説明

モーメントフレームコネクタ

【課題】容易且つ迅速にしかも安価に製作でき、さらに効果的に働く横方向筋違いシステムを提供する。
【解決手段】構造物において柱(104)を梁(102)に取り付ける横方向筋違いシステムが開示される。横方向筋違いシステムは、一対の座屈抑制板(112)を有し、各座屈抑制板は、梁の頂部フランジ及び底部フランジに取り付けられる。横方向筋違いシステムは、各座屈抑制板のための少なくとも1枚の降伏板(114)を更に有する。各降伏板は、柱に取り付けられた第1の端部及び梁に取り付けられた第2の端部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量フレーム型構造物において用いられる構造体の履歴減衰に関し、特に、エネルギーが軽量フレーム型構造物内で小さな力しきい値で散逸されるよう高い初期曲げ剛性と共に履歴減衰により高いエネルギー散逸度を提供するよう構成された横方向筋違い(すじかい)システム(lateral bracing system )に関する。
【0002】
〔関連出願の説明〕
本願は、2007年12月19日に出願された米国特許出願第11/959,696号(発明の名称:MOMENT FRAME CONNECTOR)の一部継続出願であり、この米国特許出願は、2006年12月22日に出願された米国特許仮出願第60/871,587号(発明の名称:Moment Frame Connector)の優先権主張出願である。両方の出願を参照により引用し、これらの記載の内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
自然現象、例えば地震活動や強風に起因するせん断応力は、軽量フレーム型構造物の構造的健全性に対して悲惨な影響を及ぼす場合がある。かかる自然現象の間に生じる横力により、壁の頂部が壁の底部に対して横方向又は側方に動く場合があり、かかる動きの結果として、壁の損傷又は構造的破損が生じる場合があり、場合によっては、建物が崩れる。
【0004】
例えば住宅や小型ビルのような構造物において、横方向筋違いシステムが軽量フレーム型構造物の構造的健全性に対するせん断応力の潜在的に悲惨な影響に対抗するよう開発された。種々の設計が知られているが、一形式の横方向筋違いシステムは、互いに間隔を置いて配置された垂直スタッド及びスタッドに取り付けられると共にこれらスタッド相互間に延びる水平梁(ビーム)を有する。梁は、横荷重下における連結部の構造的性能を増大させることを目的としてスタッドに取り付けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多くの従来型横方向筋違いシステムは、横荷重下において当初良好に働くが、相当大きな地震活動や強風の際に生じる場合の多い繰り返し横荷重を受けると、降伏したり破損したりする。横方向筋違いシステムの相当な降伏又は破損が起こると、横方向筋違いシステム全体を交換しなければならない。
【0006】
構造体の加重には関連しないもう1つの検討事項は、作業現場における従事者によるかかる構造体の建設容易性及び有効性である。構造物の時間、複雑さ及びコストを増大させる1つの仕事は、コンポーネントを作業現場で互いに溶接しなければならないという仕事である。ボルト止めによる連結は、典型的には、かかる連結が迅速且つ効率的に実施でき、しかも、溶接と関連した追加の機器及び人件費が不要であるという点で好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要説明する本発明の実施形態は、構造物において柱を梁に取り付ける横方向筋違いシステムに関する。実施形態では、横方向筋違いシステムは、一対の座屈抑制ブロックを有し、各座屈抑制ブロックは、梁の頂部フランジ及び底部フランジに溶接される。各座屈抑制ブロックは、ブロックの中央を貫通して形成された1つ又は2つ以上のボアを有する。横方向筋違いシステムは、各座屈抑制ブロックのための少なくとも1つの降伏リンクを更に有する。各降伏リンクは、柱に取り付けられた第1の端部および座屈抑制ブロックに設けられたボアに嵌め込まれると共に座屈抑制ブロックの一端部に取り付けられた第2の端部を有する。
【0008】
横方向筋違いシステムは、横荷重が加えられた状態で高い耐撓み性を提供するのに十分な曲げ剛性及びねじり剛性を有する。しかしながら、制御可能且つ予測可能なレベルを超える横荷重において、本発明の構造体は、降伏リンクの安定した降伏を可能にする。このように、加えられた横荷重は、システムから履歴減衰され、高いエネルギーレベルが散逸され、それによりフレームの損傷が阻止される。さらに、エネルギー散逸及び降伏リンクの安定した降伏により、フレームは、破損なく横荷重下において繰り返し撓みに耐えることができる。
