすとともに、その外径がロータコア14の外径と等しく形成されている。センサマグネット17とロータコア14とは、軸方向において互いに離間した位置に固定されている。
【0023】
前記カバープレート6の内側面6aには、モータMを制御するための回路素子(図示略)が搭載された回路基板21が固定されている。回路基板21は、センサマグネット17におけるロータコア14と反対側の軸方向の端面17aと軸方向に対向している。そして、この回路基板21上には、センサマグネット17の外周側部分と軸方向に対向可能な位置に磁気センサ22が配置されている。磁気センサ22は、例えばホールICであり、前記巻線磁極10の各相(U相・V相・W相)に応じた回転検出信号を生成すべく、U相用のセンサ素子22u、V相用のセンサ素子22v及びW相用のセンサ素子22wの3つのセンサ素子から構成されている(図3参照)。また、回路基板21は、モータMの外部に設けられる駆動制御回路(図示略)に電気的に接続されている。
【0024】
図2に示すように、回転軸11の先端側に固定されたセンサマグネット17には、径方向の中央部に軸方向に円形状に貫通する固定孔17bが形成されている。該固定孔17bには、回転軸11の先端側の部位が嵌挿される。これにより、センサマグネット17は、マグネット15,16が埋め込まれたロータコア14と一体回転可能に回転軸11に対して固定されている。
【0025】
ロータコア14には、周方向に45°の等角度間隔(等ピッチ)となる8箇所に、ロータコア14を軸方向に貫通する断面長方形状の嵌合孔14bが形成されている。各嵌合孔14bには、その形状に沿って形成された略直方体形状のマグネット15,16が周方向に交互に埋め込まれて固定されている。マグネット15は、径方向外側の側面15a側がN極に着持されロータコア14にN極18を構成するとともに、マグネット16は、径方向外側の側面16a側がS極に着磁されロータコア14にS極19を構成している。従って、ロータコア14は、対向する磁極を有する磁極18,19が周方向交互に等ピッチに配置されている。尚、各マグネット15,16の径方向内側の側面15b,16b側は、径方向外側の側面15a,16aと逆の磁極となっている。
【0026】
図3に示すように、本実施形態のセンサマグネット17は、磁極境界線Ls1〜Ls3を径方向の直線として周方向(回転方向)にN極のN極着磁部17c及びS極のS極着磁部17dが交互に配置された環状のマグネットとして構成されている。両着磁部17c,17dは、径方向外側に向かってその周方向の幅が広がる扇形状をなし、ロータコア14の各磁極18,19との周方向の並びが1対1の対応関係となるようにそれぞれ8個形成されている。また、前記回路基板21上の各センサ素子22u,22v,22wは、センサマグネット17の両着磁部17c,17dと軸方向に対向した位置において周方向に所定間隔で配置されている。そして、本実施形態のモータMでは、ステータ2の巻線磁極10に発生される回転磁界がロータコア14の回転に伴って各磁極18,19が切り替わるタイミングに対してずれた回転磁界となるようにセンサマグネット17及び各センサ素子22u,22v,22wが構成されている。
【0027】
具体的に、センサマグネット17は、N極着磁部17cの反時計回り方向側の磁極境界線Ls1と、時計回り方向側の磁極境界線Ls2とがなす角度θs1が、S極着磁部17dの時計回り方向側の磁極境界線Ls3と、磁極境界線Ls2とがなす角度θs2よりも大きい角度に形成され、各着磁部17c,17dが不等ピッチにて配置されている。尚、センサマグネット17において、1個のN極着磁部17c及びS極着磁部17dの各角度θs1,θs2を合計すると電気角360°(θs1+θs2=360°)となる。
【0028】
また、各センサ素子22v,22wは、各相に対応して配置される基準となる位置から周方向に所定角度ずらして配置されている。ここで、三相で構成された巻線磁極10に対応してセンサ素子22u,22v,22wを配置する位置としては、センサマグネット17の回転に伴って電気角120°の位相差を有する回転検出信号が得られるように、任意のセンサ素子に対して他の2つのセンサ素子が周方向のなす角度(電気角)をそれぞれ120°又は240°のとした位置が基準となる。
【0029】
これに対して本実施形態では、センサ素子22vは、センサ素子22uと周方向のなす角度が電気角120°(本実施形態では機械角30°)となる位置から角度θvの位相差を設けた位置(時計回り方向側に移動した位置)に配置されている。また、センサ素子22wは、センサ素子22uと周方向のなす角度が電気角240°(本実施形態では機械角60°)となる位置から角度θwの位相差を設けた位置(時計回り方向側に移動した位置)に配置されている。更に本実施形態では、センサ素子22vのずらし角度θvと、センサ素子22wのずらし角度θwとが異なる角度に設定されている(θv<θw)。尚、各センサ素子22u,22v,22wは、センサマグネット17の径方向に対する距離が等しい位置に配置されている。
【0030】
