説明

モータ

【課題】ウォーム軸の暴れによる異音の発生を抑制することができるモータを提供する。
【解決手段】ジョイント16は、回転軸8に一体回転可能に設けられ、該ジョイント16には、ウォーム軸15に設けられた連結凸部15aが周方向及び径方向のクリアランスC1,C2を有する状態で挿入された連結孔28が形成される。そして、連結孔28と連結凸部15aとの間の周方向のクリアランスC1及び径方向のクリアランスC2にはそれぞれ、周方向緩衝部31及び径方向緩衝部32が介在され、連結孔28と連結凸部15aとは、回転軸8及びジョイント16の回転状態において、周方向緩衝部31を周方向に圧縮変形させつつ、周方向に互いに当接可能に構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォーム軸とウォームホイールとからなる減速機構付のモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のモータでは、ウォーム軸がモータ本体の回転軸(駆動軸)と一体回転可能に同軸で連結されている。例えば、特許文献1のモータでは、回転軸とウォーム軸はともに金属材料からなり、ウォーム軸の軸方向端部に形成された連結部には連結孔が形成され、その連結孔には、回転軸の先端の連結凸部が差し込まれて直接的に連結されている。
【0003】
ところで、上記のようなモータにおいて、例えば、回転軸及び減速機構が正回転で駆動されている状態から、出力側からの負荷により停止状態(ロック状態)となったとき、ウォーム軸の歯部(ウォーム部)とウォームホイールの歯部とが噛み込んだ状態となることがある。この状態から反対に回転軸及び減速機構を逆回転で駆動させる場合、ウォーム軸を回転させるためのトルクだけでなく前記の噛み込み状態を解くための回転軸のトルクも必要となる。
【0004】
これを解決する構成として、ウォーム軸の連結孔と回転軸の連結凸部との間に周方向及び径方向のクリアランスを設けることが考えられる。このようにクリアランスを設けると、前記の噛み込み状態からの回転軸の逆転起動時(回転軸の逆回転し始め)において回転軸の空転期間ができ、この期間で回転軸の慣性力(回転の勢い)を得ることができる。そして、回転軸はクリアランスにより空転した後、ウォーム軸の連結孔の内面に慣性力をもって勢いよく当接し、それにより、ウォーム軸とウォームホイールとの噛み込みが好適に外れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−11077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のモータでは、ウォーム軸の連結孔と回転軸の連結凸部との間に周方向及び径方向のクリアランスが設けられているため、例えば回転駆動時にウォーム軸が軸ずれ等によって周方向及び径方向に暴れる虞がある。そして、ウォーム軸が暴れてしまうと、連結孔の内周面と連結凸部とが衝突し、これにより異音が発生してしまう虞があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、ウォーム軸の暴れによる異音の発生を抑制することができるモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、回転軸を有するモータ本体と、連結部にて前記回転軸と一体回転可能に連結されたウォーム軸及び該ウォーム軸と噛合するウォームホイールからなる減速機構とを備え、前記連結部は、前記回転軸及び前記ウォーム軸のいずれか一方に一体回転可能に設けられ、該連結部には、前記回転軸及び前記ウォーム軸のいずれか他方に設けられた連結凸部が周方向及び径方向にクリアランスを有する状態で挿入された連結孔が形成されたモータであって、前記連結孔と前記連結凸部との間の周方向の前記クリアランス及び径方向の前記クリアランスにはそれぞれ、周方向緩衝部及び径方向緩衝部が介在され、前記連結孔と前記連結凸部とは、前記モータ本体の駆動による前記回転軸の回転状態において、前記周方向緩衝部を周方向に圧縮変形させつつ、周方向に互いに当接可能に構成されていることを特徴とする。
【0009】