【0009】
実施形態では、梁をこれに座屈抑制ブロックが溶接され、膠着され又は違ったやり方で取り付けられた状態で作業現場に送り出すことができる。いったん作業現場に到着すると、降伏リンクを座屈抑制ブロックのボア内に挿入し、座屈抑制ブロック及び柱に取り付けるのが良い。かくして、作業現場で必要な本発明の横方向筋違いシステムの製作の手間は、最小限である。
【0010】
別の実施形態では、横方向筋違いシステムは、梁と柱との間に直接設けられる一対の座屈抑制組立体を有するのが良い。かかる実施形態では、各座屈抑制組立体と梁又は柱との間の全ての連結は、ボルトで行われるのが良い。全ボルト型組立体は、作業現場での組み立てを容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態としての横方向筋違いシステムにより柱に連結された梁の斜視図である。
【図2】図1の横方向筋違いシステムの正面図である。
【図3】本発明の別の実施形態としての横方向筋違いシステムにより柱に連結された梁の斜視図である。
【図4】本発明の別の実施形態としての横方向筋違いシステムにより柱に連結された梁の斜視図である。
【図5】本発明の別の実施形態としての横方向筋違いシステムにより柱に連結された梁の斜視図である。
【図6】図3〜図5に示された横方向筋違いシステムの正面図である。
【図7】図3〜図5に示された横方向筋違いシステムの平面図である。
【図8】図3〜図5に示された横方向筋違いシステムの降伏リンクの側面図である。
【図9】図3〜図5に示された横方向筋違いシステムの座屈抑制ブロックの端面図である。
【図10】図3〜図5に示された横方向筋違いシステムの座屈抑制ブロックの側面図である。
【図11】本発明の変形実施形態としての降伏リンクの側面図である。
【図12】本発明の変形実施形態としての座屈抑制ブロックの側面図である。
【図13】本発明の実施形態に関するフレームの横荷重と横変位量との関係を表すグラフ図である。
【図14】梁を直接柱に取り付ける一対の座屈抑制組立体の斜視図である。
【図15】図14の座屈抑制組立体の部分分解斜視図である。
【図16】梁を柱に直接取り付ける一対の座屈抑制組立体の側面図である。
【図17】図14及び図16の座屈抑制組立体の分解組み立て斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図1〜図17を参照して本発明を説明し、本発明は、その実施形態において、横荷重下において横方向筋違いシステム内に生じたエネルギーを高い初期曲げ剛性を有すると共に効果的に散逸させることができる降伏リンクを有する横方向筋違いシステムに関する。本発明を多くの異なる形態で具体化できるので本明細書において説明する実施形態に限定されるものと解されてはならないことは言うまでもない。これとは異なり、かかる実施形態は、この開示が徹底的且つ完全であり、しかも本発明を当業者に十分に理解させるよう提供されている。確かに、本発明は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲及び精神に含まれるこれら実施形態の変形例、改造例及び均等例を含むものである。さらに、本発明の以下の詳細な説明において本発明の完全な理解を提供するために多くの特定の細部が記載されている。しかしながら、本発明は、かかる特定の細部なしでも実施できることは当業者には明らかであろう。
【0013】
今、図1及び図2を参照すると、一部が垂直柱104に取り付けられた水平梁102で構成されたフレーム100が示されている。梁102及び柱104の各々は、中央ダイヤフラムによって互いに連結された対をなすフランジを有する。垂直柱及び水平梁と称しているが、かかる柱及び梁は、変形実施形態では90°以外の角度で互いに取り付け可能であることは言うまでもない。梁102は、横方向筋違いシステムを含む梁スタブ110によって柱104に取り付けられている。横方向筋違いシステムは、梁スタブ110の頂部フランジ及び底部フランジの各々にそれぞれ1つずつ設けられた一対の座屈抑制型補強装置112で構成されている。各座屈抑制型補強装置112は、第1の端部が梁スタブ110のフランジに溶接され又は膠着されると共に第2の端部が柱104のフランジに溶接され又は膠着された平べったい「ドッグボーン(dog bone)」形の降伏リンク114を有する(「ドッグボーン」形という表現は、これはその端部分のところよりも中央部分の方が細いという点でそのように呼ばれている)。座屈抑制ブロック116が各降伏リンク114の中央部分を覆っている。ブロック116は、梁スタブ110のそれぞれのフランジに溶接され又は膠着されている。