図4に、グラフの横軸を電気角(360°)とし、(a)〜(c)の各グラフの縦軸をセンサ素子22u(センサU),センサ素子22v(センサV),センサ素子22w(センサW)から出力される回転検出信号Ku,Kv,Kwとした場合の各関係をグラフに示す。
【0031】
各センサ素子22u,22v,22wにて生成される回転検出信号Ku,Kv,Kwは、N極着磁部17cを検出するとHレベル、S極着磁部17dを検出するとLレベルとなる信号である。N極着磁部17c及びS極着磁部17dの角度θs1,θs2(θs1>θs2)が異なるセンサマグネット17では、各センサ素子22u,22v,22wから出力される回転検出信号Ku,Kv,Kwが、1周期分の電気角360°においてHレベルとなる期間(図中のθs1)がLレベルとなる期間(図中のθs2)に比べて長い期間となる。一方、ロータ3の磁界が変化する(磁極極18,19が切り替わる)タイミングは電気角180°間隔であり、基準位置に配置されるセンサ素子22uにおいては、ロータ3の磁極がN極18からS極19に切り替わるタイミング(電気角180°の位置)に比べて、回転検出信号KuがHレベルからLレベルに立ち下がるタイミングが角度θaの位相差だけ遅れることとなる。
【0032】
次に、センサ素子22v,22wは、各センサ素子22v,22wがV相及びW相に対応して配置される基準となる位置から角度θv,θwの位相差を設けた位置に配置されている。このような配置のセンサ素子22u,22v,22wでは、センサマグネット17の回転に伴ってセンサ素子22vから出力される回転検出信号Kvは全体的にずれることとなり、電気角120°に対して角度θvの位相差だけ遅れて立ち上がることとなる。また、センサ素子22wから出力される回転検出信号Kwにおいても全体的にずれることとなり、電気角240°に対して角度θwの位相差だけ遅れて立ち上がることとなる。この場合、θv<θwの関係から、回転検出信号Kwの方がより遅く立ち上がる。
【0033】
上記したモータMでは、ステータ2の巻線磁極10に電源が供給されると、該巻線磁極10にて発生される回転磁界に基づいてロータ3が回転される。そして、ロータ3の回転に伴ってセンサマグネット17も回転動作を行う。センサマグネット17と軸方向に対向する各センサ素子22u,22v,22wは、該センサマグネット17の回転動作よって両着磁部17c,17dが交互に変化する磁界を検出し、検出した磁界の変化に応じたパルス信号である回転検出信号Ku,Kv,Kwを前記駆動制御回路にそれぞれ出力する。駆動制御回路は、この回転検出信号Ku,Kv,Kwの立ち上がり及び立ち下がりエッジを通電タイミングとし各相の巻線磁極10に対する電源の供給を行う。
【0034】
次に、本実施形態の作用について説明する。
本実施形態のモータMでは、センサマグネット17のN極着磁部17cがなす角度θs1は、S極着磁部17dがなす角度θs2よりも大きい角度に設定されている。従って、各センサ素子22u,22v,22wから出力される回転検出信号Ku,Kv,Kw(図4参照)は、Hレベルとなる期間がLレベルとなる期間に比べて長い期間となる。そして、モータMは、各回転検出信号Ku,Kv,Kwの変化(エッジ)をステータ2に電源を供給する通電タイミングとして用いているため、ステータ2の巻線磁極10への通電タイミングがロータ3の磁極のN極18からS極19への切り替わりタイミングに対して角度θaの位相差が生じる。
【0035】
ここで、本実施形態のロータ3のように、マグネット15を有する各磁極18,19がロータコア14の周方向に等ピッチに設けられたロータ構成では、ロータ3の回転に伴うコギングトルクが各磁極18,19の切り替わりタイミングにおいて同一周期及び振幅で生じ得るような規則的な発生態様となる。これに対応し、処理能力の高いマイコン等の制御手段を用い、ステータ2とロータ3との間に発生する磁気吸引力に不規則な部分が含まれるような回転磁界を発生させる通電制御(演算)を行うようにすることで、トルクリップルに含まれる各次成分を分散させて低減することが考えられるが、そのような制御手段を設けることは高コスト化を招く。そのため、本実施形態のモータMでは、ステータ2への通電タイミングを各磁極18,19の切り替わるタイミングに対して角度θaのずれが生じるようなセンサマグネット17のN極着磁部17c及びS極着磁部17dの角度設定としたことで、上記したようなステータ2とロータ3との間の磁気吸引力に不規則な部分が含まれる回転磁界を発生させることができる。
【0036】
また、本実施形態の磁気センサ22は、センサ素子22v,22wが角度θv,θwの位相差を設けた位置にずらして配置され、センサ素子22vから出力される回転検出信号Kvは、電気角120°に対して角度θvの位相差だけ遅れて立ち上がり、センサ素子22wから出力される回転検出信号Kwは、電気角240°に対して角度θwの位相差だけ遅れて立ち上がり、これらの相の信号全体がずれることとなる。これにより、上記した磁気吸引力に一層不規則な部分が含まれるような回転磁界を発生させることができる。