この発明では、連結孔と連結凸部との間の周方向のクリアランス及び径方向のクリアランスにそれぞれ、周方向緩衝部及び径方向緩衝部が介在されるため、回転駆動時等におけるウォーム軸の暴れを抑制することができ、その結果、連結孔の内周面と連結凸部との衝突による異音の発生を抑制することができる。また、ウォーム軸とウォームホイールの噛み込み状態からの回転軸の逆転起動時(回転軸の逆回転し始め)において、回転軸は、連結孔と連結凸部との間の周方向緩衝部を圧縮変形させつつ回転し、その間に回転軸の慣性力(回転の勢い)を得ることができる。その後、周方向緩衝部の圧縮状態で連結孔と連結凸部とが回転軸の慣性力を得た状態で周方向に当接し、それにより、ウォーム軸とウォームホイールとの噛み込みを外すことが可能となる。このように、この発明では、連結凸部と連結孔との間のクリアランスによって回転軸の慣性力を得つつも、周方向緩衝部及び径方向緩衝部によってウォーム軸の暴れを抑制することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のモータにおいて、前記回転軸及び前記ウォーム軸は、金属材料よりなり、前記連結部は、前記回転軸及び前記ウォーム軸とは別部材で構成された樹脂部材であることを特徴とする。
【0011】
この発明では、連結部が金属製の回転軸及びウォーム軸とは別部材で構成された樹脂部材であるため、ウォーム軸又は回転軸に設けられた連結凸部が挿入される連結孔も樹脂で構成される。これにより、モータ本体の駆動による回転軸の回転時において、連結孔と連結凸部とが周方向に当接する際の衝突音を抑えることができ、その結果、異音の発生をより抑えることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のモータにおいて、前記周方向緩衝部及び前記径方向緩衝部は、前記連結部に設けられていることを特徴とする。
この発明では、周方向緩衝部及び径方向緩衝部が、回転軸及びウォーム軸とは別体であり且つ樹脂部材である連結部に設けられるため、周方向緩衝部及び径方向緩衝部を容易に形成することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のモータにおいて、前記周方向緩衝部及び前記径方向緩衝部は、ゴムよりなることを特徴とする。
この発明では、周方向緩衝部及び径方向緩衝部がゴムよりなるため、ウォーム軸の暴れを好適に抑制することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のモータにおいて、前記連結凸部と前記連結孔の軸方向の底面との間には、軸方向緩衝部が介在されていることを特徴とする。
【0015】
この発明では、減速機構のウォーム軸とウォームホイールの特性上、ウォーム軸の反転の際に軸方向の荷重が発生するが、その荷重によって懸念される連結凸部と連結孔の軸方向の底面との衝突やウォーム軸と回転軸との軸方向の衝突を軸方向緩衝部によって抑制することができ、その結果、それらの衝突による異音の発生を抑制することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のモータにおいて、前記回転軸及び前記ウォーム軸は、金属材料よりなり、前記連結部は、前記回転軸及び前記ウォーム軸とは別部材で構成された樹脂部材であり、前記軸方向緩衝部は、前記連結部に設けられていることを特徴とする。
【0017】
この発明では、回転軸及びウォーム軸とは別体であり且つ樹脂部材である連結部に軸方向緩衝部が設けられるため、軸方向緩衝部を容易に形成することができる。
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載のモータにおいて、前記軸方向緩衝部は、ゴムよりなることを特徴とする。
【0018】
この発明では、軸方向緩衝部がゴムよりなるため、連結凸部と連結孔の軸方向の底面との衝突やウォーム軸と回転軸との軸方向の衝突を好適に抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
従って、上記記載の発明によれば、ウォーム軸の暴れによる異音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】モータの断面図。