【0014】
梁スタブ110と柱104との間にはせん断タブ122が更に設けられるのが良い。せん断タブ122は、例えば、溶接、膠着又はボルト止めにより柱104のフランジに取り付けられると共に溶接、膠着又はボルト止めにより梁スタブ110の中央ダイヤフラムに取り付けられるのが良い。梁スタブ110は、せん断タブ122と反対側の梁スタブの一端部のところに溶接された端板124を更に有する。端板124は、以下に説明するように梁102を梁スタブ110に取り付けるために同様な端板126にボルト止めされるのが良い。
【0015】
作用を説明すると、一対の座屈抑制型補強装置112は、横荷重下における柱に対する梁の回転(即ち、せん断タブ122を中心とする回転)に対抗するよう連係して動作する。第1の方向への回転を試みることにより、装置112のうちの第1のものは、引張状態になり、これら装置のうちの第2のものは、圧縮状態になる。逆方向への回転を試みることにより、装置のうちの第1のものは、圧縮状態になり、第2のものは引張状態になる。
【0016】
それぞれの装置112の降伏リンク114は、高い初期曲げ剛性を提供すると共に横荷重下における柱104と梁102の相対運動に対して高い引張抵抗をもたらすが、予測可能な且つ制御可能なレベルを超える横荷重下においては安定した降伏及びエネルギー散逸をもたらす。特に、柱及び梁の曲げ強さは、降伏リンク114及び特に降伏リンク114の薄手の中央部分のモーメント許容能力を超えるよう設計されるのが良い。かくして、降伏リンク114は、柱又は梁の降伏又は破損前に横荷重下において降伏し、損傷は、容易に取り外せて交換できる降伏リンクに制限される。座屈抑制ブロック116は、圧縮荷重下における降伏リンクの座屈を阻止する。せん断タブ122は、垂直荷重下における垂直せん断(即ち、柱104の長さに沿う)に対抗するよう設けられている。
【0017】
さらに、上記及び下記の実施形態に関して説明する梁102と柱104との間に設けられている横方向筋違いシステムにより、従来梁の一部として設けられていた横ねじれ座屈抑制システムを省くことができる。即ち、先行技術のシステムでは、横ねじれ座屈抑制システムは、過度の横荷重が生じた場合に降伏するよう梁の一部として設けられていた。これら横ねじれ座屈抑制システムは、梁の座屈を阻止するために降伏リンク及び横方向筋違い(ブレース)を有する。本発明の横方向筋違いシステムの使用により、先行技術において梁に設けた状態で見受けられる横ねじれ座屈抑制システムを省くことができる。梁自体とは別個の本発明の横方向筋違いシステムによりリンクのモーメント許容能力の有限の上限を介して梁に対する入力要求を制限することができるようにすることによって、梁を筋違い(ブレーシング)なしで設計することができる。また、それにより、梁及び柱を極限降伏リンク連結モーメント許容能力のレベルにおいて弾性のままであるよう設計することができる。
【0018】
横荷重下において、降伏リンク114は、降伏リンクが取り付けられている柱104のフランジに力を及ぼす。したがって、連続板130が、オプションとして、降伏リンクにより及ぼされる力に対抗するよう柱104の当該フランジに取り付けられるのが良い。
【0019】
背景技術の項で説明したように、作業現場での溶接を回避することが望ましい。したがって、実施形態では、梁102及び柱104の組み立て及び連結は、以下のように達成されるのが良い。作業現場への到達に先立って、降伏リンク114の第1の端部及び座屈抑制ブロック116を梁スタブ110に溶接し又は膠着するのが良い。端板124も又、スタブ110に溶接し又は膠着するのが良い。
【0020】
次に、梁スタブ110を柱104に溶接し又は膠着するには、降伏リンク114の第2の端部を柱104のフランジに溶接/膠着すると共にせん断タブを柱104のダイヤフラムに溶接/膠着するのが良い。次に、せん断タブを梁スタブ110のダイヤフラムにボルト止めするのが良い。次に、接合状態の梁スタブ110と柱104を作業現場に送るのが良い。梁スタブ110が設けられていることにより、全ての溶接/膠着は、柱が作業現場に到達する前に実施可能である。端板126を梁102に溶接し又は膠着するのが良く、次に、梁を作業現場まで送るのが良い。作業現場にいったん到着すると、端板124,126を互いにボルト止めすることにより梁102を梁スタブ110に取り付けるのが良い。
【0021】