【0037】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)本実施形態では、マグネット15,16を有する磁極18,19がロータコア14の周方向に等ピッチで設けられたロータ3に対して、センサマグネット17は、N極着磁部17cがなす角度θs1をS極着磁部17dがなす角度θs2よりも大きい角度に設定して各着磁部17c,17dが周方向に不等ピッチで設けられている。そのセンサマグネット17の回転動作により各センサ素子22u,22v,22wから生成される回転検出信号Ku,Kv,Kwは、Hレベルとなる期間がLレベルとなる期間に比べて長い期間となるため、ステータ2に対する通電制御において、その回転検出信号Ku,Kv,Kwの変化(エッジ)をステータ2への通電タイミングとして用いていることで、ステータ2の巻線磁極10への通電タイミングがロータ3の磁極のN極18からS極19への切り替わりタイミングに対して角度θaの位相差が生じる。つまり、センサマグネット17の各着磁部17c,17dを不等ピッチとする構成によりロータ3の磁極18,19の切り替わりタイミングに対してずれた回転検出信号Ku,Kv,Kwが出力されることで、ステータ2の巻線磁極10への通電タイミングがロータ3の磁極18,19の切り替わりタイミングに対してずれ、ステータ2とロータ3との間に発生する磁気吸引力に不規則な部分が含まれる回転磁界を発生させることができる。結果、制御側で通電タイミングをずらすような演算が不要となって処理能力の高い制御手段を用いない簡易な構成であっても、トルクリップルに含まれる各次成分を分散でき、トルクリップルの低減を図ることが可能となる。
【0038】
(2)本実施形態のモータMは、巻線磁極10の各相(U相・V相・W相)に応じた回転検出信号Ku,Kv,Kwを生成すべく三つのセンサ素子22u,22v,22wが設けられるとともに、センサ素子22v,22wがV相及びW相に対応して配置される基準となる位置から角度θv,θwの位相差を設けた位置にずらして配置されている。つまり、ステータ2の巻線磁極10への通電タイミングをずらした相(V相・W相)で全体的にロータ3の磁極18,19の切り替わりタイミングに対してずれ、ステータ2とロータ3との間に発生する磁気吸引力に一層不規則な部分が含まれる回転磁界を発生させることができる。これにより、一層のトルクリップルの低減を図ることが可能となる。
【0039】
(3)センサマグネット17は、周方向になす角度θs1,θs2が異なる各着磁部17c,17dを周方向に交互に配置して構成されている。これにより、各着磁部17c,17dにてステータ2の巻線磁極10への通電タイミングの1周期分(電気角360°)の設定を容易に行うことができる。
【0040】
(4)ロータ3の回転位置の検出に用いる被検出部材として、N極のN極着磁部17cと、S極のS極着磁部17dが周方向(回転方向)に交互に配置された環状のセンサマグネット17が用いられて構成されている。これにより、被検出部材を、周方向に磁極を着磁させた環状のセンサマグネット17として容易に構成することができる。
【0041】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、センサマグネット17の両着磁部17c,17dは、径方向の直線を磁極境界線Ls1〜Ls3として構成されていたが、図5に示すように、磁極境界線Ls1〜Ls3を径方向の直線に対して所定の角度を以て傾斜させた直線としてもよい。この場合、センサマグネット17は、両着磁部17c,17dの回転軸11の軸方向から見た面積が同一面積となるように構成される。これにより、センサマグネット17の検出部分においての各着磁部17c,17dの周方向長さが異なるようにしても、各着磁部17c,17dの面積としては同一であるため、各着磁部17c,17dの磁気量の均一化を図ることができる。つまり、各着磁部17c,17d間の磁極境界線Ls1〜Ls3がより適切となるため、各回転検出信号Ku,Kv,Kwに含まれる誤差を一層小さくすることができる。因みに、両着磁部17c,17dは回転対称形状とし、両回転方向に対応可能としている。
【0042】
また、同図5のセンサマグネット17では、各磁極境界線Ls1〜Ls3が傾斜していることから、各センサ素子22u,22v,22wの径方向の位置をずらすことでも、ステータ2への通電を開始する通電タイミングを変更することができる。
【0043】
・上記実施形態では、センサマグネット17は、周方向のなす角度θs1,θs2が異なる各着磁部17c,17dを周方向に交互に配置して構成されていたが、これに限定されない。例えば、センサマグネット17の両着磁部17c,17dは、周方向のなす角度が異なる各着磁部17c,17dの組み合わせが少なくとも二組み設けられた構成に変更してもよい。これにより、各着磁部17c,17dにて各相の巻線磁極10に対して少なくとも2つの異なる通電タイミングの1周期分(360°)の設定を容易に行うことができ、様々な通電タイミングを用いた一層のトルクリップルの低減が可能な制御を行うことができる。また、センサマグネット17の各着磁部17c,17dの周方向のなす角度がすべて異なる構成に変更してもよい。
【0044】