【図2】(a)ジョイントをウォーム軸側から見た平面図、(b)ジョイントの断面図。
【図3】モータの作用を説明するための平面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示す本実施形態のモータ1は、例えば車両の搭載されたワイパ装置(図示せず)の駆動源として用いられ、モータ本体2と、モータ本体2の回転出力を減速し、高トルクにしてワイパ装置に伝達する減速部3とで構成されている。
【0022】
モータ本体2のヨークハウジング4(以下、ヨーク4)は、導電性の金属材料よりなり、有底筒状に形成されている。ヨーク4の開口部4aにはフランジ4bが形成され、そのフランジ4bは、減速部3のギヤハウジング6の固定部6aとボルトBにて連結固定されている。
【0023】
ヨーク4の開口部4aには、合成樹脂等の絶縁材料よりなるブラシホルダ5が同開口部4aを閉塞するように組み付けられている。ブラシホルダ5は、ヨーク4とギヤハウジング6がボルトBにて連結固定される際、ヨーク4のフランジ4bとギヤハウジング6の固定部6aとで挟持固定されるようになっている。
【0024】
ヨーク4の内側面には、複数のマグネットMGが相対向するように配置固定されている。相対向するマグネットMGの内側には、アーマチャ(回転子)7が回転可能に収容されている。ヨーク4の内底部にはアーマチャ7に固着された回転軸8の基端部を回転可能に支持する軸受9aが設けられている。また、ブラシホルダ5の中央位置には、ギヤハウジング6内に突出する回転軸8の先端部を回転可能に支持する軸受9bが取着されている。
【0025】
ブラシホルダ5は、給電用の一対のブラシ5aを保持している。各ブラシ5aは、アーマチャ7に設けたコンミテータ7aのセグメントSGと摺接して、該セグメントSGに電流を供給するようになっている。また、ブラシホルダ5は、図示しない外部コネクタと接続可能なコネクタ部5bを有し、そのコネクタ部5bに設けられたターミナル5cを介して前記外部コネクタからの電流がブラシ5aに供給されるようになっている。
【0026】
減速部3は、ギヤハウジング6と、該ギヤハウジング6内に収容された減速機構11とを有する。ギヤハウジング6において、ヨーク4と固定された前記固定部6aには、ジョイント収容部12がヨーク4側に開口するように形成されている。また、ギヤハウジング6には、ジョイント収容部12から回転軸8の軸線L1方向に沿ってヨーク4と反対方向に延びるウォーム軸収容部13と、ウォーム軸収容部13の側方(図1において右側方)に形成されたウォームホイール収容部14とを有する。
【0027】
ジョイント収容部12の内部には、ブラシホルダ5を貫通する回転軸8の先端部8aが入り込むとともに、その回転軸8の先端部8aとウォーム軸収容部13に収容されたウォーム軸15とを連結するジョイント16が収容されている。
【0028】
ウォーム軸15は、回転軸8と同軸上に配置されるとともに、ジョイント16と接続された基端部(図1において上端部であり、後述する連結凸部15a)付近でギヤハウジング6に設けられた軸受17aにより軸支されている。また、ウォーム軸15の先端部は、ウォーム軸収容部13に設けられた軸受17bに軸支されており、ウォーム軸15の軸方向中間部(軸受17a,17b間の部位)には、螺子歯状のウォーム部15bが形成されている。尚、ウォーム軸収容部13の軸方向底部には、ウォーム軸15のスラスト荷重を受けるためのスラスト受けプレート17cが設けられている。
【0029】
ウォーム軸収容部13の内部空間は、ウォームホイール収容部14の内部空間と繋がっている。ウォームホイール収容部14の内部には、ウォーム部15bと噛合する円板状のウォームホイール18が回転可能に収容されている。ウォームホイール18の回転軸線は、ウォーム軸15の軸直交方向(図1において紙面直交方向)と平行であり、このウォームホイール18とウォーム軸15とによって前記減速機構11が構成されている。ウォームホイール18の径方向の中央部には、ウォームホイール18の軸方向に沿って延びる出力軸19が同ウォームホイール18と一体回転可能に設けられている。出力軸19の先端部は、前記ワイパ装置と連結されるようになっている。