次に、図3〜図12を参照して本発明の変形実施形態を説明する。この実施形態では、梁スタブ110を省くことができるようにすると共により簡単であるが効果的な設計をもたらす横方向筋違いシステムが提供される。まず最初に図3〜図7を参照すると、フレーム200は、一部が垂直柱104に取り付けられた水平梁102で構成されている。垂直柱及び水平梁と称しているが、かかる柱及び梁は、変形実施形態では90°以外の角度で互いに取り付け可能であることは言うまでもない。
【0022】
梁102は、横方向筋違いシステムによって柱104に取り付けられている。横方向筋違いシステムは、梁102の頂部フランジ及び底部フランジの各々にそれぞれ1つずつ設けられた一対の座屈抑制型補強装置212で構成されている。各座屈抑制型補強装置112は、各々が以下に説明するようにその端部のところにねじ山を有する1つ又は2つ以上の円筒形降伏リンク214を有する。1つ又は2つ以上の降伏リンク214の各組は、梁102の上側フランジ及び下側フランジに溶接され、膠着され又は違ったやり方で取り付けられた座屈抑制ブロック216内に設けられるのが良い。
【0023】
梁102と柱104との間にはせん断タブ222が更に設けられるのが良い。せん断タブ222は、例えば、溶接、膠着又はボルト止めにより柱104のフランジに取り付けられると共に溶接、膠着又はボルト止めにより梁102の中央ダイヤフラムに取り付けられるのが良い。柱フランジスチフナ(補剛材)230が、オプションとして、降伏リンクにより及ぼされる力に対抗するよう柱104のフランジに取り付けられるのが良い。
【0024】
図8は、一実施形態としての円筒形降伏リンク214の側面図であり、図9及び図10は、それぞれ、一実施形態としての座屈抑制ブロック216の端面図及び側面図である。円筒形降伏リンク214は、鋼で作られるのが良く、この円筒形降伏リンクは、第1のねじ山付き端部240、第2のねじ山付き端部242及び端部240,242相互間の中央部分244を有する。中央部分244は、好ましくは、端部240,242よりも小さな直径を有し、その結果、以下に説明するように降伏時、降伏リンク214は、中央部分244が降伏するようになっている。テーパ付き区分246,248を端部240,242の外周部から中央部分244まで滑らかに移行するよう設けられるのが良い。図示されていないが、端部240,242は、座屈抑制ブロック216中への容易な挿入を可能にするよう面取りされるのが良い。中央部分244は、リブ250を有するのが良く、リブの目的については後で説明する。中央部分244を端部240,242とは異なる材料で形成することが可能な場合があり、この場合、中央部分は、低い弾性率を有する。かかる実施形態では、中央部分は、端部240と同一の直径を備えるのが良く、しかも、中央部分の降伏点を超える引張応力を受けると降伏する依然として最初の部分である。
【0025】
図8の実施形態では、端部242は、端部240よりも大きな直径を有するのが良い。一例として、端部242の直径は、1.30インチ(3.302cm)であるのが良く、端部240の直径は、1.25インチ(3.175cm)であるのが良く、中央部分244の直径は、リブ250のところを除き、1.00インチ(2.54cm)であるのが良く、リブ250の直径は、1.25インチ(3.175cm)であるのが良い。理解されるように、上述の寸法は各々、その上下で様々であって良く、かかる寸法は、変形実施形態では、互いに比例して又は比例しないで記載される。
【0026】
座屈抑制ブロック216は、金属、例えばアルミニウム又は鋼のブロックであるのが良く、1つ又は2つ以上の降伏リンク214を受け入れる1つ又は2つ以上のボア260が座屈抑制ブロック216を貫通して形成されている。ボア260は、リブ250及び/又は端部240の直径とほぼ同じ直径を有するのが良く、端部264は、降伏リンク214のねじ山付き端部242を受け入れるよう僅かに大きい。ブロック216の長さ(梁102の長さに沿う)は、例えば、6.50インチ(16.51cm)であるのが良く、幅(梁102のフランジの幅方向)は、梁102のフランジの幅にほぼ等しく又はこれよりも僅かに小さいのが良く、例えば、7.00インチ(17.78cm)であり、ブロック216の高さは、2.50インチ(6.35cm)であるのが良い。ブロック216が一対のボア260を有する場合、ボアは、中心線間距離で互いに4.00インチ(10.16cm)の間隔を置いて位置するのが良い。理解されるように、上述の寸法は各々、その上下で様々であって良く、かかる寸法は、変形実施形態では、互いに比例して又は比例しないで記載される。
【0027】
ブロック216は、端部262を有するのが良く、降伏リンク214の端部240は、装置112が以下のように組み立てられると、端部262を通って突き出るようになっており、ブロック216は、端部262と反対側の端部264を更に有する。ボア260の一部分は、以下に説明するように降伏リンクのねじ山付き端部242を受け入れるよう端部264に隣接したところにねじ山が設けられているのが良い。