・上記実施形態では、センサマグネット17の各着磁部17c,17dと磁気センサ22の各センサ素子22u,22v,22wの両方が不等ピッチにて配置された構成としたが、どちらか一方のみを不等ピッチとする構成に変更してもよい。また、複数のセンサ素子22u,22v,22wのうち2つを基準位置からずらしたが、例えば1つをずらしてもよい。
【0045】
・上記実施形態において、回転検出手段としてのセンサマグネット17や磁気センサ22(各センサ素子22u,22v,22w)の構成・設定等は一例であり、例えば、N極着磁部17cがなす角度θs1をS極着磁部17dがなす角度θs2よりも小さい角度に設定してもよい。
【0046】
・上記実施形態において、巻線磁極10の相数は一例であり、単相やその他複数相の構成に変更してもよい。また、センサ素子22u,22v,22wの数を巻線磁極10の相数と異なる数で構成してもよい。
【0047】
・上記実施形態では、ロータ3の回転位置の検出に用いる被検出部材としてセンサマグネット17を用いたが、これに限定されない。例えば、突極(非着磁)を被検出部として周方向に複数有する磁性体等に変更してもよい。
【0048】
・上記実施形態では、センサマグネット17とロータ3との各磁極の角度及び磁極数は一例であり、適宜変更してもよい。また、センサマグネット17とロータ3のとの各磁極の対応関係を1対1としたが、1対多(多対1)としてもよい。
【0049】
・上記実施形態において、ロータ3は、ロータコア14にマグネット15,16を埋め込む、所謂IPM型に構成されたが、これに限定されず、例えばロータコア14の外周面の表面にマグネット15,16を配置した、所謂SPM型のロータ構成に変更してもよい。
【符号の説明】
【0050】
2…ステータ、3…ロータ、10…巻線磁極(巻線)、14…ロータコア、15,16…マグネット、17…センサマグネット(被検出部材、回転検出手段)、17c…N着磁部(第1被検出部、被検出部、回転検出手段)、17d…S着磁部(第2被検出部、被検出部、回転検出手段)、18…N磁極(磁極)、19…S磁極(磁極)、22…磁気センサ(検出部、回転検出手段)、22u,22v,22w…センサ素子(検出部、回転検出手段)、M…モータ、Ku,Kv,Kw…回転検出信号、θs1,θs2…角度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻装された巻線に通電されることで回転磁界を発生させるステータと、
前記ステータに対向して配置され前記回転磁界に基づいて回転動作するロータと、
前記ロータと一体回転可能に設けられた被検出部材を有し、前記被検出部材の回転動作により生成される回転検出信号を出力する回転検出手段とを備え、
前記回転検出信号に基づいて前記ステータに対して前記回転磁界の発生のための通電制御が行われるモータであって、
前記ロータは、マグネットを有する磁極がロータコアの周方向に等ピッチで設けられるものに対し、前記回転検出手段の被検出部材は、前記回転検出信号の生成のための複数の被検出部が周方向に不等ピッチで設けられ、
前記ロータとともに回転する前記被検出部材の各被検出部に応じた前記回転検出信号に基づいて、前記ロータの前記磁極の切り替わりタイミングに対してずれた回転磁界を前記ステータに発生させるようにしたことを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のモータにおいて、
前記ステータの巻線は、複数相で構成され、
前記回転検出手段は、前記巻線の各相に応じた回転検出信号を生成すべく複数の検出部が設けられ、
前記各相の検出部のうち少なくとも一つは、各相に対応して配置される基準となる位置からずらして配置されたことを特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のモータにおいて、
前記被検出部材の被検出部は、周方向のなす角度が異なる第1被検出部及び第2被検出部を周方向に交互に配置して構成されたことを特徴とするモータ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のモータにおいて、
前記ステータの巻線は、複数相で構成され、
前記被検出部材の被検出部は、周方向のなす角度が異なる第1被検出部及び第2被検出部の組み合わせが少なくとも二組み設けられたことを特徴とするモータ。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のモータにおいて、
前記回転検出手段の被検出部材は、前記第1被検出部としてN極着磁部及び前記第2被検出部としてS極着磁部を有し各着磁部が周方向に交互に配置された環状のセンサマグネットで構成されたことを特徴とするモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−205399(P2012−205399A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67926(P2011−67926)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】