【0030】
[ジョイントの構成]
ここで、モータ本体2の回転軸8と減速部3のウォーム軸15とを連結する前記ジョイント16について図2(a)(b)に従って説明する。図2(b)に示すように、ジョイント16は、回転軸8の先端部8aに一体回転可能に固定された樹脂部20と、その樹脂部20に二色成形にて一体形成された第1ゴム部材21(軸方向緩衝部)及び第2ゴム部材22a,22bとを有している。
【0031】
樹脂部20は、回転軸8の先端部8aに固定された略円筒状の固定部23を有している。回転軸8の先端部8aは二面幅形状をなし、固定部23の中央部に軸方向に貫通形成された圧入孔24に圧入固定されている。
【0032】
固定部23における圧入孔24の周囲(径方向外側)には、周方向180°間隔に一対のゴム収容孔25が形成されており、各ゴム収容孔25内に第1ゴム部材21が形成されている。各第1ゴム部材21のウォーム軸15側の端部は、固定部23のウォーム軸側端面23aから軸方向に突出する突出部21aとなっている。尚、各第1ゴム部材21の軸方向両端部付近にはそれぞれ、ゴム収容孔25と軸方向に係合して軸方向の抜けを防止する段差部21bが形成されている。
【0033】
固定部23のウォーム軸15側には、該固定部23よりも大径の略円筒状をなすウォーム軸側連結部26が一体形成されている。ウォーム軸側連結部26の軸方向端部(モータ本体2側の端部)には、フランジ部27が形成されている。
【0034】
図2(a)に示すように、ウォーム軸側連結部26の中央部には連結孔28が形成されており、その連結孔28には、ウォーム軸15の基端部に形成された連結凸部15aが挿入されている。ウォーム軸15の連結凸部15aは、軸線L1に沿った互いに平行な一対の平面15x,15yからなる二面幅形状をなし、軸線L1に対して点対称となるように形成されている。一方、ウォーム軸側連結部26の連結孔28は、軸方向視で連結凸部15aの形状に対応する扁平形状をなし、軸線L1に対して点対称となるように形成されている。そして、連結孔28と連結凸部15aとの間には、連結孔28と平面15x,15yとの周方向のクリアランスC1と、連結孔28と連結凸部15aの長手方向両端部との間の径方向のクリアランスC2とが設定されている。
【0035】
ウォーム軸側連結部26には、一対の第2ゴム部材22a,22bが二色成形によって埋設されている。各第2ゴム部材22a,22bは、周方向緩衝部31と、径方向緩衝部32と、それらを連結する連結部33とからなり、軸線L1に対して互いに点対称となるように構成されている。
【0036】
各第2ゴム部材22a,22bの周方向緩衝部31は、連結孔28の内周面に径方向外側に窪むように形成された凹部28aに設けられ、周方向緩衝部31の一部が凹部28aから周方向に突出している。この一対の第2ゴム部材22a,22bの周方向緩衝部31は、ウォーム軸15の軸線(軸線L1)に対して点対称となるそれぞれ2カ所で連結凸部15aの平面15x,15yと当接している。
【0037】
第2ゴム部材22a,22bの径方向緩衝部32は、連結孔28の内周面から径方向内側に突出するとともに、連結凸部15aの長手方向両端部とそれぞれ当接している。尚、径方向緩衝部32において、連結凸部15aと当接する当接面32aは、径方向内側に向かって凸となる円弧状をなしている。以上のように、ウォーム軸15の連結凸部15aは、軸直交方向において、各第2ゴム部材22a,22bの周方向緩衝部31及び径方向緩衝部32によって4方向(連結凸部15aの長手方向両側及び短手方向両側)から保持されている。
【0038】
尚、各第2ゴム部材22a,22bには、ウォーム軸側連結部26と軸方向に係止されて、第2ゴム部材22a,22bが軸方向のウォーム軸15側に脱落することを防止する係止部34が形成されている。
【0039】
次に、本実施形態の作用について説明する。