【0028】
梁102は、これにブロック216が溶接され、膠着され又は違ったやり方で取り付けられた状態で作業現場に送られるのが良い。柱は、これにせん断タブ222が溶接され、膠着され又は違ったやり方で取り付けられた状態で作業現場に送られるのが良い。次に図6〜図10を参照すると、作業現場にいったん到着すると、降伏リンク214をその端部240がまず最初にブロック216の端部264内に挿入された状態で(即ち、図6及び図7の斜視図で見て右から左に)ボア260内に挿入するのが良い。降伏リンクの小径部分240,244,250は、大径ボア260を通って進み、ついには、ねじ山付き降伏リンク端部242がボアのねじ山付き端部と螺合する。この時点で、端部242をブロック端部264内にねじ込んで降伏リンク214を座屈抑制ブロック216に取り付けるのが良い。降伏リンク214の端部242は、リンクをブロック内に押し進めるヘッドを有するのが良いが、ヘッドは、変形実施形態では省かれても良い。
【0029】
各降伏リンク214に関し、このリンクは、リンク端部240がブロック端部262から突き出るまでねじ込まれる。例えば図6に示されているように、次に、ナット270をリンク端部240に螺着し、端部240は、柱104のフランジに設けられた穴を貫通し、第2のナット272を端部240に螺着する。ナット270,272を柱フランジの互いに反対側の側部上でいったん締め付けると、座屈抑制型補強装置212は、梁102と柱104の運動に対抗するよう定位置に固定される。
【0030】
特に、一対の座屈抑制型補強装置212は、横荷重下における柱104に対する梁102の回転に対抗するよう連係して動作する。それぞれの装置212の降伏リンク214は、高い初期曲げ剛性を提供すると共に横荷重下における柱104と梁102の相対運動に対して高い引張抵抗をもたらすが、予測可能な且つ制御可能なレベルを超える横荷重下においては中央部分24のところで安定した降伏をもたらすと共にエネルギー散逸を可能にする。特に、柱及び梁の曲げ強さは、降伏リンク214の中央部分244のモーメント許容能力を超えるよう設計されるのが良い。かくして、降伏リンク214は、柱又は梁の降伏又は破損前に横荷重下において降伏し、損傷は、容易に取り外せて交換できる降伏リンクに制限される。
【0031】
座屈抑制ブロック216は、圧縮荷重下における降伏リンクの座屈を阻止する。特に、降伏リンク214の中央部分244の直径に対するボア260の相対直径は、降伏リンクの座屈量を制限する。上述したように、中央部分244は、リブ250を有するのが良い。リブ250の拡大直径は、座屈抑制ブロック216のボア260内における降伏リンク214の座屈量を一段と制限する。実施形態では、3つのリブ250が設けられるのが良いが、変形実施形態では1つ、2つ又は4つ以上が設けられても良い。別の実施形態では、リブ250をまったく省くことができる。
【0032】
図8〜図10を参照して説明した実施形態では、リンク端部242は、リンク端部240よりも大きな直径を有し、それにより降伏リンクは、リンク端部242とブロック端部264のねじ山が螺合するまで座屈抑制ブロック216を通って自由に進むことができる。図11の変形実施形態では、降伏リンク214は、例えば1.25インチに等しい直径を備えた端部240,242を有する。かかる実施形態では、ブロック216は、図12に示されているようにその全長に沿ってねじ山が設けられたボア260を有するのが良い。図11及び図12の実施形態は、リブが小径中央部分に設けられた状態で又は設けられていない状態で利用できる。
【0033】
図1〜図12を参照して上述した本発明の実施形態によれば、横方向筋違いシステムは、横荷重が加えられた状態で高い耐撓み性を提供するのに十分な曲げ剛性及びねじり剛性を有する。しかしながら、制御可能且つ予測可能なレベルを超える横荷重において、本発明の構造体は、降伏リンクの安定した降伏を可能にする。このように、加えられた横荷重は、システムから履歴減衰され、高いエネルギーレベルが散逸され、それによりフレームの損傷が阻止される。さらに、エネルギー散逸及び降伏リンクの安定した降伏により、フレーム100は、破損なく横荷重下において繰り返し撓みに耐えることができる。
【0034】
リンクが降伏時に損傷を受けた場合には、横方向筋違いシステムを降伏リンクの単なる取り外し及び交換によって、その元の健全性及び耐荷力に復元させることができる。構造用フレームは、無傷のままであり、交換の必要がない。
【0035】
図13は、横荷重が加えられた場合における図1及び図2の座屈抑制型補強装置112の実施形態と図3〜図10の座屈抑制補強装置212の実施形態の応答のプロット図である。理解されるように、両方の実施形態は、約22,000ポンド(9978.98kg)横荷重でのこれらの降伏点まで弾性的に働く。
【0036】
図14〜図17は、横方向筋違いシステム300を有する本発明の別の実施形態を示している。この実施形態では、上述の実施形態の梁スタブ110は省かれるのが良く、その結果、横方向筋違いシステム300は、梁102を柱104に直接連結している。
【0037】
横方向筋違いシステム300は、一対の座屈抑制組立体302を有し、これら座屈抑制組立体302は、互いに同一であっても良く又はそうでなくても良く、一方は、梁102の頂部上に設けられ、他方は、梁102の下に設けられる。座屈抑制組立体302の以下の説明は、両方の組立体302に当てはまる。
【0038】
各座屈抑制組立体302は、降伏部材304を有し、降伏部材304は、柱取り付け板308、梁取り付け板310及び柱取り付け板と梁取り付け板との間に連結された降伏板312を有する。柱取り付け板308は、直角に互いに溶接されるのが良い垂直部分308aと水平部分308bを有するのが良い。垂直部分308a及び水平部分308bは、他の手段により互いに取り付けられても良く、又は、別の実施形態では単一品として鋳造されても良い。
【0039】
水平部分308bは、梁取り付け板310及び降伏板312との平べったい一体形構造で形成されても良い。水平部分308b及び板308,310,312は、例えば、1/4インチ(0.635cm)鋼の単一片で作られても良い。水平部分308b及び板308a,310,312は、例えば、別の実施形態では他の厚さに合わせて形成されても良い。
【0040】
柱取り付け板308及び梁取り付け板310は各々、梁102のフランジの幅にほぼ等しく又はこれよりも僅かに小さい幅(梁102のフランジの幅方向)、例えば7.00インチ(17.78cm)を有するのが良い。降伏板312の幅(梁102のフランジの幅方向)は、板308,312の幅よりも小さいのが良い。板312の幅は、一実施形態では1〜6インチ(2.54〜15.24cm)であるのが良く、別の実施形態では1〜3インチ(2.54〜7.62cm)であるのが良く、別の実施形態では2〜3インチ(5.08〜7.62cm)であるのが良い。降伏板312の幅は、他の寸法であって良く、ただし、降伏板は、柱取り付け板308及び梁取り付け板310よりも小さい幅を有することを条件とする。
【0041】
座屈抑制組立体302は、抑制拘束部材316及び一対のスペーサブロック318(これらのうちの1つは、分かり易くするために図17から省かれている)を更に有する。座屈抑制部材316は、降伏板312の長さにほぼ等しい長さ(梁102の長さに沿う)を備えた平べったい板であるのが良い。座屈抑制部材316は、別の実施形態では、降伏板312よりも長くても良く、これよりも短くても良い。座屈抑制部材316は、1/4インチ鋼であるのが良いが、座屈抑制部材は、別の実施形態ではこれよりも厚くても良く又はこれよりも薄くても良い。
【0042】
スペーサブロック318は、座屈抑制組立体302が以下に説明するように互いに組み立てられると、降伏板312の各側で柱取り付け板308の水平部分308bと梁取り付け板310との間に嵌まり込むよう寸法決めされている。スペーサブロック318は、降伏部材304と同一の厚さのものであるのが良い。スチフナ230も又、上述したように設けられるのが良い。
【0043】
柱取り付け板308、梁取り付け板310及び降伏板312を含む降伏部材304を作業現場のところで又は作業現場から離れたところで柱104に取り付けるのが良い。一実施形態では、垂直部分308aは、水平部分308bの上下でボルト322(例えば図15参照)を受け入れる穴320(図17)を有し、降伏部材304は、柱104にボルト止め可能である。別の実施形態では、降伏部材304は、変形例として、溶接又は膠着によって柱104に取り付けられても良いことが想定される。
【0044】
しかる後、作業現場では、複数本のボルト326により梁取り付け板310を梁102にボルト止めするのが良い。図は6本のボルト326を示しているが、別の実施形態では、これよりも多くても良く又は少なくても良い。この時点において、降伏部材304を梁102と柱104の両方に取り付ける。また、上述したようにせん断タブ222により梁と柱を互いに取り付けるのが良い。せん断タブ222を例えば溶接、膠着又はボルト止めにより柱104に取り付け、例えばボルト328により柱104のフランジ及び梁102のウェブに取り付けるのが良い。この組み立て段階における梁102及び柱104への降伏部材304の組み立て状態が例えば図15に示されている。