モータ本体2の駆動により回転軸8が例えば正回転(図2における時計回り)すると、回転軸8とともにジョイント16が回転する。すると、図3に示すように、ウォーム軸15の連結凸部15aの平面15xと当接する周方向緩衝部31と、連結凸部15aの平面15yと当接する周方向緩衝部31とがジョイント16(回転軸8)の回転駆動力によって周方向に圧縮変形される。そして、出力軸19側の負荷が所定値以上となったとき、連結孔28の内周面の当接部28b,28cがそれぞれ連結凸部15aの平面15x,15yと周方向に当接し、ジョイント16の回転が連結凸部15aへと伝達される。これにより、回転軸8、ジョイント16及びウォーム軸15が一体回転され、ウォーム軸15の回転がウォームホイール18に伝達される。このような回転状態において、ウォーム軸15の連結凸部15aは、各第2ゴム部材22a,22bの周方向緩衝部31及び径方向緩衝部32に当接保持されているため、軸ずれ等によるウォーム軸15の軸直交方向への暴れが抑制されるようになっている。
【0040】
また、出力軸19側の負荷が前記所定値未満の場合には、連結孔28の当接部28b,28cが連結凸部15aの平面15x,15yと当接しない状態で、ジョイント16の回転がウォーム軸15の連結凸部15aに伝達される。即ち、この場合、ジョイント16の回転は、各第2ゴム部材22a,22bの周方向緩衝部31から連結凸部15aに伝達されて、回転軸8、ジョイント16及びウォーム軸15が一体回転されるようになっている。この回転状態においても、ウォーム軸15の連結凸部15aは、各第2ゴム部材22a,22bの周方向緩衝部31及び径方向緩衝部32に当接保持されているため、軸ずれ等によるウォーム軸15の軸直交方向への暴れが抑制されている。
【0041】
尚、連結孔28の当接部28b,28cが連結凸部15aの平面15x,15yと当接している状態で、第2ゴム部材22aの径方向緩衝部32の周方向中心線L2は、連結凸部15aの長手方向端面15cと平面15yとでなす角部35aを正回転方向に越えないように構成されている。もう一方の第2ゴム部材22bの径方向緩衝部32においても同様に、その周方向中心線L2が連結凸部15aの長手方向端面15dと平面15xとでなす角部35bを正回転方向に越えないように構成されている。また、これは、回転軸8及びジョイント16の逆回転時においても同様の状態になるように設定されている。これにより、回転軸8、ジョイント16及びウォーム軸15の一体回転時に、各第2ゴム部材22a,22bの径方向緩衝部32が連結凸部15aから外れてしまうことが防止され、その結果、径方向緩衝部32が連結凸部15aから外れてしまった時に生じ得る連結凸部15aによる径方向緩衝部32の巻き込みが防止されるようになっている。
【0042】
上記のように回転軸8及び減速機構11が正回転している状態から、例えば出力軸19側からの負荷により停止状態(ロック状態)となったとき、ウォーム軸15のウォーム部15bとウォームホイール18の歯部とが噛み込んだ状態となる場合がある。この状態から回転軸8を逆回転させると、ジョイント16が逆回転し、連結孔28の当接部28dが連結凸部15aの平面15yに、連結孔28の当接部28eが連結凸部15aの平面15xにそれぞれ当接する。この当接までの間に、回転軸8及びジョイント16の回転慣性力を得ることができるため、ウォーム軸15とウォームホイール18との噛み込みが好適に外れるようになっている。これは、逆回転状態から停止状態となった後、正回転させる場合にも同様のことが言える。以上のように、本実施形態では、連結凸部15aと連結孔28との間のクリアランスC1,C2によって回転軸8の慣性力を得つつも、各第2ゴム部材22a,22bの周方向緩衝部31及び径方向緩衝部32によってウォーム軸15の暴れを抑制することが可能となっている。
【0043】
また、本実施形態では、ウォーム軸15とウォームホイール18の特性上、ウォーム軸15の反転の際に軸方向の荷重が発生する。このとき、ウォーム軸15が受ける軸方向のモータ本体2側への荷重は、ウォーム軸15の連結凸部15aと軸方向に当接する各第1ゴム部材21の突出部21aが受けるようになっている。このため、連結凸部15aと連結孔28の軸方向の底面(固定部23のウォーム軸側端面23a)との衝突、及び連結凸部15aと回転軸8の先端部8aとの衝突が各第1ゴム部材21によって抑制され、その結果、その衝突の際に発生し得る異音を抑制することができるようになっている。