【0045】
実施形態では、座屈抑制組立体302及びせん断タブ222は、作業現場においてボルトだけで梁102を柱104に取り付けることができ、かくして、溶接を省くことができるので構成が単純化される。しかしながら、別の実施形態では、梁取り付け板310及び/又はせん断タブ222を溶接又は膠着により梁102に取り付けても良い。別の実施形態では、降伏部材304をまず最初に事前に又は作業現場で梁102に取り付け、次に柱104に取り付けても良い。
【0046】
次に、座屈抑制部材316を降伏板312上で梁102に取り付ける。例えば図17に示されているように、一対のボルト332が座屈抑制部材316に設けられたそれぞれの穴334を通り、スペーサ318に設けられた穴338を通って上方に進み、そして梁102に形成された穴340(図15)に嵌まり込み、ここで、ボルトは、ナットを受け入れることができ、それによりボルトは、定位置に締結される。スペーサは、降伏部材304と同一の厚さなので、ボルト332を降伏板312の周りで梁302に締結すると、座屈抑制部材316を横切る一様な荷重分布を保証する。
【0047】
作用を説明すると、一対の座屈抑制型補強装置302は、横荷重下における柱に対する梁の回転(即ち、せん断タブ222を中心とする回転)に対抗するよう連係して動作する。第1の方向への回転を試みることにより、装置302のうちの第1のものは、引張状態になり、これら装置のうちの第2のものは、圧縮状態になる。逆方向への回転を試みることにより、組立体のうちの第2のものは、引張状態になり、第1のものは圧縮状態になる。
【0048】
それぞれの組立体302の降伏板312は、高い初期曲げ剛性を提供すると共に横荷重下における柱104と梁102の相対運動に対して高い引張抵抗をもたらすが、予測可能な且つ制御可能なレベルを超える横荷重下においては安定した降伏及びエネルギー散逸をもたらす。特に、柱及び梁の曲げ強さは、一対の降伏部材304及び特に薄手の中央降伏板312のモーメント許容能力を超えるよう設計されるのが良い。かくして、降伏板312は、柱又は梁の降伏又は破損前に横荷重下において降伏し、損傷は、容易に取り外せて交換できる降伏リンクに制限される。座屈抑制板316は、圧縮荷重下における降伏板の座屈を阻止する。せん断タブ222は、垂直荷重下における垂直せん断(即ち、柱104の長さに沿う)に対抗するよう設けられている。
【0049】
本発明を本明細書において詳細に説明したが、本発明は、本明細書に開示した実施形態に限定されないことが理解されるべきである。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、かかる実施形態の種々の変更例、置換例及び改造例を想到できる。
【符号の説明】
【0050】
100 フレーム
102 水平梁(ビーム)
104 垂直柱(コラム)
110 梁スタブ
112 座屈抑制型補強装置
114 リンク
116 座屈抑制ブロック
122 せん断タブ
124,126 端板
130 連続板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に用いられる横方向筋違いシステムであって、前記横方向筋違いシステムは、
梁及び柱を備えた構造用フレームと、
前記梁に取り付けられた座屈抑制板と、
前記座屈抑制板と前記構造用フレームとの間に設けられた降伏板とを有し、前記降伏板は、横荷重が前記構造用フレームに加えられると、前記フレーム内の応力を散逸させるよう引張状態及び圧縮状態で降伏することができる、横方向筋違いシステム。
【請求項2】
前記座屈抑制板及び前記降伏板は、前記梁に設けられる横ねじれ座屈抑制システムの省略を可能にする、請求項1記載の横方向筋違いシステム。
【請求項3】
梁及び柱を含む構造物であって、前記構造物は、
前記梁の一端部に取り付けられている座屈抑制板を有し、前記座屈抑制板は、前記座屈抑制板が前記梁に取り付けられると前記梁の前記一端部の最も近くに位置する第1の端部及び前記第1の端部と反対側の第2の端部を有し、
前記柱に取り付け可能な第1の端部及び前記梁に取り付け可能な第2の端部を備えた降伏部材を有し、前記座屈抑制板は、前記降伏部材を覆い、前記降伏部材は、横荷重が前記構造用フレームに加えられると、前記フレーム内の応力を散逸させるよう引張状態及び圧縮状態で降伏することができる、構造物。
【請求項4】
前記降伏部材は、前記第1の端部及び前記第2の端部よりも強度の低い中間区分を有し、前記降伏部材は、所与の引張力を受けると、前記中間区分が降伏する、請求項1記載の構造物。
【請求項5】
前記中間区分は、前記第1の端部及び前記第2の端部よりも小さい直径を有する、請求項4記載の構造物。
【請求項6】
前記梁と前記座屈抑制板との間に設けられた1つ又は2つ以上のスペーサを更に有し、前記1つ又は2つ以上のスペーサは、前記降伏部材と同一平面内に位置する、請求項1記載の構造物。
【請求項7】
構造物であって、
柱と、
梁と、
前記柱と前記梁との間に取り付けられたせん断タブと、
前記柱と前記梁との間に取り付けられた横方向筋違いシステムとを有し、前記横方向筋違いシステムは、
前記梁の頂部フランジ及び底部フランジにそれぞれ取り付けられた一対の座屈抑制板を有し、各座屈抑制板は、前記梁の一端部に取り付けられた第1の端部及び前記第1の端部と反対側の第2の端部を有し、
各々が前記柱に取り付けられた第1の端部及び前記梁に取り付けられた第2の端部を備えた一対の降伏部材を有し、前記一対の降伏部材のうちの一方の降伏部材は、横荷重が前記構造用フレームに加えられると、前記フレーム内の応力を散逸させるよう引張状態及び圧縮状態で降伏することができる、構造物。
【請求項8】
前記降伏部材の前記第1の端部は、前記柱にボルト止めされ、前記降伏部材の前記第2の端部は、前記梁にボルト止めされている、請求項7記載の構造物。
【請求項9】
前記梁と前記座屈抑制板との間に設けられた1つ又は2つ以上のスペーサを更に有し、前記1つ又は2つ以上のスペーサは、前記降伏部材と同一平面内に位置する、請求項7記載の構造物。
【請求項10】
梁、柱及び前記梁と前記柱との間に位置する横方向筋違いシステムを有するフレームを組み立てる方法であって、
(a)降伏部材を前記梁及び前記柱のうちの第1の一方にボルト止めするステップと、
(b)座屈抑制板を前記梁に取り付け、前記降伏部材の降伏板を覆うステップと、
(c)前記降伏部材を前記梁及び前記柱のうちの第2の一方にボルト止めするステップとを有する、方法。
【請求項11】
座屈抑制部材を前記梁及び前記柱のうちの第1の一方に取り付ける前記ステップ(b)は、前記梁及び前記柱が作業現場に到着する前に、前記座屈抑制部材を前記梁及び前記柱のうちの一方に取り付けるステップを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記ステップ(a)において取り付けられた前記降伏部材と、前記ステップ(b)において取り付けられた前記座屈抑制板は、一緒になって、前記柱に対する前記梁の横撓みに抵抗するが、しきいレベルを超える荷重を受けたときに前記降伏部材の前記降伏板のところで降伏する、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記ステップ(a)において取り付けられた前記降伏板と前記ステップ(b)において取り付けられた前記座屈抑制板は、一緒になって、前降伏板が前記降伏板の降伏強さによって降伏しないよう拘束されている状態で、引張荷重を前記降伏板に及ぼすことにより前記柱に対する前記梁の横撓みに抵抗する、請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記ステップ(a)において取り付けられた前記降伏板と前記ステップ(b)において取り付けられた前記座屈抑制板は、一緒になって、前降伏板が前記座屈抑制板によって座屈しないよう拘束されている状態で、圧縮荷重を前記降伏板に及ぼすことにより前記柱に対する前記梁の横撓みに抵抗する、請求項10記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図16】
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【図17】
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【図3】
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【図4】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−127187(P2012−127187A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−290561(P2011−290561)
【出願日】平成23年12月14日(2011.12.14)
【出願人】(506244375)シンプソン ストロング タイ カンパニー インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】