【0044】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)ジョイント16は、回転軸8に一体回転可能に設けられ、該ジョイント16には、ウォーム軸15に設けられた連結凸部15aが周方向及び径方向のクリアランスC1,C2を有する状態で挿入された連結孔28が形成される。そして、連結孔28と連結凸部15aとの間の周方向のクリアランスC1及び径方向のクリアランスC2にはそれぞれ、周方向緩衝部31及び径方向緩衝部32が介在され、連結孔28と連結凸部15aとは、モータ本体2の駆動による回転軸8の回転状態において、周方向緩衝部31を周方向に圧縮変形させつつ、周方向に互いに当接可能に構成される。これにより、回転駆動時及び回転停止時におけるウォーム軸15の暴れを抑制することができ、その結果、連結孔28の内周面と連結凸部15aとの衝突による異音の発生を抑制することができる。また、ウォーム軸15とウォームホイール18の噛み込み状態からの回転軸8の逆転起動時(回転軸8の逆回転し始め)において、回転軸8は、連結孔28と連結凸部15aとの間の周方向緩衝部31を圧縮変形させつつ回転し、その間に回転軸8の慣性力(回転の勢い)を得ることができる。その後、周方向緩衝部31の圧縮状態で連結孔28と連結凸部15aとが回転軸8の慣性力を得た状態で周方向に当接し、それにより、ウォーム軸15とウォームホイール18との噛み込みを外すことが可能となる。このように、この発明では、連結凸部15aと連結孔28との間のクリアランスC1,C2によって回転軸8の慣性力を得つつも、周方向緩衝部31及び径方向緩衝部32によってウォーム軸15の暴れを抑制することができる。
【0045】
(2)回転軸8及びウォーム軸15は、金属材料よりなり、ジョイント16は、回転軸8及びウォーム軸15とは別部材で構成された樹脂部材であるため、ウォーム軸15の連結凸部15aが挿入される連結孔28も樹脂で構成される。これにより、回転時において連結孔28と連結凸部15aとが周方向に当接する際の衝突音を抑えることができ、その結果、異音の発生をより抑えることができる。
【0046】
(3)周方向緩衝部31及び径方向緩衝部32は、回転軸8及びウォーム軸15とは別体であり且つ樹脂部材であるジョイント16に設けられるため、周方向緩衝部31及び径方向緩衝部32を容易に形成することができる。
【0047】
(4)周方向緩衝部31及び径方向緩衝部32がゴムよりなるため、ウォーム軸15の暴れを好適に抑制することができる。
(5)連結凸部15aと連結孔28の軸方向の底面(固定部23のウォーム軸側端面23a)との間には、第1ゴム部材21が介在される。ウォーム軸15の反転の際に生じる軸方向の荷重によって懸念される連結凸部15aと固定部23のウォーム軸側端面23aとの衝突、及び連結凸部15aと回転軸8の先端部8aとの軸方向の衝突を第1ゴム部材21によって抑制することができ、その結果、それらの衝突による異音の発生を抑制することができる。
【0048】
(6)回転軸8及びウォーム軸15とは別体であり且つ樹脂部材であるジョイント16に第1ゴム部材21が設けられるため、第1ゴム部材21を容易に形成することができる。
【0049】
(7)第1ゴム部材21がゴムよりなるため、連結凸部15aと連結孔28の軸方向の底面との衝突及び連結凸部15aと回転軸8の先端部8aとの軸方向の衝突を好適に抑制することができる。
【0050】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、各第2ゴム部材22a,22bの周方向緩衝部31と径方向緩衝部32とが繋がって構成されているが、これに特に限定されるものではなく、周方向緩衝部31と径方向緩衝部32とが分かれた構成としてもよい。
【0051】
・上記実施形態では、第2ゴム部材22a,22bの周方向緩衝部31及び径方向緩衝部32が回転軸8側(ジョイント16)に設けられたが、これ以外に例えば、ウォーム軸15の連結凸部15aの平面15x,15yに設けてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、第1ゴム部材21が回転軸8側(ジョイント16)に設けられたが、これ以外に例えば、ウォーム軸15の連結凸部15aの軸方向端面に設けてもよい。
【0053】
・上記実施形態では、ジョイント16の樹脂部20が回転軸8に固定され、樹脂部20の連結孔28にウォーム軸15の連結凸部15aが挿入される構成としたが、この関係を逆にして、樹脂部20をウォーム軸15に固定し、樹脂部20の連結孔28に回転軸8の先端部8aを連結凸部として挿入する構成としてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、ジョイント16(樹脂部20)を金属製の回転軸8とは別体の樹脂製とし、回転軸8に固定する構成としたが、これに特に限定されるものではなく、ジョイント16を回転軸8と同一材料で一体に形成してもよい。また、ジョイント16(連結部)をウォーム軸15側に設ける構成の場合には、ジョイント16をウォーム軸15と同一材料で一体に形成してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…モータ、2…モータ本体、8…回転軸、11…減速機構、15…ウォーム軸、15a…連結凸部、16…連結部としてのジョイント、18…ウォームホイール、20…樹脂部、21…第1ゴム部材(軸方向緩衝部)、22a,22b…第2ゴム部材、28…連結孔、31…周方向緩衝部、32…径方向緩衝部、C1…周方向のクリアランス、C2…径方向のクリアランス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有するモータ本体と、
連結部にて前記回転軸と一体回転可能に連結されたウォーム軸及び該ウォーム軸と噛合するウォームホイールからなる減速機構と
を備え、
前記連結部は、前記回転軸及び前記ウォーム軸のいずれか一方に一体回転可能に設けられ、該連結部には、前記回転軸及び前記ウォーム軸のいずれか他方に設けられた連結凸部が周方向及び径方向にクリアランスを有する状態で挿入された連結孔が形成されているモータであって、
前記連結孔と前記連結凸部との間の周方向の前記クリアランス及び径方向の前記クリアランスにはそれぞれ、周方向緩衝部及び径方向緩衝部が介在され、
前記連結孔と前記連結凸部とは、前記モータ本体の駆動による前記回転軸の回転状態において、前記周方向緩衝部を周方向に圧縮変形させつつ、周方向に互いに当接可能に構成されていることを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のモータにおいて、
前記回転軸及び前記ウォーム軸は、金属材料よりなり、
前記連結部は、前記回転軸及び前記ウォーム軸とは別部材で構成された樹脂部材であることを特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項2に記載のモータにおいて、
前記周方向緩衝部及び前記径方向緩衝部は、前記連結部に設けられていることを特徴とするモータ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のモータにおいて、
前記周方向緩衝部及び前記径方向緩衝部は、ゴムよりなることを特徴とするモータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のモータにおいて、
前記連結凸部と前記連結孔の軸方向の底面との間には、軸方向緩衝部が介在されていることを特徴とするモータ。
【請求項6】
請求項5に記載のモータにおいて、
前記回転軸及び前記ウォーム軸は、金属材料よりなり、
前記連結部は、前記回転軸及び前記ウォーム軸とは別部材で構成された樹脂部材であり、
前記軸方向緩衝部は、前記連結部に設けられていることを特徴とするモータ。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のモータにおいて、
前記軸方向緩衝部は、ゴムよりなることを特徴とするモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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